ステータス画面

領主館突入:骸崩し

<オープニング>

●切り込み部隊
 くるりと辺りを見回してから、爪のデモニスタ・プリマは同じテーブルに着くエンドブレイカー達に話しかけた。
「例の事件の黒幕が大きく動き始めるみたいデスネ」
 少女の言う『例の事件』とは、マスカレイド化した巡察役人達や過去大量発生した騎士アンデッドのことである。『黒幕』はそれらの事件を起こした張本人、領主マスカレイド。
 自分の手駒として利用していた近隣領主の青年ピエールに正体がバレてしまったことを知った黒幕は、紅華絢爛・セリ(c03885)や銀雷閃・ツルギ(c08167)の予想通り『配下のマスカレイド軍勢を呼び集めて、戦力の集結を行って反転攻勢』の準備を始めたようだ。
 配下の多くは墓からそのまま動き出したようなアンデッドやアンデッドマスカレイドで、
「既に領主館を埋め尽くすくらい、イッパイいるのデスって!」
 その数の多さを、プリマは両腕を目一杯広げて表現する。
「デモ、コノ軍勢を率いる予定だった『騎士』達はアナタ方が倒してくれマシタから、今のところ、アンデッド達が上手に作戦行動を取れてないのが救いカシラ♪」
 ミンナすごいデス、と語尾を弾ませるプリマだが、領主側が統制を取れずに混乱しているのも今の内だけだろう。
「急いで何とかする必要がありマスネ」
 対応が遅れれば大変な被害が出かねない。
 聞けば、この状況に対して付近の領主達も動き出しているという。
 もふ毛求めて・プレノア(c03487)の提案通りに、事情を知るピエールとマスカレイド城主の令嬢とが付近の領主への根回しを行ったことで、杖のデモニスタ・ギラ(c10826)が考えていた『ピエールを長とした領主討伐隊が組織』されたのだ。
「心強い味方、デスネ♪」
 まさに、悪夢に咲く・リリーエ(c10739)が予期していた『死人騎士団VSアクスへイム領主連合』といったところだ。
 更に咲謳うアイスバーグ・ノシュアト(c02822)の尽力もあり、エンドブレイカー達もピエールが雇った傭兵という立場で領主館へ戦いに赴くことが可能になっている。
「張り切って、突入戦の先陣デス!」
 エンドブレイカー達の後ろにはアクスヘイム領主連合が控えているため戦力的には勝利は確実だと思われるが、マスカレイドだけは可能な限りエンドブレイカーの手で討伐する必要がある。
 先陣はもちろん危険な役目だが、この戦いを避けて通るわけにはいかない。
「エット、領主館の中枢には、領主の他にも通常とは違う仮面のマスカレイドがいるって情報もあるみたいデスネ」
 それは静寂凍夜・レミ(c07864)の懸念。
「用心していきマショウネ」
 自身にも言い聞かせるようにひとつ頷き、少女は戦況の説明を始めた。

●屍だらけ
「今回ひとつのチームで対応するのは、数体のアンデッドマスカレイドと十体前後のアンデッドの群れデス」
 騎士アンデッドマスカレイドのような強敵はいないが、通常のアンデッドマスカレイドも決して弱くはない上に如何せん数が多い。
「戦闘後、充分に戦力が残っているようなら連戦もできるかもしれマセンけれど……」
 侮ってかかると痛い目を見ることになるだろう。
 アンデッドマスカレイドさえ撃破すれば、残りのアンデッドは完全な烏合の衆になる。そうなれば後から来るアクスヘイム領主連合に処理を任せることが可能だ。
「デスから、アタシ達はマスカレイドを倒したら撤退、の流れデスネ」
 油断せずに行動したほうが良い、とプリマは帽子の奥の瞳に真剣な色を宿した。
「アタシ達が担当するのは、四体のアンデッドマスカレイドと十二体のアンデッドになりマスネ」
 ちょっと数が多いのでと少女はメモに不器用な絵を描き始める。
「アンデッドは殴る蹴るだけの単純な攻撃みたいデスが、アンデッドマスカレイド達は全員何かしら武器を持ってマス」
 どくろ頭の棒人間の絵に、剣やナイフ、弓が描き足された。どれも粗末な雰囲気だ。
 外見特徴的には、ところどころ肉の削げ落ちた比較的新しそうな死体、らしい。身に纏う布には共通の黒い布が使われているというから、もしかしたら彼らは同じ村出身の遺体だったりするのかもしれない。
 合計十六体との戦闘、……アンデッドマスカレイドさえ倒せばアンデッドは見逃しても大丈夫だとはいえ、簡単に片付く量ではなさそうだ。
「コノ激しい戦いを乗り切れば、キット、黒幕と決着をつけるコトができると思いマス」
 メモを同じ卓の面々に見えるように広げ、少女は一同に微笑む。
「大変デスけど、やってやりマショー!」
 ニッと八重歯を見せて笑うプリマの戦う決意はしっかりと固まっていた。


マスターからのコメントを見る
参加者
静かなる復讐者・イル(c00426)
流浪の求道者・シン(c00897)
マスター番長・ガナッシュ(c02203)
アイスレイピアの星霊術士・リーゼロッテ(c02239)
骸の山・ボルトマ(c03155)
易商・ビリー(c03336)
朽ちる杯の闇商人・ミュート(c03458)
アイスレイピアの星霊術士・ファイナ(c03790)
虹の橋の護り手・ナツミ(c04761)

NPC:爪のデモニスタ・プリマ(cn0016)

<リプレイ>

●突撃
 多くのエンドブレイカー達が傭兵として先陣を切る。
 至るところで巻き起こる戦闘、その範囲は広く、屋外にも関わらず腐敗した肉や土の放つ臭いが鼻を衝いた。生ける屍の唸り声と討伐隊の喊声。緊迫感は喧騒に高まり、張り詰める。
(「それにしても領主もまぁ、ようもこんなにアンデッドを集めたモンじゃのう」)
 なかなかお目にかかれない圧巻な様。先頭を行くマスター番長・ガナッシュ(c02203)の目に映る屍の数は、ざっと見渡した程度では凡その把握もできそうにないほど。
「こんなに兵力集めて、戦でもおっ始める気あるかネここの領主は」
 易商・ビリー(c03336)の口からも思わず呟きが漏れた。
 正直なところ、こんなおどろおどろしい場所に来るのはちょっと怖かったけれど、行動を共にする仲間や己の信念がアイスレイピアの星霊術士・リーゼロッテ(c02239)を後押しする。
 悪いことをしているのは許せないのだ。
 辿り着いた庭の一角、ゆらりと傾いだ粗末な剣が反射した。
 風に揺れる黒い衣服。腐肉を覆う白い仮面。聞いた特徴と合致する敵の姿に、一同は即座に陣を整え武器を構える。
「ともかく、とことんやっちゃうしかないわね♪」
 ニッと強気な笑みを浮かべ、虹の橋の護り手・ナツミ(c04761)は鋭い穂先をマスカレイドに向けた。
「殲滅するわ!」
 厄介な庭掃除はさっさと終わらせてしまうに限る。負けるわけにはいかない。
 包囲の形を取ろうとしているのであろう周囲から迫り来るアンデッドに骸の山・ボルトマ(c03155)の大剣が叩き込まれる。薙ぎ払われた屍は勢いに押され吹き飛び、気持ちばかりの雑魚壁に穴が開いた。
 アイスレイピアの星霊術士・ファイナ(c03790)の予想通り先にアンデッドが接敵したがそれも束の間。吹き飛ばされて壁を失い、腐った腕で得物を握るマスカレイドの姿があらわになった。
 目前にいる仮面の数は三体。多くの屍に邪魔されて確認しにくいが、その向こう側には残りの一体……弓のマスカレイドがいる。
 彼らアンデッドマスカレイドも、取り巻きの如きアンデッドも、敵とはいえ誰かに無理矢理蘇らされてしまったある種の犠牲者なのだろう。
「さ、道を開こうか」
 後続に繋げるため。黒幕がこの館にいるのなら、望まぬ目覚めを強いられた者のためにも。
 静かなる復讐者・イル(c00426)の放つ邪剣の群れが白い仮面に降り注いだ。

●殴り込み
 気持ちを落ち着かせるために軽く深呼吸をし、流浪の求道者・シン(c00897)は不気味に揺れる胴を目掛け初撃を打ち出した。型にはまらぬ動作から繰り出される打撃に敵は僅かに後退る。
 人数の多さから状況は混戦に近いが、整えた陣形のお陰ではぐれる者はなく。
「わしがマスター番長、ガナッシュ・ランカースじゃ! アンデッド共、かかって来い!!」
 最前衛でガナッシュが吼え、彼女の盾にぶち当たった剣の一体がよろめいた。
 屍の無機質な動きには『生』は感じられない。穴だらけの腕を振り上げて、光の灯らぬ目に命への執着だけを宿しエンドブレイカー達へにじり寄る。
 数が多かろうが邪魔立てはさせない、と端正な顔に謎めいた微笑を湛え、朽ちる杯の闇商人・ミュート(c03458)は星霊を喚ぶ。
「さあ焼き朽ちて貰いますよ……!」
 黒猫が撃ち放つ炎弾に肉が焦げ、一部が弾けた。マスカレイドの身を包む布が延焼の煙を上げる。
 彼らの纏う揃いの衣服は同じ村の者である証かもしれないと聞いた。醜く変色した身体に意思はなくとも、
「……生前の面影見えるアンデッドてのは、趣味が悪いもんネ」
 祈りと共に縫い上げられたのであろう独特の刺繍は手厚く葬られた名残だ。
 やりきれない思いに顔をしかめ、ビリーは使い込まれた鉄爪から鋭利な衝撃波を走らせた。兵力も戦も、蘇る死体も悲しみも、全部ありがたくもない話。
「ここは気合い入れて叩き潰させて貰うヨ」
 地面に刻んだ軌跡に肉片が散る。
 集中攻撃を受ける剣の一体だが力任せに振り回される斬撃は重く、受け流し切れず負ったシンの傷も決して浅くはなかった。別のマスカレイドからも今度はガナッシュへ剣が走り、細く血が流れる。癒しの協力をと援護を送る者も見られるが油断はできない。
 爪のデモニスタ・プリマ(cn0016)が召喚した邪剣に沿い、更に数多の剣や雷がマスカレイド達の頭上に落ちる。
 攻撃の手は止まない。低い姿勢で獣の腕を振り被り、潰す動きで叩き落す。乱暴に切り裂かれる腐った腹。
「死んでるヤツを殺すのは、今回が初めてだな」
 崩れ落ちる直前の屍が仮面越しに見たのは、射抜くような漆黒の瞳。
 俺に出来るのは『殺す』だけ、極楽か冥府か知らんが骸を本来の居場所へ戻す為だ。独りごちて、ボルトマは視線を次の標的へ移した。
 仲間を失ってもアンデッド達は感情らしいものを微塵も見せず生者に呻き続け、進路の邪魔だと跳ね飛ばされたアンデッドは血の出ない傷を負って動かなくなる。
 もう一体の剣マスカレイドにリーゼロッテのレイピアが閃く。突撃、刺し貫いた冷気の刃が仮面の身体を凍りつかせた。
「私だってがんばってるんだから……毎日の練習の成果を見せてあげる」
 パリパリと凍結する脚、氷の欠片が舞う。力強く鮮やかな緑色の瞳はしっかりと敵を見据え。同じく愛用のアイスレイピアを掲げたファイナの氷柱もマスカレイドの腹を貫き風穴を開けた。
 天高く跳ねた少女が巻き起こす風にファイナの涼しげなポニーテールが揺れる。砕けかけた仮面に、ナツミが勢い良く武器を突き立てた。
「アンデッド風情でいい気にならないでよね!」
 ザグッ、と小気味良い音を立てて土にまで刺さったスピアの先を払う。
 ぼろきれのようになった屍は棘(ソーン)の呪縛を解かれ静かに横たわる。残りのマスカレイドは二体だ。

●突破
 上空から落ちてくる矢は鋭く、衝撃は厄介だ。
 早急に標的をナイフ持ちに――といきたいところだったが、わらわらと前進を止めないアンデッド達に阻まれ満足に標的を移すことができない。
「先にこのアンデッドたちを蹴散らす必要があるわね」
 ファイナの氷の剣先が取り巻きを切り裂く。一掃を目的とした攻撃が雨のように降り注ぎ数体が地に縫い止められ、また他の数体は吹き飛ばされ弾けた。
 突破口を開きながら、エンドブレイカー達も力押しで道を作っていく。ダメージ蓄積は免れないが果敢に、確実に敵の数を減らし勝利へと進む。イルが展開する魔法円が優しくエンドブレイカー達を包み込んだ。
 感謝の言葉を述べ、リーゼロッテは柔らかく瞳を閉じる。
「フラン、悪い人たちをやっつけたいの! 力を貸してっ」
 祈りに似た仕草で指を組むリーゼロッテ。喚ばれた黒い星霊は蠢く破片を灰に帰し、褒めるように名を呼ぶ主人に火の灯る長い尾を揺らして嬉しそうに鳴いた。
 包囲状況の報告に後方から声を張り上げるビリーに応え、ナツミの盾が陣形の隙間を埋めた。分断されぬよう割り入って進行を阻む。
「当ててきたわね……倍返しにしてやるわ!」
 アンデッドの爪が襲ってこようと防御力の強化されたナツミには掠り傷だ。
 もこもことふわふわの星霊を喚び出せば力尽きた屍達はぐらりと昏倒し、
「アンデッドは如何なる夢を見るのか気になりますねぇ……」
 ミュートはくすりと微笑混じりに死屍累々の庭を眺める。腐敗した脳が描くのは生前の記憶か、どこまでも深い暗闇か。
 我流の槍でアンデッドを投げ飛ばして、シンは真剣な面持ちで一同に呼び掛ける。
「この戦いを終わらせればアクスヘイムに絡みつく棘を撃ち滅ぼす光が見える筈です」
 頷く仲間の心も、希望の光を信じている。アンデッドの幕を取り払われ前列に引っ張り出されたナイフ持ちにイルの連続弾が炸裂した。
 己から湧き立つ悪魔の力に複雑な表情を浮かべ、イルは立ちはだかるマスカレイドを見据える。悪を嫌っているのに、この闇の力に頼らねば悪事を食い止められない矛盾。
「……それでも、僕は」
 葛藤が生む憤りは攻撃の原動力に変換され敵に突き刺さる。
 怯んだ隙にガナッシュの突撃がお見舞いされ、ボルトマの腕は骨ごと肉を削いだ。スカスカになった黒い服と腕を引き摺るナイフマスカレイドを爪の疾走が磨り潰し仮面を砕いた。
 撃破確認と同時に一同の視線は弓マスカレイドを捉える。
「好き勝手撃ち込んでくれやがって」
 吐き捨てるように唇の端を歪め、ボルトマは獣の腕と鍛え上げられた大剣を構えた。
「一気に仕留めに行くぞ!」
 半数程を既に減らしたアンデッドの包囲網、壁を切り崩し、一気に弓マスカレイドへ詰め寄る。それでも総数は未だ五分五分、深い傷にはリーゼロッテのスピカが舞った。
「お願いシュテラ、みんなを助けて!」
 集中攻撃に仮面が潰えるのは時間の問題だろう。

●撤退
 総仕上げに残ったアンデッドを一掃し、ボルトマは地に伏す屍の海を見渡す。
「俺の未来も、この骸と変わらんだろう」
 自分が生きている限り骸の数は増え、いずれ朽ちれば自身も骸と成り果てる。死に急ぐつもりはないが英雄になるつもりもないボルトマは、故に名誉よりも先陣に志願した。
 悪魔への嫌悪は薄れずとも、悪を倒せた事実には変わりなく。掌を見つめるイルの眼差しも安堵に少し和らいだようだった。
 出来る限りマスカレイドを退治したい気持ちは誰もが抱くが、しかし、酷すぎる負傷に動けない者がいるわけではないが連戦に向かうには残力が心許ない。
 マスカレイドを全て倒し、アンデッドまで見事に片付けてみせた功績は大きいだろう。連合軍の兵士達も勇猛にアンデッドを掃討している。ここは素直に撤退したほうが良さそうだ。
「仕方が無いのう、仲間の方が大事じゃからな」
 ガナッシュの言葉に他の面々も同意する。
 協力者が印した撤退の道筋に従い、一同は戦場を後にした。
 闇に消えるミュートに続き駆ける道すがら、見上げた領主館は血生臭い現状に似合わず優雅に屋根高く。次のお招きがあるのなら、とビリーは思案した。
(「もちょとロマンチックな内容だと嬉しいあるがネ」)
 慣れてしまった異臭も耳をつんざく喚声も、迫り来る決戦を予想させるようだった。
(「さてどうなるやら」)

 中枢には何が待つのか。えもいわれぬ焦燥がエンドブレイカー達の胸に巣食う。
 不穏なカウントダウンにも聞こえる剣戟の音が、背後では響き渡っていた。



マスター:桐谷なつみ 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:9人
作成日:2010/07/22
  • 得票数:
  • カッコいい16 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。