ステータス画面

奪い尽くすは金と命

<オープニング>

「へへっ……こいつはいいや」
 寂れた裏通り。そこには一人の青年以外に動くものの姿は無い。
 青年は鬼気迫る表情で、大地に落ちている何かを袋に詰め込んでいた。
 ずたぼろの袋の中に覗くのは、明らかに不似合いな輝き。
 きらびやかな宝石を散りばめたアクセサリの数々、ジャラジャラと音を立てる無数の金貨。
 奪い取った、彼の戦利品。
「これでよし。帰るとすっか」
 最後に紅く染まった銀細工のイヤリングを袋に詰め込むと、青年は左右を見回す。人影は無い。
 青年がそこを立ち去ろうとしたまさにその時、青年の足に違和感が走る。何者かがその足を掴んだのだ。
「う……うぅ……」
 呻き声をあげながら青年の足を掴んだのは、きらびやかな衣装に身を包んだ一人の男。
 地に伏せる彼の背には幾本もの剣が突き立っており、そこからはおびただしい量の血が流れている。おそらく命は助かるまい。
「お、こいつももらっていくか」
 青年は自分の足を掴む男の手首にはめられたブレスレッドに目を止め、腕を振るう。生まれた衝撃波がその肘から先をあっさりと切り飛ばす。
 ショックで完全に動かなくなる男を気にも留めずに、青年はその腕を拾い上げ、袋へと詰め込む。
「さあ、帰るか。一仕事したら酒が美味いんだよな、これが」
 足早にそこを立ち去る青年。返り血にぬれたその横顔には、白い仮面が張り付いていた。

「最近、金持ちを狙った強盗殺人が起こってるのを皆は知ってるか?」
 トンファーの群竜士・リー(cn0006)の言葉に、何人かのエンドブレイカー達が反応する。
「実はこの事件がマスカレイドの仕業であることがわかったんだ。おまけに、次に誰が殺されるかもな。起こることがわかってる事件を止めないわけにはいかないだろう?
 ちょっと協力してくれないか」
 そう言うと、リーは爽やかな笑みを浮かべて、言葉を続ける。
「一応、おさらいしておくか。今までに起きた強盗殺人は全四件。殺害方法から、犯人は同一とわかってる。事件となる現場は決まって人気の無いところ。被害者はどれもこれも宝石のはまった指輪だのアクセサリをじゃらじゃらつけてた一見してわかる金持ちの連中だ。
 犯人のマスカレイドはバーザックという男だ。元々スリで生計を立てていたらしいんだが、マスカレイドの仮面に囚われ、金銭が欲しいという自分の欲望を止められなくなってるようだ」
 リーは続けて、未来におきる事件についても述べていく。
「次の事件の被害者はルーヒットという豪商だ。
 夕刻に繁華街から少し離れた裏通りにある宝石店を訪ねようとして、金と一緒に命を奪われちまうようなんだ」
 この現場を押さえてバーザックを倒してほしい。と、リーは告げる。
 バーザックはターゲットを見つけて初めてその裏通りに姿を現すらしく、なんらかの囮が必要となる。
 ルーヒットを何らかの方法で引きとめている間に、着飾った誰かが囮となってバーザックを誘い出すのが最良の方法だとリーは述べる。
「マスカレイドとしてのバーザックの力はそれなりだ。無数の剣を呼び出して放ったり、爪による衝撃波で攻撃してくるようだな」
 特に彼の力の中で飛びぬけているのは相手の力を奪い取り、自分を癒す能力。一気に畳み掛けなければ、長期戦は避けられない。
「おまけに、バーザックは配下マスカレイドとした野良犬を2匹けしかけてくるようだ。能力はさほどじゃないが、バーザックの壁となるように動くからかなり厄介だと思うぜ」
 裏通りとはいえ、常に誰もいないわけではない。
 騒ぎすぎたり、戦いが長引けば、誰かに見つかってしまう可能性は格段に高まるだろう。
「バーザックを倒せば、死体が残る。誰かに見つかったら俺達が殺人犯扱いされてしまうからな。できる限り見つからないよう、手早く片付けるよう心がけてくれ」
 もしも誰かに見つかれば、今後は都市警備隊の活動を行う事ができなくなってしまうだろう。細心の注意が必要だ。
「俺から言える事は以上だな」
 最後にリーはサムズアップしてエンドブレイカーに微笑みかける。
「欲望のために人を殺すような奴を野放しなんて出来やしない。
 改めて頼むぜ。バーザックを止めて、エルフヘイムに平穏を戻してやってくれ!」


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参加者
蒼氷の死神・カナメ(c00351)
寵蜜妓・テオバルト(c00913)
途切れぬ路の先へ・リーフィルーナ(c04055)
雰囲気きこり・カヤツヒメ(c05588)
黒の司祭・カクテュス(c05972)
かたはらの夢・アズハル(c06150)
光刻宮の月琴・ユエリティア(c14909)
王の宿命を背負いし騎士・カイザーシオン(c15201)

<リプレイ>

●金持ちと偽金持ち
「そこの殿方、どこへいかれるの? 私達、店を探しているのだけれど……」
 銀細工のイヤリング、宝石をちりばめたブレスレット。成金趣味な衣装の男、ルーヒットの姿は夕刻の人通りの多い往来の中でも十分に目立つ。見つけるのは難しい事ではなかった。
 声をかけた光刻宮の月琴・ユエリティア(c14909)の方を向き、ルーヒットは笑みを浮かべる。食材を扱ってる商会の主らしい恰幅のいい体躯を揺らしながら彼は言葉を返す。
「どうなされたのかなお嬢さん。この私に何か御用ですかな」
「実は、ルーヒット様の噂を耳にした事があるのですわ。よければ素敵なお店にご一緒しませんか?」
 横合いから微笑みかける途切れぬ路の先へ・リーフィルーナ(c04055)の言葉に、ルーヒットは嬉しそうな笑みを浮かべる。
「おや、私の名前をこのような美しいお嬢さんがたに知っていただけているとは光栄ですな。お誘いを断れるはずもないでしょう。もちろんご一緒させていただきますよ。ちょうど宝石店へ向かおうとしていたところですのでそこを紹介しましょう。裏通りにある穴場でして……」
 ルーヒットのその言葉を聞いて、二人は互いに視線を合わせ、頷き合う。間違いない。彼はその宝石店へ行こうとして強盗に殺害されるのだ。
 二人の目的は彼を路地裏に寄せ付けずに帰らせること。終焉を破壊するために二人は彼の注意をそらしにかかる。
「実は表通りにもっと素敵な店があるの。面白い食材を扱っているのですけれど、そちらへ行きませんか?」
「ふむ? 先ほど店を探してるとおっしゃっていませんでしたか、お嬢さん」
 ユエリティアの言葉に違和感を覚えて聞き返すルーヒット。彼女は誘うような仕草でその手を取りながら、咄嗟に嘘を紡ぐ。
「あれは……素敵な殿方の目を引くための方便ですから」
 三十路を越えてなお美しいユエリティアの笑みに、彼は警戒心を無くして手を握り返す。
「なるほど。それは嬉しい言葉ですな」
「それに、最近は人気の無い所で富豪の方を襲う強盗事件も起きているらしいですわ。ルーヒット様もお気を付けくださいませ」
 裏通りへいかせないように、とリーフィルーナが釘をさす。それを聞いてルーヒットは大仰に驚いた仕草を返す。
「おお、それは怖いですな。お二人のように美しい方を連れ歩いていては、強盗になってでも盗もうとする人が出るのも当然の事。確かに人気のない所は避けた方がよさそうですな」
 くすぐったい言葉にユエリティアは思わず微笑む……が、ルーヒットの続ける言葉に凍りつく。
「間もなく日も暮れてしまいますし、危険な強盗がいる町でお嬢さんがたをこのまま一人で帰らせてしまうのは私の流儀に反しますな。家へ帰る時は近くのうちの店によって店員をつけさせましょう。もちろん、それまでは私がエスコートさせていただきますよ」
「あ、一人でも帰れます。私達は冒険者で腕はそれなりに……」
 そう言って、手を振りほどこうとするが、男の手はがっしりとユエリティアの手をつかんで離さない。
「いやいや、美しいお嬢さんを危険な目に合わせるわけにはいきませんからな」
 いざという時は『富豪を狙う強盗』という言葉を使えば抜け出せると踏んでいた二人は思わず顔を見合わせる。冒険者だから任せろ、と言ったところで相手は裕福な富豪。大好きな女性を危険な目に合わせるくらいなら騎士に通報したり部下に見てこさせるといった手段を取るに違いない。
(「なんとかしないと……ね」)
 なんとしてもルーヒットの隙を探し、抜け出さなければ、と。二人は目を細めるのであった。

「こういうのを、馬子にも衣装っていうのかね。悪い意味で」
 裏通りに面した、狭い路地裏。寵蜜妓・テオバルト(c00913)は、思わずそうこぼす。
 強盗のマスカレイドをおびき出すためにこの路地裏で着飾った蒼氷の死神・カナメ(c00351)の姿は、悪趣味な金持ちそのものであった。カナメの事を見慣れている彼女からすれば、今の衣装はあまりにも下品過ぎる。
 指輪や宝石をちりばめたベルトにコート。借り物で構成された衣装に身を包む即席金持ちは、それぞれの部品がちぐはぐで統一感皆無。
 とどめのようにつけられたつけばねがセンスのなさに拍車をかける。
「ふむ、中々に似合っておるのぅ」
「え? オレ……へこんでいい?」
 つけばねを渡した張本人、雰囲気きこり・カヤツヒメ(c05588)の笑顔にカナメはげっそりとした表情を浮かべる。
「何、いかにも悪趣味な金持ちらしさがでておるというとるだけじゃ。これならあの下衆もほいほい現れるじゃろうて……さっさと終わらせようかの」
 カヤツヒメの言葉にかたはらの夢・アズハル(c06150)も頷く。
「うむ。人を傷つけて金を得る人に猶予を与えようとも思わないな」
「ユエリティア嬢にリーフ嬢はまだのようだが……日も暮れそうだ。ホラ、行けよ囮。後で貸した宝石は必ず返せよ?」
 王の宿命を背負いし騎士・カイザーシオン(c15201)が口悪くカナメを促す。女性と男性に対して明らかに違う口調に思わず苦笑しながらも頷き、カナメは裏通りへ踏み出そうとする。
「ん、ちょっと待った」
 そう言って引きとめたのはテオバルト。
 コートの下に隠していたとはいえ、飾り気が少ないカナメのアイスレイピアがどうにも気になったのだ。彼女はそれに手を伸ばし、宝珠と蝶を連ねた美しい武器飾りをとりつける。
「よし、これで装飾っぽくなった」
 満足げに頷くテオバルトに、カナメは驚いた声をあげる。何故なら、その武器飾りは彼女の守る旅団の証だったのだから。
「ありがとう……って、テオ。これ……大事な物じゃないのか」
「あぁ。俺にとって命と同じくらい大事さ。でもお前なら大丈夫だろ。必ず返せよ?」
 カイザーシオンの口真似をしながら信頼の笑みを浮かべるテオバルト。
 カナメはそれを受け止め、応えるように微笑み返すと、裏通りへと歩みだすのであった。

●強盗と襲撃者
(「なんというか、アレだね。いかにも襲われそうなシチュエーションだ」)
 裏通り、店の傍らに積まれた箱の影に身を隠していた黒の司祭・カクテュス(c05972)は、カナメの姿を見て思わずそんな事を考えた。
 のんびりとした緩慢な歩き方、調子っぱずれな鼻歌。おまけにあの衣装。
 誰も連れずに人気ないところを無警戒にうろつく姿はどこからどう見ても絶好の『カモ』である。
「っと、兄ちゃん。いいもの持ってるじゃねぇか」
 カクテュスが隠れていたのとは別の物陰から、スルリと仮面をつけた男が姿を現したのは、彼がそう考えた次の瞬間であった。
 カナメの姿を舐めまわすように見つめた後、その男はその手を振り上げる。
「それ、もらうぜ」
 そして振り下ろす。生まれる黒の衝撃波。
 獲物を仕留めたと思い、その男、バーザックの口元が狂喜と狂気に歪む。
「まんまとかかったな……今だ!」
 だが、その余裕は一瞬で崩れる。
 攻撃を受け止めながら放たれたカナメの雷光がバーザックの体を次々に貫く。さらに彼の声に合わせ、裏通りに5人のエンドブレイカーが次々に姿を現す。
「なっ、何もんだおめぇら!」
 うろたえた声を発するバーザックに、テオバルトは冷酷な声で目的を告げる。
「過ぎたる欲は身を滅ぼす……欲に食われた奴を倒しに来ただけさ」
「奪うだけが取り柄の貧乏雑魚のバーザック君。俺はお前みたいなカスが……一番気に食わねぇんだよ!」
「おぬしが痺れるまで、ワシは睨むのをやめんのじゃーっ!」
 バーザックの声に応じ、その傍らに現れる二匹の犬。
 だが、啖呵を切ったカイザーシオンとカヤツヒメはその犬を無視して攻撃を放つ。邪眼の力と雷がマスカレイドの体を射抜く。
「おめぇら、ハメやがったな! ぐぅっ」
 思わず悪態をつくバーザック、その体は大きく震えている。カヤツヒメの邪眼が彼の腕を射抜きマヒさせたのだ。
 アズハルとテオバルトも一気に前に躍り出て、犬に向かってうちかかる。残像を伴う一撃と棍の一閃が犬を二匹同時に傷つける。
 思いもかけない獲物の抵抗に驚くバーザックだが、怯むことなくその手を振り上げる。金銀宝石を散りばめた邪剣が周囲に次々に浮かび上がる。
「人数が増えようと同じだ。全部奪い尽くしてやろうじゃねぇか!」
「面白い。思う存分奪い合うとしようか」
 それに合わせて同じように剣を呼び出すのはカクテュス。まるで影のような漆黒の剣を周囲に生み出す。
 吸いこまれるような闇色の剣と煌びやかな宝石の剣。真逆の色彩の邪剣を生み出した二人は、互いに狙いを定めてその剣を放つ。
 一瞬の交錯。輝く剣と漆黒の剣は空中ですれ違い、互いの術者の体に突き刺さる。
 だが、カクテュスは目の当たりにする。自分の与えたバーザックの傷が即座にいえていくのを、自分の体に突き立つ血を吸う剣を。
 完全にマヒさせきれていない事に気付き、カクテュスは仲間へと指示を飛ばす。
「封じ切れていないようだな。カイザーシオン、もう一度サンダーボルトを頼む」
「ハン、何が悲しくて野郎の指示を……」
「頼むのじゃ、カイザー!」
「わかりました、姫。俺にお任せを!」
 カヤツヒメはカイザーシオンへの指示は任せておれとばかりに、呆れた表情のカクテュスに軽くウインクを飛ばす。そして、彼と同じように邪剣を次々に生み出し、今度は目の前の犬へ向けて一気に打ち放つ。
「どけぃ! 邪魔なのじゃ!」
 被害者の足止め役の二人が遅れているため、形勢は完全に有利とは言い難い。
 だが最初の一手に確実な手ごたえを感じ、エンドブレイカー達は一気に攻勢に打って出るのであった。

●奪う者と奪われる者
「これで、もう逃げ場はないね。うむ」
 愛情の名を冠する棍が犬を薙ぎ払う。二匹目の犬が完全に息の根を止めるのを確認したアズハルは、前衛を失ったバーザックを睨みつける。
「ハン、逃げる必要なんざねぇな。お前らの全部奪ってやるよ」
 戦局は決して悪くはない。バーザックは体の自由を奪われ、ドレインを完全に封じられている。
 だが、ドレインを封じてもその攻撃の『威力』はさほど変わらない。
 バーザックはいやらしい笑みを浮かべながら腕を振り上げ、衝撃波を生み出す。それはカナメの体を大きく切り裂く。犬達の後ろから放たれた衝撃波と剣はエンドブレイカー達の体力を確実に削っていた。
「奪えるもんなら、早く奪ってみな、マヒだらけでまともに奪えねぇ強盗崩れ野郎! ……おい、野郎共。死ぬんじゃねぇぞ」
 カイザーシオンは挑発的な笑みを浮かべながら、癒しの魔法陣を複数生み出し仲間の体を癒していく。だが、彼とアズハルの回復だけでは手が足りない。
 犬への攻撃をわざと二班にわけて撃破が遅れてしまったのも災いし、バーザックの抑えを担当するカクテュスとカナメの限界は近付きつつあった。
「これで終わりなのじゃ!」
 カヤツヒメの放った邪剣が5本もバーザックに突き刺さる。6人の中でも最も攻撃力に優れる彼女のレギオスブレイド。その渾身の一撃を受けてもなお、彼はまだ余裕を保っている。
「その程度で終わるわけねぇだろうが!」
 このまま押し切られるのではないか、という考えが一瞬カクテュスの脳裏をよぎる。
「だが、変化しないものはない……キミのその余裕も消し去ってみせよう」
 その考えを即座に否定し、カクテュスは鎌を構えて一気にバーザックに接近、振り下ろす。
「はっ、消せるものなら……」
 バーザックの顔がそこで引き攣った。路地裏に突如として流れるのは勇猛果敢な応援の歌。それはカナメの気力を奮い立たせる。
 さらに、呼び出された星霊がカクテュスを抱きしめその傷を癒す。
「遅くなったわ。その分張り切っちゃうわよ」
「ごめんなさい、撒くのに手間取りましたの……まさか、支払いの時まで私達から手を離さないとは思いませんでしたわ」
 路地裏に現れた二人、リーフィルーナとユエリティアはなんとか間に合った事に安堵の息を漏らし、そして武器を構える。
「状況も不変ではない。……形勢逆転だな」
「……クッ」
 思わず呻くバーザック。そこへアズハルが追い打ちをかけるように棍を一閃する。
「殺された人の痛み……思い知るんだな」
 その一撃が引き金となり、エンドブレイカー達は一斉に攻撃を加えていく。騒音が、雷が、邪剣が、次々にその体を打ちすえる。
 8人全員での猛攻は、まだ余裕のあったバーザックの体力を30秒もかからずに一気に削りきる。
「こ……のぉっ!」
 苦し紛れにバーザックがその腕から衝撃波を生み出す。咄嗟にアイスレイピアを構えて受け流すカナメ。
「っ!?」
 その衝撃波は、偶然武器飾りの紐を切り裂いた。宙を舞う蝶と宝玉。
 バーザックは今までそうしてきたように、反射的にその富に向けて手を伸ばしていた。
「金っ……金も命も、俺が全部奪い尽くしてやるんだっ! 俺のもんだ!」
 仮面により増幅された妄執、妄念。それが満ちた言葉を叫びながら伸ばされた手は、届くよりも先に氷に包まれる。
「悪いな。金ならいくらでもくれてやってもいいが、それは『絆』とか『思い出』の類でね。渡すわけにはいかないのさ」
 攻撃を受け流すのに用いたアイスレイピアをそのまま相手の体に捩じりこみ、カナメは微笑む。
「奪いすぎたお前は……今度は奪われる側になるんだ」
 カナメと全くの同タイミングでバーザックを貫くのはテオバルトのハルバード。彼女は左手でその蝶をパシリと掴み、微笑む。
「少し早いが、返したぜテオ」
「あぁ、受け取った」
 同時に武器を引き抜く二人。穿たれた穴からバーザックの鮮血が周囲に散る。
「俺は……金をっ」
 掠れる息、揺らぐ視界。地面に倒れ込みながらも、バーザックはまだ懸命にカナメの纏う装飾品へ腕を伸ばす。
「見苦しいんだよ。死んでろ、カスが」
 カイザーシオンの仕込み杖による一閃と共に、マスカレイドはついにその動きを止めるのであった。

●裏通りと花束
「不相応の力は身を滅ぼす……金もまた然り、と言ったところかねぇ」
 カクテュスはそう言いながら手を払う。
 人目に付かない場所へバーザックの死体を置いてきた彼が戻ってくるのと、エンドブレイカー達が裏通りの痕跡を片付け終わるのはほぼ同時の事であった。
「帰り道はルーヒット様に会わないよう気をつけないといけませんわねぇ……結局、何も言わずに離れちゃいましたものぉ」
 のんびりとした口調で呟きながら、リーフィルーナはそっと裏通りに花束を置く。
 マスカレイドに命を奪われる苦しみを、彼女はよく知っている。だからこそ、あの欲深くとも善良そうな商人の命を守れてよかった、と心の底から思う。
 それはエンドブレイカー全員の思いでもあった。
「さ、誰かが来る前に撤退するぞ」
 カナメの言葉にエンドブレイカー達は頷き、足早にそこを立ち去って行く。
 悪しきマスカレイドを倒し、人の命を救えた喜びを胸に刻みながら。



マスター:商館獣 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2010/10/22
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