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奈落最終決戦:天を破りて

<オープニング>

 ラズワルド大戦は、エンドブレイカーの勝利に終わった。
 健在であった最後の五将軍『大空を覆うもの』を失った大魔女スリーピング・ビューティは戦場に姿をあらわす事無く、配下のイマージュマスカレイドと共に、東の空へと撤退していく。
 大空を覆うものの眷属達はほぼ壊滅していた為、戦場に残ったのは勇者ラズワルドの軍勢のみであった。

「大空を覆うものがいなければ、撤退もままならぬか」
 勇者ラズワルドは、愛馬、天空駿馬サテライターにまたがり、戦場をみやる。
 騎士姫隊長リンレイは、ラズワルドの決断を静かに待つ。
 氷魔参謀アイザーレイがいれば、なにがしかの献策を行ったであろうが、彼女は既にエンドブレイカーに討ち取られていた。

「我々は確かに敗北したかもしれぬが、敵もこれ以上戦う余力は無いであろう」
 ラズワルドは、勇者としての直感で、エンドブレイカーが更なる戦いを行う余裕が無い事を見抜いていた。

「ならば、我は、予定通り、此華咲夜若津姫の身柄を押さえさせて貰おう。これより全軍、奈落へ向かう」
 その言葉に、ラズワルド配下の軍勢は、一斉に鬨の声をあげた。

 それは敗北し、奈落へ逃げ込もうという軍勢の姿では無く、意気揚々と敵地に攻め込む軍勢であるかのようだった。

●追走
「薄氷の勝利、といったところか。中々に大変だったな」
 戦いの名残を辿るように空を見上げ、斧の狩猟者・ヴィトレル(cn0062)は集まったエンドブレイカー達にそう声をかけた。
「だが、おかげで大空を覆うもの、全ての密告者、そして、原初の災害竜までも撃破する事がでた。
 大空を覆うものの軍勢は壊滅し、大魔女の軍勢も東の空に逃げ去った。
 大空を覆うものを撃破したことで、創世神イブ・ザ・プリマビスタの加護も得ることができ、ラズワルド大戦は、私達の大勝利といって良いだろう」
 と、ここまで言った後でヴィトレルは大きくため息をつく。避難誘導等に当たっていた彼に大した負傷はないようだが……。

「……さて、ここでもう一仕事だ」
 ラズワルド大戦の主敵の一人であった、ラズワルド。彼は撤退しておらず、充分な軍勢を維持したままアマツカグラに残り、更なる攻撃をしかけてきている。
「彼の目的は、奈落に居る『此華咲夜若津姫』だ。
 既に彼の軍勢は奈落に向かい、此華咲夜若津姫の配下達と戦いを繰り広げている。
 奈落側は、防衛に徹している為、ラズワルド軍が此華咲夜若津姫の前に到達するには、時間的余裕がまだある。……幸いな事だな」
 とはいえ、その時間も刻一刻と減ってきているわけだが。
「君等には、奈落に攻め込む勇者ラズワルドの軍勢を背後から遅い、可能ならば、勇者ラズワルドを撃破……あるいは、救出を頼みたい」
 勇者ラズワルドは言うまでも無く強敵だ。
 エンドブレイカーの助けが無ければ、此華咲夜若津姫といえども、敗北は免れないだろう。
「此華咲夜若津姫が、勇者ラズワルドに敗北し、大魔女の五将軍に戻るような事があれば、今回の勝利も全て水の泡だ、かもな?」
 苦い表情で、彼はそう言葉を続けた。

 ラズワルドが撤退しなかった理由は不明だ。
 全軍の撤退が不可能になった以上、自分が逃走するわけにはいかないという責任感か。
 あるいは、大空を覆うものを失った状況で、イヴだけでなく、此華咲夜若津姫もが自由に動く事ができるようになれば、大魔女側は苦境に陥ってしまうと考えたのかも知れない。
「しかし、だ。危機的状況とも言えるが、これは好機ともなりえる。
 いかに、勇者ラズワルドが強力であったとしても、此華咲夜若津姫の軍勢と我々エンドブレイカーとに挟撃されれば、勝機は見える筈だ」

「恐らく厳しい戦いになるだろうが……君等なら可能だと私は信じている」
 よろしく頼む、と。そうヴィトレルは締めくくった。


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参加者
魔剣・アモン(c02234)
気ままなグルメおばさん・カッツェ(c08344)
水面石・センテリェオ(c28018)
紅輝獅子・ミルバ(c29275)
黒紫紅蝶舞散斬・シキ(c30853)
金剛神将・コロッサス(c34114)
黒将・リルベルト(c34612)
ハーレムクイーン・バクコ(c35333)

<リプレイ>

●奈落への道
 大戦直後、侵攻する勇者ラズワルドの後を追い、エンドブレイカー達は奈落へと向かった。
 事前に集められた情報によりラズワルドの軍勢が此華咲夜若津姫を目指しているのは判明している。
「つまり、お姫様の熱烈な追っかけ?」
「それはないと思うわ……」
 ハーレムクイーン・バクコ(c35333)の煩悩塗れの解釈に、黒いメイガスに搭乗した黒将・リルベルト(c34612)が応える。
 このタイミングで去らず、攻撃へと移った理由は勇者としての自信か、戦略眼か、その辺りの理由だろう。
 何にせよ、エンドブレイカーとしてはそれに追いつき、阻止しなければならないのだが……。
「あら、やっぱりうじゃうじゃ居るわねぇ」
 望遠鏡を手にした気ままなグルメおばさん・カッツェ(c08344)がのんびりとした調子でそう口にする。奈落の入り口には、ラズワルド軍の後衛部隊が待ち構えていた。
「敵は……ほとんどがバルバの類だな」
「サテライターは、ここからだと良く分かりませんね」
 黒紫紅蝶舞散斬・シキ(c30853)と紅輝獅子・ミルバ(c29275)もそれぞれに眺めた結果を告げる。
 彼等が目指すのは、主に二つに分けられる『後衛軍』の片方、天空駿馬サテライターの率いる軍勢だ。サテライザーは勇者ラズワルドの愛馬。現在のところは首無しの馬である。
「勇者の窮地を救った事もあるそうだけど……」
 水面石・センテリェオ(c28018)が、その名馬の持つ逸話に触れ、金剛神将・コロッサス(c34114)が頷き、その後を継いだ。
 この場所の敵を退けなければそもそも奈落には入れず、サテライターを逃しておけば逸話通りの活躍をしてしまいかねない。
「伝説に残るその健脚を発揮されては甚だ迷惑。後顧憂いを断つ為に必ずや討ち果たそう」
 確かにそう結論付け、彼等は目前に迫る敵へと注意を戻した。

「伝説の勇者と刃を交えたい欲はあるが……」
「本当は、勇者さんのイケメン曝しとか、リンレイちゃんの尻とかを追っかけたかったけどねー」
 コロッサスと、バクコがそれぞれに本心を溢す。だが、それでも仲間を奈落の奥へと通すべく、彼等は武器を手にした。
「この一手は失敗できないものね、がんばりましょう〜」
 太刀を抜刀するカッツェに、薄水色の刃を握ったセンテリェオが頷いて返す。
「奈落の姫君、必ず、護って見せるよ」
 守護者として。心の中の兄に誓い、彼女は戦場へと改めて目を向けた。
 不敵な笑みを浮かべたシキの肩から、二匹の蝶が舞い上がり――
「行こう!」
 魔剣・アモン(c02234)の声と共に、彼等は駆け出す。

●立ち塞がるバルバ
「オオ――!!!」
 相対した両軍から鬨の声と獣の雄叫びが上がる。散発的な牽制攻撃を互いにやり過ごしつつ、両者は急速に接近し、衝突した。
 エンドブレイカーの目指すのは当然この場の大将首――と言っても既に首は無いが、指揮者であるサテライターだ。
 敵陣深くに居るそれに向け、この部隊もコロッサスを先頭に陣形を組み、突撃。
「道を開けよ!!」
 神火斬妖。業焔を纏った鎚を薙ぎ払い、彼等は敵方に打ち込む楔となる。
「さあ、本気のスピードでいくよ! ついて来られるかな?」
 続くアモンとセンテリェオも薔薇舞う剣戟で敵を打ち払い、隊をより深く進ませる。
「グルオオォッ!!」
 が、しかし。立ち塞がった二体のタウラスが、その勢いを受け止める。当然敵も無傷では済まないが、勢いの鈍った所にヴォルフルの群れが殺到し、この隊の侵攻を阻止してのけた。
「――鬱陶しいわね」
 髪をかきあげるような仕草を取り、リルベルトが爪に太陽の光を宿して振り抜く。今回の作戦では速度が求められている。サテライターへと迫り、早期の決着を図りたいところなのだが……
「バウワウッ!」
 リルベルトのデイブレイクソードに刻まれつつも、ヴォルフルの一体が爪で以って襲い掛かる。実際のところ、これ以上突撃を続けるのは難しいだろう。だが早期決着を狙う意思は他の隊も共有しているはず。
「ならば――!」
 ならば、喉元に食らいついた別の部隊のために、極力敵戦力を落としていくまで。カッツェの振り切った野太刀から生じた旋風が荒れ狂い、狼型のバルバを刻んでいく。
 ――なんだったら、この場の敵を壊滅させて進んでしまっても良い。
「迷う事はない。この星が進むべき道を照らしてくれる!」
 高く剣を掲げたアモンの手により、戦場に星が降る。炎皇星の輝きを剣に宿した彼の声に合わせ、一同は周りの敵を蹴散らすべく円形に布陣した。

 四方で攻防が行われる中、円の中心にてミルバが舞う。
「さぁさ、御覧なさいませ!」
 振るわれる力は今現在勇者と敵対している此華咲夜若津姫の加護によるもの。この場にはお誂え向きだろう。
 彼女の怒りを示すように炎が吹き荒れ、複数のヴォルフルを包み込む。
「それではこちらも……」
 ウフフフ、と怪しげな笑みと共にバクコも神火大嵐舞を発動。艶かしい奉納の舞が仲間達に力を分け与える。
 続けてその力を乗せた裁きの車輪をシキが放ち、
「その棘を斬り裂け!」
 アモンの剣から放たれた光の輪が炎に包まれた個体を狙う。縦横に走る輪に切り裂かれ、轢き潰され、その個体は耐え切れず力尽きた。
 しかし彼等を取り囲むヴォルフルの群れはそれに怯む事は無く、右手の禍々しい爪で切りかかる。コロッサスの鎧が、リルベルトのメイガスの装甲が、避け損ねた攻撃を受けて耳障りな音色を上げる。
 さらに空を泳ぐ異形の鮫が、その牙で以って大きな傷跡残していく。
「――星霊?」
 複数の個体からの攻撃を受けつつ、こちらも怯む事は無く。ある方向に当たりをつけてリルベルトが爪を振るった。
 放たれた光の一閃が目の前の一体を両断し、余波はそのまま後ろへ突き抜け、俄かに敵の軍勢を割る。
 そこに姿を見せたのは、一体のエレファンタス。姿勢を低くして軍勢に紛れていたようだ。妙な形の杖を持ったそのマスカレイドが杖を掲げると、それと同時に何らかの合図が行われたのか、生き残ったヴォルフル達がエンドブレイカー達の視線を切るようにして立ち塞がる。
「この場の指揮者か? ――逃がさん」
 戦闘前とは打って変わった調子でカッツェが言い、剣風を巻き上げるべく得物を振りかぶる。
 が、目の前に現れたのは二体のタウラス。鎚を持つ者と、斧を持つ者。城門の如く立ち塞がった二匹がそれぞれの得物を力任せに振るう。
 傷を負いながら、暴風を切り拓く様にして一対の攻撃が彼女を襲った。

 3メートルを超える巨大な身体、そしてそこから生まれる耐久力と力強さを最大限に活かし、二体のタウラスが暴れ出す。単純な『力負け』で押されるようなエンドブレイカー達ではないが、周りを囲む複数のヴォルフルにより動きを制限された状態では対策を取り辛い。
 タウラスの鎚とコロッサスの盾が轟音を上げて衝突し、そこに振るわれた斧がコロッサスの重い身体を弾き飛ばす。
「不覚……!」
 一時的に陣形に穴が空くが、この程度は彼等の想定の内。
 片膝を付いた彼をミルバの祝福の舞の力が包み、胸元に手をやったセンテリェオが水晶群で治癒結界を構築した。
 そして合間を詰める様にアモンが薔薇の剣戟を放ちつつ動き、敵を迎え撃つ。

 しばしの攻防の後、また薙ぎ払われた斧がアモンの身体を吹き飛ばす。纏めて複数を巻き込む狙いの一撃だったが、斧の軌道はそこで止まる。
 戦いの中でカッツェの手から放たれた苗木、急激に生長した根がタウラスの足に絡み、攻撃範囲の広がりを阻んでいた。さらに腕を伸ばした太枝が、その身を締め付け拘束した。
 そこに踏み込んだのは、傷を癒し立ち上がったコロッサスだ。
「頭を、垂れよ」
 もう一度業焔と共に振るわれた鎚が、角を、そして仮面の乗った頭部を粉砕した。頭を失った巨躯が、ゆっくりと倒れ行く。

 半欠けとなったタウラス、そして壁の減ったエレファンタスも射程に捉え、エンドブレイカー達は敵を徐々に追い詰める。勇者の軍に引き立てられるだけの事はあり、このバルバ達もそう簡単に倒れるものではないのだが。
 音の波が、一つの契機となって彼等を包んだ。

 同じ戦場。しかしここから少し離れた場所で、銀色の大剣が天へと掲げられた。
 彼等がそれを直接見る事は出来なかった。直接聞く事は出来なかった。しかしそれに連なる数多の声が、勝鬨が、戦場を広がり、彼等の下にも届いたのだ。
 中心に立ち、剣を掲げた彼女はこう宣言していた。
「天空駿馬サテライター、ここに討ち取りました!」

●残敵掃討
 指揮官を失い、敵が浮き足立つのが分かる。センテリェオは、先程までこの場を仕切っていたエレファンタスに動揺の色を見た。飽くまでただの動揺に過ぎないが……彼女にはそれで十分だ。髪に編みこんだそれと、同じ輝きのナイフが鮮やかな軌跡を描き、赤色の花を咲かせる。
 が。
「hooooooowl!!」
 ヴォルフルの一匹が遠吠えを上げ、何匹かがそれに同調する。
 敵の指揮系統は完全に失われたと見て良いだろう。しかし元々群れを為すタイプであるヴォルフルは、即興で連携を組むつもりらしい。
「敵の戦意は尽きていない! 掃討を!」
 仕留めたエレファンタスから飛び退き、センテリェオが声を上げる。
「グルァァゥ!!」
 エンドブレイカー達に向け、ヴォルフルが手にしたナイフを投げつけ始め、数体が牙を剥いて襲い掛かる。『一斉に』とはいかないお粗末な連携だが、その分行動が読み辛い。

 無闇に接近してきた者にシキが裁きの剣を叩き込み、先程とは別の鬨の声――リルベルトがコールオブヴァラーで傷ついた味方を癒す。
「援護します!」
 ミルバの癒しの舞が前衛の傷を塞ぎ、傷の深いコロッサスにはカッツェの黄金の林檎が染み渡る。
 体勢を立て直した彼等はすぐに新たな状況に対応しだした。
 回復に当たりつつ、近付く者を迎撃し、そんな中で最初に標的としたのは残り一体のタウラスだった。ヴォルフル達との意思疎通が図れていないのか、接敵するヴォルフルに阻まれて自慢の鎚を振るい損ねている。
「丁度良いわ、そのままそこで果てなさい」
 暁の輝きと共にリルベルトが光の剣を雨の如く降り注がせ、無数の剣で縫い付ける。怒り狂ったように暴れ、タウラスが目の前のヴォルフルを突き飛ばすように前に出るが、もはや手遅れ。
「は、果てる……」
 言葉の響きに微妙な反応を示しつつ、バクコが連携チャージを味方に展開していき――
「戦場で余所見は禁物だよ!」
 続けて放たれたアモンの光輪が、タウラスの命を刈り取った。

 コロッサスの鎚の連打が、シキの懲罰の車輪が、襲い来るマスカレイドを押し返す。さらに、別のチームの攻撃の余波もあり、暴れるヴォルフル達は一体また一体とその数を減らして行った。
「いい加減、倒れなさい」
 カッツェの得物から生じた二重の竜巻が荒れ狂い、ついに残りの二体の息の根を止める。

 周りを見れば、立っているのはエンドブレイカーばかり。彼等は敵を文字通り一掃したのだ。
 この場の勝者が何者か、もはや言うまでも無いだろう。

 再度、勝鬨の声が上がった。

●一先ずの勝利
 勝利を収めた彼等はまずは負傷者の救援に動く。
 全体的に見れば負傷はあまり重くない。彼等の戦いぶりは勿論の事、この戦場に十分な戦力が集まった事も幸いしたのだろう。
 本体は既に先に進んだだろうか。どちらにせよ――
「あちらはまだ終わっていない、か」
「祝杯にはまだ早いようだな」
 風に乗って響く戦の音に、センテリェオとシキがそれぞれ呟く。リンレイの軍との戦闘に向かった者達は、まだ剣を交えているらしい。
 ひとまずの治療を終え、彼等はそちらに進路を取る。
「待っててねぇリンレイちゃーん!」
「若い子は元気で良いわね〜」
 何故か喜びの声を上げるバクコに、カタナを納めたカッツェがころころと笑う。その表情も、程なく次の戦場で引き締まったものに変わるのだろうが。

 ……ふと、足を止め、コロッサスが風の行方へと目を向ける。そして、
「――魂だけは、風の如く自由に飛び往け」
 呟きを風に乗せ、踵を返した。

 戦いは続く。だがいずれ、どちらかの勝利、どちらかの敗北で終わるのだ。
 魔性と化した勇者、ラズワルドの顛末は悲劇となるか、それとも――



マスター:つじ 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2014/12/15
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