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ゼルフォニア沖海戦:脅威を希望に変えて

<オープニング>

 燦然鉱脈ゼルフォニア沖まで到達した勇士号。
 大魔女スリーピング・ビューティへと肉薄するエンドブレイカーと勇者ラズワルドに向け、ゼルフォニアの城壁から解き放たれた光の群れが解き放たれた。
「このまま、ゼルフォニアに上陸できればと思ったが、そうもいかないか……」
 勇者ラズワルドは光の玉……金色の天使型マスカレイドと、その中心に浮かぶ奇怪な人型に顔を曇らせた。
「燦然光獣・レイレギオか、厄介な相手だ。燦然鉱脈ゼルフォニアの守護獣は『ゼルフォニア鉱の反射器』の効果を無効にする能力がある。戦って勝てないわけでは無いが、この船が破壊されてしまえば、大魔女を打ち勝つ事は不可能となるだろう」
 知識を伝えながら、ラズワルドは気を込めた一打を打つ。数多の怪物を屠った一撃は小山ほどあるゼルフォニアの巨体をやすやすと捕えた……が、巨体を前に爆発霧散してしまう。
 勢いを増して迫るレイレギオに対し、ラズワルドは飛んだ。ここを抑えるのは自分しかいない。
 そしてこの窮地を切り抜けられるのは、エンドブレイカーしかいないと。

「いよいよ、ねぇ」
 揺れる勇士号の中、ソードハープの魔曲使い・ヴィーナ(cn0017)は集まったエンドブレイカーたちに状況を説明する。
 大魔女との決戦を前に、またもピンチだ。敵の繰り出してきた燦然光獣・レイレギオはゼルフォニア鉱を無効にする力と、あらゆる攻撃を弾く障壁をまとった決戦兵器。
 今はラズワルドが一人時間を稼いでいるが、このままではいかに勇者といえど、勇士号といえど無事では済まない。
「これにレイレギオ配下の天使型マスカレイドもいる、っていうんだからねぇ」
 レイレギオのエネルギーを受けて飛翔する天使型マスカレイドは、既に勇士号を狙い破壊活動を始めようとしている。まずはこれらをなんとかいなし、勇士号を守らなければならない。
「けれど、ピンチはチャンス……ってよくいうでしょ? 天使たちは勝機も運んできてくれてるわ」
 一行に迎撃に向かう区画を伝えたヴィーナは一転、微笑んで説明を始めた。

 ヴィーナが示した場所は勇士号の舷側にあたる海岸、岩肌が点在する砂浜だ。向かってくる敵は三体、小細工は好まぬようで真っ向から突破する気らしい。
「この天使マスカレイド、元は燦然鉱脈ゼルフォニアの正規兵だった人達らしいけど……まぁ、今は気にしてられる話じゃないわね。問答無用という雰囲気だし」
 それより、とヴィーナは話を戻す。
「敵は三体……そうね、見た目と武器で『剣天使』『糸天使』『光天使』とでも呼びましょうか」
 名付けたところの『剣天使』……剣士型のマスカレイドは腰や翼に下げた幾本もの剣をレギオスブレイドのように宙に舞わせ、あるいは手に持って攻めてくる近距離型。
 『糸天使』……腕から伸ばしたワイヤーを武器とするマスカレイドは中距離型だ。絡めつけ、食い込ませるデモンストリングスのような攻撃を仕掛けてくる。
 最後に『光天使』、ひときわ強烈な光を手にしたマスカレイドは遠距離、支援を得意とする。手にした光からデモンウイングのような光線を放ち、更に背中の羽根から癒しの力を他者へ飛ばすこともできるようだ。
「……それと、三体に共通の翼による防御。エンジェリックウイングの技で似たようなのがあったわね。それをみんな使ってくるわ。あと、飛行しながらの攻撃はしてこないようね」
 制約か思惑かはわからないが、せめてもの救いか。とにかく特徴的な三体、長所を生かして連携されれば恐るべき敵となるだろう。
「……と、ここまでが敵の能力。それでなのだけど……あの翼、取れそうなのよね。奪って、使えばレイレギオのところまで飛べるんじゃない?」
 しれっと重大な事をヴィーナは言う。つまり、天使型マスカレイドを倒し、その翼を使ってレイレギオに挑もうというわけだ。
「例の障壁、防げるのは攻撃だけらしいのよ。それと別に一つの攻撃を無効化する能力もあるそうだけど……皆が駆けつければ、ラズワルドと協力してレイレギオを敗れるはずよ」
 逆にいえばラズワルド一人ではレイレギオを倒すことはできない。この戦いの趨勢はエンドブレイカーたちにかかっているというわけだ。

「勇士号が失われて全て終わりって可能性も、もちろんあるわ。でもこんなものまで出してくるってことは、たぶんこれが燦然鉱脈ゼルフォニアへの最後の試練よ」
 ここを突破すれば、今度こそ大魔女スリーピング・ビューティに迫れるはず。迫る脅威が絶望となるか、希望となるかはエンドブレイカーたち次第というわけだ。
 皆の力を信じているとヴィーナは手元のハープへ激励の歌をつま弾いた。


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参加者
銀弓の狙撃手・リェル(c00914)
熊殺しの・リゼルグ(c03551)
無銘の騎士・フェミルダ(c04105)
薔薇の牆・アナム(c06804)
赤髪の運び屋・シヴィル(c07933)
吉凶天現・ミソハ(c31436)
青空を見上げる・ラッシュ(c35589)
日輪の天剣騎士・レオンハルト(c35756)

<リプレイ>

●脅威、降臨
 降り注ぐ光を追いながら、熊殺しの・リゼルグ(c03551)は得物の武器飾りへと目を落とす。
『──お前もどこかで戦っているんだろうが……無理はするなよ?』
 猛禽めいた斧剣に飾られた翼に、直前の一悶着を思いだして顔を上げる。目の前にはヴィーナから伝えられた勇士号の砂浜、感傷へ裂ける時間はもうない。
「来たぜ。名前に違わず、派手なご入場だ!」
「父上、母上……どうかボク等に力を」
 いち早く駆け込んだ赤髪の運び屋・シヴィル(c07933)が空に叫ぶ。レイレギオから別れた光は、もう球ではない人型で見てとれる。金属めいた肌に金髪碧眼、そして背中に輝く翼。
 神々しい姿に兜の奥で目を細め、日輪の天剣騎士・レオンハルト(c35756)は祈りながら剣を抜く。高まる闘志に答えるように白銀の刀身から紅炎が燃え上がった。
「正面から来て下さるのでしたら、こちらも正面から受け止めさせて頂きましょう」
 降下してくる天使たちへと無銘の騎士・フェミルダ(c04105)も駆けた。進路を塞ぎ立って剣を抜けば、呼び出された城塞が門を開く。
「フォーゼルの銘とエンドブレイカーの名にかけて。騎士フェミルダ、まいります!」
 朗々と宣戦布告するフェミルダに対し、降り立つや飛びかかる天使マスカレイド。閃光と英霊が交錯し、開戦を眩しく告げた。
「突破させるわけには参りません……!」
 吉凶天現・ミソハ(c31436)の呼び出した神鏡が天使の光線を弾き、更に清浄な光を上乗せして打ち返す。三天使はひらりと躱すが計算のうち、避けた先は突破困難な岩場の戦場だ。
 巧みに敵を誘導し、エンドブレイカーたちは迎撃の体制を整えていく。
「ここの壁は引き受けるよ。大きな作戦にはバックアップが大事……だからね」
 陽紋の帽子を閃光がかすめる中、薔薇の牆・アナム(c06804)が大胆に踏み込んでいく。より多くを先に通すため、彼はこの戦場を主戦場と覚悟を決めていた。
 それをわかってか、ヴィーナが名付けた所の剣天使が抜剣する。追随する無数の剣と、五の切っ先を持つという騎士槍が残像を持って火花を散らした。
「シヴィルじゃないが、随分と派手だな……見失いそうにもないが」
 激しい光の乱舞に青空を見上げる・ラッシュ(c35589)は言いながらも、横合いから棍を突き込んだ。無造作なそれは軽く弾かれるが、不可視の印がしっかりと刻まれるのを彼の感覚は確認した。
「今のところ、突破してくる様子はなさそうですが……」
 銀弓の狙撃手・リェル(c00914)、更にシヴィルもそれぞれ天使に追跡の印を打ち込む。忘れてはいけない。敵の目的はこの船……『終焉に抗う勇士号』の破壊にある。
 古くは勇者たちを、今はエンドブレイカーたちを運ぶ無敵の船を、敵は破壊する力を持っている。そして勇士号が失われれば『燦然鉱脈ゼルフォニア』を目指す術は全く、失われてしまうのだ。
「勇士号はやらせないッ」
 連携されれば、脅威。とはいえ単独で突破を試みられる可能性も避けねばならない。
 弓をおさめながら、リェルは逆の手で手投げ弾を叩きつける。飛びかかる糸天使の前、閃光の壁が炸裂した。

●剣、糸、光
「……天使と言っても聞いた話とは程遠い存在だな」
 陽光を込めたレオンハルトの太刀筋が弾かれる。ニィと、口をゆがめた天使の無機質な冷酷さに彼は呟きを漏らした。もちろん、それに気圧されるわけにはいかない。
「我は盾、我は剣、我は炎!」
 名乗り上げる声と共に切っ先へと輝きが集中。レオンハルトはそれを、フェミルダとにらみ合う糸天使、脇を固める光天使へ向けた。
「我は貴様等を滅するために目覚めし獅子! 我が名はレオンハルト――推して参る!」
 炎剣が振り下ろされ、拡散。五つに分かれた光の剣が二体の天使の翼を貫き、縛りあげる。
「もらうぞ!」
 すかさずリゼルグの拳がうなりを上げる。断罪の紋章を光らせた拳は糸の天使をとらえたかに見えたが、そこに再びの閃光。
 束縛から抜け出した天使の糸が彼を鎧ごと締め上げる。
「リゼルグさん!」
「ありがたい、助かる!」
 ミソハの舞がすかさず癒しの力を投げる。返された拘束を引きちぎり、リゼルグは身を地面に投げた。
「やはり癒し手は厄介だね……!」
 天使の剣と打ち合うアナムも苦しげに漏らす。その想いはまた敵も同じ、言葉にこそ出してこないが、一致した双方の思惑。それは攻撃の交錯として描かれた。
「くぅっ……!」
 神鏡の防御が貫かれ、糸がミソハの身体をとらえる。その始終を止まった時の中で見ながらも、二人のエアランナーは敵陣にかけた。
「よう、お前もこっち側か」
「考えは同じようだな。いくぞ!」
 一瞬の中の、更に一瞬の掛け合い。シヴィルとタイミングを合わせ、ラッシュは光天使の横へと回る。目標に向けて螺旋を描くような機動で、二人の回し蹴りが光天使に叩きつけられた。
「ッッッ!」
 そして時間は動き出す。解放された仕事量が光天使を高々と空まで弾き飛ばす。
「悪いね、こちらは彼女だけじゃないんだ」
 仲間の守りを固めに引いた剣天使に、アナムは追撃でなく援護を選ぶ。詠唱と共に呼び出されるのは浄化光を放つ守護の水晶だ。
 水晶の結界は絡みついた糸を千切り、ミソハを追撃から護衛する。
「一進一退、ですか」
 隙を伺い、罠を構築しながらリェルは戦場をにらむ。押し込むにはあと一歩、剣と糸に決定打を与えねばならない。
「勝つのは……俺達だ……!」
 再びラッシュが静止した時の世界から仕掛けていく。何とか連携を崩さねば、その一点にリェルは神経を集中させていった。

●希望への破壊
 天使たちの弾幕は静止した時間でなお、障害物として動きを拘束する。
 網の目のように張り巡らされた糸と光線を小刻みにかわし、ラッシュは棍を大きく薙いだ。
「背中までは、回り切れないか」
 振るった棍が光翼と激突し、弾かれる。反動を利用して跳躍、後退。彼のいた空間に無数の剣が突き立てられる。
「ここで手間取ってはいられないというのに……!」
 フェミルダに焦りがよぎった。ここまで有効打を重ねているが、こちらも蓄積した負傷はかなりのものだ。彼女もすでに奪命剣を中心に、耐える戦いへと構えを変えている。
 戦いはここで終わりではない。今も空で闘うラズワルドを一刻も早く援護しなければいけないというのに!
「……ピンチはチャンスだ」
 猛禽めいた鎧を血に染めながらも、リゼルグは自分に言い聞かせてふんばる。予想通り、一筋縄ではいかなかったがゼルフォニアでの本格的な戦いを占う前哨戦と思えば、これも想定の範囲内だ。
「その強さ、見極めさせてもらう!」
 その粘りに応えたか、荒鷲の羽ばたきの如く振るわれた斧剣が天使たちの守りを穿つ。そしてその勝機を見逃すエンドブレイカーたちではない。
「足止めします、今の内にっ」
 よろめいた光天使にリェルの捕獲網が襲い掛かる。逃れようと光線を連射する天使兵だが、ミソハの舞がその傷をも癒していく。
「こちらは抑えます。日輪よ、照覧せよ!」
「相手をしてやる――相手をしてやる――時の向こう側でな!」
 風の流れに乗ったのはレオンハルト、そして静止した時を駆け抜けたシヴィルだ。
 レオンハルトの気魄を乗せたつばぜり合いが剣天使を弾き飛ばし、構えなおそうとした瞬間をシヴィルは走る。常人には一瞬のチャンスも時間を突き破った彼にはスローモーションを眺めるようなものだ。下ろされかけの剣を再度蹴飛ばし、糸天使が伸ばした得物をさかのぼって大元の腕を踏み砕く。
「これで――」
「まずは、一つ!」
 膝をつく糸天使にフェミルダとアナムが止めを刺す。獅子の咆哮に食らいつかれた糸天使は、そのまま回転する穂先に切り裂かれて飛ぶ。その身から砕けた仮面が、鎧が、放物線を描いて岩肌に落ちた。


●空へ!
「アナムさん、危ない!」
 レオンハルトの声でアナムは反射的に身を逸らす。間一髪、降り注ぐ剣が地面を抉り、更にそのまま縦横無尽に乱舞する。
「動きが変わった!? ……っく」
 連携を重視した此処までと明らかに違う剣天使の猛攻に、リェルは温存した力を癒しの風に乗せた。吹き荒れる治癒の嵐がなんとか戦線を立て直すが、その隙をもう一つの影が走る。
 力任せの突進でミソハを跳ね飛ばし、光天使は勇士号の奥へと一気に突き抜けようと飛んだ
「私への回復は後で……マスカレイドを!」
「くそ、間に合うか!」
 ミソハを庇い、膝をついたシヴィルは振り向きざまにガンナイフを連射する。閃光が二つ弾け、一筋の鮮血が舞った。
「その捨て身は共感しなくもないけれど、僕らにも覚悟はある」
「さぁ、断罪の時間だ」
 光天使を追う仲間たちの背中に迫る剣天使、敵の捨て身にはアナムとリゼルグは文字通り盾となってぶつかった。
 砕かれた水晶の結界の輝きの中を駆け抜けたリゼルグの拳がマスカレイドの剣を弾く。それでもなお追いすがる剣天使だが、その顔へと閃光が炸裂した。
「させないッ、いけぇッ!」
 叫び、リェルはありったけの閃光手榴弾を立て続けに叩き込む。轟音と衝撃に剣天使の身体がのけぞった。
「……とったぞ!」
 光天使を追撃した仲間たちからの快哉はほぼ同時。よろめいた光天使に空を駆け抜けたラッシュは組み付き、翼を引きはがすように地面へと掴み落とした。
「終わりです!」
 最後の力を振り絞り、フェミルダが万軍の門を呼ぶ。突き立てられた剣を合図に飛び出した英霊が、剣天使の身体を切り裂いた。

 浜辺の戦いが終わってなお、上空からの輝きはやまない。守護の水晶で治癒結界を展開し、アナムは深く息をついた。
「予定通りというか、僕たちはここまでだな」
 赤茶に染まった鎧下が身体が重い。だいぶ血を流し過ぎたのだろう。同じように癒しの天秤の加護を与えたリゼルグも、荒い息で膝をついている。
「ありがとう……本当に空を飛ぶ時がくるとは、な。昔は想像すらしてなかった」
 少し熱を帯びた声で礼を言い、ラッシュは空を見上げた。その背中にあるのは、先ほどまで天使たちの背中にあった光の翼。光天使から手に入れた『燦然光翼』はそのままに彼を選んでいた。
「足手まといになるかもしれませんが……囮にはなれるでしょう」
「なぁに、遅れてやってくるのが主役の資質だぜ? ここからぶち抜いてやろうじゃねぇか」
 剣天使、糸天使の光翼を身に着けたレオンハルト、シヴィルの声も似たようなものだ。緊張と高揚……レオンハルトは天使たちへと黙祷をささげ、一度脱いだ兜をかぶり直す。
「ご武運をお祈りします。後方は私達に任せて下さい」
 飛びあがった三人にフェミルダは一礼し、勇士号へと向き直る。そう、地上に残った彼女たちの戦いもまだ終わったわけではない。
「空に向かったメンバーが落ちてきた時の備えもしておかないとな……」
「えぇ、救護の用意も必要です」
 リゼルグの声に、何とか立ち上がったミソハが後に続く。
「さぁ、まだまだ忙しくなりそうだ――いこうか」
 アナムは一つ伸びをして歩き出した。決戦に向けて新たな武器を作り出せないか、戦いの後も活用できれば……燦然光翼の輝きは希望と夢をエンドブレイカーたちにも見せながら、空を駆けていった。



マスター:のずみりん 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2015/01/23
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冒険結果:成功!
  • 生死不明:
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