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リヴァイアサン大祭2014:天上蓮華

     

<オープニング>

 12月24日は、リヴァイアサン大祭だ。
 1年に1度、この日だけ、エルフヘイムの外周を支える星霊建築の元となっている、水の星霊『リヴァイアサン』が半実体化して空中を飛び回る。
 すると、空からは雪が降り続き、泉は温泉に変わり、小川には甘い蜜が流れるという……。
 そんなリヴァイアサン大祭の日は、エルフ達にとって『パートナー』との絆を尊重し、静かに世界の平和を祈り合うという大切な日なのだという。

 君も、大切な人や仲間達と一緒に、リヴァイアサン大祭を楽しんでみてはどうだろうか?

●天上蓮華
 ねえ、どうかお願い、泣かないで。
 ねえ、どうかお願い、諦めないで。
 夏の朝が来るたび鮮麗な桃色の蓮花が咲くように、
 聖なる朝を迎えるたび清麗な雪と氷の蓮花が必ず咲くから。

 それは凛冽に凍りついた湖の上、星霊リヴァイアサン舞う空をめざして咲き誇る、雪と氷の魔法。大きな大きな氷や硝子細工みたいな蓮の茎葉の間に紛れ込んだなら、まるで蓮の森に迷い込んだこびとの心地になるけれど――大丈夫、怖がらずに踏み出してみて。
 雪と氷でできた白銀の蓮葉はひとつひとつが踊り場みたいな大きさ。とん、と足を乗せればりん、と澄んだ音を響かせてくれる蓮の葉がつくってくれる階段を昇っていったなら、空に向かって咲く大きな大きな雪と氷の蓮花まで辿りつけるよ。
 凍った湖から仰ぎ見れば雪色の磨り硝子めいた白銀に煌く雪と氷の蓮の花。
 けれど空に向かって咲く花を上から見たなら、朝の光の加減で雪と氷の蓮花に優しい色が燈る。
 春の花霞めく淡桃色、夏の菫宵めく淡紫色。
 秋の黎明めく淡金色、冬の青空めく淡青色。
 幾つも幾つも咲く雪と氷の蓮花に燈る色はさまざまで。
 もちろん、さらに清らかな白銀に煌く蓮花だってあるから――幾つもの蓮花の中からあなただけの雪と氷の蓮花を見つけられたなら、どうか空に向かって咲く花、天上蓮華に乗ってみて。
 朝の光、星霊リヴァイアサン舞う空から降る雪を受けて煌く天上蓮華。
 優しく色づく大きな雪と氷の蓮花の上で触れる光と雪、凛と澄みきった朝の風。辺りに幾つも幾つも咲き誇る雪と氷の魔法の世界、それらすべてがきっと幸せをくれる。そしてもし傍らに大好きなひとがいるのなら、その手を取ってみて。
 望むなら天上蓮華はあなたとあなたの大切なひとだけのダンスホールにもなってくれる。
 雪と氷でできた白銀の蓮葉、りん、と澄んだ音を響かせてくれる天上蓮華への階段を昇る人々が奏でる雪と氷の魔法の音色。それらがが幾つも幾つも重なり響き合い、優しくて軽やかで華やかな、円舞曲を奏でて祝福してくれるから。
 ねえ、どうかお願い、この天上蓮華にいる間は――ずっとずっと、笑顔のままでいて。

「だって天上蓮華は、この一年の哀しみや苦しみを越えて咲く花だから」
 ――って話を聴いたんだよ。
 柔らかな曙光めいた笑みを燈し、暁蝶の狩猟者・アンジュ(cn0037)が大切な秘密を明かすようにそう語る。
 聖なる朝、優しく煌く朝の光に咲く雪と氷の蓮花。
 雪と氷で生まれた花も茎葉はもちろん、氷や硝子細工みたいな花葉のもと、凍れる湖すらも清らで美しいけれど、蓮は本来、泥から咲く花。綺麗な水だけでは上手く咲けない花だ。
「じゃあどうしてこの雪と氷の蓮花がそんなに綺麗に咲けるのかっていうとね、この花が、この一年の哀しみと苦しみを越えて咲く花だから――って話なの」
 どれほど幸せで、どれほど恵まれた一年を過ごしたとしても、ほんの一瞬たりとも哀しみや苦しみを感じなかったなんてひとは、きっといない。
 だから聖なる朝に咲く天上蓮華は、この一年を生きた全てのひとへの祝福にして贈り物なのだ。
 星霊リヴァイアサンからの、そしてきっと、この世界そのものからの。
「だから遠慮なんていらないの。こころとからだ全てで思いきり享けて受けとめにいこうよ」
 哀しみと苦しみを越えて咲く花で、きっと幸せな笑顔に手が届くから。
「あのね、そうして祝福と贈り物を享けて受けとめられたら、また逢おうね」
 天上蓮華で享けた笑顔を、いつかきっとアンジュにも見せて。
 暁色の娘はひっそりそう囁いて、さあ行こうよ、と手を差し伸べた。

 ねえ、どうかお願い、泣かないで。
 ねえ、どうかお願い、諦めないで。
 夏の朝が来るたび鮮麗な桃色の蓮花が咲くように、
 聖なる朝を迎えるたび清麗な雪と氷の蓮花が必ず咲くから。

 だから、どうかお願い、この天上蓮華にいる間は――ずっとずっと、笑顔のままでいて。


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参加者
NPC:暁蝶の狩猟者・アンジュ(cn0037)

<リプレイ>

●天上蓮華
 聖なる冬の朝、空は淡く、けれど限りない青に透きとおる。
 柔らかにけぶり朝の光に染められる雲は天の羽衣、星霊が舞うたび空から雪花が降る、雪と氷で咲いた天上蓮華の花園に、
 一差し、舞が咲いた。
 指先が雪を掬うたび、腕が光を抱くたび、躯が凛冽な風を纏うたび、ヴフマルの耳許で大地の底に咲いた石の花が唄い、足許から白銀の蓮花が享けた光が舞いあがる。
 大地の扉で故郷の祖たる勇者を討って。
 奈落の底で蝙蝠の羽持つ娘に出逢って喪って。
 痛みも嘆きも抱くからこそ、その上に重ねた日々がこんなにも愛おしい。深い大地の奥底に芽吹き今咲き溢れる想いすべてを、空へ、彼方へ。
 ――見えていますか。
 俺の、祈りのかたち。
 硝子細工めいた大きな雪と氷の蓮の花葉のふもと、ひときわ輝く碧海の瞳の少女にシュクルが柔く囁けば、彼の碧空を見上げた彼女がきゅっと掌を握ってきた。初めて識る秘密に微笑して、手を握り返し、撓やかな腰に手を添える。
 大丈夫、絶対に落としませんから。
 凛と音を響かせ昇る、雪と氷の蓮葉のきざはし。流れる風は冷たくて、赤くなってませんかと戯れる彼の鼻に指先で温もり咲かせ、ファラーシャはころりと笑んだ。
「赤い鼻のシュクルさんもきっと可愛らしいけれど、大丈夫です」
「……隠すと見えませんよ、ファラさん」
 己の鼻を羽毛のコートに隠せば悪戯な笑みで覗かれ、また新たな笑みの花が咲く。
 初めてをひとつひとつ重ねて、特別な一日が幕を開けた。
 面映さと擽ったさはお互い様、けれど騎士と姫君のごとく手を取り合って、天へと昇り詰めるような雪と氷の蓮葉の螺旋を昇る。一足ごとに跳ねて煌く魔法の音色、重なる笑みに胸をも躍らせ、二人天上蓮華に辿りつく。
 雪と氷の蓮花が咲き溢れる光景を見渡せば、彩雲の雲海に立つ心地。
 淡やかに煌く金、その陰に密やかに咲く桃、リウェスの眼差しが辿る花色にロレッタも眦を緩ませ、花上の招きに金糸と銀糸をふわり交差させた刹那、
 ――誘ったはいいけど、踊り方をよく知らない。
 そっと落とされた内緒話と、覗いた彼の耳朶に燈る朱に、ひときわ笑みも声音も緩ませた。
 ――じゃあ、……リウをそのままに見せて。
 拙さに悪いことなんてない。
 これから知ればいいよ、と柔く紡いで心を添わせ、二人咲かせる、天上の花。
 空から舞う星霊の銀鱗、煌く雪花を朝風が浚う。
 凛と澄んだ風は心地好く、けれど連れが気遣われ、気侭な旋律が蓮葉にめぐるたび砂色纏う男は花紺青の娘をさり気なく風から護る。甘やかされる心地で昇った天上の花、射した朝の光にふと彼が消えそうな気がして、ユウの唇が想いを零した。
「どこにもいかないよね?」
 虚を衝かれたように瞬き、ゼスは繋いだ指先に軽く力をこめ、彼女を花上に誘い出す。
 ――ここにいますよ。
「どうかきみも、笑って?」
 冬の朝に冷えた娘の頬を撫ぜ、笑みを含ませた囁き落とせば、私はずっとここにいるよ、と笑みの花が咲いた。
 彼女が祈りをくれるよう、もしも夢を見る日がくるのなら。
 その色は、きっと。
 雪と氷を昇るたび、奏でる音色も瞳に映る世界も変わりゆく。
 決して平坦でない蓮葉を手を伸ばしあって越えゆく様は、二人で涯てを越えていく感覚そのもの。
 ひとつ越えるたび、君への愛しさが深まっていく。
 夜明けの金色に煌く蓮花の上に降り立って、とっておきの言葉とくちづけを贈れば、何度も瞬いた暁蝶の狩猟者・アンジュ(cn0037)が、少し変化した響きを確かめるよう彼の唇を甘く啄ばみ返した。
 アンジュも、貴方を愛してる。
 幸せ満開の笑みで、もう一度聴かせて、とねだられ、ハルネスも幸せ咲き綻ぶ笑みを燈す。
 ――君を愛してる。

●氷上蓮華
「お手をどうぞ、我が姫君。――なんてね」
 彼が冗談めかしてくれたから、姫じゃないのと苦い笑みを零しかけたアクアレーテは誘われるままセルヴェイルの手を取った。
 光満ちる天上蓮華をひとつ、ひとつと渡るたび、訥々と思い出手繰る迷い子の言葉に水守の娘は微笑み揺蕩わす。けれど彼女が裡に秘めた翳りが今の彼には見えていた。
 何も知らない俺が、貴方の笑顔を取り戻せればと思うから。
「だから、貴方の哀しい顔を、俺に下さい」
 振り返った彼の言葉に、息を呑んだ娘の喉がひくりと鳴る。呼吸を再開すれば途端に、藍の瞳から涙が溢れだした。
「哀しみは、セルに食べられちゃったわ」
 滴る嬉しさの涙。こんなぐずぐずの顔見せられないなんて紡ぐのに、確かに咲く笑顔。
 温かな祝福を享けて咲く、笑みの花。
 雪と氷の蓮葉が唄い、二人の間に宵空色の石が揺れる音と重なって、天の花目指す二人を優しい旋律が追いかけてくるかのよう。透きとおる冬の青空めいた、淡青の天上蓮華にとん、と降り立ち、傍らのひとを見上げれば、ゼルディアの胸に万感の想いが込み上げた。
 潤む瞳も胸詰まらせる想いもすべて笑みに咲かせた金の唄姫の胸の裡を、きっとルィンが誰よりも識っている。一歩ずつ進んで寄せた距離を、大切に暖めて。
 吐息は白く霞むけど、
「手があったかいから、なんか顔合わせたら笑ってしまうな」
「繋いだ手だけじゃない、一緒だから笑顔になれるんだと思うの」
 想いを込めて重なる手、互いの瞳に映る笑みの花。
 幾つもの想いで咲く彼女の胸に響く想いも、彼は違えることなく掬う。心はきっと同じ。
 今だけは――この大切なひとを、独り占めさせて。
 ねえ一緒に踊ろうよ。
 招く声と腕に飛びこんできた親友を抱きしめて、踏み出す天の花は春の黎明めいた淡緑宿る花。清らな氷歌に重ね、唄いながら花上でくるり回れば、ヴリーズィとアンジュを芯にして、幸せの音色が満ちて溢れて咲き誇る。涙が零れる日もあったけど、
「――でもね」
 夢を叶えて追い続け、大切なひとの言葉に幸せな熱燈し、この天上蓮華みたいに、と笑んだなら、暁色に頬を寄せられて。
 そうやって咲くリズちゃんが、大好き。
 ――どうか共に踊ってくれませんか。
 勇気とともに踏み出した彼女の言葉が尊くて、血滴色の瞳を細めた男は紫銀の花蔦絡めた腕で、愛しい娘を彩る衣装と同じ淡紫に咲く天の花へと恋人をいざなった。
 物心ついた時にはもう沈んでいた苦しみと哀しみの泥濘。けれどその中から芽吹かせてくれた彼を見上げ、フェルスフィアは胸に萌す望みを溢す。
「……ねえ、あたし、いつか咲けるかな」
 けれど、救われたのはアルデュイノも同じ。
 澱む泥濘から心を掬いあげてくれた娘の、胸に咲く雪色の紗の薔薇を掬い、その頬に手で触れた。
「君はね、もう素敵な花を咲かせている」
 更に咲き誇るなら支え続けよう。凛々しくも優しい、己だけの天の花を。
 世界で唯ひとり、彼だけの姫の手に空色咲かす指輪は試すまでもなくぴったりで、頬に薔薇色燈す姫君の姿に細工師は満足気に頷き、白銀煌く天の花で軽やかなターンへ導いた。
 雨を識らぬ花は咲けず、疵を忘れようと足掻くほど心は摩耗する。
 だから、もう目を逸らさない。
 疵は乗り越えた証と胸を張らんとするモニカが眩しくて、エアハルトに満たされた笑みが燈る。嵐を制圧するのでなく、通過した先に二人で光を掴むのだ。
「この天上蓮華にいる間だけじゃねぇ。これからもずっと笑顔のままでいろよ」
 祈るように手の甲へ燈すくちづけ。
 彼の手に同じ祈りを燈し、娘は迷わぬ笑みを咲かせた。
「沢山幸せでいるよ。ずっと笑顔でいる」
 心に歓び蓄えれば、どんな逆境をも越えていけるから。
 ――嵐が過ぎ去った後に、胸を張って貴方の隣で咲くために。

●夢上蓮華
 凛然たる朝に軋む氷の音色も幸せな旋律に溶け込ませ、二人辿りつく天上蓮華はあの初夏の朝、湖底の硝子の森に射した忘れ得ぬ明け初めの色。
 冱える風と光との輪舞へ誘う腕に飛び込み、彼の温かな心音胸に満たせば、何を見つけたの、と密やかな笑み混じりの響きが続く。
 遠い冬音、命の鼓動。
 胸に響く二重奏の優しさ伝えるには詞では足りなくて。
 ――つまり私の独り占め、ってこと!
 飛びきりの宝物隠した少女の瞳でエミリアが笑みを咲かせるから、抱きとめた腕の中で躍る煌きに柔い吐息でエオルも笑みを溢した。
 ――それは少々いじわるだ。
 くすくすと笑み返し、今度は背伸びした彼女が彼を抱く。
「……聞こえる?」
「ああ、聴こえているよ」
 優しい熱ごと感じる、命の鼓動。互いの拍動が同じ想いを刻んで跳ねる。
 ずっと、逢いたかった。
 白む息さえ祝福めいて煌く朝、ふわり離した手をスバルは改めてダンスの誘いに差し伸べた。
 特別な絆を愛おしむこの日の聖性を思えば、柄にもなく胸が張り裂けそう。
「貴女の特別な今日を、俺にくれないか」
 ――ええ、あなたに全部。
 手放せないほど愛おしいひとを見つめてセレティナは、蕩けるような笑みを咲かせた。重ねた手が答えを語るけど、彼の瞳は初めから答えを疑いもしていない。心隠す微笑みの仮面も彼女の前では透けてしまうよう。
 寄り添う実感はすべてあなたがくれるもの。
 ――メリーリヴァイアサン。
 蓮花の蕾が花弁を開くよう、そうっと剥がれた仮面を置いて。
 心のまま二人咲かせた笑みで、聖なる朝に円舞を描こう。
「踊ってください」
 雪と氷で生まれた魔法に眼が眩みそう。白き天花の上で差し出された彼女の手を頂き、壊れ物を扱うように腰へ手を添える。
「いつも、逆だよね」
 男性から申し込むべきだと思うのに、踏み越えきれぬフォシーユの苦笑が朝の光に溶けた。序列と貴賎、心縛める茨を越え夢物語に手を伸ばせる程の自信と覚悟は育たずに。
 彼女が望むなら何でもしたかった。けれど、
「あのね、私……諦めない」
 けれど、負に傾く彼の心を掬いあげるよう、アレンカレンが強い意志燈る笑みを咲かせた。
 身分と立場の違い、自分はきっと彼ほどそれを理解してはいないけれど。
 壁を越えることを諦めたくないから、何度でも笑みを咲かせてみせる。
 今も、そして――これからも。
 九歳の始まりの朝。
 身も心も大きく成長した心地のルルは途端に体重的不安を抱き、少しでも軽くなるよう息をとめて天の花に踏み出した。優しく受けとめてくれた蓮花に語るのは、九年前の今朝のこと。
 凍えかけていた赤子が拾われ、沢山可愛がられて成長し、苦手だったこの日も『見つけてもらえた素敵な日』と思えるようになった話。
 息継ぎなしでは辛くなってきたその時に。
 悪戯な風がそっと少女の背を押した。
 天に咲く花に呼ばれ、暁色の娘を連れ雪と氷の蓮葉の螺旋を翔け昇る。降り立つ蓮花は淡桃色、今こそ彼は、泥の中で抱いていた叫びも涙も舞へ昇華し解き放つ。
 聞いて!
 俺は、本当は――!
「あのね、アンジュはあなたの命がきらきらしてるの見せてもらえるのがね、すごく幸せ」
 特等席で娘が笑みを燈すから、彼は一世一代、生涯一番の笑みを咲かせてみせた。
 誰かに幸せにして欲しかった。けれど今は、俺が皆を幸せにしたくて天上に咲く。
 だって俺の名前はロータス。
 泥より出でて、天に手を伸ばす花の名前。

●雪上蓮華
 凛と澄んだ聖なる朝に、硝子細工めいた雪と氷の蓮葉を昇る。足音の二重奏の先で天上蓮華へと至れば、虹色の世界に踏み出す心地。
 ――さあ、踊ろう。
 夢みたいな光景も、抱き寄せ、抱き寄せられて踊る温かさも、互いにずっとずっと、忘れない。
「シャルが、ずっと幸せでいるように、笑顔でいるようにって」
 恋人の左手に朝の虹の煌き束ねる花束思わす指輪を贈り、両手で包んでゼロは、愛しい娘に額を寄せる。優しく温かな彼の手の中、己の薬指に燈る煌き見れば、幾重にも咲く花のようにシャルロットの笑みが咲き溢れた。
 握り返した彼の左手に、彼女からも幸せを贈る。
 煌く四葉の白、『約束』の花を刻んだ指輪。
「これからも隣で、貴方の幸せと笑顔をずっとずっと願うから……」
 二人でいこう。一緒だからこそ輝く、この世界を。
 大切に確かめるよう手をなぞる指先の優しさに微笑んで、雪と氷の蓮葉を彼と昇れば、響く祝福の音色がラヴィスローズの心を洗って透明な夢に浸すよう。
 けれど雪花舞う風の中、淡い白金煌く蓮花に降り立てば、流石に寒いな、と零れたリューウェンの声が少女を現へ引き戻す。風邪をひいたら大変と慌てる彼女の姿に彼は微笑して、
「二人で温かくなる方法をご存じだろうか?」
「……?」
 瞬いた薔薇色の瞳に悪戯な笑みを映し、華奢な身体を抱きしめた。
「こうすれば、ほら、二人で温かいだろう?」
「――ほんと、じゃね……」
 頬には甘い熱が昇り、鼓動跳ねる心臓は破裂しそう。
 だけど、二人きりの天の花の上。あと少しだけ、このままでいて。
 冱てる世界に見出した、唯ひとつの温もり。
 そんな風情で触れた彼の指を擽れば攫うよう絡められ、雪と氷の精美極まる蓮葉の音階へ爪先を踊らせた。逃がしてあげない、なんて嘯くけれど。
 ――本当は、引きずり込んでしまいたいの。
 雪と氷が唄う波紋を甘く揺らすアデュラリアの囁きに、心底愉しげにナルセインが笑う。
 天に咲く花の福音にとかれ、恋の花が現に咲く。あなたが、好き。
「わたくしのすべてで、愛していい?」
「俺のすべてを、引きずり込んでくれ」
 眼差しに熱を燈して女の手を掬い、男はたおやかな指先に唇を寄せた。
 聖なる朝に月燈す淡い金の蓮花に降り立ち、己が未だあの孤独な月に羨望を抱いていると識る。胸裡に荒ぶ衝動、藻掻く牙。けれど立ち止まりたくなくて、マフラーを解いた。
 透きとおる冷気が喉も肺も心も鮮やかに震わせる。
 溜めた息を吐き出して、
「一緒に踊ってほしいな」
「うん。今のクローディアちゃんを、間近で見せてね」
 伸ばした手は、きゅっとアンジュのそれに包まれた。
 玉葱なしでも泣けるようになったみたいに、きっとまた変わっていける、進んでいける。
 氷から始まるこの蓮花のように、乗り越えて咲くのだ。――私も。

 暖かなマフラーをティイの首に巻き、白い息を吐きつつ笑ってヴァレイシュは手を差し出した。
「んじゃ、昇ろうぜ?」
「バァカ。アンタこそ、オレの手離すなよ?」
 高所が怖いのを隠した笑顔に不敵に笑み返し、けれど握り返す手に感謝を籠める。
 ああ、だからきっとだ。
 辿りついた蓮花に煌く淡紫が、こんなにも優しく胸に燈るのは。
 少年が見つけた彩は、春になれば男の大切な想い出が眠る場所を彩る花の色。けれど春の彩の上で雪の空見上げた男が、少年を見て笑みを燈す。
 雪の季節が廻るたび、遠くを見て涙を堪える姿が辛かったけど。
「痛そうな顔、しなくなったね」
「死にそうなくらい痛いなんてこと、もうないんだ」
 もう大丈夫、お前が隣にいてくれるから。
 ティイを映す瞳を細め、ヴァレイシュが穏やかに笑う。まるでそこに、春を見つけたように。
 小さく頷き、笑みを返す。
 疵が消えることはなくても。
 ――そんな顔して、笑えるんだね。



マスター:藍鳶カナン 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:34人
作成日:2015/01/07
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冒険結果:成功!
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