ステータス画面

沼地に潜む悪意

<オープニング>

●沼の狩人
「ほらー、やっぱりー。あんなのただの噂だよねー」
 間延びした口調のエルフの少年は、一人で沼地に佇みながら皆とのやりとりを思い出す。
 わざわざこんな沼地に一人で来たのも皆に頼まれたからだ。
 と言うのも、以前より少年達の間では沼地に恐ろしい怪物がいるという噂があった。
 だが、今まで誰もそれを見たことがなく、被害にあった人もいないと、少年はそれを否定した。
 なら確かめて来てよと言われ、なんてことも無く了承し今に至る。
「んー、皆に大丈夫だってー、教えてあげないとー」
 グーッと伸びをすると振り返り帰路につく。
 しかしその背後では音も無く沼から這い出てくる仮面を付けたワニのアンデッドが。
 何かを感じて少年が振り返った次の瞬間、大口に噛み付かれ悲鳴を上げる間も無く沼に引き摺り込まれて行く。
 沼は瞬く間に波紋と共に血で赤く染め上げられたのであった。

●忍び寄るエンディングを破壊せよ
「皆さんには、そのエンディングを阻止して頂きたいのです」
 太刀の魔法剣士・ユーリ(cn0054)は集まったエンドブレイカー達に対して話を切り出した。
「実は、この村の子供達の間では沼地に恐ろしい怪物がいると言う噂があります。まぁ、最初は子供達が勝手に考えた空想の産物だったみたいなんですが、どうやらその沼にはワニのアンデッドマスカレイドが潜んでいるようなのです」
 嘘から出た真というやつだろうか。
「イーリスというエルフの少年は、皆が怖がるからとその真相を確かめに行った所で襲われるます」
 アンデッドマスカレイドは普段は沼地の中に隠れており探すのは困難なため、少年が襲われるタイミングで駆けつけるしか方法はないようだ。
「よって私達は沼の付近に待機して、現れたアンデッドマスカレイドを撃破し彼を保護します」
 アンデッドマスカレイドを倒した後は少年を村まで送り届けるといいだろう。
「ワニのアンデッドマスカレイドは体長4m程で、巨大な口で飛び掛るように噛みついてきます。さらには体の自由を奪う毒煙を吐いてくることもあります」
 鋭い歯での噛みつきは傷口を抉り、毒煙は広範囲に及ぶこともあるようだ。
「そして付き従うように4体のワニのアンデッドが現れます。こちらは一回り程小さく、基本的にはマスカレイドと同じ攻撃をしてきます」
 ただ、普通のアンデッドの放つ毒煙は麻痺ではなく毒を伴うらしい。
「油断ならない敵ですが、マスカレイドの凶行を見逃すわけにはいきません。皆で力を合わせ、少年の未来を守りましょう」
 そう締め括ると、ユーリも出発するべく仕度を始めるのだった。


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参加者
ひよこ・ナハト(c00101)
ライオン先生・レガード(c01052)
ラカスタヴァ・リリヤ(c01278)
天魁星・ハオ(c02891)
魔獣の刀撃・ダグラス(c04039)
驟雨・キシス(c05687)
狼皇・フェイ(c07107)
シールドスピアの自由農夫・ユミナ(c07201)
熾火・イーリス(c11714)

NPC:太刀の魔法剣士・ユーリ(cn0054)

<リプレイ>

●沼地に潜む者達
「いけ好かない仮面を潰す。何処に行ってもやる事は同じだな」
 尤も、仮面を潰すことに少しも不満は無いがと、笑みを浮かべながら魔獣の刀撃・ダグラス(c04039)は、即座に動けるように周囲の気配を探りながら備える。
「少年の良き未来の為、悪しき未来を終わらせる。それも私達の役目……」
 その横では、ペアを組んでいる熾火・イーリス(c11714)がそれに返すように独り言を零す。
「参加者の中にも少年と同じイーリスって名前がいるのね。こちらは女性だけど」
 広い世界で同名は珍しいことはないが、こういう偶然の出会いも大事だとラカスタヴァ・リリヤ(c01278)は感じる。
 そして村の方向や獣道などを把握すると、自分達の隠れるのに最適な場所を見つけ素早く身を隠す。
「そんなわけで、イーリス少年は何としても無事に帰してあげないとね」
 そう言うリリヤの横ではシールドスピアの自由農夫・ユミナ(c07201)が、そうだねぇ、と呟き同意を返す。
 そこから少し離れた所には驟雨・キシス(c05687)と太刀の魔法剣士・ユーリ(cn0054)が。
「事情は分からないけど危険かもしれない沼に、子供一人を行かせるのはちょっと感心しないね」
「まぁ、子供達のすることですから、大人に内緒で来たんじゃないですか」
 そんなやり取りをしながら、周囲の地形を観察し把握すると、少年が現れそうな地点を予測し、出来るだけ早く保護できるような位置を導き出し、共に隠れる二人。
「ワニのアンデッドとか、エルフヘイムも意外と物騒だなぁ……」
「確かに物騒かもな? だがアクスヘイムが平和になった今、俺はそれぐらい物騒な方が戦いがいがあって嬉しいけどな!」
 ひよこ・ナハト(c00101)はライオン先生・レガード(c01052)から受け取ったパンをもぐもぐと齧りながらぼやくと、天魁星・ハオ(c02891)は笑い飛ばすようにそう言い、手の平にバシッと拳を打ち付ける。
「それにしても待ち時間って何したらいいかわかんないよな」
「オレの可愛い弟は頑張ってるかなぁ」
 沼を眺めるナハトは背後に視線を感じバッと振り返るも誰も居ない。
「い、今何か見知った顔がいたような……気のせいだよな」
 何も居ないことを確かめるとホッと一息ついて再び沼の監視に意識を戻すナハト。
「おい、坊主に気付かれるなよ」
 その後ろでは素早く身を隠した『誰か』がもう一人を小突くのだった。
「古代からの永遠の森も平穏ではなかった……。このような物が現れるようになったのはいつ頃なんだろうか?」
「地を這う相手ってのはどうもやり難いんだがな。まぁデカイ分多少はマシか」
 レガードがうーんと考える横で、別のことを考える狼皇・フェイ(c07107)。
「マスカレイドを倒す……これが俺たちの役目だ。何も迷うことはない。やることはただひとつ、理不尽なエンディングは破壊する」
 先程のフェイの一言でレガードは難しく考えるのは止め、自分の役目を思い起こし沼と周囲に意識を集中させる。
「おい、来たぜ」
 警戒していた皆が一斉に気付いた先には、のんびりと頭で手を組みながら歩いてくるエルフの少年が。

●マイペース少年
 少年はエンドブレイカー達の気配にも気付かず沼に着くと、ぐるーっと沼を見渡した後に淵を少しの間歩いてみる。
「ほらー、やっぱりー。あんなのただの噂だよねー」
 何も起こらないことを確認すると間延びした口調でそう言い、佇みながら皆とのやりとりを思い起している。
「んー、皆に大丈夫だってー、教えてあげないとー」
 グーッと伸びをすると振り返り帰路につく。
 しかしその背後では音も無く沼から這い出てくるワニのアンデッドマスカレイドの姿が。
 何かを感じて少年が振り返った次の瞬間、少年は既に距離を詰めていたキシスの脇に抱えられアンデッドマスカレイドの大口から紙一重で逃れた。
 少年を抱えたまま後ろに飛び退ると、背を見せユーリと共に走り去る。
 そして獲物を横取りされ、怒ったように追いかけようとするアンデッドマスカレイドに向かって、透かさず稲妻が走るが如く放たれた鞭がその巨体を打ち据え止めさせ、さらに釣られるように沼から這い出てきたアンデッドの前に現れた八つの影がその進行を抑えた。
「およー?」
 何がなんだか状況を掴めないでいる少年を抱えたまま森を走り抜けるキシスとユーリ、そしてそれに付き添うように現れた者達。
 戦場から十分に離れたことを確認すると、キシスは少年を下ろしワニが現れたことと仲間がワニと戦い危険なので離れていて欲しい旨を伝える。
「危ないからちょっと待っててよ。大丈夫、お兄ちゃん達もついてるから」
「あー、怪物ってー、ワニだったんだねー。でもー、あんな大きいのは初めて見たよー」
 こんな状況でも少年の相変わらずのんびりな様子に安心すると、キシスはユーリと数名の援護者にこの場を任せ戦場に戻るべく再び駆け出す。
「いってらっしゃーい」
 その背に手を振る少年。
 ……この子には緊張感と言うものがないのだろうか。
 ユーリは少し苦笑を浮かべると、皆の帰りを少年達と共に待つのだった。

●腐ったワニ
 キシス達が少年を逃がしている間、既に沼では激しい戦いが繰り広げられていた。
 ダグラスが素早くマスカレイドへ踏み込み、鞘に収めた太刀を抜き撃ち一閃すれば、合わせる様に動き召喚したイーリスのファルコンスピリットが、急旋回しながらすれ違い様にその翼で切り裂いてゆく。
 フェイはその横を駆け抜けて行こうとしたアンデッドの前に立ち塞がり、-主神の双狼-のリーチを活かし接近戦に持ち込むと、怒涛のトンファーコンボを叩き込んだ。
 更に他のアンデッドの前にはハオが対峙し、闘気を込めた棍で捻り込むような突きを放つ。
「饕餮、行けっ!」
 ナハトの召喚したヒュプノスはナハトの頭を踏み台にして飛び上がると、睡眠ガスを撒き散らしながら、不思議な跳躍でアンデッドを眠りへと誘う。
 そこへ更にリリヤの召喚したヒュプノスも合流し、マスカレイドを柔らかそうな羊毛で包み込む。
 その光景は一瞬戦闘中なのを忘れるような、のほほんとした和みの空気を生み出したのだった。
 そこから一寸置いて、ユミナの体型からは大凡予測がつかないような素早い無数の突きがアンデッドを襲う。
 だがマスカレイド達もただただやられているわけではなかった。
 マスカレイドが広域に麻痺を伴なった毒煙を吐き出すと、動きの鈍った所へアンデッドがその鋭い牙で飛びつきながら傷口を抉ってゆく。
「アンデッドは土に還さねばな」
 噛み付こうと飛び掛ってきたアンデッドの牙を防御で固め爪で防ぐと、レガードは反対の手で斧剣をその頭へと振り下ろす。
「ふむ、食べられそうにないのが残念だ」
 頭を叩き割られそのまま活動を停止するアンデッドを尻目に、再び武器を構え次の攻撃に備える。

●砕かれた仮面
 エンドブレイカー達とマスカレイド達が何度か刃と牙を交えた後、グワッと大口を開けて飛び掛ってくるアンデッドの頭を、突然稲妻の如くハルバードが貫き吹き飛ばす。
「主役は遅れて現れる。なんてね」
 戦場に戻ったキシスは飄々と軽口を叩くと、迅雷に付いた肉片を払い飛ばし再び構える。
 仲間が戻ったことを確認すると、ダグラスは精神を統一させ痺れから体を取り戻し、そのまま緩やかな弧を描くように放った斬撃で弱っていたアンデッドを切りつけた。
「せいっ!」
 ギリギリで耐え凌ぎ再び噛み付かんとするアンデッドに、追撃を加えるべく動いていたナハトは前に出ると、その勢いを乗せたまま振りかぶった赤銅の大剣を全力で振り下ろす。
「ごめん、あとで洗うからー!」
 肉片やら血やら沼の泥やらで汚れに汚れた自身の大剣へ、申し訳無さそうに謝るナハト。
 そしてそのナハトに両断されたアンデッドの横では残りの一体がハオへと鋭い牙を突き立てた。
「へっ、やるじゃねーか! いいね、そうでなくっちゃ!」
 激しく噛み付かれ血が流れるも、腕に持っていた棍をパッと放すと腕に闘気を籠め攻撃に転じる。
「生憎俺は敵に向ける背は……持って無いんでね! 見せてやるよ、群竜士の真の武器ってのは、敵を打ち倒す……竜の闘気だ!」
 正拳で噛み付いたアンデッドの頭を吹き飛ばし引き離すと、グッと地面を踏みしめ宙に浮いたアンデッドの心臓部を正確に打ち貫いた。
 仰向けに倒れたまま動かなくなったアンデッドを確認すると、舐めんなよと拳から返り血を振り落とす。
 残るは傷付いたマスカレイド一体のみ。
 体に麻痺を残すもフェイは不敵に笑うと、練った気を拳に集め連続で気咬弾を放つ。
 放たれた「竜」の弾丸はマスカレイドの頭部に喰らい付き、ダメージと共に目を眩ました。
 しかしマスカレイドは抵抗し暴れるように毒煙を吐き出す。
 そんな次の瞬間、戦場に一陣の風が巻き起こる。
 イーリスの呼び起こした涼しげな癒しをもたらす風は沼の滞った空気と毒煙を押し流すが如く、レガードの麻痺を吹き飛ばしてゆく。
「トドメだ! 沼の底で静かに眠るが良い……」
 リリヤの呼び出したヒュプノスが軽快なステップを踏みながらマスカレイドへ近付くと寄り添うように羊毛で包み込み、意識が混濁した所へ合わせるように力強く振るわれたレガードの爪より放たれる、不可視の衝撃波がマスカレイドの全身を斬り裂いた。
 巨体が力無く地面に倒れ付すと同時に仮面が砕け散った瞬間、エンドブレイカー達は勝利を確信したのだった。

●のんびりエルフ
 暫くして、ユーリ達に守られていた少年の元へ辿り着く。
「うわー、傷が一杯ー」
 ワニと戦っていたエンドブレイカー達を見るとそれぞれ度合いは違うも、体の各所に牙を突き立てられた後が見えることに少年が驚く。
「ははっ、この程度、なんでもねーよ? そっちは無事か?」
 ハオが笑って手を振って見せると少年も少し安心したようだ。
「うんー、待ってる間ー、お兄さん達が星霊とかー、見せてくれたしー。楽しかったよー」
 ユーリが言うには待っている間も終始こんな感じだったらしい。
「そう言えば、少年は何と言う名前なんだ?」
「んー? ボクー? ボクはー、イーリスって言うんだー」
 イーリスに名前を尋ねられた少年は素直に答える。
「そうか、奇遇だな。私も同じイーリスと言う」
「お姉ちゃんもそうなんだー、奇遇ー奇遇ー」
 よろしくねーとニコッと笑う少年にイーリスは少し顔を顰め、少年のおでこを指で突付くと注意を促す。
「いいか、理由が無い噂と言うものは少ない。これに懲りたら危険な場所に不用意に近づく事は止めるようにな」
「はーい」
 エンドブレイカー達の苦労を知ってか知らずか、少年は手を上げながら返事を返す。
 本当に分かってるのかは分からないが、素直に頷いた少年にイーリスは微笑みかけると、いい子だと、そっと頭を撫でる。
 んー、と頭を撫でられる少年にレガードも近付き、頭をワシャワシャと撫でた。
「本当に分かってるのか? 危険が潜んでいるかどうかの判断は難しいものだ。このような場所に来るときは、どうか俺たちを頼って欲しい」
「うんー。今度からはー、危なそうなことはー、お兄ちゃん達にー、聞いてみるねー」
 大人しく撫でられ、笑顔を向ける少年。
「ま、たまにはこういう事もあるって事だよ。運が良かったな。ってことで、一緒に帰ろうぜー」
 ナハトがそう締め括ると、一行はのんびりとしたエルフの少年を連れて沼地へと続く森を後にする。
 こうして、エンドブレイカー達はエルフハイムでも新たな未来を切り開いてゆくのだった。



マスター:黒岩薫 紹介ページ
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参加者:9人
作成日:2010/09/13
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