ステータス画面

壁画が導く先へ

<オープニング>

●遺跡探索のお誘い
 三塔戒律マギラントにある、とある旅人の酒場を訪れたのは、大荷物を抱えて、金色の髪を頭の後ろで軽く縛った女性だった。
「遺跡探索に興味はありませんかっ?」
 エンドブレイカーたちを見つけ、彼女は勢い込んで駆け寄ってくる。
 彼女が抱えているカバンの中に入っているのは、丸められたり折り畳まれたりした、大量の紙のようだ。
 崩落のマリアンヌと呼ばれる冒険家の女性であることを、エンドブレイカーたちのうち何人かは知っていたかもしれない。
 スイッチがあれば押さずにいられない、崩れそうな場所があれば近づかずにはいられない。それが『崩落』の二つ名の由来である。
 なにを言っているのかと、つい応じてしまったエンドブレイカーの1人に向けて、マリアンヌは満面の笑みを浮かべた。
「世界を救った皆さんには休息が必要です。そして、戦いで疲れた心を休めるには遺跡の探索におもむくのが一番です! どうですか、お1つ」
 マリアンヌが紙の一枚を取り出して広げる。
 それは、どこかの洞窟の地図のようだ。おそらくは、彼女が持ってきた紙のすべてが地図なのだろう。
 声をかけた1人だけではなく、周りにいる者たち全員にマリアンヌは地図を向ける。
 誰かが不幸なエンディングを迎えるわけでも、マスカレイドが潜んでいるわけでもない、ただの遺跡探索。
 エンドブレイカーとして行かなければならない場所ではないが、だからこそ逆に、気軽にちょっとしたスリルを楽しむことができるかもしれない。
 やがて、その場にいた1人が、マリアンヌのカバンから地図を1枚手に取った。
「これは……マギラントの砂漠にある岩場に掘られた洞窟ですね」
 持っている地図はいずれも、マリアンヌがいったん探索に行き、危ない目にあって途中で引き返してきた場所らしい。
 マリアンヌは地図をながめて、彼女が得ている情報を説明し始める。
 洞窟は天然のものだが、内部には人の手が入っている部分があるらしい。
 少なくとも4ヶ所に壁画が刻まれているのだという。
 真っ暗な洞窟の中で、壁画の部分だけが消えかけのドロースピカに淡く照らされて、まるでライトアップされているようだったとマリアンヌは語った。
「ただ、明かりを見かけて近づいてみたら、実は彗星蛍の群れだったということがあったの。場所は地図に書き込んであるけど、今も同じ場所にいるとは限らないから気をつけてください」
 はっきり書いてあるのは彗星蛍だけだが、他にも危険な動物を見かけたそうだ。幸い、バルバやピュアリィなどは住み着いてはいない。
「それから、洞窟には隠された5枚目の壁画がどこかにあるらしいです」
 洞窟の入り口付近に、『兎と、鳥と、蛙と、馬が隠された最後の場所を示す』というメッセージが刻み込まれていたらしい。
 実際、マリアンヌが見つけた4枚の壁画はその4種類だった。
 ちなみに鳥は崖の上、蛙は地下水脈の向こうにある。それぞれ、元は梯子と橋がかかっていたらしいが、彼女が探索した時点でどちらもすでに残骸と化していた。
「メッセージから考えて、4枚の壁画に手がかりがあるはずだけど……手がかりを見つける前に、罠を作動させちゃっいました☆」
 例によって、いらんところを触ったのだろう。
 崩れてきた天井に押しつぶされそうになり、命からがら逃げ出す羽目になったらしい。
 壁画にはそれぞれ、2つずつ透明な石がはめ込まれている。片方は目の部分だが、もう片方には胴体の一点というだけで法則性は見出せない。壁画のサイズはどれも同じくらいだそうだ。
「でも、そんなに厳重に隠されてるということは、隠された壁画の元にはきっと素晴らしい宝物が眠っていると思うんです! ぜひ見つけてきてください!」
 お宝を見つければ、きっとエンドブレイカーの皆にも遺跡探索の楽しさがわかるはずだから。
 そう言って、マリアンヌは地図を手にしたエンドブレイカーに微笑んだ。


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参加者
気高き薔薇の槍姫・ロゼッタ(c00618)
阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)
天狼の黒魔女・サクヤ(c02573)
闇狼・ヴォルフ(c03621)
驟雨・キシス(c05687)
三節棍の赤い群竜士・アヤカ(c14761)
ナイトオブシロ・ジェイナス(c15904)
黄金戦姫・アンゼリカ(c32742)

<リプレイ>

●砂漠を越えて
 エンドブレイカーたちは暑いマギラントの砂漠を進んでいた。
 マリアンヌは同行していない。
 宝の代わりに笑い話を持ち帰ろうという者は、幸いなことにいなかった。
 とはいえ……。
「あのマリアンヌにも劣らない悪ノリをする奴が仲間にいるからな」
 闇狼・ヴォルフ(c03621)は、天狼の黒魔女・サクヤ(c02573)に視線を向けて口の端を上げた。
 もっとも道化師の仮面で隠された表情を察せるのは、悪友のサクヤくらいだろうが。
「おいおい、それはひどいだろヴォルフ。いくら俺だってやっていいことと悪いことくらいわかってるって」
 中性的な顔をした女性は、まるで猫のように悪戯っぽい笑みを見せる。
「だといいんだけどな。普段の行いが行いだからなあ」
「心配するなって。ちゃんとやるからよ」
 同行している他の仲間になら、ヴォルフもこんなことは言わない。
 長い付き合いのサクヤだからこそ言えるのだ。
 遠くに岩場が見えてきていた。
「あれが洞窟のある場所だね。まだしばらく歩かなきゃ行けないなあ」
 驟雨・キシス(c05687)はだるそうに息を吐き出した。
「お宝は気になるよね、頑張って探そうよ!」
 砂漠の暑さの中でも三節棍の赤い群竜士・アヤカ(c14761)は元気いっぱいだった。
「よーし、すっごいお宝見つけてやろうな!」
 黄金戦姫・アンゼリカ(c32742)が腕を大きく振り回すと、長い金色の髪が暑い風に揺れた。
「やる気があるのはいいことだが、あまり熱くなるなよ。物事はクールに、そしてハードにな」
 汗ひとつかかずに、ナイトオブシロ・ジェイナス(c15904)は白い帽子を斜にかぶり直す。
 岩場が作り出す日陰までたどり着いて、エンドブレイカーたちは息をついた。
 一角に入り口があった。
 洞窟がどれだけ広がっているのか、緩やかに傾斜する入り口からうかがい知ることはできない。
「広そうですわね。ここを探すとなると、かなり時間も掛かりそうですわ」
 気高き薔薇の槍姫・ロゼッタ(c00618)が思案顔をする。
「なるべく効率よく探すしかないでしょう。ツバサ、シロガネ、アギト、頼みますよ」
 阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)が召喚したスピリットたちへと呼びかける。
 暗闇の奥を、銀髪の青年は静かにながめた。
(「宝探しですか。私の探し物が見つかることはないですが……ね」)
 コヨーテのスピリットに先行させ、彼らは洞窟の中に足を踏み入れた。

●洞窟の奥へ
 幾人かのエンドブレイカーが、用意してきた灯りをつける。
 サクヤは星霊たちを召喚して探索に協力させていた。
 頭の後ろでまとめた白い髪。その上に乗っているのは、星霊オラトリオだ。
 クロノスとディオスは、ルーンのスピリットとともに先行している。
 少し先に、宝の手がかりだという文字が見えてきた。
 だが、先行していたディオスが何か合図をしている。
「気をつけろよ。そこ、崩れやすくなってるみたいだ」
 大トカゲに乗って進もうとしたアヤカが、とっさに前進を止めさせた。
「危ないなあ。天然の罠ってやつだね。ありがと、サクヤ」
「どういたしまして。けど、礼ならランに言ってやってくれないか?」
 ランというのはサクヤがディオスにつけた名前だった。
「ああ、そうだね。ありがとう、ラン」
 ペンギンの形をした星霊が、少し誇らしげに胸をはってみせた。
 前方の壁に刻まれた文字には、マリアンヌから聞いていた通りの内容が書いてあった。
 いちおう改めてロゼッタが文字を羊皮紙に書き写し、エンドブレイカーたちは地図にある壁画の1つへと向かう。
 ルーンは一番最初に、望遠鏡のように遠くを見通す目で、鈍い明かりを彼方に見つけ出した。
「最初の壁画があったようですね」
 慎重に向かうと、丸い部屋のようになった場所の、壁の一角に最初の1つは刻まれている。
 消えかけたドロースピカに、兎らしきものが照らされいる。
 皆が調べ始めると、ジェイナスが一歩下がった位置で見張り始めた。
「こういった暗号でよくあるのは兎から鳥、鳥から蛙、蛙から馬とそれぞれの壁画が次の位置を示している。もしくは、四つの壁画示す情報を統合するとある一点が浮かび上がる……」
 左右を警戒しつつも、ルーンは仲間たちに語った。
「四つの生き物に共通するような符丁がどうしても思いつきませんでしたけど、何か思いついた人いますか?」
「壁画の場所かと思ったのですけれど。兎は跳ねるから段差の上にあるのではないかと……でも、違いましたわね」
 ロゼッタが首を傾げながら、大きな壁画の兎の頭部に当たる部分に近づいた。
 キシスやヴォルフがもう1つ埋め込まれた石を調べているようだった。
 眼の石を調べていたロゼッタが、振り向いて周囲を見回し始めた。
 ルーンは一瞬異変があったのかと思ったが、どうやらそうではない。
「眼の石の場所から次の壁画が見えるかと思いましたけれども、違うようですわね」
「でも、眼に埋め込んでいるのは意味があると……」
 ルーンは言葉を切った。
「見えたか? 敵が来たようだぜ」
 ジェイナスの言葉に彼はうなづく。
 眼を凝らしてみれば、凶暴な面構えをした二足歩行のハ虫類が近づいてくる。
「蜥蜴の類ですか」
 ルーンは背負っていた弓を構えた。矢の代わりとなる太刀は、抜かなかった。
 頭上に輝く巨大な矢が彼の頭上に出現する。
 ナイトランスを構えてジェイナスがルーンの前に立った。
 獲物を見つけたと考えたか、蜥蜴が走り出す。
 壁画を調べていた仲間たちがすぐさま武器を構えた。
 だが、警戒するほどのことはなかった。
 巨大な輝く矢を受けた蜥蜴は、悲鳴とも咆哮ともつかぬ声を上げ、逃亡したからだ。
 姿が完全に見えなくなるまで、ルーンは無数の刀身を放って追撃を続けた。
 悲鳴を聞きつけて別のモンスターが集まってくる前に、エンドブレイカーたちは次の壁画へと向かった。

●壁画の探索
 次に近い場所にある壁画は、崖の上だった。
 崖は見上げるほど高く、簡単には上れそうもない。
 キシスは用意してきたロープを取り出した。
「登りやすい場所を見つけようよ。ロープを引っかける場所があるといいんだけど」
 比較的手がかりが多い場所を見つけるまで、さして時間はかからなかった。
 ロープを放り投げて、崖の上のほうにかける。
「でっぱりが仕掛けになってる可能性もある。気をつけろよ」
「大丈夫。クールに、だろ?」
 ジェイナスとキシスが言葉を交わす。
 数回引っ張って、ちゃんと引っかかっていることと、罠がないことを確かめた。
 少しでも違和感を感じる場所は触れないようにしながら崖を登っていく。
 しばらくの後、崖の上にキシスは顔を出した。
 見える範囲にモンスターはいないようだ。
 皆に声をかけて、キシスはここまで作った地図と、壁画を書き写した図を見比べた。
 ヴォルフは崖の上に登ると、周囲を見渡した。
 動植物の姿は確かにない。ただ、天井は高く、大きな岩がいくつか影を作っている。
 息を軽く吸うと、彼は魔獣の咆哮を上げた。
 天井から羽音が聞こえて、コウモリが逃げていくのが見えた。
「これで安全そうだな」
 改めて、彼は壁画へ近づく。
 ジェイナスが端を調べていた。
「壁画が外れないか試してみたかったが……無理そうだな」
 そもそも外せるような継ぎ目はないし、実際動く様子はない。
「私は壁画そのものじゃなくて、石だけ外れるんじゃないかと思ったんだよね」
 アヤカが言った。
「それじゃ、外せないか試してみることにしようか」
 長身のヴォルフが石へと手を伸ばす。
 ただ、石が外れるような仕組みもないようだった。
「俺も石が鍵だと思うが、石そのものじゃなくて場所が問題なんじゃないか。4つの壁画の情報を総合すると、最後の場所がわかるとか」
「壁画の石の共通点は目にあること。目といえば視覚、つまり壁画の動物の視線の示す先が手がかりになると思うのです」
 ヴォルフとルーンが言葉を交わした。
「多分だけど、目は次の壁画の場所を示してるんじゃないかな」
 2人の会話にキシスが付け加える。
 次に、エンドブレイカーたちは地下水路の向こうにある壁画を目指していた。
 行く手に、ぼうっとした明かりが見える。曲がり角の先だ。
「次の壁画かな?」
「まだ水路を渡ってないよ。たぶん違う」
 手鏡を持ったヴォルフが曲がり角へ近づき、先をうかがう。
「彗星蛍の群れがいる。回り道できるか?」
 頷きあい、足早に離れるエンドブレイカーたち。
 けれど、迂回した先にもさらに光が見えた。十字路の中央に蛍が5、6匹浮いている。
「倒せば突破できそうですけれど」
 ロゼッタは仲間たちへと視線を送った。
 雪の結晶のように透明なクリスタルの槍を構える。
 サクヤが星霊に呼びかけ、ルーンが弓弦を引く。キシスの胸から無数の鎖が飛び出した。
 残る5人は、蛍の群れへと飛び込んでいく。
 洞窟に広がっている群れが横目に見える。無視して、十字路をふさぐ蛍だけを狙った。
 ジェイナスのナイトランスと、ヴォルフの槍がそれぞれに敵を薙ぎ払う。
 アンゼリカの拳が、正義の光に輝いた。
「全てを、撃ち砕く!」
 アヤカの三節棍が洞窟の空気を引き裂いた。共に駆け抜けロゼッタは槍に儀式魔法陣を込める。
「沢山の数ですわね。でも、数が多いからって、私達も負けませんわ」
 広域に領域を展開し、一気に駆け抜けた後ろで彗星蛍たちが魔法陣に封じられる。
 遠距離攻撃を仕掛けた3人が、敵の失せた十字路を足早に駆け抜けてきた。
 蛍たちが放つ光が遠ざかっていった。
 さらにしばらく歩いたところで、水路の向こうに壁画が見えてきた。
 アヤカは連れてきていた大トカゲに乗った。
「トカゲなら水は平気だと思うから、渡ってみるよ。ロープを貸して」
 キシスからロープを受け取り、アヤカは大トカゲを進ませる。
 深く、流れもある水路。アヤカの腰から下は水を吸ってしまっていた。下肢に服が張り付く。
 けれど、運搬用にも使われるトカゲは、危なげなく渡りきった。
 ロープを伝って仲間たちも水路を渡ってくる。
 キシスが壁画に埋め込まれた石の位置を確かめる。
「やっぱりだね。目の石が胴体の石に重なる。目の石が次の壁画の場所を示してるんだよ」
 石の位置を記した紙を重ねて見せる。兎の目の石と鳥の胴体の石が重なる。そして、鳥の目と蛙の胴体が。おそらくは、蛙の目の位置は馬の胴体の石と同じなのだろう。
 無論、恣意的に向きや幅を調整すれば2つの石が2点に重なるのは当たり前である。
 しかし、そのように重ねた3枚の画が、すべて同じ方向――入り口を上にしているとすれば、偶然の一致とは言えないだろう。
 馬の目の位置を確かめ、同じように重ねれば最後の壁画の場所がわかるはずだ。

●大グモの巣を越えて
 長い通路の真ん中にある馬の壁画で、蛙の目に当たる位置に石が埋め込まれていた。
 そして、馬の目の位置にある石は他の壁画とはまったく重ならない。
 問題の場所に近づき、入り組んだエリアでヴォルフが吠えた。
 途中、サクヤの星霊と、ルーンのスピリットがなにかを見つける。
「蜘蛛の糸だね。けど、避けられないよな?」
 星霊たちを撫でてやって、サクヤが仲間たちを振り向く。
「じゃあ、警戒しながら進むしかないな!」
 アンゼリカは恐れる様子もなく足を踏み出した。
 ロープのように太い蜘蛛の糸をかきわけて進む。
 頭上で動く音がした……と思った瞬間、太い蜘蛛の脚がアンゼリカへと襲いかかって来た。
 天井に張り付いていたのはアンゼリカよりも明らかに大きな蜘蛛。
 だが、マスカレイドではない。
 少女の体を薙ぎ払おうとする太い脚を、全身の筋肉に力を入れて待ち受ける。
 小柄ながらも引き締まった彼女の肉体は、強い衝撃を受けながら揺らぎもしなかった。
「ふん! 蜘蛛の攻撃なんてへっちゃらだ!」
 黄金で装飾された斧剣は、明かりに照らされて厳かに光る。
 開いている片手を強く握ると、黄金の光が宿った。
 蜘蛛の巨体へ、アンゼリカは拳を叩き込んだ。
 ジェイナスは洞窟をふさぐ大蜘蛛へ、迷わず突っ込む。
 反射的な行動ではない。ランスブルグの名誉騎士となった彼はいつもクールに、ハードな道へ突き進むのだ。
 無数の残像を生み出しながら、ジェイナスのナイトランス、アインザッツが蜘蛛を貫く。
 サクヤのクロノスが操る時の中を、ヴォルフが額に生み出した瞳からの光が走る。
 ルーンが巨大な光の矢を落とし、キシスの胸から鎖が飛び出す。
 魔法陣を宿したロゼッタの槍も蜘蛛を貫いていた。
「悪いけど、さっさと片付けさせてもらうね!」
 アヤカが前衛の3人と並んで、蜘蛛の動きをさえぎる位置から乱舞を叩き込む。
 大蜘蛛は思わぬ反撃にあわてて、太い脚を振り回す。
 おそらく洞窟にこの蜘蛛よりも強い生き物はこれまでいなかったのだろう。
 今は違う。
 薙ぎ倒されてもひるまず、強靭な生物の体力を削っていくエンドブレイカーたち。
「逃げてくれれば追うつもりはなかったんだがね。悪く思うなよ」
 残像と共に、ジェイナスの槍が蜘蛛に突き立つ。
 止めを刺しても、しばらく蜘蛛は動き続けていた。

●古き記録
 岩で隠されていた通路の入り口は、蜘蛛の糸でふさがれていたが、どうにか通ることができた。
 最後の壁画に描かれていたのは、もぐらだった。
 躍動感のあるもぐらの壁画よりも少し下に透明な石が埋め込まれている。
「地図の位置じゃなくて……こっちか?」
 アンゼリカが床を示す。
 壁画の真下を掘り返すと、古びた箱が見つかる。
 穴の中から持ち上げたのは、隠し通路の場所を見つけたキシスだ。
「これらしいな。何が入ってる?」
「開けてみる。こんな遺跡に隠された宝なら期待しちゃうよね。つまらないものだったら隠した奴を呼び出して説教かな」
 中には、一冊の本が入っていた。
「これがお宝ですの、何だかとても素敵な逸品らしき物ですわね」
 ロゼッタが本を眺めて言った。
「なんだか難しそうだな……でも、おめでとう。面白い本だといいな」
 アンゼリカもそう言う。
「アウィンの日記……みたいだ。どうしてこんなところにあったんだろう」
 多くの女性と、多くの子供たちについて書かれた日記。
 エンドブレイカーたちの始祖の記録だ。
「なかなか興味深い内容のようですね」
「そうだな、できれば後で俺にも読ませてもらいたい」
 ルーンの言葉に知識欲の強いサクヤが興味を示す。
「サクヤなら古代の文書を解読するのは得意だろうからな」
 ヴォルフが言った。
「そうだなあ……代わりに読んで、中身を教えてくれたら嬉しいね。オレはいろいろ忙しいし」
 キシスはパラパラと眺める。
 なにに忙しいのかは、けして語ることはない。
 老境のアウィンが記した日記が、いったいいかなる経緯でここに隠されたのかはわからない。
 けれど、エンドブレイカーたちにとって貴重な記録が手に入ったことは確かだった。



マスター:青葉桂都 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2015/05/09
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