ステータス画面

マッカナスウプ。

<オープニング>

 夕冷えを感じる風が、抱えられた真っ赤な花びらを揺らしている。
 視線の先には、つい最近まで空家だった石造りの家がある。今は煙突から立ち上る煙と、窓から漏れるランプの明かりが、人が生活する香りを漂わせていた。
 かつての空き家に居を構えたのは、一人の女性である。青年は慣れない手つきで首元のネクタイを直しながら、彼女の姿を思い起こした。
 長い黒髪に、映える白い肌。彼女はふらりとこの町へやってきた。事情があって、身を寄せる場所を探していたのだと聴いている。
「訳も話せないなんて……相当辛い事があったんだろうな」
 青年は足を止めて、石造りの家を見つめる。
 彼女が住むようになってから、青年は幾度と無くこの家に通いつめた。人好きのしそうな微笑も、事情について聴くと浮かべる儚げな困り顔も、青年の胸を熱くさせた。この人を一生護りたい、なんて陳腐な男心を抱かせる程度には――。
(「でも、何時かは話して貰えるようになりたい。その為に、今日は此処に来たんだ。彼女が居なくなってしまう前に、僕は気持ちを伝えないと」)
 木造作りの扉の前に立つ。青年は緊張を払うように一つ息を吐き、手の甲を扉へ寄せた。
 ふと、静かな空気を揺らすような、小さな歌声が聞えた。青年は手を止めて、耳を澄ます。
「……て、……し、……こんで、作ろう。寒い、夜には、美味しい、すうぷ――」
 歌声は、彼女のものだ。どうやら、夕食の準備をしているらしい。
 トントン、と軽い音を立てて扉を叩けば、歌声は止んだ。パタパタという足音の後、扉が軋んだ音を立てて開く。
「こんばんわ。素敵な花が手に入ったので、あなたにと思って」
 扉から顔を出した彼女は、青年の腕にある花々に瞳を向けた。指先で花弁を撫でて、ふわりと笑う。
「とても赤くて、綺麗ね。頂いていいの?」
 花びらを抱いた彼女は、香りを楽しむように花々に頬を寄せる。青年は頬を染めながら、視線を逸らした。そうして、会話を繋ぐためにと、思いついた事をそのまま口にする。
「今日の夕食はスープなんですね」
「ええ、そうなの。ふふ、どうして分かったの? 実はね、ちょっと困っていたのよ。もし良かったら、手伝って貰えると嬉しいのだけれど」
 どうかしら、と彼女は小首を傾げてみせた。断る理由も無い。青年は二つ返事で頷いた。
「本当? 嬉しいわ」
 微笑む彼女に促され、青年は石造りの家へ足を踏み入れる。彼女が後ろ手で扉を閉める音。がちゃり、という鍵の音。
「それで、困っていることって何なんですか」
「実はね、具が足りなかったのよ――お肉が」
 背を向けたままの青年の問いに、彼女は柔らかな声色のまま答えた。
 花束が渇いた音を立てて床に落下する。
 至近距離から建てられた包丁が、青年の背中に突き刺さった。声も出せずに、青年は振り返ろうと試みる。瞳の端に写る、口元を歪ませて笑う彼女の姿。握り締めた柄を引けば、刃は肉から離れ、辺りに赤い液体を撒き散らす。
 微笑む女の額では、マスカレイドの仮面が口を曲げて笑っていた。

「女は青年を切り付けて殺害――これが、逃亡中のマスカレイドが近々起こす事件の全貌だ」
 トンファーの群竜士・リー(cn0006)は口元を押さえながら言葉を打ち切る。青年が事件後どうなるのかまで、リーは話そうとしなかった。事件の内容に関係が無いから、というのが彼の言葉だが――言うに耐えない事が行われた事は確かだろう。
「今、彼女が居るのは石造りの小さな家だ。闘うタイミングは、彼女が夕食のスープを作っている最中になると思って欲しい。買い物の時などは、手を出さない方がいいだろう」
 今現在、殺害される青年を含め、多くの人が彼女に同情を寄せている。彼らに戦いを見られれば、面倒なことになる。近隣住民が異変に気付くような派手な戦いも控えたほうが良さそうだ。
 また、青年はその日の夜に彼女の家を訪れる決心をしている。『来る前に倒す』か『会いにこれないような工夫をする』必要もある。
「彼女の武器は柄の長い包丁――いわば大ぶりのナイフと思ってくれていい。連続突きや腹部への一撃が気をつけるべき攻撃だな」
 マスカレイドの攻撃方法は、一般的なナイフのアビリティになる。但し、良く砥がれた刃の攻撃力は『一般的なナイフ』よりは高いと思われる。
「大変な相手だが、放置するわけにも行かない。これ以上惨劇が起こらないよう、必ずマスカレイドを仕留めて欲しい」
 既にマスカレイドになってしまった女を、元に戻す方法は無い。リーは眉間に皺を寄せたまま、長いリーゼントの先を集まったエンドブレイカー達に寄せた
「それと、戦闘後は急いで現場から立ち去って欲しい。都市の人間は彼女がマスカレイドだという事も、その力を使って犯行を行っていた事も知らないからな。へたをすると皆が殺人事件の犯人にされてしまう。それだけは避けてくれ」
 険しい表情でそう締めくくった彼は、皆、頼むぞ、と仲間達の肩を軽く叩いて言った。


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参加者
杖の星霊術士・ティア(c00009)
弓の狩猟者・ウルディハ(c00022)
扇の星霊術士・ナハト(c00101)
杖の群竜士・シャルリア(c00398)
大剣の魔獣戦士・ヴァーニシュト(c02243)
太刀の魔法剣士・シキ(c02876)
太刀のデモニスタ・カレンデュラ(c03741)
ハルバードの城塞騎士・ジェオ(c04283)

<リプレイ>

●マスカレイド退治は、ひっそりと
 街角から遠く離れた一角に、三つの人影があった。太刀のデモニスタ・カレンデュラ(c03741)は、辺りを伺いながら三人へと近付いていく。壁に身を潜めてランタンの準備を進めていた杖の星霊術士・ティア(c00009)は、気配に反応するようにパッと彼へと顔を向けた。 
「どうだ、準備の方は」
「はい、ばっちりです」
 長い赤茶の髪を揺らし、ティアは頷く。そうして、カレンデュラさんはどうでしたか? と問い返した。彼はポケットから取り出した煙草を咥えると、火を付けながら自分の得た情報を三人へと伝えた。
 弓の狩猟者・ウルディハ(c00022)は言葉が途切れた合間を縫うように、ポツリと問いかける。
「わたしは、どうしたらいい?」
「俺たちと来て貰った方が良さそうだ。シャルリア嬢ちゃん、一人で大丈夫か?」
 二人の視線が杖の群竜士・シャルリア(c00398)へと向けられる。旅人のような服に身を包んだ彼女は、はい、と大きく頷いてみせた。
「頼むな。兄ちゃんが来りゃ面倒になる。責任重大だが、任せたぜ」
「皆さんも……無事を信じています。では、私も行きますね。よろしくお願いします」
 凛とした瞳を仲間達に向けて、シャルリアは言った。そうして、漆黒の髪を揺らし、その場から離れていく。
 カレンデュラは小さいながらもしっかりとした彼女の背を見送ると、溜息を隠すように紫煙を吐き出した。
「もうちょい愉快な事件なら記事にもできたんだがなぁ」
 笑うに笑えない、『殺人事件が起こる』というエンディング。やれやれ、と瞳を空へむけた。時を知らせる空の色は、これから起こる戦いを知らせるかのような、赤いものへと変わっていた。

 ――そうして、空を覆う赤みが消える頃。
 暗くなり始めた道を、買い物籠を持った女が一人通り過ぎていった。鼻歌混じりに扉を開けた女は、小さな家の中へと吸い込まれるように消えていく。
 女の姿が消えるのを待っていたかのように、人影が一つ、二つ、何処からともなく現われた。辺りをうかがいながら、彼らは家に程近い場所に集まった。
 小さい身体をさらに屈めながら、ティアがあたりをきょろきょろと伺う。
「私たち以外の人影は無さそうですっ」
「では、行くとしようか」
 ティアの小さな声に頷いて、ハルバードの城塞騎士・ジェオ(c04283)が言った。先ほど女が消えていった家を目指し、足を進める。
 扉の前で足を止めると、ジェオは合図代わりに仲間達へと目配りし、片手で木の戸を叩く。
 渇いた音に女の声が返答を返した。軽い足音が続き、一同は息を詰める。
「どちら様です――か?」
 ゆっくりと戸を軋ませて、女が顔を覗かせた。女が驚きの表情を作る間も与えず、ジェオは腕で女の身体を家の中へと押し込む。踏み込む足が玄関を越え、ランプの明かりに包まれた屋内へと侵入する。
「行くぞ」
 太刀の魔法剣士・シキ(c02876)の声に頷いて、大剣の魔獣戦士・ヴァーニシュト(c02243)が室内へと駆け込んでいく。残る仲間達も後に続くと、最後の扇の星霊術士・ナハト(c00101)が扉を閉めた。ティアの声に答え、ナハトはがちゃりと錆びた錠の音を鳴らす。
 女は押し入ってきたエンドブレイカー達を驚きの顔で見上げていた。
 何も知らない無垢な乙女のように、ぱちんぱちんと瞳を瞬かせ、小首を傾げる。女の仕草を見つめたヴァーニシュトは、大剣を構えながら呆れたように苦笑を浮かべた。
「そういう仕草に男が惹かれるのは確かかもな。騙されるのも無理ねえよ」
 ――女に惚れた青年も、彼女のこういう顔を好いたのだろう。
 その右手に、何が握られているかも知らないで。
 その額に、何が笑っているかも知らないで。
「すまねえが、その仮面は邪魔だ。俺様の野心成就に影響するから、排除するぜ!」
「先手必勝……やらせてもらう」
 戦闘開始を告げるようなヴァーニシュトの声に、シキの言葉が重なった。大きく踏み出された二つの足は、二人と女との距離を縮める。
 シキが抜いた剣の刃が腹を裂いた。女は血に塗れながら――にやり、と口元を歪ませる。
 右の手に、鈍く光るは包丁の刃。
 額では、マスカレイドの仮面が笑う。

●足止めは優しい嘘で
 女の家へと向かう道を、一人の男が歩いていた。手には赤い花束を持ち、ただひたすらに焦がれる女の為に、足を進める。
「すみま……せん……」
 不意に聞えた声に、男は驚いて足を止めた。
 声の方向に目を向けると、旅人らしき女の子――シャルリアが蹲っていた。男は驚いたように駆け寄る。
 駆け寄ってきた男の姿を見て、シャルリアは苦しそうに胸を押さえて見せた。只ならぬ状況に男は目を剥き、大丈夫かと小さな背に手を伸ばす。
「……急に、眩暈が……胸が、苦しく」
「持病があるのかい? 薬は?」
「……手持ちが、終わってしまって……せめて、お医者さんの所に行ければ……」
 シャルリアの背を撫でながら、男は困惑するように顔を顰める。
「そうだね。早く医者に行ったほうがいい。一人かい? 誰か付き添える人は」
「知り合いの家へ、行く途中で……父と……はぐれて、しまって」
 男は表情をさらに困らせた。
(「人の良さにつけこみ騙す事は申し訳ないですが、人命の為なんです」)
 謝罪の言葉を心の中で呟きながら、シャルリアは小さく呻いてみせた。ここで、彼を女の家に行かせる訳には行かない。何よりも、彼自身の為に。
「申し訳ないのですが……連れて行って貰う事は、出来ませんか?」
「勿論だよ。立てるかい? 腕に掴まって」
 ありがとうございます、と震える声で答えながら、小さな手を男の腕へと伸ばす。そうして二人は女の家に背を向けて歩き出した。
(「……こちらは、何とかなりましたか。後は……」)
 苦しむ演技を続けながら、ちらりと女の家を盗み見る。室内の様子を隠すよう、家は何時もと変わらぬ表情で、ランプの明かりだけを外に漏らしていた。

●鈍い刃は肉を求む
 人間らしい表情は既に影を潜め、女は狂気に顔を歪めて笑っている。額に掲げる仮面と、良く似た顔だ。
 台所から沸騰したお湯がごぽごぽと音を立てていた。女がスープを作るために沸かしたお湯だろう。水音に、舌なめずりをする音が混ざる。その唇が『オ、ニ、ク』と動いたのを瞳の端で捕らえ、ジェオは鋭い眼光を飛ばす。
「マスカレイドとは面妖なものだ。スープに使うならばもっと美味い肉もあるだろうに」
「もうあの姉ちゃん、普通には戻れないんだろうな……」
 ジェオの声に、ナハトの呟きが重なった。豹変した女の姿にかつての肉親がほんの少し重なって、ふるりと首を降った。脳裏に纏わりつく思考を絶つように、軽妙な音を鳴らし片手で扇を開く。
「……けど倒さないと、悲劇は終わらないから」
「ああ。どんな事情があってマスカレイドになったのか知らんが、ここで眠ってもらおうぜ」
 継ぐ様に、カレンデュラが言葉を紡いだ。突き出した手の平から黒い炎があふれ出し、ナハトの生み出した水流と同時に女の身体へと襲い掛かる。
 窓を背に、ウルディハは仲間達の戦闘を見つめた。弓を持っていない方の手で、右肩へ触れる。何時も感じている重みが、今は無い。
「大丈夫」
 それでも、ウルディハは何時も肩に居る羊の骨に語りかけるような声で続けた。
「血も罪も覚悟して、わたしが決めたんだもの。……頑張れるよ。ね、きょうだい」
 他人の命を絶つ事が、怖くないわけじゃない。けれど、他の誰でもない、自分が決めたことだから。
 フードの奥にある金色の瞳を女に向けて、番えた矢を引き絞る。
「……射抜け」
 哀れむこともなく。謝罪の言葉でも言い訳でも無い言葉を、ただ自分の心にだけ呟いて、指を離す。張り詰めた糸が跳ねて、風切音が鳴った。矢は女を囲む前衛三人の合間をすり抜けて、女の身体へと吸い込まれていく。
 矢は血に塗れた身体へ命中し、更なる鮮血を飛ばした。

「ついてこい……俺の動きに!」
 素早い動きで翻弄するように、シキが女の背後へと回りこむ。鋭い刃が突き出されるのにあわせ、ジェオが右足を素早く踏み込みハルバードの穂先を突き出す。弾力のある肉を貫く衝撃が、腕全体に響く。抉られた傷口からは、赤く粘着質な液体が溢れている。
 傷を受けながらも、女はナイフを振るい続けた。無造作で無作為な読みにくい刃を、ヴァーニシュトが後方、左右と剣戟の方向を見分けながら捌き続ける。
 刃が身を掠り、鮮血が飛ぶ。仲間の背を見つめながら、ナハトがちらりと上を見た。同時に頭上に乗っかっていたスピカがころりとナハトの手に落ちてくる。
「スピカ、頼んだぜ!」
 ぶん投げるように放たれたスピカは、空を駆けてヴァーニシュトに激突――もとい、ぎゅっと抱きしめた。体中に走っていた傷跡が、見る見るうちに塞がっていく。
 狭い屋内、三人の前衛に囲まれて、女の行動範囲は狭まっていた。戦いはエンドブレイカーが押している。だが、女もしぶとく、倒れる様子を見せない。
 ティアは両手で杖を構えたまま、ちらと窓の外へ目を向けた。
 日がとっぷりと落ちた暗い空は、時間の経過を感じさせた。まだ男が来る気配は無い――足止めに感謝の気持ちを抱きながら、杖を握る右手に力をこめた。
 この時間を、無駄に使うわけにはいかない。
 左手を添えたまま、右手をくるりと舞わす。杖が指と指を渡り歩きながら、くるりと満月のような円を描く。一回転した杖の先端から、複数の矢が生み出され、女の身体へと降り注ぐ。
「……貫け」
 ウルディハの声がティアの攻撃に重なり、鋭い鏃が女の腕へと突き刺さる。
 痛みに叫び声を上げる女。その顔はエンドブレイカー達を迎え入れた時の表情とも、具材を求める笑みとも違う、狂気に壊れたものにもみえた。
「――いや。私は、まだ、作っていないの。最高のすうぷを」
 女の独り言に、前衛三人が眉を顰める。
 女は最後の力を振り絞るかのように、咆哮をあげて駆け出した。前衛の間をすり抜けて、瞳の先が裏口へ向く。
 刃を、裏口を守るカレンデュラが腕で受け止めた。肉を絶つ音に眉を顰め、呻きながらも口角を上げる。
「ここは我慢のしどころ、だろ」
 女に余裕は無い。あと数撃で倒せるはずだ。隙の出来た背をめがけ、獣化したヴァーニシュトの爪が振り下ろされる。喰らい付くように深く刺さった爪に、女は悲鳴を上げた。
「そろそろ倒れろよ!」
「これ以上、悲劇は繰り返させないぜ!」
 鋭く振り下ろされたナハトの扇が、大波を呼んだ。追い討ちをかけるように女の身体を飲み込む。
 崩れ落ちるように膝を落とす女を見下ろし、シキは止めとばかりに剣を振りぬいた。
「マスカレイドの末路か……儚いものだ」
 鞘へ収まる音と同時に、女の身体は床へ転がった。

●終宴は宵闇に
「もう少しゆっくりしていっても良いんじゃぞ?」
「いえ、幸い目的地も直ぐですし……父が心配していると思うので」
 貰った薬を仕舞いながら、シャルリアはちらりと空を伺い見た。大分、時間は稼げた筈だ。見抜かれてしまう前に、とベッドから立ち上がり二人へと頭を下げる。 
「本当に助かりました。ありがとうございます」
 最後まで演技を貫き通し、シャルリアは小さく微笑む。胸に残る罪悪感という名の小さな痛みを、ぐっと心の奥に押し隠しながら――彼女はその場から立ち去った。
 そうして、闇夜に消えていく。

「汝の死に様……否、生き様はしかと見届けた」
 床に転がる女の亡骸を見つめ、ジェオは組んだ両手を額へと押し当てた。祈りの仕草を模しながら、ジェオは生を閉じた女に敬意の送る。
 もう瞳を開けることが無い女の亡骸を、生きた証を、ジェオはもう一度見つめた。そうして、静かに立ち上がる。
 戦いは終わり、後は戦場となったこの家から逃げだすだけだ。逃走ルートをもう一度脳内で描きつつ、裏口へと視線を向ける。
「今なら人目もありませんっ」
「カレン、行けるか?」
 薄く扉を開けて辺りを伺っていたティアとヴァーニシュトの声に、カレンデュラは傷の残る腕を軽く振って頷いた。そうして、順に夜の中へと消えていく。
 最後に残ったナハトは、徐に室内を振り返った。
 戦闘の形跡を隠すだけの時間は、無い。最後に偶然放たれた大波も、戦いで出た血を流しきってはくれなかった。
(「他の人には、普通の姉ちゃんに見えてたんだよな」)
 彼女を殺すことで、悲しむ人が居る。殺さなければ新たな殺人が起こり、今よりも沢山の人が悲しむのだと分かっていても、心臓はぎゅうと苦しげに呻く。
 振り切るように、玄関の扉をあけた。リュックを背負いなおし、そのまま歩き出す。
 せめて。
 ――せめて風が、血の匂いだけでも入れ替えてくれるようにと、願いながら。



マスター:流星 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2010/03/14
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  • せつない20 
冒険結果:成功!
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