ステータス画面

【偽レジスタンス潜入】そそのかすもの

これまでの話

<オープニング>

 赤壁の城塞騎士・ジュン(c05187)は酒場に集まるエンドブレイカーたちへと歩みより、皆へ語りかけた。
「偽レジスタンスについて、新しい情報が分かった」
 ジュンたち偽レジスタンス討伐に向かったエンドブレイカーたちが集めた情報によれば、事件の背後にはならず者たちをそそのかす紹介屋の存在があるのだという。
「多くの偽レジスタンスが口にしている話では、手口はこうだ。紹介屋で仕事を断られたならず者たちが酒場で飲んでいると怪しい男が現れ、レジスタンスだと名乗れば信用して入り込める村を荒稼ぎできる場所だと教唆していく……」
 ならず者は、しょせんならず者。それが仕事を断られた後で儲け話と聞けば飛びつかないわけがない。それを見越しての犯行とすれば、黒幕はかなりの知恵者なのだろう。

「ここからは私が。ジュンの話以外にも捕えた偽レジスタンスからは他にも興味深い話が集まっているわ。それらを踏まえた、今回の調査作戦について説明するわ」
 後をついだソードハープの魔曲使い・ヴィーナ(cn0017)が話すところでは、くだんの紹介屋では特に腕っ節が強く弁の立つ者にのみ、重要で割の良い『特別な仕事』を紹介しているのだという。そして、この仕事を紹介されなかったものには偽レジスタンスの話が持ち込まれる……。
「偽レジスタンスと『特別な仕事』に関係がある事は間違いないわ。そこで、まず徒党を組んだならず者達として紹介屋を訪れ、この『特別な仕事』を紹介してもらう。これが作戦の第一段階よ」
 エルフヘイムに住んでいるのはエルフだけではない。人間のならず者グループがいても、少し変わっているくらいで受け入れてもらえるだろうとジュンは付け加えた。
「うまく『特別な仕事』を紹介してもらえれば、そこから黒幕に近付くために行動していくこともできる、って寸法ねぇ」
 しかし、現時点では重要な『特別な仕事』がどのようなものかは全く分からないため、仕事を受けた後は現場の判断で行動していかなければならないだろう。
「まぁ先の事はともかく、まずは紹介屋の話ね。仕事を受けるためには、ならず者としての実力をアピールしなきゃいけないらしいの。その紹介屋では『仁義を切る』と言っているそうだけど」
 自分たちがどんなグループか、何かできるのか。得意技など具体的なアピールができれば評価は自然と高くなる。ならず者の世界も第一印象が大切なのは同じらしい。
「で、その次。紹介屋は初めてきた相手に『地下の檻で飼っているバルバと戦わないか』と誘いをかけてくるそうよ。もちろん命の保障はなしという断りつき」
 多くのならず者が尻込みするというこの話は、自分たちの実力をアピールする格好の場だ。しかし評価されるのは腕っ節だけではないらしいとヴィーナは続ける。
「ここからはちょっと推測混じりだけど。偽レジスタンスたちの話を聞くと、ならず者たちが仕事を待つ間に待機させられる休憩室で必ずといっていいほどトラブルや諍いが起きるみたいなの」
 血の気の多いならず者たちとはいえ『必ず』というのは、いささか異常である。
「たぶん、これは故意にトラブルを起して対処の手際を観察するという裏テスト。この諍いを上手く収められれば、弁が立つ人物として評価はぐんとよくなるはずよ」

 概要を話し終えたヴィーナはジュンと共に再度エンドブレイカーたちを見回す。
「まず重要なのは黒幕に評価されて仕事を任される立場を得ること。今回の作戦はその第一歩ね」
 慎重かつ臨機応変に。行動すれば結果は必ずついてくる。ヴィーナはそう言って皆に微笑んだ。


マスターからのコメントを見る
参加者
凍月の旋律士・リコリス(c01337)
ただ彼のための銀の剣・ヴァルイドゥヴァ(c01891)
蒼流飛槍・ティール(c02667)
フェイバーフッド・クリスティーナ(c03482)
流浪の傭兵魔法剣士・ユーリズ(c03493)
超獣武神バルカイザー・バルドゥイン(c04209)
面白求道者・サンタナ(c04809)
赤壁の城塞騎士・ジュン(c05187)
暗殺シューズのスカイランナー・アリツィア(c11635)
白き悪魔使い・アレッタ(c13461)

<リプレイ>

●仁義を切るもの
 紹介屋の窓口役は横柄で定型的な文句に切り返す超獣武神バルカイザー・バルドゥイン(c04209)の名乗りに息を呑んだ。
「姓はレーヴェングート、名はバルドゥイン。人呼んで『デス・クロスのバルドゥイン』……」
 見事な仁義の切りっぷりだ、と窓口役は心で呟く。数を増やすエルフヘイムのならず者の中でも、これだけ堂々とした名乗りを上げられる者は少ないだろう。
「御言葉、いたみいります。なかなか個性的なお集まりのようですが」
 窓口役は背筋をただし、一言一句に力を込めてバルドゥインたちへと睨みを利かせた。まだ決め付けるには早い、そして弱みを見せるのも。
「そう大した者じゃない、ただの実利主義者の集まり」
 ただ彼のための銀の剣・ヴァルイドゥヴァ(c01891)がぽそりと呟く。それに面白求道者・サンタナ(c04809)と暗殺シューズのスカイランナー・アリツィア(c11635)が付け加えるように言葉を続けた。
「みんな、バルドゥインの親分にひっぱられてね」
「金さえあればもらえりゃ何でもござれ。荒事、諜報、詐欺、盗みってね」
 三人の言葉に納得したように窓口役は頷いた。
「……なるほど。旦那はたしかに大したお方のようだ」
 バルドゥインをリーダーとした一行の多様性には説得力があった。戦士、術士、そしてその枠に留まらないフェイバーフッド・クリスティーナ(c03482)たちの姿は『バルドゥイン一家』と言う言葉がよく似合ってみえる。
「所詮わしらはしがない旅人、気遣い無用だ」
 硬くなる窓口役の姿にバルドゥインは面倒そうに声をかけた。普段の事を考えると、なんとも複雑な気分である。貫禄というやつはどこにあっても通用するものということか。
 バルドゥインの心中を察したのか、蒼流飛槍・ティール(c02667)が彼に代わって前に出る。
「まぁ挨拶も済みましたところで商談の方に移りましょう。こちら、エルフヘイムにきまして割りの良い仕事にありつけると聞きましてね。どうでしょう、私達ではお役に立てないでしょうか?」
「ほぅ。耳の早さもさすがといったところですな。これには込み入った話もありまして……ま、バルドゥイン殿も皆様も奥の方へ一つ」
 慇懃な口調で窓口役は部屋の奥への扉を示す。どうやら、第一の関門は突破できたようだ。
「レジスタンスを陥れようとした者か、この件でこの都市の謎が少しでも解れば良いが」
 扉を潜りながら流浪の傭兵魔法剣士・ユーリズ(c03493)は小さく呟く。本当の仕事はここからだ。偽レジスタンス事件のの黒幕に近付くためにも、まずは『特別な依頼』を受けなくては。

●力を試すもの
 扉の奥は思いのほか、広く大きな空間が広がっていた。待合室への通路を歩きながらも紹介屋の話は続いている。
「で、なんですかね。こういっちゃなんですが、最近の流れ者達は根性が無くてね。自分の力で道を切り開く覚悟と言うか、信念みたいなものがないと言うか……いや、失礼。旦那方には関係のないお話ですが」
 わざとらしく肩をすくめた案内役の青年エルフは一つの部屋の前で立ち止まる。扉の向こうに見えるのはおおぶりな檻。その向こうからは無数のバルバたちの視線と獣の臭いが一行を刺す。
「いや失礼、皆さんの実力を疑うわけじゃねぇんですが。あたしも皆さんの腕を見てみたく……」
 案内役の言葉は、すっと前に出た赤壁の城塞騎士・ジュン(c05187)によって遮られた。無造作に部屋へと踏み入ったジュンはバルバの世話人と思しきエルフへ、ディアホーンの檻を指し示す。
「こいつらを」
「いいんですかい?」
 あまりにそっけない指示に案内役と世話人、二人のエルフの声色が変わる。
「構わん。一番強い相手だろう?」
「……ここのディアホーンは特に気性の荒い奴ばかりですからね、怪我しないように気をつけて」
 確認するバルドゥインの言葉を度し難いとばかりに案内役は首を振り、巻き込まれるのはごめんだといわんばかりに部屋からそそくさと離れていく。室内に残されたのは十人のエンドブレイカーたちと、解き放たれた同数のディアホーン。そして退避した世話人。
 場に満ちる殺気と無法の空気。幼い頃より馴染んだそれを肌に感じながら、凍月の旋律士・リコリス(c01337)は自虐的に呟く。
「……こういう空気が落ち着く辺り、やはり私はこちら側の人間なのでしょうね」
 三日月形の竪琴へと指をかけたリコリスにあわせ、白き悪魔使い・アレッタ(c13461)も愛用の氷剣を抜き構える。
「まずは手早く数を減らしますわ。後は……」
「わかった。私とサンタナは右翼を」
「なら、俺とティールは左翼だな」
 ディアホーンたちが武器を手に迫る僅かな時間、ジュンとユーリスが短く頷く。その直後、ディアホーンたちが飛び掛ったまさにその時、艶かしい竪琴のメロディに併せて乱舞する邪剣の群れが彼らを遅い蹂躙した。
「ギィィィーッ!?」
「すみませんが、私達の評価を上げるために倒されて下さいな!」
 苦悶の声を上げるディアホーンの一体にティールの槍が振り下ろされ、息の根を止める。更に引き抜かれる蒼柄の槍と交差するように宙を駆ける紅蓮の炎。バルドゥインの吹き付けた業火のブレスがティールを狙うディアホーンを焼き尽くした。
 時を同じくして右翼ではジュンの振るう太刀が半月を描き、サンタナの回し蹴りが止めを刺していく。それでもなお果敢に槍を構えるディアホーンだが、それも儚い抵抗に過ぎない。
「脇がお留守です」
 突き出される槍を遡るように突き出されたジュンの太刀がディアホーンの脇腹を抉る。
「謳え、我が魔。続け、皆」
「あと少しね、支援するわ」
 クリスティーナの召喚したヒュプノスがしぶとく残る少数から力を奪い、そしてヴァルイドゥヴァの繰り出した魔剣がそれらを切り裂く。
 数の優位を崩した上での確固撃破、そして殲滅。一つまみの香が燃え尽きるほどの僅かな時間で、十体のディアホーンはそのほぼすべてが力なく床へ転がっていた。そして最後、一人残ったディアホーンに炎を纏ったユーリズの太刀が叩きつけられる。
「どうだ、これでも俺達の実力に不服か?」
 太刀を引き抜き、ユーリズは外へ叫ぶ。問われ、呆然とした案内役は慌てて首を横に振った。

●絡むもの
 待機所へと案内された一行の元へ、そそくさと去っていった案内役に代わって食いついてきたのは依頼を待つならず者たちだった。先ほどの『腕試し』の件は既に周知、ということか。
「あんたら、この紹介屋の上に誰がいるか知ってるかい?」
 出し抜けにならず者たちの一人が切り出してくる。クリスティーナの心臓が跳ねた。無表情を心がけつつ、念のため眼前の男にエンディングが移っていないのを確認しつつ。
「ううん。何故、そんな話をするの?」
「強い奴に恩を売っておきたいだけさ。あんたらの親分、あれの近くにいると運も向いてきそうだしな。で、知らないんだな? 俺が調べたところによるとだな……」
「興味ないな」
 もったいぶるような男の声をユーリズは強引に打ち切った。もちろん、嘘だ。自分たちはそれを調べるためにここまできたのだ。しかし。
「詮索は野暮と言うものですわ。報酬さえもらえるのなら……私、もう帰る家もありませんから」
 何か言いたそうな男をアレッタが再び制する。試験はこの待機所でも続いているはずだ。余計な隙を見せることは避けなければいけない。
「……やれやれ、人が下手に出てりゃぁおい。何様だてめぇ」
 再三の拒絶に男の声色が荒々しく変わっていく。しょせんはならず者という事か、それともこれが裏の試験なのか。
「ここで暴れて、折角の仕事をふいにしたのでは割に合いませんわよ」
「そういう上から目線が気にいらねぇってんだよ、嬢ちゃん」
 溜息をつきながら応じるアレッタに、男の声はますます低く大きくなっていく。気がつけば周囲にはならず者たちの人だかりができていた。
「おぉいいぞやっちまえ!」
「エルフヘイムのこえぇとこ、みせてやれや!」
 無責任な罵声。一人では声を上げられずとも、一行に少なからず敵意を覚えるならず者はそれなりの数がいたらしい。
「ってぇわけだ、嬢ちゃん。ちっと痛い目見てもらうぜ」
 振り上げられる拳。しかしそれが振り下ろされるより早く、男の前に丸々とした鳥のぬいぐるみが飛び込んだ。男の注意が人形に向いた、その瞬間。
「ふぁるふぁるふぁー」
 気の抜ける声でぬいぐるみが喋った。いや、鳴いた。あまりに場違いな姿に場の空気が固まる。
「ファルコンのスピリット……なのか、な?」
 どこかのならず者の呟き。それに誰かが吹きだし、更に連鎖するように笑いが巻き起こる。
「よっ。うちのわけぇのが迷惑かけちまったみてぇだな」
「……お、おう」
 一人取り残された渦中の男にサンタナが懐から酒瓶を差し出す。
「こいつは詫びがわりだ、まぁそうかっかすんなって。いざって時は頼りにしてるぜ、情報屋?」
「はぁ、どうも……ま、まぁなんかあったら声をかけてくだせぇや」
 普段なら仲裁なんてしないんだがな、と心の中で呟きつつ、サンタナは慣れた調子で男を自分のペースに巻き込んでいく。周囲ではリコリスの演奏で、先ほど男を水をさしたヴァルイドゥヴァのぬいぐるみがひょうきんなダンスを披露していた。
「腕が立って、口も度胸も色気もあるってか。こりゃ惚れちまうねぇ! あんたら本当に何者?」
 腕を絡ませてくる男にも慣れた様子でリコリスは微笑み返し、言葉を軽く受け流す。
 ほどなくして、場の空気をエンドブレイカーたちが支配しはじめた頃。
「お呼びですぜ、デス・クロスの旦那がた!」
 案内人の声に部屋の隅で静観していたバルドゥインとジュンは腰を上げた。

●姿を現すもの
 ここまでの道のりからは想像できないほど、面接は淡々と進んでいった。
「活躍は興味深く見させていただきましたよ。素晴らしい腕前に弁も立つ。近頃、なかなかお目にかかれない逸材だ」
「わしは欲しいと思ったもののために、欲しいと思った人間を集めた。ただ、その結果だ」
 褒めちぎる紹介屋にペースを奪われないよう、バルドゥインは言葉を選びながら答えていく。その姿もまた紹介屋は好ましい姿と捉えていた。
「それこそあなたの実力の証です。どん欲に求め、しかし求めるもの以外に頓着しない潔さ」
「報酬以外に興味はありませんから。逆に仕事とあれば暗殺から夜伽まで、なんとでも」
 柔和な表情を崩さず無言の求めにリコリスが応じる。休憩室での聞き耳は功を奏したとは言えなかったが、気づかれている様子もないことを確認しつつ。
「荒事はもちろん、ご覧の通り我々『デス・クロス』は年も姿も幅広い。報酬さえ保障していただければ詐欺でも誘拐でも見事にこなして見せましょう」
「そういう時は私やクリスティーナの出番だよね」
 実力は先ほど十分見せたと判断し、ティールは戦い以外の技の幅広さをアピールしていく。それを一見すれば普通の少女にも見えるアリツィアの言葉が補強し、裏付けてみせた。
「盗みや斥候がお望みなら俺の出番。自慢じゃないが、独りの頃からボロは一度も出してないぜ」
「私も、落ちぶれてはいますけどデモニスタとしての腕はたちますのよ。姿隠しや石化の邪眼の法も使えますわ」
「そして戦いとあれば私、イーリスが。腕については語る必要もないかと思いますが」
 サンタナ、アレッタと、それに続き偽名を名乗るジュンが続けざまに売り込みをかける。
「どのような事もこなせる多様性と、得意分野での確固たる実力。そして全ては報酬のために」
 それが我ら『デス・クロス』だ……そう話をまとめたバルドゥインに部屋の奥より拍手が響く。
「なるほどなるほど。実に気持ちの言い好漢どもではないか、素晴らしい」
 視線が集中する先から現れたのは一人の年老いたエルフだった。その年齢がいかほどなのか、そして思惑が何事なのかは柔和そうな表情からは全く読み取れない。
「貴方は……いえ、失礼しました」
 問いを発しようとしてティールは一瞬迷った。辺りを見れば紹介屋も用心棒も、部屋にいるエルフたち全員が頭を低く下げ不動の姿勢をとっている。この老人はそれほどの人物という事か。そして自分たちも習うべきなのだろうか。
「いや、よいよい。楽にしておくれ。わしは、エルフヘイムの未来を案じているだけの、ただの老人じゃよ」
 老人の言葉にエンドブレイカーたちは少し警戒を解く。もちろん言葉を信じるわけではないが、彼の老人がそうしてほしいというのならば従っておくのが無難だろう。
「……さて、と。薄々気づいておるかもしれぬが、わしがお前たちを雇わせてもらう事となった。さっそく一仕事してもらおうと思うが、受けてくれるかのぅ?」
「お望みのままに。なんなりと」
 それを断る理由は何一つない。老人の言葉に頷き、バルドゥインは短く肯定の言葉を告げた。



マスター:のずみりん 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2010/10/27
  • 得票数:
  • 楽しい1 
  • 笑える1 
  • カッコいい21 
  • 知的60 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。