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大魔女決戦:滅びの薔薇

<オープニング>

●大魔女の城
 五将軍に六勇者、配下の軍勢も殲滅された。
 鉄壁の防御と信じた黒きエンドブレイカーの森ですら突破され、大魔女スリーピング・ビューティは自分以外に誰もいない城の玉座でエンドブレイカーが攻め寄せてくるのを待つばかりだ。
 黒きエンドブレイカーの森を作る代償として、捧げたのは城の中にいた配下の全て。
 大魔女しか存在していない城の中は酷く空虚だった。

 そして――ついに六本の鍵を集めたエンドブレイカーが、大魔女の城の扉を開いた。
「みんな、行こう!」
 星冠の杖を握り締め、呼び掛けた桜苺の星霊術士・アミナ(cn0004)は意気揚々と攻め込む。
 しかし、城に突入した矢先、此方を迎えたのは耳を劈くような大魔女スリーピング・ビューティの哄笑だった。
 やがて笑い声は止み、大魔女は歌うような口調で声だけで語りかけてくる。
『数万年に渡り準備してきた全てが、私の手から溢れ、露と消え去った』
 アミナ達はじっと大魔女の言葉を聞き、警戒を強めた。そうして、過去を思い返すような形で大魔女は語り続ける。
『五将軍、六勇者、マスカレイド……。どれ一つとっても、世界を手にするに十分な力であったというのに』
 スリーピング・ビューティの言葉を聞き、アミナは言い返す。
「あなたなんかに世界は渡さないよ!」
『だが、私は諦める事は無い』
 此方の声が聞こえているのかいないのか、構わずに大魔女は続けた。
『かつて、私は世界の全てを敵として、私一人の力のみで戦いを挑んだのだ』
 ――ならば、最後に頼るのは私の力のみ。
『お前たちまとめて、全て私が相手にしてくれよう』
 彼女がそう告げた瞬間、すさまじい魔力の奔流が渦巻いていくのが分かった。
『遺失魔術『ギガンティア』。咲き誇る薔薇の花弁の如く、我が力は幾重にも重なりあう……。そして、全ての敵を葬り去る力を……』
 まるで花弁が咲くかの如くに広がった魔力。その源を確かめるため、仲間達は城の奥に進んだ。

●魔女という存在
 大魔女の遺失魔術『ギガンティア』とは何か。
 エンドブレイカー達は、その答えを玉座の間で知ることになる。
 現れたのは肉塊めいた下半身を蠢かす、大魔女スリーピング・ビューティ。先手必勝とばかりにアミナが杖を構え、少年がその後に続いて銃弾を撃ち込み、少女が魔力を解き放った。
 だが――其処でアミナ達は気付く。
「待って、みんな。大魔女の姿がいくつもあるよ!」
「これは……幻術ですの?」
 初めに見えた大魔女とは別に、違う方向からスリーピング・ビューティが姿を見せていた。
 わずかに戸惑うエンドブレイカー達。だが、これが幻術なのだとしたも本物を探し当てればいいだけのことだ。
「……面倒だけど偽物ごと倒してあげるよ」
 更に少年が攻撃を仕掛けようとするが、仲間達は徐々にそれが幻術や偽物ではないことを感じ取っていた。
 大魔女スリーピング・ビューティの多重攻撃に混乱するエンドブレイカー達。
「みんな、落ち着いて。もしかしてこれって……!」
 アミナが嫌な予感を言葉にしようとした瞬間、周囲の大魔女達は声を揃えて答えた。
『『『私達全員が、大魔女スリーピング・ビューティ本人なのだ』』』
 大魔女が肉塊めいた下半身を蠢かせば、その真白き髪も揺れる。肉塊の中に浮かぶマスカレイドの仮面までも嘲笑っている気がして、アミナは唇を噛み締めた。
 そして、大魔女は告げる。
『これこそ、最大最古の遺失魔術『ギガンティア』なり』
 重なったスリーピング・ビューティ達の声が此方を翻弄するように響き渡った。
 すべてが本物。
 見渡す限り、此処に存在している大魔女は真の力を持っている。
「そんな……」
 あまりの強大な力にアミナの膝が震えた。だが、その傍らについた少年と少女や、傍にいる仲間の存在がすぐに震えを止めてくれた。
 アミナは首を振り、大魔女を強く見据える。
「あなたが諦めないのなら、わたし達はそれ以上にこの未来を諦めない!」
 今は怖気付く暇などない。
 星冠の杖を敵の一体に差し向けたアミナは声を張り上げ、強く宣言した。
「たくさんの強い自分がいてもあなたはたった独り。わたしは確かにひとりじゃ弱いかもしれない。でもね、わたしの傍にはみんながいるの!」
「ああ、その通りだね」
「そうです。ひとりじゃないということは、すごい力になるのです!」
 アミナの言葉に続き、皆も思いを口にしていく。
 厳しい戦いもあった。心折れそうなこともあった。押し潰されそうな悲しい出来事もあった。それらをすべて乗り越えて来れたのは、決して自分が独りではなかったからに違いない。
 此処まで来れたのは仲間がいたから。
 たったひとりが強大な力を持っているのも、確かに強さの形だろう。
 けれど、それでも。束ねて重ねた思いはきっと、それをも凌駕する力に成り得るはずだ。

「この先の未来に滅びの終焉なんて訪れさせない。
 だって、わたし達は……ッ! “終焉を終焉させる者”――エンドブレイカーだから!」

 強き思いを言葉に変え、仲間達は身構える。
 この命に未来を賭け、この戦いにすべてを込めて。
 そして、今――大魔女スリーピング・ビューティとエンドブレイカーの決戦の幕が上がる。


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参加者
むひょろぽう・ペンペロン(c03137)
禁色を纏う獣・インディア(c04103)
思いを貫く銀槍・ベイン(c04116)
ブランクリーチ・クロフ(c05769)
オラトリオの愚者・ディルティーノ(c13407)
黒飄・トウカ(c21116)
赤青オルビス・アルカ(c23651)

NPC:桜苺の星霊術士・アミナ(cn0004)

<リプレイ>

●薔薇の魔女
 ――この戦いはただの戦いではない。
 エンドブレイカーが大魔女に改編されない未来を掴むか、大魔女が世界をやり直すか。
 二者択一でしか在り得ぬ、まさに決戦と呼ぶに相応しいもの。
 遺失魔術を操る大魔女スリーピング・ビューティを前にして、むひょろぽう・ペンペロン(c03137)は盾をしかと構えた。
「今までも負けられない戦いは幾度も乗り越えて来たが……」
「今こそ、僕達の正念場だね」
 オラトリオの愚者・ディルティーノ(c13407)がペンペロンの言葉を次ぐ。
 すると、大魔女が口元を歪めた。
 その笑みを見たディルティーノには大魔女が美しくも悲しいもののように思えた。棘に包まれ、誰も触れられずに孤独に枯れ逝く薔薇のようだ。
 そして――戦いは大魔女が放った言葉によって始まりが告げられる。
「何を語るも自由。だが、すべてを絶望へと変えてくれよう」
 力ある言葉が禁色を纏う獣・インディア(c04103)に向けられ、激痛が駆け巡った。しかし、たった一撃で倒れたりなどはしない。
「悪いが簡単に膝を折る俺じゃねぇぜ……!」
 痛みを抑え込み、原初の獣に変じたインディアは床を蹴り、鋭い爪を大魔女に向けた。
「抗う理由はひとつ! テメェのエンディングが好きじゃねー、それだけだ!」
 出来るなら全てのエンディングをハッピーエンドにしたい。仮令それが甘い戯言でも。そう願うインディアの一閃が大魔女を斬り裂いた。
 其処に続いた桜苺の星霊術士・アミナ(cn0004)が星霊の力を解放し、黒飄・トウカ(c21116)も刃を抜いた。
「――参戦、仕る!」
 気負わず、そして迷わずに。様々な重圧に押しつぶされそうになっても、トウカは祈るような覚悟を抱いて鬨の声をあげた。駆け抜けるトウカは己の全力を込め、刃を振るう。
 星霊グランスティードに騎乗した思いを貫く銀槍・ベイン(c04116)も槍を差し向け、大魔女へと突撃してゆく。
 此処に到達するのにどれだけの時間が掛かり、どれほどの犠牲を出してしまったのか。
 思い返した記憶は苦く切なかった。されど、だからこそ全力を出せねばならない。
「ここまでの道のり、最後まで貫かせていただきます」
 星霊軍馬の嘶きが響き渡り、鋭い一閃が敵に見舞われた。だが、大魔女はそれらをものともせずに不敵に哂っている。
 何故だか、今はそれすら哀れに感じられる。
 憐れまれるのは心外だろうが、今は独りの大魔女はどのような心境なのだろう。知っても詮無いかと首を振ったブランクリーチ・クロフ(c05769)は、高く跳躍した。
「どっちにしろ、俺が守ると決めたものを壊し穢す存在には冥府渡りの覚悟を定めて貰うよ」
 真空を纏ったクロフの向けた一撃が大魔女を穿つ。
 しかし、クロフは腕の一振りで以て弾き飛ばされてしまった。受け身を取って何とか着地したクロフは大魔女を見据える。
「笑わせてくれる。そのような未来は拒絶するのみ」
 そして、スリーピング・ビューティはこれまでの痛みを拒み、無かったことにしてしまった。
 世界をやり直す能力を持つ大魔女にはそれらを改変することなど造作もない。赤青オルビス・アルカ(c23651)は改めて目にした敵の姿に言い知れぬ感情を覚えた。
 見遣る先には立ち向かい続けるペンペロンやディルティーノの姿があり、アミナやインディアも果敢に攻撃を続けている。
 それらをいとも簡単にいなす魔女は、なんて強大なのだろう。
「立ち塞がるのならば粛々と討ち倒すまでですわ。ですが……」
 勝ち目は薄いかもしれない。
 思わずアルカが唇を噛んだそのとき、身体に不思議な何かが巡っていくことを感じた。

●想いの力
 体力が増幅されていくような感覚。
 それは間違いなく、アルカが手にしているディアボロスブレイドによるものだ。
「これは……! そうですのね、この大剣がわたくしに力を――」
 きっと、この力があれば大魔女とて打ち倒せるはず。
 そして、アルカは夜の化身を翼へと変え、大魔女を凛と見つめる。
 ――撃ちてし止まん終焉を。
 終焉を終焉させるべく、解き放たれた力は敵を貫きながらアルカの能力を高めてゆく。
「力強い何かを感じる。まるで希望の光のようだ」
「絶望の中でも、今まで色々なものを乗り越えてきました。最後まで進んでみせますよ!」
 大剣の力に気付いたトウカは心強さを感じ、己の思いを言葉にしたベインもグランスティードと共に駆けた。
 対する大魔女は炎の魔術を召喚し、激しい焔がエンドブレイカー達を包み込んだ。
 対峙する全員が大きな痛みと衝撃を受けたが、援護する者達が皆を支える。
「いけ〜エンドブレイカ〜♪ 力を合わせて終焉砕け♪」
 永久紡ぎ・パストラル(c35334)が世界を繋ぐ歌で援護を行えば、舞歌の・ミラ(c03449)も鼓舞する踊りで癒しを担う。
「ありがとう、元気が出たよ!」
 アミナが小さく笑み、体勢を立て直したインディアも攻勢に出た。
 悪足掻きだと思われても構わない。自分達には負けられない理由がある。
「帰る所がある。それだけで力になれるんだ。さぁ、悪趣味なバットエンドはテメェにくれてやるぜ、大魔女さんよ……!」
 魔獣の終焉撃で以てスリーピング・ビューティに挑むインディア。
 彼女の攻撃に合わせ、 クロフも更なる一撃を撃ち込んでゆく。
 永劫の長い刻、大魔女にも長く募らせた想いがあるだろう。だが、お互いに譲り合えないのは疾うに解っている。
「俺は俺の生き方を貫くよ。今までも、これからも」
 恋し愛した二人の姉貴分の為に、とクロフは何よりも強い想いを抱いた。そうした言葉を嘲笑うように、大魔女は力ある言葉を差し向けて来る。
「足掻くのも良いだろう。だが、それはいつしか絶望と恐怖に変わる」
 だが、ペンペロンは怯まない。
「しったことか!」
 言葉を一蹴し、盾ごと大魔女に向かうペンペロンは強い闘志を燃やし続けていた。
 ここで負ければ、あの日々も意味がなくなってしまう。負けるなどとは欠片も思わず、全力を賭して向かう彼はただひたすら立ち向かう。
 戦いの中、大魔女には暴走や麻痺などの小手先の技は効かないと分かった。
 それでも、とディルティーノは首を振る。
「僕に怖いものなんてないよ。大事な人が死んだ悲しみも、終焉の力への恐怖も、とっくに消えた。今、ここにあるのは……前に進む思いだけだ」
 氷へと変えた翼で敵を貫き、ディルティーノは掌を握り締めた。
 あの人の意思は受け継いだ。恐れていたこの終焉の力さえ、今では誇らしく感じる。出逢って来た仲間のお陰で前へ進む事が出来た。
 だからこそ、死の思い出や苦しみを告げられた所で心は屈しない。
「諦めて死の眠りにつくが良い。その方が幸せというものだ」
 続く戦いの中、大魔女は幾度も絶望に誘う言葉を投げ掛けて来た。しかし、トウカはその言葉を否定する。
「如何に辛く険しき戦いであれ、私自身が倒れようとも……大魔女よ貴女を討つ!」
 これ以上悲しむものを生み出さぬため、この小さき一命を持って挑み続ける。
 巡る攻防の中で大火球がトウカ達を襲うが、すかさず時を掘る人・サルバトーレ(c25082)が庇いに入った。
「柄にもなく命を燃やしますか」
 自分を頭脳労働主義だと語る彼は肩を落とすが、その姿勢は真剣だ。
「これで大魔女が見納めなのは勿体ないけど、仕方ない」
「ダーヴィトさん、行きますよっ。援護します、ですっ」
 紐のデモニスタ・ダーヴィト(c35417)と甘味の剣士・アイシャ(c35418)も援護に回る。その中で幽宴の昏・ネマ(c01067)は双眸を鋭く細め、大魔女に告げる。
「勇者達から続くこの永い時の中で、もう勝負はついているだろうさ」
 始まりがあれば終わりもあり、その逆も然り。
 終わりを拒絶し、守るものがない時点で大魔女に勝ち目はない。実につまらない遊びだと語った朧銀・メリザンド(c26269)は断罪の拳と共に言い放つ。
「馬鹿げたあなたの戯れに引導を渡す! 心して受け取りなさい!」
 仲間達の怒涛の連撃が打ち込まれてゆく。
 その流れに乗り、跳躍したクロフも天高く飛び上がることで大魔女の間近まで迫った。
「其方さんの力は確かに強大だけど、俺らは其れを斃せるんだ」
 クロフは勝利を疑わない。
 それこそが力になると識っているからだ。しかし、大魔女も炎の魔術で以てエンドブレイカー達を滅ぼそうと狙い続ける。
 迫る火球にアルカとアミナが身構えた。
 其処へ陽翠・テッラ(c21259)が飛び出して立ち塞がる。
「アルカさん! このテッラ、此度貴方の盾となりましょう!」
 テッラは既に傷だらけだ。だが、妖精のレシェと共に微笑みかける表情には絶望など宿っていない。氷女帝・メレッタ(c25810)もアルカの援護に入り、真っ直ぐな視線を向けた。
「解っているでしょう? アレは討ち滅ぼせる。我々のこの手で」
 今までに積み上げた我々の軌跡は、易くも崩れ去るような脆い物ではない。ええ、と彼女達に応えたアルカは剣を握り、傍らのアミナにも呼びかける。
「わたくしがここに立っている限り、負けなどありませんわ」
 それは強がりでも、空言でもない。
 そう信じる意思こそが大魔女の胸に突き立てられる刃だからだ。
 そして、其々の攻撃が放たれる中でベインも槍を構えて大魔女を狙う。確かに敵の言葉には力があった。しかし、孤高の大魔女の言葉には重みがない。
「あなたの終焉を貫き滅ぼしてみせます!」
 ベインの突き放つ一閃は力を宿し、スリーピング・ビューティの胸を穿った。

●其の終焉
 だが――大魔女はその傷すらも無かったことにしてしまう。
「愚かな、無駄だと解らないのか」
 嘲笑と共に再び放たれた大火球が全員を襲い、ベインは深い傷を負ってしまった。
「く……まだ、屈するわけにはいきません……」
 戦う力を失いながらも、ベインは心までは負けないと強く思う。
 自らが定めた未来しか生きられないという大魔女の悲劇もここで必ず、壊してみせる。例えここで倒れようともベインの意志が潰えることなどない。これは未来を決める魔女と未来を壊す自分達の意志のぶつかり合いなのだ。
 危機を察したインディアも咄嗟にトウカを庇い、炎を正面から受け止める。
 一瞬で体力が削られ、インディアは耐えきれずに倒れてしまった。どうして、とトウカが問いかけると彼女は笑んだ。
「……俺がしたかった事だ、気にするな」
 後は頼んだ、と思いを託したインディアは薄らぐ意識の中で思う。
 本当の終焉なんてない。人が生きている限り受け継ぎ、語り継ぐ。そうやって人と人とが繋がって、未来は切り拓かれてゆく。
 この先がどんな未来だろうと恐れない。自分の未来は自分で作るのだから――。
「すまない。だが、これ以上失うものを増やしはせぬ」
 倒れた仲間に礼を告げたトウカは刀を握り直し、彼女達の分まで立ち向かい続けることを心に決める。
 同じ時、クロフも体力を根こそぎ削られていた。
 ここまでか、と膝をついたクロフは既に意識すら朦朧としていた。これまで生きてきた記憶が脳裏に浮かび、走馬灯のように巡る。
 懐かしく思うとと同時に、このまま倒れてしまうことが悔しくも思えた。
(「ああ、でも……いとしい人達が平穏に暮らせる世界を守れるなら、それで」)
 死をも覚悟してこの地にやってきたのだ。
 だから、もう――。
 クロフが不思議と穏やかな気持ちに包まれたとき、其処に白妃蛾・アレニア(c11117)の手がそっと伸ばされた。
「私の想いは理解らないまま。けれど、あなたに死んで欲しくはないの」
 守るわ、と告げた彼女はケルビウムを召喚し、クロフを支え守る形で立ち塞がる。その声を聞きながら、まだ生きなければいけないと感じたクロフは意識を持ち直した。
 大魔女はその様子を嘲笑い、薄く笑む。
「恐れることはない。抗おうが抗うまいが、皆平等に死を与えられるのみ」
 その言葉が現実になるのではないかと錯覚してしまいそうになるほど、スリーピング・ビューティの猛攻は続く。
 皆が傷付き、立っているのがやっとだ。
 それでも、漆黒の・クシィ(c07777)は最後まで諦めないと決めていた。
「集う想いが生み出す力、見せてあげようか」
 風太刀・シブヤ(c23621)も頷く。武士道とは、終焉を斬り拓く事と見つけたりだ、と。
「想いは星霜、巡り巡りたる意思と魂。総てを賭して、ただ風の如く斬るのみ!」
「世界を護ろうなんて大それた話じゃない。ただ愛しいものを失くしたくないだけだ」
 砂盾・フラウゲイル(c19574)も渾身の一撃を放つ。
 誰もが皆、思いを掲げながら挑んでいくが、大魔女の力は強大過ぎた。エンドブレイカー達をなぎ倒しながら、スリーピング・ビューティは問う。
「何故、そうまでして抗うのだ」
 次々と仲間達が倒されていく中、ディルティーノも傷付いた身体を何とか支える。
「何度でも抗い続けるよ。アンタの君臨する世界なんて認めない。たったそれだけの為にね」
 失ったものは返ってこない。
 それでも、大切な人達は見えずとも一緒に戦っていると感じられた。ディルティーノの声に頷いたペンペロンも拳を握り、強く言い放つ。
「未来がどれだけ困難でも悲嘆に濡れていても、その先を見据えて進んでいく、それが俺達人間だ! 未来をつかむってことだ! 未来の仲間達のために今ここでお前を倒す……そう、俺達は定められた結末を壊し無限の未来を拓く者、エンドブレイカーだ!」
 有りっ丈の思いを込め、竜の魂を呼び起こしたペンペロンは不敵に笑み、突進する。
「エンド! ブレイクゥァァァァ!」
 それは撃沈することすら覚悟済みの一撃だった。
 矢尽き剣折れ四肢が砕けようとも、腕がなければ歯が、動けなければ意志が、そして――自分が倒れても仲間が必ず大魔女を討つ。
 そう信じたペンペロンに続き、トウカが、ディルティーノが敵に向かってゆく。
「……おのが命もひとつの意思。束ねられた意思と想いを以てして貴女に挑む!」
「アンタがお望みなら死さえも凌駕してやるよ」
 トウカが刃を振り、神火を放つディルティーノもそれが自分と云う人間だと告げた。
 竜の咆哮、刃が風を切る音。
 そして、敵から放たれる焔が戦場を包む。
 炎が収まったとき、其処に立っていたのは――アルカただひとりだった。
 どうやらディアボロスブレイドの力が彼女を守ってくれたらしい。意識のある仲間も何人かいたが、戦う力が残っているのは自分だけ。しかし、アルカの瞳は光を失っていなかった。
「残ったのはお前一人か。安心するがいい、すぐに葬ってやろう」
「……いいえ。貴女は孤独を尊び過ぎました。貴女は孤高を過信しすぎました」
 アルカは剣を手にし、スリーピング・ビューティを睨み付けた。
 自分も既に傷だらけであり、いつ倒れてもおかしくはない。だが、アルカは敗北する気など一片も持ち合わせていなかった。
「今更何を――」
「貴女はたった独りでした。だから負けるのです」
 大魔女の言葉を遮り、アルカは駆け出す。対する敵も力ある言葉でアルカを葬り去ろうと狙い、唇をひらいた。
「絶望を宿せ、この先に待つのは破壊と終わりのみ」
「虚言など、こそばゆいッ! 愛を乗せない言葉など、訊くに値しませんわ!」
 だが――アルカの強い言葉が大魔女の力を完全に打ち消した。
「そんな、私の力が……!?」
 敵から驚愕の声があがる。其処に好機を見い出したアルカは自らを『夜』へと変じさせた。
「貴女にとって最大最悪敗因は、“わたくし達”エンドブレイカーを敵に回した事です」
 アルカがそう告げた次の瞬間。
 夜闇が大魔女スリーピング・ビューティを包み込み、絶叫めいた断末魔が響き渡った。

●流転と決意
 こうして大魔女は倒れた。
 周囲から殺気が消えたことで、仲間達も傷付いた身体を押さえて安堵を覚える。
 だが、大魔女の死体には異変が起こりつつあった。その身体は質量のある闇のようなものに変化し、ずぶずぶと崩れて溶けていく。
「……何が起こってるんだろう」
「分からないが、デモンの闇とは違うようだな」
 痛みを堪えたディルティーノが顔を上げると、トウカも訝しげに眉を顰める。
 やがて、溶けた大魔女の死体は影として地面に染み込んでいき、それらが何かに引っ張られるようにして急速に移動していく。
「追おう。何があるかわからないからな」
 アレニアに支えられたクロフが立ち上がり、影が行く先を示した。
 心配そうなアミナが「傷は大丈夫なの?」と問うと、この不穏な動きを放っておく方が辛いのだという返答がクロフから戻ってきた。
「怪我人は私が安全な場所まで運びます! 皆さんは先へ!」
 手綱を引いたベインが意識を失ったままのインディアをグランスティードに乗せ、皆を促す。
 頷いたペンペロンは闇と化した魔女を追い、奥へ駆け出した。
 辿り着いた玉座の前には致命傷を負った五十体以上もの大魔女が集まっていた。だが、それ以上のことは何もない。
 全ての大魔女は他の仲間にやられたのだろう。
 何かが起こるのかと警戒していたペンペロンだが、敵は完全に死していた。
「成程な。一体でも俺達に勝利していれば、集まって復活するなりしたんだろうが……」
「ですが、全ての本体を倒されてしまえば、生き返る術などありませんわね」
 おそらく、この一連の流れは遺失魔術『ギガンティア』の残滓だ。
 アルカも納得し、他の仲間達とすべての魔女が息絶えていることを確認した。改めて安堵しようとしたとき、またもや異変が起こる。
 玉座の間が振動しはじめたかと思うと、大魔女の城が崩壊してゆくではないか。
「みんな、脱出するよ!」
「ええ、行きますわよ。テッラ、メレッタ、急ぎましょう」
 アミナの呼びかけに続き、アルカもこれまで共に居てくれた友人達の名前を呼ぶ。
「助けに来たよ。……まったく、休む暇もないなんてね」
「走るですの! 皆さまが大魔女と一緒にぺしゃんこになるなんて嫌ですわ!」
 更に補助に訪れたイスルギとペチカがネマやクシィをはじめとした仲間を支え、或いは手を引きながら走り出した。痛む身体に鞭を打ち、クロフも仲間に続く。
(「不思議だな。こんな状況なのに、“戻れる”ことがこんなに嬉しいなんて」)
 傷は深く、気を抜けば今にも倒れそうなほどだ。
 されど、これこそ生きている証。一度は手放しかけた命がまだあることを実感し、クロフは城の出口を目指して駆け出した。

 やがて、エンドブレイカー達は大魔女の城を脱出した。
 離れた丘の上。全員が無事なことをアミナが確かめる中、ベインは嫌な予感を覚えていた。
「まさかとは思いますが……」
「おい、大魔女の城が――」
 予感は当たっていた。目を覚ましたインディアも絶句し、城があった場所を見つめる。
 突然その空間が歪み、赤黒い巨大な腕のようなエネルギーの塊が現れたのだ。その腕は空間を切り裂き、その裂け目から直径2kmはありそうな超巨大エリクシルが出現した。
「あれは何だ!?」
 トウカが身構えた刹那、それは眩い光を放って強く輝く。
「眩しくて目が開けていられない……!」
 ディルティーノも思わず目を覆い、誰もが光を直視できないでいた。
 そうして、再び目を開いたとき。巨大なエリクシルの前に、大魔女スリーピング・ビューティの死体が召喚され、エリクシルへと飲み込まれていく光景が見えた。
「一体、何だって云うんだろうな」
「少なくとも、わたくし達にとって良いことではないのは確かですわね」
 ただ見守ることしか出来ず、クロフとアルカは固唾を飲む。
 ペンペロンも目の前に広がる異様な光景を瞳に映しながら、静かに拳を握った。
「未だ終わってない。そういうことだ」
 もうどんなことが起きても恐れはしない。今なら何処までも突き進める気がした。新たな脅威が襲い来るというのなら、再び抗えばいいだけのことだ。
 そして――脈動した巨大な結晶は大魔女の姿へと変化しはじめた。



マスター:犬彦 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:7人
作成日:2015/03/20
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