ステータス画面

薔薇系作家

<オープニング>


「先生、作品の進捗はどうですか?」
 リルは淹れ立てのコーヒーを、執筆中のミネットの机の上に置く。
「もうすぐで終わる」
 ミネットはペンを置くとリルにそう言った。
「良かった。私、先生の作品が読めるのが幸せで……」
 リルはにっこり笑顔を見せる。
 かつて流行作家だったミネットは、今ではリルの家に潜伏する身となっていた。
 マスカレイドだった彼女はその正体が露見すると、街の人たちに追われて居場所を無くしてしまった。
 困ったミネットは、いつも熱心にファンレターが送られてくる住所……リルの家の扉を叩き、彼女に頼んでかくまってもらっている。
「先生さえよければ、ずっとここに居ていいんですからね」
「感謝しているよ」
「先生のことは、私が守りますからっ! マスカレイドとか関係ありませんっ」
 リルは力強い瞳でミネットを見る。


「あれはマスカレイドですよ!」
 流星式自由農夫・マヌカ(cn0146)と共に酒場に現れた青年は、集まったエンドブレイカーを前にそう言った。
 それを見たのが初めてのようで、彼はかなり興奮している。
「いやぁね、早朝なんですけど、仕事に行く途中にですね……」
 彼の話をまとめるとこうだった。
 ランスブルグのある住宅街に、リルという女の子が1人で住んでいる家がある。
 早朝に何気なく彼女の家を見ると、窓から20代後半くらいの女性が顔を覗かせていたのだけれど、その顔には白い仮面があった。
「リルって子は、俺はあまり話したことがないんですが、19歳くらいかな。本屋で働いている子でね。いつも1人でいるから、友達は少ないと思うんです。あの女が何者なのか、俺にはわからないけど……。リルの弱点につけ込んで、あそこへ潜んでるんじゃないんだろうか、そう思うんですよね」
 青年は難しそうな顔でそう言う。
「それでね、ここへ来る前に、ちょっとリルちゃんの家を覗きに行ってみたんだよっ」
 マヌカは一同の前に身を乗り出した。
「リルちゃん家は二階建てだけど、一階はガレージになってて住む場所は二階だけっていう、そんな作りのおうちだよ。窓は締め切っていて中の様子は見えなかったけど、雨戸じゃなくて只のガラス戸だったよ〜」
「リルは、朝から夕方まで本屋で働いていて、それ以外は家にこもっている感じです。外で余り見かけないんですよね」
「マスカレイドはリルちゃんの所に隠れているのは間違いないと思う。だから、きっとリルちゃんのおうちから出てくることは無いと思うんだけど……。問題は、どうやっておうちに入るかだよね、仕事帰りのリルちゃんを説得してお願いするか、夜におうちに入って入れてもらうか、或いは窓ガラスをぶち破ってみるとか……。でも二階だし、足場もないからここから入るのはかなり難しいと思うけど……。それにマスカレイドを庇ってるリルちゃんを、出来るだけ悲しませないように、納得してもらって、なんとかマスカレイドを倒したいよね……」
 説明しながらマヌカの声は徐々に小さくなっていく。彼女もマスカレイドにどう接触したらいいものか、見当が付いていないようだった。
「それで、そのマスカレイドですが、たしかペンを持って居たんですよね……」
「だから、ぼくが考えるにそのペンを使って攻撃をして来るんだと思う。そして、書いた何かを使った攻撃……そういうことが予想されるかな」
 マヌカの説明に、エンドブレイカーたちは「うーん」と考え込んでしまう。
「今ってね、ラズワルド大戦で、みんなが頑張ってくれたお陰で、新しい棘も発生しないし、一定以下の能力のマスカレイドが存在できずに消えちゃってるんだ。それに、マスカレイドが悪いことをしようとすると、苦痛を感じるようになってるし」
 マヌカは喋る。
「だからねっ、みんなで頑張ったら、都市国家のマスカレイドを全滅させることも出来ると思うんだっ!」
「そうなのか?」
 仲間の男が言う。
「うん、そうだよっ。だからね、リルちゃんの説得はちょっと難しいのかもだけど、でも一緒にがんばろーよ! マスカレイドのない世界を目指してっ」
 そう言うとマヌカは、一同の前に満面の笑みを見せた。
 それはやる気に満ちあふれたものだった。


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参加者
スイカランナー・カヘル(c03172)
破竹円舞・デイジー(c05482)
銀雷閃・ツルギ(c08167)
戦神竜皇・ウォリア(c17006)
境界の護り人・ガーランド(c26922)
雨音・ココ(c30874)
草・ティルキア(c33712)

NPC:流星式自由農夫・マヌカ(cn0146)

<リプレイ>


 街が茜に染まる頃、仕事を終えて家路を急ぐリルの足下に、一枚の紙片がひらりと落ちる。
 あら、という顔で彼女がそれを拾い上げると、こんな文章が目に入った。
「カヘルは情熱的にティルキアを抱き寄せ、唇を髪に寄せて触れる……其れだけでまるで神経が髪に移ったように動悸が高まるティルキア……切なげに頬を上気させ目を潤ませる彼の姿は女以上に可憐な乙女の様相を呈していた。その姿を見たウォリア……。ウォリアは胸が甘く締め付けられ……」
 小さな声でそこまで読み上げると、リルは堪らなさそうにその紙をぎゅっと抱きしめて、歩道の隅に移動すると、改めて文章を読み始める。
 ――そっと二人の元へと身を寄せて……。
 そこまで読む頃にはリルの目は潤んでいたし、頬も紅潮してコートの下は脇汗でびっしょりだった。
 ほぅ……と息を吐いて、リルが顔を上げると、
「ああ……すまん。それ、あたしが落とした物なんだ」
 銀雷閃・ツルギ(c08167)が、ばつの悪そうな顔で立っていた。
「えぇっ、貴方の……!? ごめんなさい、余りにも素敵で、つい……」
 リルは少し恥ずかしそうな笑みを浮かべて、その紙をツルギへ返す。
「それは嬉しい言葉だな。実はそれ、あたしが書いたものでな。その……慣れていなくて恥ずかしいが……」
 ツルギは照れ笑いで、懐に紙を仕舞った。
 その文章は、彼女が深夜に雷光の如きの勢いで書き上げた作品だった。
「凄く素敵です。また書いたら、是非読ませて下さいっ」
「あぁ、そうだな。書けたらな……」
 リルはツルギに満面の笑みを見せると、「頑張って下さい」と言い残して、家路へ向かった。
 その後ろ姿を見送りながらツルギは祈る。
 彼らが上手くやってくれることを。


 表通りのベーカリーを過ぎれば、リルの家までは近い。彼女は未だ興奮冷めやらぬ表情で、大きなバゲットを1本抱えながらよろよろと歩いている。
 家へと続く路地を曲がると、そこには7名のエンドブレイカーが待ち受けていた。
 リルは彼らの視線を感じならがらも、気付かぬ素振りで俯いて行こうとするが、
「こんばんはー」
 破竹円舞・デイジー(c05482)に声を掛けられると、足を止めざるを得なかった。
「突然だけど、お姉ちゃん、マスカレイドを匿っているでしょ?」
「――!」
 リルの顔色がサッと青ざめる。
「何でそれを……?」
「僕たちはエンドブレイカーです」
 雨音・ココ(c30874)がリルを真っ直ぐな目で見上げる。
「素直に差し出していただければ……もっとイイもの見せてあげますよ……?」
 草・ティルキア(c33712)は妖艶な笑みを浮かべた。役作りは完璧に仕上がっていた。
「イイものって……?」
「ウォーちゃん……」
 切なげな声でティルキアは、壁際の鎧姿に視線を送るけど、呼ばれた男は目を反らす。
(「なるべく放っておいてくれ頼む……」) 
 出来るだけ寸劇に巻き込まれたくない戦神竜皇・ウォリア(c17006)は、この想いが届くことを祈る。
 ティルキアはウォリアを見詰め続ける。
 だけどそんな彼を、背後から抱き竦める者が居た。 
「俺のことを忘れたわけじゃないだろ?」
 それはスイカランナー・カヘル(c03172)だった。
「あっ……!」
 カヘルは、ともすると白目になりそうな所をぐっと堪えて、指先でティルキアの髪を解いて弄びながら、耳元に吐息混じりの熱い言葉を囁く。
「お前のことを知りたい。さあ、もっと俺の知らないティルキアを見せておくれ」
 細い身体に手を滑らせて、カヘルはほんとなにやってるんだろ……と我に返りそうになりながらも、リルを悲しませないように、そしてこの世界の平和のために、ティルキアの身に纏う物を脱がす。
 するとあっという間に、透き通るような白い素肌が露わになった。
「……俺色に染まればいい」
 今のカヘルは無我の境地に達していた。
 瞳は熱情の色に染まり、その姿は最早ただの長髪攻めでしかない。
 彼女がこれで満足することを、彼らは祈る。
「……」
 だけどリルは熱い視線で彼らをじっと見詰めて、無言でその先を促した。
「……」
 逃げられないと悟ったウォリアは、苦渋に満ちた表情で覚悟を決める。
「我は……嫉妬するべきなのだろう……。だが……我はカヘルもティルキアにも好意を抱いてしまっている……。我はそんな己れが……っ!」
 彼は親指と人差し指の爪をギリギリと擦り合わせて、兜の中から嫉妬と情愛にまみれた視線を二人に送る。 
 犠牲者……もとい、参加者が増えた安堵なのか、カヘルは優しく微笑んで、鎧の男に手を伸ばした。
「君の想いは解っていた……。ティルキーもだろう?」
 ティルキアは、潤んだ瞳でこくんと頷くと、カヘルの胸に顔を埋める。
「私もティルキーもウォリアが大好きだ……だから……」
 二人の手が差し伸べられてウォリアは、――酒場に顔を出しただけのつもりが、何故こうなったのだ……!? と心の中で歯噛みをしながらも二人の元へ身を寄せた。  
「嫉妬することないのに……」
 ティルキアはくすっと笑うと、ウォリアの首に腕を回して、兜を脱がそうとする。
 だけど脱ぎたくないウォリアはそれを抑えて、二人の間にちょっとした攻防が繰り広げられるけど、
「リルさんが見てますよ……」
 そうティルキアが囁くと、ウォリアは大人しく兜を脱がされた。
「可愛いですね……」
 そう言うと、ティルキアはウォリアの耳をかぷりと甘噛みする。
「おい、よせ、しゃぶるな……! ぐ、あぁ……!」
 生温かい感触にウォリアは思わず身悶える。
 その有様を流星式自由農夫・マヌカ(cn0146)は、真っ赤な頬を両手で押さえながら、しっかり見守っていた。
 永遠にも感じる儚い時間は、ティルキアが唇を離すことで終焉を迎える。
 赤い顔で二人は見詰め合い、そして耐えられなくなって俯いた。

 恥ずか死ぬーー!!

 そんな彼らの心の叫びは、リルには伝わらない。
 ただの初々しい二人にしか見えなかった。
 これ以上はもう無理と、ティルキアは潤んだ目で境界の護り人・ガーランド(c26922)に助けを求める。
 可愛い義弟の頼みとあっては断れず、彼はゆったりとした足取りでウォリアの前の立つと、背後の壁にドンと手を付いて、彼の額と自分の額をくっつけた。
「お前、よそ見してる余裕なんてあるのかよ?」
 イケメンボイスが路上に響く。
「本気でやるのか……!? ぐ、ぐぬぅッ……!」
 小さな声でウォリアが言うと、ガーランドは笑みを浮かべて頷く。
「いいだろう……ただし、地獄の底まで相乗りしてもらうぞ……!!」
 ウォリアはガーランドの耳元に、押し殺した声で言う。まるで愛を囁くように。
 ガーランドの脳裏に恋人の顔がちらつくけれど、でも使命を全うすべく彼は、ウォリアの顎を指で掴んで、クイッと己の方へ引き寄せた。
 それは流行に乗っただけの仕草だったけど、当事者的には破壊力が凄まじく、ウォリアの中の何かが、ぷつっと切れ……そして、彼はふははは、と血走った目で笑い出した。
「ヤンデレ受けですね」
 リルが言葉を漏らす。
 ウォリアは自らガーランドの首に手を回し、その首筋へ顔を埋める。唇が触れているかどうかは、誰にも見えない。
「そ、そんな……ガーランドさんが……っ! いいでしょう、それなら私たちも」
 カヘルはティルキアを呼び寄せると、今度は下の服も脱がそうと手を掛ける。
「あっ、ダメっ……、助けてっ、おにーちゃん……!」
 ティルキアは艶めかしい腰の動きで、カヘルの手を交わした。意外とノリノリである。そうでなければ、やってられない、ということもあるけれど。
 四人の想いと、肉体は交錯する。
 リルは鼻息を荒くして、その一部始終をその目に焼き付けていた。
「好きなのは仕方無いけど、マスカレイドを匿うのはよくないです」
 ココはタイミングを伺って、リルに言葉を掛ける。
「分かっています……。でも私は、あの方の描く世界が好きで……」
 その間にも、彼らはBL的行為を繰り返す。筆舌にし難くなって行く。
「私は余り詳しくないけど、世の中にはもっと面白いBL作品がいっぱいだから、一緒に探そうよ。1人の小説家に固執してたら、広い視野でBL作品を探せなくなるからね」
 俯くリルにデイジーは、精一杯明るく言う。
「……ですよね。私、目が覚めました。こんなのは矢張り、良くないですね!」
 リルは半ば自分に言い聞かせるように、毅然とした口調で答える。
 その言葉は、BL劇場の閉幕を告げる合図だった。
 四人は安堵の息を漏らす。
「……でも、お願いがあります。どうか、私が留守の間に総てを終わらせて下さい。……私はここに家の鍵を落とします。そして明日の朝まで帰りません。その間にどうか……」
 覚悟も決めて、納得も出来たけれど、それでも矢張り、情の移った相手を引き渡すことはとても苦しい。そんな逡巡が見て取れた。
「分かりました。僕たちに任せて下さい。リルさんがお留守の間に必ず……」
 ココは静かな声で彼女に言う。
「ありがとうございます。私は狡いのかもしれませんが……」
 リルの言葉にマヌカは黙って首を横に振る。
「では……」
 リルは、石畳の上に銀色の鍵をそっと置くと、そのまま繁華街の方へ駆けて行った。
 彼女が振り返ることは一度もなかった。


 ツルギが合流する頃には、ティルキアは服を着て、ウォリアは兜を被って、何事も無かったかのようになっていた。
 多少の疲弊は見えるものの、本番はこれから。……多分。そんなわけで、彼らは表情を引き締める。  
 8名は階段を上がってリルの家の前に辿り付くと、鍵を使って扉を開けた。
「リル? 遅かったじゃない。バゲットは……!?」
 長い黒髪の女が出迎えるが、彼らの顔を視るとぎょっとして硬直する。
「リルは来ない」
 ツルギが告げた。
「……何だ、お前らは?」
 キッチンにぶら下がるランタンの明かりが、ツルギを睨む物凄い形相を照らした。
 その右腕には確かに、白い仮面がしっかりと在る。それを見るが否や、マヌカは彼女に「えいっ!」とチェイストマトを投げる。
「きゃっ!」
 ミネットの白いシャツが赤く染まった。
「お姉ちゃん、マスカレイドだね。わたしたちはエンドブレイカー。……逃がさないよ」
 デイジーが言うと、ミネットはチッと舌打ちをして、ペンを振りかざす。
 瞬く間に空中に二人の青年が抱き合う姿を描かれて、溢れ出した薔薇の花弁がデイジーを襲った。正面からまともに喰らった彼女は、呪詛の力に当てられて、よろめいてしまう。
「リルはお前らに私を売ったのか?」
「……僕たちは只、この家の鍵を拾っただけです」
 ココは優しい嘘を言うと、弓矢の先を憎しみに満ちた表情のミネットへ向ける。
 その間にカヘルは、ジャンプで素早くミネットの背後に回ると、延髄斬りを一度ばかりか二度も三度も喰らわせ、そしてガーランドも、その右脚と右腕、それから外皮へ破壊の痛苦を与えた。
 ミネットは苦痛に顔を歪ませる。
 けれど息を吐く暇もなく、次々と攻撃が彼女を襲った。
 ツルギは朱雀の剣で紅蓮の火剣を錬成すると、灼熱の刃でミネットを脇から連斬する。
 そこへ、ココの手から放たれし青き焔を纏った弓が、左腿をそして右手を射貫いて、マヌカの奏でたギターが激情の旋律でミネットをかき乱した。
「輝け、わたしの斧よ!」
 デイジーの名を冠したその斧は、破邪の輝きで彼女をを包むと共に、ミネットを光で眩ませる。
「大根界……!」
 ティルキアは喚び出したディオスの力で清流を纏うと、星霊と共にウォリアへ祝福の聖水を注いだ。
 力を得たウォリアは、戦極無双刀へ神火の力を解放すると、神火狼の咆哮と共に、終焉を断つ一撃で女の背中を斬り付ける。
「ぐ……おぉ……う……」
 低い呻き声が上がった。
 入口はガーランドが、裏手の大きな窓はココが塞いで居り、彼女はエンドブレイカーたちに包囲されていた。
「男が四人か……いいだろう……」
 ミネットは唇の端を釣り上げて笑うと、よろめきながらペンを振りかざして空中へ青年四人が絡み合う姿を描いた。その姿はどことなく彼らに似ている気がして、ウォリアは思わず手で顔を覆う。
(「穢された……穢された……ここへ来てまで……もうやだ……」)
 見るに堪えないその図柄は輪郭線から光を放つと、ココへ襲いかかる。
「危ない!」
 デイジーは飛び出して彼の目を手で覆った。9歳の少年に見せるには忍びないと思ったからだ。
 図柄から縄や蜂蜜が飛び出して、デイジーを苦しめる。この戦いを引き受けたからには、正面から受け止めるつもりだったけれど、今日はいつもとは違う意味で、つらい。
「さすがだね……。この世界、わたしにはまだ早いと思っていたけど……ちょっと分かっちゃったよ」
 そう呟くとデイジーは、己の腕をカマキリの鎌へと変え、
「この刃を受けてみよー!」
 と、断ち切りの刃で女の身体を連斬する。
 白いシャツは、真っ赤に染まって、べとべとだった。
 床の上に血潮が滴る。
 ミネットは恨めしそうな顔で歯を食い縛る。見開いた目には光がなく、どこを見ているのか、誰にもわからなかった。
「……本当は理不尽なのだろう。……だが……我らもまたそうせざるを得ない」
 ツルギは双挟刀を手に目を閉じた。
「せめて安らかに眠れ」
 刃が振り下ろされる。
 それは、ミネットの憎しみも悲しみも欲望も、命をも斬る一太刀だった。


(「その情熱が、正しい方向へ向かえばよかったんですがね……」)
 ガーランドは亡骸を前に、小さく手を合わせる。
 遺体は毛布に包んで、表の階段を使って外へ出した。
「マヌカさん、間違っても私がBLだなんて思わないでください!」
 カヘルは自分を見詰めるキラキラした視線に気付くと、そう言わずにはいられなかった。
「えー、あんなにキマってたのに?」
「普通に女性の方が好きですから!」
 焦るカヘルを前に、マヌカはおかしそうに笑う。
 ミネットの埋葬は、女子3名とココで街外れの場所で行い、リルへの報告はデイジーとココでするということになった。
 弔える場所があるのなら、その方がリルにもミネットにも良いだろう、とココは思う。
 そこまで話が整うと、カヘルは「それでは!」と言い残して、脱兎の勢いで夜道を走って行った。
 そんなカヘルの後をウォリアは、げんなりとした背中で歩いて行く。帰ったら妻に癒やして貰おう、それだけが今の支えだった。
 月明かりが石畳に降り注ぐ。
 四人が埋葬へ行くのを見送ると、ティルキアとガーランドも家へ向かって歩き出す。
「今日は何だか精神的に疲れました……」
 ティルキアは深い溜息を吐いた。
「それにしても、こういう仕事見つけるのほんと上手ですね……」
 ガーランドは半ば呆れた調子で言うと、ティルキアも苦笑いで応える。
 夜風が吹いて、二人の頬を撫でた。
 それは、未だ燻る羞恥心を少しだけ冷やす、そんな風だった。



マスター:森谷友貴 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:7人
作成日:2015/01/14
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  • えっち1 
冒険結果:成功!
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