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土鍋職人の不幸

<オープニング>

 水神祭都アクエリオの農村部にほど近い山中に、少し変わった趣の小屋があった。
 小屋自体は、さしておかしな個所はない。至って普通の人間が寝泊りし生活しているであろう小屋だ。その裏には、人1人が食べていけるであろう規模の畑がある。
 変わっているのは、小屋に隣接して建てられている施設だ。こちらもやはり小屋なのだが、中には大きな釜が設けられている。
 それは、工房であった。何を作る工房かと言うと、土鍋である。
 工房の周囲にはいくつもの土鍋が無造作に地面に転がっているので、一目でそうと分かるだろう。
 この工房の主であるアゼントという職人は10代の頃にこの道に入り、30代の半ばとなった今では一人前の土鍋職人だ。彼の作る土鍋は高品質で、煮る・焼く・蒸すといった調理法のいずれにも対応できる。耐久性も折り紙付きで、よほど乱雑な扱いをしなければ親から子へ、さらには孫まで伝え使い続けられるだろう。
 しかしその高品質さが仇となり、大抵の客に1度きりしか購入してもらえない。
 工房の周囲に転がっている土鍋は、買い手がつかない作品群である。
 これらの鍋は、いつしか野良猫達のベッドになっていた。土鍋の自然な保温性と独特な感触が気に入られたのか、実に多くの猫が集まっては寛いでいる。
 さらには、仔狐や仔狸が混じっていたりもするし、この山の固有種であるヤワイノという猪の子どもそっくりな動物までアゼントの土鍋で眠っている始末だ。
 自作に買い手が付かず動物にばかり好評を博しているという現状に、土鍋職人として明日の我が身を憂う日々を過ごすアゼントだが、そこへさらなる不幸が降りかかって来た。
「食い物を寄こせ! それから金目の物もだ! 逆らうなら容赦はしねえぞ!」
 奇妙な禍々しい仮面を被った強盗に襲われてしまったのである。

「美味しい料理には美味しい食材が必要だけど、いい調理道具も必要だよね」
 その場に集ったエンドブレイカー達は、リコッタの言葉を特に肯定も否定もしなかった。道理ではあるが、この際どうでもいい事だからだ。
「と、そういう訳で、土鍋職人のアゼントさんがマスカレイドに襲われちゃったんだ」
 リコッタは行き付けの農場の主からアゼントを紹介され、美味しい鍋料理を食べたいと土鍋を購入に行った際に、その場面に出くわした。
 現在都市国家内のマスカレイドは大魔女スリーピング・ビューティーに見捨てられており、新たなソーンが発生しない状況だ。このため、現存するマスカレイドは一定以上の力量を持った強敵なのだが、仮面を隠すことはできず、配下を生み出すこともできない。さらに、マスカレイドの力を用いた悪事には一定の苦痛が伴う。
「ボク達エンドブレイカーに見つかったら退治されちゃうから、必死になって逃げてたんだろうね。その先で、アゼントさんの工房に行きついたってところかな」
 山中の工房は隠れ潜むには丁度良く、おそらくマスカレイドはそのまま居つくつもりだろう。そうなると、アゼントは常に危険に晒されてしまう。悪事に苦痛が伴うとは言え、程度問題である上に不可能ではないのだから。
「ボク1人じゃあアゼントさんを助けるのはムリそうだから、みんなにお願いするね」
 あっけらかんとそう言ってのけるリコッタは、極々自然にエンドブレイカー達を信頼している。……のだろう。
「それでそのマスカレイドだけど、いかにもな悪者の親玉って感じで、大きいハンマーを持ってたよ」
 あくまでリコッタが外見から抱いた印象だが、暴力的な集団のボスという雰囲気であった。あまり頭は良さそうにないが、その分身体は頑丈なのだろう。肉体派であるため、群竜士の能力も有しているかも知れない。
「戦いに勝つのはみんなで掛かれば大丈夫だろうけど、捕まってるアゼントさんをどうにか助けてあげてね」
 リコッタの言う通り、多数で挑めば戦闘に勝利することは容易いだろう。問題は、アゼントが捕えられている事だ。マスカレイドは自分が不利であると見ればアゼントを盾にとって逃亡を図るくらいはするであろうし、いよいよ追い詰められれば道連れにと危害を加える可能性も高い。
「工夫が必要だろうから、みんなよろしくね♪」
 実に清々しい丸投げっぷりであった。
「エンドブレイカーとしてマスカレイドは見過ごせないし、アゼントさんを助けてあげたらとっても上質な土鍋を譲ってもらえるだろうね。それにマスカレイドがいなくなったら猫とか動物がたくさん戻ってくるだろうから、そういうのが好きな人はとっても楽しめるんじゃないかな」
 エンドブレイカーとして、マスカレイドを倒すという使命を果たす。そしてその結果土鍋というオマケと猫や仔狐仔狸にヤワイノと触れ合えるという機会を得られる。
「これはもう、やるしかないよね」
 激励というには些か気合いを入れ辛い言葉で、リコッタはエンドブレイカー達を送り出すのであった。
「あ、それからボクの分の土鍋ももらって来てね♪」
 しっかりとそう付け加えるあたり、やはり激励かどうか疑問は拭えない。好意的に解釈すれば、絶大な信頼の表れなのだろうけど。


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参加者
気高き薔薇の槍姫・ロゼッタ(c00618)
阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)
青空に響く歌声・カイジュ(c03908)
光明の虎・リム(c11279)
三節棍の赤い群竜士・アヤカ(c14761)
悪夢の刈り手・シェミア(c19503)
さすらい手品師純情派・グレイ(c33296)

<リプレイ>


 山の中にある、少し開けた土地。そこに建てられた2戸の小屋の一方に、3人の来客が訪れていた。
「こんにちは。私達は土鍋を購入させて頂きたく訪れましたわ。どなたかいらっしゃいますか?」
 一見すると高貴な家柄のお嬢様といった外見の気高き薔薇の槍姫・ロゼッタ(c00618)が、扉をノックして訪問を告げる。
 しばし待つが、小屋の中から反応は無かった。
「ごめんください。アゼントさんという職人の方は、御在宅ではありませんでしょうか?」
「アゼントさ〜ん。あなたの土鍋は最高と伺いました〜。大人数での芋煮用の大型土鍋の製作をお願いしたいんです」
 さすらい手品師純情派・グレイ(c33296)と青空に響く歌声・カイジュ(c03908)も、小屋の扉を叩き用件を屋内に届くよう声を上げる。
 呼び掛けに応じられず、住人が不在なのだろうかと困惑する様子を見せる3人。……もし小屋の中から来客の様子を窺う者がいれば、そう映るだろう。
 実際には、3人は小屋の周囲から接近する者達の存在を気取られないよう、しつこく呼び掛け屋内に居る者の注意を惹いているのだった。
 小屋の中が無人ではないと、3人は知っている。
 エンドブレイカーである彼等の本当の目的は、屋内に潜伏するマスカレイドを討ち捕えられた土鍋職人を救う事だからだ。
(「はぁ……。さすがにこれは通れないわね。屋上からは入れそうにないなあ」)
 土鍋工房ならば換気口があるはずだと屋上に上った三節棍の赤い群竜士・アヤカ(c14761)は、拳程度の幅しかない管を見付けて心中で溜息を吐いた。これを通り抜けられるのは、リスやネズミくらいの大きさの生き物くらいだ。
「裏口は、無し……。あれは窓……かな……?」
 草色の外套を纏い、小屋の裏手の草むらから観察する悪夢の刈り手・シェミア(c19503)の目に留まったのは、壁の一角。その箇所だけ、壁に四角い縁取りがされているかのようで明らかに造りが異なっている。
「あれが窓なら、いざとなれば破って入れるよな」
 おそらく、蝶番などで壁の一部がそのまま開閉する構造の窓なのだろう。シェミアと同じ個所に注目し、そう見当を付けた光明の虎・リム(c11279)は強硬手段を用いる心算を立てた。
(「……! 動いたようですね。さて、どう出て来るでしょうか」)
 気配を隠し、小屋の壁に身を寄せ中の様子を探っていた阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)は、壁越しに動きを察知した。
 だが、それを他の仲間達に伝える術はない。下手に動いて自分や他の隠密行動を取る仲間の存在に気付かれてしまっては、状況が悪くなる公算が高い。
 止む無くマスカレイドに先手を譲らざるを得ない状況に、ルーンは歯痒い思いを抱きながら小屋正面の3人に事態を託すのだった。


 ロゼッタ、カイジュ、グレイの3人は、現れるのがアゼントかマスカレイドかによって、対応を事前に協議していた。
 それは裏を返せば、どちから現れたのか確認が必要だという事でもある。
 僅かに小屋の扉が開いた瞬間、3人はそこから姿を見せるのがどちらであるか、即座に判断するため凝視した。
 臨戦態勢の3人は、決して油断してはいない。それでも、この状況がマスカレイドの先攻を許してしまった。
 小屋から現れたのは、暴力だけで世の中を渡って来たという印象の巨漢であった。顔はマスカレイドの証である仮面に覆われている。
「おらぁーーー!」
 だが、ロゼッタとグレイがそう認識出来たのは、カイジュがマスカレイドの巨大なハンマーを超高速で幾度も叩き付けられた後だった。
「追手だろうが無関係なヤツだろうが構わねえ。追加の人質になってもらうぜ」
 仮面に隠れた表情が、醜く歪んでいるのだろうと分かる声音。
 エンドブレイカー達は、マスカレイドが目立つ事を嫌ってただ追い返すだけという対応をすると考えていた。しかし、マスカレイドは穏便な対処など選択しなかった。3人程度なら1人か2人は殺し、残った者を人質に加えようと考えたのだ。
「なんという短慮。程度が知れますわね」
「少し目算が甘かったようですが……、どちらにせよ戦う事に変わりはありません」
 ロゼッタが透明な細身の槍を構え、グレイは魔法の炎を纏う剣を抜き放つ。
「魔法陣展開。敵を封印してしまいなさい!」
 儀式魔法陣を籠めたロゼッタの槍がマスカレイドに突き刺すが、その巨体は小揺るぎもしない。
「万物の原初たる炎を……」
 癒しの炎がカイジュの傷を治癒した直後に、3人を衝撃波が襲う。グレイの行動が遅れていたなら、既に重傷を負っていたカイジュに戦う力は残りはしなかっただろう。
「何とか、大丈夫です。後手に回ってしまったようですが、巻き返しましょう」
 強気な態度を見せるカイジュだが、自身を癒しの気で支えなければならなかった。
「やっぱり追手だったか。まあいい、返り討ちにしてやるぜ」
 不敵なマスカレイドに対し、エンドブレイカー達には僅かの余裕もない。


 隠密行動を担当していたメンバーは、小屋の正面から響く轟音に状況を理解した。
 だが、瞬時に正面の仲間達に合流するには位置が悪過ぎた。
 屋上に潜伏していたアヤカは、屋上の端まで走り地面へ飛び降りる。その時点でカイジュは深手を負っており、ロゼッタとグレイも無傷ではなかった。
「これ以上、好き勝手にはさせないよ!」
 アヤカが振るった竜の爪を思わせる斧剣は、十字の傷をマスカレイドに刻み付ける。
「我が弓弦は、髪を束ねて作られし物。そう簡単に引き千切られはしない」
 次いで駆け付けたルーンは、本人の戦術からはやや不本意ながらも初手に細糸でマスカレイドの捕縛を試みた。
「まだいやがったのか。まあいい、纏めて叩き潰してやるよ」
 2人が加わってもなお、マスカレイドは自らの優位が覆ったとは感じていない。事実、アヤカとルーンの攻撃はさしたる痛手になってはいないのだから。
 戦況は、先手を取られたためにエンドブレイカーがやや不利であった。これを覆すためには、未だ参戦していない2人の合流が必要だろう。
 だが、リムはそれ以上に優先するべき役割がった。
「俺はアゼントを保護する。先に合流してくれ」
「分かった……」
 2人は同時に駆け出した。シェミアは仲間達の元へ、そしてリムは窓だと見当を付けていた箇所を蹴破り小屋の中へ突入する。
「あんたがアゼントだな。俺の仲間が戦ってる内に、あんたは逃げるんだ」
 小屋の中で所在なさげに立ち尽くしてい男性に、リムは蹴破った窓を指し示しこの場から離れるよう促した。幸いアゼントには外傷もなく、多少もたつきはしたものの自力で避難することができた。
 アゼントの無事を確保できたものの、マスカレイド討伐はこれからが正念場となる。
「とりあえず、何人かはくたばりやがれ」
 マスカレイドのハンマーが地面を強打し、生じた衝撃波がエンドブレイカー達を襲う。常に誰かに軽視できない被害が出ており、治癒に行動を費してしまっていた。
 初手から後手に回っているエンドブレイカー達は、回復に手数を割いてしまい攻撃の手が足りない。そのためマスカレイドは勢いに乗り猛攻が止まらない。
「死にぞこないは、大人しく散れ……!」
 その悪循環に変革を齎したのは、禍々しい大鎌の刃であった。
 完全に油断していたマスカレイドは後方からの奇襲に虚を突かれ、余裕の笑みが苛立ちの表情に取って替わる。
 ここに来て、エンドブレイカー達はようやく窮地を脱したのだった。


 戦いは水物であると、しばしば表現される。
 まさにその通りに、ほんの少し前までは圧倒的な優位を誇っていたマスカレイドは、その立場を逆転されていた。
「所詮は力任せの粗暴な暗愚。戦術を理解できていないようですわね」
 ロゼッタの不敵な物言いが、マスカレイドをさらに苛立たせる。
 マスカレイドは攻撃の度に自身の身体に漲っていた力が消失した事に、困惑を隠せずにいた。アヤカに武器を打たれ力を逸らされたことが理由なのだが、自分の力に対する絶対の自信がそんな単純な事実を認識できなくさせている。
「戦いとは一手一手が勝利へと繋がるものでなければなりません。このように!」
 ロゼッタのオーラが幻獣である麒麟を形作り、マスカレイドへと突撃する。その一撃はマスカレイドの力を封じるという、言葉通り戦いを勝利へ導く一手であった。
 自分の能力が制限されているという状態を省みることもなく、マスカレイドはただひたすら攻撃を繰り返そうとする。
 シェミアの奇襲は、ほんの少しマスカレイドの調子を狂わせたに過ぎない。そのほんの少しが、劇的に状況を変化させたのだ。勿論、そのためにはエンドブレイカー達が戦線を支えていられることが必須である。その点では、この戦いにおける最も重要な役割を担ったのはロゼッタ、カイジュ、グレイの3人だろう。
「貴方の誤った振る舞いは、棘に歪められたが故なのでしょう。せめて、それに気付いて静まることができるよう祈りましょう」
 カイジュの奏でる厳かな魔曲には、荒れ狂うマスカレイドへの鎮静の思いを込められていた。だが、その思いは届きはしない。邪悪な棘に阻まれてか、マスカレイドと化す以前からの生き方のためかは、もう本人にも分からないだろう。
 マスカレイドの威勢は優位の際には長所となるが、不利な状況ではただ空回りするだけの短所でしかない。
「全てを撃ち砕く!」
 アヤカの剣撃が、マスカレイドの前進を阻む。ついに、気迫ですらもエンドブレイカーが勝ったのだった。
「除く、土鍋!!」
 宣言通り、アヤカの攻撃は周囲に散乱する土鍋にはヒビの1つも付けてはいない。ほんの少し前の状況では、そんな冗談めいた言葉が口から出ることはなかっただろう。
「待たせたな、みんな。遅れたけど、その分一気に決めてやるぜ!」
 小屋から駆け付けたリムは、3本の螺旋状になった角で構成された騎士槍を、マスカレイドに深々と突き刺した。それは致命的な一撃であり、マスカレイドは苦悶の呻きを漏らす。
「まだいやがったのかよ、チクショウ!」
 ここに至り、自身の窮地を理解したマスカレイドは突破口を見出そうと周囲をぐるりと見回した。だが、その行動はあまりにも遅過ぎる。
「既に罠は仕掛けた。もはや貴様に逃げ道などない」
 ルーンの撒いたマキビシを踏み付けたマスカレイドは、さらに窮状を逼迫させてしまう。
「クソがっ! 何でだ? 何で俺がこんな目に遭う!? テメエ等なんぞに!」
 最後の悪足掻きに、ハンマーを振り回す。だが、当初のような鋭さは見る影もなく、エンドブレイカー達は怯みもしない。
「その気迫と執念には感心しますが、もう貴方の勝ち目はありません。せめて最後くらいは潔くすることです」
 白銀の鎖に絡み付かれてもなお、マスカレイドは戒めを脱しようともがき続ける。その様はいっそ哀れですらあるが、グレイに同情の念は浮かばなかった。
「悪いけど、もう終わってるよ……。じゃあね……」
 表情を変えることなく、淡々とした仕草でシェミアが大鎌を振り下ろす。
 マスカレイドの生への執着と未練による逃避行は、エンドブレイカーの手によって断ち切られるという結末に辿り着いたのだった。


 マスカレイドの遺体を処理し、山中に逃げ隠れていたアゼントを呼び戻した頃には、小屋の周囲は小動物達ですっかり賑やかになっていた。
 土鍋のほとんどが、猫を始めとした動物達のベッドになっている。この平和な光景こそが、この地の本来の風景なのだ。
「土鍋猫に土鍋ヤワイノ、かわいいねー」
「これがヤワイノですの? 独特な弾力がありますわね」
「うん……? どういう種……?」
 アヤカ、ロゼッタ、シェミアの女性陣は、動物達と交流をと手を伸ばした。撫でられたり、抱かれたり、つつかれたりといったコミュニケーションが楽しいのか、ヤワイノは嬉しそうに「きゅぷー♪」と声を上げる。
 動物達は人懐っこく、自分達からエンドブレイカーにじゃれつく者もいる。
「これは困りましたね。ああ、そっちはまだ駄目です」
 足元が猫達で塞がってしまったルーンは、蹴らないように慎重に歩を進めながら戦闘でばら撒いた罠を回収しているのだが、思うように作業が進まない。動物が罠に掛らないよう必死であった。
「この鍋、ヤワイノサイズで丁度良さそうだな」
 つい先日保護したヤワイノの玩具になればと、リムは適当な土鍋を見定めていた。ついでに、調理用の土鍋も吟味している。
 今回の件のお礼にと、アゼントからは土鍋を格安で譲ってもらえることになったのだ。
「うーん、これなんかいい音だし形も大きさも理想的だね。アゼントさん、これいいかな?」
 アヤカが選んだ土鍋は、特に大型の物であった。頷くアゼントは、会心の出来であると保証する。鍋の中でヤワイノが気持ち良さそうに寛いでいることは、おそらく鍋の出来とは関係ないのだろうけれど。
「何故だろう……。牡丹鍋が食べたい……」
 ぼそりと呟いたシェミアの周囲から、ヤワイノ達がそっと距離を取っていたりする。本能的に危険を感じたのかも知れない。ヤワイノは猪と肉質が異なるので、牡丹鍋にはできないが。
「ふむ、逸品揃いですね。どれを取っても上質な物ばかりですが、何か秘訣などあるのでしょうか?」
 特に動物に興味の無いグレイは、鍋についてアゼントに問い掛ける。
 アゼント曰く、この山の土が影響しているとの事であった。わざわざ山中に工房を構えているのには、相応の理由があったのだ。
「さあ皆さん、アゼントさんの鍋で煮込んだ芋煮が出来ましたよ。動物さん達もどうぞ」
 カイジュが持参した材料で調理した芋煮が完成し、エンドブレイカー達は戦いによる空腹を心地良く満たす。動物達にも冷ました芋を上げたため、とても賑やかな芋煮会となった。
「鍋が違うから、こんなに美味いのかな」
「そうですね。料理は素材と料理人の技術だけでなく、道具も重要だという事が分かります」
 鍋に舌鼓を打ちながら、アゼント製の土鍋を賞賛するリムとグレイ。
「あの、そのお鍋は私が頂いた物ですわ。貴方も気に入られたのでしょうけれど、他の物にしては如何ですの?」
 自分も土鍋を購入しようと考えたロゼッタだったが、選んだ土鍋にヤワイノが居付いてしまっていた。なんとか説得を試みるのだが、どいてくれる気配はなく途方に暮れている。
「まだたくさんありますからね、みなさんどんどん食べてください」
 箸が進む仲間達と動物達に次々とお代わりを配るカイジュの頭には、懐いた1匹のヤワイノが乗っている。
 そのヤワイノに早速名前を付けたカイジュは、先に家族に迎えたヤワイノと良い友達になってれるだろうかと、そんな事を考えるのだった。

 激闘に勝利したエンドブレイカー達が得た報酬は、美味しい食事と動物達と触れ合う憩いの時。そして、土鍋と新しい絆というオマケも。



マスター:流水清風 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:7人
作成日:2015/02/10
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