ステータス画面

『抵抗』は錦の御旗

<オープニング>

 最初は1人。眼鏡を掛けた優男だった。秘密めいてフードを被り、宵の口にこっそり訪れた。
 ソーヤ、と男は名乗った。レジスタンスだと。
 レジスタンスは破戒者だが、生まれただけで罪とされるハーフエルフについては、親父も村の皆も同情的だったから、男が支援を求めて頭を下げた時も吝かではなかった。
 まさか、あんな連中が押し寄せてくるなんて……。
「ロスク、頼んだぞ」
 憔悴しきった面持ちの親父に頷いて、そっと外を窺う。広場には、如何にもならず者な風貌の男共が酒瓶片手に見張りをしている。1つきりの村の入り口にも見張りがいるが……幸い、まだ抜け道には気付かれていない。
「絶対、助けを呼んでくるから」
 床の落とし戸を開けて、身を滑り込ませる。長い長い地下道は、村の外まで続いている。カンテラ1つの灯りを頼りに、もどかしい思いを堪えて必死に歩き続けた。

「フルートおねーさんから、急ぎのお仕事なんだけど……手が空いてる人いるかなぁ?」
 大鎌の群竜士・ルピニ(cn0029)が連れて来たエルフの青年は、深刻な面持ちでエンドブレイカー達を見回すとペコリと頭を下げた。
「ロスク・ラールズっていいます」
「シャンカ村の村長の息子さんだって。村の大事な泉をレジスタンスに奪われちゃったらしいんだよ」
 シャンカ村の特産は酒。近くに森があり、ハーブや木の実など森の恵みを漬け込んだ薬酒を作って生計を立てている。故に、滋味深い清水が湧き出る泉は村にとっての生命線だ。
「最初は、水を分けて欲しいって頼んで来たんだ。それが……親父が頷いた途端、物騒な連中が泉を占領しちまった」
 連中は泉に向かう小路にバリケードを作り、村人達が泉を使おうとすれば『レジスタンスへの寄付金』と称して金品を要求する。
「『協力』しないなら、泉に毒を投げ入れるって……そんな事されたら、村はお終いだ!」
 この頃は村にも居座る者も現れ、『寄贈』された酒を呑みながら村の若い娘に無体を強いる始末。
「多分、通報を警戒しているんだろうけど……あんな連中、レジスタンスなんかじゃない!」
 ロスクにしても、レジスタンスが無法者の集団だなどとは信じたくない様子。だが、もしそうなら決して許す事は出来ないだろう。
「今回のお仕事は、シャンカ村と泉の解放。それから、その悪い人達が本当にレジスタンスか確かめる事、かなぁ……村の1番奥に村長さんの家があって、広場を囲むようにお家が並んでいるの。広場に2人、村の入り口にも2人、いつも見張りがいるらしいけど、秘密の地下道があって村の外から村長さんの家に通じているから、不意討ち出来ると思うよ」
 村にいる連中は棍を持った男が強いようだが、他は大した事はなさそうだ。時々、村の娘が給仕を強いられているので、人質の心配がない頃合いを見計る方が良いだろう。
「問題は、泉の方かな……泉は村長さん家の脇道から行けるんだけど、泉の手前にバリケードがあって、そこに2人。泉に4人。ボス格のソーヤって男も泉の畔にいるよ……毒の扱いが得意みたい」
 これ見よがしに毒の入った瓶を弄んでいて、下手に動けば躊躇い無く泉に毒を投げ込むだろう。バリケードで騒ぎがあっても同様だし、村の制圧が遅れれば勘付かれる危険も高まる。
「お水は生活の必需品だよね。だから、村の人達も仕方なくお金を払って水を汲みに行ってるんだって……その辺りの状況を、上手く使えないかなぁ?」
 泉の周辺は開けているので、戦闘に支障はないだろう。
「ボスのソーヤは……ナイフの狩猟者、かな。狡賢いようだし泉の畔から離れようとしないから、毒を投げ込まれないように何とかしてね? 後、スキンヘッドで頭に刺青してるのが2番手で、こっちは盾の魔獣戦士。ソーヤの用心棒みたいだよ」
 残りは言ってしまえば雑魚だが、荒事に慣れたならず者ばかりだ。戦慣れしたエンドブレイカーでなければ立ち向かえないだろう。
「ボクも、レジスタンスがこんな事するなんて信じたくないかなぁ……わざわざ名乗ってるのも、ねぇ?」
 ハーフエルフの窮状も知るルピニにも、今回の一件は思う所がある様子。
「でも、黒幕探しとかは後回し。まずは目の前のお仕事をお願いね?」
 小首を傾げるお子様に、エンドブレイカー達は力強く頷く。
 マスカレイドとは関係のない事件であっても、困っている人は放っておけないから。
「抜け道までは、俺が案内します。どうか……シャンカ村を助けて下さい」
 頼もしいエンドブレイカー達を前に、ロスクは思わず声を詰まらせる。改めて、深々と頭を下げたのだった。


マスター:柊透胡 紹介ページ
 こんにちは、柊透胡です。
 シャンカ村と泉を、レジスタンスと名乗るならず者から解放して下さい。但し、泉に毒が投げ込まれる事態となれば失敗となりますので、ご注意を。

・自称レジスタンス
 総勢10名のエルフ。全員男です。シャンカ村に4名、泉に6名います。手だれは以下の3名。

 ナイフの狩猟者・ソーヤ:眼鏡を掛けた黒髪の優男。毒の扱いに長けているらしく、これ見よがしに泉の畔で毒の小瓶を弄んでいる。狡猾。
 盾の魔獣戦士・ガルグ:スキンヘッドに刺青したエルフ。ソーヤの用心棒らしく、彼を守るように行動する。寡黙。
 棍のスカイランナー・テッド:村の見張り役。中背の金髪。酒好き女好きだが、棍は決して手放そうとしない。

 手下7名は剣や斧で武装しています。

・シャンカ村
 村の1番奥に村長宅があり、広場を囲むように家が並んでいる。村の入り口は広場を挟んで村長宅と正反対に1ヶ所のみ。
 泉から少し離れているので、余程大きな騒ぎにならなければ勘付かれる事はありませんが、制圧に時間が掛かればその限りではありません。
 村人達は殆ど家に籠っていますが、広場のならず者に給仕を強いられたり、水汲みの為シャンカの泉に行く事もあります。

・シャンカの泉
 シャンカ村の宝。森の中にあり、村長宅の脇道から行けます。途中、バリケードが作られています。バリケードから泉までは距離がそんなにありませんので、騒ぎが起これば筒抜けです。

・ロスク・ラールズ
 シャンカ村の村長の息子。本件の依頼人で、抜け道の案内をしてくれます。
 ハーフエルフに同情しており、心情的にレジスタンスも応援しています。なので、レジスタンスを取り締まる『騎士団』ではなく、『都市警備隊』に依頼を持ち込んだようです。

・NEXT!エンドブレイカー
 黒幕などを推理する行動は、全てNEXTでお願いします。

 それでは、皆さんの熱いプレイングをお待ちしています。
参加者
氷の闘志・エリック(c00544)
夢歌い・ヤクモ(c01272)
巡歴の騎士・リオン(c02638)
蒼流飛槍・ティール(c02667)
蒼東風・ユズ(c03228)
アイスレイピアの星霊術士・ファイナ(c03790)
エアシューズのスカイランナー・アマオカ(c05489)
春の陽だまり・ハルコ(c09254)
護剣の桜火・ナナ(c09456)
扇のデモニスタ・リアナ(c15538)

<リプレイ>

●奇襲
 ドンッ!――村長宅の両開きの扉が音を立てて開いた。
「なっ!?」
 ギョッと振り返った男は咄嗟に棍を握る。酒瓶を落としたもう一方も慌てて剣を構えようとした。
「一気に片付けましょう!」
 先んじて碧の大剣『Ravage Blade』を振り被った巡歴の騎士・リオン(c02638)は、鋼の重量を活かし勢いよく斬り下ろした。
 続いて護剣の桜火・ナナ(c09456)の扇『桜月』が奔流を招き、諸共に押し流す。
(「レジスタンスを名乗るならず者がぞろぞろと。まるで……」)
 無言のままアイスレイピアの星霊術士・ファイナ(c03790)が喚んだ星霊ヒュプノスは、跳ね回って催眠ガスを撒き散らした。
「はじめまして。それから、おやすみなさいませ」
 ミモザの髪が揺れた。慇懃に挨拶する春の陽だまり・ハルコ(c09254)の手には、紺のエプロンドレスに不釣合いのハルバード。渾身の一撃が剣を握る男を突き崩す。
「い、いきなり何なんだ!」
 激流を浴びながらも大剣は辛うじて弾き、エルフの男――テッドは狼狽の叫びを上げる。ほんのさっきまで、盃片手に悦に入っていたのに……あっという間に絶体絶命の危機。
「卑怯? 不意を突かれるなんざ気がブッたるんでる証拠だろ!!」
 エアシューズのスカイランナー・アマオカ(c05489)が勢いよく啖呵を切る。グレーのコートが宙を舞い、金髪目掛けて飛び回し蹴りが叩き付けられた。
「どうした? かかってこいよ! 元レジスタンスか何かは知らないが、遅れはとらないさ!」
「て、てめぇ……」
 挑発に乗ったテッドが、一矢報いんと棍を振り上げようとした時――パキパキと空気が凍りつくような音が響いた。
「……暫く、そん中で頭を冷やすといい」
 凍れる斬撃が刻まれた身体が、見る見る氷壁に覆われていく。凍り付いた驚愕の表情を一瞥し、氷の闘志・エリック(c00544)は冷たく吐き捨てた。

 同刻――シャンカ村の入口にいたエルフの男2人も、広場へ駆け付ける前に回り込まれていた。
「自称レジスタンス、ね……」
(「同じ時期に、同じような事件が複数……偶然にしては出来過ぎてますねぇ」)
 ともあれ、水を盾にした脅迫は許せない。蒼き槍『流蒼槍』を手に、ならず者を睨め付ける蒼流飛槍・ティール(c02667)。
(「一刻も早く、この村に平穏な生活を取り戻す」)
 同じく蒼東風・ユズ(c03228)も決意を込めて槍を握り締め、連中の往く手を阻む。
「ど、どきやがれ!」
 辛うじて虚勢を張った斧使いだが、背後から刃の雨を浴びせられてすぐ沈黙した。
「村に迷惑掛けるなんて、絶対許せない。全力で懲らしめてやるんだから!」
「ひっ!」
 尚も邪剣の群れを召喚するべく扇を振り上げる扇のデモニスタ・リアナ(c15538)。あっという間に相棒を倒され怖気を振るう剣使いに、夢歌い・ヤクモ(c01272)の魔曲が絡み付く。
 誘惑の調べに闘志を奪われて反撃もままならぬまま、最後の1人はティールとユズの槍に相次いで貫かれた。

●囮
 地下道を使った不意討ちが功を奏し、初戦はエンドブレイカー達の圧勝と言えた。
 突然の戦闘にシェンカ村の人々は不安げだったが、ロスクの説明に一転、歓喜の笑みが広がる。
「安心しろ、ロスク。泉も取り返すさ。必ず!」
 アマオカの頼もしい言葉にロスクは丁寧に頭を下げたが、悪戯に騒ぎを起こせば泉に毒を投げ込まれかねない。泉の奪還は一筋縄ではいかないだろう。
 そこで、囮役も2段構え。まずリアナとヤクモが水汲みを装い、リオンとナナ、ティールは食糧の差入れ役に為り替わる。
 後の5人はバリケード近くに隠れて待機。泉で戦闘が始まり次第、バリケードを突破して駆け付ける寸法だ。
「レジスタンスを名乗ってるけど……そんな筈ないよね。自分達の株落とすメリットなんて、ある訳ないし」
 人間とばれぬように耳を帽子で隠すリアナの表情は厳しい。『レジスタンスの真偽』を見極めるのも今回の仕事だが、エンドブレイカーの見解は『偽者』で一致している。
「レジスタンスには正義があります。その名を騙り悪事を働くなんて……許せません!」
 ナナの言葉は『都市警備隊』らしからず、リオンは心配そうに眉を顰める。
(「それにしても、解せない。何故レジスタンスを騙る? ハーフエルフに同情的な風潮が困る者がいるのか……?」)
 尤も、彼にしても『偽者』の真意は掴めない。
「都市の治安が悪くなりゃ、こういう輩はよく出るもんだが……」
(「何にしろ、腹の立つ奴らだ……今に見てろよ。全部吐かせてやる」)
 エリックが剣呑に黒の双眸を細めれば、ハルコは憤慨の表情で得物を握り締めた。
(「レジスタンスを騙るなんてヒドイ。命を救おうとしている人達がこんな事する筈がありません。汚名をしっかり晴らさなくては」)
 ともあれ、村の開放を勘付かれる前に――エンドブレイカー達の泉のある森へ向かう。
 木々の影から様子を窺うユズやファイナ達待機班を残し、まずリアナとヤクモが水桶を手にバリケードの番人へ声を掛ける。
「今日の、お水を……」
 おずおずしたヤクモを一瞥し、やさぐれた雰囲気の男達はニヤニヤと手を差し出す。
(「後で、取り返してやるんだから」)
 内心を押し隠し、リアナが愛想笑いでダルク金貨を渡せば存外簡単に通された。
 果たして、バリケードと泉は目と鼻の先。下手に騒ぎを起こせば筒抜けだっただろう。
 屯していたのは、情報通り数えて4人。目立つのはスキンヘッドに炎の刺青を施したエルフ。足許に棘だらけの盾を立て掛けており、彼が用心棒のガルグだろう。そして、泉の畔には膝を立てて座る優男が、これ見よがしに黒い小瓶を弄んでいる。
(「あいつがソーヤね。泉に毒を入れるなんて、絶対に許さない!」)
 だが、泉に近付こうとしたリアナの前に、手下2人が立ち塞がった。
「何ぐずぐずしてやがる。さっさと水桶を渡さねぇか」
「え……わたし達が、自分で――」
「我々レジスタンスが、水を汲んで差し上げると言っているんです。何か問題でも?」
 ソーヤの口調は丁寧だが、眼鏡越しの眼差しは冷たい。薄ら笑いを浮かべて毒瓶を投げ上げる様子は、明らかな恫喝だ。
 村人を泉に近付けさせず、渡す水の量さえもコントロールする。そうして、徹底的に搾取する気なのだろう。その周到な狡猾さに、2人は思わず唇を噛む。
 このままでは、泉にもソーヤにも近付けない。リアナもヤクモも遠距離攻撃の術はあるが……下手に動けば、次の瞬間に毒が泉に投げ込まれるだろう。そうなれば、取り返しがつかなくなる。
「おや、どうかしましたか?」
 手を出しあぐねて動けずにいる2人の様子に、ソーヤは訝しげに目を細める。疑われたら元も子もない。観念して、水桶を手下に渡そうとした時――下草を踏む足音が聞こえた。

●紙一重の攻防
「あの……今日の差入れに」
 ナナだった。大き目のバスケットを両手で持ち、頭からフードをすっぽり被っている。
「それから、いつも泉を使わせて頂きありがとうございます。こちらは村長さんからです」
 リオンとティールは酒樽を抱えていた。
「ほぉ、良い心掛けですね。では、そちらに」
 ソーヤが指差したのは、毛布やら食器やらが散乱する焚火跡。やはり、泉からもソーヤからも、遠い。
「その……皆さんにお酒をお注ぎするように、と」
 何とかして近付かなければ――必死に口実を探すナナだが、当のソーヤは「勝手にやりますから」と至って素っ気ない。
(「拙いですね……」)
 眉を顰めるティール。バリケードさえ越えれば後は容易いと踏んでいたが……村人の反感を自覚しているのか。反撃を侮らないソーヤの慎重ぶりは予想以上。泉の命運を握られていては、強襲もままならない。
 エンドブレイカー達に焦燥が浮かぶ――だが、事態は思わぬ方向から転がり出した。
「なら、俺達の相手をしてくれよ」
 ナナの品のある美貌にそそられたのか、手下達が下卑た笑みを浮かべたのだ。
「可愛がってやるから、こっち来いよ!」
「キャッ!」
 少女の細い手首を掴み、1人がグイッと引っ張る。荒々しい力に思わず悲鳴が上がった時、リオンの表情が一変した。
「今、ナナに何をしようとしたッ!?」
「ぐあっ!」
 一瞬にして、手下が吹き飛ばされる。少女を庇うように前に出たリオンの手には大剣が握られていた。
「リオンさん!?」
 思わず目を見開くティール。リオンにしても身体が先に動いてしまったようで、刹那、表情に後悔が過る。
「てめぇ……」
 一気に空気が剣呑を帯びた。吹き飛ばされた手下2人は色めきたち、ガルグも無言で盾を構える。
「ハイドウェポン、という事は城塞騎士、ですか……村の連中が助けを呼びましたか」
 ソーヤの口調は変わらない。だが、その面にサディスティックな笑みが浮かぶ。
「まずはきっちり、お仕置きしませんとね!」
 高々と毒瓶が掲げられる。ティールとリオンが駆け寄ろうにも、手下とガルグが行く手を阻む。黒鉄兵団の紋章を描こうとしたナナだが、泉を背にしたソーヤを吹き飛ばしては藪蛇だ。
「やらせない!」
 リアナのレギオスブレイドがソーヤを襲うも、邪剣にディザームの効果はない。一撃で倒せねば――。
「っ!」
 無我夢中、だった。毬のように飛び込んだ影がソーヤの腕にしがみつく。
「くっ、この……!」
 いざという時の心構えが、咄嗟の行動を助けた。小柄だからこそ、大人の脇をすり抜けられた。
 振り払われ、地面に叩き付けられたヤクモの掌中には――毒の小瓶。
「ハーフエルフを助けるのが、レジスタンス、だよね?」
 勢い良く地面に投げ捨てられた小瓶は、毒の飛沫を散らして四散する。
「だから、おじさん達は違う」
「この……ガキがぁっ!」
 初めてソーヤの顔が怒りに歪む。抜き身のナイフが、立ち上がる前の少女の背に突き立てられる。
「スピカ、回復は頼んだわよ!」
「スピッ!」
 幾重にも足音が響く。毒の刃に冒されたヤクモに、星霊スピカが抱き付いた。額の星が輝き、毒が中和される。続いて、ソーヤへ弧を描いた衝撃波が叩き付けられる。
「落とし前、きっちりつけてって貰うよ。覚悟はいいかい?」
 早速、星霊を喚んだファイナの隣で、ユズは不敵な笑みを浮かべて言い放った。

●不明瞭なる決着
 ――時間はやや巻き戻る。
「……おい」
「あ、ああ……」
 泉から聞こえた男の悲鳴に、バリケードの番人2人は顔を見合せた。揃って泉の方に向いた好機を逃さず、待機班が一斉に強襲する。
 エリックのアイスレイピア『Blizzard Wing』が鋭い氷撃を刻み、手足が凍結した一方をハルコのハルバードが捻り込むように串刺しにする。
 やはりファイナの氷結剣が閃けば、利き腕が凍った隙を見逃さずユズの槍が連続してもう一方の急所を突いた。
「泉は大丈夫か!」
 反撃も許さず押し切る。呻き声を上げて、地に伏すならず者を尻目に、泉へ駆け付けたアマオカの眼に映ったのは、正に一瞬即発の状況。
「水を人質にするなんて、腐った根性してますね」
「ああ、手口が気に入らない。人の親切に突け入るとはな!」
 早速ティールに加勢して、グレーのコートが翻る。
「……ちぃっ!」
 一気に倍増した敵の援軍に舌打ちして身を翻すソーヤに、氷柱が襲い掛かった。
「黒鉄の騎士達よ! 人々を護る剣となり、悪を打ち砕け……っ!」
 エリックのアイスブラストに続き、ナナの描いた紋章が幻の騎士となってその逃亡を阻む。ならず者達の意気を挫かんと、立ち上がったヤクモの歌声が響き渡った。
「お前の相手は、俺だ!」
 ソーヤを守らんと動くガルグに、リオンのワイルドスイングがクリーンヒット。堪え切れず吹き飛ばされた所に、リアナのレギオスブレイドが荒れ狂うように乱舞する。
「誰がこんな事をしろと言ったのですか!?」
 邪剣の巻き添えを食った手下に、ハルコはディフェンスブレイドと共に言葉を投げるが……その返答は憎悪と殺気の籠った眼差しのみ。
 10対4――倍以上の戦力を以て、エンドブレイカー達は瞬く間に泉を制圧しようとしていた。
 手下2人は早々に倒されて孤軍奮闘のガルグは、それでも、盾を構えて身をたわめる。
 ガツゥッ!
「おっと。いけねぇ、いけねぇ……」
 激しい突進に吹き飛ばされたアマオカは軽口を叩くが、その衝撃は少なからず。
「っ! 待ちなさい!」
 思わず癒しの拳を放ったティールの脇を駆け抜けるソーヤだが……そうは問屋が卸さない。
「1人として逃がしはしない!」
 ユズの右脚が振り抜かれ、巻き起こった衝撃波が細身を叩く。間髪いれず、無理矢理に身体を捻って投げたハルコのハルバードが、弧を描いてソーヤの胴を薙いだ。
「ぐっ!」
 痛みに身を捩った男の前に、ファイナが立ち塞がる。
「そこでおとなしく寝てろ」
 背後からエリックの声が響き――前後から交錯したアイスレイピアの凍気が、悔しげなソーヤを氷壁の中に封じ込める。
 ガアァッ――!
 同時に、ナナの描いた攻撃陣形の紋章に後押しされたリオンの大地斬が、最後の雄叫びを上げるまで寡黙だった盾の魔獣戦士を両断した。

 KOしたらすぐ命が尽きる訳ではない。ならず者達は地に伏して呻き声を上げている。
 唯一、氷壁に封じられたソーヤは、今は厳重に縛されてエンドブレイカー達に囲まれている。
「楽しようって考えるから、他の強い人にやられちゃうんだよ? 賢いつもりで馬鹿な事してる、おじさん達て格好悪いよね」
「……私の唯一の誤算は、君のような子供にしてやられた事ですよ」
 ヤクモの呟きに、ソーヤは苦笑を浮かべる。確かに毒さえ奪われなければ、連中の優位は揺らがなかっただろうから。
「キミ達は何者?」
「既に結論は出ているのでは?」
 何処か余裕綽々に見える男を前に、リアナは考え込む。
(「レジスタンスの株が落ちて、得をするのは……?」)
「誰かに唆されたのかしらね」
「何故、こんな事を? 誰かに雇われての事ですか?」
 ファイナの揶揄にも平静だったソーヤだが、ティールの尋問には小さく肩を竦めた。
「……別に、金で雇われた訳でもありませんがね」
「どういう事ですか?」
 引っ掛かる呟きに、コートの裾がはためく音を聴いていたアマオカも首を傾げる。意気込んだハルコが追求するが、ソーヤはそれ以上語らない。
「手掛かりになれば良いけど」
 だんまりを決め込む男を横目に、ユズは泉に散乱する偽レジスタンスの所持品を集め始める。
「随分と好き放題やってくれたな……」
 散乱する酒瓶を見回し、エリックは溜息を吐いた。

 ――こうして、1つの事件は謎を孕んだまま終わりを告げる。

「その……段取りを無視して、申し訳ない」
 尋問の円陣から少し離れ、リオンは謝罪を口にした。あの時――思わず動いてしまった自分が情けなくて。
「いいえ……助けてくれてありがとうございます」
 だが、ナナは頭を振る。彼にはまだ反発したい気持ちもあるけれど……ならず者から庇われた事が少し嬉しくて。少年の服の袖をきゅ、と握った。



マスター:柊透胡 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2010/10/11
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