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路地裏に潜む不死者を撃て

竪琴の魔曲使い・ミラ

<路地裏に潜む不死者を撃て>

■担当マスター:秋月諒

●路地裏に潜むもの
 ランプの明かりが揺れていた。夜の吹く風と一緒に、酒の匂いと賑やかな客の声が響く――歓楽街。都市国家の一角に位置するその場所には、多くの酒場があった。客達は歌をうたい、店の主人はそんな歌声に笑みを浮かべ、得意の料理を振る舞う。
「さてと、今日はもう店じまいだな」
 にぎやかな客達を見送り、店主が家に帰ろうとする頃には、風も冷たくなってきていた。寒い夜だ。息も白く染まる。さぁて、帰るか。と主人が歩き出したところで、路地裏から誰かが出てきた。
「客かぁ? もう店は閉まってるよ。さっさと帰りな」
 酔っぱらいにするように大声を出した店主に、ゆらゆらと揺れる人影は足を止めなかった。見れば、人影はドレスを着た女だった。もう1人、路地裏から出てきたのは普通の男だった。ゆらり、と揺れる。ランプの明かりで見えた2人の肌は青白い。酔っぱらいかと思っていた店主は声をかけた。
「おい、あんた大丈夫なのか? 顔色が悪い……」
 店主はそう声を上げたところで、2人の様子がおかしいことに気がついた。女と男は、白い息を吐いていない。この寒い日に、だ。思わず止めた足とは逆に、男は店主に向かって手を伸ばしてきた。その腕にひどい怪我があった。骨が見える。
「お、おい……まさか!」
 青白い肌。骨の見える腕。彼らは、生きてはいない。
『都市の下層地域は、決して平和な場所ではない。善良な市民は足を踏みいれりゃぁしないのさ』
 そう言っていた客の話を思い出して、店主は声を上げて逃げ出した。路地裏からは、他にも2つの影が出てきている。
「うわぁ!」
 がん、と何かにつまづく。転んだ所に男が襲いかかってきた。何とか逃げなければ、と店主は近くにあった瓶を後ろに投げつける。男が離れると、店主は表の通りへと逃げていった。

●あるエンドブレイカーが語るには
「酒場について、ご存じですか? その、歓楽街にある、路地裏の酒場なんですが……」
 竪琴の魔曲使い・ミラはそう言うと、集まってきていたエンドブレイカー達へと視線を向けた。
「その路地裏にある酒場の店主さんが、帰宅途中にゾンビに襲われてしまいました。店主さんは、無事だったのですが……ゾンビが出たという所為で、路地裏には人が寄りつかなくなってしまいました。店主さんもその話を聞かれたのか『このままでは、怪我が治って酒場を始めても、お客さんも来てはくれない』と悲しんでいるんです」
 困っている人を放っておけませんし、何より、と言ってミラは顔を上げた。
「ゾンビたちを、そのまま放っておくわけにはいきません。別の場所に移動してしまうかもしれません。その前に、皆さんの手で、ゾンビを倒していただけないでしょうか?」
 ゾンビの数は4体です、とミラは言った。1人はドレスを着た女性、もう一人は男性。
「どちらも普通の人に見えたそうです。他の2人についてはちゃんと店主さんが見たわけではないそうですが、片方は背が低く、少し太めの方との話です。武器は持っていないとのことですから、攻撃の方法は、つかみかかったり、噛みつく等の攻撃が主になると思います」
 それと、とミラは付け加えるように言った。
「ゾンビに特別、弱点というものは無いようですが……明るいところはあまり好きではないようです」
 そこまで話し終えると、ミラはもう一度エンドブレイカー達を見た。
「困っている方の為、路地裏に潜むゾンビ達を倒してください」
 これはマスカレードが関わる事件ではないが、困っている人々がいるのも事実。そして、彼らはエンドブレイカー達を待っている。
「あぁ」
 1人がふっと笑い、1人は静かに立ち上がる。そうして全員が顔を上げれば、ミラは嬉しそうに笑みを浮かべ、そして皆の無事を祈るように見送りの言葉を紡いだ。

●マスターより

初めましての方は初めまして、お久し振りの方はどうぞ今回もよろしくお願いいたします。
「エンドブレイカー!」にようこそ。
秋月諒(あきつき・まこと)です。
まずは、シナリオへの参加、ありがとうございます。
新しいこの世界でも、皆様と一緒に精一杯戦っていきたいと思います。
どうぞ、よろしくお願いいたします。

▼敵について
ゾンビ×4体
ドレスを着た女性・普通の男性
背の低い子供体型・小太り
路地裏のどこかにいるそうです

攻撃方法
→素手によるつかみかかり、噛みつき等武器を使用しない攻撃

▼戦場
都市国家にある歓楽街の一角、路地裏です。
小さな酒場がいくつかあり、足元に酒樽が瓶が転がっています。
道幅は広くはないですが、戦闘に不向きな程狭くはありません。

▼成功条件
ゾンビ4体の撃破

*NPC 竪琴の魔曲使い・ミラ は同行しません*

それでは皆様の初めての依頼、精一杯書かせていただきます。
熱いプレイングをお待ちしております。
どうか、ご武運を。


<参加キャラクターリスト>


<プレイング>

プレイングは1週間だけ公開されます。

● 竪琴の魔曲使い・プリュム(c00386)
【探索】
並び順は前後どちらからきてもいいよう前衛、後衛、前衛。といった感じで。
私は後衛で、ランプは持っていきますが点灯はせず、道を照らすのは前衛の方々に任せたいと思います。
常に気配を探り、不審な音がしたら周りに聞きたいです。
「……あ、今何か音が…。あっちの方向でしょうか…」

【戦闘】
立ち位置はゾンビの退路を塞ぐように。
さらに灯りが苦手なゾンビが少しでも逃げないように、自分の後ろにランプを置き、灯りを灯します。
戦闘中は敵だけでなく、躓かないよう足元にも注意する。

戦法はディスコードと誘惑魔曲を交互にやっていきます。
ゾンビがこっちじゃない別の方向に逃げようとした時、
また、前衛の方たちにゾンビが攻撃しようとしていた時は呼びかける。
敵が複数同時に現れた場合、ばらばらに攻撃せず声を掛け確固撃破します。
数を減らすことを最優先とする。

【戦闘後】
お疲れ様と声をかけつつ、怪我してる人がいたら手当したいです。

● トンファーの群竜士・カズラ(c00825)
町の平和を脅かす存在を放ってはおけないッス!
この為に鍛錬を積んできたその成果、今こそ見せるッス!

路地裏では後衛の前後に前衛が立つ様に列を組んで進むッス。
自分は列の前側の前衛ッスね。
何処に敵が潜んでいるか分からないッスから、特に物陰などには警戒して進むッスよ。
敵の見た目は普通の人と変わらないという事ッスけど、普通の人が寄り付かないのであれば、人影があればそれが敵である可能性は高いッスね。

敵と確認したらダッシュで一気に間合いを詰めて、トンファーコンボを叩き込むッス。
二撃目からは攻撃を竜撃拳に切り換え、一気に倒しに掛かるッス。
自分は敵と正面から当たる役ッス。
他の敵の逃走阻止は抑え役の皆さんを信頼してお任せし、目の前の敵を集中攻撃で確実に倒していくッス!
敵を倒したら、すぐに次の敵に向かうッス。

無事に敵を全て倒せたら、店主さんに報告ッスね。
これで平和が戻り、店が再び賑やかさを取り戻せれば何よりッス。

● 暗殺シューズの魔獣戦士・アベル(c01543)
【探索】
最前列にて、ランプを片手に行動。
敵を発見するまでは一言も喋らず、気配や物音に集中する

【戦闘】
前衛、抑え役として行動。
戦闘では暗殺シューズでの攻撃と、ビーストクラッシュを使って戦う。
基本的には抑えとして向かった相手を重点的に狙い、倒した時点で他に残っている様だったらソニックウェーブを使用して遠距離からサポート等と行う。

戦闘の際、ランプは邪魔にならないようなところに置き、もしその付近で戦うことになったら、躓いたりしないように。

【戦闘終了後】
気だるそうにしながら、適当に帰路につく。

● 弓の狩猟者・ルアン(c03063)
私は明りを持たない
ランプを持つ物に頼る事になる
時間より早めに外に出ておいて暗い所に目を慣らしておこう

まずは皆一緒になって敵を探そう
私は2列目、プリュムとは両端に
影を見て、耳を澄ませ匂いを探り、風を感じる
違和感のある者はないか?
ここにあるべきではない者の気配はないか?
不意打ちを受けない為にも全身全霊で探る
発見したら皆へ知らせる、迅速に

戦闘開始後は鷹、弓双方を用いて遠距離攻撃
早い段階で後方に位置取り、余り動かずに攻撃を続ける
皆が集中攻撃をしていない対象を攻撃

特に皆から距離をとって逃げ出そうとしている敵優先
逃げ始めた敵には鷹を向かわせ少しでも命中率を上げる
弓より当たり易いのだろうか
逃さない…逃げようとしても私はお前を貫く…
その念をこめてこちらに注意を向けさせる

逃出そうとしている敵がいない時は
プリュムが狙ってない敵を攻撃して牽制

敵が2体以下になった辺りで牽制不要になったら私も集中攻撃に加わる

● アイスレイピアの魔法剣士・ラストリーフ(c03384)
・事前準備
明かりをいくつか準備。可能であれば片手に持てる松明も。
準備出来たら明かりの一つ、出来れば松明を片手に持つ。

・捜索中
前中後の三列で移動。
後衛の最も後ろに立ち、見落としに注意して捜索。
見つけたら仲間達に声をかける。
見つけた数が4体でない場合、挟撃や不意打ちを注意するよう呼び掛ける。
4体全て討伐するまで戦闘後も捜索を続ける。

・戦闘
近い敵から各個撃破狙い。
アベル君と共に一番近いゾンビへ突撃、
最前線で攻撃を引きつけ戦う。
可能な限り他の敵の目も引いて逃げ難くする。

攻撃は主に氷結剣。
攻撃している敵が3マヒと4マヒした場合残像剣に切り替えて他の敵も狙う。

敵に挟撃された場合はアベル君と離れ、
もう一方の敵を狙う。

ゾンビが逃げ出したら、攻撃対象変更。
路地や見えない場所に行かないよう回り込み攻撃。
回りこめないならダッシュ等で突撃し追撃。
追撃の手が薄い敵を優先。
逃がしたくないので孤立しない限り追い縋る。

● ソードハープの魔曲使い・ロンド(c03904)
●策敵
三列編成
僕は中列の左端
横道の奥や物影にも警戒しながら進むよ
あと、物音にも注意
アンデッドなら忍び足なんてしない…よね?

●戦闘
敵が複数いる場合、近くの敵から一体ずつ集中攻撃
その間、残りの敵は数名で抑えておく

僕は集中狙い組で行動
基本は後衛から誘惑魔曲で攻撃
前衛にダメージ総計がGUTSの三分の二以上になった人がいれば、位置を替わってもらって前に出るよ
前衛にいる間は十字剣も使う
特に防御封じが既に効いてる相手なら優先使用

抑え役が圧されている場合や、敵を4体同時に相手にする場合には、抑え役の加勢に回るね
その時は主に誘惑魔曲を使うよ

自分のダメージ総計が200以上になった時は、後衛に下がって攻撃するね
4体全てを確認出来ていないうちは、戦闘中も新たな敵が来ないか常に警戒
気付き次第注意喚起

●戦闘後
4体倒すまで策敵
全部倒したら、一応すぐその場を離れた方が良いかな?
初めから死んでたかどうかなんて、証明できないし

● 太刀の魔法剣士・シェンルー(c04497)
目的:ゾンビ討伐

○基本
後列右端(クロトの状況次第では左端)にて後方警戒しつつ行動
狭い路地での行動など性に合わないんだが
全ては酒のt…いや、困っている人間の為にも全力を尽くそう

○探索
一応シャッターで灯りを遮断できるランプを腰にくくっておく
(太刀が片手武器なら手に所持する)
後方を照らすというより周囲を明るくするといった用途で使用。
物音を聞き漏らさぬよう静かに行動
何か聞こえ、見えない暗がりであればラストリーフに照らしてもらい、
ゾンビだと確認でき次第皆に伝える
※ゾンビ確認時灯りを閉ざしてその場に置く

○戦闘
基本的に見敵必殺
遠い場合は射程距離範囲内まで移動
複数同時に出現した場合は自分に一番近い敵を攻撃
可能なら敵の後方へ、退路を塞ぐように移動しつつ攻撃する
主に残像剣で敵を翻弄しつつ攻撃
居合い切りはその動きの大きさフォーム故、最初の一撃か最後の止めで使用する
「死者は死者らしく黄泉へ還れ」

● 太刀の城塞騎士・アルヴィナス(c04528)
◆準備
光源としてランタンを用意

◆行動
ゾンビ捜索
仲間と纏まって行動
前に出てランタンを手に持ち道を照らす
ゾンビは普通の人間と見分けが付き難いという話なので、
肌の色や明らかに異常な怪我など無いかに主眼を置いて判別

戦闘
攻撃を交えつつゾンビ達の後背に移動
後背に回れたならランタンを点けたまま手近に置く
仲間と挟撃可能な位置取りをしつつ
敵の退路を断ち逃がさぬ事を念頭に置く
万が一敵が灯りを狙うなら灯りを防衛

使用アビ
【盾】効果が発生するまでディフェンスブレイド
【盾】効果が発生したら以降は居合い斬り
【盾】効果が未発生でも弱った敵には居合い斬り

攻撃対象優先順位
1:逃げ出す素振りのある敵
2:弱っている敵
3:攻撃が集中している敵
4:手近な敵

◆フォロー
ゾンビ退治が上手く行ったなら
路地裏が安全になった事を周辺住民などに宣伝しておく

● 大剣の魔獣戦士・クロト(c04753)
■1人称


■2人称
男:名前
女:苗字

■心情
初の依頼なので緊張するな〜
うまく動けるかかわからないけど
困ってる人もいるみたいだし
うまく協力をして退治できればいいな

■準備
時間は夜との事なので他の仲間が持ってると思うけど
予備でランタンを腰につけておきます

■隊列
隊列は前1後1前2の一纏まりで
前衛1:アベル・カズラ・アルヴィナス
前衛2:シェンルー・ラストリーフ・クロト
後衛1:ロンド・ルアン・プリュム・ジークリート

■探索
まず他の追跡する人と相談しておく
その後一纏りで移動。前衛と後衛の人が灯りを持つ

■行動戦闘
ゾンビを発見次第各個撃破
またゾンビが逃げないようにすぐに敵後背へ動き退路を断つ
その後は仲間と協力しなるべく退路を断つように挟み込み攻撃をする

■戦闘終了後
戦闘後は周りに酒場があるようだし
とりあえず皆に飯でも誘ってみようかな?

<リプレイ>

●エンドブレイカー
 待ち合わせの時間よりも少し早く、外に出ていた弓の狩猟者・ルアン(c03063)は暗いところに目を慣らすようにじっと先を見据える。街中で戦うのは初めてだった。しかも、夜。
(「夜目がどこまできくかわからないが、武具の手入れは怠りなく……だな」)
 気を落ち着かせる意味も込めて、磨いていた矢がきらり、と光った。明かりだ。顔を上げれば、ランタンを持った太刀の城塞騎士・アルヴィナス(c04528)や暗殺シューズの魔獣戦士・アベル(c01543)達の姿が目に入る。まだ火を灯してはいない松明を持ったアイスレイピアの魔法剣士・ラストリーフ(c03384)の結い上げた髪が風に揺れる。彼の耳が小さな足音を捕らえたのか、体半分だけ振り返れば残りのエンドブレイカー達が道に姿を見せていた。足音が重なり、互いの顔を確認する頃には夜の闇が肌に馴染んでくる。松明に火が灯った。ちりちりという音を聞きながら、集まったエンドブレイカー達は路地裏へと向かった。
 ランタンの明かりが、周囲を照らしていた。予定通りアベル、トンファーの群竜士・カズラ(c00825)、アルヴィナスの3人が前に立ち、その後ろをソードハープの魔曲使い・ロンド(c03904)、ルアン、竪琴の魔曲使い・プリュム(c00386)が歩き、後ろを太刀の魔法剣士・シェンルー(c04497)、ラストリーフ、大剣の魔獣戦士・クロト(c04753)が固める。持ってきていた明かりで照らされた路地裏は、足元を探るような事はしないでも済みそうだった。転がっていた酒樽を避けるように歩き、僅かに鼻に残った匂いを追ったシェンルーは、狭い路地で何かをするのは性に合わないんだが、と思う。だが、全ては酒のた……いや、困っている人間の為だ。全力を尽くそう、と改めてそう思い、シェンルーは視線をあげる。その先で、ロンドの髪が揺れた。ゾンビが現れて以来、人の寄りつかなくなったという路地裏は静かなものだ。横道を警戒するように、視線を向ける。2つほど積み上がった樽を目の端に捕らえながら、ロンドはふっと双子の兄弟の事を思い浮かべる。彼もまた、依頼を受けているのだ。
(「ソナタ大丈夫かなぁ……、ううん、今は集中! 僕も頑張らなくっちゃ!」)
 きっとソナタもそうであるように、僕も。
 きゅ、と軽く握った拳を解いて、耳を澄ます。新しい音は聞こえてはこない。アンデッドならば、忍び足してはこないはずだ。そうなれば、必ず音は耳に届く。そもそも、普通の人が寄りつかないのならば、人影があればそれが敵である可能性が高い、と前を歩くカズラは思っていた。

●不死者の影
 ランプの影が揺れ、石畳を照らす。伸びた酒樽の影に、アベルは違和感を感じて足を止めた。
(「足音か……」)
 その音はプリュムの耳にも届いたのか、横道を見据えた彼女は「……あ、今何か音が……。あっちの方向でしょうか……」と口を開いた。視線の先を追うように見たルアンが、顔を上げる。細められた瞳は気配を伺い続けていた彼女もまた『それ』に気がついたことを示す。
「いたか」
 風が運んできた匂いは、死者の香。ここにあるべきではない者の気配。一体かな、と口の中転がしたクロトは、初めての依頼で緊張する体で通りを見据えた。うまく動けるかどうかは分からない。けれど、こうして此処にゾンビがいて、困っている人がいるのも事実。
(「うまく協力をして退治できればいいな」)
 戦いの気配に身を引き締めた、その時のことだった。ラストリーフ、とシェンルーが彼を呼び、松明の明かりである一点を照らすように頼んだ。明かりが入り、転がった酒樽の近く、ゆらりと揺れる人影が目に入る。最初に、アルヴィナスの目に入ったのは薄汚れたドレスだった。そしてアベル達が見つけていた音の主もまた姿を見せる。男の手に、酷い怪我があった。ランプの明かりに照らし出された顔は青白い。探索の時とはまた違う、張り詰めた空気がエンドブレイカー達の間に流れた。
「挟み撃ちや不意打ちに注意を」
 現れたのは2体だけだ。その事実と警戒を告げ、ラストリーフは剣を抜く。それを合図にするように、プリュムとルアンは後方に位置をとる。
「さぁて……始めるとするか」
 とんとん、とシューズの踵で地面を軽く踏み、アベルは顔を上げた。たん、と地面を蹴ったのはクロトだった。ゾンビもまた、エンドブレイカー達を敵と認めたのだろう。獣のように口を開いたゾンビに、クロトのワイルドスイングが叩きつけられる。その隣、ドレスを着た女が腕を振り上げた。距離を詰めてきたクロトに殴りかかろうとしたその体が、ルアンの弓が鷹のスピリットを呼びだす。大きく広げたその翼がゾンビの女の腕を切り裂いていく。ざぁっと風が吹いた。プリュムが下がった先で置いた明かりが僅かに揺らぐ。
「生ぬるい風だ。それもこれも理を乱す者がいるからか。……ここはお前のいる所ではない」
 還れ。とルアンは紡ぐ。あるべき場所に、と。
「理を乱す者は、狩る……」
 引き絞った弓が、一撃を放った。

●不死者とエンドブレイカー
 甘く柔らかな、プリュムの奏でる旋律が裏路地に響き渡る。魅惑的なその音色は、ゾンビの防御を奪い去った。その次の瞬間、相手の懐へと踏み込んだシェンルーの居合い斬りがゾンビを切り裂いた。薄く開いた口が悲鳴を上げることはなく、ただ既に死した体が揺らぐ。反撃をしかけようと、振り上げられた手よりも先に、カズラが駆けていた。
「カズラ・リンドウ、参るッス!」
 トンファーでゾンビの腕を打ち上げ、揺らいだ体に蹴りを叩き込む。着地と同時に構え直せば、もう一体――姿を見せていた女のゾンビにラストリーフのアイスレイピアが深々と突き刺さっていた。
「突けば凍てつく氷の刃……」
 その斬撃は、氷を纏う。女の抉られた傷口は凍り付き、踏み出すはずの脚が凍り付く。女の長い髪が揺れ、大きく後ろに倒れた女が、ぐん、と体勢を立て直す。振り上げられた手は、隣で男と戦っているメンバーに向かうことはない。引き付けられるままに、アベルへと爪を向けるゾンビを見ながら、ロンドは誘惑魔曲をつま弾く。どん、という音に顔を上げれば、カズラの拳を正面に受け、背に回ったアルヴィナスの刃を受けたゾンビが地面に倒れていた。
「……や、やった……ッスか?」
 1体目だ。倒れていく敵を見送り、カズラはそのままの姿勢で思わず固まってしまった。唇から零れ落ちた言葉は石畳をうち、駆け抜けるエンドブレイカー達の足音に重なる。はっと、カズラは我に返った。
「ま、まだ戦闘中ッス! 集中するッス、自分!」
 ぱん、と頬を打つようにして声を上げる。その、時だった。後方、ロンドとプリュムが新たなゾンビの来襲を告げた。
「これは……っみんな!」
「あちらにゾンビが……!」
 それは足を引きずって歩くような音だった。ずり、ずりと。その音と一緒に左右の横道から姿を見せたのは、2体のゾンビ。子供と、小太りの男がこの戦場へと歩いてきていた。それは不意打ちを狙ったのか、横道から出てきたゾンビの手が伸びる。おぉ、と狭い路地から唸るような風の音が響く。新たに現れたゾンビ達もまた、エンドブレイカー達を敵と認めたのだろう。伸びる腕は後衛を狙う。プリュムは脚を引き、一度距離を取ると竪琴を持ち直した。抑え役の2人が駆ける中、ロンドは声を上げる。
「僕も抑え役にまわるよ」
 ルアンの矢が放たれる。その音を聞きながら、プリュムは弦をつま弾いた。奏であげるのは不協和音。魔曲使いがその手で作り上げた雑音はその音域を広げながら、ゾンビを撃つ。びくびく、とゾンビが揺れた。小太りのゾンビは一度その脚を止め、身もだえる。その姿を目の端で捕らえながらシェンルーは目の前にいる女のゾンビへと刃を突き立てる。残像を残す鋭い突きを放ち、抜き払った刃を再び構えれば、ひゅん、という音と共にルアンの矢がゾンビを射抜いていた。大きく、傾いだゾンビがその瞳をルアンへと向ける。その、淀んだ瞳をまっすぐ、ルアンは見返した。そして、矢を番える。どん、という音と共に、女のゾンビをカズラの拳が撃った。心臓を打つ一撃。誘惑魔曲をその身に受けていた女は、大きく体を揺らし、倒れていった。
「ちょっと良い調子かな?」
 誘惑魔曲で上手く声量の上がったロンドは、そう呟いた。切なげなそのメロディーは、ぴくり、と反応を残した子供のゾンビを捕らえる。その隣、小太りの男が獣のように口を開いた。怒るように腕を振り回して、爪で殴りかかってくる相手の一撃をラストリーフがクラッシュした。
「甘い」
 きぃん、と高い金属音が響く。まっすぐに相手をラストリーフは相手を見据えた。言葉の影、見え隠れするやる気が瞳に乗る。ざっと脚を引き、ラストリーフは剣を構え直す。たん、とアベルが地面を蹴った。どん、という音は向こうのメンバーがゾンビを倒したということだろう。ぐっと、腕を振り上げたゾンビに、アベルは構えを取った。ぐ、と握りしめた拳が、腕が魔獣化する。大きく振り上げられたそれはまっすぐ、ゾンビへと叩きつけられた。――ビーストクラッシュ。
「黙って朽ち果てろ!」
 一撃を受け、小太りの男はぐらり、と倒れた。

●終わりと始まり
 ルアンの放ったファルコンスピリットが子供のゾンビを撃つ。大きく揺らいだゾンビの手が、突き出されたままにからぶった。空を叩くだけに終わった拳を見送り、ざっと脚を引いたクロトの攻撃が子供のゾンビを撃った。ロンドの旋律を受けていたゾンビは、一撃を受けて倒れ込む。壁に背をぶつけ、けれどすぐに立ち上がる様は人というよりは獣に似ていた。す、っと息を吸い、クロトは大剣を構え直す。
「俺に出来ることは安らかに眠らせてあげる事なんだ」
 ゾンビは残り1体。目の前の敵だけ。ルアンの呼びだした鷹のスピリットは大きな羽ばたきと共に、ゾンビに襲いかかった。嫌がるように振り回された腕は、けれど攻撃としては届かない。獣のようにむき出しにされた歯を見ながら、シェンルーは一気に踏み込む。残像剣はゾンビを深々と貫いた。びくり、と震えたゾンビを見据え、カズラは駆ける。振り上げられた拳をトンファーで受け止めたカズラは、くっと顔を上げた。脚を引き、構えをとる。
「はっ」
 トンファーコンボと共に、援護するように飛んできたのはアベルのソニックウェーブ。身を捩り、攻撃から逃げるように動いたゾンビにアルヴィナスは居合い斬りを叩き込んだ。
「死人は墓の下に特等席があるだろうに!」
 ぐらり、とゾンビが揺れる。振り上げられた腕は、けれど攻撃に転じることはないだろうとプリュムは思った。2人の魔曲使いの奏でる旋律は既にゾンビをとらえていた。大きく、後ろにゾンビが倒れていく。突きだした拳が下げられ、剣が下げられる。どん、というその音がエンドブレイカー達の勝利を告げていた。

「皆さん、怪我はないですか?」
 ひとまず路地を離れた所で、プリュムは皆に声をかけた。見る限り、大きな怪我をした者はいない。ほっ、と息をついたそこでアベルの声が響き渡った。
「終わった終わった……とっとと帰って寝るとすっかな……プリュム、帰んぞ」
「ふぁ、あ、ぅと、はいっ、分かりました……っ」
 一度仲間達を見て、それからアベルを仰ぐ。辺りを見渡した後にところで、とクロトは声をかけた。
「周りに酒場があるようだし、とりあえず飯でもどう?」
 きょとん、とするカズラに「夕食」とクロトは言った。ゾンビが出ていた関係から、この辺りには人がいない。今の時間から喜んで店を開けるのは最初に巻き込まれた店主くらいだろう。依頼成功の暁には、ちゃっかり店主に酒を奢って貰おうと思っていたシェンルーは、ふっと笑った。
 そして、路地裏には人々が戻ってきていた。路地裏が安全になったと、アルヴィナスが周囲の住民に宣伝をしておいたおかげだ。店を再開した店主は嬉しそうに言った。
「お前さんたちのお陰で、またこうやって商売ができる。ありがとう」
 今日も、路地裏には賑やかな声が響いている。
マスター:秋月諒 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
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いまいち
参加者:10人
作成日:2010/02/16
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冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし