ステータス画面

群れの時間

<オープニング>

 矢が刺さる。
 男エルフの胸に、女エルフの首に、子エルフの背に刺さる。
 矢は、野卑な笑い声とともに放たれる。
 やがて、飛んでくるのは矢から斧に変わる。それとともに、このエルフの村を襲う者どもの姿がより鮮明になっていく。
 錆びきった斧片手に迫ってくるオークの群れが襲撃者の正体だ。
 群れの奥で、弓を背負った赤兜のオークが叫ぶ。
「殺セ! 殺セ!」
 群れが唱和する。20体のオークが発する響きは、荒事に不慣れな村人の肝を冷やすのに十分なものだった。そのおびえたエルフたちを投げ斧で切り裂き、崩れた体を叩き割る。
「森ヲ取リ戻セ! オレラカラ奪ッタヤツラニ仕返シダ!」
 リーダー格の赤兜の叫びに、群れは同調した。その勢いのまま、エルフの村は皆殺しにされるのだった。
 その赤兜のオークには、マスカレイドの証たる仮面があった。

「諸君、覚悟の決め時だ」
 ハルバードの城塞騎士・ディアンナ(cn0083)が真剣な表情で語りかけてきた。
「バルバどもに滅ぼされる未来が見えた村がある。そこに向かってもらいたい」
 そこは、エルフヘイムの辺境に位置する小村だという。
「弓を背負ったリーダーに率いられたオークの群れが元凶だ。滅びるといっても、村が滅びるというよりエルフが皆殺しにあうという気配のほうが強いな――もちろん、住人たるエルフが滅びれば村も滅びることは一緒なのだが」
 聞き手のよくわからないといった表情に気づき、ディアンナは表情をわずかに緩め、言い直す。苦笑いのようだ。
「オークたちは建物などにほとんど手を出さずに、エルフ殺害に集中するようだ。村を放棄したとしてもエルフを追いかけてくる感じがする。無論、その意図はオークではない私にわかりようもないがな」

 ディアンナは卓に立てかけておいたハルバードをわずかに寄せる。
「リーダーは赤兜をかぶっているから遠目にもわかりやすい。そのうえ、私たちには仮面という目印をみることもできる」
 つまりオーク・リーダーはマスカレイドということだ。
「ほか緑の兜をかぶったオークが2体いるのが見えた。もちろん緑も仮面付きだ。
 赤兜と配下6人の弓隊の射撃の中、村に侵入後、ふつうのオークを7体ずつ率いて2隊に分かれて村を攻め立てるようだ」
 ディアンナは卓上にバームクーヘンを立てる。
「村中央の広場代わりの大木につながる道が二つある。上ルートと下ルートだ。木々の間にかけられた吊り橋などを渡るのが上ルートで地面を進むのが下ルートだ。上ルートは狭くて不安定な橋主体の道のりなのだが住居エリアを通るようで犠牲になるエルフの数は多い。下ルートは中央の早期制圧と上ルートから落ちてくるエルフにとどめを刺すのが仕事らしいな。もっとも、各隊の目的を理解しているのは赤兜だけで、ほかのオークは目の前のエルフを殺すだけで満足のようだが」
 彼女はここまで語ると、焦げ茶の瞳で聞き手を見回す。
「さすがにオークは多く、正面からぶつかるのは愚策だろう。各隊を率いるマスカレイドたる兜どもを倒せれば、所詮オークはオーク。有象の衆と化し、追い払うこともたやすかろう。つまり、鍵は兜オークの狙い方だな」

「諸君はわかっているだろうが、本作戦の成否によっては村人とともに村は消えてなくなってしまう。それは実に理不尽なことだ。そのような理不尽を気に入らぬから、諸君らもエンドブレイカーなのだろう? 期待しているぞ」
 ディアンナはそう言うと力強い笑みを見せた。立ち上がり、ハルバードをつかみあげる。その動きは、赤い三つ編みを激しく揺らすのだった。


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参加者
なんだただのアフロか・キヨカズール(c01091)
モグラ・パトリック(c02456)
迅竜・エキリ(c02680)
道征く者・シッケル(c02932)
月影の預言者・クロノ(c03800)
斧の狩猟者・ブレス(c14711)
癒しの舞姫・ポム(c16009)
運命開きし意思と意志の観覧者・フィズフィルフィア(c16072)
穿光竜豪拳士・ソラス(c16243)

NPC:ハルバードの城塞騎士・ディアンナ(cn0083)

<リプレイ>

●集落
「ここに来る途中、武装したオークの群れを見たぞ。こちらに向かっているようにも見えた」
 開口一番、道征く者・シッケル(c02932)の言葉に村人の表情が硬くなる。
「できれば、村で権威ある方に退避を呼びかけてもらえないか」
 穿光竜豪拳士・ソラス(c16243)の真剣な眼差しに、村人が考え込む。右頬の傷跡が色黒の肌に映え、ソラスの真剣さをより鋭いものにみせる。
 村人は考え続けている。その耳元に何人かが囁きかける様子をみると、この村人が呼びかけを行うだけの力を持っていそうだ。その結論の出ない様子に、シッケルが再び口を開いた。
「身元も判らぬ者の話だ。信じろと言ってもなかなか難しいかもしれない。何れにせよ、やる事はやらせてもらうが構わないな?」
 返事を待たずに小屋から出て行く。緑のコートに身を包んだ、迅竜・エキリ(c02680)がその背を追う。
 と二人と入れ替わりに、エルフが駆け込んできた。
「お、オークが多く……」
 そこまで漏らすと前に倒れ込む。口から吐き出す血と、背中の矢傷がそのエルフの最期を明らかにした。
「すまなかったな、旅人たちよ」
 村人は立ち、背後にいくつか命令を下した。命を受けた者らは直ちに外の木に登ると、板を木槌で威勢よく鳴らし始める。その音を耳にした村人が次々に別の板を叩き、村中に警告の響きを広めていく。
 だが、その響きも徐々に別の響きに侵されていく。その響きは、逃げるエルフとそれを追うオークという形をとって、彼らの瞳に映り込むのはそれからまもなくのことだった。
 その響きに分け入り、エキリ、斧の狩猟者・ブレス(c14711)らは退避を勧め叫び続ける。
 戸惑う村人たちをソラス、ハルバードの城塞騎士・ディアンナ(cn0083)、コレットたちが村の反対側へと誘導していった。

●村道
 農夫が一人転んだ。突然のことに足がもつれてしまったようだ。
「この場は受け持とう。早々に行け」
 シッケルは起こしてやり、バルダスが引き取り、ダガーが避難ルートを案内する。
 この下ルートには、村の外付近で働いていた農夫、狩人らが逃げ込んできていた。その彼らを誘導すると、追っ手であるオークの群れと出会うかたちになる。
 ちょうど待ち伏せに適した物陰に身を潜めていたブレスたちは、思い思いの技でもってオークを歓迎するのだった。
「這いつくばれ!」
 ブレスの片手斧が豪快に投げつけられた。緑兜を守るように先駆ける雑兵の足を細めの刃が切り裂く。その雑兵には続いてハルバードが投げつけられ、胴体に生まれた傷から内蔵を見せながら前に倒れ込む。そのオークは後続に踏まれ絶命する。
「ツラッラ、助力感謝する」
 ハルバードの主ディアンナの言葉に、ツラッラは次のスピリットの標的を見繕うのだった。
「アナタ方のためにぃ終焉の歌を歌ってさしあげますぅ〜」
 癒しの舞姫・ポム(c16009)が歌い出す。エルフたちへの暴挙に怒ったがゆえだろうか、よく響く声が雑兵たちにせつない旋律を聴かせていった。

「さぁ、来いよ、全員微塵切りにしてやるよ!!」
 緑兜の前で立ちふさがる雑兵に、高く飛翔したブレスが斧を叩きつける。
「微塵と消えろ!」
 頭蓋骨を大きく歪め、雑兵は倒れ込む。
 そのブレスに対し、緑の兜――とマスカレイドの証したる仮面をまとったこの襲撃分隊の長らしきオークは、跳躍し錆び付いた斧を叩きつけてくる。ブレス同様の『スカルブレイカー』だ。頭を狙った一撃を食らい、額から漏れた血がサークレットを汚していく。その衝撃に護りの手が弛む。
 その側に新たに飛び出してきた男がいた。
「我は穿光……ゆえに阻むものなし!」
 ソラスは足を払った隙に抱え込むとバックドロップを披露する。
「ソラスの策によれば集中攻撃だったな」
 続いてディアンナのハルバードが投げつけられるが、体勢を回復させたオークは鼻息荒く受け流す。
「脇ががら空きだ」
 太刀が脇腹を切り裂く。シッケルの無銘の太刀だ。そこから流れ込んだ稲妻の闘気が緑兜の動きを鈍くする。
「建物は壊さないようですけどぉ……エルフさん方達には執拗なまでに追いかけてなんてぇ……」
 続くポムの歌が戦意を奪い、さらに緑兜の動きを鈍くする。
 そこに雑兵らの反撃が襲いかかってきた。ポムの脚を、ディアンナの腕を切り裂き、ブレスを袈裟懸けに切り、シッケルを激しく切り払い、ソラスの動脈に切りつけた。
「オ前ラ殺シテ、えるふニ仕返シダッ」
「森ヲ取リ戻セ!」
 投げ斧メインによる傷を、コレットらの技が癒す。
「さて、面白くなってきたじゃねぇか!」
「ヤルナ」
 ブレスと緑兜が斧を叩きつけあい、歪んだ笑みを交わしあう。痺れに刃先を鈍らされたところに、ソラスが投げを放つ。
 その応酬のさなか、デリックに背中を任せたディアンナが光る拳を叩きつけブレスの傷口をふさぎ込む。
「多少のダメージは我慢だ。回復の暇があれば叩け!」
 シッケルは言い放ちつつ、太刀を緑兜に叩きつけた。刃から溢れ出した稲妻が、緑の兜を叩き割り、下ルート分隊長の命を奪うのだった。
「シッケルが見事打ち取った。続いて命奪われたければ、襲いかかってくるがいい!」
 すかさずその首を掲げたソラスの恫喝に、雑兵たちは踵を返し逃げ去っていった。

●樹上
 村の住居エリアを貫く上ルート。
「板の警告がなければ今頃……、ありがとうございました」
 そんな礼の言葉を置いて避難していく親子エルフたちの足音が遠くなるにつれ、濫入者たるオークどもの足音が大きくなってきた。
 曲がり角の先頭に現れたオークに二陣の衝撃波が襲いかかる。
「終焉粉砕バクサイガー! 悲しみのエンディングを打ち崩すためにただいま参上!!」
 紫の衣装に身を包んだバクサイガーこと、なんだただのアフロか・キヨカズール(c01091)の脚からの『ソニックウェーブ』だ。先頭の雑兵オークが力尽き転がり込む。
「これ以上、エルフに近づけさせるわけにはいかない」
 迫るオークを大鎌の衝撃波が切り裂く。月影の預言者・クロノ(c03800)の怒りが複数の雑兵を巻き込んでいく。
「こういう食べられん仕事は請けん主義なんだが」
 ぼやくエキリの『ソニックウェーブ』が傷ついた雑兵を着実に仕留めていた。
 倒れた雑兵の奥に緑の兜のマスカレイドのオークが見えた。エルフ相手には先陣に出るものの曲がり角では部下を一歩先に活かせるくらいの賢しさを持ってはいるように、モグラ・パトリック(c02456)にはみてとれた。異様な鼻息とともに斧が投じられる。軽快な軌跡を描き、紫に吸い込まれる。
「キヨカズール!」
 心配の声にバクサイガーがその痛みにこらえつつ返す。
「き、キヨカズールは調子が悪くて休んでる。俺はバクサイガーだっ」
 その受け答えにかすかに笑い声が漏れた。あざ笑うのではなく、安堵に近い。
「それくらい元気なら大丈夫ね。おまけに、兜を奥から招き出してくれたしね」
 運命開きし意思と意志の観覧者・フィズフィルフィア(c16072)が鍵の群れを作り出し、雑兵を巻き込みながら緑兜に撃ち出した。その痛みにクロノに傷つけられていた雑兵が崩れ落ちる。
 続いて黒い光が走る。パトリックの無表情に開かれた『邪眼』の光だ。歪んだ黒い光が緑兜の全身に絡みついていく。
「オレラカラ奪ッタ森ヲヤツラニ仕返シダ!」
 雑兵たちがフィルズフィルフィアの脚に、パトリックの腕に斧を叩きつけ、クロノを横に切り裂く。

「君には容赦しないよ、私は仮面を討つものだから」
 クロノが丁寧に詠唱し『デモンフレイム』を放った。紫の炎が緑兜を包み込む。炎に驚くところに、エキリの衝撃波が連続で決まる。
「コザカシイワ」
 大振りで放たれた緑兜の投げ斧が、エキリの胴から脚に向かって走った。全身に痛みが走るも、まだまだ動じる様子はない。
「バラバラな攻撃が一番いけませんしね」
 とフィズフィルフィアはさらに鍵を生み出し撃ち出す。緑兜と巻き込んだ雑兵の体に無数の傷跡を作り出していく。
「ふんぬっ」
 鼻息激しくパトリックの視線に耐えた緑兜は嘲笑を浮かべるが、瞳の主はやはりかわらず表情が乏しかった。
 続いて雑兵たちが斧を叩きつけてくる。
「そろそろ後ろに下がりたいところですが、一気に蹴りをつけませんと」
 クロノが再び炎を放つ。先程と違い瞬時に広がる痛みに緑兜は叫び出す。そこに、エキリの脚からの衝撃波が飛びこみ命の残滓を刈り取った。
「住処を奪った生物を殺すか。縄張りを奪うのに殺すんなら分かるが、何かそうじゃないよなー?」
 絶命した仮面オークを睨みながら、エキリはどこか腑に落ちぬ様子だった。

 分隊長オークを殺され、雑兵オークが戸惑いはじめた。
 そんなおり、エンドブレイカーたちに矢の雨が降り注いだ。
 矢のもとを見やれば、そこには赤い兜をかぶった、ひときわ大きなオークと、弓を構えた雑兵の姿があった。
「殺セ! 殺セ!」
 矢をこらえた一行のもとには、下ルートから上ってきた仲間たちが追いついてきた。
「待たせたな」
 シッケル、ブレスらの声に、傷ついた体に覇気が戻ってくるのが感じられた。

●赤兜
「殺戮の親玉は、反抗軍の上か? 政府軍の上か? 俺なら両方に黒幕置くけどな!」
 小気味良く響く声とともに放たれたバクサイガーの『ソニックウェーブ』が赤兜を左から傷つける。その衝撃波を追うようにクロノは前に進み、大鎌を激しく回し斧雑兵の残党を斬り伏せた。
「ン〜? ソノヨウナ気持チ悪イ色合イノエルフハ、イタカ〜」
 赤兜の放った火矢がバクサイガーにぶつかる。
「……? この色をバカにしたうえにわざと急所を外した、だと?」
 嘲笑の匂いを感じ取ったバクサイガーは、我を忘れてしまった。
 その射手のもとに、クロノのこじ開けた守りの穴を抜けたブレスがジャンプし斧を叩き下ろしてきた。赤兜の額に衝撃を走らす。
「どした? この程度か?」
 問うブレスの前で、体勢を崩した大隊長の赤兜はエキリの『ソニックウェーブ』をもろに喰らう。さらにソラスの投げ技まで喰らってしまう。
「私の力は何処まで通じるか」
 続いて、フィズフィルフィアの鍵の嵐の直後に、シッケルが飛び舞うように斬りかかる。
「エルフさんたちのためですぅ〜」
 とポムが歌えば、パトリックの瞳が黒を放つ。
 一方、雑兵たちは雑兵たちでエルフの血を求め、目前の障害たるエンドブレイカーに全力で刃向かう。
「ええいうざったい」
「まだまだっ」
 大鎌が矢を叩き落とし、走りまわり矢を避ける。だが全員が全員避けきれるわけでなく、エンドブレイカーたちも無傷というわけにはいかなかった。

 一行は矢の雨に苦しみながらも、赤兜を傷つけていった。
 一人暴走し、雑兵と対峙するバクサイガーが雨を減らしてくれたおかげか、次第に一行が被る傷は減っていった。
 だが、それでも、確実に赤兜だけでなく、エンドブレイカーたちも満身創痍になっていくのだった。

 そして。
 歌声、視線が赤兜の動きを縛り、太刀が、衝撃波が、投げ技が、赤兜の血を撒き散らす。
 鈍った赤兜の体に、大鎌が襲いかかる。振り下ろされ、斬り上げられ、滅多切りにされた大オークの体からは最期の命が漏れ出していった。大鎌の主たるクロノの体には血飛沫がこびりついた。
「まったく、また汚してしまった。こっちにもいい仕立て屋がいるといいのだが」
 頭を倒した優男のその飄々とした様子に、雑兵たちは恐れをなして逃げ去っていった。

 こうして、とあるエルフの村はオークから救われたのである。



マスター:珠沙命蓮 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:9人
作成日:2010/10/05
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