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ガルシェン救援:言の葉を光に変え

<オープニング>

●黒き炎はなお燃え盛り
 闇が、爆ぜた。
 巻き上がった砂埃さえ、焼き尽くす強さをもって黒炎は戦場に落ちた。炎は、身を守る様に腕を出した巨人のその太い腕さえ燃やし尽くさんとばかりに、ごう、と爆ぜる。踏鞴を踏めば、獣のような瞬発力でデモン人間の刃が巨人の横っ腹を抉った。
「何するんだよう」
「何ってそりゃぁ、どいてもらわんとさ」
 ふは、と笑うのはデモン人間の男だった。レッサーデモンを引き連れ、だらりと血を流した腕をふるってはまた笑う。血溜まりから、生まれた獣達が吠える。その後ろでは、多くのレッサーデモン達がその翼を広げてみせていた。
「通せよ、さっさと」
 低く、響いたその声が合図となるように光線が放たれた。撃ち抜かれながらも前に出、振り下ろした巨人の−−ガルシェンの賞金稼ぎの一撃が、デモン人間を吹き飛ばす。獣が吠える様に、打ち出された黒炎さえ弾き上げた彼等は賞金稼ぎらしく、荒事に慣れていた。
「どくのはそっちだ」
 腕を振るい、武器を振るい。
「そうだそうだ」
 声を張り上げ−−だが、襲い来るデモン人間とレッサーデモンの部隊の声はそれを上回る。7人の賞金稼ぎの前にいる敵はその十倍程で、このままでは勝つのは難しそうであった。

●境界の疾走者
「えっとね、なんかこう、いろいろと起きちゃったみたいでさ」
 なんていうか、忙しくてごめん、と一つ言って、二つ夜のデモニスタ・ニヤは、集まったエンドブレイカー達を前にぱっと、顔を上げた。
「此華咲夜若津姫救出行お疲れさま。んでもって、ちょっと……ってか結構いろいろ起きたんだ」
 ニヤはそう言ってエンドブレイカー達を見た。
「前の戦い、シャルムーン動乱で敗退したマスターデモン・クトラの動きが分かったんだ。あ、マスターデモン・クトラの足取りが分かったのは此華咲夜若津姫が、バルムントの鍵の真の力を取り戻してくれたなんだよ」
 起きたばっかなのにありがとだよな、と一つ言って、ニヤはエンドブレイカー達を見た。
「んで、マスターデモン・クトラの目的なんだけど、エンドブレイカーの精鋭をシャルムーンに孤立させるつもりらしいんだ」
 今回はデモンの軍勢で、力押しにシャルムーンに攻め込むつもりだ。
 既に、マスターデモン・クトラは薔薇の痕で、レッサーデモンとデモン人間からなるデモンの大軍勢を組織すると、シャルムーンへの侵攻を開始している。
「この戦いは、シャルムーンで迎撃する戦いになると思う。けどちょっと問題があるんだ」
 テーブルの上、カップを三つニヤは並べておいた。
 一つを薔薇の痕、一つをシャルムーンと見立てて、残す一つを、間に置く。
「薔薇の痕からシャルムーンまでの間には都市国家『ガルシェン』がある。
 デモンの大軍勢はここにぶつかって行っちゃうんだよね。で、勿論敵襲だーってわけでガルシェンの賞金稼ぎたちは、都市を守る為に戦う」
 でも、とニヤは言葉を切った。
「デモンは大軍勢だ。精鋭のチームで出るにしても正直、多勢に無勢だよ」
 それに、ガルシェンに篭城した場合は最悪――全滅してしまうかもしれない。
「ガルシェン周辺の状況は不明なんだけど、デモン人間及びレッサーデモンを主力とした部隊と、ガルシェンの賞金稼ぎとかが争っている所を救援するのはできるよ」
 言って、ニヤは真っすぐにエンドブレイカー達を見た。
「みんなに『デモンと戦ってる巨人達の救援』を頼みたいんだ。あと、説得。シャルムーンまで撤退するように、ってね」
 賞金稼ぎであり、腕に覚えのある彼等は断るかもしれない。けれどそこを説得して、救援してほしいのだとニヤは言った。
「あとは護衛しつつの撤退になると思う」
 大変だとは思う、と一つ言って、それでもみんなにお願いしたいのだとニヤは言った。

「ガルシェンの巨人が、エンドブレイカーとデモンの戦いに巻き込まれちゃって、犠牲になっちゃうってのもなんか、だしさ」
 防ごう、とニヤは言った。先にひとつ、情報をつかむことができたのだから。
「勿論、簡単な依頼じゃないってことも分かってる」
 でも、とひとつ言って、ニヤは顔を上げた。
「みんなの力を貸して欲しいんだ。ガルシェンの巨人を、助けてほしい」
 それと、と一つ切ってニヤは言った。
「みんなもさ、ぜったい、帰って来て」
 真っすぐに、ニヤはエンドブレイカー達を見た。


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参加者
凍翼の騎剣士・ハイド(c01339)
眩暈の尾・ラツ(c01725)
棍の自由農夫・トマリ(c14000)
蒼銀の妖精騎士・アイリ(c20870)
闇鴉・ラウム(c21260)
夜が訪れる刻・シキミ(c32374)
水光天へ跳ねる兎・ジィリオ(c35020)
憤怒の赤妃・ヴェーダ(c35108)

<リプレイ>

●闇の在処
 空を、闇が裂いた。黒き炎は、舞い上がった木の葉を焼き、砂塵を熱に返る。ガルシェン郊外。薔薇の痕より続く道は既に戦場と化していた。鋼と鋼のぶつかり合う音に混じり、強く吹く風に血の匂いが混じった。唇を引き結んだ闇鴉・ラウム(c21260)の瞳に「黒」が見えたのはその時だった。否、黒ではない。漆黒の塊ーーデモンの軍勢であった。蠢くデモン部隊の向かう先に、蟹の鋏を振るう大きな体躯を持った男達が見えた。
「っと、いた!」
 あそこ、と言ったラウムに凍翼の騎剣士・ハイド(c01339)が頷く。
「ここからだと、奴らの背後から奇襲することになるか」
 巨人と戦っているデモン部隊の意識は、前にばかり向いている。後ろはがら空きな上、こちらには気がついていない。上手くいけば、退路を確保した状況で説得に持ち込めるだろう。
(「問題は巨人の方か……」)
 精鋭部隊は、都市を守る為に打って出たのだろう。予想通り、前のめりな巨人達を心配に思いながら、憤怒の赤妃・ヴェーダ(c35108)は静かに息を吐いた。
「まずは、道を開くことですね」
「あぁ」
 行こう、と低くハイドは告げた。剣戟の音に混じり距離を詰める。足音を消す必要など無い程に、高く響く音に混じり、エンドブレイカー達は混沌の戦場に飛び込んだ。
「馬鹿みたいな数ね」
 水光天へ跳ねる兎・ジィリオ(c35020)は手を前に出す。一線、描かれたのは召還された妖精達が一斉に突撃する軌跡であった。燐光を纏い、レッサーデモンを穿ち、描かれた道筋に一行は飛び込む。後方からの襲撃に、デモン部隊はざわめいた。
「何があっ……っ新手か!?」
「はい」
「うん」
 その驚愕に、夜が訪れる刻・シキミ(c32374)と蒼銀の妖精騎士・アイリ(c20870)が応え――同時に妖精を召還した。突撃する妖精と、燐光を纏う粉を撒く妖精達の中ラウムは声を上げた。
「クルァ! 人様んち土足で通過してんじゃねぇ自分の夜すら飼い慣らせねぇヘッポコども!」
 腹の奥から出したその声は、巨人の巨躯に響く程大きな声だった。戦場の奥にいた、巨人達が顔を上げる。
「誰か来ただよぉ」
 間延びする声を耳に、ラウムはハルバードを持つ腕を大きく、振るった。大木を断つが如くの横薙ぎに、正面にいたレッサーデモンが吹き飛ばされる。
 黒の獣が、空を舞った。
 転がる獣に驚いた部隊を切り崩すように、ハイドは前に出た。
「どいてもらおう」
 光輝を纏い、突き出された刃は奇襲に対応出来なかったデモン人間を貫いた。踏鞴を踏み、敵か、と零す男を眩暈の尾・ラツ(c01725)の円輪が撃つ。
 後方から攻撃を受けたという事実は、デモン部隊に大きな衝撃を与えたようだ。攻撃のタイミングが遅い。その隙に、棍の自由農夫・トマリ(c14000)はマジックマッシュを投げつける。
「これあげるのね」
 宙で爆散した煙は、デモン人間達を焼く。ヴェーダの召還した剣が雨のごとく降り注げば、突然の攻撃に対応しきれなかったデモン部隊は大きく、その陣を崩し、下がる。
「退路は確保できたのね」
 トマリの言葉に、アイリは頷いた。
「うん、あとは……」
 巨人達の説得だ、とアイリは顔を上げた。

●ガルシェンの賞金稼ぎ
「おーい! でっかい七人の戦士たち! 戦いながらでいいからちょっと聞いてくれ!」
「おぉ、助けに来てくれただなぁ」
 そうじゃないんだって、とラウムは声を上げる。戦いながら詰めた距離も、気を抜けばデモン達に飛び込まれる。横から飛びかかって来た血の猟犬に腕を振り、ラウムは前に転がり込んだ。
「いい感じだなぁ」
 合流を、そのまま増援と理解した巨人達が、上機嫌に声を上げた。
「その感じでもっと倒すぞ」
「いや、そうじゃなくて……!」
「私達はエンドブレイカーよ」
 腕を振るい、飛びかかるレッサーデモンを弾き飛ばした巨人達にジィリオはそう言った。
「エンドブレイカーかぁ」
「……ッチ、エンドブレイカーだと」
 反応は、二つ。
 巨人と、デモン人間だ。
 前者はよく来てくれたなぁ、と言い、これから町を壊そうとしてた奴を倒す所なんだと言った。
「みんなみんな、倒しちまうんだ」
「目の前の敵を? でも目の前の敵を倒してもワラワラ何十体も現れるわ」
 ジィリオは一つ、事実を告げるように言った。だが、未だ劣勢に無い彼等はそれすらも倒しきれるのだと豪快に笑った。
「問題ないだよぉ」
「向こうはまだまだ数を増やしてくるのね」
 声を上げ、トマリは真っすぐに巨人達を見た。傷はある。それでもまだ問題無く動くできれる彼等は、戦いながらでいい、と言われなければ、話を聞かせるのも苦労したかもしれない。デモン部隊が、冷静を取り戻すのを感じながら、トマリは声を上げた。
「このままだと、巨人さん達の方が数の力で潰されちゃうの」
 説得の合間も、攻撃は来る。話ばかりしてるなと、広げられたデモンの翼が腕を擦る。デモン人間達は、レッサーデモンと共にこちらの邪魔をすると決めたようだ。それが、エンドブレイカーと名乗ったからか――それとも、自分達の戦場を荒らされたからか。おそらくは、その両者だろうと思いながら、ハイドは言った。
「自分達はデモン人間を倒すために彼らを追ってきた斥候部隊だ」
 本隊は別にいるのだとも、プロミスを使い、ハイドは告げる。今いる戦力では不利なのだと。
「巨人たち、奴らは貴方たちの敵でもあるが、我らの敵でもある。ここは一度我らの本隊がいるシャルムーンまで撤退し、体勢を立て直そう」
「大丈夫だぞぉ。全部、ぶっ倒せるぞ」
「待て」
 追う様に、声をかけたハイドに向かって、光線が放たれた。レッサーデモンだ。とっさに、振り上げた剣で光を両断する。一撃を砕けば、駆けるデモン人間の姿が見えた。説得の邪魔をする気だ。
 ギン、と鋼と鋼のぶつかり合う音が響く。ハイドの剣と、デモン人間の剣がぶつかったのだ。一瞬、火花が散り、押し合いの中、もう一体が攻撃に出てくる。援護する様に動くラツとヴェーダを視界に、ジィリオは巨人へと声を上げた。
「貴方達にとっては羽虫程の敵でも、数には圧されること……以前、アリッサム達との戦いで学んだでしょう」
 アリッサム、と響いた言葉に巨人の一体がひくり、と反応する。だが、答えを返すよりも先に、デモンの攻撃が巨人を襲った。
「何するだよぉ」
「こっち無視してやってんのはお前らだろうよ」
 デモン人間から放たれた血の猟犬が、巨人の喉元に食らいつく。一撃に、巨人達は即座に反撃を選ぶ。精鋭の名の元に集められた巨人達は好戦的だ。血を流しながらも戦う彼等の中では、誰一人倒れていないこの戦場は「有利」なのだろう。暴れる様に、デモン達に向かう巨人にジィリオは言った。
「何れにせよ緊急事態よ。その力、こんなところで振舞っている場合じゃないわ」
「でも、こいつらを倒しにきたんだぞ」
「敵は、これだけじゃないの。この後ろにも、ひょっとしたら見えない所にも、沢山居るの」
「見えない所?」
 眉を寄せた巨人に、アイリは自分達の知るデモン人間達の特徴、能力を教えた。見えているだけでなく、後続にも、そして潜んでいる分も含めて相手をしきれない程いるのだと。
「このままだといずれは此方側が押し負けますわ」
 一つ、事実としてシキミは告げた。
「生きていれば、それだけで後々で街を取り戻せるチャンスも訪れる筈ですわ」
 重ねられた言葉に、巨人達が悩む様に声を唸らせた。
「でも、そしたら、俺たちが、シャルムーン行ったら、ガルシェンはどうなるんだよぉ」
「都市の方は、他の仲間が説得に向かっているの」
 トマリはそう言った。
「今は、守るための戦略的一時撤退なのね」
「一時、撤退……」
 迷う様に巨人の言葉が戦場に落ちた。告げられた言葉を信じていないわけではない。ただ戦うと決めて出た、彼等の戦士として誇りとの狭間でだ。迷いながらも、強く握りしめられた拳にハイドは言う。
「他の部隊もガルシェン内の人や他の戦場で戦っている。シャルムーンに撤退する手はずになっている」
 だから、ハイドが重ねて言った。その時だった。戦場にそろえた様に、デモンの光線が放たれたのだ。

●混沌の戦場
「! 散れ!」
 鋭くハイドの声が響いた。避けきれずに、攻撃を受けた巨人達にジィリオが回復を紡ぐ。その中を黒の獣が駆ける。巨人をそのまま倒すつもりだ。
「させねぇ!」
 声を上げ、ラウムは一気に前に出た。巨人を狙う敵めがけ、ハルバードを振るう。横薙ぎはデモン1体を吹き飛ばす。続くもう一体にはヴェーダのシャイニングレインが降り注いだ。
「ギィイイ」
 獣の咆哮が響く。軋むような音を最後に獣が倒れれば、ナイフを持つデモン人間が舌を打った。
「ッチ、俺たちの相手もちょっとくらいしろって言ってるだけだろ?」
「今、お前らと話してんじゃないんだよ……!」
 は、と息を吐き、肩で荒く息をしながらもラウムは言った。
「俺達は巨人の皆の命を助けるために来たんだ」
 説得に、重ねられる言葉に戸惑いながらも、確かに考えてくれている彼等に。彼等が戦いの手を鈍らせる分、自分達が戦いながら。
「戦士の誇りがそれを許さないって事は判る。でも生きていれば守る事も取り返す事もできる」
 言葉を、想いを告げる。
 乱戦の中、最前線にあった巨人が一体、膝をつき倒れる。説得を、長引かせるのは危険だ。重い一撃を叩き込み、せせら笑うデモン人間を前に、アイリは唇を引き結び、く、と顔を上げ巨人達に言った。
「このまま戦っても勝てない。みんな、ガルシェンごとやられちゃうだけ」
 だから、とアイリは言う。
「だから、一旦シャルムーンまで退いて! それからでも、やり返す機会は絶対あるから」
 アイリは願いと、想いを込めて。
「その力は、都市を、同胞を護るために使いなさい!」
 ジィリオは、一見冷酷なように、だが真実を誠実に告げた。
 鋭く、響いた二人の言葉に巨人が足を止める。一撃、振り下ろした腕を次の攻撃へと使わずに、ただ視線をこちらに向ける。仲間のその反応に、ラウムの傍にいた巨人も足を止めていた。巨躯を見上げ、ラウムは言った。
「この先の砂月楼閣まで行けば俺達人間やエルフの仲間たちが沢山居る。そしたら力を合わせてこいつらをぶっ飛ばす事ができる」
「ぶっ飛ばす……できる、か?」
 巨人の問いに、ラウムは力強く頷き、言った。
「だからお願いだ、俺達と一緒に来てくれ。きっとこの街を取り返すことを約束する! 森の民は約束を違えない、必ずだ!」
 己の誇りにかけ、少年は告げる。
 ハイドもまた、傍にいた巨人に言った。
「頼む。故郷を捨てたくない気持ちはわかるがここで死んだら奪われるだけだ。ーー奴らを倒した暁には必ずガルシェンを奪還すると約束する」
 これは約束だ。そして天誓騎士はそれを果たす。
 重ね、告げられた言葉に達に、ガルシェンの賞金稼ぎ達は身を起こす。大きく、動いた腕に警戒するようにデモン達が動く。その、一体を吹き飛ばし、巨人は言った。
「分かっただよぉ」
「次の機会があれば、そこで倒すんだよぉ」
 撤退に頷いた巨人達に、エンドブレイカー達も力強く頷いた。一つ、話がつけば、今の今まで真面に相手にされて来なかったデモン人間が眉をつり上げていた。
「良い話だとは思うけどさぁ。俺たちが通すと思うわけ?」
 説得の間に倒したレッサーデモンは10体。全て倒すには足りないが、目的はそれじゃない。ここを突破し、撤退すること。
 は、とアイリは息を吐き、言った。
「別に、許可を貰うつもりはないの」
 退路は開けている。ただ、と一つ言い妖精の名を呼ぶ。肩口に現れた妖精は、少女の求めに応じる様に高く舞い上がる。
「あたしたちが、行くだけだよ」
「っちお前らぁああ!」
 空を震わすような怒声が、戦場に響いた。妖精の粉を舞わせ、アイリが妖精と共に退路を守る様に後退を始める。逃がすかと叫ぶデモン人間が、血の猟犬を放った。
「行かせるな!」
「悪いけど」
 言って、ジィリオはその手を敵へと向けた。舞い上がる妖精達が、猟犬の一体を消す。突撃する妖精達がデモン人間を撃った。
「ぐ、ぁ……っ」
 踏鞴を踏む敵を視界に、トマリは巨人達の少し後ろを行く。彼等を狙い来る、攻撃を払う様に棍を振るえば、巨人が迎撃の手助けを来てくれた。
「みんなで、撤退するだよ」
 撤退の中、ヴェーダが前衛へと最後の回復を告げる。この場を突破する為の力。旋律に、踏込む足は軽くなり、流れた血だけを置いてラツは最後に召還した円輪達を、デモン人間へと向けた。
「さあ、どうぞ」
 制約を刻む円輪が、デモン人間を襲った。
「っくそ、レッサーデモン、お前らが先に……な!」
 だが、黒の獣が踏み出した大地が、氷に包まれていた。ハイドだ。乾いた戦場に、召還された冬の嵐がレッサーデモン達の足を、腕を凍り付かせる。踏み出した一歩が空で止まる。その隙を、シキミは逃さなかった。
「妖精達よ、飛び立て、そしてかの者達に突撃せよ!」
 シキミが妖精達に突撃を告げる。は、と少女の吐く息が揺れる。全員を回復できたわけではない。皆、倒れる程ではないが傷は負っている。それでもまだ動ける。戦える。
 必ず、巨人達を無事に届けると決めたのだ。
 シキミの手から飛び立った妖精達が翼を広げたデモン達を貫き、ラウムに活力の針を刺す。
「今ですわ」
「うん!」
 たん、と踏込んだラウムは近づいて来たデモン達を一気に吹き飛ばした。殿を勤める少年の瞳に、きつく握られた巨人の拳が一度だけ見えた。
(「故郷を壊される怖さは、俺も知ってる」)
 思い出す度首裏のハーフエルフの印が疼いて逃げ出したくなる。でも、夜は、俺とずっと一緒だった。
「夜があるから、朝が来るんだ」
 言い聞かせるのはない。唯一つ知り得たことをラウムは言う。剣戟と、熱と、黒炎の舞う戦場で。
「俺は逃げない! お前らの夜にも抗い続けてやるからな! バーカ!」
「な、てめぇ……!」
 叫び、襲いかかって来たデモン人間を、ラウムは吹き飛ばす。舞い上がる妖精たちによってレッサーデモンの大半が暴走した部隊の動きが鈍る。
「今だよ」
「あぁ」
 アイリの声を合図に、エンドブレイカー達は巨人達と共に、撤退する。マヒや制約を受けたデモン部隊の攻撃など、届く筈も無かった。

●約束
 乾いた道を行く。撤退する道すがら近くの部隊に会う事は無かった。残る足跡を見ながら、既に撤退したのかもしれないとアイリは思った。
「ありがとうだよぉ」
 シャルムーンへの道すがら、ふいに足を止めると巨人達はそう言った。それは助けに来てくれた事への、言葉を尽くしてくれた事へのーーそして次を約束してくれたことへの感謝の言葉だった。
「次はガルシェンも、お前達も、みんな護るんだぞ」
 きつく武器を握り、巨人は言う。
 互いに交わした約束を胸に刻み、一行はシャルムーンを目指す。交わした約束を果たす、その日の為に。



マスター:秋月諒 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2014/10/17
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