<オープニング>
●この日限りの喜悦
少年の息が切れる頃を、男は待っていた。
相手は子供だ。どれだけ走って逃げようと、大人の足には及ばない。
それでも少年が今の今まで逃げ延びる事が出来たのは、男が手心を加えていたからだ。
「そりゃ群れなら端から殺ってくけどな。残念ながら、獲物は一匹だ」
その気になれば、一呼吸の内に終わってしまう。だから、少しの間泳がせてやった。
或いはそれで、獲物が増える事もあった。遊びを楽しむには、加減と見極めが必要だった。
ただ、残念ながら今回は、増やすには至らない。そう判断したまでの事だ。
「それとも何だ、坊主。一瞬で終わる方が良かったか?」
獲物は逃げ惑う内に、ついに疲れて倒れ込んでしまった。
こうなってしまえば、楽しみ方を変えた方が良い。
「――っ!!」
魔獣の腕が、少年の頬に迫る。
真綿で首を絞めるように、ゆっくりと時間を掛けて恐怖を与える。
それだけで大きな瞳が、面白いように小刻みに揺れ動く。
行き過ぎた恐怖に、涙が零れる暇もないが、口が震える様子に男は笑った。
「た、たす……け……」
助けなど、来るはずがない。
分かっている、子供ながらに感じている。
それでも、少年は一心に口を開いた。
「た、たすけ、て――おねえ、ちゃん」
命が尽きる、最期の瞬間まで。
●忘れられない記憶
それが、月下に翼・ノノヴァン(c35656)の視た終焉の末路。
昔自分がいた、ラッドシティの貧困街。
久しぶりにそこを訪れたのは、気持ちの整理をする為だった。
崩れた家や、生きるのに必死な住人。依然として苦しみが根付いたような荒れた街並み。
外の世界を知った今なら、以前の出来事を過去だと割り切り、諦めがつくと思っていた。
しかし、街に足を踏み入れても、気持ちが晴れる予感はなかった。
気付けば、此処に住む人達の行く末を案じている自分が、憂いた顔を覗かせるばかり。
その時に、ノノヴァンは曲がり角で一人の少年とぶつかった。
活発なその少年はとても明るくはつらつとして、瞳には希望が溢れていた。
そんな少年から、あのような終焉が視えるなど、誰ならば予期出来ただろう。
ただ、それ以上にノノヴァンの心を揺さぶるものが、少年の終焉には映っていたという。
エンディングに映っていた仮面の男に、ノノヴァンは見覚えがあった。
「見間違いでなければ、あれは、ボクの――」
弟の仇に、酷く似ていた。
爪を使う魔獣戦士で、背が高く屈強な体格。名前こそ知らなかったが、見間違いとは思えない。何より、男が仮面を纏っていたのであれば、エンドブレイカーとしても見逃す訳にはいかない。
幸い、終焉からは多くの情報が読み取れた。
少年が追い込まれたのは街外れの森の中、魔獣戦士――ヴィゴ一派の隠れ家の目の前だ。隠れ家が視認出来る範囲は茂みに覆われている為、身を潜めて敵を待つ事は何の問題もないだろう。
ただ、ヴィゴには仲間がいるのだが、その日奴ら全員が集まるのは、獲物を追いつめて命を奪うその時だけ。つまり、少年が追い込まれて足を止めた、その一度だけしかない。
「でも、ボクは……あの子にあんな怖い思いを、して欲しくない、よ」
その為には、誰かが少年より先に、奴らの獲物になる必要がある。
少年が奴らに目を付けられたのは日が沈み終わってすぐ。よって自分達が囮になるつもりなら、始まりは日が傾き始めた頃。森に近い路地でふらついていれば、ヴィゴから声を掛けてくるだろう。
一五歳以下に見える子供なら誰でも良い。獲物が足を止めるまで、絶対に手は出してこない筈だ。
遊んでいると思わせた儘、奴らを隠れ家前まで集める事は可能だろう。
「ヴィゴの他は、扇の錬金術士が一人と、槍の魔獣戦士が三人、ね」
敵は息の合う者同士。よってこちらも、充分に作戦を練って挑んだ方が得策だ。ノノヴァンはそこまで話終えると、改めて皆のいる方へと視線を向けた。
ノノヴァンと親しい者ならば、少女から僅かな動揺を感じ取れたかもしれない。
しかし、気丈に振る舞う彼女の姿からは、確かな決意も感じられた。
これはノノヴァンにとって、過去と現在が交差する。そんな戦いになるだろう。
それを感じてもなお、彼女はこうして仲間達の力を求めている。
彼女自身が、未来へと歩む為に。
そして、名前も知らない少年の命を、その心を恐怖から護る為に――。
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<リプレイ>
●リフレイン
街外れの森の中。それが夕暮れ時ともなれば、実に静かなものである。
紫煙の空が茜色に染まる様子を眺めながら、茂みに身を隠していたうるわしの帽子家・ジョージ(c06040)。羽根飾りの帽子を被り直す彼の手には、僅かに力が込められていた。
「子供を狙うなんて卑劣なっ。そして、それが遊びだなんて……」
終焉で識った仮面の悪行。その行為に憤りを感じているのは、マリヤ・ルア(c28515)を始め、共にこの地を訪れた仲間全てに共通する事だった。
「こういう悪を、見逃すわけにはいきません」
マスカレイドの所業であるなら尚の事。
それを差し引いたとしても、悪行を繰り返す者ならば、情けをかける余地は無い。瞳に静けさを携えた儘、しかし闇夜の灯火・オーディン(c34270)の言葉には、相手への怒りが込められている。
「悪党なら、気兼ねしなくて良いから、有り難い」
「ええ。遊びで人を殺す……言語道断ですね。しっかり倒して、この遊戯をおわらせましょう」
一方、意気込みを語る藍の剣鈴・レナス(c20602)の視線が向けられた先。
そこには、月下に翼・ノノヴァン(c35656)の姿があった。
少女の脳裏に浮かぶ記憶。
それは四年前、親のいない姉弟が卑劣な遊びに巻き込まれた時のもの。
命を摘み取られ、姉の腕の中で先へと旅立った弟の姿と、残された最期の言葉。
「……っ」
お姉ちゃん。
その言葉が、今この時にこだまする。
そんなノノヴァンの背をぽんと叩いたのは、銀目の踊り子・タージェ(c19470)。
思いつめているように感じた少女の瞳を見つめて、タージェは柔らかな笑みを浮かべた。
「だいじょぶ。みんながいるよ」
澱みなく紡がれた言葉に込められているのは、優しさと信頼。
何より、ひとりではないという事を伝えたいという思い。
あたたかな言葉にノノヴァンが視線を仲間達へ向けると、日輪の勇者・シフォン(c36108)は少女を思う穏やかな眼差しで、金の瞳へと頷いた。
「……どうか本懐を」
それは彼女にとって、必要な事である筈だから。
●繰り返す男、今に懸ける少女
エンドブレイカー達が終焉で見た、名も知らぬ少年。
彼の代わりに囮となる決意をしたのは、世界樹に踊る妖精・シル(c25139)だった。
帽子を深く被り、単身、森の中を必死に駆ける。
偶然を装い遭遇した仮面の男――ヴィゴは、出会い頭に見たシルの怯えた表情に気をよくしたのだろう。付かず離れず、獲物と定めた少女が狩り場に辿り着くまで、手を出しはしなかった。
「――あっ!」
やがて、森の小道を抜けた時、眼前に見えた小屋の近くでシルの足は止まった。
躓いた儘、立ち上がる事も出来ずに振り返った少女が見たのは、仮面の男であるヴィゴと、彼女を追い掛けていた四人の男達の姿。
「た、たすけてっ!!」
怯えて声を震わせる少女に、返されたのは慈悲無き嘲笑。
「助けてー、だってよ! ははは、んなコト言われてもな!」
「今日の獲物はお嬢ちゃんなんだよ、諦めて大人しく――」
しかし、男達は知らなかった。
助けを求める声が、戦いの始まりを告げる合図である事を。
五人のマスカレイド達がシルに近づこうとした瞬間、
「な、何だてめぇら!」
一斉に姿を現したエンドブレイカー達。
突然現れた彼らの姿に、気を緩めていた男達が咄嗟に対応できる筈も無い。三人の魔獣戦士達は頭であるヴィゴと、参謀役でもある錬金術士の方を見て戸惑うばかり。
「シル姉ちゃん!」
その隙に、タージェは先制の一撃を解き放った。
シルとマスカレイド達の間に一線を引くように飛翔し、身体をうねらせて錬金術士へと襲い掛かる鋼鉄の竜。森に響き渡る咆哮。それが消えるより早く、続いてシフォンが前進し、太刀を構えた。
「外道にかけるべき言葉はないよね」
ならば、思いを込めた一閃を。
刀身の輝きが頂点を極めた瞬間、シフォンが振り下ろした刃の前に、三人の絶叫が響く。
錬金術士を標的に、広範囲に及ぶ攻撃に混乱する配下達。
その姿に顔を歪めながらも、ヴィゴの爪先は尚もシルを狙っていた。
「させない! 行くわよフィアンナ!」
しかし、レナスがそれを許さない。
相棒たる妖精の名を呼び放ったのは、必殺と自負するまで昇華した騎士の技。
妖精と同化したレナス。その力が鮮やかな光を伴い、ヴィゴの身体を切り裂いてゆく。
「あなたの相手はこの私です、仲間に攻撃するなら私を倒してからにしなさい!」
凛と鳴る鈴の如し、研ぎ澄まされたレナスの覇気。
それに呼応するように、オーディンは内なる力を解放した。
標的は竜の咆哮から逃れた錬金術士。
茜に染まる戦場に、一足早い夜が訪れる。
「――闇に、呑まれよ」
完全なる夜と化したオーディン。闇は標的の姿を覆い、容赦なく生気を奪い取ってゆく。
参謀の自由を封じ、一斉に畳み掛けるエンドブレイカー達。
「怯むな、行け! 殺せ!」
しかし場の空気を一転させようと、ヴィゴが怒声と共に爪を振り切った。
百獣の爪が眼前に構えていたレナスを襲う。だが、そう簡単に一同の勢いは衰えない。
その象徴となったのは、他でもない彼女の一言だった。
「鬼ごっこ、楽しんでもらえたかな? ……それじゃ、今度は狩られてみよっか♪」
風翼を冠した杖を手に、碧き羽と共に戦場を翔けたシル。
そこに怯えた少女の面影はない。
満面の笑みと共にもたらされた一撃は、ヴィゴの近くにいた魔獣戦士を切り裂いた。
最も危険な囮役であった少女の勇姿を前に、言葉にはせずとも安堵する仲間達。
対し、集中攻撃を浴びる錬金術士が繰り出したのは大地の拳。
早々に付与された戒めを解き放った男だったが、その傷を癒す暇が与えられる事はなかった。
「残念ね、そうはさせないわ」
もはや、戒めを施すよりも踏破の方が容易い。
ルアの紫煙銃。その照準が錬金術士に定まった瞬間、疾走したのは魔力の奔流。
一撃に注ぎ込めるだけの力を、余さず銃口から放出してゆくルア。
そうして放たれた光を前にして、敵に回避する術などありはしない。
「っがああああ!」
響く絶叫、それでも辛うじて踏み留まった男へジョージは告げた。
「いったい、どれほどの悲しみと憎しみを生み出したと?」
意図を以って細められた赤い瞳。
彼が浮かべた薄い笑みは、不気味な程に穏やかだった。
紋章を描く優美な指先。その滑らかな所作も相まって、標的の背筋を振るわせる程に。
「ここに集まる人たちは、その一部でしかないのだよ」
ジョージが描いたイヴの紋章。
彼が言葉を紡ぎ終えると同時に、根源の力の前に錬金術士の仮面が砕け散った。
まずは一人、狙い通りに。
しかし、そこに喜びの声をあげる者はいなかった。
日頃の明るさは鳴りを潜め、漂うのは得も言われぬ緊迫感。
それも全ては、卑劣な行為に及んだ者への怒りを持っているからこそ。
そんな中、仲間達と共に戦いながら、ノノヴァンは自らの心に強く言い聞かせていた。
(「強く、強く。けど……」)
決して、憎しみで自分を見失わないように。
翼を羽ばたかせ、烈風を生み出す度に少女は思う。
大丈夫。自分には、この翼が招いた追い風を、受け止めてくれる仲間がいる。
こんなに、皆が共にいてくれるのだから。
●強くなりたかった
錬金術士が撃破された直後。
護る対象を失った魔獣戦士達はヴィゴと足並みを揃えるように、槍を手に前進した。
仲間が減った事で危機感を募らせたのか、怒涛の反撃がエンドブレイカー達に襲い掛かる。
仮面の男達の攻撃によって、次第に傷つく前衛陣。しかし、ノノヴァンの悲願を遂げさせる。その思いを持つが故に、ルアは前方で傷ついたレナスへと癒しの銃弾を撃ち放った。
「何がなんでも。その気持ちに応えてあげたいもの」
その為に、前を支える仲間を守り抜く。
力の衝突、続く攻防。互いを助け合う思いの連鎖。
そうして徐々に形勢は、エンドブレイカー達へと傾き始めた。
一方、敵の一撃を受けた直後、オーディンは敵を見据えて呟いた。
「……この痛みを、戦えない子供に、向けてきたんだ、ね」
どれだけ負傷を覚悟しても、生きた身体は痛みを覚え、傷口は悲鳴の代わりに脈を打つ。
幼い子供達が感じたのなら、涙を流すのは必然だ。
それを遊びと称して、これまで嘲笑ってきたのならば、
「……許さない」
眼前の敵に、何の情けがいるというのか。
月の力を宿した剣を手に、大地を強く踏みしめたオーディン。直後、光と共に展開された月の結界が、魔獣戦士達の力を封じてゆく。
「殺してきた子供に殺される気分は、どう?」
瞬間、言葉を返す事も出来ず、二つ目の仮面が崩れ落ちた。
「っと。その程度では僕を捉えられないよ」
同時に、魔獣戦士の槍をひらりと交わしたジョージ。見る者の目を奪う華麗な足捌きに翻弄され、力の行き場を失い僅かに体勢を崩した仮面の男。
直後、ジョージが音も無く着地したと同時に、タージェは神鏡を手に告げた。
「『遊び』で人殺しするなら、その逆の覚悟もあるんだよね?」
正常なる輝きを集めながらも、笑みにはあえて含みを込めて。
「ねぇ、今どんな気持ち、かな……?」
しかし、答えは無くとも一向に構わなない。
そう告げる代わりに、神鏡は力を放出した。奔る光の前に響いたのは仮面の砕ける音。
小気味良い音だと言わんばかりに、タージェは笑みを深めてみせた。
「……っ、ガキが! 調子に乗りやがって!」
残るはヴィゴともう一人。次々と崩れる仲間を前に、魔獣戦士の男が悔し紛れに罵声をあげた。だがその行為は、シフォンが踏み込むに充分な隙を生む事となるだけである。
瞳を閉じ、敵の殺気を捉えての直進。
その太刀筋に迷いはなく、曇りなき刃は仮面の男を切り捨てた。
「があっ! くっ、調子に乗んじゃねえって――っ!?」
そこに続いたのは、妖精と共に駆けていたレナス。狂いを知らない華麗な連携が、仮面の男達へと繰り出され、四つ目の仮面がその形を失った。
残るはヴィゴただ一人。
「とどめの一撃頼むわよノノヴァンさん!」
「今こそ決着を……!」
直後、レナスとシフォンは後方にいたノノヴァンへと振り返った。
(「どうか、憎しみに飲まれないように」)
(「でも、大丈夫だよね。……彼女は強い」)
二人の瞳と言葉には、少女を心配する思いと、それ以上の信頼が込められている。
「ノノヴァン姉ちゃん、後は任せたよ」
「残りはこいつだけだね。ノノヴァンさん存分に!」
その思いは後を託したタージェも、カレルヴォの紋章を描き少女を鼓舞するジョージも同じ。
そうして、名将の加護を得たノノヴァンは決意と共に、一人前方へと踏み出した。
「……何だ、お嬢ちゃんよぉ」
片や、窮地に陥りながらも、敵の行動の意図が掴めず眉を顰めるヴィゴ。
だがこの状況においても、男の悪癖は健在だった。
「っは、アレか。一人で俺に殺されてぇってか?」
「……っ!!」
瞬間、ノノヴァンは護刀を手に駆けた。
男の脚へ強烈な一打。怒りが込められているのは言うまでもない。
「――お前が憎くてボクは強くなりたかった」
弟を殺されたあの日から、恨みを晴らしたかった。
だから、強くなりたかった。
今の自分が、あの日の自分が望んだ程、強くなれたかは分からない。
それでも、この機会を得たのだから――。
「これでようやく、けじめがつく……!」
「うるせえ!」
しかし、怒声と共に振り切られた鋭い爪が、ノノヴァンに襲い掛かる。
あと一撃が遠く感じる。その時、シルは世界樹の花を創り出し、花の恵みを齎した。
「わたしの大切な義妹はやらせないよ?」
「シルお姉ちゃん……」
決して、一人で戦っているのではない。
薫風が吹き抜ける戦場。そこには仲間達の姿がある。
傷ついた時は背を支え、敵の退路を断ちながら、見守ってくれる人達がいる。だから、
「これで終わりです。――死ね」
最後の一撃は、敵の懐へ。
卑劣な男に告げるには相応の、冷酷な言葉と共に。
●方今の先、未来へ
土は土に、灰は灰に、塵は塵に。
刻印を刻んだ遺体は、棘と同じく無の元に。
オーディンの力でヴィゴ達の遺体が消える瞬間を、静かに見守るノノヴァン。
弟の姿も、憎み続けた仇の姿も無い森の片隅で、少女ははそっと身を屈め祈りを捧げた。
(「ノア……あなたはもう、いないけれど……」)
踵まであるたわわな白髪を、風に撫でられながら祈り続ける。
少女の姿は幽玄で気高く、また眩しく見えた。
その後ろ姿に、掛ける言葉が見つからない。ただ、己を見失わずに戦い抜いた彼女を労いたくて、シフォンは羽織っていたマントをそっと背中に掛けた。
「――本当に、お疲れ様」
こんなに、華奢だっただろうか。
少年がそう思う内に振り返ったノノヴァン。金の瞳は、年相応の柔らかさを帯びていた。
「ノノヴァン姉ちゃんお疲れさま、だよ」
「お疲れ様よ……。弟さんに、憐れみのあることを祈るわ……」
すると、ノノヴァンと共に黙祷を終えたタージェに続いて、ルアが優しい声色で語り掛けた。
もう何も迷わない。その思いを胸に秘めたルアが願うのは、これからの道行き。
四年という時を経て、苦難の果てに目的を成した少女が、そして此処にいる仲間達が共に支え合い、先の世にある目的地に辿り着けるように。
そうして共に、生きていこうという切なる思い。
「私も付いているし、一人じゃないんだから……」
そんなルアの言葉に、ノノヴァンもまた思いを伝えた。
「うん、一人では無理、よ」
心強い仲間がいたからこそ戦えた。だからこそ、紡ぎたい言葉がある。
「力を貸してくれて、ありがとう」
「心強い仲間を得たこともまた、あなたの強さだよ」
シフォンの声にノノヴァンが視線を巡らせると、そこには仲間達の笑顔があった。
「ノノヴァンさん、お疲れ様。街に帰ったらお茶しよっか? 今日はわたしが出すよっ♪」
「帰り道に水場があるなら、足湯もいいよね?」
いつもの調子を取り戻し、シルとタージェが帰路の提案を持ちかける。すると、水を得た魚のように、ジョージは優しい笑顔で楽しげに話を膨らませ、オーディンもこくりと頷いた。
「わぁ、お茶もいいし足湯もいいね。心の休息も必要だよ☆」
「温かい物が飲みたい、ね。ここは冷える、から」
張り詰めた空気が消え、賑わいを取り戻す仲間達。
「そうね。皆で一緒に、帰りましょう」
その中心で微笑む少女に憎しみの色はないと感じて、レナスも瞳を弛ませた。
これからは、未来を向いて歩いて行こう。
ノノヴァンがそう思えるのは、彼女の強さがあればこそ。
そしてそれ以上に、共に今を歩める仲間がいてくれるから。だから、
(「だから、きっと――」)
きっと、大丈夫。
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参加者:8人
作成日:2014/12/12
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冒険結果:成功!
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