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森の主

これまでの話

<オープニング>

 それは、とある村でのこと。
 昼下がりののどかな景色の中、ふと聴こえてきた騒がしい声に、赤いフードの少女が振り返る。
「わたし、森の主様を探しに行くの! 行くったら行くの!」
 見ればそこには、母親らしきエルフと喧嘩するエルフの少女。歳は自分と同じ位だろうか。
 やがて涙を浮べた少女は、引き止める母を振り切って走り出し……フードの少女にぶつかる。
 こてん、と転がる少女。
「大丈夫?」
 助け起そうと手を差し出したその時。
 フードに翳る赤い眼差しは、自身を見上げる少女の瞳の中に、一つのエンディングを見いだしていた。

 ――赤ずきん・アリスレッド(c02738)は告げる。
「その女の子が探しに行くと言っていた『森の主』こそが、『予言者』なの」
 森の主。
 獣の姿でありながら、獣では無く。
 バルバを含めた、森に住まう全ての生き物を従える存在。
 そして、偶然出会ったエルフに予言を与える……いわば、伝説の存在だ。
 伝説とはいえ、語られる内容は実際に予言を賜るエルフが幾人も居たという、事実に基づいてのことなのだろう。
 その予言者も、最近は姿を見掛けることがなくなっているという。
 だが、エルフの少女――ユーナが森へ探しに出かけた折に、ちらりとだけではあるが、姿を見ることができる……。
 ……それが、アリスレッドが少女の瞳に視たエンディングだった。
「ユーナが見るのは、ほんの一瞬だけなの」
 淡々とした様子で、しかし、未知の獣に興味をそそられてもいるのか、アリスレッドの瞳の奥に少しばかり妖しい煌きが踊る。
「でも、わたし達が一緒に行けば、追い掛ける事もできると思うの」
 そうして、上手く予言者とユーナを引き合わせることが出来れば。
 森の主――予言者より、予言を貰う事が出来るかも知れない。

 一先ず、ユーナの瞳にエンディングを視たアリスレッドは、ユーナと共に森へ向かう約束を取り付けているという。
「一緒に探すのを頼まれたから、『仲間と一緒に手伝ってあげる』って返事しておいたの」
 沢山の心強い仲間がいれば安全面は問題ないだろうが……ユーナはまだ子供だ。警戒する余りにユーナ自身を怖がらせないよう、配慮はしておくべきだろう。
「予言者に出会う場所は、しっかり視えたから大丈夫なの」
 アリスレッド曰く、そこは『古木の原生林』であるという。
 古より生き続ける巨木を中心に広がる、あるがままの森の姿。古木も大きいものでは幹の胴回りだけで十数メートルに達するものもあり、そのどこか神秘的な世界には、思わず畏怖の念を抱く事だろう。
 エルフらもここでは狩りをしないらしく、命を脅かされることの無い小動物達は大変に人懐っこいそうだ。それだけを見ても、この場所がどれだけ大切にされているかが判る。
 アリスレッドの視たエンディングによれば、予言者は古木の陰にちらりと見えて、直ぐに去っていってしまったという。
「出てくる邪魔をしないで、去るのを止める方法を考えなきゃなの」
 無論、予言者は別名『森の主』。エルフ達からは尊敬を集める存在だ。
 幾ら引き止める為とはいえ、罰当たりな行動は慎むべきかも知れない……ユーナの事をふと思い浮かべながら、アリスレッドはそう付け加えた。

 とはいえ、エンディングから視えたのは予言者の姿だけだ。
 アリスレッドによると、『光る鹿』っぽい姿であったようだが。
 なにしろ、今判っているのは、偶然出会ったエルフに予言を与える存在であるということだけ。
 敵か味方かすら、わからないのだ。
「罰当たりはダメ、って言ったけど、万が一の時は戦う必要もあるかもなの」
 それはユーナを守る為でもあり、その場を切り抜けるための戦いとなるだろう。
 勿論、そんなことにならぬのが最上だ。
 まかり間違っても、ユーナの幸せなエンディングを不幸に変えてしまうことがないように、十二分に注意を払わねばなるまい。
 森の主……予言者との邂逅。
 未知の不安と期待に満ちた幾つもの眼差しが、古木の原生林へと、向けられていた。


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参加者
鉄血の戦奏屋・エルモ(c00104)
煤け野良・ファルシュ(c00321)
万葉凍葬・アレス(c01447)
斧の魔獣戦士・クロード(c02208)
赤ずきん・アリスレッド(c02738)
護風翠剣・カイル(c03406)
ヴィーヴルの騎士・ソフィア(c10463)
臆病スフマート・イチイ(c12858)
調べる者の代行者・ヴァン(c15390)
放浪の赤き魔女・アスナ(c16414)

<リプレイ>

●森
 巨木の立ち並ぶ古の森は、荘厳さと同時にのどかさも感じさせる。
「……まぁ、危ねぇ事があれば守ってやっからよ。よろしくな」
「うん!」
 挨拶代わりの、斧の魔獣戦士・クロード(c02208)の言葉に、エルフの少女・ユーナは元気に頷く。
 しかし、予言者が人でなかったとは。驚きは内心に、調べる者の代行者・ヴァン(c15390)も道なき道を進む。
 一方、ヴィーヴルの騎士・ソフィア(c10463)はおっかなびっくりな足取り。
「す、凄く深い森ですね……」
「疲れてないか?」
 段差の先から手を差し伸べる、万葉凍葬・アレス(c01447)。「平気」と手を取るユーナの背を、臆病スフマート・イチイ(c12858)も支え押し上げてやる。緊張するけど、此処はなんだか落ち着く場所だ。
 最初の緊張も何の、ユーナは、放浪の赤き魔女・アスナ(c16414)が経験したという辺境や別の都市国家の話などには興味津々で、次第に自分から続きをせがむ程に打ち解けていた。
 主へ至るエンディングを変えぬよう、煤け野良・ファルシュ(c00321)も童話や冒険の話を聞かせつつ、時折ユーナに行く先を確認する。
「次、どっち行く?」
「こっち!」
「ユーナは森に入るとき気をつけてること、ある?」
 赤ずきん・アリスレッド(c02738)は持参の本――森を歩く時の約束事が題材にされた絵本を話題に据え、仲を深めながら認識を共有していく。
 警戒は怠らぬにせよ……和やかな雰囲気も手伝ってか、鉄血の戦奏屋・エルモ(c00104)も森林浴気分で足取り軽く。市街地暮らしで自然に余り馴染みのない、護風翠剣・カイル(c03406)は、小さな野花や、落ちた木の実、それを探し現れる小動物達を傷つけぬよう気をつけつつ……時にはその様子に見とれてみたり。
 一方、同じ市街地暮らしでも元は辺境育ちのクロードは、森という空間に懐かしさを覚えていた。そのせいなのか、一見すると何も変わらぬ無表情も、心なしか緩んで見える。
「お兄ちゃんご機嫌?」
「余所見してっと躓くぞ」
 誤魔化すようにそっぽを向いて、ほら、とユーナを段差の上へ引き揚げる。
 ……と、その時。正面からの物音に、ソフィアが大袈裟な位にびくっ。それでも、自然とユーナを庇える位置に立っている。
「だ、大丈夫です大丈夫です……」
 出てきた陸亀を前に、びくびくしながらユーナにそう返すソフィア。アリスレッドは通行料代わりに持参の食料を少しばかりその場に置いて……無邪気に甲羅を撫でているユーナの姿を、少し羨ましくも思う。それは癒えぬ傷を負う前の自身の姿を重ねてしまうから、だろうか。
 何にせよ、普通に森歩きをする分には罰当たりな要素はないらしい。動物も無闇に追いかけたりしなければ大丈夫そうで、少し気が楽になるアレス。武器の類も全員が布で覆い隠す等徹底しているし、後は主に失礼がないか気をつけるだけだ。
 やがて、皆が一様に打ち解けて来たこともあってか、エルモも少しばかりおどおどしつつもユーナに話し掛ける。
「クッキー、食べる?」
「うん!」
「ユーナはどうして森の主に会いたいんだ?」
 ふいと問うファルシュ。アスナも良ければ聞きたいです、続ける。すると、ユーナはクッキーを齧りながら。
「だって、誰も姿見てないって言うんだもの。心配だったの」
「ユーナさんは優しいですね」
 相槌を打つように頷くイチイ。その足取りはあくまでも、主へと導くユーナの後を追う。
 ……終末の予言と、予言の戦士。フルートが賜ったという予言からすれば、予言者はエンドブレイカーの存在を知っているのだろうか。カイルの心中にそんな思いが過ぎる。
 会う事で色々な謎が解明できればいいが……ヴァンもそんな事を考えながら、マッパーで作製した地図に目を落とす。もう随分、森の中に入ってきたようだ。
 その時ふと。
「この景色、視た事あるの」
 立ち居並ぶ巨大な古木を、アリスレッドが見回す。こちらを襲う気のない動物は『獣』とは言えない。だから、食欲――取り込みたいという衝動は湧かない。
 ……さて、主はどうなのか――。

●主
 巨木の梢を揺らす物音。
 びくり、と慌てて振り向くソフィア……の視線の先に。
「あ、あれですよね!?」
「ほんとだ!」
 思わず歓喜の声を上げるユーナ。折り重なる巨木と枝葉の陰、ちらりとしか見えはしないものの……眩く輝く光は、通常の動物が持ちえるものではない。
 だが、明らかに遠い。身を包む光がなければ気付かぬ程の距離……そしてそれが、遠ざかっていく!
 咄嗟に、トレードマークのテンガロンハットを脱ぎながら、ヴァンが歩を進めて呼びかける。
「あなたが予言者としてこの森に住む森の主様とお見受けします。どうか姿を現してください!」
「彼女は貴方に会いたいと言う願いを持つエルフのユーナ、彼女の声も聞いてほしいの」
 アリスレッドも今だけでもと大声を張り上げるが……急に吹き込んだ風が古木の枝を酷く揺らし、二人の声を掻き消してしまう。
 遠ざかる光。ファルシュは見失ってなるものかと、全力で飛び出した。
「頼む。少しだけでいい、待って!」
 依然ざわめく森。それどころか、突然、蔦が脚に絡み付いてくる。思わぬ立ち往生に、ファルシュの無表情な顔が微か曇ったようにすら見える。
 切り払う事は容易いが、果たして森を傷つけていいのか。クロードは蔦を避けて段差を越え、主を追う……が、今度は旋風に乗った木の葉が刃物のようになって襲い掛かった。
 目深に被ったフードが浮き上がりそうになり、共に追いかけようと進み出ていたアスナが慌ててフードを押さえる。
 生きているように蠢く森。行く手を阻むように交差する枝を、手折らぬよう払い除けながら僅かに見える光を目指して進むカイル。
「まるで森が主を護ってるみたいだ……!」
「貴方にこの場に留まれぬ事情があるなら随行する事を許して欲しいの」
 木々のざわめきに負けぬよう声を張り上げ、アリスレッドも許可を請いながら追い縋る。
 だが、直後の一瞬に、梢に紛れ消える主と、唐突に止むざわめき。
 途端に、エルモは目を閉じる。まだそんなに遠くはない、それなら……!
「足音……! あっちだよ!」
 ヒアノイズで僅かに拾い上げた音を信じ、方角を示すエルモ。イチイもすぐにユーナを抱え上げる。
「確り掴まっててくださいね」
「うん」
「大丈夫です、頼りにならないかもしれませんけども!」
 ちょっぴり弱気な事を言いつつも、先行の皆からは少し遅れて後を追うイチイ。何よりもユーナの安全が優先だ。ソフィアも森の障害にびくびくしながらも、風や枝から身を挺してユーナを守る。
 その前方で、アスナが魔鍵の力で絡まる蔦を解きほぐし、エルモの歌が僅かな傷を癒し先へ進む力を皆に与える。
 絡む蔓から腕を引き抜いて、巨大な古木の向こう側へ回り込むカイル。
 その新緑の瞳に、拓けた日溜りの中……陽光よりもなお神々しく輝く獣の姿が飛び込んできた。
「いた! ……じゃない、いらっしゃった!」

●戒
 続け辿り着いたヴァンが今度こそはと帽子を取り、日溜りの手前に跪き、声を張り上げる。
「私の名はヴァン、アクスヘイムよりこの地へ来た。あなたはこの古きの森に住むと聞く予言を司る森の主様か!? どうか、私たちと彼女の話を聞いてもらいたい!」
 すると歩みが止まり……振り返る主。ざわめく森も嘘のように静まり返る。
 その姿は一見多毛の鹿のようだが、顔はヒヒのようでもあり、何よりも絶えず発せられる光が主の纏う雰囲気を一層神秘的なものにしていた。
「我々は、貴方から予言を賜ったフルート・アルマーに導かれ、エルフヘイムの地を訪れた者!」
 続くクロードの声が、静かな森に木霊する。
 そして、主の声が響いた。
 直接、頭の中に……!
『おぬし達が、エルフヘイムを救う戦士達であるのか』
 響く声に戸惑いながらも礼儀正しく応じる一行に、主は微動もなく佇む。
『ならば、遠方よりやってきてくれた礼をせねばなるまい。そして、森の望みを伝えねばならぬ』
 願いを言うがいい、と促す主に、ファルシュは無表情ながらも少しばかり慌てて。
「待って。まだ辿り着いていない仲間が」
『よかろう』
「森の主よ、呼びかけに応えて頂き感謝します」
 遅れているユーナ達を待つ間、エルモが失礼のないようにと気を配りながらハープを静かに爪弾く。即興で奏でる音色は、森の自然な噪音に合わせ、三拍子で続く幻想的な旋律……主だけでなく、森に棲む生き物皆に届けばいいと、そんな想いを乗せて。
 その音色と、アスナが目印にと置いていった色石を辿り、ユーナを抱えたイチイと、それを護るソフィアが遅れて姿を見せる。
 エルモはそこで一度曲を締め括る。
「ご清聴感謝します、森の主」
「この子はユーナ。近くの村の子」
 続けて、ファルシュがユーナを紹介する。アスナもフードの陰から赤い瞳で様子を窺いつつ。
「私達は、フルートさんの導きと……主様に会いたいというユーナさんの手助けでここまできました」
 どうかユーナの願いを聞いて欲しい。続けるアスナに、ファルシュも、感激に瞳を輝かせているユーナを促す。
「ほら、ユーナ。会いたい理由、あったろ?」
「私、主様の姿見られたから十分よ。それよりお姉ちゃん達にご用事あるんでしょ? 主様のお話きいてあげて」
 ユーナに促され、ヴァンは帽子は脱いだまま、立ち上がって告げる。
「なぜ戒律が始まったのか……お聴かせ願えるだろうか」
『妖精騎士の戒律が作られた経緯か』
 確認するように問う主に、皆が一様に頷くと、主は静かな口調で話し始めた。
『あれは、遥か数千年の昔、エルフヘイムが強大な敵『密告者』の襲来を受けた折の事だ――』

 ――主は語る。
 妖精騎士達は『密告者』と勇敢に戦った。だが、武力で適う相手では無く、エルフヘイムの滅亡は時間の問題であった。しかし、時の妖精騎士伯ウェンディは諦めなかった。決死の探求の末『密告者』を封印する秘術を見つけ出したのだ。
 秘術には、多くの者が二つの役割を分担する必要があった。自らに密告者を封じる者と、それが解けぬよう外側から封じる者。故に全ての妖精騎士がパートナーを組み、秘術を執り行った。
 これが、戒律の作られた経緯――。

『――妖精騎士の子孫らは、この封印を護る為、厳しく戒律を守り今まで生きてきたのだ』
 エルフの性格から察し戒律に違和感を覚え、棘との関連を勘繰っていたヴァンは、主の話に確信めいた物を覚える。
 『密告者』なる強大な敵はマスカレイドの王か何かなのだろう。
 エルフヘイム自体が棘に覆われていないのも、エルフ達がその体内に棘を封じているからに相違あるまい。
「棘の内包者がダークエルフ、外から封じるのがハイエルフ、という事なのね。ならば、ハーフエルフは封印が解かれた状態……なの?」
 独りごちながら主を見遣るアリスレッド。本当に予言出来るなら、この邂逅も主の掌の上なのだろうか。もしこれが自分達を計る試練であり、その為にユーナの想いを利用したのなら……。

●異
『では、森の願いを伝えさせてもらおう』
 もう一つ、と言い掛けた声を遮られ、口を噤むアレス。
 森の願いとは予言の事なのだろうか。それは未来が見えるという事なのか……? ファルシュはふいと、無愛想な眼差しの裏で逡巡する。
『……おぬし達の手で、我を殺してくれまいか』
 突然の言い草に、またソフィアがびくりと身を震わせる。
 失礼かも知れないがと、主の瞳を見つめるイチイ。良き未来を望むのはきっと同じはず……いや、自分と主を一緒にするのは失礼だった、ごめんなさい!
 ……そんな思惑は他所に。
 主の瞳にエンディングが視えなかったが、告げる言葉が嘘でない事はよく判った。
『恥ずべき事だが、我が体内は既に多くの災いに蝕まれている。一日のうちの僅かな時間を除けば、我が体は災いに呑まれ、エルフヘイムに滅びをもたらすべく森の生き物達を非道にかりたてているのだ』
 俄に、アリスレッドの眼差しに剣呑な光が宿る。
 森の動物が棘に刺されている原因、それは即ち……。
『動物を使い森に足を踏み入れる者を殺し、バルバを使役し村を襲わせる……。このままでは森の全てが災いの手に落ちてしまう』
 レジスタンス、騎士団、中立……エンドブレイカーの立場がばらばらになっている状況を打破する為にも、アレスは聞きたかった。今、エルフヘイムに何か起きているのか、を。
 それが、問うまでもなく、このような形で返ってくるとは。
『我を災いと共に殺せるのは、おぬし達だけだ、どうか……』
 そこまで言うと、突如、主が苦しみ始めた。
 神々しかった光は急速に衰え、肉声による唸り声を……獣そのものの雄叫びを上げる主の顔が、禍々しい仮面に覆われてゆく!
 紛れもないマスカレイド化。
 戦慄を覚えながらも、今まで隠していた武器を構える一同。
 だが、主は、絞り出すような僅かな声を残し、物凄い勢いで森の奥へと駆け出して行く。同時に、マスカレイドの仮面を貼り付けた動物達が、一行の行く手を阻むように何処からか湧き出てきた。
 咄嗟に、ユーナと皆を庇うように立ち、動物の攻撃を食い止めるカイル。今はユーナの身の安全が第一だ、このまま主を追うのは危険過ぎる。
「一旦退くぞ!」
「や、止めて下さい!」
 おっかなびっくり、さらに涙目になりながらも……叩き込まれた経験故か、ソフィアの振り下ろした斧は存外に容赦なく、襲い来る敵を渾身の一撃の餌食にする。
「ご、ごめんなさいごめんなさい……」
「ユーナを先に」
 殿を務めるつもりで、ビーストクラッシュにて応戦するクロード。アリスレッドも同じく殿の位置で、迫る動物に魔獣の腕を喰らい付かせる。
 一方のユーナは突然の出来事にただ立ち尽くすばかり。アレスはそんなユーナに、氷結剣で動物の動きを止めながら、強い口調で――それは、遠く去った主にも告げるように。
「大丈夫。その終焉を壊すために、俺達がいる」
「絶対だよ……主様のお願い、叶えてあげて……!」
 堪えきれず涙を溢れさせるユーナの頭を、当然だと言わんばかりにぽんぽんと撫でるヴァン。イチイはそんなユーナを抱えると、再び全力で駆け出す。
 その行く先、ファルシュの嵌めた左右の指輪から繋がる鎖状の二本の鞭が踊り、ボンデージスレイヤーで動物を絡め取る。
「今のうち」
「そちらへ真っ直ぐ!」
 自作の地図にさっと目を通し、リペアキーでカイルの傷を癒しながらアスナが方向を指示する。
 重なるようにブレイブソングを響かせつつ、エルモが不安げなユーナを庇うように立つ。
「もう少しだからね」
「うんっ」
 森の険しさが薄れると共に、なりを潜める動物の追撃。
 やがて森を脱すれば、訪れる安堵。
 ただ……。
『我はエルフが予言者の森と呼ぶ森の奥にいる……必ず殺してくれ』
 ユーナを気遣い一旦の帰路へと就く一行の胸中、マスカレイド化の瞬間に聴こえた主の最後の声が、鮮明に甦ってくるのだった。



マスター:BOSS 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2010/11/04
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