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星迷宮のラーラマーレ・アクアフィオーレ!

<オープニング>

●夏空の街ラーラマーレ
 世界で一番鮮やかな青をぎゅっと詰め込んだような夏空に、大きな大きな積雲が浮かぶ。
 大きな船の底みたいに平らな雲の底から雄大な山のようにむくむくと盛り上がった雲は、見ているだけで何だかわくわくしてしまう不思議な魅力を持っている。
 あの雲はきっと空の海に浮かぶ大きな島で、雲の島にはきっと夏空の王国があるはずだ。
 ――夏空の街ラーラマーレに住む誰もが、思わずそんな空想をしてしまうくらい。

 星霊の力によって映しだされたこの夏空のもとに広がるのは、何より鮮やかな夏空の青をそのまま映しとって輝く広大な湖だ。大地に落とされた夏空の滴を思わすこの湖の名はマーレ、明るい紺碧の波寄せるマーレの湖畔には、緑鮮やかな街路樹と白く輝く街並みが印象的な街が広がっている。
 夏空の街という二つ名で愛されるこの街は、その名をラーラマーレと言った。
 水神祭都アクエリオの一部たるこの街も交通の要はやはり運河だ。白く輝く街並みの至るところに張り巡らされた水路はまるで夏空をそのまま透きとおらせたような青でラーラマーレを彩っている。
 数えるのもイヤになるくらい数多あるその運河のひとつ、カナル・フォンターナで――三年前の夏にちょっとした事件が起きた。

 夏空の青を映した水面が大きく波立ち、ひときわ勢い良く流れる中で幾つもの巨大噴水が盛大に水を噴き上げる運河、それがカナル・フォンターナだ。
 主にゴンドラ遊びやゴンドラ乗りたちが腕を競う場として使われるこの運河を往く舟は、大きな波を突っ切り自らも派手に波を立て、高々と噴き上げられ雨や滝のように降り注ぐ噴水の水を切り裂き、あるいは巧みにすり抜けて、迅風のごとく翔けていく。
 そんな舟を駆るゴンドラ乗りには当然血気盛んな者が多く、腕を競う彼らの間でちょっとしたいざこざが起きるのもよくある話。けれどある日、腕の立つゴンドラ乗り同士がアビリティでぶつかりあった。
「俺の星霊アクアの大津波を喰らえ!」
「なめんじゃないわよ、こっちにはフェニックスがついてんだからね!」
 翔ける水の流れに己が舟を任せたまま互いに術を放つゴンドラ乗りたち。けれど流石に直接相手を狙うほど頭に血が登っているわけではなかったらしく、舟をも呑み込む津波は滝のごとく降る噴水の水にぶつかって、派手に爆ぜた水飛沫を不死鳥の炎を纏った突撃が切り裂いた。
 生まれたものは巨大噴水のそれよりも盛大な水飛沫に一瞬視界が利かなくなるほどの濃い水煙、そして夏の陽射しと不死鳥の炎を浴びた飛沫の眩いきらめきに、そこかしこに溢れた無数の虹。
 それから――。
「うわー!?」
「きゃああぁぁあ!?」
 術に夢中になって舵を取りそこなった彼らの舟が思いっきり転覆して、壮大なまでに大きく上がった水柱が夏空に描きだした、水と光の花。
 鮮麗な青空に浮かぶ雄大な積雲、夏空の王国にすら触れたように見えた水の花の美しさ、そして、続いて降りそそいだ水とそれらが跳ね上げた飛沫の心地好さと楽しさに、その場に居合わせた街のひとびとは盛大な拍手と歓声を贈ったのだとか。

 その光景があんまり綺麗で楽しくて、みんなで派手にこれやってみようよ! とばかりに始まったのが『アクアフィオーレ』という祭り。
 鮮やかな夏空の青を映した運河の波や、夏空の王国へ届けよとばかりに噴き上がる巨大噴水へと水面を翔けるゴンドラから次々にアビリティが放たれて、夏空の水面に夏空の王国に、眩く華やかな水と光と虹の花が幾つも幾つも咲き誇る。
 皆で夏空色の水面や巨大噴水にアビリティを放って煌く水の花を咲かせる、その祭りを。

●さきぶれ
「あのね今年はね、星空の綺麗な夜にアクアフィオーレを開催することになったんだって!」
 この祭りが近づくたび夏空の狩猟者・アンジュ(cn0037)の胸は期待と歓びにはちきれそうになる。皆で『創った』その祭りが新たな試みに挑むというのだから、なおのこと。
 毎年、眩いくらい鮮やかな夏空の青と真白に輝くに届けとばかりに水と光の花を咲かせてきたこの祭り、アクアフィオーレを、今年は極上の黒瑪瑙のごとき夜闇に金砂銀砂を振りまいたような星空のもとでやってみよう――と夏空の街のひとびとは思いついたらしい。
 今年はお試し。夜のアクアフィオーレも素晴らしいものになったなら、来年からは昼から夜にかけてぶっ通しでのアクアフィオーレにしようか、という話になっているのだとか。
「ってなわけでね、是非ともエンドブレイカーさん達に参加してもらいたいって言われたの!」
 何しろエンドブレイカーには高位のアビリティまで使いこなせる実力者も多く、その上、他の者には会得できないエンドブレイカーのみが使えるアビリティだってある。アクアフィオーレを盛り上げるにはもってこいの人材というわけだ。
「だからね、アンジュと一緒に夜のアクアフィオーレを盛り上げにいこうよ! いこうよ!」
 夏空の街へ、水と光の花を。
 そして絢爛たる星空をめがけ、アクアフィオーレを咲かせに行こう。

 舞台は星空の綺麗な夜、夏空の街ラーラマーレ。
 漆黒の夜空には圧倒的なほどの星々と輝く月、そして街には数多の篝火が燈されて、艶めく濃藍の夜闇を水面に映した運河が流れゆく。
 夏夜の濃藍を映した水面が大きく波立ち、ひときわ勢い良く流れる中で幾つもの巨大噴水が盛大に水を噴き上げる運河、カナル・フォンターナをゴンドラで駆け、月明かり星明かり、篝火のあかりにきらめく運河の波や、巨大噴水が噴き上げ降らせる水にアビリティを放って派手で綺麗で眩い水の花を咲かせよう。
 望めばカナル・フォンターナを迅風のごとく翔ける街のゴンドラ乗りの舟に乗せてもらえるし、自前のゴンドラがあるなら勿論それで挑んでもいい。大きな波を突っ切り自らも派手に波を立て、高々と噴き上げられ雨や滝のように降り注ぐ噴水の水を切り裂き、あるいは巧みにすり抜けながら、自らの技であでやかに華やかに水と光の花を咲かせていこう。
 狙いは当然運河の波か、雨や滝のごとく降る巨大噴水の水。
 漕ぎ手が技を使えばその状況やタイミング次第でゴンドラが転覆するかもしれないけど、それすらひときわ派手な水の花で祭りの彩りとなるから遠慮は無用。
 ねえ、何をしようか。
 星空と波飛沫の狭間に輝くドラゴンスピリットとそのブレスを解き放ってみたいし、滝のごとく降る噴水のヴェールへ眩い雷を撃ち込み煌きと水飛沫を迸らせるのもきっと綺麗。そして煌く水飛沫の中を不死鳥の炎を纏って翔けたなら、きっと夢のような光景が見られるはず。
「あ、もしね自前のゴンドラ出してもいいよってひとがいたら出してくれると嬉しいんだよ! そしたら演出の幅も広がって楽しそう!」
 波をゴンドラで突っ切るだけでなく、巨大噴水に直接ゴンドラで突っ込んだ瞬間、同乗者が噴水の中でアビリティを炸裂させてみるのもいいし、運河を翔けながら複数の噴水に連続で突っ込み、その都度連続で噴水の中からアビリティを、というのも楽しそう。
「みんなと一緒なら何かもっとすごいことできそうな気がするんだよ! するんだよ!」
 風を浴びて舟で翔けて、水を浴びて光を浴びて。
 夏空の街に水の花を、アクアフィオーレを咲かせに行こう。
 たとえゴンドラがひっくり返ったって、それもひときわ大きな大きな祭りの花になる。
 咲き誇れ水の花。
 夏空の――星空の王国へ届くまで。

「あのね、そうやって夏夜のアクアフィオーレをめいっぱい盛り上げられたなら、また逢おうね」
 夏の輝くような歓びも幸せも、眩いくらいの愛しさも泣きたいほどの切なさも、全部全部ここにある。
 ――そんな夏空の街ラーラマーレで、きっと、また。


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参加者
命の騎士・ロータス(c01059)
花渫う風・モニカ(c01400)
漆黒ノ竜・リューウェン(c02487)
退かない媚びない顧みない・エレノア(c04817)
勿忘草・ヴリーズィ(c10269)
緑青の獣・オズヴァルド(c31692)
黄昏の諧謔・シルヴェスター(c33552)

NPC:夏空の狩猟者・アンジュ(cn0037)

<リプレイ>

●夏迷宮のラーラマーレ・アクアフィオーレ!
 艶めく夏夜の濃藍を映した水面は激しく波立って、夜空の星月や街の篝火のあかりを受け無数の煌きを躍らせる。夏夜にもラーラマーレの街を勢いよく流れるカナル・フォンターナの名物は金と銀の気泡渦巻く水面から派手に噴き上がる幾つもの巨大噴水、盛大な水柱と水飛沫が今宵目指すのは夏空の青ではなく、漆黒の夜闇に絢爛たる星々と月が輝く星の空。
 星空の王国へ向け――今咲き誇れ、ラーラマーレ・アクアフィオーレ!
「さあ、派手な演出なら任せたまえ」
「何の! 派手さやったら俺らも負けてへんよ!」
 夏の艶めかしい夜風に躍る水飛沫、全身でそれを感じる爽快感に賢者の石と同じ色の瞳を細めた黄昏の諧謔・シルヴェスター(c33552)は、足元のゴンドラを揺るがし噴き上がった巨大噴水の頂に水の花が開いた瞬間、それを更に咲き広げるよう夜空に黄金咲かせる魔法の花火を打ち上げた。
 煌く金の雨となって降る水飛沫の中を飛ぶように翔けるは命の騎士・ロータス(c01059)の舟、自分自身で移動すると同時に遠距離攻撃は放てないから、
「星空に世界で一番綺麗な花が咲く夏の夜、ふわもこフェアリー一世一代の大舞台やよ!」
 迷わずゴンドラで突っ込んだ巨大噴水に己の身体が掬いあげられる勢いに任せて、奔流とともに放り出された夜空で広げた天翼煌かせ、羽根舞う翼から一気に撃ち込む光の剣の雨。
 眩く鋭い光剣の驟雨に打たれた巨大噴水が夏夜へ爆ぜて咲かせる耀きの花、光も水も浴びればひときわ高鳴る鼓動も脈動もアクアフィオーレへの讃歌となって勿忘草・ヴリーズィ(c10269)の唇から溢れだした。
「さあ水の向こう側、もっと高いところに行こう! 星まで手が届くぐらいに!」
「うん! 行くよリズちゃん、かくべつとくべつ!!」
「よっしゃ! オレも合わせる、行くぜー!!」
 耀く水花の滝を絶好調で潜り抜けたヴリーズィの舟が向かうはひとつ先の巨大噴水、噴き上がる奔流に突撃した瞬間、夏空の狩猟者・アンジュ(cn0037)が扇の追い風で親友を舞い上げる。
 華やかに神秘的に彩るぜ、と緑青の獣・オズヴァルド(c31692)が掲げた月剣が爆ぜる噴水の頂に癒しの月を顕せば、聖なる月光に染まった噴水の頂から、背に妖精の碧羽を煌かせたヴリーズィが夜空へ飛んだ。
 妖精の鱗粉と煌き降る水飛沫はさながら星のかけら達、純白のミニドレスめいた水着の裾に煌き纏わせ退かない媚びない顧みない・エレノア(c04817)は、
「夏の夜には炎が似合うのよ。一夜限りの恋ほど燃え上がるものはない――な〜んてね♪」
 周回するゴンドラの上から妖精の煌き弾ける水面をめがけ、天使の翼から炎羽の雨を降らしめる。夏夜の水面に次々と生まれてきらめく水と焔の宝冠、まさしくひとにしか咲かせられない魔法の花に花渫う風・モニカ(c01400)は瞳を輝かせ、
「さあ、みんなで星よりも月よりも眩い光の花を咲かせようね!」
「遠慮なしの全力全開、だな」
『くえっ!』
 花咲くゴンドラから飛び出し空色ビジュー煌く靴で夏夜の水面へと全力スライディング! ひときわ大きく爆ぜた波に乗り、蒼リボン飾るペンギンを舳先に乗せた漆黒ノ竜・リューウェン(c02487)の舟も夏夜の運河へ飛び出した。
 揃いの蒼リボンで結った髪を靡かせ朗々と響かせる唄に乗せ、慣れた櫂捌きでゴンドラを急旋回、跳ね上げた水飛沫に煌く水晶結界を展開すれば、蒼き水晶を更に眩く煌かせ、鮮麗な桃色の光が夏夜の波間を翔け抜けた。
 輝く蓮花咲かせた馥郁・アデュラリア(c35985)を乗せた陽凰姫・ゼルディア(c07051)は、己が舟を流れに任せて扇を翻し、睡蓮の耀きが咲かせた水花を光の鳥と雲払う風で星空へと舞い上げる。
 波立つ流れのままゴンドラが噴水に突撃すれば巨大な水柱そのもの輝かせ、星霊フェニックスが飛び立ち溢れだす歌声とともに激しく砕けた水面が舟も彼女達も呑み込んだ。
 藍の玻璃が融けたような夏夜の水の中、歓喜のまま互いに手を伸ばす。
 咲き乱れる花と沈む波の下、頬を寄せ合いそこから見上げる花と星空は――とびっきり!
「アンジュもフェニックス喚ぶんよな?」
「ううん、アンジュがフェニックスになるの!」
 波を浴びて笑み燈した彼女自身が焔の翼を纏う様にロータスも笑み咲かせ、背の翼を一気に氷へ変えて目指すは夜空に噴き上がる巨大噴水。ゴンドラの舳先から思いきり跳躍したなら夏夜に煌く軌跡を描いた焔と氷の翼が滝のごとく降る噴水の水を斬り裂いて、真白な水煙と眩く無数に煌く凍気の星を生みだした。
 仰いだ星空には、ふんわり霞む水煙と氷粒にかかる七色の虹。
「すごいよな! 夜に虹を咲かせられるなんて、あの星空にも届きそうやんか」
「あのね、気持ちはもうきっと届いてるよ!」
 星空へ両腕広げ降りしきる水と光の花いっぱい抱いて、背から落ちた水の星空でも笑い合う。

●虹迷宮のラーラマーレ・アクアフィオーレ!
 ――さあ今夜こそ、焦がれてやまぬ星空へ!
 前触れなく巨大噴水が斬り裂かれれば、湧き上がるのは興味の歓声。
 時を突き破った空追い・ヴフマル(c00536)は続けて飛びこんできた娘の手を取り、光の翼を咲かせ水に沈むより速く星空めがけて翔け上がる。
 裂かれる水の天蓋、ひときわ鮮明に広がる星空。
 羽ばたく勢いで躍りあがった噴水の頂、咲き誇った水の花と一緒に落ちる感覚を覚えたなら夜風も星空の煌きも胸いっぱいに吸い込んで、ハルピュイアの隻腕・オニクス(c11582)は眩く燃え盛る竜の火炎を生み、夜空に爆ぜる水飛沫ごと大輪の花を咲かせた。
「こりゃ、俺らももっと派手にいくっきゃねぇよなぁ!!」
「んじゃ、どーんと喚ぶよ! 喚ぶよ!」
 星空も水面も染め抜く焔の輝きが消えぬ間に、オズヴァルドが楽園の門を開けば現れる華やかな七色の光。天から降りる虹の環を潜るよう銀に輝くアンジュのドラゴンが顕現し、眩いブレスを水面へ叩きつければ夏夜の水面へ大波が迸る。
「姐さん! 俺らで迎え撃つで!!」
「よし来た、思いっきり行くよっ!!」
 虹と銀の輝き秘めた濃藍の大波の前には二艘のゴンドラ、ロータスとエレノアはそれぞれの背中に氷と焔の天翼咲かせて、夜色の波を瞬時にアイスブルーへ染める冷気と鮮やかな紅蓮に輝かせる炎羽を注ぎ込み、盛大に弾けた氷粒と水煙の煌きで夜風を満たした。
 氷粒と水煙が一瞬の霧雨と変われば淡く煙る水面にふうわり世界樹の花が咲き誇る。
 霧雨と薫風が舞う中を翔けたのは花を咲かせた花の詩・シャルロット(c06521)の舟、櫂から春花の魔鍵へ持ち替えた恋人が七色の虹で巨大噴水を斬り裂けば、舟が飛び込んだ奔流の中、即興歌を唄い上げる鴉羽・ゼロ(c09427)の声が凛冽に煌く吹雪と咲き乱れる花々を七色に輝く噴水に乗せて星空へと噴き上げた。
 皆が咲かせる水と光の花を五感と全身全霊で感じられる水上の特等席、水花も波も幾つも浴びてもう頬を濡らすのが水なのか嬉し涙なのか判らない。ただ心が躍るままに笑み咲かせ、ヴリーズィは氷剣を夜風に閃かせた。
「まだまだ咲かせるよ! わたし達も炎と氷の共演といこうかアンジュ!!」
「きゃーいくよいきます、とびっきりでいきますともー!!」
 彼女の舟から炎の鳥となった娘が水上へ翔けると同時、夜風に涼やかな軌跡描いたヴリーズィの氷剣から雪結晶の戦輪が迸る。煌々と燃え立つ炎の翼の周りを凛と煌く氷花が舞い飛び翔ける様にこれはこれはと興をそそられたように口許へ笑みを刷き、シルヴェスターが炎と氷の軌跡に黄金蝶の舞を添える。
 絡み合う輝きは一瞬で水面を翔け、標的となった巨大噴水を水煙に変えて凍らせて、波打つような黄金の煌きを孕ませる。わあと感嘆溢したヴリーズィがぱちり指を鳴らせば融ける氷の紗幕、ざあと水が滝となって零れる中をシルヴェスターを乗せた舟が潜り抜け、
「吝嗇は罪ゆえ、存分に披露させてもらうとしようか」
 錬金術士は華やぐ笑みひとつ、惜しげもなく掲げた黄金から再び光輝く蝶の群れを溢れさせた。
 ――蝶は標本にするに限るが、こうして戯れるのも悪くない。
 漆黒に星月輝く夜空へ水晶めく水飛沫の煌きを連れ、乱舞する黄金蝶が幾重にも煌き舞い上がる様が観客の瞳を奪う中、リューウェンは波間の暁色をゴンドラへと掬って、
「アンジュ殿、ひっくり返るまでの間いかがだろうか?」
「わあいわあい派手にひっくり返ろうね! 返ろうね!」
 悪戯に笑み交わせば軽く櫂を繰って次の巨大噴水へと加速、
「エレノア殿!」
「はいよ! 待ってました!」
 声を張ると同時に櫂を手放し、黒き夜風の刃を抜き放った。視界の隅に翻るのは群青と真珠の彩躍らす舞扇、一足速く舟底を蹴ったアンジュが招く追い風に笑み、輝く光の翼へと変じた夜風の刃を光風と成して眼前で噴き上がる巨大噴水を薙ぎ払う。
 同時に転覆したゴンドラから放り出された水の星空から見る光景は――。
 盛大な水飛沫と輝き溢れる光の羽根が扇の旋風に乗って渦巻き舞い上がるその中に、
「さあ、星霊ディオスのお出ましよ! ――ラーラマーレの皆さんにも、祝福がありますように」
 今宵限りの星霊術士エレノアが愛らしいディオスを召喚、付き合いの浅さもなんのその、ぽふんと現れ水神様ばりの華麗なウインクも披露した星霊が、観客にも届けとばかりに祝福の聖水の優しい煌きを振りまく光景。
 わあっと沸き立つ歓声にひときわ喜色を感じるのはやはりここが水神祭都だからか。
「やっぱこーでなくっちゃな……っと、うわあ!?」
 舟縁で思いきり魔鍵を振り上げたオズヴァルドはそのまま勢いあまって背から水の星空へ。けれど全身に感じる水の心地好さも漁師見習いとして暮らし始めた身にはもうすっかりお馴染み、
「まだまだ! ここからだぜ!!」
 思いきり破顔したオズヴァルドはそのまま裂帛の気合いを風に変え、ゼンカイオーラで周囲の水を威勢よく噴き上げた。入れ替るように沈む水中で揮うのは魔鍵ではなく月の剣、一閃すれば夏夜の運河の水中から、極光めいた美しい月光の紗幕が波立つ水面を越え星空までも踊る。深く膨らんだどよめきが爆ぜる歓声となって咲き誇る。
 ああやっぱり。
 ――オレはこの街が好きで好きでたまらねぇよ、夏空の街ラーラマーレ!

●星迷宮のラーラマーレ・アクアフィオーレ!
 濃藍の水の中から翻った月光の紗幕が波に水飛沫に幻想的な煌きを踊らせる。ああ、ひと以外の誰がこの水と光の花を咲かせられるだろう。皆で競って重ねて咲き誇らせて。
 だからこそ、眩しく尊い極上の花になる。
「この煌きごと、客席にも涼をお届けするね!」
 花咲くゴンドラから再び跳んだモニカは光の波が消えぬ間に輝きごと水面をスライディング、星空と月の輝き秘めた波飛沫の涼やかさをたっぷり皆へ贈って、悪戯に片目を瞑れば煉瓦づくりの運河の岸を蹴りつけ軽やかな宙返りで舟へと着地。
「さあ、今度は嵐を喚ぶよ!」
 術力を集中するための一拍は不敵な笑みと台詞で繋いで、朝露戴く花の竪琴を抱いて荒ぶ嵐の旋律を奏で出す。荒れ狂う真空波が夜色の水面を抉り激しくうねる大波を生み出せば、不穏な嵐を鮮やかに斬り裂く光翼一閃。
「光の軌跡を見失うなよ!」
「勿論!」
 光の翼で昏錆の・エアハルト(c01911)が翔け抜ければ裂かれた嵐の波は優しい慈雨となって水の星空に降りそそぐ。光の軌跡をなぞる豊穣の魔鍵が描くは虹色の軌跡、無数の雨滴が躍る水面に数多の虹の煌きが花と咲き誇った瞬間、花溢れる舟も夏夜の花園に躍った。
 水の花園に放り出される感覚さえ愛しくて。
「ねえエアさん、終わって欲しくないよ!」
「終わったりしねぇよ」
 波に涙に頬を濡らせば抱き寄せてくれた彼が笑う。
 一年後 十年後 百年後の未来までも。
 ――永遠に咲き誇れ、アクアフィオーレ!!
「そう、まだまだ終わらないわよ! あたしたちの熱い心で星をも落として見せるわ!!」
 虹色の水の花園を翔けた舟で噴水の頂を見据え、純白の衣装と翼を纏って弓を構えるエレノアは恋の矢を射る天使さながら。けれど弦音が響けば、星空からは鮮烈に輝く大きな流星の矢が落ちて巨大噴水を直撃した。大輪の水花が星の輝き孕んでひときわ大きく爆ぜれば、
「ええ、落として見せますとも! 幾らでもね!!」
 息を吹き返した噴水めがけ、眩暈の尾・ラツ(c01725)が招くグランドクロスが降りそそぐ。氷に焔に虹の星、彩り鮮やかな星々が天穹から堕ちては咲かせる水と光の百花にシルヴェスターは愉しげな笑みを閃かせ、
「此処は見物だけとは行くまい、我々も魅せようではないか!」
「承知! 参ろう、シルヴェスター殿!!」
 水と光が万色に煌く百花乱舞する水の星空へ流星雨を思わす黄金槍の雨を降らしめた。夜空から降りしきる黄金の輝き、夜風に躍る黄金の波を斬り裂くよう揮われるリューウェンの剣の軌跡からは幻の薔薇が溢れだし、想いよ届けとばかりに天と水の星空へ舞い踊る。
 皆の技と心が重なりあっていく様はまるで壮大な交響曲を奏でているかのよう。
 紡いで、依り合わせて、ほら咲き誇る。
 水も光も、皆の笑顔も咲き溢れる様が幸せで、
「まだだよ! まだ消えない!!」
 指揮棒のごとく夜風に躍ったヴリーズィの氷剣から奔った雪花の氷輪が解き放った凍気が巨大な噴水の表面を一気に涼やかなアイスブルーで彩れば、
「ケルビウム、君も出てきたまえ」
「そんじゃオレも行くぜ、夜を昼に変える輝きを御覧あれ!!」
 賢者の石抱く手をシルヴェスターが夜風に躍らせ、顕現した最後の使徒が噴水を抱擁し――薄い氷を無数の煌きに変え、オズヴァルドが開いた門から広がる楽園と降りしきる陽光の中へきらきらと咲き誇らせた。
 陽光の中へ瑞々しい枝葉が伸びる。ケルビウムの新たなる芽吹き。
 そう、花は咲いて新たな芽吹きへと繋がっていく。
「ねえ、未来へ進もうよ! 来年もまた水と光の大輪の花を咲かせられますように!」
「そうやって永遠になっていくんよな!」
 今ここにいられることが嬉しくて、心翔けるままに合歓の風と綺羅星の躍る扇を翻したヴリーズィが颶風と羽ばたき巨大噴水を翔けあがる。盛大に弾けて煌き降りそそぐ飛沫の中ロータスが抱くのはロックギター、胸裡から爆ぜる歓喜のままに掻き鳴らせば、皆の熱気と高揚を更に盛り立てる旋律と華やかな光が溢れだした。
 皆が、夏空の街が、ラーラマーレですごした日々が、この世界で出逢った愛しいすべてが。
 ――大好き。
 ただただ歓喜に彩られた歌詞のない唄に込めた想いは唯ひとつ。
 喉の奥から、魂の底から張り上げる歌声に想いを乗せて咲かせる水と光の花々をこころとからだのすべてで受けとめれば、息つくように自然に言の葉が生まれる。今なら言える。
 ――この世界に生まれて、良かった。

 たった一度しかない夏を幾度も廻って積み重ねて。
 さあ往こう――掛け替えのない、永遠の夏へ。



マスター:藍鳶カナン 紹介ページ
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いまいち
参加者:7人
作成日:2015/07/26
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