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奈落最終決戦:かの勇者を居って

<オープニング>

 ラズワルド大戦は、エンドブレイカーの勝利に終わった。
 健在であった最後の五将軍『大空を覆うもの』を失った大魔女スリーピング・ビューティは戦場に姿をあらわす事無く、配下のイマージュマスカレイドと共に、東の空へと撤退していく。
 大空を覆うものの眷属達はほぼ壊滅していた為、戦場に残ったのは勇者ラズワルドの軍勢のみであった。

「大空を覆うものがいなければ、撤退もままならぬか」
 勇者ラズワルドは、愛馬、天空駿馬サテライターにまたがり、戦場をみやる。
 騎士姫隊長リンレイは、ラズワルドの決断を静かに待つ。
 氷魔参謀アイザーレイがいれば、なにがしかの献策を行ったであろうが、彼女は既にエンドブレイカーに討ち取られていた。

「我々は確かに敗北したかもしれぬが、敵もこれ以上戦う余力は無いであろう」
 ラズワルドは、勇者としての直感で、エンドブレイカーが更なる戦いを行う余裕が無い事を見抜いていた。

「ならば、我は、予定通り、此華咲夜若津姫の身柄を押さえさせて貰おう。これより全軍、奈落へ向かう」
 その言葉に、ラズワルド配下の軍勢は、一斉に鬨の声をあげた。

 それは敗北し、奈落へ逃げ込もうという軍勢の姿では無く、意気揚々と敵地に攻め込む軍勢であるかのようだった。


「ラズワルド対戦、お疲れ様!」
 仕込み杖の魔曲使い・マコト(cn0081)の声に、エンドブレイカーたちは笑顔を返す。
 大空を覆うもの、密告者、そして原初の災害竜を撃破し、大魔女の軍勢も東の空に逃げ去ったのだ。
 大空を覆うものを撃破したことにより創世神イブ・ザ・プリマビスタの加護も得ることができ、ラズワルド大戦はエンドブレイカーたちの大勝利と言っても過言ではない。
 それぞれに怪我や緊張による疲労の色が見えるが、それよりも安堵が勝る。
 だがその安堵の表情をマコトの言葉が曇らせた。
「で、皆気になってるラズワルドなんだけど、アマツカグラに残ってさらに攻撃を仕掛けて来てるんだ」
 目的は恐らく奈落に居る『此華咲夜若津姫』。
 すでにラズワルドの軍勢は奈落に向かって進軍し、此華咲夜若津姫の配下たちと戦闘に入っているのだと言う。
「奈落側は攻撃じゃなくて徹底的に防衛に回ってるから、ラズワルドたちが此華咲夜若津姫の前に到着するのはもう少し時間がかかると思う」
 なので、此華咲夜若津姫の配下たちが軍勢を抑えている間に奈落に攻め込む勇者ラズワルドの軍勢を背後から攻撃。
「そして勇者ラズワルドを倒すか、できるのなら救い出して欲しいんだ」
 勇者ラズワルドは強敵であるのはエンドブレイカーたちも知る所。
 援軍がなければ此華咲夜若津姫と言えども敗北は免れない。
 このまま放置し、此華咲夜若津姫が勇者ラズワルドに敗北してしまえば大魔女の五将軍に逆戻りしてしまう。
 そうなればこのラズワルド大戦の勝利で得たものが全て台無しになってしまいかねない。
「ラズワルドが撤退しなかった理由はよくわからないんだけどね……」
 全軍の撤退が不可能だと悟り、自分だけ逃走するという無責任なことをしたくないと言うことか、それとも戦力増強の為か……。
 危機とも言える状況ではあるが、これは好機とも取れる。
 いかに勇者ラズワルドの力が強力であったとしても此華咲夜若津姫の軍勢とエンドブレイカーとで挟撃すれば勝機が見えるはず。
「厳しい戦いになるのは目に見えてるけど……このままにはしておけないよね!」
 もうひと踏ん張り。
 エンドブレイカーたちは疲れた体に気合を入れ、戦いの準備を始めたのだった。


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参加者
黒き魔物・ロゼ(c00871)
薔嵐カプリチオ・アリスティエラ(c01927)
天狼の黒魔女・サクヤ(c02573)
鴉羽・ゼロ(c09427)
不撓不屈・モニカ(c15138)
夜紫の星巫女・エミリー(c21297)
闘拳と剣斧の天誓騎士・グリム(c35430)
不死鳥の天剣騎士・レオンハルト(c35756)

<リプレイ>


 奈落の風がエンドブレイカーたちの頬を撫でる。
 その風は今既に行われている戦闘の音を運び、彼らは一様にその表情を引き締めた。
 鴉羽・ゼロ(c09427)と不撓不屈・モニカ(c15138)がリンレイの声などが聞き分けられないかとヒアノイズを使用するものの、奈落の戦場という範囲は広すぎて聞こえてくるのは喧騒の音ばかり。
「もう少し近くまで行かないとダメみたいだね」
 モニカの声にゼロが頷くと、かつりと闘拳と剣斧の天誓騎士・グリム(c35430)の乗ったグランスティードの蹄が鳴った。
 少し高い位置からグリムは戦場の様子を窺う。
「敵はアルラウネが多いようだな」
 アルラウネ以外にはエレファンタス、タウラス、ライノパイル、スコルピアン、スフィンクス。
 伝えられた敵情に夜紫の星巫女・エミリー(c21297)は険しい眼差しを戦場へと向け、ぽそりと呟く。
「敗勢の中、ここまで踏み込むとは……」
 さすがは勇者と言った所だろうか。
 彼女の言葉に薔嵐カプリチオ・アリスティエラ(c01927)は勇者はどうするかわからないけどと前置きしてにっと笑う。
「あたしは此処で全力で薙ぎ払えばイイってことでしょ?」
「その通りだな」
 アリスティエラに天狼の黒魔女・サクヤ(c02573)は笑みを返し、家族同然の星霊たちを思い浮かべる。
 頼りになる彼らがいる限り、きっと負けることはない。
 黒き魔物・ロゼ(c00871)も彼女たちの会話に同意をし、剣の重さを確かめ前を見据える。
「簡単なことではないけれど、エンドブレイカーの皆が力を合わせれば勝てるわ」
 そう、今までだってこうやって力を合わせて戦い、そして勝利してきたのだ。
「皆で帰ろう」
 かつての勇者たちとの戦いが脳裏を過り、不死鳥の天剣騎士・レオンハルト(c35756)の差し出した手に全員の手が重なったのだった。


 回復手を中心に組んだ陣形で彼らは戦場へ突入していた。
 目指すはこの戦場の指揮官リンレイ。
 リンレイへと向かったエンドブレイカーの数はそれなりではあったものの圧倒するまでには至らず、どの班もリンレイの姿を探して配下マスカレイドたちとの戦闘を開始していた。
 タウラスの百烈槍をレオンハルトは愛用のフレイムソード……熾炎で受け止め、攻撃が止むと同時に真っ直ぐ剣を振り下ろす。
「日輪の輝きよ! 我が剣に宿れ!」
 レオンハルトの凛とした声が戦場に響けばフレイムソードは暁の輝きを宿し、彼に力を与えていく。
 手傷を負ったタウラスをモニカが見逃すはずもなく、腕に生やしたカマキリの鎌がタウラスを真っ二つに斬り裂いた。
「これ以上、好き勝手やらせないんだから!」
 倒れるタウラスの体を見送り、次に相手にしたのはスフィンクス。
 ゼロの歌声がスフィンクスの精神を捉えて動きを鈍らせれば、アリスティエラの左手が愛用のムーンブレイド……月牙【ルーナ・ハロス】を振るう。
「前進あるのみ!」
「ハァちゃん!」
 アリスティエラに斬られよろめくスフィンクスに、サクヤの喚び出したジェナスが噛みつきその体は地に落ち動きを止めた。
 わらわらと寄ってくる配下マスカレイドにロゼは冷たい視線を送る。
「これで足止めをしたつもり?」
 ロゼが召喚した天穹の星々は彼らの周りに降り注ぎ、彼女の体にも力を与える。
 星々が降り注ぐ中をグリムのグランスティードが悠々と駆けて手近な1体に止めを刺すと、グランスティードは気高く嘶く。
 だがマスカレイドたちもやられてばかりではない。
 一斉にエンドブレイカーたちへと攻撃を開始していた。
 それぞれになるべく避けたり防御をしたりしたものの、やはり無傷とはいかず。
 特に前衛のレオンハルト、モニカ、グリムの3人は多くの攻撃を受けていた。
 そんな3人の元へと飛んできたのはエミリーの相棒のフェアリー、ペルル。
「回復は任せてください。皆さんは攻撃を!」
 柔らかく描かれた円が3人を囲めば身体の傷は徐々に薄くなる。
 身体が軽くなったことを感じながら、3人は再びマスカレイドたちと対峙した。

 ゼロの歌が戦場に響く中、レオンハルトとモニカ、そしてグリムが目の前のスコルピアンを叩き伏せ、陣形の左右に位置していたアルラウネの身体をエミリーのフェアリーとロゼの雷が撃ち抜いていく。
 敵が倒れれば一歩、また一歩と前へ進むエンドブレイカーたちなのだが、如何せんマスカレイドの数が多く思う様に進めない。
(「……やっぱり人数が足りてなかったかな」)
 ムーンブレイドでエレファンタスに斬りかかりながらアリスティエラは周囲を観察していく。
 リンレイへと向かった班はサテライターへ向かった班よりも少なく、一気に倒すには人数が足りていない。
 自分たちだけで指揮官リンレイを狙うにはもっと違う作戦を立てなければならなかったようだ。
 だが今それを言っても仕方がない。
 今は耐えながら、敵の数を減らすだけ。
 サクヤのジェナスとグリムのグランスティードが目の前のエレファンタスに止めを刺し、アリスティエラは別の敵に視線を送った。


「くっ……!」
 グランスティードを巧みに操り、グリムはマスカレイドたちの攻撃を凌ぐが傷は徐々に増えていく。
 グリム自身も敵から体力を奪い取り、エミリーが回復を施してくれてはいるが治るどころか新たに傷が刻まれる。
 目の前のエレファンタスが剣を振り上げグリムに向かって振り下ろし、防ごうとしたグリムの手はしかし一瞬遅く。
 自身が地に落ちる音を聞きながらグリムは意識を手放した。
 そのエレファンタスの身体をモニカのカマキリの鎌が真っ二つに斬り裂くが、その背後から入れ替わるように現れたタウラスが彼女の体に槍の雨を浴びせていく。
「……っ!」
「モニカ!」
 モニカの身体がぐらりと揺らぎ同じ旅団のゼロが彼女の体を受け止めれば、エミリーがすかさずフェアリーサークルで彼女の傷を回復していく。
「ペルル、行って!」
「邪魔をするな! 死にぞこない共が!」
 その間にも迫りくるマスカレイドの1体をレオンハルトがフレイムソードで押し返し、ゼロの歌声が動きを鈍らせる。
 後衛のロゼとアリスティエラも前衛の助けに入りたい気持ちはあるのだが少しずつ進んだ結果、周りを敵に囲まれかけており、彼女たちも目の前の敵で手一杯。
 目の前の敵を倒すことが仲間の安全に繋がると信じ、ロゼはアルラウネの胸に深々と剣を突き刺した。
「全ての血を吸い尽くしてあげるわ!」
 周りの仲間の奮闘に、サクヤもオラトリオのワンを呼び出し仲間の傷を癒していく。
 一番傷の酷いモニカにオラトリオが祈りを捧げれば、彼女は再び立ち上がり腕の鎌を目の前の敵へと振るっていった。
(「皆の苦労を無駄になんてさせない……!」)
 元に戻った此華咲夜若津姫を再びマスカレイドするなど到底許せることではない。
「だからここで、絶対食い止めるよ!」

 1体、また1体と、エンドブレイカーたちは確実にマスカレイドの数を減らしていく。
 だが未だにリンレイの姿は確認できず、いつ終わるともわからないマスカレイドたちとの戦闘を続けていた。
 回復を行おうとするアルラウネをモニカが斬り、その間に怪我を負ったレオンハルトの元にエミリーの指示でペルルが飛んでいく。
「ありがとうございます」
 回復に礼を言いつつ視線はマスカレイドから外さず、振るったフレイムソードはライノパイルの武器を弾き飛ばした。
 ゼロが奏でた魔曲が目の前の2体を魅了し道を開ければ、エンドブレイカーたちはまた1歩前へ出る。
 徐々に、しかし確実に。リンレイとの距離は縮んでいるはず。
 オラトリオのワンがロゼの怪我を癒している間もサクヤはまっすぐ前を見据える。
(「撤退は、しない」)
 仲間たちが全員倒れようとも、ここで引くことはしない。
「道を開けなさい!」
「雷帝よ!」
 アリスティエラのムーンブレイドが、ロゼの放った雷がマスカレイドを確実に屠っていった。

 戦況が動いたのは遠くで歓声が上がって少し経ってからのことであった。
 サテライターへ向かっていたエンドブレイカーたちが目的を達成したのであろう。
 リンレイ軍が苦戦していると見て援軍に来てくれたのだ。
「あちらは無事に倒せたようね」
「こちらも負けていられませんね」
 ロゼの放った雷がマスカレイド2体を倒せば、エミリーはモニカの傷を癒していく。
 肺にたくさんの空気を吸い込み、ゼロは笑顔で魔曲を奏でていく。
「さあて、大舞台といこうか!」
 ゼロの歌声が周りにいるマスカレイドたちを魅了しその動きを鈍らせれば、レオンハルトが、モニカが、アリスティエラが剣舞のように周りの敵を切り伏せる。
 彼らが倒し損ねた敵にはロゼの雷が降り注ぎ、アリスティエラの傷をサクヤのオラトリオが癒していく。
 流れるような攻撃に、しかしマスカレイドたちも簡単にやられはしない。
 執拗に狙われるのは前衛のレオンハルトとモニカ。
 だが数が減ったマスカレイドたちの攻撃を2人はそれぞれの武器で弾き、避け、いくつかは受けるが倒れることはない。
「一気に攻めましょう!」
「任せて!」
 レオンハルトの声にモニカが応え、2人は周りの敵へ一気に斬りかかった。
 心地よいゼロの声を背後に聞きながら、レオンハルトのはフレイムソードは太陽の光を内包していく。
 モニカのカマキリの刃はマスカレイドたちの命を絶ち切り、アリスティエラの呼び出した猟犬がマスカレイドたちの喉笛に喰らいつく。
 ロゼの雷が走り、サクヤの召喚したジェナスが津波を呼ぶ。
「ペルル、お願いっ」
 エミリーの呼び出した妖精がその場を一気に駆け抜けるのと、ほど近い場所で鬨の声が上がるのはほぼ同時であった。


 別の班がリンレイを打ち取ったという知らせが来たのは、彼らが周りのマスカレイドを全て殲滅させてほどなくのこと。
 無事に自分たちの目的が果たせたことに安堵しつつも、エミリーは別の作戦を行っているエンドブレイカーたちに心を砕く。
「ラズワルドは……?」
 サテライターとリンレイ……2人が守っていた勇者ラズワルドは未だ健在。
 意識のないグリムを他の班に任せ、レオンハルトは再びフレイムソードを握り、ロゼも再び歩を進める。
「今はラズワルド様を救う好機! 先に戦ってる人達の助太刀を致しましょう!」
「ふふ、ラズワルド倒すまでは帰れないわ」
 他のメンバーにもその行動に異論はなく、サクヤに回復を施されたモニカは元気一杯にアリスティエラとゼロの手を引き歩き出した。
「アリスちゃん、ゼロ、行こう!」
「ええ!」
 楽しげに歩く2人を見つめ、ゼロはにやりと笑い、
「知ってたか? 俺達はアリスの傍にいる限り、負ける気がしねぇのさ」
 ゼロの言葉にアリスティエラとモニカも笑みを返し、彼らは再び前を向く。
 勇者ラズワルドを目指し、彼らは再び奈落の地を歩き始めた。



マスター:りん 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2014/12/15
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  • カッコいい7 
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