ステータス画面

虹宿す羽根を、あなたに

竪琴の魔曲使い・ミラ

<虹宿す羽根を、あなたに>

■担当マスター:晴海悠


 男は高い、遥けき空を見上げていた。空は青く澄み渡り、風がこうこうと強く吹いては音を立てる。
 もうすぐ恋人の誕生日だ。一体何を贈れば、彼女に喜んでもらえるだろう。自分を好いてくれる彼女のことだ、何を贈っても笑顔は見られるだろう。でも、だからこそとっておきの贈り物がしたい。
 男はなおも考える。ふと陽の光がさし、眩しさに空から目を逸らした。突然吹いた風に、足元でエサをついばんでいた鳥たちが一斉に飛び立ち、羽根が男の手に舞い落ちた。
 そういえば、聞いた事がある。かの地には七色の輝きをその身に宿す、綺麗な鳥がいると。そしてその鳥の持つ羽根もまた、付け根から毛先に至るまで見事に七つの色を持つのだと。彼女は以前、その鳥の羽根が見てみたいと言っていた。うってつけではないか。確か、その鳥の名は――。
 

「皆さん、お集まりいただきありがとうございます」
 竪琴の魔曲使い・ミラは集まったエンドブレイカーたちに丁寧にお辞儀をし、つづいて隣にいる男性が今回のあなたたちへの依頼人ですと紹介した。
「この依頼人の方――ダンテさんは、恋人の誕生日祝いにある物を贈りたいと考えているそうなんです。それは、都市国家を離れた地『辺境』のとある森に住む、七つの色を持つ鳥の羽根。太陽の光を七つに分けたような色彩から、近隣では陽光鳥と呼ばれているのだそうです」
 ミラは、今回の依頼はマスカレイド絡みの案件ではなく、陽光鳥の羽根を取りに行くダンテの護衛であると告げた。
 護衛という言葉に反応し、一人のエンドブレイカーが声をあげる。
「ちょっと待て。護衛ってことは、何かしら危険があるってことか?」
 その言葉にミラはそっと目をとじて頷き、言葉を続ける。
「はい。あなたたちがこれから向かう辺境には、様々な外敵がいます。陽光鳥の住む森はここからも近いのですけれど……」
 聞けば森の入り口近くの一帯が、木の魔獣のテリトリーになっているのだという。木の魔獣は根っこが足のように動き、外見に反して自由に移動ができるらしい。テリトリーも広く好戦的な性格なため、戦いは避けられなさそうだ。
「陽光鳥の住みか自体は、陽の当たるところに巣を営む習性があるので簡単に見つかるそうです。ただ、木の高いところに巣があるので、直接羽根を引き抜くような荒業をするよりかは、抜け落ちた羽根がないか探す方が楽でしょうね」
 エンディングを食い止めることも、もちろんエンドブレイカーの大切な役目だ。しかし、困っている依頼人を助けるのも、戦う力を有する者として見捨ててはおけない仕事ではないだろうか。
「皆様にはご迷惑をおかけすることになってしまいますが、どうしても僕は自分の手で陽光鳥の羽根を手に入れたいのです。だから……」
 ダンテが反応を伺うように言葉を絞り出し、ミラが彼の背中をそっと撫でて、一言告げた。
「ダンテさんの護衛のお仕事。しっかりと、お願いしますね♪」

●マスターより

 「エンドブレイカー!」にご参加いただいた皆様、はじめまして! そして当シナリオを目に留めていただきありがとうございます。この度マスター陣の末席に加えていただいた、晴海悠(はるみ・ゆう)と申します。
 皆様はこれからこの世界で、「終わりを食い止める」という重大な役目をもって冒険に出かけられる事と思います。数多くの敵、苦境が待ち受けていることでしょう。しかしそれらを共に乗り越えた者だけが分かち合える、友情、結束、愛があります。そして、綴られゆく無数の冒険譚は必ずや、皆様の思い出の大切な1ページになってくれるでしょう。
 未熟な身ではありますが、私にもそのお手伝いをさせて下さいませ。これからどうぞ、よろしくお願いいたします。
 
 以下はシナリオの補足になります。
 木の魔獣は鋭い木の葉を一人に向けて勢いよく飛ばす攻撃と、自在に動く根っこで近くにいる相手を強く殴打する攻撃を仕掛けてきます。オープニングでも触れた通り、今回の敵はマスカレイドではありませんが、油断なさりませぬよう。
 陽光鳥の羽根の入手方法に関してはお任せします。ただし、自然の鳥ですので警戒心は強いです。強引な手段を使うとせっかくの虹色の羽根が台無しになってしまう可能性もありますので、行動をとった結果がどうなるかを想像しながら、いろいろと考えてみて下さいね。
 それでは、行ってらっしゃいませ。よき冒険を!


<参加キャラクターリスト>


<プレイング>

プレイングは1週間だけ公開されます。

● ナイフのスカイランナー・ヴフマル(c00536)
■森の中
俺は皆の先導で。魔獣の気配に注意しつつ、陽当たりの良い場所と高い木を探して進むっす。
離れすぎねーよう、本隊と普通の声で会話できる距離を保つ。
魔獣がいたら声で本隊に連絡。

■戦闘
切り裂きを使って戦うっす。
複数出た時は他の人と同じ奴を攻撃して各個撃破。
敵が何を仕掛けてきそうか、よく見て注意しながら戦う。
後ろ狙って葉飛ばしてきたら、割って入って庇いてーな。
タイミングや体力的に無理そうなら後ろへ声かけて知らせるだけにしとく。
敵を後ろまでぜってー進ませねーよう体張って止めるぜ。特に複数出た時。

戦闘中に後ろからも敵が来たら、気付いた時点で後ろへ急行。
但し既に先導or前衛の内2人が行ってたら、そちらに任して目の前の敵に集中。

■羽探し
近くの藪と、巣がある木の枝に引っかかってないか見とくかな。
枝の方は、鳥から十分離れて取れるなら登って取りに行くっす。無理ならやめとく。
樹を揺らして鳥驚かせねーよう、慎重に!

● ハルバードの魔法剣士・テオバルト(c00913)
初めての依頼は護衛か
恋人の為のプレゼントに体を張るだなんて、なかなかいい男じゃねぇか
是非とも成功させたいな

【陣形】
先導担当
声の届く範囲でちょっと先に行き敵の出現に備える
「木を隠すなら森の中…って実際隠されると結構厄介だなぁ」

【戦闘】
ダンテは護衛に任せ、いち早く戦闘を終了させることを念頭に戦う
速さを生かしたアビリティで敵の懐に飛び込むように攻撃を
「さぁ、避けられますか?」
ハルバードを斜めに薙ぐように叩き込む
「自然破壊は趣味じゃありませんが、この場合仕方ないですよねぇ?」
敵が複数いた場合一番近くの敵から、または弱った敵から一体一体確実に倒す
木の葉攻撃は後衛の声を信頼
目視が難しければ声を頼りに避ける
ダンテさんは絶対無事に守る
俺達に手を出したのが運の尽きだと思いなっ!

【戦闘後】
陽光鳥が水浴びの時に落ちていないか近くの水辺を中心に羽を探す
水の中に綺麗な虹色の羽…ってのは素敵だろけど、見つかるかね?

● 槍の星霊術士・エセル(c01466)
【心情】
恋人に贈る為に、なんてなかなか健気じゃない
あーあ、アタシも素敵な彼が欲しいわ
ま、それはともかく、護衛はバッチリ任せなさい
でもその代わり、とびっきり綺麗な羽根を見つけなさいよ?

【戦闘】
対複数を警戒して依頼人を中心に円陣形成
「前衛」
敵の根の動きに注意しつつ肉薄して攻撃
接近時の多少の疵は必要経費
敵の木の葉にも注意
必要なら味方に声掛け

回復は基本的に他者任せ
手が足りない場合は回復に回る
体力が半減したら後方に下がって自己回復
他者回復は体力が2/3の人に

背後、あるいは複数の敵出現時
なるべく早めに自分の敵を倒してそちらへ向かう
確実に各個撃破

「出たわね、魔獣」
「あ〜もう!根っこが邪魔っ」
「さぁ、終焉をあげる」

【羽根探し】
戦闘後に手分けして探索
巣がある木の周辺、木々の根元や茂みを注意深く探す
「なかなか見つからないわね」
発見時
「へぇ、思ってた以上に綺麗な羽根ね」
「ここまで護衛した甲斐があるってものね」

● 大鎌の星霊術士・ヒナ(c01505)
●出発
「わ…!ありがとうございます。」
プルーさんの心遣いで表情を崩します。

●心境
「頑張りましょう。」
陽光鳥の羽根をプレゼント…素敵ですね。
無事に渡せますように。

●目的
ダンテさんの護衛
陽光鳥の羽根の捜索。

●行動
・ダンテさんを真ん中に行動。
●隊列
・先導:ヴフマル・テオバルト
・前衛:エセル・レミン
・右中衛:ヒナ・ナナヤ
(中心:ダンテ)
・左中衛:バルティナ・プルー
・後衛:クイール
・ただし戦闘不能等で空きが出た場合があればそちらへ。

●戦闘
・木の魔獣は複数居ると考えて行動。
・ダンテさんの護衛へ。
・黒旋風で攻撃。
・黒旋風で防御
・ダンテさんと仲間のGUTSが低い場合は精霊スピカで回復。
「〜さん!右(もしくは左)から木の葉攻撃がきています!」
・気づく範囲で仲間に木の葉への注意を促す。

●羽根の捜索
「巣の木の下が怪しい気がします。」
・抜け落ちた羽根を捜す
・戦闘後、羽根を捜す。

● 杖の星霊術士・クイール(c01958)
森の中を移動する時は、ダンテの後ろにいることにしよう
私自身の後ろが見えなくても、油断しないで進む
いつ、どこから攻撃されるか、わからないからな
自分たちの足音以外の音が聞こえたら、用心するように皆に伝える

木の魔獣が現れたら、ダンテや仲間に当たらないよう気をつけながら、マジックミサイルを使って戦う
攻撃をする際、仲間との連携を第一に考えて行動する
信頼してこその仲間だからな
遠くに魔獣がいる時は、援護のため、攻撃をより受けている魔獣に対して
近くに魔獣がいる時は、牽制のため、マジックミサイルを使う
私自身を含めた誰かが、疲労状態にある場合には星霊スピカでの回復を行う
回復は他の仲間と重複しないように心がける
木の葉や根っこでの攻撃対象が、予めわかる場合には、名前を叫んで注意を促す

戦いが終わったら、陽光鳥の羽根を探そう
木の上にある巣を見つけることができれば、羽根もそのすぐそばにあるかもしれない
絶対に見つけるんだ

● 扇の狩猟者・パルティナ(c03293)
初めてなので、ちょっと緊張します
でも、ダンテ様の為にも頑張ります



◆隊列
皆でダンテ様を囲む様にします
私はプルー様と左側です
私は遠距離からの攻撃なので、ダンテ様の傍に出来るだけ居ようと思います
盾にもなれます様に
あと、全体を見渡し易いと思います


◆戦闘
前の方が敵を発見したら逆にダンテ様側に行きます
「大丈夫です、絶対守ります」

ファルコンスピリットと扇で攻撃
敵が複数の場合は近くの敵から攻撃します
その次に一番体力がありそうな敵を

葉の攻撃に気付いたら声で指示

ダンテ様に攻撃が来たら盾になります

回復して貰ったら星霊にもきちんとお礼


戦闘後は皆様の無事を確認します



◆羽探し
魔獣の気配がなくなったら、羽探しです
陽光鳥さん、私達の気配で逃げちゃったでしょうか…
羽も楽しみですが、姿も是非見てみたいです

皆で落ちていないか探します
一番綺麗で大きいのをダンテ様にあげます

でも、皆の分も出来たら欲しいです
今日の思い出になります

● 杖の星霊術士・リルーファ(c05181)
ダンテさんを中心とした円陣で向かいます。
わたくしはクイールさんとご一緒に後衛を務めましょう。

木の魔獣のテリトリー付近からは常に周囲を警戒。
後衛ですから、背後からの襲撃には特に気を配りませんとね。
先導の方とも会話出来る位の場所で遅れず逸らず進みますわ。
相手が複数の危険性も考えて気は抜きませんように。

戦闘では星霊スピカによる回復を第一に。
傷の深い順に、怪我をされた方へ。
幸い星霊術士のお仲間さんが多いので、出し惜しみはせず。
回復が足りているようでしたらマジックミサイルにて援護を。
ダンテさんには極力お怪我をさせないようにしたいものですから、もし後ろから襲ってきた場合は前に立つようにしましょうか。

無事に倒せましたら羽根探しですわ。
陽光鳥の巣を見付けられた方がいましたら、その近くを集中的に探しましょうか。
ううん、木の茂みとかに引っかかってないかしらねぇ。
綺麗な色だそうだから、目立つと思うのですけれど。

● 弓の星霊術士・プルー(c05239)
■出発
緊張してるヒナちゃんを撫でてあげて、
「大丈夫、ほら肩の力抜くー!」
変に硬くなると上手くいくものも駄目になるからさ


■道中
ダンテさんを囲む配置で
先導、前衛、右側、左側、後衛2人ずつ
あたしは左側2人の内後ろにつくよ


■戦闘
魔獣が出たら少しだけ散開して、
左利きの弓射撃で丁寧に狙っていくね
「射抜けッ!」
言い聞かせて、自信をもって放つんだ

HPの半分以下を目安に、前衛の回復にもあたるよ
中衛から駆け出て星霊スピカを召還!

複数の出現を気にかけることも忘れない
位置によって臨機応変に対応

背後に異変があった場合は振り返り確認して
危なかったら数発の助太刀
前衛2人が駆けつけ次第、前方の敵に意識を戻すよ
「あと、任せたよ」
背中は、信じて預けるものだよね

「〜さん、左っ!」
みたいに、木の葉への声掛けも注意しておくっ


■羽根
落ちている綺麗なものを探すよ
巣を見つけたら風向きとか少し頭を働かせて、
落ちてそうな方向の草むらを重点的に!

<リプレイ>

●森の奥への探索行
 巨大な都市国家アクスヘイムを外れた、辺境の地。虹色の羽根を求めたエンドブレイカーたちは、辺境の荒野を越えて目的地である森に差し掛かっていた。それまでの開けた土地とは異なり、あたりに緑が増えてくる。この近隣は水が豊富なのだろう。少なくとも、一つの森を育める程度には。
 冒険の予感を感じとり、そっと大鎌の星霊術士・ヒナ(c01505)は肩を震わせた。それを見て取り、弓の星霊術士・プルー(c05239)がヒナの背中をそっとなでる。
「大丈夫、ほら肩の力抜くー!」
「わ……! お気遣い、ありがとうございます」
 変に硬くなると上手くいくものも駄目になるからと、プルーはヒナに微笑みかける。
「恋人に贈る為になんて、なかなか健気じゃない」
 槍の星霊術士・エセル(c01466)が今回の依頼人であり護衛対象でもあるダンテをからかい、アタシも素敵な彼が欲しいわ、とごちる。ちょうどダンテに同じことを言わんとしていたハルバードの魔法剣士・テオバルト(c00913)も微笑んで話しかけた。
「プレゼントのために体を張ろうだなんて、なかなかいい男もいたもんだねぇ」
「体を張るだなんて。ご覧のとおり皆さんに守られてやっとの旅路ですよ」
 苦笑いするダンテに、杖の星霊術士・クイール(c01958)が横からひょいと顔を出して尋ねる。
「ところで、その恋人はどんな人なんだ?」
 その問いには扇の狩猟者・パルティナ(c03293)も興味を持ったのか、すっとダンテの顔を見上げる。
「そうですね……結構思ったことを口にする人です。でもその割には察しもよくて、気付けば僕の伝えたいことはほとんど、言わなくてもわかってて」
 この人にはかなわないなあと常々思うというダンテに、尻に敷かれる将来を想像したのか、思わず周囲の女性数名が吹き出してしまう。
 杖の星霊術士・リルーファ(c05181)はダンテが照れながらもなお語る様子に優しい視線を投げかける。そして、先を行くナイフのスカイランナー・ヴフマル(c00536)に、そちらは異変ございませんか? と声を向けた。
「いまのところ大丈夫っすー」
 背中を向けたままのヴフマルからは元気な声が返ってくる。彼は今回の冒険で黒一点なのを意識してか、張り切って先導の役目をつとめていた。

 一行がしばらく進んだところで、ヴフマルと共に先行していたテオバルトがパーティに静止を呼びかけた。
「何かがはいずりまわった跡がある」
 見れば地面には何か巨大なものを引きずった跡。一行の間に緊張が走る。あらかじめ護衛のためにと組んでおいた円陣を無意識のうちに固める中で、あたりを見渡していたパルティナが違和感を感じとり、緊張した声音で警戒の声をあげた。
「ヴフマル、気をつけて。何かいるわ」
 やぶをかき分け進んでいたヴフマルが視線の先に姿を見て叫ぶ。
「いたっす! 木の魔獣がいたっす!」
 その声に、人面のような模様を浮かべた大木が、ずんずんと足のような根を動かし近寄ってくる。
 ――オオオオン……!
 異形の大木から放たれるその敵意に満ちた声が、戦いの始まりを告げた。

●迫りくるは異形の怪異
 まるでこの遭遇を喜ぶかのように、エセルが敵へと槍の穂先を突きつけ言い放つ。
「出たわね、魔獣」
 一行は今回の探索において複数の敵が出ることを警戒し、円陣のまま戦いに移行することを決意していた。パルティナ、リルーファ、ヒナの3名がダンテの護衛を意識し、周囲を素早く固める。
「大丈夫です、絶対守ります」
 パルティナの力強い声に、ダンテは緊張した面持ちでお願いしますと短く告げた。

 先手を打ってクイール、リルーファの2名が杖から光の矢を放つ。放たれた無数のそれは次々と木の魔獣の幹に突き立った。ヒナもその流れに加勢しようとするが、自身がダンテの護衛であること、大鎌を持つ自分はこの位置から攻撃できないことを思い出し、この場は待機を選ぶ。
「来たれ、トーラ!」
 パルティナが自らの従えるファルコンスピリットの名を呼ぶ。鷹の加護がプルーの身に宿ったところで、木の魔獣が動きを見せた。
 梢(こずえ)を揺さぶる予備動作に、プルーが来るよ! と警戒を促すも、飛ばされた無数の木の葉をかわしきれず、ヒナが傷を負う。ヴフマルが庇うように飛び出て迎撃の構えをとる最中、エセルも回復は任せたと言い残して接近戦を挑む。
「よくもやったね!」
 瞳にかかる髪をざっとかきあげたその左腕で弓弦をひき、射抜け! とプルーが鷹のオーラを宿す矢を放つ。
「クライアントのダンテが体を張ってるんだ、ここで俺が働かなくてどうするってねえ」
 テオバルトが不敵な笑みと共に黒き翼持つハルバードを構え、一直線に駆ける。避けられるものかと的確に繰り出されたその一撃は、急所と思しき顔面部分を深々と突き刺した。
 先ほど負傷したヒナの身を案じてクイールが星霊スピカを呼び、ヒナの元へと駆けたスピカがもふっと包みこんで光を放てば、ヒナの傷はすべて消えた。
 再びヒナがダンテを庇えるように待機し、リルーファの魔法の矢、そしてパルティナの鷹のスピリットが爪で魔獣を襲ったその直後。木の魔獣の根が、梢が大きく揺さぶられる。おぞましい咆哮と共に、上下からの激しい双撃が繰り出され――、
「テオバルト!!」
 最前衛にいたテオバルトが大木の腕に挟み込まれるようにして一瞬、その姿を消した。

●力持ちし者よ、危機を退けよ
 ヴフマルが木の腕に抱き込まれたテオバルトを救おうと、ナイフで何度も幹を突く。挟まれた木の腕からテオバルトが解放され、地に転がったあとゆっくり立ち上がる。
「……大丈夫だ」
 そう短く告げるも、テオバルトは打撲にいたむ胸を押さえ、やや苦しげにうめく。エセルとプルーがその状態をみて即座に星霊スピカを呼び出した。2匹のスピカはくるりと踊ってテオバルトに駆け寄り、癒しの力がこもった尻尾で傷跡をひとなでする。
 ヒナは肩にかけた大鎌を握り、迷っていた。大鎌による攻撃と防御を考えていた彼女はいま、中衛にいる。大鎌の一撃を届かせるにはもう数歩だけ、歩みださなければ。迷いを振り切りヒナは、近くにいるパルティナに告げた。
「ダンテさんの右の守り、おねがいします」
 そっと頷き立ち位置をかえたパルティナに礼をいい、駆け出したヒナは大木の顔面めがけて大鎌を回転させ、斬り上げを見舞った。
 返礼とばかりに飛ばされた木の葉が後衛にいるクイールの身をしたたかに打つが、手数に長けるヴフマルと的確なエセルの突きが交差して幹を穿ち、その中心へとプルーの矢が突き立った。

 それから幾度かの攻防の後。枝がもがれて葉が落ち、木の魔獣からはいつしか苦しそうなうめき声が漏れていた。森にはこれまで戦闘音が幾度となく響いているが、他の外敵は現れていない。
「増援の心配はなさそうだな」
 クイールが敵を見据えたまま、皆へと告げる。返される頷き。それはそのまま総攻撃の合図となった。
 テオバルトが顔面へとハルバードの突きを繰り出し、ヒナが攻防一体の構えで幹を斬り上げる。パルティナが扇で地をしたたかに撃てば、どこからか呼ばれあふれ出る水の奔流が、荒波となって敵を押し流す。
 その激流に抵抗し、木の魔獣が一矢報いんと太い枝を上下に振り払う。その片方がテオバルトに命中するが、
「俺に構うな。攻めろ!」
 そう言い切ってみせた心意気に応え、ヴフマルが駆ける。1、2、3――。連続して繰り出された突きの後、まだ来るっすか? とヴフマルは隙のない構えをとって着地した。
 エセルが槍をふるうもこれは決定打に至らず、しかし彼女は仲間を信じて叫ぶ。次の一撃でいける、と。
「さあ、終焉をあげる。今よプルー!」
「うん、任せて!」
 限界までに引き絞られた弓から放たれた矢は、一直線に森の中を疾駆し、木の魔獣を貫き通す。バリッ、と小気味のいい音を立てて木の幹は左右に分かたれ、そのままめきめきと真っ二つに裂け――やがてそれは森の湿った地面に横たわった。

「やった……みたいですね。お疲れさまでした」
 確かめるように紡がれたパルティナの言葉。そう、危険な敵との戦いは終わったのだ。
「やったね!」
「お疲れっす!」
 プルーとヴフマルが手のひらをあわせタッチを掲げれば、その様子をみて他の者たちの緊張もほどけ、安堵の笑い声が満ちていく。森にはいつしか、小鳥のさえずりが戻ってきていた。

●太陽の鳥
 エンドブレイカーたちとダンテは、森の中でもやや開けた広場のような場所に出た。これまでとは異なり、木々がややまばらになったこの場所には陽の光が注いでいる。ここでなら陽光鳥の姿も期待できそうだ。彼らは集合場所を決めた後、思い思いの方角へと手分けして羽根を探しに散らばっていく。
「巣のある木の下を探してみましょう」
 ヒナはそう提案するも、それにはまずは肝心の巣を探さなくてはならない。同じく巣のある木を探していたヴフマルも、近くの木々を見上げて困ったように呟く。
「この木は細くて登れそうにないっすねー」
 リルーファとエセルは根元や茂みを探すが、時折ちぎれた羽毛や色の抜けた羽が見受けられる程度だった。
 一方テオバルトは近くに水場がないかと丹念に探していた。陽光鳥が水浴びをした際に抜け落ちた羽根がないかと予測してのことだったが、見つかった小さな池は水の流れがなく、緑色に淀んでいた。
「もとより運よく見つかるとは思っていなかったが」
 そう言って彼女は苦笑いした。贈り物をこの池から拾うのは俺でもためらうな、と。
 その頃パルティナは、まず先に陽光鳥の巣のありかを見つけるべきだと判断し、やや遠くの木に登っていた。自然に囲まれて育った彼女は木登りを難なくこなし、樹上からあたりを見渡す。パルティナの登っている木から何本か離れた高い木の頂上に、これまでの森では見慣れない色を見つけた。陽光鳥だ。
「こんにちは、綺麗な羽の鳥さん」
 そっと小声で呟く。遠くの木から陽光鳥がこちらを向くように首を向けた。驚かせないようにと彼女は一旦木から降り、陽光鳥の巣を見つけたことを皆に報告してまわった。
 あらためて、今度は巣のある木の周辺に範囲を絞っての捜索がはじまる。そんな中、プルーは指先をかるく湿らせて、風向きを探っていた。
「風下はこっちだね」
 そちらへ向かおうとすると、頭上に羽ばたく音が近づいてきた。その羽音の主はおそらく、つがいのもう片方だったのだろう。一羽が巣に降り立つとともに、もう一羽の陽光鳥が交代するように風に乗って飛び立った。クイールが笑顔でそれを指差し、テオバルトもまた同じ方を見て髪をかきあげ、その姿を目に焼き付ける。
 鳥が彼方へ飛び去るのを一行が見守ったあと、プルーは陽光鳥の飛んでいった方角の草むらに目を向ける。そこには何か異色の、ふわりとしたものがひとつ、落ちていた。
「あった! あったよーっ!」
 興奮したプルーの歓喜の声が響いた。

 陽光鳥の羽根は、噂に違わぬ七色のグラデーションに彩られていた。
 羽根を陽の光にかざす。きめ細やかなその羽根は、小さな羽毛のフィルターで陽の光をいくつにも分け、覗き込む瞳に七色の色彩を浮かべては楽しませた。単に極彩色というだけでなく、その羽根のおりなす光の芸術が『陽光』の名をかの鳥に与えたのだろう。
 一同がひととおり覗き込み堪能し終えたあとで、プルーがそっと皆の目を見て語りだす。
「あのね、これ以外にも落ちてないかって探したんだけれど」
 一生懸命探してはみたものの、綺麗な状態で持ち帰れるものはこの1枚だけだったという。その意味を察して、ヴフマルがニカッと笑って口をひらく。
「俺はいいっすよ」
 パルティナもそれに続き、微笑みを浮かべて告げた。
「一番大きくて綺麗なものは、ダンテさんにと決めていましたから」
 ヒナがみんなの前で遠慮がちに差し出したのは、アンティーク調の小さな木箱だった。皆で見たこの輝きが、そして七色の羽根をめぐる冒険の思い出が、いつまでも色あせぬように、と。
 煌めく羽根が箱にしまわれ、ダンテの手に渡る。
「ありがとう。……皆さん、本当に。ありがとう、ございます」
 ゆっくりと礼を告げ、はにかみながらダンテが笑って頭を下げる。
 ――妬けちゃうなあ、もう! そう言ってプルーがダンテの背中を叩けば、自然と笑い声がこぼれてゆく。
 その光景を一歩引いて見守るリルーファの瞳には、優しい色が浮かんでいた。
(「羽根自体も貴重なものでしょうけれど。きっと恋人さんは『羽根が見たい』と言ったのを覚えていたその心遣いを、嬉しく思うんじゃないかしら」)
 年を重ねたリルーファが脳裏に思い浮かべるは、今は亡き夫の姿。胸にあふれていく優しかったかの人の思い出の数々が、目の前の若いダンテの姿に重なっていく。
(「この一日の体験が彼の幸福への一歩になれば、幸いですね」)
 心の中で彼の背中を後押しし、彼女は幸せそうな笑みと共に瞳を閉じる。

 ――ね。幸せな時間は、いくらあっても悪いことはないのだから。
マスター:晴海悠 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2010/02/16
  • 得票数:
  • ハートフル17 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし