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ガルシェン救援:明日への撤退戦

<オープニング>

「見渡す限り全て敵か。上等だ」
 大ナタのような大剣が迫るレッサーデモンを両断する。骸殻荒野ガルシェンへと押し寄せてきた不気味な難敵、デモン軍勢の猛攻を前にも巨人たちは闘志を捨ててはいなかった。
「ガスキン!」
「ぬぅっ!」
 仲間の声に巨人は駆けた。影を渡って浸透を試みたデモン人間を一閃。しかし数が多すぎる。少なくない人数が既に突破しているだろう。
 不毛な消耗戦。歴戦の賞金稼ぎたちは敗北の予感を感じていないわけではない。
 それでもなお、彼らは此処へと踏みとどまる
「ここは俺たちの都市だ。好きにはさせんぞ!」
 守るべき故郷の土を踏みしめ、巨人、ガスキンは仲間たちを鼓舞するように吠えた。

「マスターデモン・クトラの行方が分かったわ。彼は今、薔薇の痕にいる」
 ソードハープの魔曲使い・ヴィーナ(cn0017)は集まったエンドブレイカーたちに早速と語りだす。
 きっかけは此華咲夜若津姫の救出行からだ。彼女が取り戻してくれたバルムントの鍵の真の力は封印すべき相手の足取りを教えてくれた。
 彼が次にどのような一手を打ってくるのかはわからないが、向かうべき先は一つ。骸殻荒野ガルシェンだ。
「もう骸殻荒野ガルシェン周辺の状況はわからない……という話も聞こえてきてるわ。みんなにはガルシェンに向かって、そして巨人たちを助けてやってほしいの」
 既に戦闘に入っているようなら支援を、もし絶望的な状況なら巨人たちの救援、脱出を。彼らの力になってやってほしいとヴィーナは言う。
「劣勢として、巨人たちが簡単に故郷から下がってくれるとは思えないけど……なんとか説得してあげて。きっと、彼らはまた力になってくれると思うから」
 つらい事でも、明日へと生き延びればできることはあるはずだから。ヴィーナは遠くの巨人たちへと唄うようにいい、お願いねともう一度エンドブレイカーたちに頼んだ。


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参加者
氷の桜桔梗・アヤ(c03522)
ハルバードの猫・リーズル(c06801)
薔薇の牆・アナム(c06804)
ブラックラック・バラノラ(c13473)
餓狼・リュウ(c15878)
吉凶天現・ミソハ(c31436)
棍のスカイランナー・ラッシュ(c35589)
不死鳥の天剣騎士・レオンハルト(c35756)

<リプレイ>

●ガルシェン戦況
 骸殻荒野ガルシェンが霞んでいる。
 敵味方の激しい機動、アビリティの炎、そして戦う者たち。辿り着くのを待たず、ガルシェンの戦いが佳境を迎えていることを薔薇の牆・アナム(c06804)は察した。
「アヤ君、ミソハ君、急ぐよ。足元に気を付けてね」
 呼びかけた旅団の仲間たちの表情も硬い。
「とてもぉ強くて優しい巨人さん方……賞金稼ぎとしてのプライドもあると思いますぅ……なので引き際を分からないって事は無いと信じてますぅ」
 普段と変わらぬ調子に見える氷の桜桔梗・アヤ(c03522)にさえ、声色の底にはかつて共闘した戦友を憂う焦りがあった。
「見えましたよ! あまりよろしくはなさそうです」
 骸殻荒野を行くことしばし。隠し身を生かして先を行くハルバードの猫・リーズル(c06801)が合図をあげる。緊張がエンドブレイカーたちに走った

「見渡す限り全て敵か。上等だ」
 巨人が振るう大ナタのような大剣がレッサーデモンを両断する。骸殻荒野ガルシェンへと押し寄せてきた不気味なデモン軍勢を相手に、その一団はよく戦っていた。
「ガスキン!」
「ぬぅっ!」
 仲間の声に長の巨人が駆ける。影を渡って浸透を試みたデモン人間を一閃。しかし数が多すぎる。突破からの包囲……よぎる危機を払いのけたのは思わぬ支援だった。
「無事だな!? 助太刀する!」
「どこまでも足掻き続けようじゃないか!」
 側面を突こうとするデモン部隊に、棍のスカイランナー・ラッシュ(c35589)はブラックラック・バラノラ(c13473)の矢弾幕と共に突っ込んだ。降り注ぐ矢弾、自らの棍旋風の風切りに負けじと叫ぶ声が戦場を揺らす。
「こんな状況に……誰だ!?」
 好転を感じ取りつつも、ガスキンと呼ばれた巨人たちの長は警戒する。予想外の援軍だ、当然だろう。ゆえに餓狼・リュウ(c15878)は言葉より雄弁に意志を見せつけた。
「言いたい事は後! まずはコイツらを片づける!」
 飛び込みざま、早くも技を返してきたレッサーデモンの拳をひねり、投げ崩す。
「援護攻撃ぃ〜行きますよぉ」
「ご一緒いたします!」
 アヤの合図に、指南書を手にした吉凶天現・ミソハ(c31436)が並び立つ。花開く杖の蕾石から生まれる魔力体、召喚された星霊、閃光と神火が敵陣を焼く。
「……応!」
 そして巨人が駆けた。言葉はなく、信用があった。
「我は盾、我は剣、我は炎! 我は悪を滅するために目覚めし獅子! 我が名はレオンハルト――推して参る!」
 巨人との縁はあまりないが、彼らを見捨てない理由には十分。応えてくれた巨人たちに敬意を払うように名乗り上げた不死鳥の天剣騎士・レオンハルト(c35756)は、炎となって飛び込んでいく。
 沸き立つ戦場。だがそんな中にあってラッシュは顔に苦渋をにじませた。
「ガルシェン……アリッサムの時にしろ、今回にしろ……最終的に侵攻されるのを見る事しか出来ないのは、歯痒いな」
 ガスキンたちの危機は救うことができそうだが、それでも戦況はなお劣勢。賞金稼ぎたちが覚えたのと同じ負の予感を、彼もまた同じように封じて空を駆けた。
 今は、巨人達を助ける事に専念する。全てはそれからだ。

●共同戦線
 デモン人間とバラノラ。二人の射撃が交錯し、一人が倒れる。
 こちらは脇腹、デモン人間は眉間。漆黒の戦装束が期待通りの防御を示してくれたことに安堵し、倒れるデモン人間を背に彼は色揃いの弓を主戦場へと向けた。
「こちらは片づけたぜ。そっちは大丈夫か?」
「は、はいっ。微力ながら……」
 応えるミソハは巨人たちへ添いつき、癒しの舞を舞っていた。ここまで戦い続けてきたガスキンと仲間たちに、彼女の支援は大きな力を与えていく。
「ぬぅん!」
「お見事!」
 巨人の重量を乗せた大鉈がレッサーデモンを裂く。技を返そうとするレッサーデモンだが、間髪入れずにレオンハルトが追撃。フレイムソードの紅炎より放たれた光の剣が止めを刺した。
 即興ながら、巨人たちとの連携はうまくこなれてきた見ていいだろう。アナムは自分たちを認めてくれた大きな存在へと敬意を示し、ガスキンと手短に打ち合わせる。
「正面は抑え切れたな」
「なら、逆包囲にうつろうか」
 デモン人間の翼から降り注ぐ光線雨をガーディアンクリスタルが偏光する。地面にそれた光線が炸裂させる砂埃をかいくぐり、エンドブレイカーたちは一気に攻勢へ出た。
「クリンさん素敵な壁作っちゃってくださいねぇ♪」
 反応して動き出すレッサーデモンには、アヤの呼び出した星霊クリンが向かう。召喚主のようにのんびりと、しかし力強い白熊の腕が氷塊を叩きつけ進路を塞ぐ。
「今のうちです!」
「小癪なッ」
 突破せんとリーズルが放った気刃の嵐に、そうはさせじとデモン人間が邪剣を呼び出す。二つの刃は空中で激突し、激しく火花を散らした。
「これが、デモン人間」
「ふん、デモニスタか」
 瞬間的な空隙のなか、リーズルはデモン人間と目を合わせた。様々な外見をもつデモン人間だが、目の前の相手には人間の顔が残っていた。
 デモンの角と下半身をもったデモン人間の声には、軽蔑と嘲りの色があった。もしかしたら自分もあのような存在になっていたのだろうか。あの時、デモンの反乱に抗えなかったら……?
「ッ!」
 思考は戦況に阻まれた。横合いから放たれるレッサーデモンの邪炎に、リーズルは身を投げ出して直撃を避ける。防具越しに伝わる石礫の衝撃が、意識を戦闘へと引き戻す。
「拳で語れる相手じゃあないな」
 掌底の勢いで気を叩きこんだリュウがごちる。戦いに真意を得られる自分たちでも、伝わってくる感触は五感が捉えた以上にはならない。相容れない敵、そういうことか。
「ここは勝ちを譲ろう。だが、デモンの勝ちだ」
「だからと言って引く訳にもいかない! ボク達は誓ったんだ! 『いかなる悪にも屈しない』と!」
 追い詰められながらも笑う最後のデモン人間。己の不安を振り払うよう、レオンハルトは毅然と言い放つ。
「まぁ、慣れっこだよ」
「ここでも、助けきれないか……!」
 アナムの騎士槍がデモン人間を穿孔する。その倒れる影の向こうには既に新手。迫るデモンの影を忌々しく見やり、ラッシュは苦々しく棍を構えなおした。

●明日への決断
 ひとまずの勝利に息をつく暇もなく、デモンたちの攻勢は強化されて開始される。デモン人間、そしてレッサーデモン。
 規模は先ほどを上回り、エンドブレイカーにガスキンたちを加えた総力さえも圧倒して迫ってくる。
「まったくキリがないな……贅沢な戦い方しやがって」
 バラノラは不機嫌に吐き捨てる。質と量の暴力、まったくもって正攻法というのが尚タチが悪い。巨人たちと肩を並べ、ようやっと気心が知れてきたというのに負けが見えきっているとは!
「潮時、だな」
「遠き地からの友よ。助力、心より感謝する」
 巨人たちもわかっているはずだ。それでも彼らは各々武器を手に、破滅への恐れなどないかのように前線へと向かっていく。死を覚悟した男たちの背中にミソハは思わず声を上げて駆けだした。
「お、お待ちください!」
 勇んでレッサーデモンと切りあう巨人たちに追いつきながら、アナムもまた槍と共に言葉をふるう。
「何をしている。今ならまだ脱出できる……」
「待つんだ、僕たちだけでは駄目なんだ。下がるなら皆で、だ」
 際限のない敵と戦うより、戦力を温存することも必要だ。アナムの主張にガスキンは目を合わせず、しかし険しい口調で応じる。
「ならばなおさら、お前たちはひかねばならん。我にこれ以上、退く先などないゆえに……」
「ガルシェンはもちろん大事でしょう。しかし皆様が命を落とされて、ガルシェンだけが残っても意味は……!」
 ミソハは口添えし、迫るデモン人間を衝撃波で牽制する。わずかにガスキンが顔を向けた。
「ガルシェンが残る? それだけあれば十分!」
「貴方達の思いも分かります! ですが……命は投げ捨てるものではありません!」
 今にも飛び出していきそうなガスキンに、彼を踏み留めるようにレオンハルトは叫ぶ。
 こうしている間にも戦いは続く。説得のさなかにも、一人の巨人が敵中へと飲み込まれて消えていく。彼自身もまた、鎧より覗く下地には血糊が張り付き、若々しい声は疲労に荒げている。
「共に戦ってください。ガルシェンを奪還する時は必ず来ます。この状況を打破する為にも……貴方達の力も必要なんです!」
 回転を伴うデモンの爪が紅獅子の鎧に突き立てられる。衝撃に歯を食いしばり、肉体の限界を凌駕せんと力の限りに訴える。
「賞金稼ぎというのは、一度負けたら自暴自棄になる様な者の集まりか? 負けたら次に勝てばいい。奪われてしまったらまた奪い返せばいい。だが両方とも、生きていなければ成し遂げる事は出来ん」
 更に迫るレッサーデモンの爪を横から蹴り砕き、リュウはガスキンを強くにらむ。
「僕らの仲間がガルシェン住民の脱出のために向かっている。彼らを守る戦士だって必要だ」
「巨人さんなら、辺りの地理……詳しいと思いますからぁ……一緒に脱出しましょう?」
 アナム、アヤは静かに訴える。共に戦い続けると約束し、それを証明するようにエンドブレイカーたちは手を、武器を動かし続けた。
 レッサーデモンたちの放って来た鮮血の猟犬に、リーズルは自らの猟犬を向かわせて迎撃する。
「……この技やデモニックアルターを使い続けられたら、この集団の規模はさらに増すでしょうね」
 話している間にも敵の攻撃は増し、レッサーデモンたちも学習を続けている。この敵と戦うには何らかの作戦が必要だ。歯噛みするリーズルに、ガスキンも苦渋の表情で頷いた。


●決して諦めずに
 撤退を決めたといえ、ただで逃がしてくれるデモンたちではない。退けば追撃し、戦果を確定させるまでが戦。ゆえに引き際はもっともはげしく、厳しい戦いとなる。
「アナムさんっ!」
 膝をつくアナム、アヤが顔色を変えてオラトリオを呼ぶ。鮮血の猟犬が食らいついた小札張りの鎧は大きく削がれ、血があふれていた。
「大丈夫……助かったよ」
 頭を振って礼を言い、アナムは意識を集中する。どうすればこの危機を抜けられる?
「気持ちだが、右翼の包囲が薄い。あの方角は地形も頼れるはずだ」
「……よし、それでいこう」
 ガスキン隊の提案にしばし考え、彼は短く同意した。エンドブレイカーたちもまた、各々にうなづいて武器を構える。もはや手はこれしかない。
「ガスキン達を頼む。俺はもう少し遊んでいく」
「先ほど説教してくれた口でいうことか?」
「死ぬ気はない。ただ、俺は大馬鹿者だからな。ただ、戦うのを止められないだけだ」
 律儀な巨人の抗議を伊達に返し、リュウは竜の呼吸で踏み込んだ。彼の群竜士の技さえも、レッサーデモンたちはすでに学んできた。鍛え上げた掌が、蹴撃が立ちはだかる者たちに襲い掛かる。
「大馬鹿者は、お前たちだけじゃあないぞ!」
 棍を薙ぎ払い、振り回し、ラッシュもまた壁となる。デモニスタの炎が回転する棍を抜けて襲い、左右からの爪が傷跡を増やしてなお、彼は倒れず立ち続ける。
 既にミソハたちの癒しは限界、加速する余力も尽き果てた。だから彼は棍をふるい続ける。倒れる前に倒す、それができれば十分だ。
「真に故郷の事を想うのなら、故郷の未来の為にも生き残ってくれ……俺では復興の手伝いは出来ても、復興そのものは出来ないからな」
 死地へ向かおうとする巨人を押し留め、薙いだ棍がデモン人間の頭を叩き潰す。これで残りはレッサーデモンのみ。
 なおも群がる敵に閃光手榴弾を叩きつけると、バラノラは一気に殿を引きずり後退させた。
「一命を拾わされたね……感謝」
「みなさんもこちらにっ」
 アナムに肩を貸したアヤが先導し、星霊たちが哨戒した退路へとエンドブレイカーたちは進む。
「なんとか、逃げ切れそうですね……」
 力尽きたラッシュを助けて進むリーズルは離れていく主戦場にほっと息をついた。
「ですが、必ず帰ってきます。僕は、ここに」
 一句一句、区切るようにレオンハルトは決意を言う。倒れそうな体を奮い立たせ、己の力への不安を振り払うような様子の彼にガスキンはすっと腕を貸した。
「ああ、必ずだ」
 短く、重い一言。彼の後ろに立つ仲間たちは三名。辛い犠牲はあったが、上出来とみるべきか。
「そうですねぇ……以前お邪魔した際に良くして頂いたぁ、髭の巨人さんたちの事も気になりますぅ……今、どうしているかぁ……」
「きっと大丈夫だ。信じろ。友よ」
 ガルシェンの様子に目を伏せたアヤに、巨人の一人がぽつりという。それは彼自身が、自分に言い聞かせるようでもあった。



マスター:のずみりん 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2014/10/17
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