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『グリーン』アスパラを守れ!

<オープニング>


 水神祭都アクエリオ、ハルートの町。
「うふふ、グリーンアスパラ、初めてだけど上手くできて良かったわ」
 小麦農家の嫁、シエラはうきうきと小さな家庭菜園の世話をしていた。
 ラルドの深い愛情にほだされて復縁したものの、またも小麦漬けの生活に飽きてしまった。
 そこで、自分が食べたいものは自分で作れば良いと思い至り、アスパラガスを育てる事にしたのだった。
「次も立派に育ちますように!」
 手を合わせて真剣に祈るシエラを見て、夫のラルドが笑う。
「今日収穫したばかりだってのに、気が早いことで」
「そんな事言うなら、今晩作るベーコン巻き、たべさせてあげないんだから」
「おいおい、僕も楽しみにしてたんだよ? ベーコン巻きを作るならさ、是非ともお肉もどきでやってくれよ」
「考えておくわ」
 ラルドは苦笑しつつ、自分は自分で小麦畑の様子を見に行った。
「ん……?」
 畑を挟んだ広い畦道の途中、1人の男がじっと空を見上げているのが目に入った。
(「なんだ……?」)
 ラルドが思わず足を停めるのも当然で、男は明るい昼の空の下だというのに、逆光に照らされたかのような黒い人影にしか見えなかった。
 しかも、背中から噴き出した黒炎の如き翼を広げて、ただずっと空を眺めているだけなのだ。
(「気味の悪い人だな……」)
 ラルドはそんな感想を抱くだけに留めて、何事もない風を装い、男の脇を通り過ぎた。
 しかし、小麦畑で穂の実り具合や病気の有無を調べていた矢先、異変が起こった。
「えっ……!?」
 突然、空が真っ暗になったのだ。
「何だ何だ……?」
 まさか、先ほどすれ違ったデモン人間のせいだとは考えないラルドは、慌てて家へ帰るべく畦道を駆けていく。
「フフフ……」
 星霊建築の叡智たるドロースピカを、デモンの力で無理やり書き換えたデモン人間が、満足げに笑っているのへも気づかずに。
「ただいまっ、シエラ、見てみろよ! いきなり空が暗くなったぞ!!」
 そして、勢いよく家の戸を開け放したラルドは。
「はあ!? ちょっと、どうすんのよ私のグリーンアスパラ!! どうして急にドロースピカが壊れたの! このままじゃホワイトアスパラになっちゃうじゃないのー!!」
 ブチ切れて八つ当たりするシエラに、ぎりぎりと首を絞められる羽目になったのだった。


「世界革命とは、かつて世界革命家『鉄の首・バルムント』により引き起こされかけた世界の終焉のひとつで、バルムントの鍵で37体ものマスターデモンを地上に呼び出したそうですわ」
 バルムントの世界革命は、ラズワルドを始めとする七勇者とその仲間の勇者達によって阻止されたようですが、今の時代には勇者はいません……。
「世界の終焉を阻止できるのは、皆様がたエンドブレイカーをおいて他にはありませんの……」
 深窓魔想紋章士・レフルティーヴァ(cn0144)は、真剣な表情で語り始めた。
「アクエリオはハルートの町で、デモン人間が都市国家としての天井部のドロースピカを書き替えて、街ごと闇に閉ざしてしまう……というエンディングを見てしまいましたわ」
 デモン人間とは、一般人のデモニスタが特殊な能力に目覚めた姿で、『影への潜伏』を行う事が出来る。
 彼らは10秒程度集中する事で、人や物の影の中へ入り込め、その状態で影の外を覗いたり、周囲の音や声も認識できる。
 また、ゆっくり歩く速度で、影から影へと移動する事も可能だが、影が繋がっていない所へは移動できない。
「なんらかのアビリティを使用すると、暫くの間は影への潜伏を使う事ができませんので、戦闘中に影へ入り込んで逃げられる――というご心配は不要かと存じます」
 レフルティーヴァはデモン人間の能力を語った上で、今回の作戦を説明した。
「デモン人間は、デモンの力を活かしてドロースピカの書き替えを画策しますが、星霊建築を完全に破壊するまでには時間がかかりますの。そこで皆様には、デモン人間が星霊建築の破壊に集中しているところを見つけ出して襲撃、そのまま討伐をお願い致します」
 今回遭遇するデモン人間は1人で、配下にレッサーデモンを2体連れている。
「デモン人間は、手にした杖でバインドウェブと、デモンウイングを使い分けてきますわ」
 レッサーデモン達は一様に、デモニックアルターと邪眼を使い分けてくる。
「デモン人間は、ハルートの町の中でもひと気の少ないところを選んで、ドロースピカの書き換えを行っています。ラルドさんの小麦畑の中を行ったり来たりしているようですわ」
 デモン人間がドロースピカを完全に書き替えてしまう時間帯は夕方より少し前である。
「ラルドさんはお仕事熱心で、よく畑へ足を運ばれますから、先にお宅へ寄って畑へ行かないよう言い含めておかれた方が宜しいかもしれませんわ」
 なるべく早くからの捜索が望ましいだろう。
「デモン人間の目的は、世界を夜の闇に閉ざす事……彼らはマスカレイドじゃありませんけれど、そんな邪悪な目的を果たさせるわけには参りませんもの。かつての勇者達が、鉄の首・バルムントの世界革命を阻止したように、皆様がたエンドブレイカーも、デモン人間達の野望を阻止して下さいましね」
 レフルティーヴァはそう締め括って、同席者達を激励するのだった。


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参加者
幻奏調律士・サクラ(c01323)
空の宅急便・カナタ(c01429)
野いちごの風・フェリチェ(c01453)
無限の胃袋・ミーファ(c07005)
無限光・アウル(c08078)
真昼の月影・ヴァイダー(c20526)
奥様は自由農夫・マルチナ(c32852)

NPC:深窓魔想紋章士・レフルティーヴァ(cn0144)

<リプレイ>


 水神祭都アクエリオ、ハルートの町。
 小麦農家ラルドの家へ向かう道中。
「嫉妬戦士である以前に、星霊建築家なんだ……!リチェ子よすまぬ」
 空の宅急便・カナタ(c01429)は、同じ嫉妬戦士へ、この事件に対する胸の内を簡潔に述懐していた。
 アクスヘイムの星霊建築家である彼は、殊更ドロースピカの破壊が許せないのだろう。
「おらだって、農夫としてアスパラを守りたいし、空好きとしてもアクエリオの優秀な星霊建築が壊されるのは黙っていられない!」
 カナタへしっかりと答えてみせつつも、ちょっぴり複雑な気分で肩を落とすのは、野いちごの風・フェリチェ(c01453)だ。
(「……だけど、嫉妬戦士としては夫婦の修羅場も見たかった……」)
 赤い瞳にピンクのふんわりした髪と、苺を思わせる可愛らしい外見にも拘らず、今フェリチェが専ら心血を注いでいるのは、嫉妬活動に他ならないのだから。
「大丈夫ですわ、ラルド様ご夫妻に接触する必要性はあるのですから、もしかしたら……」
 こちらは修羅場そのものを見たがっている深窓魔想紋章士・レフルティーヴァ(cn0144)が、そう言って仲間を励ます。
「グリーンアスパラを守るのら〜〜♪ ミーちゃん的には、ホワイトアスパラも好きなんだけどね〜」
 うきうきと拳を突き上げる無限の胃袋・ミーファ(c07005)は、食材としてどちらも好きだと主張するのも忘れない。
 オレンジのサイドポニーが特徴的な彼女は、食う寝る遊ぶを地で行くお気楽娘。
 特に食べる事が大好きなのか、本当に好き嫌いなくよく食べる。食べられる物になら何でも食指を伸ばす。あまつさえ、ソーンイーターであるミーファは、身の内に宿すデモンが貪る棘にすら興味津々な始末だ。
「アスパラ! 守らずにはいられない!」
 奥様は自由農夫・マルチナ(c32852)は、仲間達に同調するも、彼女の関心事はもはや作物だけじゃないようで。
「うんうん、着物もすてき! やっぱりうちのひとはかっこいいだね!」
 と、着流し姿を披露した真昼の月影・ヴァイダー(c20526)の背中を見つめては、惚れ直したとばかりにうっとりしている。
 これぞフェリチェ達が討つべき、幸せなリア充の姿と言えるだろう。
 ヴァイダー自身は、そんな恋人からの熱視線に気づいているのかいないのか、渋い表情で考え込む。
「デモン人間、か……成り得たかも知れない可能性があると思うとぞっとせんな」
 最近までずっとソーンイーターであった彼は、かのデモンの叛乱もその身で味わっている。
 だからこそ、ヴァイダーがかような薄ら寒い心地になるのも当然と言えよう。
「己を捨てる者がこうも多いのは勿体無い話」
 ともあれ、デモンの類は去るが良い。
 一方、同じくデモンの叛乱を乗り越えた無限光・アウル(c08078)は、至って冷静に事態の推移を見つめていた。
 短く整えた銀髪と鋭い藍色の眼、白で統一した武装や出で立ちが神秘的な雰囲気を醸し出すアウルは、その外見に違わず内面はクール、必要な事以外口を開かない寡黙な性格である。
「折角平和に暮らしているのですから、何気ない日常を壊させる訳にはいきませんね」
 アウル同様に冷静な性格の幻奏調律士・サクラ(c01323)は、未だ明るい空を見上げて、穏やかな微笑みを浮かべた。
 今日の彼女の装いは、アイボリーのマントに白いノースリーブのインナーを合わせ、下はコルク色のスカートと白いハイソックス、チョコレート色のブーツという組み合わせである。


 コンコン。
「はい……どちら様で?」
「こんにちは〜、ミーちゃん等はエンドブレイカーなのら〜♪」
 応対に出たラルドへミーファが笑顔で挨拶する。
「突然訪問してすまない。最近、君の小麦畑周辺に危険人物が潜んでいるようでな」
 順序立てて説明するのはアウルだ。
「ついては、小麦畑で捜索を行う許可を頂きたいのだが。それと、我々が危険人物を捕まえるまでは、君達は決して畑に近づかないで欲しい」
「えっ、小麦畑がまた危ないんですか!?」
 慌てふためくラルドを落ち着かせようと、フェリチェも農夫へ好印象を持たれやすい物言いで、懸命に説得する。
「大丈夫だべ! お前さんが丹精込めて育てた小麦は、おら達が必ず守ってみせるだ!」
「ラルドさんは心配する事ないですだよ!」
 マルチナも頷いた、その瞬間。
 パコン!
「何を愚図ってお客様困らせてるの? 畑よりあなたの体の方が大事に決まってるじゃない!」
 シエラがラルドの顔面に拳を減り込ませ、正論を展開した。
「けど、小麦がもし駄目になったら冬をどう越せば」
「ウダウダ言わない! エンドブレイカーって、前も野犬をやっつけてくれた人達でしょ? 信じてお任せしなさい!」
「はい……」
 愛妻にやり込められて項垂れるラルドを見やると、
(「多分デモン人間よりも、シエラさんの怒るほうがこの人はコワイんじゃないだべか!」)
 マルチナは思わず笑いを噛み殺したのだった。
「で、ラルドさんの畑はどちらに?」
「ここからまっすぐ西よ」
 カナタの問いへも、シエラがラルドの頭をはたきつつ答えた。
 ともあれ、エンドブレイカー達は例の畦道を訪れた。
「小麦畑なら視界も開けているし、そう苦労せずとも見つかろう」
 ヴァイダーは早速視力を研ぎ澄ませて遠方を注視、デモン人間を探している。
「影ん中に隠れていたりしないらか〜?」
 ミーファはランタンを携えて、麦の穂が作る影を消し消し歩いている。
 カナタも屈んで小麦の穂に隠れつつ目を凝らしている。
「あれだな」
 スッとヴァイダーが指を差した先、小麦畑のほぼ中央に、翼を広げたデモン人間が立っていた。
 麦穂に隠れて見えないが、側にはレッサーデモン達も控えているようだ。
「そこの胡散臭い影の人! エンドブレイカーがその企み華麗にブレイクしてやんべ!」
 早速すっ飛んでいったフェリチェが、巨大蓮に溜めた光をレッサーデモンへ向けて照射した。
 メーサー光線を食らった1体が、その真っ黒な身体を捩らせて痛がる。
「目には目を、影には影を……みたいな?」
 微妙な気がする! と自虐気味に笑いつつ、カナタも試作八号・紫陽花で斬りつける。
 影の刃にズプリと脇腹を突き刺され、別のレッサーデモンも、霧のような体液を噴出して苦悶した。
「世界が暗くなると、気持ちまで暗くなってしまうかもしれませんしね」
 サクラは幻奏楽杖-Quartet-を振るい、魂送りの詞をレッサーデモン達へ聴かせる。
 広がる葬送の歌を耳にした2体が、精神を強くかき乱されてダメージを受けた。
「なるべく畦道で戦いたいけど……難しいかもらね〜」
 ミーファは巨顎化した腕でレッサーデモンの頭に噛みつきながら、小麦を踏んづけてしまわないよう立ち位置を気にしている。
 鋭い牙で頭を喰い千切られ、レッサーデモン1体はついに息絶えると、その靄みたいな身体を空気中へ霧散させた。
「その企みを放置するわけにいかんな」
 離界剣“Ea”を振り下ろして、デモン人間へ高速の一撃を見舞うのはアウルだ。
 トリプルスイングに曝されて、ずっと涼しい顔だったデモン人間が初めて腰を折って悶え苦しむ。刀身からは骨の砕ける感触がした。
 反撃にと杖から魔法の蜘蛛糸を放ち、デモン人間は繭縛りを試みるも、アウルは眉ひとつ動かさない。
「ふふっ、簡単に捕まりませんよ?」
 網に引っかかったサクラも、いかなる時も余裕の微笑みを崩さずにいる。
「デモン人間さんがなんだかわからないだども……」
 その傍ら、激怒するのはマルチナだ。
「大切な作物をわやにする人は許しちゃおけないだよ!」
 必ずやあの作物愛を介さぬデモン人間を除かねばならぬ――と自由農夫らしい怒りを燃やして、硬いヒイラギの葉片手に懐へ飛び込んでいく。
 ホリィスラッシュを喰らい、デモン人間は胸から黒い血を噴き出した。
「早いとこ纏めて片づけたいもんだな」
 さらさらと描き上げた紋章から狂気を広げるのはレフル。
「そう来ると思っていた……君の呼吸なら大体分かるさ」
 ヴァイダーは帆差八寸を抜き払い、狂王の狂気に侵されたレッサーデモンの隙をついて死角へ入ると、ドスッと急所突きを繰り出す。
 深々と刺さった傷が致命傷になったらしく、1体は地面に墜落、そのまま土に吸い込まれるようにして消えた。
「……光を求めるのはわからなくもないけど! 手段が残念すぎるんよね!」
 残り1体となったレッサーデモンへ連影刃を繰り出すのはカナタだ。
(「そりゃまあ、人間って残念なのが多い生き物だけどさ!」)
 胸の内では、なかなかに達観した事を思いながらも、攻撃を続けた。
 レッサーデモンはレッサーデモンで、身体中に出現させた邪眼を全開放して、ミーファを睨みつける。
「痛いのら〜」
 石化は免れても、身体に受けた衝撃は少なくない。へにゃりと眉を下げて痛がるミーファだが、痛そうに聞こえないのが困りものである。
「やられたらやり返すのが礼儀なのら〜♪」
 それでも果敢に立ち向かうミーファ。
 シルバー・フォークで風刃乱舞を披露すると、竜巻で1体を切り刻み、トドメを刺したのだった。
「明るい世界の方が、きっと色々と楽しくなれますよ」
 と、いう訳で闇を吹き払う聖なる楽曲は如何でしょうか。
 ふふっとサクラは笑みを零して、荘厳なる葬送歌を畑中に響かせる。
 死を嫌でも意識させる旋律が、デモン人間へ重い苦痛をもたらした。
「…………」
 デモンの力で棘を実体化させ、慎重に狙いを定めるアウル。
 撃ち出した棘がデモン人間の四肢を刺し貫き、やはり深刻なダメージを与えた。
「ここが見せ所だ……同時に仕掛けるぞ!」
 ヴァイダーはマルチナへひと声かけると、なるべく畑に踏み込まないよう気をつけつつも、死点突きを繰り出す。
「任せるだ。行きますだよ、ヴァイダー!」
 デモン人間は結果的に作物をダメにしようとしている――憤懣やるかたないマルチナは強く頷いて、猛然と飛びかかっていく。
 死点突きに次いで鬼目刺しが決まり、先の刀傷を抉るようにして突き刺さったヒイラギが、想像を絶する激痛を生んだ。
「うがーっ、なんたるコンビネーション! これだからリア充は!!」
 恋人達の連続攻撃を見やり、ずっともやもやしていた苛立ちを爆発させるフェリチェ。
「くっ……この苛立ちはまんまデモン野郎にぶつけてやんべ……!」
 パルスビームを正面からぶっ放して、デモン人間の腹に風穴を開けると、ついに引導を渡したのだった。


「それじゃ、ボクは残ってドロースピカの修復をするよ!」
 やることやってからのほうが、アスパラ絶対美味しいから……!
 カナタは高い位置から陽の光が射し込む空を見上げて、そう言った。
 デモン人間によって破損された箇所が無いか確かめたいのだろう。
 戦いによって土が抉れた畦道を、無言で踏み固めて直しているのはアウルだ。
「ぐちゃぐちゃになった麦はこれだけだか。被害が少なくて済んだのはまだ良かったべ」
 ちゃんとした麦踏みだったら、逆に強く育つんだがなぁ。
 マルチナは、畑に忘れてあった麦刈り鎌を振るって、踏み荒らされたり攻撃の余波を受けた麦穂を手際良く刈っている。
「気をつけて戦ったつもりだが、仕方あるまい。あまり気を落とすなよ?」
 デモン人間の遺体を道の隅の方へ埋葬すると、ヴァイダーはおもむろに立ち上がった。
 かくして、一行はカナタだけを残して、ラルドの家へと引き返したのだった。
「本当に有難うございました。お疲れかと思いますしすぐに昼食をご用意致しますので、宜しければどうぞ」
「すみません、こいつ、自分が育てたアスパラを振る舞いたいだけなんです……痛っ」
「もう〜あなただってご機嫌でお肉もどきの下拵えしてたじゃないの〜♪」
 シエラが笑顔で申し出る横で、ラルドは余計な口を挟んで肘鉄を食らっていた。
「じゃあ、おらもお手伝いするべ! アスパラの美味しい食べ方を伝授するだよ!」
「おらはお肉もどきのレシピが気になりますだ!」
 フェリチェとマルチナが、喜び勇んで台所へ入っていく。
「お肉もどきは、元々味がありませんから、普通の食材よりいかに上手く下味をつけるかにかかっています」
 乾燥した小麦お肉を調味液に漬けるマルチナへ、ラルドは嬉々として工程の意味を説明している。
「ふむふむ、濃い味つけにするのがポイントですだね!」
「そうです。でないと全部食べ切れませんから……今日は何にしましょうかね」
「グリーンアスパラと合わせるなら、ベーコンみたいにカリカリに焼くのはどうですだか?」
「良いですね、そうしましょう」
 2人がフライパンの前で盛り上がる一方。
「卵黄に削って粉にしたチーズを加えるんだけど、火の入れ過ぎに気をつけるだよ。すーぐ固まっちまうべ」
「わかったわ」
 フェリチェがシエラに卵黄ソースの作り方を丁寧に教えていた。
 卵黄に粉チーズを混ぜたものを炒めたアスパラに回しかけるのだが、余熱で温める程度に留めてソースをいかにトロトロにするかがポイントである。
 仕上げに黒胡椒があれば尚良し。
 既に、ダイニングテーブルではアーリオオーリオ風炒めが湯気を立てている。ニンニクの薫りとオリーブオイルの風味が絶品な、フェリチェの自信作である。
 すぐにお肉もどきのソテーと茹でアスパラ卵黄ソースがけも完成し、焼き立てのパンやベーコンとアスパラのサンドイッチと合わせて、豪華な昼食と相なった。
「アスパラもパンもお肉もどきも、とっても美味しいのら〜〜♪」
 元より、美味しくなくても何でも食べるミーファは、嬉しそうに料理へパクついている。
 実際、アーリオオーリオ風炒めも、卵黄ソースがけも、焼き立てパンも美味しかった。
 だが、味を最大限ごまかさなければ食べられないお肉もどきと一緒にするのはいかがなものか……とはいえ、ミーファのおかげでお肉もどきだけが残ってしまう寂しい事態は回避できそうである。
「本当にお肉っぽい食感がしますだね! 美味しいですだよ!」
 どんなメニューでも自分で作った料理は格別である。お肉もどきソテーを頬張るマルチナは満面の笑顔だ。
「ウム、美味い。マルチナは料理上手だな」
 味が格別なのは、恋人の手料理を食べるヴァイダーにしても同じなようだ。
「ん、流石にご自慢の品だけあって、どれも美味しいですね」
 お酒にもあって良い感じです。
 サクラは、持参した様々な飲み物を昼食のお礼にと皆へ振る舞いつつも、自分はグリーンアスパラに合わせて白ワインを飲んでいた。
「この卵黄ソース美味しい〜」
 レフルも貰ったレモンジュースを飲み飲み、アスパラ料理に夢中である。
「生きることは、光と熱を求めることだから」
 だからかな? グリーンアスパラのほうが、好き!
 いつの間にか戻ってきていたカナタは、ベーコンと茹でアスパラのサンドイッチに被りついて、幸せそうに仲間と談笑している。
「……レフルちゃんはどっちが好き?」



マスター:質種剰 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:7人
作成日:2014/09/22
  • 得票数:
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