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巨人、ガルシェン、約束の奪還戦

<オープニング>

 ソードハープの魔曲使い・ヴィーナ(cn0017)が皆を呼んだ場所は、珍しく酒場ではなかった。
「遠くまで悪いわねぇ。ちょっとお連れさんの都合でね……」
 その理由は彼女の元へやってきた巨大な人影にある。
「お前たちの言葉で、荒髭獣皮、ガスキンという。面倒をかけるな、遠き地の友よ」
 大鉈のような大剣を担いだ巨人は大らかな声で挨拶をする。
 ここはシャルムーンの都市の外れ。デモンの攻撃で骸殻荒野ガルシェンより脱出した巨人たちだが、彼らに人間の町は小さすぎるのだ。
「マスターデモンの封印は完了したけれど……撤退したガルシェンにはデモン人間やレッサーデモンが残っているの。今回お願いしたいのは、それの掃討よ」
 デモン人間の能力は『影への潜伏』、そしてその特性を生かした暗殺だ。それは賞金稼ぎたちならば十分に対応できるかもしれないが、それ以外の住民には大きな脅威となる。
「侵入者に居座り続けられるのも、癪だしな」
 にやり、というには豪快すぎる笑みでガスキンは言う。そういった危険な不法居住者どもを叩きだし、ガルシェンの安全を確保する。それが今回の依頼だ。

 ヴィーナの話す掃討作戦は大きく二段階からなる。
「最初は大きく『表』をお掃除。荒髭獣皮、ガスキンと一緒にデモンたちを蹴散らして、余裕があるなら次にみんなで巨人たちでは入れない狭い場所を探ってほしいの」
 ガルシェンの多くは巨人たちが暮らしやすい大きな作りとなっているが、古い地域には巨人たちが小さかった頃……彼らも昔は小さかったらしく、その時代の人間向きの居住区があり、巨人だけでは掃討しきれないのだという。
「『表』では存分に暴れさせてもらう。その後は、頼むぞ」
 巨人は軽々と武器を構えてみせる。闘志を燃えす巨体は戦いにおいても頼りになるはずだ。

「……この街外れには、彼以外にも巨人たちが野宿しているわ。みんな、人の都市に入れなくて窮屈な暮らしを続けてるの」
 ヴィーナは街外れを振り返り言う。
 今の彼らは故郷に戻れぬ流浪の民だ。なにより人の街で暮らすには巨人たちは大きすぎる。彼らには骸殻荒野ガルシェンが必要なのだ。
「彼らが故郷に戻れるよう、力を貸してあげて。お願いね?」


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参加者
氷の桜桔梗・アヤ(c03522)
薔薇の牆・アナム(c06804)
餓狼・リュウ(c15878)
燈し羽・リシフィア(c16309)
魔法鎧の半身・サリー(c34219)
黒曜の騎士・レム(c34647)
青空を見上げるスカイランナー・ラッシュ(c35589)
不死鳥の天剣騎士・レオンハルト(c35756)

<リプレイ>

●約束の帰還
 久方ぶり、あるいは初めて訪れる骸殻荒野ガルシェンの街並みは酷くほこりっぽく感じられた。
「デモンどもも掃除は億劫だったようだな」
「そのぶんも掃除の時間だ。きれいさっぱりといきましょうかね」
 青空を見上げるスカイランナー・ラッシュ(c35589)のなんとはない呟きに、餓狼・リュウ(c15878)も全くだと腕を回す。そして、隣を進む山のような巨体の同志も。
「家に帰れば、掃除か。約束だったな」
 荒髭獣皮……ガスキンは大きな目を懐かしそうに細めた。デモンの強襲に放棄され、荒らされた故郷。それでも戻ってこれた喜びは、彼を見る者たちにも容易に感じられた。
「ちゃんと帰れるようにお手伝いしますぅ〜。ドンドンお掃除、いきますよぉ?」
「約束、だからね」
 笑いかける氷の桜桔梗・アヤ(c03522)と薔薇の牆・アナム(c06804)に豪快な笑顔で答える巨人。彼らの脱出を助けたエンドブレイカーたちは、仲間と共に約束を果たすべく駆けつけていた。
 不死鳥の天剣騎士・レオンハルト(c35756)と、その師を自認する黒曜の騎士・レム(c34647)もその一人。
「大切な私の弟子が頑張っているのだから、私も頑張らないとね。今日が初対面だけど……ガスキン、協力してデモンを倒そうじゃないの」
「是非もない」
 巨人はにやりと笑い、担いだ得物を下ろした。エンドブレイカーたちも各々に構えを取る。
「レッサーデモンが八、デモン人間も恐らく近くに」
 前を警戒する燈し羽・リシフィア(c16309)の合図だ。探索から戻ってくる星霊バルカンを追うように、宵闇の色を纏った有翼の怪物が飛び出してくる。
 メイガスの風防越しにそれを見る魔法鎧の半身・サリー(c34219)は、しばし目を閉じ、淡々と半身たる知識の鎧を武装させた。
「封印なった今となっては、もはや「完全なる夜」も望むべくもなく彷徨うしか無いのは、哀れだけど……ガルシェンを根城にする企みは、潰します」
 デモニスタ、デモンを宿すものとして同情はなくもない。しかしその行いを許すわけにはいかない。
『今いるデモン達は、ここで倒したら門の向こう側じゃない、としたら何処に行くんだろうか?』
 ふと思うが、答えは出るはずもない。かざした魔鍵が呼び出す炎が先頭のレッサーデモンを明々と焼いた。

●更なる深部へ
「さて、デモン人間達は何処から攻めて来るのかしらね……貴方の無事は私が確保しておくわ」
「信じよう、小さくも大きい友よ」
 レムが踏み出すガスキンの脇を固め、迎撃の構えを取る。ちょうどレオンハルトと共に左右を守る構えだ。心得たとばかり、ガスキンは遠慮なく大剣をふるう。
「我が名はレオンハルト――推して参る!」
 歩幅の差を跳躍で詰め、レオンハルトは突っ込んでくるレッサーデモンに熾炎の一打を叩きこむ。跳ね飛ばされながら、即座に酷似した黒炎をまとうレッサーデモン。だがそこを更なる焔が焼き払う。
「紡ぎ荒れる炎よ」
 リシフィアの操る神火の嵐、此華咲夜若津姫の加護による浄化の炎は一気にレッサーデモンを追い詰め、同時に困惑させた。
「模倣できないようですね、この力は」
 再びデモニスタの黒炎を放ってくるデモンの動きに、レオンハルトは直感的に意味を感づいた。これらの技は正しくエンドブレイカーだけの力ということか。
「ならば、今のうちか!」
 得心したとラッシュもまた切り札を切った。
 スカイランナーの力、極限の加速が彼の見る風景を静止させる。
「完全な掃討を不可能だろうが……今回で可能な限り数を減らす」
 目前のデモンを棍で掃撃。跳躍。後衛のデモンを打ち上げ連打。飛ばされたデモンが宙に舞う。
「貴様等が不当に奪った巨人たちの故郷を……返して貰うぞ」
 黒炎を払い落し、着地。そして時は動き出す。
「あ、あらぁ〜っ?」
 アヤが驚きに気抜けた声を上げる。
 自分を狙ったレッサーデモンが地に叩きつけられ、前に立つデモンたちもことごとく殴り飛ばされている。
 これがスカイランナーの得た世界、時間を突き破る加速。
「くそ、何なのだこれは!?」
「君たちの野望は終わりってことだよ」
 流れは完全にエンドブレイカーたちにあった。異形の腕と角をもったデモン人間が増援と共に横路を奇襲してくるが、冷静にサリーは魔鍵を影へと投げる。
 拘束された敵に容赦なくリュウ、更にガスキンが踏み込んだ。
「焦りが出たね。いくら影に隠れていても、殺気が溢れていては意味がないな」
「我が故郷、返してもらうぞ!」
 リュウが打ち上げたところを一刀両断。竜撃の連打と一太刀に、あまりにあっけなくデモン人間は絶命した。
「後は……」
「お任せですぅ〜。ドンドンお掃除行きますよぉ?」
 言葉を待たず、アヤの雪蕾の杖が花開いて魔力体に呼びかける。全方位からの一斉射撃が残されたレッサーデモンを言葉通り、掃討した。

「さてと、この地区はこれで全てかな」
「情報の通り、撃破が十。増援の気配もない……大丈夫そうだな」
 油断なく周囲を見据えるアナムにレムが答える。幼く見えて、そのやり取りは戦場慣れした騎士のそれだ。頼もしく感じつつ、アナムは年下の同志に頷きで同意する。
「しかし、ガルシェンを拠点にして、デモンたちは何を望む?」
「それだ。コイツらって何でガルシェンを襲撃したんだろうな」
 そしてもう一人、リシフィアもまた少女離れした落ち着きでつぶやいた。同じ疑問を抱いていたリュウも応え、何か心当たりはないかとガスキンの方を向く。
 巨人は考え込み、首を振った。
「わからん。昔のことは」
「どの道、古い居住区は掃討しないといけない。何かあるなら、その時にわかるんじゃないかな?」
 結局、サリーの提案が一行の総意となった。ガスキンたち巨人の入れない場所、デモンたちが隠れるにはうってつけの地区なのだ。
「後は任せて貰えるか?」
「頼んだ」
 リュウの呼びかけに短く一言。狭く古い階層に進むエンドブレイカーたちを見送り、巨人はどっしりと地面に腰を下ろした。


●深部の戦い
 掲げた明かりが深部の闇を照らす。
 此処までに比べ、エンドブレイカーたちは目に見えて探索の速度を落としていった。死角を庇いあい、影を照らし、わずかな痕跡も見逃すまいと目を凝らす。
「巨人達が探索出来ない場所もあるし、まだ何かあるのかねココには」
 照明に浮かび上がる居住区の遺跡にリュウは呟く。それとも、単純に人間サイズのこの場所が暮らしやすいというだけなのか?
「気にはなるけど……ひとまずは仕事に集中しましょう。彼の助力も、もうないのだし」
「そうだな、戻ってから聞いてみても……と、戻ってきたか。次は右だ」
 話しながら地図を仕上げるラッシュが皆を静止する。人間サイズの居住区は相当な昔に放棄されたらしく、整備もされず入り組んで不親切だ。
 地面にチョークを引き、地図にも記号を書き込む。いざとなればすぐ戻れるように
「うん、順調だ。過去の反省が生きたね」
 周囲を警戒するアナムは出来上がった地図を見て満足げに頷く。
 そして彼は愛用の槍を掲げた。
「昔、ステルスを使うマスカレイドのゲリラ戦術に苦労したんだよ……こんな風な、さ」
 展開された水晶の結界が大鎌の真空刃を弾く。
 砕けた光の先には、それを憎々しげに見つめるデモン人間……今度は女性だろうか? ボディスーツのようなデモンの皮膚と尻尾の異形がいた。
「っとに……油断も隙もありゃしない!」
「あいにくと、人の背中を守るのは結構得意なんだ」
 奇襲が失敗に終わったデモン人間は合図とばかり指を鳴らす。女デモン人間の背後から飛び出してくるレッサーデモンとエンドブレイカー、機動はほぼ同時。
「アヤ、回復をお願い……舞え、神罰の焔よ」
「わかりましたぁ。オラトリオさんお願いしますぅ〜」
 神火と黒炎、二種の炎が交錯する。被害はほぼ互角、しかしアヤが喚ぶ星霊オラトリオの癒しのぶん、エンドブレイカーがリードを取った。
「忌々しいね、小娘が!」
「させませんよ!」
 女デモン人間の二撃目は怨念を込めた声で投げられる大鎌。呼応するのは真紅の甲冑を輝かせたレオンハルト。手にしたフレイムソードの炎が性質を変え、呪いの大鎌を弾きアヤを癒す。
「その肉体、炎なり!」
 声をあげ癒しを飛ばしながらレムの様子を見れば。彼女もレッサーデモンとの戦いに突入している。今の自分はどう見えているのか気になったが、猛攻はそんな余裕を与えてくれない。
「また力をつけたようだけど、デカブツさえなけりゃあねぇ!」
 掃撃じみたレッサーデモンの切り払いが戦場を押し込む。忌々しいが、ガスキンの手数とカバーが減ったのは目に見えて苦しい。
 衝撃の余波でよろめくメイガスを立て直し、サリーは目の前の女デモン人間を睨み返した。
「デモニスタかい。けど、そんな半端な身体じゃ……」
「その通り、ボクもデモンを宿す者。けれど、このアビリティは君たちには解るまい」
 会話は一方的に打ち切る。集中。メイガスごと、夜に融けるように肉体が変身する。
「一緒に行くよ、ボクのメイガスとジェイク」
 サリーもまた、切り札を切った。変身したのは完全なる『夜(デモン)』、あらゆるものを飲み込むデモニスタの力。

●もう一度、取り戻すために
 サニーが到来させた真なる夜がレッサーデモンたちを飲み込んでいく。大きく開かれた戦線にレムとレオンハルトが息をあわせて突っ込んだ。
「太陽の光を得た私の一撃で、貴方を断つ!」
「続きます! 光剣よ!」
 デモンの反撃を封じる光の剣の雨に続き、レムの漆黒のトンファーが内なる輝きを放って闇を焼く。闇から光への連続攻撃にレッサーデモンたちがたじろぎ、デモン人間が舌打ちする。
「次から次へと、どれだけだい!?」
「お前たちこそ、ガルシェンを拠点にして何を望む? 世界革命? それとも、下らない嗜虐心を満たすか?」
 神火を揺らすリシフィアの詰問に女デモン人間は顔をゆがめた。
「ふんっ、答えたら見逃すってのかい?」
「いいえ。ここから出て行ってもらうのは既定事項」
 容赦なき神火大嵐舞。女デモン人間の鎌が振り払うも、そのとばっちりだけでレッサーデモンたちは酷く焼かれていく。勝機を逃さず、サリーは紅蓮の門を開いて止めを刺す。
「さて、残りは君だけだ。逃げ道は潰している、と先に言わせてもらうよ」
 残るレッサーデモンを貫いたアナムは、回転の勢いが残る槍の穂先をデモン人間に向けた。
「癪だねぇ……まったく!」
 槍を弾き飛ばし、鎌が舞う。更にデモンの翼を展開しての光線雨の連続攻撃。余力を振り絞った猛攻にエンドブレイカーたちは散開を余儀なくされる。
 突っ込んでくるデモン人間に進路を塞ぐのは一人。
「もうアンタらの『望んだ世界』は来ない。せめてもの情けだ。介錯してやるよ」
 戻ってくる鎌を飛び込み前転でかわし、リュウはデモン人間の懐をとった。掌を打ち付け、発勁。
「かはっ!」
 鎧貫きの要領で放たれた気がデモン人間を強打する。吹き飛びから着地するまでを待たず、ラッシュの加速が距離を詰めた。静止した時の世界での縦掃撃。
「これで終わりだ」
 ラッシュの声と共にデモン人間が床へ叩きつけられた。しばしの緊迫の後、立ち上がる敵がいないことを確認して一行は誰からとなく息をついた。

 居住区より戻ってきた一行へ、ガスキンは顔をほころばせて手を振った。
「終わったようだな。無事か」
「えぇ、なんとか……以前戦った際、ボクの言葉を覚えてます?」
 兜に顔を伏せ、ふと尋ねるレオンハルト。ガスキンは頷き、大きな握りこぶしから親指を上に向けた。
「ああ。お前は帰ってきた。今日ここに、そして今も再び」
 巨人なりの洒落っ気を聞かせた返事に、ラッシュも不器用ながら自然な笑みが浮かんでいた。
「ではまた戻ってこないとな。今度は街の皆と、復興の手伝いにだ」
「みなさん早く戻ってきて、前の様に楽しい街になるといいですねぇ」
 マイペースな微笑みでアヤも言う。
「きっと、すぐだ」
 ガスキンの笑いはまさに夜が明けたように晴れ晴れとしたものだった。



マスター:のずみりん 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2014/11/12
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  • 怖すぎ1 
冒険結果:成功!
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