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あたくしだけの花畑

<オープニング>

 うららかな陽気に包まれて、婦人が鼻歌を歌いながら自慢のお庭に水やりをしている。
「ふんふふーんふふん♪ あたくしのお花ちゃんたち、今日もかわいらしいざます」
 赤、白、黄色。色とりどりのお花たちが咲き乱れる、婦人だけの美しい、小さな花畑。
 お水を貰って、みんな生き生きと輝き、そして、元気に飛び跳ねている。
 ……飛び跳ねて?
「き、キェエーーーー!!??」

「よっ、みんな集まってくれたな」
 リーは自慢の前髪をユサユサさせながら集まった面々を見渡した。
「マスカレイド事件じゃないんだが、植物の魔獣が現れたんだ。場所はそこの角をこう曲がってぱっと行ってすっと進んだ先だな」
 ……分かるような、分からないような。
「大体2メートル四方くらいの大きさの花壇が目印の白い家だ。周りに目立った花壇を作ってる家はないからすぐ分かると思うぜ。その花壇の中に紛れている花の魔獣を退治してきて欲しい」
 そう言いながらリーは簡単な手書きの地図をエンドブレイカー達に手渡した。
「普段は大人しく紛れ込んでるようだが……水をやると喜んで動き出す。それ以外の方法で見分けるのはちと難しい」
 ご婦人いわく結構な数が混じってたみたいなんで、逃がさず残さず見つけてくれよな、とリーは説明する。
 ところでそれ、強いの? 一人のエンドブレイカーが質問を投げかける。
「いや、大した事はない。飛び跳ねて人を驚かすくらいのことしか出来やしないし、武器で簡単に潰せる程度だな」
 しかしそのまま放置すれば、いずれは驚くだけでは済まない大惨事に繋がってしまうかもしれない。
 実際、庭の持ち主であるご婦人は、驚いた拍子にひっくり返って頭を打って大変なことになったとか。
「このまんまじゃご婦人は恐ろしくて日課の水やりも出来やしないそうだ。まぁちっとスリルにゃ欠けるかもしれんが、ご婦人を助けてやってくれないか?」
 そしてリーは爽やかに笑い、ウインクして言った。
「ちなみに事件解決の暁にゃ、ご婦人が自慢のお庭でこれまた自慢の『お紅茶』と『おクッキー』をごちそうしてくれるらしいぜ!」
 がんばろう。困っている人の為にも、そして楽しいお茶会の為にも!


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参加者
杖の星霊術士・メローネ(c00446)
杖の星霊術士・アオイ(c02430)
竪琴の星霊術士・ミメイ(c02516)
大剣の魔法剣士・ウェイン(c02603)
ナイフのスカイランナー・アスミル(c06621)
暗殺シューズの星霊術士・レミ(c07864)
扇の星霊術士・ヴァイス(c08279)
大鎌のデモニスタ・メシュティアリア(c08445)

<リプレイ>

●あたくしだけの花畑
 エンドブレイカー達が訪ねた一軒の白いお家。それはとても上品な佇まいで、住んでいる人物像すら容易に想像できる。玄関のベルを鳴らせば、大方の想像通りのお上品な服装に身を包んだ白髪の婦人が顔を出した。
 ただし、頭には包帯が巻かれていたのだけれど。
「こんにちはー、お仕事の依頼を受けた者ですけどー」
「花壇、荒らす花、倒しに来た。……よろしく」
 右手を軽く上げた杖の星霊術士・メローネ(c00446)と、その影で大きく右手を上げる暗殺シューズの星霊術士・レミ(c07864)。ふたりの言葉に婦人は目を丸くして、ぐいっと身を乗り出した。
「あなた達があたくしのお花ちゃんたちを助けてくださるんざますのね!?」
 こくんと頷く彼らの前、婦人はハンケチーフを目元に宛て語り出す。
「あたくしこのお家に住んで早や40年、お花壇を作りましては30年ですのよ、この30年間、全くもって平和に暮らしておりましたのに……」
「泣かないでください奥様。ご自慢の花壇、守れるように頑張ります」
 しくしくとくずおれる婦人の背中を、竪琴の星霊術士・ミメイ(c02516)が優しく撫ぜ、大鎌のデモニスタ・メシュティアリア(c08445)はしゃがみこんで心配そうに顔を覗き込む。
「その花壇を詳しく見せて頂けますか?」
 杖の星霊術士・アオイ(c02430)が柔らかな物腰で尋ねれば、婦人はしょんぼりとした眼差しを庭へ向けた。
「どうぞお調べなさって、あたくし恐ろしくて近寄れないんざますの」
 庭にはここを訪ねる際に目印にした花壇が見える。案内されてそちらへ移動する最中、痛むのか頭を抱える婦人を見て、扇の星霊術士・ヴァイス(c08279)が彼女を呼び止めた。
「お待ちになって、奥様。その頭の怪我、わたくしのスピカが癒してさしあげますわ」
 くるり扇を翻し星霊を召喚すれば、星霊はぴこぴこと耳を振りながら婦人の頭を撫で、主の元へと戻っていった。
「あ、あら……!」
 患部を何度も撫でてきょとんとしている婦人の隣、大剣の魔法剣士・ウェイン(c02603)が優しい表情を作り『良かったですね』と声をかければ婦人はヴァイスに向き直り礼を言う。
「この花壇……だよね」
 メシュティアリアの足下に広がる花壇は、大体四方に2人ずつ立って丁度良く囲めるような広さのもの。色とりどりの様々な種類の花が綺麗に植えられているが、毎日貰っていたお水を今朝は与えられなかったせいか、少し元気がないように見えた。
「ああ……あたくしのお花ちゃんたち、ごめんなさいね、ごめんなさいね」
 婦人も元気なさげに、ウェインの影から花壇を覗いて言う。
「綺麗な花畑をビビらす魔獣なんか天才アスミルさんがプチっと倒しちゃるから、おばっ……奥様は、あっちで見守っててぇな?」
 ナイフのスカイランナー・アスミル(c06621)の頼もしい言葉に婦人は弱々しい笑みを返すと、ベランダに上がりカーテンの影からこそっと彼らを見守ることにした。
「困ってる人、助ける。良い事。頑張る」
 ぐっと両拳に力を込めたレミの肩に乗った星霊スピカも、心なしかやる気満々に見えた。

●お花の魔獣をさがせ!
「はりきってがんばりますよー、手はず通りいきましょー」
「うちはヴァイスと、メローネはウェインと、アオイはレミと、ミメイはメシュティアリアと、やね?」
 メローネの隣で、手元のメモを確認しながらアスミルが面々を確認する。さっと二人一組をつくると、花壇の四方にずらりと並んだ。
「本当にどれが魔獣なのか全くわかりませんね……」
 アオイがじーっと花壇を見つめるが、似たような種類の花の傍に隠れているということだろう、よくよく目をこらしてみても、それが人畜無害なお花ちゃんであるのか、いたずら者の魔獣であるのかは全く見分けがつかなかった。
「さ、皆様、参りますわよ」
 ヴァイスが水を溜めた如雨露を4つそれぞれのチームに配り、水まき係に手渡す。
 最初に如雨露を受け取ったウェインが手始めに目の前の花壇に水をまけば……ぴょん!
「!」
 全員の視線が集中した。得体の知れない『ケケッ』という鳴き声が聞こえたような、聞こえなかったような。
 飛び跳ねた魔獣にぶつかられそうになったウェインがさっと身を引けば、すかさずその魔獣へとメローネのマジックミサイルが飛ぶ。『キャー』とかなんとか、聞こえた気がしたが、ともかく魔獣はたったそれだけで消滅した。
「よ、弱い……」
「か、かわいい……!」
 脱力するエンドブレイカー達の中、ミメイが呟いた。
「あっでもでも、このままだとお花のお世話を出来ない奥様も、お世話をしてもらえない他のお花さん達も可哀想ですものね」
 ミメイも手前の花壇に水をまくと……ぴょこん! 飛び上がった魔獣にあわせてミメイの身体も跳ねる。
 狙いすましたメシュティアリアの大鎌が魔獣を弾いた。
「いや……コレは事前に分かってないと驚きますね、絶対」
 想像以上にシュールな光景に、アオイも脱力しながら水をまく。ぴょい〜んと飛び出した魔獣にレミの回転蹴りが飛び、その傍で地面に置かれたスピカも真似して回転している。
「お見事です!」
 アオイの拍手を受けてちょっぴり照れるレミと、なぜか照れるスピカの姿。
「バッチリええタイミングで水撒き頼むでぇ♪」
「分かっておりますわ」
 ペンをくるくる廻すアスミルの隣、ヴァイスがまいた水の下から、ぴょん!
「はい〜♪ 1匹発見! プチっとな!」
 ノリノリのアスミルさんのナイフがざっくりと魔獣を貫き、今度はウェインが至極真面目な顔で花壇にもう一度水をまく。ぴょこん!
「……うん、確かに驚くよな、これは」
「無害ならちょっとかわいいかも……あ、すみません。やっぱりいいです」
 メローネのミサイルがまた一匹、ウェインの足下で跳ねた魔獣を潰した。

●花畑をとりもどせ!
「これで、8匹め」
 レミは皆が潰した数を数えながら、己の足下に飛び上がった魔獣に衝撃波を食らわせる。殆どの花壇の土が濡れ、あとは少し手の届き難い中心部を残すばかり。
(「困っている人を助けるのはいいこと……だものね、がんばろう」)
 メシュティアリアは心の中で呟き中心部へと向かう。幸い魔獣が埋まっていた所の土には今は何もない。そこを足場にして、花壇に被害を出さないよう慎重に進む。
「さて、ちゃんと出てくるかな?」
「魔獣ちゃ〜ん♪ 出てくるざます〜♪」
 アオイとヴァイスもそろそろと花壇に侵入し、アスミルの歓声(?)を受け3つの如雨露が一度に新たな地面を濡らす。すると。
 ぴょぴょぴょぴょぴょぴょん!!!!
「ぎゃー!!」
「きゃぁー!?」
 丁度固まって埋まっていたようで、めいめいに悲鳴が上がるほどの数が飛び上がった。
「かっ……可愛くありませんわ!!」
 ヴァイスの足下でぴょんぴょん跳ねる魔獣の元へものすごい雑音が飛んで来る。不協和音に混じる何だかよくわからない悲鳴のような声は音と共に掻き消え、魔獣の向こう側でミメイが竪琴を手にガッツポーズ。
「一気に……詰める!」
「花壇。助ける!」
 ウェインが大剣で魔獣たちをなぎ払い、レミの蹴りから放たれた衝撃波もまた魔獣たちを裂く。
「えっと……今ので14匹です、まだいるかも!」
 アオイが声を張り花壇を見回す。どこの土も濡れているのだが……視界の隅、何かうごめく小さなもの。
「アスミルさん、そっち!」
 花壇の中を跳ねずに這い回っていた魔獣が一匹、花壇から飛び出した。
「あぁ!? しつこいっちゅうねん!」
 スマートかつエクセレントな頭突きが炸裂し、魔獣の命は儚く散る。
「もういませんかー?」
 メローネが中心部に向けて大きく手を振れば、ぷるん。手の動きに合わせて大きな胸が揺れ、あわわとその手を引っ込めた。
 それから全員で慎重に花壇を見つめ再度水を撒くが、もうどこからも飛び出すものはなく、ただ可愛らしい花たちが、そこにあるだけだった。
「うぅ〜、今度はみんなに愛でて貰える普通のお花さんとして生まれて来てくださいね」
 手を合わせ魔獣の冥福(?)を祈るミメイの傍、メシュティアリアは何かを思い出すよう花壇を見つめていた。
「掃討完了……皆さん、お疲れ様です」
「……お、終わったんざますの?」
 ウェインの言葉を聞き、カーテンの影から婦人がひょっこりと顔を出した。
「ええ、もう大丈夫ですよ」
「ああ……あたくしのお花ちゃんたち! 良かったざます! 良かったざます!」
 そのままお庭に駆け出して花壇の前で歓喜にむせぶ婦人の姿に、エンドブレイカー達の間にも自然と笑みがこぼれた。
「花壇、少し荒れちゃいましたね。すみません。直したいので、宜しければご指導頂けませんか?」
「わたくし春植えの球根を持参致しましたの。宜しければお使いくださいませ」
 アオイとヴァイスの差し出された手。婦人は涙のにじむ笑顔をぱっと輝かせ、深く頭を下げるとてきぱきと手入れの為の指導を開始した。

●どうぞ召し上がれ
「皆さま本当に有り難う、お疲れさまでした。これはあたくしのほんの気持ちざます」
「わぁーい!」
 彼らが護ったお庭は、今は綺麗に元の姿を取り戻していた。
 白いテーブルに、白い椅子、白い日傘の下で。優雅な装飾の施されたティーセットが運ばれてくる。
「とってもいい香りですねー、うきうきしますー」
 メローネの持つカップに注がれているのは勿論、ご婦人オリジナルブレンドのお紅茶。それはとても良い香りで、先程の大騒ぎで疲れた身体も心も、ほっと癒される。ヴァイスもすぅっと香りを存分に楽しみ、問う。
「あら……こちら、ローズヒップも入っていますのかしら?」
「ええ、勿論ざます」
 ローズヒップは美容に良いのですわよとヴァイスが説明すれば、メローネをはじめ女性陣はこぞって胸いっぱいに香りを吸い込んだ。その様子を見ながらウェインもちびちびと紅茶を頂く。得意な味ではなかったけれど、気付かれないよう気を付けて。
「お紅茶もおクッキーも、お上品でおいしいです」
 満面の笑みのミメイの手には、既に欠けたチョコチップクッキー。
 他にもごくごくプレーンなものから、イチゴジャム、市松模様と、花壇に負けないくらい鮮やかで見ているだけで楽しくなるクッキーが大皿に丁寧に並べられ、彼らの食欲を誘う。
「どんどんいただいてくださいませね」
「おば……おねーさんの作ったクッキー、とても、美味しい」
「お土産に少し分けて頂けませんか? 友人達にもお裾分けしてあげたくて……」
「これ、めっちゃ美味しいやん♪ おば……奥様、クッキーお持ち帰り出来ますやろか?」
 レミは肩に乗せたスピカにクッキーを薦めながら、甘党のアオイはクッキーをぱくぱくと頬張りながら、アスミルは先程から何やらメモに書き込みながら。
「あらまぁ、好評で嬉しい限りざます!」
 婦人は心の底から嬉しそうに微笑みながら、追加のクッキーを焼くことを皆に約束する。
「きれいな花壇。なんだか、懐かしい感じ……」
 メシュティアリアは香り立つ湯気の向こうに花壇を見つめ、その瞳に優しさと温かさを浮かべる。
「う〜ん、皆の強力かつ協力タッグが成功に導いたんやで、ほんまお疲れさーん♪」
 ペンを走らせるアスミルのメモ帳に最後に記されたのは『事件解決!』の赤い文字を囲むマル。
 かくして、お花畑の平和は守られたのであった。



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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2010/03/17
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  • 楽しい17 
  • ハートフル2 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし
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