ステータス画面

ゼルフォニア沖海戦:煌天の楔

<オープニング>

 ──燦然鉱脈ゼルフォニアを目指して進む、終焉に抗う勇士号。
 その船上に、勇者ラズワルドの姿があった。
 偵察や哨戒に来たマスカレイドは少なくなかったものの、全てラズワルドの手によって倒され、勇士号は順調な航海を続けていた。
 そして遂に、大魔女スリーピング・ビューティの座す燦然鉱脈ゼルフォニア沖まで到達したのである。

「このまま、ゼルフォニアに上陸出来ればと思ったが、そうもいかないか……」
 ラズワルドは、ゼルフォニアの城壁から解き放たれた光の群れに表情を険しくする。
 人型の一際大きな光は、まさに怪物と呼ぶに相応しいもの。その周囲に散らばる複数の光は、金属で出来た天使型のマスカレイドのようだった。
「燦然光獣レイレギオか、厄介な相手だ」
 ラズワルドが口にしたのは、燦然鉱脈ゼルフォニアの守護獣の名。『ゼルフォニア鉱の反射器』の効果を無効にする能力があるその獣は、けれど決して勝てない相手ではないという。だが──。
「この船が破壊されてしまえば、大魔女に打ち勝つことは不可能となるだろう」
 険しい表情のまま、ラズワルドはそう続けた。

●煌天の楔
 終焉に抗う勇士号は今、燦然鉱脈ゼルフォニアを臨む海上にある。
 しかし、どうやらゼルフォニアより敵が向かってきているようだと、風待花の星霊術士・ラトワイユ(cn0126)はその場に集った同胞達へ告げた。
「敵は、ゼルフォニア鉱の反射器の力を無効化する能力を持っているようなの。つまり、……このままでは、終焉に抗う勇士号が危険だということ」
 勇士号を破壊すべくやってくるのは、天使の姿をしたマスカレイドであるという。
 これを迎え撃ち、そして勇者ラズワルドと共に燦然光獣レイレギオを撃破してほしい──そう、情報屋の娘は続けた。

 敵である天使型マスカレイドは二体。全身が金色の金属で出来ているが、一見するとまだ年若い少年と少女のような印象を受けるかもしれない。
 その背に負う翼は『燦然光翼』──燦然光獣レイレギオの力を受け、飛行して移動することが出来るものだが、彼らが飛行中に攻撃してくることはない。
 そして戦いになれば、この『翼』を用いた技と、姿こそ天使のように変じるものの、デモニスタのそれとよく似た技を使用するとのことだ。
「わたし達の侵入を阻もうと、彼らは持てる全ての力を振り絞って正面から飛び込んでくるわ。皆にはこの二人を、勇士号の海岸で迎え撃ってほしいの」
 マスカレイド達にとっては、エンドブレイカーは言わば──燦然鉱脈ゼルフォニアへ攻め入ろうとする『敵』に他ならない。
「わたし達に譲れないものがあるように、マスカレイドとは言え、彼らにも守らなければならないものがあるのでしょう。そして……その想いはとても強い力となって、彼らを支えるはずよ」
 心してかかってほしいと、ラトワイユは言い添えた。

 そして、天使達の仮面を砕くことが叶ったなら──その先にはゼルフォニアの守護獣である燦然光獣レイレギオが待ち受けている。
 全長四十メートルほどの巨大な獣は『ゼルフォニア鉱の反射器』の効果を無効化する力を備えており、それは勇士号の守りを容易く打ち破る。加えて、自身の周囲に強固な結界を張っており、あらゆる攻撃が弾かれてしまう。
 なお、この結界はあくまでも攻撃のみを弾くため、飛行して結界の内部に入ることが出来れば、レイレギオに攻撃することが可能になる。
 しかし、この結界に加えてレイレギオ自体が一度の攻防の際に一回だけ『攻撃そのものを無効化』する特殊な能力を持っているため、例え勇者ラズワルドであっても、一対一の戦いでは絶対に倒すことが出来ない相手なのだという。
 その有り余る力でもって、レイレギオは天使型マスカレイド達に飛行能力を与えている。言わば、五将軍や勇者に次ぐ大魔女軍の決戦兵器と呼べるほどの脅威と言っても差し支えはないだろう。
 レイレギオに対しては、ラズワルドが単身で足止めをしてくれる。だが、特殊能力により傷を負わせることは出来ない。
 レイレギオを倒すには、他ならぬエンドブレイカー達の力が必要なのだ──。
 しかし、レイレギオが待つのは空の只中。戦うためには文字通り、空を飛ぶ必要がある。
「そのための『翼』は、……そう、マスカレイド達が持っている」
 天使型マスカレイドが背負う『燦然光翼』──これを奪取することが叶ったなら、空で戦っているラズワルドの救援に向かうことが出来るとラトワイユは言った。
 この戦いは、言わば燦然鉱脈ゼルフォニアへ向かうための最後の試練であり、これを突破することが出来れば、いよいよ大魔女スリーピング・ビューティに迫ることが出来るだろう。
 だが、ここで終焉に抗う勇士号が失われてしまったら、それは即ち、大魔女の元に向かう手立てを失ってしまうということに他ならない。
「でも、皆で力を合わせれば、きっと」
 乗り越えることが出来ると信じている。そう締め括って、ラトワイユは同胞達に後を託した。


マスターからのコメントを見る
参加者
知識を求め続ける者・レイ(c00801)
傭兵・ダラントス(c01996)
ドロッイイ・マーサー(c03527)
恋する少女・ラーラ(c13184)
蓮泉の水精・ニンフ(c13873)
人魚の踵・ファラーシャ(c29228)
雲外蒼天・ヴァリオ(c29261)
ヴェルマーテ・パンペリシュカ(c33981)

<リプレイ>

 森を抜ければ、地を踏み締める感触がやわらかな白砂のそれに変わる。
 勇士号の海岸から臨む海は、どこまでも美しい青色に揺れていた。
 戦場へと足を踏み入れたエンドブレイカー達の瞳が、こちらへと飛来する二つの影を捉える。日の光を浴びて金色に煌くその姿はすぐに、燦然鉱脈ゼルフォニアより放たれた仮面の遣いであると知れた。
「まずはここで、踏ん張らないとねェ」
 ドロッイイ・マーサー(c03527)は、常と変わらぬのんびりとした口調でそう呟く。
 同じ色を映す空の彼方で、燦然光獣レイレギオと勇者ラズワルドが戦っているという。
 ラズワルドを助け、レイレギオを倒すために。今は目の前に現れた二つの仮面を打ち砕くことだけを考えて、マーサーは槍を握る手に力を込める。
 マーサーの言葉に同意するように、雲外蒼天・ヴァリオ(c29261)が頷いた。
「その先に何が待っていようと、オレたちはただ突き進むのみ、ってね。──大丈夫、やりましょう」
 ヴァリオの胸の内に、恐れはなかった。信を置き、共に戦える仲間達が側に居ると知っているから。
 一方で、傭兵・ダラントス(c01996)はいつになく眉間の皺を深くしながら、ちらりと後方を振り返る。
「ふれーふれーまーけーるーな♪ なのよ、ダラン!」
 届けられる声援は、恋する少女・ラーラ(c13184)のもの。ガーディアンでもあるラーラだが、半ば無理矢理ついてこられたダラントスにしてみれば、彼女にもしものことがあったりしたらと若干気が気でないのも否めない。
(「無茶をしなければいいのだが」)
(「ダランのお守りも大変なのよ。本当はレイレギオなんて相手してらんないんだからー!」)
 そんなダラントスの穏やかならぬ心中などお構いなしといった様子で、ラーラはやる気一杯だ。
 守りたいもの、守らなければならないもの。互いに譲れない想いを賭けての戦いは、厳しく、そして激しいものになるだろう。
 それでも、想いの強さは──決して負けない。
(「世界を、壊すと言うならば。わたしたちは、何度でも止める、の」)
 天使たちを見つめながら、ヴェルマーテ・パンペリシュカ(c33981)は凛とした光を瞳に灯す。
 翼持つ御使い。そしてその先に待つ燦然光獣、大魔女スリーピング・ビューティ──彼らが齎そうとしているのは救いではなく、破壊と破滅。
(「……けれど」)
 例えどのような強敵であっても、守りたいものたちのために決して諦めないと──そう決めたから。
「――いってまいります」
 人魚の踵・ファラーシャ(c29228)は耳元で淡く光る海色の雫にそっと触れてから、確かな決意を込めた眼差しを天使達へと向けた。
「天使に見えるけど、中身は全然天使らしくないね〜。なんか金ピカのばかりで、センス超悪い〜」
 二人の天使が放つのは紛れもない敵意。けれどそれを別段気にする様子もなく、蓮泉の水精・ニンフ(c13873)は素直な言葉を口にする。
「彼らは本当に、自分の意志でここまでやってきたのでしょうか」
 知識を求め続ける者・レイ(c00801)は、存在するかどうかもわからない可能性を求め天使達を見つめた。
 二体の天使。少年と少女。二人は無言のまま、目の前に現れたエンドブレイカー達を見渡す。
 白砂に舞い降りたと同時に、天使達は翼を広げた。

 光翼から放たれた無数の羽根が、虹色の煌めきを伴ってマーサーとヴァリオを襲う。虹羽の光は心の奥底に鈍い疼きを刻むと同時に、二人の気力を一気に削ぎ落としていた。
「ヌール、ヴァリオパパをお願い!」
「マーサーさん、回復いくねー♪」
 すかさずファラーシャが世界樹の花を咲かせ、ラーラがくるりと回した魔鍵の先を差し向けてヴァリオとマーサーに癒しを運ぶ。ニンフが吸い込んだのは潮の香りを孕んだ薫風。真っ直ぐに掲げた指先が少年を示して、
「ぶっ飛ばしてあげるね〜」
 無邪気な声に喚ばれ実体を得た竜が咆哮を上げ、金色の身体に喰らいついた。
 狙うは各個撃破。ニンフの攻撃により、標的は定まった。衝撃に躓きかけた少年へ、マーサーが肉薄する。
「せめて苦しませたくはないんだけれども……」
 敵とは言え、相手が子供とも言える見目を備えているならば、マーサーの胸中には苦い思いが浮かぶ。けれど、だからと言って手心を加えるつもりはない。突き立てられた槍が無数の穂先を唸らせて少年を貫き、白砂の上に鮮血を散らした。
「マーサーさん、続くよ!」
 続けざまにヴァリオが振るうは影を薙ぐ三日月。描かれた赤色の弧が、鈍い光を帯びて少年の身体を蝕んでゆく。
 パンペリシュカが伸ばした指先から滴る雫が猟犬へと変じて少年へと躍りかかり──畳み掛けるようにエンドブレイカー達が攻撃を繋いでゆく中、ダラントスは一人少女の前に立ち塞がって棍を振り回し、守りの障壁を編み上げた。
「目を醒ましてください、ボク等は都市を守る為に来たんですよっ」
 疾く風に燃える焔の歌を響かせながら、レイは心を込めて語りかける。
 少年の眼差しが、レイに向く。
 しかし、少年はその言葉を拒むように首を横に振った。
 もしここで他にも呼びかける言葉や強い想いがあったなら、また別の未来を導く可能性も決してないとは言い切れなかったかもしれない。けれど──それはもう別の話。
「誰であろうと、ここから先に進むことは許さない!」
 少年の頭に飾られた仮面が、嘲笑う。金色に覆われたその心は既に棘に呑まれ、絶望に閉ざされてしまっていた。掻き乱された心のままに少年が翼から放った虹光は、レイを狙ったものだっただろう。だがそれはニンフの目を眩ませ、その動きに呼応した少女の翼が制約を受けぬまま大きく羽ばたいて無数の光線を撃ち出し、レイとファラーシャ、そしてパンペリシュカを灼いた。
「ニンフさん、レイさん、お願いできますか……!」
「うん、任せて。回復するね〜」
 回復が追い付かないと判断したファラーシャの声に応じ、ニンフが海原に歌う風を招いて癒し手達に力を添える。
「わかりました、お任せ下さい」
「レイさん、一緒に歌おー♪」
 レイが響かせる騎士達の歌に、ラーラの歌声が重なった。
 吹き抜けた涼風で肺腑を満たし、戦場を駆け巡る旋律を聴きながら、ヴァリオは小振りの炎剣を手に少年へと迫った。舞い散る炎を纏ったような幻の薔薇の花弁が踊り、マーサーが躍らせた槍の穂先が花を散らすように天を突く。パンペリシュカの猟犬達が爆ぜて降らすは紅色の雨。
「ダラン、だいじょうぶー?」
「……俺はいい」
 ラーラの呼びかけに緩く首を横に振り──回復手の負担を少しでも減らそうと、ダラントスは棍を収め代わりに抜いた奪命の剣を少女の身体へ突き立てた。金色の少女は一瞬だけ不快げな色をその瞳に宿し──それから、そっと唇を開いた。
「騎士殿、あなたはたった一人で、わたくしを止めるおつもりですか」
 その答えなど、言うまでもない。そのつもりだというように、ダラントスは剣を構え直す。
「そうですか」
 そして、少女の虹羽が放つ光とダラントスが振るう剣が、真っ向からぶつかり合った。

 片方に攻撃を集中させて早期撃破を狙う。それがエンドブレイカー達の作戦であったが、戦況は彼らの思うようには動いてゆかなかった。
 天使達の攻撃はその一撃一撃が重く苛烈で、制約を与えてその範囲を広げさせることを防げても、一人が攻撃を受ける度に回復役が揃って回復に専念しなければならないほどだった。
 回復に手を割けばその分攻撃に回らなくなる。そして、気力の消耗を抑えることが毎回出来るわけでもなく、回復役の疲労は着実に積み重なってゆく。それでも適宜回復を受けることで、前衛で戦う者達は誰一人として後衛陣と交代することなく前線に立ち続けることが出来ていたのだが、僅かに生じていた綻びは攻防を重ねる度に少しずつその穴を広げて──やがて、その時が訪れた。
「ラーラさん、交替しましょう。ボクが回復を行います」
「うん、レイさん、ありがとうなのよ♪」
 戦歌で仲間達の心を鼓舞し続け、目に見えぬ疲弊を著しく重ねていたラーラに、レイが回復役の交代を申し出る。
 そのラーラへと狙いを定め、不意に少女が翼から虹色の光を放ったのだ。
 目の前で向かい合う敵よりも倒せそうな相手がいれば、狙おうとするのは自然なこと。しかし、そうはさせないと言わんばかりに少女と鍔迫り合いを繰り広げていたダラントスが身を挺し、煌めきの全てを受け止めた。
 輝きが、爆ぜる。
「……っ!」
 重なった攻防の中で極限以上に高められた力は容易く守りの盾を突破して、ダラントスの意識を七色の煌めきの中に絡め取る。
「──ダランっ!」
 悲鳴にも似たラーラの声が響き、その声で、ダラントスは意識を失う間際に彼女が無事であると知った。
 そして崩れ落ちたダラントスへ何の感情も窺えない一瞥をくれただけで、少女はそのまま遮るもののない前方目掛けて翼を羽ばたかせた。
「っ、させません……!」
 いち早く気付いたファラーシャが妖精の力を宿した剣琴で斬りかかるも、少女はそれを翼で弾く。少年へと集中攻撃を仕掛けていた者達は咄嗟に動くことが出来ず、近接技を備えていない後衛陣は、動きながらの攻撃が行えない。遠距離から攻撃を放ったとて、少女の翼の大きな羽ばたきは止められなかっただろう。
「──さようなら、アデラール」
 一瞬の静寂。少女の口から紡がれた声音は、全ての覚悟を決めた者が発するような、ひどく穏やかなものだった。
「待っ……」
 踏み出しかけたパンペリシュカの切っ先は届かなかった。少女が呼んだのは、おそらくは少年の名だろう。少年は声で応えることこそなかったが、少女の邪魔はさせないと言わんばかりに翼を羽ばたかせ、風を仰ぐように力を振るった。
 やがて、地を離れた少女の姿は瞬く間に空の彼方へと消え去った。
 ──天使達は『勇士号の破壊』を目的としていた。
 その一心で決死の特攻を仕掛けてきた彼らの片割れを、抑えとはいえたった一人で相手取るのは──誰であったとしても、難しかったと言わざるを得ないだろう。
 せめてもう一人──同時に抑え役を担う者がいたならば、状況はまた違ってきたかもしれない。
 少女の戦線離脱を許してしまいこそしたものの、エンドブレイカー達の目の前にいる少年は、既に満身創痍であった。
 まるで少女を追わせまいとするかのように、少年はどれほど傷ついても、エンドブレイカー達の刃に抗い続けた。
「も〜、大人しく倒れちゃって〜」
 ニンフが振るう鞭が忽ちの内に毒蛇に変じ、少年へと牙を立てながら巻き付いて猛毒を注ぎ込む。
 瞬く間に全身を巡ったであろう猛毒によろめきながらも踏み止まり、少年が渾身の力を込めた氷翼で刺し貫こうとしたのはヴァリオ。しかし、その間にマーサーが割って入る。
「マーサーさん!」
「……待ってる人がいるんでしょ? お前さんは帰らなきゃ、だ。絶対にねェ」
 全身を走る痛みと急速に失われてゆく気力に、けれど笑みを絶やさず、マーサーはヴァリオへそう告げた。倒れかけたマーサーの意識を、ファラーシャが咲かせた花の香りと、レイが響かせた勝利の凱歌が繋ぎ止める。
(「約束、したの。わたしの『夜』と、この世界を、──必ず、護ると」)
 ──それが、『わたし』に出来る、恩返し。
 パンペリシュカがそっと胸に手を当てると、内なる夜が応えるように紅き獣の群れが躍り出た。少年へと喰らいつき、爆ぜる猟犬達は金色の身体を瞬く間に血色に染め上げ、その鋭い牙は仮面にも穿たれる。
「ごめん、アドリーヌ……」
 掠れた声を落とし、少年──アデラールの仮面が砕け散った。
 ──刹那。
 後方の森で『何か』が爆発したような音が響いたのを、エンドブレイカー達は聞いた。

「まさか……」
 半ば呆然と森の方向を振り返るエンドブレイカー達。森の一角から立ち上る煙は、まるで空へと手を伸ばそうとしているかのようだった。
 すぐに確かめることこそ叶わなくとも、何が起きたのか予測するのはそう難しいことではなかっただろう。勇士号を破壊するために突撃してきた彼らが最終的に取り得る手段として、考えられないことではない。──例えその行為が、勇士号にほんの僅かな傷さえ負わせるに至らなかったとしても。
 その答えを告げることなく、少年は砕けた仮面と共に終焉を迎えていた。
「天使は神の遣いと言いますけれど、……皮肉なものですね」
 ファラーシャはそう呟いて、動かぬ少年を映した瞳をそっと伏せる。
 ともあれ、戦いは終わったのだ。そして、次なる戦いが空の彼方で待ち受けている。
「皆、無事……とは行かなかったけれど、どうやらこの中で一番余力がありそうなのは……」
 戦いが終わったことに安堵の域を漏らしつつ、マーサーが確かめるように仲間達を見やる。
 得られた燦然光翼は一つ。ここから、上空で戦う勇者ラズワルドの元に向かえるのは一人ということになる。
「おそらく、パンペリシュカさんではないかと思います」
「……わたし、ですか?」
 レイの言葉に、パンペリシュカが目を瞬かせる。
「そうねェ、おっちゃん達は見ての通り結構やられちゃったし、……一緒に行けないのは、凄くもどかしいけれど」
 親子ほども年の離れたパンペリシュカの身を無意識に案じつつ、マーサーが頷いてみせる。
 光翼を所持する者の条件として彼らが定めた──次の戦いに向かうための余力を十分に残している者は、レイとパンペリシュカに限られていると言っても過言ではなかった。その二人のうち、より余力をがある者を選ぶとなると、僅かな差ではあるがパンペリシュカが上回る。
「たぶんそうかな〜、怪我とかはしてない? とりあえず回復するね〜」
 ニンフがパンペリシュカの全身を確かめるように見て、それから癒しの風を呼んだ。
「パンペリシュカさん、がんばってねー! ほら、ダラン、しゃんとするー!」
 倒れたダラントスの側で、ラーラが声援を送る。ダラントスは戦いで倒れこそしたものの深手には至らず、すぐに意識を取り戻すだろう。
「後のことは、わたし達にお任せ下さい。……どうか、お気をつけて」
「オレ達の分も、頼むよ」
 ファラーシャとヴァリオの言葉にパンペリシュカは頷き、燦然光翼へと手を伸ばす。見た目の大きさに反して翼は軽く、まるで最初から持っていたかのように身体に馴染んでいくのを感じた。
 皆の想いが込められた翼は、それだけで大きな力を与えてくれるような気がして──パンペリシュカは束の間、祈るように瞳を閉じた。
「──いって、きます」
「行ってらっしゃい──」
 そうして仲間達に見送られ、パンペリシュカは戦いの場へと飛び立ってゆく。
 エンドブレイカー達の瞳に映る空と海はまるで曇りなど知らぬように、どこまでも蒼く、青く──澄み渡っていた。



マスター:小鳥遊彩羽 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2015/01/23
  • 得票数:
  • カッコいい4 
  • せつない1 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。