ステータス画面

≪一陣の風≫目指せ、憧れの光

<オープニング>

●今の彼らが抱く夢
 幼い頃の憧れというのは、中々色褪せはしないものだ。
 その対象が本の中の勇者達ではなく、実在の人物であれば、一層記憶に残るというもの。
 三塔戒律マギラント、緑の塔の領域にある村の住人――少年ジオと少女ルゥにも、憧れの勇者と呼べる者達がいる。森の中でマシンフェアリーに襲われた時、颯爽と現れて助けてくれた、エンドブレイカー達の事である。
 勇ましくも優しい、自分達を守ってくれた彼らの姿。
 あんな風に、誰かを守れるようになりたい。
 そうして、小さな彼らの憧れは、大きな目標となっていった、のだが。

「ジオのばかー! あと少しで捕まえられたのに!」
「は? あのまま突っ込めばケガしたのはルゥの方だろ、止められて当然だ」
「何よっ、転んでケガするくらいどうってことないのに、ジオってばほんっと過保護ね!」
「なっ、それはお前の為を思ってだな」
「もう! ほんっと過保護ね。お母さんじゃあるまいし!」
「だっ、誰のせいで俺がこんなんになったと思ってんだばかー!!」
 十二歳になっても、ルゥとジオの関係は相変わらずだった。
 否、ルゥは九歳の時よりちょっと勇敢になったし、ジオは心配性から過保護にレベルアップしていた。しょっちゅう喧嘩するのも相変わらずだが、喧嘩するほど何とやらな幼馴染同士である。
 そんな二人が訪れていたのは、街の近くに広がる森だった。
 あの事件以降、二人は生まれ育った村で、変わらない日々を過ごしている。
 誰かを守れるようになりたい。その夢を抱きながら、村で剣の訓練をしたり、運び屋である両親の手伝いは勿論、困っている人の手助けをしたり。今日も、近所のお家で飼っている子犬が森に逃げてしまったと聞いて、子犬探しに名乗り出たのだ。
 しかし、見つけた子犬目掛けて走り出そうとしたルゥを、ジオが止めた途端この有様。
 言い分としては、ジオが正しい。
 彼が腕を掴んで止めなければ、ルゥはつまづいて顔面ダイブを披露していた事だろう。
 ともあれ、犬も食わない口喧嘩をしている場合ではない。
「まあいいや、行くぞルゥ。あっちに逃げたんだから、すぐ追いつけるって」
「そうね。あと……ごめんねジオ。止めてくれてありがと」
「いいよ別に、ん」
 仲直りも早いのが、この二人の良いところ。
 そうして二人は、迷子の子犬を探して、森の奥へと進んで行った。

●不穏な一報
 その頃。
 天元突破冒険者・ランディ(c04722)は仲間達と共に、ルゥとジオの住む村を訪れていた。
 するとそこに、村人の一人が駆け寄ってくる。その人物は、嘗てランディがルゥとジオを村まで送り届けた時に出迎えてくれた村長だった。
「ああ、あの時のエンドブレイカーさん! 丁度良かった! 大変なんです!」
「落ち着いてくれ。何か事件でも起きたのか?」
「い、いえ。まだ事件にはなってないんですが、その――」
 呼吸が落ち着くのを待たずに、村長はランディにこう言った。
 先程、森の中ブルビートルを目撃したという情報があった。幸い、目撃した村人は襲われずに帰還出来て、村にいた者達には念の為家の中に待機するようにと伝えてある。
「ただ、子供達が言うには……あの二人が森に入っているというんです」
「あの二人っていうのは、ルゥとジオだな」
「はい。どうやら子犬探しに入ったようで……これから人を集めて捜索にと思ったのですが」
 そこまで聞くと、ランディは踵を返して歩き始めた。
「それなら、俺達が行った方が手っ取り早いな」
 思い出すのは、あの日自分の軍馬、雪風に乗った二人の笑顔。
 二人を助ける為に、ランディ達は再び森の中へと足を踏み入れた。
 あの少女の好む物語風に言うのなら、彼らを襲う絶望の闇を、切り払う希望となる為に。


マスターからのコメントを見る
参加者
阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)
天元突破冒険者・ランディ(c04722)
唄猫・ユリウス(c06006)
暁風・サーシス(c18906)
夕焼け小焼けの・タユ(c20343)
手折られた花・ジョシュア(c22256)
ナイフの狩猟者・カイン(c22309)
退紅の狗・アオト(c32000)

<リプレイ>

●続章
 大魔女による脅威からの解放。
 ようやく平和が訪れた世界で、一同はある村を訪れた。顔ぶれも全く同じ、一つの仕事から繋がり、再び紡がれた縁の元に集まった。何とも喜ばしい事、であるのだが――、
「またこのような展開になるとは。二人はそういう運命の元の子なのでしょうか」
 森に目を向けながら呟いた阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)の言葉に、苦笑いを浮かべる者もいれば、確かにと頷く者もいた。
 ともあれ、村人の話によると、ルゥとジオは相変わらず元気らしい。
「ですが、事情があるとはいえ森に入るのは感心しません」
 心配混じりの溜息をついたのは、ナイフの狩猟者・カイン(c22309)だった。彼もまた、二人が襲われる前に間に合うようにと、意識を集中させている。目を凝らして森を見て、耳を澄ませて僅かな物音も逃さぬように、感覚を研ぎ澄ましてゆく一同。
 すると、唄猫・ユリウス(c06006)が突然、背を向けていた方へと振り返った。
 微かに、人の声が聞こえた気がした。
「ジョシュ、今」
「何か聞こえた? ユーリ」
 近くにいた手折られた花・ジョシュア(c22256)を呼び、森の先を見詰めるユリウス。
 速やかに全員にこの事を伝えると、ジョシュアは仲間達と共に駆けながら言った。
「しかし、また同じ面子で集まれる何て、ねェ」
「懐かしいわね、皆とも子供達とも、またこうして出会えるなんて」
 それは、夕焼け小焼けの・タユ(c20343)も思っていた。仲間が言わんとした所を汲み取るように、自然と言葉が繋げられる。そんな仲間達の背を見ながら駆けていた退紅の狗・アオト(c32000)も、二年も前の日に思いを馳せた。
 懐かしくも、色褪せない思い出の日。
 彼らが抱く夢は、あの頃と変わらずあるのだろうか。
 自分は少しでも、変わる事が出来たのだろうか。
 しかし、アオトの心は己が内側から、世界の外へと向けられた。
(「――なんて、柄にもない考えは脇に置いといて」)
 今は、思うよりも先に、為すべき事がある。
 少なからぬ時間を経て訪れた、再会の時。
 間もなく訪れるその瞬間を願いながら、暁風・サーシス(c18906)も告げた。
「ルゥとジオと会うのも楽しみ……だけど、まずは戦わなきゃね」
 皆が望むのは、幸せな結末。哀しみの涙など、誰も求めてはいない。
 その思いを胸に、一同が森を駆ける。そうして、拓けた森の広場に飛び込むと――、

「えーー!!?」
「ランディ兄ちゃん!? 雪風!?」
「よう。二人共、久しぶりだな。元気だったか?」
 天元突破冒険者・ランディ(c04722)は、焦る事なく呟いた。
 目の前には、広場のほぼ中央に佇んでいるルウとジオ。そして、二人を挟んだ広場の向こう側の茂みからは、自分達とほぼ同時に現れたのであろう、ブルビートルの群れが見える。
 しかし、この状況、そう悪いものではない。
 ルゥとジオに怪我はなく、前とは違い、怯えた様子も見られない。
 それならば、
「……すまない、一寸野暮用を片付ける必要があるんでな。少し離れていてくれ」
 余裕の態度を崩さずに、雷嵐の如き蹂躙を、空を翔く如き跳躍を。
 天の加護を受けた星の軍馬と共に、ランディは虫達へと突撃した。
 懐かしい再会の言葉より先に、轟々と鳴る羽音を払い飛ばす為に――。
「翔けろ雪風! 一陣の風の如く!」

●闘志、再び
「――お待たせ。僕等が来たからには、もー大丈夫だよ」
「やっぱり、間一髪って感じだったね」
 ランディが直進した直後、颯爽と現れた者達の姿に、ルゥとジオは目を見開いた。
 そこに、あの日と同じ、憧れの勇者達の姿があったからだ。
 ユリウスの勇気を促す言葉に、余裕を滲ませた笑顔。その言葉を継ぎ、前線へと飛び込んだアオトの声も、あの日を彷彿とさせるものだった。
 己が分身と共に敵に挟撃を仕掛けるアオトに続き、罠を撒いたカインが状況を判断する。
「子供達の護衛は――、この布陣であれば大丈夫でしょうか」
 敵と自分達の到着が同時。かつ、ルゥとジオが避難の声に促されて自分達の後方まで下がった事で、前線で戦う四人は無論、後衛の四人も憂いなく戦える状態だ。しかし、仮に二人の保護に対応する者が必要だったにしても、前線に向かうカインの役目は揺らがない。
「どちらにしても、敵の殲滅に専念する事に変わりはありませんね」
 何より、自分達が前に出る事で、敵が後方に気を向ける暇を与えない。
「少し張り切っていこうか。リコリス、久し振りに踊ろう」
 瞬間、銀鋏を手に、ジョシュアが駆けた。
 妖精を伴い、猫の如き華麗な動きで、戦場を自在に舞い踊る。数の差に物怖じする筈もなく敵を斬り裂けば、虫達は悲鳴のかわりに、悲鳴のような羽音を立てた。
 そんな前線の戦う姿を、茂みに隠れて見守っていたルゥとジオ。
 彼らの邪魔にならないように、もっと遠くに逃げるべきか。
 内心でそう悩む二人に視線を向け、口を開いたのは後方のタユだった。
「避難するほうが簡単でもあるけれど、その場所でなら、留まっても平気よ」
 今、ルゥとジオが襲われる事態があるとすれば、それは自分達全員が屈した時。
 当然、それを許すつもりはない。
 だから、もしも二人が見続けたいというのなら、止めはしない。
「二人のお手本になれるよう、ひとつ努めてみましょうか。それに」
 今の二人は、互いを思いやり動けるだけの心構えがある。少なくとも、茂みに逃げ込むまでの迅速な行動は、無力な子供と見なすには相応しくない、良き判断に基づくものだった。
 数で勝るブルビートル。対して、一同は範囲攻撃も組み込み、敵の数を減らす為に攻撃の矛先を合わせた。砂塵が舞い上がる戦場の中心、そこにルーンが放ったのは、無数の矢――否、矢の代わりに射出された太刀の刀身だ。
 次へと繋がる連続装填、そして百、千と連なる鋭き矢。
 しかし、仲間がひとたび窮地に立たされたなら、ルーンの力は仲間の元へ注がれた。
「その怪我では十全に戦えまい、我が一撃で楽になるがいい」
 台詞こそ介錯のようだが、れっきとした覚醒の嚆矢である。
 ルーンの治癒により、再び攻撃の機会を得た二人の魔曲使い。
「僕等も負けるワケにはいかないからさ、サクッとご退場願うよー」
 未だ痺れを知らない虫を標的として、ユリウスは意気揚々と氷の刃を天に掲げた。
「真夏に極寒は如何ですかー?」
 瞬間、吹き荒れる冬の嵐。心身ともに凍て付く猛威の後に、サーシスは歌を重ねた。
 吹き荒れる冬嵐が動を体現するならば、続く葬送歌は静の体現。
 そして手順が一巡りした頃に、今度はユリウスが葬送歌を紡ぎあげた。
 荘厳なる旋律に、魂送りの詞が響く。その導きによって、複数の虫達が先に倒れた仲間達の後を追った。そこで手を止めずに、タユが妖精の群れを召喚する。鮮やかな青の乱舞の前に、なおも翻弄される虫達。
 一方、傷付いた前衛陣、ランディとジョシュアへ届いたのは、サーシスの歌う凱歌だった。
「以前はたっぷり回復していただいたから、今度は自分から!」
 懐かしい顔ぶれでの戦いだが、全てを過去と同じくなぞる必要はない。
 今、この一瞬に巡る役割を全うしてこそ、勝利への道は繋がる筈。その想いと共に響く歌声は、ルゥとジオにも勇気を与えたのだろう。
「がんばれー!」
 短いながらも、心からの声援が響く。
「鬼さんこちら」
 その言葉に笑みを浮かべて、アオトはこう嘯いた。
「僕の猟犬は、何処までも逃がさないよ?」
 血の猟犬の牙が、弱った虫へと襲い掛かる。そこから辛くも逃れた個体に向けられたのは、力を増幅させたカインの閃光手榴弾。
 そうしてついに、最後の二体となったブルビートルの元にジョシュアが駆けた。
「ふふ、余所見なんてして良いのかい?」
 その言葉が零された時には、既に刃は敵に届いていた。
 力無く崩れ落ちる虫。そしてもう一体に対して振り下ろされたのは、光呼ぶ一撃。
「さて、これで終わりだ――!」
 真紅のバンダナをたなびかせ、一陣の風の紋章を背に掲げたランディ。
 それを見守り、最後を託す仲間達。
 あの時は見届けられなかった、憧れの人達が勝利する瞬間に、ルゥとジオは思った。
 これこそ、『勝利の女神が、勇者様へ微笑んだ瞬間』というものなのだろう、と。

●背景、憧れの人達へ
「兄ちゃん達ー!」
 戦いを終えた森の中に、ジオの声が響く。
 その声は既に声替わりを済ませたのか、以前よりも低く落ち着いていた。
「二人とも久しぶりだね。それにしても、二年半……変わるものだねえ」
 よく見ると、二人ともだいぶ背が伸びている。そんな変化に歳月を感じながらサーシスが呟く隣で、皆が次々とルゥとジオに声をかける。
「アオト兄ちゃんも元気そうだなー!」
「元気だよ、僕も今年で二十歳になるからね! 大人じゃない? 凄くない? って」
 あれ、僕の方が子供っぽくなっている気がする。だがそう思いつつも、再会を素直に喜ばずにはいられないアオトの言葉に、ルゥが少し大人びた笑みを返す。しかし、
「怪我は無くて良かったです」
「えへへ。でしょ? さっきだって、私達ぱっと逃げたしっ」
「ええ、迅速で良かったと思います……が」
「が?」
「森に入るのは危険なのは分かってますか? 私達の住処ではないのですよ」
「! これは、やっぱりカインさんのお説教。に、逃げ」
「逃げんなルゥ! しっかり聞いとけ! 止めなかった俺も悪いから、一緒に聞くぞ」
 やはり、変わらない所もあるらしい。そうしてジオに腕を掴まれながら、カインの正論にぐぅの音も出ないルゥ。何だかんだ仲の良い二人の姿に、タユは笑みを零した。
「ふふ、一緒にいると飽きなさそうだわ。やんちゃ出来る相手がいるって幸せなことよ」
「まあ……飽きないよな、うん。タユの言う通りだ」
 タユの言葉に、歳の近い者の言葉以上の重みを感じるジオ。
 それは彼の中で、タユが同世代の子供ではなく、憧れの対象であるから。そして振りなどではなく、タユの内面から溢れた、本当の気持ちだったからに他ならない。やがて、二人がカインの話を聞き終えると、ジョシュアがルゥに話を振った。
「村の人に聞いたよ、犬を探してるんだって?」
「そうなの! 茶色い毛並みの子なんだけど」
 中々見つからない。そう語るルゥに、ジョシュアは妖精のリコリスと目を合わせ、
「失せ物探しは得意な方だし……手伝ってあげないことも無いよ」
「ほんと!? ありがとうジョシュアさんー!」
 少女の胸元に飾られた竜胆の花のブローチを見て、不思議な心地を覚えた。
 あの日おくった花も、籠めた思いも、少女の傍で確かな在り処を得たのだろうか、と。

 カインの声に賛同した一同が、土を掘ってブルビートル達を弔った後。
「おーい、わんこーわんわん」
 早速開始された、子犬探し。
 屈みこんで、茂みの中をそっと覗き込むユリウス。その両側で同じように茂みを覗くルゥとジオの姿に、誰の物ともない笑みが零された。ふいに立ち上がると、やはり感じるのはあの頃よりも伸びた二人の身長。それ以上に、手際の良さが目立っていた。
「二人とも、随分成長したみたいだね」
 外面も、内面も。さながら兄の心境で語るユリウス。すると、
「ふふー。でも私のほうが、ジオよりちょっと背が高いのよ?」
「! ルゥおまえ! なんでユリウス兄ちゃんの前で言うかなあああ!?」
「事実を言ったまでよー」
 鬼の首でも取ったように語るルゥ。
 十二歳の成長事情が生んだ悲劇である。
 しかし、そんな二人の姿に微笑ましさを感じながらも、ユリウスはにこり。
「やッぱり二人とも、お似合いのパートナーじゃない?」
 その言葉に照れるのは当人達ばかり。皆もによによ。
 誰か助けてくれそうな人を探そうとジオがランディを見るも、
(「相変わらず見ていて微笑ましい間柄だねぇ……」)
 とか思われてる気しかしない! そう感じたジオに、アオトは内緒の耳打ちをした。
「……ところで、二人の仲にも何か進展はあったのかい?」
 勿論小声で。すると、
「……俺、過保護な母さんポジに定着した」
 との事である、ちなみにルゥの実母公認だ。
「それはそれで、進展と言えるような?」
 後は本人次第、という事だろう。そうアオトが呟いていると、当のルゥはルーンの元――もとい、召喚されたドラゴンスピリットの背に夢中の様子。勿論、高い場所から子犬探索をするという名目付きだ。その時、ルゥが呟いたのは小さな憧れ。
「いいなぁ、スピリットも恰好いい……」
「二人が望むなら、自分の身を守れる様に少し訓練でもしましょうか?」
「ルーンさんの特訓!?」
「はい。ただし、私の特訓は、死にはしないし後遺症になるような怪我もないけど」
「ビクッ。なんか今、お説教より危険な感じを察知したのよ!」
「それもありますが、むしろ死ねた方が幸せとか、勇者に対する憧れが冷める位の」
「わーん怖い! でも憧れは冷めないから!」
 そもそも、ルーンや皆のように強くなるには、血の滲む修行や経験が必要に決まっている。それを想像出来るようになった辺りも、成長と呼べるのだろう。
「二人とも、向こうは探したか?」
 その時、ランディはジオ達にそう告げた。
 タユの妖精カロンと共に、茂みの方を探索するルウとジオ。すると、
「わんっ」
「「いたー!!」
 緑の間で丸くなっていた子犬が、元気に吠えた。
 見事に目的を達成した二人。少し休憩して村に戻ろうとした時、ジョシュアの妖精リコリスが少女の頭上に運んだのは、ジョシュアが作った花冠。
「わあ、くれるの? ありがとうっ」
「別にあげようとか思ったわけじゃない。何となく、作りたくなっただけだよ」
 それを眺めていたサーシスは、ふと昔の事を思い出した。
 二年半前のあの日、自分は彼らに、こんな事を言った。
 何かを倒すだけでなく、何かを守る事もまた勇者の証だと。
「あの時も、さっきも、守れて良かった」
 それは、真っ直ぐなルゥとジオを見ている内に、自然と零れた思いと笑顔。
「年より臭いって言われそうだけど、ルゥとジオ、それに皆の輪の在り方が」
 この上無く、きらきらと輝いて見える。
 それを他人事のように語るサーシスに、ジオも笑みながら呟いた。
「サーシス兄ちゃんだって、きらきら輝いてると思うけどな?」
 だって、自分達の憧れの人なのだからと、少し照れ臭そうな顔を向けて。
「――さて、子犬も見つかったし、そろそろ村に帰るんだが」
 程なく準備を終えると、ランディが帰路へと促す言葉を告げた。
 瞬間、思い出すのはやはり、あの時の言葉。
 二人を気付かい、自分は何と言ったのかを、ランディは覚えていた。
 だから、その言葉をもう一度、今の彼らに。
「二人共、また雪風に乗って帰るかい?」
「「乗りたいー!!」」
 少年と少女の姿は、あの頃より幾らか成長していた。
 けれどその瞳には、あの日よりも眩しい光が、確かに輝いていたのである。



マスター:彩取 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2015/07/16
  • 得票数:
  • ハートフル7 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。