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ソウェルと花のパレード

<オープニング>

●太陽と月と夢のパレード
 水路と水中花の町と呼ばれる場所がある。さる土地の名で、太陽の名を持つ小さな町だ。アクエリオの辺境区にあるその町は、家々を回るように水路が張り巡らされている。町の者は皆、水のせせらぎと夏季に響く旋律とともに育った。
 ソウェルの花期。
 夏の少し前、夏季へと入るほんの少し前に行われるパレード。その昔、多くの楽士や踊り手たちが参加したパレードはパトロンを持たぬ彼らの一世一代の舞台でもあったという。
『いつかきっと、町全体を使ったおっきな舞台だってできるわ』
 歌うように告げた語り部は、夢の舞台とそっと笑ったという。
 夢のような世界は、ささやかな形でソウェルにあった。水路には水中花が咲き、パレードに参加する者たちは花びらのシャワーとともに踊る。
「そう……してやるんだから。歩行樹なんてそんなの……わたしが倒してやるんだから」
 ぎゅ、と拳を握って少女は水路に降りる。少しばかり浅いその場所は、水路というよりは水辺に近いものだった。少女がもっと小さい頃は、兄と一緒によくここで遊んだのだ。
「おにいちゃんが、準備してきてたパレードなんだから……大成功じゃなきゃダメなんだから」
 ぱしゃ、ぱしゃと水を踏む音が響く。
 早朝の町に人の姿は少なく、水路となればーー誰もいない。自分の足音だけが響くその場所に、ばしゃん、と大きな音がした。
「ーーっ」
 オラトリオのぬいぐるみをぎゅっと抱えて、少女は前を見る。朝の薄靄に紛れ、ゆるりと揺れる緑。
 それは、ソウェルの水中花に似ていた。可愛らしい星の形をした花が、刃のような鈍い光を放つ。浅い水の中、緑色の根が蛇のように揺れていた。
「嘘じゃ、なかったんだ……っな、なによ。あんたなんかに、……っパレードの邪魔は、させないんだから……!」
 ソウェルのパレードは、大好きな兄が準備をしていたものだ。ずっとずっと忙しそうにして、でも楽しみにしていたことを少女は知っていた。
「邪魔、なんか……!」
 ぎゅっとぬいぐるみを抱く。ふわりと姿を見せた星霊と共に少女が見据えた先、一体だと思っていた歩行樹が増えーー悲鳴をあげる間も無く、鋭い根が少女を貫いた。
 

●行き先語り
「数が1体であっても、少女が相手をするには……無理があったと思うんだけどね」
 アクエリオの酒場、そのテーブルにエンドブレイカーたちを招いた少年は「お願いがあるんだ」と顔を上げた。
「アクエリオの小さな町、ソウェルにでた歩行樹退治と……それとパレードのお手伝い。手伝って欲しくて」
 手伝いを手伝うーってのも変な話ではあるんだけどね、と二つ夜のデモニスタ・ニヤ(cn0185)は肩をすくめた。
「ことの始まりは、ソウェルって町で歩行樹がでたことにあるんだ。町では数年に一度開かれるパレードの準備で忙しくしててね、そこにやってきた……なんていうか商人さんが『歩行樹を町外れで見た』って言ってね」
 パレードは明日、というタイミングでだ。
 どうにかしようにも、腕の立つ自警団はパレードに来る客の護衛にでてしまっていて討伐するには戦力が足りない。
「夜に動くのも、って話になってね。全ては明日、朝が来てからどうにかしよう。最悪パレードは中止だ……ってのを、少女は聞いてしまったんだ」
 少女の兄が初めて、準備したパレードだ。
「で、大人が何もしないならー……って、朝家を抜け出して行っちゃったんだよね」
 苦笑ひとつ、ニヤは顔を上げた。
「おにーさん、目を覚ましたらすっごい驚くし……心配になると思うんだ。もともと歩行樹の件もどこかに依頼するつもりだったみたいだし」
 だから、ちょっとばかし先回りだけど。
「オレたちでちょっと突っ走っちゃった妹ちゃん確保して、んで、歩行樹も倒そう」
 そのために、力を貸して欲しいのだとニヤは言った。
「オレだけじゃ足らないから。みんなの力、貸してほしーんだ」

 歩行樹がいるのは、町の奥ーー裏山の方だ。古い水路に潜んでいて、降りてきたものを狙うのだ。
「数は3体。水路での戦闘になるけど、水は足首までしかないよ」
 歩行樹は、ソウェルの水中花に似た姿をしている。枝葉の先にある白い花は、星の形をしていて刃のような鋭さがある。
「枝で攻撃されると、結構痛いと思う。でもってあとは、根かな。薙ぐように攻撃をしてくる」
 今から行けば、少女が水路に降りる前にたどり着けるだろう。
「オレたちが退治するよ、って言えば納得してくれると思う。でもって……こっから先はちょっとお願いなんだけど。……パレードの手伝いも、しない?」
 パレードの中止は『歩行樹がいるから』だ。
 無事に倒されれば、パレードは行う形になるだろう。
「とはいえ、前日に歩行樹いたーって騒ぎになってるからさ、準備してあったことはできるけど……パレードの最中に花をまくメンバーとか足りないみたいなんだよね」
 前日からの泊まりの客はいるらしいが、彼らと町の人間だけではさすがに寂しい。
「ってことで、無事に退治できたらさお手伝いしますーって言って、で、ソウェルのパレード大成功させちゃお?」
 少女と一緒に事情を話し、手伝いたいのだと言えば彼らも喜ぶだろう。

「何せ、ひっさしぶりのパレードだからさ」
 真昼の光に水中花は咲き、楽の音が響き渡る中、皆で踊って花をまくのだ。
 かつては楽士たちの一世一代の舞台として。
 今はーー新たな季節の巡りの前に、幸いを願って。
「オレに、みんなの力貸してほしーんだ」
 で、幸せいっぱいに花びらを躍らせよ?


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参加者
猫被り系ツンデレ・ナツメ(c00940)
うるわしの帽子家・ジョージ(c06040)
燈星・ジェン(c10838)
ダンシングブレード・エリーシャ(c15180)
トキメキオレンジ・アル(c20398)
夜が訪れる刻・シキミ(c32374)
日日是好日・マーズ(c34336)

NPC:二つ夜のデモニスタ・ニヤ(cn0185)

<リプレイ>

●花咲く町にて
「そろそろだよ」
 情報屋の少年が声をあげる。橋を渡った先、すぐだと言う二つ夜のデモニスタ・ニヤ(cn0185)と共に駆け出せば、橋に小さな飾りがついているのが分かった。パレードの飾り付けだろう。だが、途中で止まっている。
 歩行樹かーーと、日日是好日・マーズ(c34336)は眉を寄せる。
(「折角の数年ぶりのパレード、こんなのに邪魔されてできんとかそんな悲劇は潰さんとのう」)
 パレードにはあんまり縁はなかったが、華やかなのは好きだ。
(「……どっちかいうとパレードに使う花とか育てたりの方向で関わる事が多かったんじゃが」)
 裏方仕事も経験のある彼の目にも、パレードの準備が進みーーそして中途半端に、止まっているのが分かる。作業の途中というよりは、止めたのだろう。歩行樹の話を聞けば、確かにそのまますんなりとパレードが行えるとは思えない。すい、と顔をあげれば、男の目に先を行く人影が見えた。少女だ。
「パレードの責任者が御兄さんの妹さんだね? 君がいないなら心配して、当日の色々が困った事になりそうだ」
 驚いた足を止めた少女に、燈星・ジェン(c10838)はそう声をかけた。あ、でも、と振り返った少女がぎゅ、とぬいぐるみを抱く。
「あ、で、でもこの先に怖いのいるって聞いて。歩行樹なんかあるからパレードだめになっちゃうかもしれないって」
 だから、と下を向いた少女に、うるわしの帽子家・ジョージ(c06040)は安心させるように言った。
「お嬢さん、こういう危険な仕事は僕たちエンドブレイカーに任せなさい」
 口元に笑みを浮かべ、つい、と帽子をあげる。視線優しく告げれば目をぱちくり、とさせた少女がぐるり、とエンドブレイカー達を見た。
「エンドブレイカーさん、なの?」
「私たちが倒しておくから、お兄さんのところへ戻ろう?」
「お兄さんも心配するでしょうからねー」
 猫被り系ツンデレ・ナツメ(c00940)と、ダンシングブレード・エリーシャ(c15180)の言葉に「本当に?」と少女は呟いた。それは、思いつめて一人朝、飛び出してきてしまった少女の驚きからの言葉だった。
「もうダメだと思って。誰もいなくて、できないからって。でも、パレード、なくなっちゃうの、嫌で……」
 今にも泣き出しそうな少女に、夜が訪れる刻・シキミ(c32374)は膝をおる。
「わたくし達がちゃんと退治してきますので、ご安心くださいませ」
「素敵なパレード、アル達もとっても楽しみにしてるある!」
 ひょい、と顔を見せてトキメキオレンジ・アル(c20398)は言った。
「倒した後には一緒に参加させて欲しいあるよっ♪ ぱーっと倒してくるから、安全な場所で待っててもらえるあるか?」
「うん。……うん」
 きゅ、と少女はぬいぐるみを抱きしめる。そうして、顔をあげた少女にジェンは微笑んだ。
「早くお帰り? 君も楽しみにしてるから。笑顔を見るのが楽しみな彼は頑張ってるんじゃないかい」
 きゅっとぬいぐるみを抱いて、少女は顔をあげる。
「あのね、エンドブレイカーさんたちも、気をつけてね」
「あぁ」
 安心して待っといてくれ、とマーズは少女の背を見送った。

●水路に潜むもの
 風が吹く。水の匂いが変わってきていた。ジェンが先に水路に降りーー前衛が続き、最後に後衛と水路に降り立てばーー水が不可思議に跳ねた。
「あそこだね」
 ジョージが一つ、声を放つ。進むこちらの波紋とは全く違う形で出た水の揺れ。争うかのように見えたのはあれがーー進んでくるものだからだ。
「来ますよ……!」
 ナツメの声が響き、ゆるり、と揺れる緑が見えた。一直線にこちらに向かってくるのは、そこに求める獲物たちがいると分かっているからか。ざぁああ、と水を切る音が朝のソウェルに響く。やがて、鮮やかな緑の根がエンドブレイカー達の前に姿を見せる。
「正面、くるよ」
 告げたジェンが水路を蹴る。作り上げた空気のクッションを蹴り上げて、そのままジェンは身を水路へとおろした。床を蹴り上げ、そのまま足を伸びてきた根に叩きおろせば、バシャン、と水路の向こうから音がする。跳ねるように前に出てきたのは水草色の歩行樹だ。
「残りの二体もついてきたある!」
 その声に、まるで答えるかのように歩行樹の枝が伸びた。ひゅん、と鋭くきた一撃を受けながら、ぱしゃん、とアルは水路を蹴った。身を前に、ひらと伸ばした手に妖精のエリエが乗る。
「行くあるよ!」
 く、と顔をあげる。肩は少し傷んだがーーそれだけだ。後衛に攻撃が行かないように立ち回った結果だ。傷は最小限に。アルは進む。
(「お兄ちゃん思いの妹、とっても良い子あるねっ アルは兄弟がいないからちょっと羨ましくなっちゃうあるよ」)
 よーし、と少年は笑う。魔鍵を手に、妖精と共に行くのは正面の歩行樹。もう一体、伸びた根を飛び越える。
「仲良し兄妹や町民達のパレードへの想いはアル達が守ってみせるある!」
 歩行樹へと一撃を叩き込んだ。ふわりと舞った妖精が騎士へと力を注げば、アルは伸ばした両手で妖精を招く。真横の一体へと、踏み込めばきら、と後方から新たな妖精の光が見えた。
「妖精達よ、集え、そしてかの者に突撃せよ!」
 煌めきの中、騎士たる少女は告げる。
(「折角の楽しいパレードが中止になるなんて、そんな悲しい事にはさせませんわ」)
 きゅ、とシキミは唇を引き結ぶ。
(「歩行樹は必ずわたくし達が倒してあげますわね」)
 シキミの示した先へと、妖精たちは一気に突撃した。逃げを打つようにした歩行樹の幹へと妖精が針を突き刺し、その羽根をふわり、と広げた。狙った先は、仲間が攻撃していた物。一体が倒れたのを見ると、横、来ますわ、とシキミは声をあげた。
「よっしこっちで行くよ!」
 応えたのはニヤだ。血の猟犬たちが歩行樹へと襲い掛かる。一撃の後、弾けた猟犬の血が歩行樹にかかる。防御を失った歩行樹へと、手伝うっすよ、と姿をみせたヴフマルが駆け抜ける。究極の速度を知る者の、加速は一瞬だ。バシャン、と大きな水飛沫が上がり、叩き込まれた一撃に歩行樹が大きくのけぞった。
 その隙をエリーシャは逃さない。
「幾千の魔剣の舞曲、いきます!」
 紡ぎあげる舞曲に、引き寄せられた邪剣が踊る。深く引き裂かれた歩行樹が崩れ落ちれば、残りは一体だ。
「逃げるのもだめですよー」
 わずかに後ろに動いた歩行樹へ、エリーシャは告げる。た、と逃走を阻止するようにジェンが動く。前に出るものを追うように動いた歩行樹へとマーズは幻覚のキノコを投げつけた。
 バフン、とキノコが爆発する。広がるのは2種の煙。反撃するように伸びた枝がーーだが宙で止まる。
 マヒだ。
「お兄さんにもこんなちょっとしたことで、あっさりと年一度のお祭りを止めないように伝えなきゃね」
 動きを止めた歩行樹へとジョージは手を伸ばす。マヒに痺れた枝は鈍り、水飛沫さえ舞うように優雅に避けて、その手を振り上げる。
「さぁさぁ、パレードの邪魔はさせないよ!」
 水上を、虚空の刃が走る。一撃、必中の刃が伸びた根を切り落とせば、ぱしゃん、と水路を蹴ってナツメは一気に歩行樹の後ろへと回った。
「パレード、みんな楽しみにしてるんですから!」
 死点へとナツメは太刀を突き立てる。ぐら、と大きく歩行樹が揺れた。刃を引き抜き、急所へと最後突きたてればーーギィイと軋むような音を残し歩行樹は水路に崩れ落ちた。

●そうしてこうして終わったわけで
 水路にいた歩行樹たちの討伐は完了した。水路から上がれば、橋の方に少しばかり人影が見えていた。報告しに行かなきゃ! と口にしたナツメはそのままこてり、と首を傾げた。
「あそこにいるのって妹ちゃん?」
 橋まで迎えば、あぁすみません、と見えていた人影――青年が頭を下げた。
「妹がお世話になったようで……。ありがとうございます。エンドブレイカー様」
「あのね、それと歩行樹も倒してくれるって……!」
「こら、ミーナ」
 どうなったのかと心配そうに聞いてくる少女――ミーナにマーズは無事に撃破したと告げた。
「パレードは問題なく行える」
「ほ、本当ですか……!」
 やった、と青年の口から歓喜がこぼれた。声を震わせる彼の横、そっと顔をあげたミーナがぬいぐるみと一緒に「ありがとう」と言葉をつくり、ぺこりと頭を下げる。微笑ましい光景にふ、と笑みをこぼしながらエンドブレイカーたちは頷いた。
「あと、一つお願いがあるんだけど」
 ニヤが声をかける。すみません、と言いながら顔をあげた青年にシキミはパレードを手伝いたいのだと言った。
「よ、宜しいのですか?」
「せっかくじゃし、もしよければ儂等もパレード手伝わせて貰いたい」
 マーズのその言葉に、皆が頷く。ね、言ったでしょう? とミーナは兄の手をひいて微笑んだ。
「エンドブレイカーさんたち、すっごいんだから」

 準備に入る前にひとつ、とエリーシャが倒した歩行樹をどうするか聞けば、実行委員のメンバーが確認した後にでも、という話になった。無事に倒された歩行樹を確認すると、委員たちはエンドブレイカーになんども礼を言って、忙しそうに動きだした。なにせパレードはもうすぐ、だ。
「あぁ助かったよ……。ほんと、飾り付けもそうだが……こういう裏方仕事も止まっててさ」
 道具の組み立てに人数が足りてなかったのだと委員は息をついた。助かったと言って「そういえば」と委員の男は聞いた。
「パレードにも出るのかい?」
「メイガス姿じゃしあんまり表に出るのは雰囲気損なわれ……デコれば行けるか?」
 聞き慣れぬ言葉なのか、首を傾げた委員の横からひょい、とミーナが姿を見せた。
「デコるの? 可愛くしていい?」
 目をきらきらと輝かせる少女に、アルと一緒にいた子供たちがやってくる。あちらの準備は、もう終わったらしい。
「目一杯の幸せをこめて、花をまくらしいある♪」
 仲良くなった子供たちから聞いたのだと言って、アルは笑みを見せた。

●さあパレードだ!
 水路に、花が開く。歌うような旋律とともに、一斉に町の人々が花びらを空へと放った。吹き抜ける風に花びらが舞い上がれば、わぁあ、と町に歓声が上がった。
 シャン、と舞う花びらとともに鈴を鳴らすのは踊り子たち。指先を伸ばし、揃いの衣装をひらり揺らして踊るのは花の収穫の時にこの町でやっていたものだと、アルは子供たちに聞いていた。
 長い袖を靡かせて、アルは花を撒くエリエと一緒にくるくる踊る。
 パーレドに似合いの、軽快な曲を響く。タンバリンの音色をひとつ合わせて、エリーシャはひらり手を伸ばす。少女が手を伸ばせばーー同じ姿をした人形もいっしょにその手を伸ばした。
「す、すごい! 人形が踊ってるよ!」
 目を輝かせる少女に、エリーシャはタンバリンの音色ひとつ響かせて、二人芝居を披露する。
『こんにちわー、エリーシャですー』
 お話できるの? と顔をあげた少女が、エリーシャと踊る人形に誘われてやってくる。それまではどこか、輪には入れずにいた少女がそっと足を踏み出す。
「いっしょ、いい?」
「よろこんでー」
 笑って、エリーシャは剣琴を手に取る。
(「剣琴や他の楽器とかて演奏もして賑やかにしていきましょうー」)
「ゴールまで楽しく歩いていきましょうー」
「えぇ」
 微笑んだシキミがふわり、と花をまわす。舞い上がった花びらを追いかける子供もいれば、一緒になって踊る人々もいる。旋律が肌を撫でた。
「わたくしも花は好きですので、こういうパレードはとても楽しいですわね」
 ふ、と笑みをこぼして、進む足取りが旋律を刻む。
「ニヤ、もしよかったら一緒に暫くぶりにニヤの踊り、見せてくれよ」
「喜んで」
 目をぱちくり、とさせた後にヴフマルの言葉に、ニヤは笑った。ひら、と手のひらを宙に伸ばして、手首の鈴がシャン、と鳴る。進む足を軽やかに、くると回れば花びらが一緒に踊る。
「やっぱり花、似合うな、ニヤは」
 そうヴフマルは呟いた。目をぱちくり、とさせたニヤはありがとう、と笑った。
「わ、ニヤの踊りすごいある! アルも真似して踊ってみたいある〜っ♪」
「ふっふー。じゃぁ一緒に踊ろ?」
 笑ったニヤが伸ばした手をとって、アルはたん、と軽やかに足を進めた。おまけとばかりにふわり、とエリエが花を降らす。
 水路をまたぐ橋を渡れば、町の全景が見えた。あちこちに見える輝きは水中花だろう。真昼のパレードは水の中にも星をたたえている。
 町は音楽と花びらに彩られている。甘く香る花に、旋律を刻む人々。パレードに加われば、足音だって旋律になる。かつての恋人に捧げた曲を歌う。ふと思い立って、竪琴を持ったジェンが奏でたのはグランシャリオでーー滅びの大地にあった都市で聞いた旋律だった。
「楽しげな、綺麗な曲だね」
 傍にいたニヤがそう言った。少しパレードの曲に似ている気もする。
 点在して咲く星のような水中花の群れ。光にゆれる水面を眺めて「ニヤ」とジェンは顔をあげた。
「俺達は、花に、どこにも星を、「あかり」を見つけてしまうな」
 とどかない遙か彼方の輝きには憧れて、身近にある輝く命が愛おしい。
「俺達楽師や踊り手も人の笑顔の花を咲かせるのが好きな人種だろう?」
「ん。そーだね」
 微笑んで、ニヤは頷いた。嬉しいんだ、やっぱり、と花びらをひとつ手にすくう。
「やっぱ笑ってくれると、いいなって思う」
 手の中にあった花を、ふわり、とまわす。目の前の人にも降り注ぐように。
「笑顔の花、咲かせて見ちゃお?」
 一緒に踊ろ、とニヤは手を差し出した。
 鈴の音が楽しげに響く。音楽や踊りには詳しくないが、不思議とナツメの心は弾んでいた。ふわり、と花びらをまいて、旋律と一緒に足を進めて。
「えへへ、とっても素敵!」
 みんなが楽しめればいいな、と思いながら見た先、通りに見えるのは一人、また一人とパレードに参加する人々の笑顔だった。
 見事少女にデコられたマーズは、子供達に懐かれている。メイガスについた花びらが妙に似合っていてジョージは笑みを零す。
「存分に楽しみましょう☆」
 たっぷりの花飾りを白い鍔広の帽子につけて、ひらりレースの踊る華やかな衣装で、ジョージは花びらと踊る。水中花と同じ色のリボンをふんだんに使った衣装で旋律を刻むように、足を進めた。
「さあ」
 注目の踊り子にフラワーシャワーを降り注がせれば、くる、と答えるように回った踊り子が鈴の音で踊る。めいっぱいの楽しさを演出すれば、また笑顔の花が咲いた。笑う踊り子が演出に応えるように楽士を招き、ジョージを誘う。踊ろ、と笑ったニヤも一緒になって手招きすればとっておきの演出に、吹く風と一緒に色とりどりの花を降らせた。
「わぁああ!」
 歓声が上がる。
 これがソウェルの舞台。途切れようとしていたパレードは、エンドブレイカーたちと町の人々によって無事に開催され――夕方、その終わりの時まで花と太陽と共に踊り続けた。



マスター:秋月諒 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:7人
作成日:2015/07/27
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