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ガルシェン救援:戦か死

<オープニング>

 荒野に黒い群れ。本当に、黒色の奴らだった。
 デモン人間と、レッサーデモンからなる大軍勢である。
 戦端はすでに開かれている。
 飛び交う黒の翼を相手にしているのは、10mの体躯を持つ巨人。ガルシェンの賞金稼ぎたちだった。
「おい、『長髪蟷螂腕』よ。ちっこい奴らの多さときたら。全部で幾ら貰えるべぇな」
「さあなぁ、『大口熊足』さ。剣持ちのコウモリみたいなのは、死ぬと消えちまうから、ちゃんと数えとけぇ」
 『大口熊足』と『長髪蟷螂腕』のふたりは、レッサーデモンを、カマキリ腕で斬りつけ、熊足で踏んづけている。他にふたりの巨人がいて、デモン人間たちが投げつけてくる刃物を、亀とエビの殻でかわしているのだが。
「なぁ、ちょっとばかし、数が多ぐねぇが?」
「んだ。賞金どころでねぇ。けんどよぉ、通しちまったら、オラたちの街が……」

「『此華咲夜若津姫』の救出に参加した皆、ご苦労だった。私も、まさかあの短時間で決着がつくとは思ってなかったぞ。地獄兵にやられた傷も、このとおり回復している」
 槍のデモニスタ・エリカ(cn0107)は、仲間の集まった酒場で、マントをひらひらさせながら、あちこち見せた。
「さて、此華咲夜若津姫が、『バルムントの鍵』の真の力を取り戻してくれたことで、『マスターデモン・クトラ』の動きがつかめた。シャルムーン動乱により敗退した後、『薔薇の痕』でデモンの大軍勢を組織すると、再びシャルムーンへと進軍を開始している。
 クトラの目的は、前回と同様『エンドブレイカーの精鋭を、シャルムーンに孤立させる』ことのようだ。今回は、敗残のマスカレイドを使った策略では無く、デモンの大軍勢での力押しで攻め込んでくるというわけだな」
 エリカは、略地図を描いた紙を広げる。
「デモン軍に対し、シャルムーンで迎撃する戦いとなる。しかし、薔薇の痕からシャルムーンの途上に都市国家『ガルシェン』がある。ガルシェンの賞金稼ぎたちは、都市を守るためにデモンと戦うだろうが、多勢に無勢で勝利は難しい。ガルシェンに籠城した場合でも、最悪、全滅してしまうかもしれぬ。そこで……」
 紙から顔を上げて、エリカは見回した。
「エンドブレイカー有志の皆に『デモンと戦っている巨人達の救援』と『シャルムーンに撤退するように説得』することを頼みたい。ガルシェン周辺の状況は不明だが、デモン人間およびレッサーデモンを主力とした部隊と、ガルシェンの賞金稼ぎとかが争っている所を救援可能なはずだ」
 幾人かが、参加の意思を表明する。
「ガルシェンの巨人たちを、マスターデモン侵攻の犠牲にはできない。よろしく頼む」


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参加者
世界を駆け巡る萬屋・ジョバンニ(c00896)
宵月ノ銀狼・ルナ(c01436)
天暗星・フェイ(c03258)
セイヴァーセイバー・ラーズエル(c04538)
赤案山子の・ジュリア(c17193)
ミアの白馬の迷子様・キッツ(c22959)
停滞のライブラリ・ステイシア(c33132)
切り開く一振りの刃・ルギット(c36026)

<リプレイ>


 骸殻荒野ガルシェンに到着したエンドブレイカーのうち16人は、賞金稼ぎの纏め役『長長髭の鯨髭』との正式な会談をもつことになった。
「おすそわけですー」
「これはお土産だ。若干少ねぇが勘弁な? 事態が事態なんでな」
 停滞のライブラリ・ステイシア(c33132)は大きめのサンドイッチを差し出し、世界を駆け巡る萬屋・ジョバンニ(c00896)は背負った風呂敷包みいっぱいの食べ物を見せる。『鯨髭』は、口元をほころばせた。鯨の髭に似たものがのぞく。
 座をもうけてもらった。巨人の椅子机は大きすぎるから、酒場の床に敷物をして座る。いつかのように。鯨髭と面識のある者も数人いる。
 そのひとり、宵月ノ銀狼・ルナ(c01436)がきりだした。
「アリッサムをも凌ぐ強大な敵が侵攻してきているんだよ」
 説得が上手くいかなければ、最悪ガルシェンは全滅だ。ともかく事実を積み上げていこう。
 ルナに呼応して、アルカにソウスケが続く。
「過去のアリッサム軍の事は記憶に新しいかと思います。だけど、わたくしたちには切り札があります」
「あなた方に仰ぎたい協力は、撤退だ! 一時でいい、シャルムーンへ避難してくれないか!」
 鯨髭が少し首をかしげているのを、見上げる視線が包囲する。
「避難と言われてものう……。ガルシェンのみんな全部でか?」
 天暗星・フェイ(c03258)が頷く。
「はい。我々はシャルムーンに戦力を集結させ、反転攻勢をかけるべく準備をしています。あなた方にも参加していただきたい。その後にガルシェンを奪還することと、復興に全力をささげることを約束する……この首にかけて」
 懐剣を抜き放ち床に突き立てた。
 信無くば、あるいは仕損じたなら即刻はねよ、細い目に眉根を寄せて訴えかける。鯨髭は、かわらず、穏やかに告げた。
「……お前さん方を疑ったりはできんのぅ」
「シャルムーンに来てくれるんだねっ! やったー♪ たくさんの人たちを守るよ、ぼくも約束するっ♪」
 『四足鉄鎧』……メイガス越しに、ミアの白馬の迷子様・キッツ(c22959)のはずんだ声が響く。
 誓いの誠実さを感じ取ってくれたのだろう。鯨髭も笑ってくれる。
 だがすぐに、眉を八の字に下げた。
「街の連中の大半はともかく、街を守るといって集まっている血の気の多いのが100人はいるのじゃ。奴らを説得する事はできんかもしれん」
「巨人の皆さんは確かに強いですから、退くのも嫌がるでしょうね……」
 ステイシアは視線を落とし、大きなサンドイッチに目をとめる。
「ご飯を食べる暇も無いくらい延々と押し寄せてくる敵と戦い続けると判ったら、キツイと考えてくれるのではありませんか?」
 エウリードが同調した。
「あちらさんの厄介なところは強さじゃねェ、数なんだ。どんな猛者でも英傑でも、蟻や蝗の群れにゃちっと分が悪いってモンだ。十や二十蹴散らしても腹の足しにも自慢にもならねェ」
 ふむ、と鯨髭は答えを返す。
「いっしょに説得してくれて、上手くいったのなら、脱出の提案をお受けしようかの」
「その条件でのむ。死にに行く者たちを引き留めに来たのだからね……」
 赤案山子の・ジュリア(c17193)は、無表情なまま、確固たる意志で請け負った。
「前線で戦う賞金稼ぎの皆さんのもとにも、私達の仲間が説得に向かっています。戦況が苦しくなれば皆さんも退き返してくるはずです」
 ゼフィリスの補足に、セイヴァーセイバー・ラーズエル(c04538)も継いだ。
「『勝てる』のかどうかの話じゃない。『守れる』のかどうかって話なんだから」
 守るのはここでなく退いてから。退いても逃げるのではなく、後に立ち向かうため。
 理解を得られたと喜んだラーズエルに、鯨髭の様子が気にとまる。
「……まだ、何かありそうだね?」
「実は……。『死んでもガルシェンを離れない』という偏屈な老人もけっこうおって。そっちの説得も大変そうじゃなと思ってのぅ」
 ジークとノイズは視線をかわし、言葉を絞り出す。
「……故郷を一時的でも放棄すると決断するのは、酷く重い……」
「だけどガルシェンは、軍勢の進行上の行きがかりで巻き込まれて、いるの。建築物自体にはおそらく手を出されない、と思う」
 パルもうんうん、と頷く。
「大切な場所は取り戻せる。大切な隣人の笑顔を失わないように。どうかあきらめないでほしい」
 鯨髭は、少し考えこんでいた。切り開く一振りの刃・ルギット(c36026)は、大剣の鞘を握って立ち上がり、なおもまっすぐ見上げ、ゆっくりと話しかけた。
「今をおいて無事に逃げられる時はないんだ。俺はあんたたちのための道をつくる。命懸けで」
 握りしめたところから、早くも炎が噴きだしそうな熱意。
 やがて鯨髭の、膝を打つ音がした。
「……わかったとも。まぁ、老人たちは、最終的には力づくでもなんとかなると思うがの」
「飯が足りなかったか。一晩で用意したいところだが、そんな時間もねぇ。……なんか餌で釣るようなマネになっちまい申し訳ねぇな」
 肩をすごませたジョバンニを見て、鯨髭は豪快に笑う。
「なにはさておいてもごはんを持ってきてくれる、お前さん方は気に入っておるよ」
 では、と鯨髭と共に、エンドブレイカーたちも座を後にする。まずは徹底抗戦の意思も固く集まった100人ほどの巨人から説得だ。
「血気盛んな奴らじゃからの。多分、一番大変だと思うのぅ」


 ガルシェンの入り口を訪れたところ、なんと100人の巨人たちはシャルムーン行きを承諾していた。エンドブレイカーの仲間たちが、説得してくれていたのだ。
 『鯨髭』は、ホッとして、長い髭をしゅしゅっとなでる。では、すぐに居住区にもどろう。頑固者がまだまだたくさんいる。
 平行して、『鯨髭』の指示を受けた巨人たちが、ガルシェンの人々に脱出の決定をふれまわる。
 街をあげての準備が始まり、その喧騒のなか、おとずれた頑固者たちの家でも、準備は進んでいた。
 『鯨髭』は、髭をつかんで喜んだ。こちらも、仲間のエンドブレイカーが説得してまわってくれていたのだ。
 ルナも力が抜けかかったところを持ち直し。
「手分けして、避難を手伝おう。刻限になったら再度集まって、今度は脱出のさいの護衛にまわることにする」
 8人ずつに班を分け、巨人の街を駆ける。
「ステイシアさん、ボクが迷子にならないよう、気をつけておいて貰えますか?」
 キッツは、説得に全力で、方向音痴ご用達のチェイスを準備できなかった。
「ええ、いいですよ。それにしても、巨人さんたちは、いざまとまって行動するときになると、てきぱきとしてますねぇ」
 ステイシアは、アリッサム追撃の際に協力してもらったときのことを思い出した。実際、動き始めると整然としており、巨人の避難民たちは、長大な列をなして、荒野に出る。
 前線から撤退してきた賞金稼ぎたちと、エンドブレイカーも合流し、護衛についた。
 ルナたちの班は、しんがりを務めるべく、最後に出発する。


「やはり、追いついてきたな。みんな!」
 ルギットは、叫ぶと同時に大剣を引き抜いた。
 デモン軍のなかでも、脚の速そうな、というか飛行にひいでたレッサーデモンが近づいてくる。
「え? どこから来たの?」
 キッツは、荒野で方向が混乱し、メイガスの脚をガチャガチャ鳴らしてひとまわりしている。
 巨人たちの列を背にできるように、ルナは敵のほうを向き直り、脚を止めた。エンジェリックウイングを広げる。
 白かった羽は虹のように刻々と色を変え、はばたきと共にレッサーデモンの一体に吹きかかる。黒い翼は、天地を失って、きりもみ状態になりながら、渇いた地面へと激突する。
 ミラージュフェザーの幻覚に惑わされたのだ。悪魔のみる悪夢は想像しがたいが。
 レッサーデモンたちは本隊と離れて突出している。偵察でもない。残る数は10体ほど。そのままこちらに戦闘をしかけるつもりだ。
「デモン軍にも、血気盛んなのがいるようだね」
「オラだちもまぜろや」
 護衛についている若い巨人ふたりが、爪とハンマーを持ち出した。
 羽が残した虹を感知して、キッツも敵を見据える。ここでひと掃いするべきだろう。
「よっし、いっしょに相手しよっ! 怪我しないでね!」
 キッツは巨人たちの配置に気くばりしながら、メイガスの片手を上げた。頭上に光が凝縮されはじめる。
 レーサーデモンは高度をとる。
 散開したあと、ふたりの若い巨人の周囲を飛び回り、纏わりついた。
「あだだだ!」
「ごいづめ、すばしっごい」
 コウモリの翼と同じく、鉤爪がついていて、巨人の胸から顔から、切り裂いている。
「あわわ、痛そうー!」
 ステイシアは、魔道書をひらいて片手をかざす。ラーズエルは、すでにアイスレイピアを頭上に掲げていた。
「まだまだ出発したばっかりなんだから……」
「この程度の敵、駆除に手間などかからない」
 ジュリアも、ナイフを上段に構える。
 荒野に立つ4人の、力をこめた4つの片手が、ほぼ同時に振り下ろされる。
 キッツの上にあった光は、いくつもの剣を形作って、降り注ぐ。ステイシアが呼び出したのは、もっと幅のある光だ。雲の切れ目から差し込む陽光のような。
 陽のささないところは冬である。ラーズエルの召喚に応じて、吹雪が舞う。もっと暗い、日陰になった部分からは、ジュリアと同じようにナイフを握った腕のシルエットが、何本も湧き立つ。
「キッツ、コンバイーン♪」
 巨人のうち、爪を持っているほうの頭をかすめて、光の剣がレッサーデモンの1体に突き刺さった。1本入ると、続けて数本が飛来して、光は爆発のように散った。
「うごお。すんげー」
 とっさに顔を庇いながら、爪の巨人は感心する。爆破されたレッサーデモンが落ちていくと、他の敵は避けるように巨人から距離をとった。
「はーい、ごくろーさまー♪」
 そこはステイシアの領域だ。陽光照らすなどと生易しい場所ではない。光と熱が絶えず照射され、入り込んだ黒い魔物は焼かれて炭も残らない。
「あら、『世界革命』で起こす光は、こんなもんじゃないんですよね?」
 照射はあちこちに領域を広げ、冬の領域も間をぬって広がる。日と雪が相殺されもしまいが、ラーズエルは重ならないように上手くやる。
 仲間の戦いを信頼してのことだ。
「闇で覆うよりも先に、凍えてもらうよ」
 コウモリの手はつまり翼で、凍結していくにつれ、また数体のデモンが高度を落とす。
「じゃあ、影潜みも自分たちで味わってもらうかな。ね、ジュリアさん」
「……いっしょにしないでよ。いいけど」
 影の腕たちは、地を這うように伸びてから浮き上がり、墜落してきたデモンをめいめいに捉えて斬り裂いた。
 操っているのはジュリアひとりだが、影同士でコンビネーションが成立しているかのような、卓越したさばき。
 敵を低い位置に押し込めている。そして、合図も目配せもないまま、強襲のチャンスを作ったのだとルギットには判った。
 握った柄が熱い。敵中に駆け込むと、大剣を振り下ろす。勢い余って、地面を割った。
「命がけには、まだ遠いッ!」
 背中に体重をのせて、武器を持ち上げる。刃の上にコウモリの影が折り重なる。
 斬り上げ抜くと、剣すじにそって火柱が起こり、地面の割れ目を前方へと伸ばしながら、通り道のレッサーデモンも燃やしつくした。
「怪我は、平気か?」
「ああ、ちっとばがしカッコ悪いがな」
 ハンマーの巨人を振り仰ぐと、額の血を拭っている。ルギットは、大剣を上段に戻し、敵を見た。
「焦ることはない。あんた達の出番は、すぐに来るから。シャルムーンで存分に暴れてくれ」
 焼けたり凍えたり、そして斬られたりしたレッサーデモンたちは、あきらめたようで距離をとってきていた。
 巨人のふたりが、ようやく息をつくのが聞こえる。
 ジョバンニとフェイが、ダメ押しに追いすがった。
 鉤爪で応じてきた一体を、ジョバンニのオーラが戦旗の形をとり、叩き潰す。
「こんなもんじゃ済ませねぇぜッ! 良く見てみろ!!」
 オーラの旗は、ビクトリーフラッグ。
「勝つのは、俺たちだぁ!!」
 逆立った髪が、さらに天を突く勢いで、感情の乗った打撃が繰り出される。
 その脇から、そっと静かに仕込み杖を抜くフェイ。
 水平に放った居合い斬りに、コウモリ羽だけが空中に張り付けられた、ようだった。
 その1体が落されるとレッサーデモンは転進して速度を出し、遠ざかっていく。
「ジョバンニさん、もう十分だ」
「おっと、そうだった。戻らねぇとな」
 去る影を荒野に残し、8人のエンドブレイカーとふたりの巨人は再び、避難民の列の後ろにつく。


「見えてきた……っ!」
 サクヤの声が避難民の列を伝播してくる。巨人たちの、安堵と不安もいっしょに運びながら。
 まもなく到着できる。情報を耳にしたジュリアは、それでも表情を崩さなかった。
 ここまでで、無駄な人死には出ていない。旅程を重ねるうちに、障害を排除する連携も、厚くなってきた。
 迫る大軍の気配を背中に感じながらも振り返らず、砂地を着実に踏みしめる。
 シャルムーンへの平原を望めるようになる最後の丘陵を越え、いまでは見慣れた鋭く巨大な五本指が、遥か先に。
 ラーズエルは、砂月楼閣に民間人たちを委ねられると実感し、はじめて息をついた。
「今、ここで、借りを返してみせるよ」
 デモン軍の奴らを、必ず撃退する。ガルシェンもエンドブレイカーも、みんなで戦う。
 砂からそびえる爪の光景に、フェイは細い目を少し開いた。瞳に映るもの、そして映ったもの。
 返してもらった懐剣をそっと抱く。
 巨人たちにも返すと誓った、その身なればこそ。



マスター:大丁 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2014/10/17
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