ステータス画面

大魔女の目覚め:赤き血潮の流れるままに

<オープニング>


 秋風が吹くランスブルグ、人口700人ほどの集落、ジミニーは小高い丘のすぐ近くにあった。
 そこそこの人口のしゅらくは外敵からの脅威に備え、塀で外周が囲まれている。
 活気づいた市場では色々な品物が売られ、住民たちがそれぞれに買い物を楽しんでいる。
 その集落に不穏な影が迫っていた。
 全長約7メートル。巨獣に匹敵するその体は赤い鱗で覆われ、長い首の先についた口にはぎざぎざとした歯が覗く。
 音もなく現れた赤い竜は誰にも気づかれることなく、空気に溶け込むようにその姿を消していた。

 ドン!!
 という音に住民たちがそちらを見れば、見慣れた丘が赤く染まる。
「!?」
「な……なんだあれは!?」
 人々のざわめきの間にもその赤は丘をどんどん飲み込み、集落へと迫りくる。
 そして再びドン、という音が辺りに響く。
 今度は先ほどよりも大きい音で丘の天辺が爆発を起こした。
 丘からは赤がどんどん溢れ、そして先ほどの爆発で高く高く上げられた赤い弾が集落へと降り注ぐ。
「に、逃げろおおぉぉぉぉー!!」
「きゃああああああ!!」
 住民たちが反応し始めた頃、突如として火山となった丘の活動も活発化し始める。
 我先にと集落の出口へと急ぐ住民たちで主要な道路は大混乱となり、そこへ火山弾が降り注ぐ。
 ぐしゃりと言う音と共に隣人からの血しぶきが身を染め悲鳴を上げる人、親とはぐれて泣き叫ぶ子供、壊れた家の下敷きとなりもがく人……。
 塀で集落を取り囲んでいたことで逃げ道が制限され、人々のパニックは加速していた。
 そんな彼らをあざ笑うかのようにその災害は集落を飲み込む……。


「……大魔女スリーピング・ビューティーが目を覚ましたらしい」
 少しばかり強張った表情でそう告げたのはフレイムソードの天誓騎士・ティート(cn0199)だ。
 彼の後ろには世界の瞳の代理者たるジョナ一世が静かに目を伏せている。
 ティートは自身を落ち着けるように一呼吸置くと、集まっているエンドブレイカーたちに視線を向ける。
「ついに、か……」
 エンドブレイカーの一人がぽつりとそう呟くとティートは頷き説明を続ける。
「その大魔女が目覚めたことにより、人間を絶滅の一歩手前まで追い込んだイマージュマスカレイド達も復活したんだ」
「!!」
 スリーピング・ビューティー直属のイマージュマスカレイド、『災害竜』。
 その名の通り災害を起こすマスカレイドで、1体で都市国家を滅ぼすほどの力を持っている。
 滅びの大地に数多く存在した都市国家は、この『災害竜』によって滅ぼされたのだ。
「俺が見たのジミニーという集落の災害だ」
 小高い丘の近くにあるその集落は人口700人ほどでかなりの広さがある。
 災害の規模は一瞬で都市国家を滅ぼせるほどの規模ではないが、この集落を滅ぼせば次の集落、そしてまた次……。
 放置すればするほど多くの集落が滅んでいくだろう。
「で……その災害竜なんだが、災害の状態では姿を見ることができないんだ」
「じゃあどうすれば……?」
「災害の邪魔……単に言うと、人命救助だな」
 災害竜の目的は人類を滅亡させること。
 なので人命救助を行えばそれを邪魔だと感じた災害竜が姿を露わし、邪魔者を直接攻撃して来るのだ。
「姿を現せば災害は中断されるので、市民は安全に避難できる」
「じゃあ、心置きなく戦えるね」
「だが、災害竜は災害が起こっている範囲ならどこでも出現できる……つまり、確実に先手を取られてしまうので、覚悟しておいてくれ」
 そして災害救助などで戦力が分散されていた場合はより弱い方を確実に殺しにかかってくるので常に全員で行動して欲しいとティートは言う。
「不用意な別行動は各個撃破されるだけでなく、命の危険があることを念頭においてくれ」
 ジミニーは長方形の形で長い辺……東西に出入口がありその出入口を繋ぐように主要の大通りが通っている。
 南北は塀に覆われており、出入口は皆無。
 丘は北に位置しているので溶岩が集落の中へ入り込むのを多少食い止めることはできるだろうが、それも少しの間。
 細かい道路は入り組んでいて地元の者しかよくわからないらしいが、今現在は火山弾の影響でどこもぐっちゃぐちゃ。
 主要の大通りは人が溢れかえり、パニック状態に陥っている状態だ。
「災害竜はフレイムスワローやイラプション、フェニックスダイブに似たアビリティを使用するらしい」
 配下は居ないが、その力は並みのマスカレイド以上。
 今まで以上に気を引き締めてかからなければならないだろう。
 ティートがそこまで説明し終えた所で、ジョナ一世が静かに口を開く。
「……今まで以上に、命の危険が伴うものになる依頼だ」
 ジョナ一世は伏せていた目を上げ、エンドブレイカーたちをまっすぐに見つめた。
「お前たちだけが頼りだ。我が民をどうか助けて欲しい」


マスターからのコメントを見る
参加者
茜染む斧鉞・ジーク(c03342)
レディバガール・シャラーレフ(c04126)
ガードナー・ソシエゴ(c14053)
ルナウィアートル・ステラ(c19796)
往にし方の柘榴・エリーザベト(c20451)
朱陽ノ戦姫・レイ(c29148)
ビルドバーニング・リーナ(c32966)
不死鳥の天剣騎士・レオンハルト(c35756)

<リプレイ>


 エンドブレイカーたちがジミニーの東問へ到着したのは、災害が始まって間もなくのことだった。
 緩やかな丘の上からあふれ出る溶岩に、集落へと降り注ぐ火炎弾。
 集落の東西からは我先に逃げ出そうとする人間で溢れ、押したり押されりの混乱が始まっていた。

「皆さん! 私たちはエンドブレイカーです! どうか落ち着いてください!」
 混乱の中にルナウィアートル・ステラ(c19796)の凛とした声が響けば、ジミニーの住人達の瞳に希望が宿る。
「エンドブレイカーだ!」
「来てくださったんですね!」
「もちろん! 落ち着いて、冷静に避難して!」
 ビルドバーニング・リーナ(c32966)が笑顔で答えれば先頭を切って逃げ出していた住人達は徐々に落ち着きを取り戻し、冷静に、だが迅速に避難を開始し始めた。
 出口での混乱が避けられれば自分で動ける住民たちは多く避難できるようになる。
 後は何かしらの理由で動けなくなっている人々だ。
 混雑の中集落の中に入り込んだ茜染む斧鉞・ジーク(c03342)はさっそく泣いている子供を発見し、大丈夫だと励ますとそ近くの女性へと声をかける。
「すまない、この子も一緒に避難させてくれ」
 女性はこくりと頷くと、泣いている子供を抱きかかえ再び外へ向かって歩き出す。
「怪我人や子等、侭ならぬ者を見かけたら、どうか手を貸してやって欲しい!」
 見送りながら叫んだ言葉はどれくらい住民たちの届いたかはわからない。だが、できることをするだけだ。
 エンドブレイカーたちは避難していく住民たちに絶えず声をかけ、そして動けなくなっている住民を助けながら西口へと移動していた。
「大丈夫ですか? 後は私たちエンドブレイカーが救助を行いますので、怪我をしている方と共に避難をお願いしますわ」
 往にし方の柘榴・エリーザベト(c20451)が救助活動をしていた自警団に声をかけると、彼らは怪我をしている住民を抱えあげる。
「すまない、助かる」
「さ、お早く……」
 怪我人を安全な場所まで運んでもらうのも目的ではあるのだが、本当の目的はこれから戦う災害竜に標的にされないようにするため。
 救助をしている人を弱い順番に倒して行くとなれば、真っ先に狙われるのはここの住人となるだろう。
 父親を助けようとしている母子を見つけた不死鳥の天剣騎士・レオンハルト(c35756)は、父親の足を挟んでいる瓦礫へと手を伸ばす。
「すぐ除けますから、安心してください」
「ありがとうございます……!」
 レオンハルトが瓦礫を持ち上げている間にガードナー・ソシエゴ(c14053)が父親を引っ張り出そうとした所で、近くで別の住人の救助に当たっていたレディバガール・シャラーレフ(c04126)の声が響いた。
「上、気を付けるさ!」
「火山弾か……!」
 父親を見捨てて母親と子供を助けるべきか。
 そう考えている間にも火山弾は彼らへ向かって真っすぐに落ちてくる。
 母親が子供を護る様に抱きしめた瞬間、火炎弾と彼らの間に朱陽ノ戦姫・レイ(c29148)が入り込んだ。
 愛用の野太刀、Deus ex machina -Dawn of the Valkyrieが折れないよう細心の注意を払いながら火炎弾の軌道を逸らせば、それは民家と民家の間に落ち事なきを得る。
 誰にも被害が出ていないことを確認したレイは野太刀を一度振るい、住民たちに向かって宣言した。
「こんな悲劇、私達エンドブレイカーがぶっ壊してあげるわ!」
 彼女の行動と言葉はその場に居た住民たちの胸に響き、大いに希望を与えたのだった。


 西口の住人たちにもエンドブレイカーの存在が伝わり、住民たちの間には冷静さが戻りつつあった。
 一度ランスブルグを救ってくれたエンドブレイカーと言う存在は、住民たちの中に希望の象徴として残っていたのだろう。
 ある程度避難の流れが出来上がった所で、彼らは逃げ遅れている人々の救助を行う。
 瓦礫で塞がれている道を通れるようにした所で、火山弾が収まり丘から流れ出していた溶岩もピタリと止まる。
 それと同時にエンドブレイカーたちの間を火炎が激しく走り抜けた。
「……っ!」
「くっ……!」
 炎の放射が収まると同時に現れたのは巨獣並みの大きさの災害竜。
 ずぅん、という重い音が辺りに響き、鮮やかな赤い鱗が輝いた。
「おおおおおおお!!」
 叫び声と共に真っ先に駆け出したのはジーク。
 生やした鋭い牙は鱗を貫き竜の体力を奪うと同時にその体に刻印を刻んでいく。
 ジークに続いて走るのは原初の獣へと進化したシャラーレフ。
 その腕の一振りは鱗を剥ぎ取り、そして彼女に力を与える。
「皆さん! アレはボク達が倒します! どうか逃げ延びて下さい!」
 恐怖で動けなくなってしまっている住人に声をかけながら、不死鳥の炎をその身に纏ったレオンハルトが災害竜へと突っ込んでいく。
 ランスブルグ……この地は自分の故郷。亡き父、そして母との思い出が詰まった土地。
(「それをこんな竜などに―」)
 壊されて堪るものか。
「−幻影如きが図に乗るな!」
 渾身の力を込めた突撃に災害竜の足がよろめいた。
 よろめく竜をステラは見据える。
(「ランスブルクは私の実家……」)
 今この竜を止めなければこの集落だけではなく周りの村や町、そしてステラの家も遠からずその被害に合うだろう。
(「新しくできた大切な家族を護るために……」)
 温かい紫の眼差しを想いながら、ステラは身体に力を溜めた。
 別々の光を纏ったレイとリーナがそれぞれの武器を手に竜へと斬り込む。
「さぁ、ここからが正念場。一気に行くわよ!」
「神音(カノン)!」
 太陽の光を内包した野太刀が首を、正義の光を纏った重爆雷斬刃が胴体をそれぞれ薙げば、彼女たちの後ろからソシエゴの生み出した烈風とエリーザベトの放った影の槍が飛んでいく。
 烈風が傷ついた鱗を剥ぎ影が胸へと突き刺されば、災害竜は痛みに咆哮を上げた。


 ―オオオオオ……―。
 災害竜の声が辺りに響く。
 戦闘開始と同時にじわじわとエンドブレイカーたちが移動した先は集落の中央付近。
 住民たちの話と東西を歩いた結果、市が開けるほどの広さの中央が戦闘には適していると判断したのだ。
 そして今日、災害に襲われた市は農産物が散乱し、火山弾が降り注いだ屋台はぐしゃぐしゃに崩れて所々に血だまりが出来ている。
 移動が完了したと判断したジークは立ち止まると災害竜へと目を向けた。
(「ランスブルグは郷里……」)
 そして、自分が捨てた地でもある。
(「けれど喪いたくはない、故に」)
「……絶対に守る」
 ジークの額に開いた第三の目が災害竜を睨み付けた。
 この場の惨状にシャラーレフは思わず唇を噛みしめる。
 火炎弾に押しつぶされているのは買い物の人か、それとも商店の人だったのか。
 呼吸の止まった体からは未だに血が流れ続け、救えなかった命をまざまざと見せつけられる。
「……竜も、魔女も、絶対に、ブッ潰してみせるさ」
 口の中に広がった血の味をシャラーレフは決意と共に飲み干し、巨大化した手を竜の首目がけて伸ばした。
 シャラーレフの手が竜の動きを封じている間に、レオンハルトが愛用のフレイムソード……熾炎で竜の右手の爪を2本弾き飛ばせば、合わせるように動いていたレイが同じように左手の爪を切り落とす。
 そこへ竜の悪心を焼き尽くす光を纏ったリーナのアックスソードが振り下ろされれば、ステラは己の分身たるデモンと共に愛用のナイフ……日影を振るった。
「駆けろ! 疾風ッ!!」
 ソシエゴの背で金色の輝くエンジェリックウイング……ティルウイングから生み出された烈風が竜の体にぶち当たる。
(「大魔女が目覚めようとやることは変わらない……この理不尽な結末と災害竜を今ここで打ち砕くだけッ!」)
 例え自身が倒れることになろうとも、仲間を信じ戦い抜く。
 そうソシエゴが考えている頃、エリーザベトも同じことを思っていた。
 ランスブルグで思う所は多々あるが、
(「散れども咲けども、天命として受け入れて」)
 1人でも多くの民、そして仲間を救えるように。
 竜の攻撃に膝をついたレオンハルトへ向け、英雄をたたえる歌をエリーザベトは歌う。
 集落の外にまで聞こえるよう高らかに。

 炎を纏った竜がシャラーレフの身体を蹂躙していく。
 ブラックアウトしかけた意識をエリーザベトの歌がどうにか繋ぎ止め、ソシエゴから渡された黄金の林檎が震える足に力をもたらす。
「林檎よ、生命を繋げ!!」
 2人の回復に感謝しつつ、シャラーレフは体に炎を纏わせる。
 それは竜とは違う癒しの炎。
「炎にはこんな使い方もあるのさ。覚えておくといいのさ」
 シャラーレフがしっかりと自分の足で立ち上がったのを確認したレオンハルトは武器を握り直し、災害竜へと視線を戻す。
 エンドブレイカーたちはそれぞれに浅くない傷はあるものの早めに災害竜の動きを制限していたことが功を奏し、誰一人として欠ける事なくこの局面まで辿りつけていた。
 それでも災害竜の攻撃は重く、回復に手を抜ける状態ではない。
 傷の数と深さ、そして動きから言って災害竜の体力もそろそろ限界が近いだろう。
 ならばやることは一つ。
「終焉、覆すまで抗ってやるよ!」
 声と共にジークの額の第三の瞳が輝く。
「合わせましょう!」
「これで終わらせるわ!」
「いくよー!」
 身もだえしている竜へレオンハルトとレイ、そしてリーナがタイミングを合わせて武器を振るう。
 レオンハルトが竜の両手を弾き飛ばした所へレイが滑り込み足を掬えば、リーナが真っ直ぐにアックスソードの刃を胸へと突き刺した。
 災害竜の動きがピタリと止まるとその体はさらさらと崩れ落ち、空気に溶けた。


 火傷が治り切らないままの手でネクタイを緩めたソシエゴは緊張を解き息をつく。
「……何とか終わったな」
 エンドブレイカーたちの怪我もそうだが、周りを見渡せば災害竜の爪痕がそこかしこに残ったまま。
 途中まで流れて来ていた溶岩は消えたものの、火炎弾は家々を瓦礫と化し生活ができない状態になっていた。
 道を塞いでいる瓦礫も退かさなければ、行き来すらままならない。
「まだ助けを待っている人がいるかもしれないさ」
「そうね」
 シャラーレフの言葉にレイも頷き、彼らは自分たちの傷の手当てもそこそこに再び救助に向かう。
 助けられる命があるのなら最後まで諦めたくない。
 助けられなかった人たちの分まで生きて欲しい。
 災害が去った集落に再び活気が戻る日を祈りながら、エンドブレイカーたちは救助を再開したのだった。



マスター:りん 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2014/11/21
  • 得票数:
  • カッコいい6 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。