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騎士団入団試験『明日の街を護るのは君だ』

<オープニング>

●スノーサと騎士団の酒場
「うーむ、これは早急に対応を考えねばならん」
 エルフヘイムの酒場では、一人の筋肉質なエルフの男性が報告書の束に目を通しながら、頭を抱えていた。
 執務室では仕事がはかどらないと、酒場に出てきたものの、やはり仕事ははかどっていないようだ。

 報告書は全て、エルフヘイム騎士団の支部がレジスタンスの襲撃に遭い、騎士団の任務に支障が出たり隊員の士気が低下しているという内容である。
「これ以上、『戒律』に反する者達の跳梁を許すわけにはいかぬ。だがしかし、大きな作戦を行うには人手が足りなすぎる」
 その男性こそ、エルフヘイム騎士団総帥・ドンチャッカその人であった。
 現場からは、業務に対する不満を聞かされ、元老であるカシアス老からは、成果を見せろと矢の催促を受ける。
 このまま状況が推移すれば、ドンチャッカの頭髪に危機が訪れるのは間違い無いところだろう。

 と、そんなドンチャッカの所に、とてとてと一人の少女が歩み寄ってきた。
「なんだい、お嬢ちゃん。迷子かい? お母さんを捜しているなら手伝ってあげよう」
 ドンチャッカが、親切心から起ち上がろうとすると、その少女……赫赫と赫ける夜が月・スノーサ(c01027)は、
「君は、このままでは更迭されるだろう。つまり、騎士団長を首になるということだ」
 と言うと、すいっと腕をあげ、起ち上がろうとしたドンチャッカの眉間の間に、右手の人差し指を当てた。
 それは、スノーサが見たひとつのエンディングだったのだ。
「君が首になれば、騎士団を引き継ぐのは武闘派の副団長……。そうなれば、エルフヘイムの不幸はより大きくなるのだろう」

 ドンチャッカはスノーサの言葉に目を白黒させたが、その言葉が正鵠を射ていた為に押し黙る。
 『戒律』に反する者を助けるレジスタンスは≪戒律≫に反したも同然であり、『戒律』に反する者と同様に処刑すべきだ……という意見は、つい先日も副団長とその部下達から聞いたばかりだったのだ。

「そうならないように、私が手を貸しても良いぞ。ドンチャッカ」
 スノーサはそう言うと、手に持った紙にスラスラと言葉を書き連ね、ドンチャッカに手渡した。

 その紙には、大きな文字で、『騎士団強化の為の入団試験、明日の街を護るのは君だ』と書かれていたのだった。
 
●スノーサとエンドブレイカーの酒場
 ドンチャッカを残して酒場から出たスノーサは、今度は別の酒場に顔を出していた。
 そこは、エンドブレイカー達が良く集まる酒場だった。
 酒場に入るとスノーサは、集まっていたエンドブレイカー達にこう告げる。
「近々、エルフヘイム騎士団で入団試験が行われる事が決まった。貴様達の中で、参加したいと思う者は、申し出るがいい」
 と。
 スノーサの説明によると、失策続きのエルフヘイム騎士団総帥ドンチャッカが、解任の危機にあるのだそうだ。
 そして、彼が解任された後に繰り上がるだろう副団長というのが、『戒律』を守る為ならば、レジスタンスを殺害するのはやむを得ないという武闘派である為、エルフヘイムの為には、ドンチャッカの解任というエンディングは防ぐべきかもしれないという事らしい。

「勿論、この件はマスカレイドとは無関係だから、参加しなければならないという事は全く無いだろう。どうすべきかは、貴様達が自分で考えなければならない……。私も含めてな」
 そう言うと、スノーサは、また、ふらりと酒場の外へと出て行ってしまった。

 残されたエンドブレイカー達は、はて、どうすべきかと首をひねるばかりであった。
 
●エルフヘイム騎士団新規団員募集
 エルフヘイム騎士団では、騎士団業務拡張につき、新規団員を募集しています。
 平和で豊かなエルフヘイムを守る為、君達も、エルフヘイム騎士団で働こう!

 健康でやる気があれば経験や経歴は不問です。
 高給優遇、週休2日、騎士団退団後の就職斡旋あり。
 当日、簡単な面接と実技審査があります。

 入団希望の方は、騎士団本部の人事課にお気軽に問い合わせください。

 エルフヘイム騎士団人事担当・サックス。
 エルフヘイム騎士団総帥・ドンチャッカ。


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<リプレイ>

●エルフヘイム騎士団入団試験開始
「さて、ついにこの日がやってきたわね。入団試験当日!」
 紅と黒白の勇者・エイカ(c14993)は、愛用のフード付きマントを翻して、エルフヘイム騎士団の入団試験会場へとやってきた。
 既に会場は黒山のひとだかりになっており、なかなかの活気である。
「エンドブレイカーの実力なら簡単に入れるって聞いたけど、重要なのは、入った後の事よね。さぁ、明日の街を私に守らせなさい!」
 そして、エイカは愛刀『渦炎丸』を手に試験会場へと入っていった。
 そのエイカに続くのは、鉄腕少女・クリスティーナ(c16253)。
「城塞騎士をめざす私にとっては騎士団も大切ですわ! いっしょうけんめいがんばりますの!」
 頑張りは普通だったが、ほとばしるやる気は、エルフヘイム騎士団にふさわしい雰囲気をまとっているようだ。
 優雅なる旅人・アスベル(c12717)、刃を砕く者・ヴァルブルガ(c11855)、虎咆響刃・フェーン(c04218)は、エルフヘイムの治安が悪化している現状を憂えて、騎士団への入団を希望して試験会場にやってきていた。
 エルフヘイムの内情や戒律について知りたいとは思っているが、その為にも、平和で豊かなエルフヘイムを守る事がその一歩となるのだろう。
「まぁ、私は、団長の人柄に感じるところもあったんですけどね」
 フェーンは、そうひとりごちながら試験会場に向かっていた。
 一方、今回の入団試験に対して、
「レジスタンスや警備隊と比べると、ちょっと敷居の高い感じがしとったが、丁度ええタイミングやったなー」
 という感想を抱いたのは、白影・ジェス(c11669)。
 有志が参加する都市警備隊や、非合法な組織故に試験などが無かったレジスタンスと比べれば、騎士団の敷居が高いのはやむをえないところだったろう。
(「うまく入り込んで、騎士団の女の子と仲良くなれればいいな」)
 ジェスがそんな事を考えていた隣では、深淵遊戯・ファルチェ(c07034)が、複雑な表情で佇んでいた。
 騎士団の行っている戦いが何の為のものなのか、それが判らなければ力の振るいようが無いではないか?
(「騎士団に所属する事で、それを知る事が出来れば……」)
 それが、ファルチェが入団試験を受けに来た理由のようだった。
 勿論、そんな迷いとは無縁のエンドブレイカーも多く試験に参加している。
 例えば、志望動機を、
「強いて言うなら、暇つぶしですかねー」
 と言い切ったのは眠りウサギ・ヒスイ(c02936)。
 エルフヘイム騎士団が、退屈な日々を吹き飛ばしてくれる事を期待しているらしい。
 他にも騎士団の待遇に惹かれてあつまったものも多くいた。
「ぶっちゃけ安定職が欲しかったからです!」
 と告白するのはガッツのある女の子・ウェンディ(c13228)。
 ノリでエルフヘイムに来てしまった為、懐が乏しいのだそうだ。
 が、まぁ、ガッツがあればきっと乗り切れる事だろう。
 サマエル・ネロ(c01471)は、やる気に溢れた試験参加者とは一線を画しており、無難に力を抜いて試験に挑んでいた。
 落ちない程度に力を抜いて試験を受ける事で、誰からもマークされずに騎士団に入り込む……事が戦略であるようだ。
 星蝕・ロットバルト(c01303)は、自分は騎士という柄でも、人に使われる柄でも無いのだが……と、内心忸怩たる思いを持ちながら試験会場に足を運んでいた。
 だが、縁のある者達が住むエルフヘイムの問題を放置するのも心苦しいという理由でこの場にやってきたのだ。
 その事情故にか、ロットバルトも、ネロと同様に無難に試験に挑むつもりではあるらしい。

 そんな試験を受けるエンドブレイカー達で溢れた試験会場を見やった、剣の城塞騎士・エクリス(c00891)は、
「かなり多く集まったな……。騎士団に潜入したい者にとってまたとない好機だからな」
 と受験者の分析しているようだ。
 試験参加の人数が多かったため、この会場はエンドブレイカーだけで一杯一杯になっていたが、他の会場では同時にエルフの市民からの受験者も選抜されているらしい。
 それを考えれば、エルフヘイム騎士団の戦力はかなり増強されることだろう。
(「増強された戦力がどこに振り向けられるか……。気にしておく必要はありそうだな」)
 そう考えたエクリスだったが、その考えは表情に出す事は無かった。
 そんなエクリスと正反対に、わくわくを抑えきれずに試験会場に入ろうとするエンドブレイカーもいた。
 大剣の城塞騎士・グラディス(c06217)だ。
(「騎士の人と触れ合う機会だからね。是非、エルフヘイムの騎士団で勉強させて欲しい」)
 先祖代々の城塞騎士の家に生まれたグラディスにとって、他国ではあっても、正規騎士団に入団することは身の引き締まる思いだったようだ。
 が、グラディスのわくわくは、ちょっと肩すかしを受けてしまったようだった。
「試験希望ですね。まずは、この用紙に必要事項を……」
 というように試験会場の受付をしていたのが、シスター・ベル(c00107)であったからだ。
 ベルは、試験受験者が想定以上に膨らんだ事で、事務方が大わらわになっていたのを見かねて、書類仕事の手伝いを申し出ていたようだ。
「あれ、グラディスちゃん、何かわからない事あるのかな?」
 ベルの問いかけに、グラディスは首を横に振ると、用紙にさらさらと必要事項を記入していった。
「あっ、ベル。次からの受験者はB会場にまわしてくれよな。修理が終わったみたいだから」
 そのベルに声をかけたのは、同じく試験の手伝いに回っていた蛇の瞳・ベルファ(c01267)。
 足をつかって試験会場内の状況を確認し、それを担当者に連絡する……。
 それらは、偵察や伝令を得意とするベルファの得意技であるようだ。
 そんなやり取りの間も、試験会場の受付には、次々と新たなエンドブレイカーがやってきていた。
 勇猛可憐なお嬢様・アーティリア(c01494)は、
「騎士団とレジスタンスの不幸な衝突を避ける為に……」
 と、試験に挑む事にしていた。
 銀のナイフより重いものを持ったことが無いと言うお嬢様ではあるが、その銀のナイフが、大業物の大剣であるのだから、その力に疑問を挟む余地は無いだろう。
 8歳の女の子の双弦のラプソディ・ユフィ(c02457)は、
「みんなの生活を護る為に力になれば」
 と、試験を受験。実力と年齢は特に関係が無いうえに、大人のエンドブレイカーと比べても受け答えがしっかりしていたので、年齢などは何の障害にもならないだろう。
「エルフヘイムの未来のため! 頑張ります♪」
 とあっけらかんとあかるく宣言したのは、太刀の魔想紋章士・アルト(c03764)。
 好印象を与えようと頑張った挨拶であったが、狙ったほどの効果は無かったようだ。
 鍛えられた肉体と鋭い眼差しの青年、盾の城塞騎士・アレクセイ(c05270)は、笑顔を護る為にと試験への参加を決めていた。
 簡潔すぎる志望動機だったが、笑顔を護る事は、彼にとって、とても大切な事なのかもしれなかった。
 オルレアンを駆ける聖少女・ジャネット(c05732)は、アレクセイとは逆に思うところがいろいろあるらしい。
「騎士団員募集ですか……これも主の導きに違いありません」
 と考えるジャネットは、レジスタンスの活動に裏が無いかと疑っていたので、この機会にそれを確かめようと騎士団への入隊を希望したようだ。
 にこやかなだが裏の読めない風情の忘却の蛇・ヘルメス(c12060)は、自らをアクスヘイム出身者と偽って試験を受験。
 アクスヘイム出身者と偽る理由は、その真意の読み取れない笑みからは、うかがい知ることは難しいようだった。
 そして、畑で採れたエンドブレイカー・ロック(c14016)が、
「志望動機か……昔、別の都市国家で騎士団に所属していた。ちょっとしたヘマをしてクビになっちまったがな。大した事じゃない。友人の為に汚れ役を買っただけだ」
 と昔語りを始めた丁度その時、後ろに並んでいた赫赫と赫ける夜が月・スノーサ(c01027)を見つけたらしい、エルフヘイム騎士団総帥・ドンチャッカが、試験会場の入り口にと駆け寄ってきた。
 ロックは、少しだけビックリしたが、受付は無事に済ませたということで、少し脇に避けてドンチャッカに道を譲る事にしたようだ。

「あなたは、あの時の……。一度、お礼を言わせて頂きたいと思っていたのです」
 ドンチャッカが、スノーサの手を取って感謝の意を表すると、スノーサは、鷹揚に頷いて答えた。
「こちらこそ。私も君に協力したいと思っていたのだ。微力ながら力を尽くさせて欲しい。ドンチャッカ総帥の方針と人柄に共感したが故にな」
 その答えに、ドンチャッカは満面の笑みで答えたのだった。
 突然試験会場の入り口に現れた騎士団総帥ドンチャッカ。
 意外な出会いに驚いたのか、黒柩と紅いリボン・リネア(c00018)は、『これで安心! 面接の仕方』という冊子を落としそうになりながら、こう尋ねたのだった。
「ところでドンチャッカさんって、騎士団としてどのようなご活動を……」
 その問いにドンチャッカは、
「確かに、騎士団総帥という仕事は外から見れば何をしているのか判らないものだからな。いっそ、外回りの騎士の方が性に合うのだが……。まぁ、そうだな、いろいろな意見を持っている仲間と話をして、騎士団の意見をまとめる仕事だと思ってくれれば間違いは無いだろう」
 答えた。
 その答えを聞き、それは確かに頭髪が危うくなるような仕事であると感じ入ったのは、シールドスピアの城塞騎士・フウスイ(c02863)。
(「頭髪の危機と聞けば、捨て置くわけにもいくまい」)
 フウスイは、立派な口ひげとは対照的に少し寂しくなった自らの額をさすりあげながら、この団長の為に働く事の意味を再確認したのだった。
「鎧くお願いします! っは! 間違えた! 宜しくお願いします!」
 こちらは、ドンチャッカの鎧に惹かれてやってきたケンズイシ・オノノ(c08703)。ちなみに、彼女の鎧である妹アーマーと妹兜は、ドンチャッカの鎧に勝るとも劣らない出来映えである。
 リアルドンチャッカを前にして、少し緊張するオノノだったが、自己アピールは忘れない。
「騎士団の仕事の中には、戒律に縛られない人間が役に立てる仕事があるかなって思うんだよね。その時は是非声をかけてね!」
 オノノのアピールに、穿つ鉄拳の・デリック(c13022)も同意した。
「オノノの言っている事は極端かもしれないが、団長殿の考え次第で、従来のエルフヘイム騎士団とは違った運用の方法もあるのではという事だ。まぁ、考えて置いてくれ」
 このオノノとデリックの提言に、ドンチャッカは、考えて置こうと頷いた。
「おっと、そういう特殊部隊が必要なら、僕にも声をかけてもらわなければね」
 その尻馬に乗った感があるのは魔犬の猟兵・エン(c00652)。
「エルフヘイムに来てからだけでバルバの襲来に3回対応している。一隊任せて貰えば、期待以上の働きをできるだろう」
 これに対しては、
「隊を任せるか否かは、騎士団に入ってからの働きによって決めるものだ。過去の実績に相応しい新たな実績をまずは作るように頑張ってくれ」
 と答えるドンチャッカ。
 少し当てが外れたのか、エンは仏頂面でその場を去った。
「なるほど、過去の実績は考慮しないというのは正しい姿勢だな」
 エンへの受け答えに満足した風情のアルトリズムガーディアン・エイヴァンス(c00621)は、ドンチャッカに対して、こう話を継いだ。
「ちょいと前、ここらの事情を知らない旅人のころに、レジスタンスに雇われてたことが有ったんだよ。今はもう縁も切れたがな」
 エイヴァンスは、レジスタンスが悪では無いのではという事と、戒律を調べることを提案しようという腹であったらしいが、これは、かなりの失言であった。
 騎士団の入団試験で、自分はレジスタンスに関わっていたと告白するのは、かなりの自殺行為に違いない。
 幸い、エイヴァンスは、その場の仲間がうまく誤魔化して事なきを得たが、試験会場から退散せざるを得なかったらしい。
 エイヴァンスの退場で、場が少し気まずくなったと思ったのか、キャンディママ・ギロチーヌ(c02927)が、敢えて明るい声で、ドンチャッカに話しかけてみせた。
「総帥、イイ鎧だねぇ。それ、素肌の上に着てんだろう? やっぱ、鎧は素肌の上だよねー♪ 総帥とは仲良くなれそう!?」
 ギロチーヌの鎧はビキニアーマーであり、これを素肌の上に着ているとすると、かなり、色々問題かもしれない。
「いや、インナーはつけているが……」
 そのドンチャッカの答えに、ギロチーヌは精神的ダメージを受けて、ガックリしたらしいが、とりあえず場の空気を変えることには成功したようだ。
 そのギロチーヌの気持ちに答えるように、話を継いだのは恍惚の燼・サジ(c13051)。
 彼は、
「僕は、今は建築家やってるからレジスタンスのアジトの見当がつけられるかも……」
 と提案し、大いにドンチャッカの興味を引いたのだ。
 レジスタンスのアジトの場所が判明すれば、今までとは違った作戦展開が出来るのだから。
「もし、目処がついたら必ず連絡をして頂きたい」
 そう頼まれたサジは気まずそうに、寝癖の髪をひとつかみ掴んで弄んだ。
 続いて、ドンチャッカに話しかけたのは、蒼炎月花・カレン(c03490)。
 カレンは、自分がアクスヘイム騎士団に所属していたと説明し、アクスヘイムを3ヶ月前に襲った大事件について説明をしようとした。
 この事件の残党がエルフヘイムに逃げ込んでいる可能性もあるので、その警戒も必要だろうと提言したのだ。
 だが、こちらはサジの提案ほどにはドンチャッカの心を動かさなかったようだ。
「まずは、目の前のレジスタンス問題の解決に当たるのが、騎士団の本分だからな。それが落ち着いたらそちらの対処にも手がまわるだろう」
 その答えに、カレンは少し失望したが、そもそも、そういう仕事を行うのは都市警備隊であって騎士団では無いのだと思い返し、不承不承納得することにした。
 このカレンへのドンチャッカの返答を聞き、ならばと、声をあげたのは青剣・スケード(c12673)だった。
「レジスタンス問題の解決なのですが、現状の問題点は、ハーフエルフを処刑する事にあると思います。もし、国外退去で対応できるのならば、レジスタンスとの交渉もありえるのでは?」
 その意見は、一見筋が通っているように見えたが、ドンチャッカはかなり渋い表情で、スケードを見返して答えた。
「それは、魅力的な提案に思えるが、それでは納得しない方も多くいる。現状では、受け入れられないと言わざるを得ないだろう」
 納得しない方とは誰の事なのか、スケードがそれを問いただそうとした時、ドンチャッカを呼び出す男の声が、響いた。

「ドンチャッカ総帥! こんな所で油を売っていたのですか。受付が混乱しているからと聞いてきてみれば……」
 それは、生真面目そうなエルフの男性。
 眼鏡の奥には理知的な光はあるが、それ以上に、神経質そうなマユがピクピクしている。
「試験の受験者の方達でさえ、お手伝いを申し出てくれているというのに、総帥が邪魔をしているとは何事です!」
 そのエルフの男性の言葉に、ドンチャッカはすまなさそうに手を合わせると、小声でエンドブレイカー達に別れを告げ、駆け足でその男の方へと駆け寄っていった。
「すまないサックス。お前に任せておけば現場は大丈夫だと信じていたのだが、邪魔であったのならば謝ろう。すまなかった」
 総帥に謝られたエルフの男、サックスは、しょうがないなぁもうという表情を作ると、ドンチャッカに行って良しと身振りで示し、スケード達の方を向き直った。
「うちの総帥が迷惑をかけて申し訳ありませんでした。受付をすませていない方は、すぐに受付をすませるようにお願いいたします。受付をすませた方は、実技試験が始まっていますので、案内に従って試験会場に移動して下さい。時間が押していますので、申し訳ありませんが、巻きでお願いします」
 そう言うとサックスは、係の者に指示を出して、エンドブレイカー達の誘導に当たらせた。
 そう、まだ、試験は始まったばかりなのだから。

●実技試験第1部
「実技試験はこちらで行っています。試験を受ける方はこちらへ」
 エルフの係官の誘導に従い、入団者達は木人形が用意された広場に案内された。
 自分が騎士になるときも、こんな感じだったかと、シールドスピアの城塞騎士・アンセ(c17182)は思う。一度にこんなに多くの者が集まるのは、特別なことでもないかぎりないだろうが。
「こういうことに慣れているとはいえ……少々緊張するなぁ」
 そう呟いて、アンセはシールドスピアを構えた。
(「この大剣で、俺は大切な人達を護るんだ」)
 大剣の城塞騎士・ラヴェイン(c03052)は、握っていた柄に力を込める。
「今までの成果を見せてやらないとな!」
 その一振りに精一杯の力を込めて。
(「あまり深く考えなくていいのだろうけれど……」)
 氷結晶の輪舞曲・フィオナ(c01645)は、サンダーボルトやアイスブラストで、人形を次々と打ち壊して見せた。
「おじさん、アローレインが得意なんだよ」
 並べられた人形相手にギ・ア(c01635)は、アローレインを見せ付けた。天から降り注いだ矢は全て、人形を貫いている。
「いきます……」
 高速の抜刀。しかし、納刀はスローモーションを見るかのようにゆっくりで。
 仕込み杖の群竜士・セレンディ(c05708)の放った居合い斬りは、人形を真っ二つにした。
「騎士といえば刀なのでしょうが」
 廃墟メルヘン・アマネ(c00714)が披露したのは、鞭とトンファーの合わせ技。
 鞭で人形を叩いた後、すばやく腿のホルスターからトンファーを引き出し、そのまま殴りつけた。
「いくわよ!」
 魔鍵のデモニスタ・アイシア(c00666)は、正確に木人形へと、レギオスブレイドを当てていく。
「うぉし! 行くぜ!!」
 パワーブーストした冬の峰の炎・バラク(c11434)は。
「どりゃどりゃどりゃどりゃ! ぬぉりゃ! うぉし! ラストっ!!!」
 ワイルドスイングで5体並んだ人形をガンガン倒し、残り1体をビーストクラッシュで切り裂いた。
「うーし、ま、ざっとこんなもんだね」
 パワーブーストで自身の力を高めると、閃光の・エクレール(c02687)は、自らの金髪でサードアームを生み出し、ビーストクラッシュを解き放つ。その上で、ドラゴンブレスで更に自らの力をアピール。
「インパクトはあったわよね?」
 試験官の驚く顔にエクレールは笑みを浮かべた。
「木人形を数体置いてもらえるか?」
 ある程度距離を取った白銀の射手・ラーファガ(c04886)は、普通に弓で射撃した後、アローレインを放ち、最後にブレイズアローで木人形を打ち貫いた。
「これで分かったろうか?」
 少し心配そうな表情を浮かべてはいるものの、充分にその力を試験官に示した。
「スノゥの実力はこういうことができるくらいだよ♪」
 大地を翔る鋼鉄の戦乙女・スノゥホワイト(c01692)は、ハイドウェポンを使い、自らの武器を壊すことなく四つに折り曲げた。
「なんなら剣技も試してみる?」
 しっかりとその技も見せつけて。
「はぁぁー!!」
 掛け声と共に、鉄壁の番犬・リィナ(c01845)は、自前の大剣で大岩斬を放つ。
 人形を一刀両断した後、リィナは。
「まだまだ、未熟でして。膂力しか能が無いので、これくらいの事しかまだできませんが」
 と謙遜する。
「よろしくお願いします♪」
 密林の守り手・コルヌコピア(c14689)は、元気良く挨拶。愛用のシールドスピアを使って。
「ええいっ!」
 見事な得意技、疾風突きを見せた。
「行きましょう、ベティ!」
 ハニーフィンチ・アレンカレン(c03179)が、ベティと呼んだのは、星霊バルカン。アレンカレンの放ったベティは、目の前にあった人形をことごとく焼き払っていった。
「木人形じゃあ回復できないわね、アル」
 星霊スピカの力を出せないのが少し残念なようだ。
「よし、いくぜ」
 トンファーの群竜士・クロウ(c01761)にとって、この実技が本番であった。トンファーコンボで人形にダメージを与えていき、最後にはとっておき。
「喰らえ! トンファー竜撃拳!!」
 渾身の力を込めたその技が、人形を粉砕した。
「私の力の及ぶ限り、精一杯やらせてもらうことにするよ。フルートとの約束もあるしね」
 小さく呟いて、狩人・セシル(c07401)は、自ら移動しながら、弓で人形を撃ち貫いた。
 並の剣の腕を持つ軋む雑音・イツカ(c00567)は、失敗しないことを念頭に置きながら、その技を見せていく。
 最後にイツカがこっそり告げた言葉に、試験官はぎょっとした。
「髪にいい料理も得意ですよ」
 剣闘竜士・ゼロ(c08351)は、華麗な剣捌きでディザームアタックで、人形に付けられた武器を落とす。
「私は兵士ながらも、エルフ達を無力化させることも出来ます。騎士団で揉め事がもし発生したなら、私を呼んでもらっても構いませんよ?」
 どっかんどっかんと、アンティークドール・デライラ(c11511)は、並べられた人形を壊していく。
「ねえねえ、いくつ倒したら合格? もっといっぱい倒したほうがいい?」
 その言葉に試験官は苦笑を浮かべて、デライラを次の試験会場へと促した。
「年齢で、舐められるのは……仕方ない、ですが……実技、見てからに、してくださいね……?」
 満ちることなき・シェーラ(c01095)が見せたのは、百烈槍からのビーストクラッシュのコンビネーション。一瞬で人形は、ぼろぼろになってしまった。
「木偶に向かって攻撃して、本当に実力がわかりますか? まあ、いいですけど……」
 そうくすりと笑みを浮かべ、紅涙の微笑・ケルヴィン(c06528)は大鎌を人形に向けて構える。
「さて、遠距離攻撃と近距離攻撃、どちらから見ますか?」
 そういって放たれた技は試験官が唸るほど凄まじいものであった。
 とりあえずと、破砕する銀の閃光・リリア(c01575)は、大岩斬で力任せにぶった切る。次にワイルドスイングを。
「あれ? 技じゃなくて力……うーん、ま、いっか」

 静かだった。
 構えを取ったまま微動だにしない。
 と、カッと悠久の騎士・ショウ(c00212)が目を見開き、太刀を引き抜いた。
 かちん。
 鞘に太刀を収めた瞬間、人形にぴしっといくつもの軌跡が走り。
 すとんすとんすとん……。
 人形は見事な切れ味で崩れ落ちた。
(「ドンチャッカ様にいて頂くためにも、騎士団の士気回復の為に」)
 途切れぬ路の先へ・リーフィルーナ(c04055)は、後方支援を主とした動きを試験官に披露した。
「微力ながら尽力させていただきますわ」
 ナイトランスを掲げて、銀の戦乙女・ヴァルトラウテ(c16152)は、ゲットセットを発動し、そのまま全力でランスインパクトを人形にぶつける。
「この程度でよいだろうか?」
 哀れ人形は打ち砕かれてしまった。
「バルカンちゃん、ヒュプノスちゃん、張り切っていくよー!」
 陽だまりの中の笑顔・リィナ(c13285)は、星霊2体を呼び出した後、自らもマジックミサイルで攻撃、人形をその一斉攻撃でもって打ち砕いた。
 トリック・アーツ(c15136)は、木人形を相手に物足りなさを感じながら、しっかりと最後に人形の胸部を押し付けるように鎮圧する。
「相手を傷つけないように捕らえるのは、得意ですから」
 ふうっと息を吐くと、真銀のアリア・リセリル(c07186)は、至近距離での剣捌きにハルバードでの状況と距離に応じた戦闘法を披露。
 最後には凛とした姿勢に戻ると、ぺこりと礼儀正しく試験官へとお辞儀した。

 実技を見せるだけが試験ではない。
「私の得物は殺傷能力で劣る分色々使えます。捕らえるだけでなく、その後の尋問なんかにも。ちなみに嘘を見破ったり、口を割らせる事には自信があります。もちろん尋問で得物を使うのは最終手段ですが……」
 鞭を手に、不撓の藍鍔・カルディア(c05263)のアピールは、どうやら試験官に受け入れられたようだ。
「はーい、セレネさんは救護班に立候補です」
 とは言っても、実技試験は行わなくてはならなくて。
 雪月花・セレネ(c08473)は試験で怪我した者を見つけると、すぐさま桜花演舞で応急処置を行い、その力を示したのであった。
「俺ならここで道幅を狭くして、だな……」
 人形をバルバの集団戦に見立て、周りの状況、地形を利用した村の防衛方法を語るのは、虎熊童子・マクシミリアン(c00495)。もちろん、自身の弓の腕を見せることも忘れてはいない。

 蒼き狼・ビアンカ(c02421)もまた、手加減せずに本気で、人形にワイルドスイングと大岩斬を放つ。
「安物だねぇ……もっと頑丈なの導入した方が良いんじゃないかい?」
 と悪びれずに壊れた人形を見ながら、そう告げた。
 愛用のハンマーで見事な立ち回りを見せるのは、黒炎の獣・チトセ(c01309)。
「自分の力量を示すには丁度良い筈だ」
 その出来に満足げな笑みを見せていた。
 稲妻の闘気をこめた太刀が、人形を一刀両断にした。
「動かぬ的じゃあ、些か物足りんが……」
 黒銀の鬼士・マキナ(c03181)は、そう呟いた。
 狂嵐獅子・ミハエル(c10562)は、見事な技を披露した後、辺りを見渡した。ドンチャッカの姿を探すもそこにはなく。
「ドンチャッカの技量を試してみたかったのだが……」
 どうやら、タイミングが悪く、思っていたことが行えなかったようだ。

「ドンチャッカ、ドンドンチャッカ、How! イビル、悪は、ジャッジメント! ジャッジ! ジャッジ! ウィー、アー! ウィー、アー!」
 自作(?)の騎士団ソング披露して、ジャッジメントクロスツー・トリニティ(c04578)もまた、大技を繰り出す。全てはそう、週休二日のために!
 黒鉄兵団の紋章を使い、棍の魔想紋章士・フレデリーク(c16421)は人形を攻撃。
「この技は仲間の援護にも良いんだ」
 更にクイーンランサーの紋章、掃撃棍で接近戦もできることも試験官へと示す。
 黒鳳・ヴァレリー(c04916)は、一気に距離を詰めたかと思うと、目にも止まらぬ連撃を見せた。その攻撃は確実に急所を当てている。
「守るには、力あってこそや」
 副団長の下へ行けると良いのだが、果たして……。
 実年齢を知ってか、心配そうに見つめる試験官を前に迅竜・エキリ(c02680)は、威力を重視し、渾身の力を込めたソニックウェーブを人形に打ちつける。
「どうだ、ワシの威力は?」
 と、誇らしげにニッと笑みを見せた。
 駆け巡る青空・ウィスラム(c14633)もまた、ディザームアタックで人形の武装を解除した。
「殺さないで済むのなら、それに越した事はないですよね」
 そう、小さく呟いて。

「実技は少し真面目にやらねえとな」
 流焔の黒騎士・ブレイズ(c14643)はそう呟くと、ディフェンスブレイドからソードラッシュのコンビネーション攻撃を見せ、ついでにとディザームアタックで人形の武器を無力化した。
 人形を相手に、白獣剛姫・ユマ(c01370)はビーストクラッシュを思いっきり放つ。人形はあわれ、木っ端微塵に。
(「やば……やりすぎた!?」)
 ユマは思わず心の中で呟いた。
 水琉・ファルク(c08807)は、木人形を前に困ったかのように口を開いた。
「俺の剣は、相手の力が強ければ強いほど、威力を発揮する剣だ。こんな木を切る位じゃ力は示せないな」
 試験官の協議の結果、この後に控えている実技で再度見せてもらうということで落ち着いた。
 天高く飛び上がり、大剣を突き立てたトロピカルハイテンション・ラシェル(c07706)は、剣を引き抜くと同時にパワースマッシュを放ち、その反動で再度、空へ。
 そのまま、人形に馬乗りになる。
「これでフィニッシュじゃ!」
 ラシェルのロデオグラップルで人形は無残な姿に成り果てた。
 諜報や根回しなど裏方の業務を希望する、黒衣の冬花・ユエル(c05847)は、無邪気な素振りで、だけど情け容赦なく大鎌で、人形を切り裂いた。
「襲われても自衛はできるよ?」
 傭兵騎士・アイオス(c09182)もまた、華麗な技を披露。
 上段から左右袈裟切りに勢いよく大剣を落としてはぴたり、下段から鋭く斬り上げてはぴたり、身体を回転させての横薙ぎでぴたりと、大剣の重量を感じさせない剣撃を見せたのだ。
 それは試験官を圧倒させるほどに。

 直立したまま放たれる、目に止まらぬ一閃。
 くるりと背を向ける魁刃・ナガミ(c08545)の後ろで、少し遅れて人形の胴がずれ落ちた。
「得意分野は後方支援だな」
 サジタリウスの矢・オリアス(c16130)はそういって、木人形に向かって、クイーンランサーの紋章を放つ。
「希望を言っていいのなら、弓兵の部隊に志願したいな」
 そう自らの希望を言うのも忘れずに。
 白銀の野良猫・シディアン(c12196)は、この試験場に手合わせしたかった相手がいないことを残念に思いながら、人形相手に自らの技を示した。
(「処刑しなければいけないという、その理由も知らずに、ただ踊らされるわけにはいかない」)
 その熱い思いを胸に秘めて。
 試験中、次々と人形を打ち砕いていく中、雇われ騎士・フリーデン(c01922)は、違った素振りを見せていた。
 人で言う急所に当たる部位を避けて、攻撃を打ち込んでいる。
「レジスタンスの命は奪わない……其れで問題は無いな?」
 それはフリーデンの意思をも表すものでもあった。
 月渡り・レン(c06967)は、見事な居合い斬りを見せるものの、試験官の反応がいまいちなよう。
「ふむ、やはり出し惜しみしない方が得策か」
 崩れ落ちる寸前の人形相手に、トリニティスラッシュ、サンダーボルトを織り交ぜ、磨いてきた技や身軽さをアピールしていった。
 斧の城塞騎士・セッサール(c16219)は、片手で巨大な斧を操り。
「はっ!!」
 気合と共にアクスディバイドで、人形を縦に一刀両断した。
 片手で優雅な舞いのように大鎌を回すと、大鎌の狩猟者・フレイア(c13782)は、すれ違いざまに人形の首を華麗にはねた。
「綺麗でしょ? それに切れ味も抜群なのよ」
 傭兵・クロミア(c04585)も、いつになく力の入ったワイルドスイングで、人形を数体まとめて打ち砕いた。その胸には、自らの不手際で亡くなった者の弔いも込められていて。
 力のある攻撃を人形に叩き込んで、ニコニコ店長・カルシュワル(c03189)は、くるりと試験官の方を向く。
「今はこんな格好ですが、雷の英雄と言われた父に育てられた騎士です。実力には自信がありますよ」
 と、得意の笑みを見せた。
 熾・クザン(c08024)は、瞳を閉じ、数秒動かずにいた。
 周囲の気配を探り、相手の不意を突くかのように一閃。
「こんな人形相手の試験で、実力が測れるものだろうか」
 そう言って、クザンはカチリと太刀を収めた。
 人形に向かって、アクスブーメランを放つのは、盾の城塞騎士・ミミ(c13001)。そこからしっかりと盾を構え、一気にシールドバッシュで間合いを詰める。最後は百烈槍でフィニッシュを決めた。
「よし、これなら心置きなく他の人達の戦いを見られるわね」
 満足げにミミは微笑んだ。

「それじゃ、俺は、次の採点表の回収してくるぜ」
 自分の入団試験を早々に終わらせると、事務仕事の手伝いにまわっていたエンドブ初のナイトランス使い・ジェイナス(c15904)は、実技試験の採点表の回収を行おうと申し出た。
 入団試験の希望者が騎士団の想定を大きく越える事を見越して申し出た事だが、これは試験時に限ったことでは無い。
 前線の団員が300名以上増えれば、事務官や管理官といった文官の増員も不可欠になる……それを見越しての売り込みであった。
「では、そちらはジェイナス様にお願い致しますね。面接会場の手配については、こちらですましておきますから」
 氷茨の祭祀長・マウザー(c11248)もジェイナスと同様、文官希望で試験を受けていた。
 まぁ、アクスヘイムの商店街の組合長でもある彼女は、これを期に、エルフヘイム騎士団への販路拡大も視野に入れてもいるようであるが。
「私の担当分の集計は終わりましたよ。他に何か手伝うことはありませんか?」
 黙々と集計作業をしていた歪曲詐欺師・マルシャンス(c05246)は、手早く自分の仕事を終わらせると、他の人の仕事も引き受ける。
 やっていることは雑務ではあるが、その雑務を手際よく行う能力を見せることで、今後の騎士団での立場を得やすくなるかもしれない。
「失礼します。追加の名簿を持ってきました」
「仕分けも終わらせておいたから、そのままファイリングできるはずだよ」
 作成した試験参加者の名簿を持って、礼儀正しく入ってきたのは、大剣の城塞騎士・カイン(c05523)と元城塞騎士・ジェイデン(c08031)。
 参加者の整理と名簿作成の手伝いを買って出たカインが作成した名簿を、ジェイデンが、試験参加順に並べて整理したようだ。
「まだまだ、仕事は山済みですが、頑張りましょう。ここが僕達の腕の見せ所ですからね」
 早速、仕分けた名簿のファイリングを始めながら、カインは、事務仕事に追われる仲間達を鼓舞するようにそう言った。
 300名以上の騎士団入団試験が予定通りに終了するかは、彼らの活躍にかかっているのかもしれなかった。

●実技試験第2部
 一人で力を見せる実技試験がやっとひと段落。休憩を挟んで、今度は複数組になって行われる実技試験が始まった。ペアまたはそれ以上で実力を見せたいという要望が多かったため、新たに時間が設けられたのだ。
「ルナ様!」
 玲瓏の月・エルス(c00100)は、後方からレギオスブレイドを発動させる。放たれる邪剣の群れと共に走り込むのは、紫ノ氷騎士・ルナ(c01436)。敵に見立てた木人形に接近し。
「これで止めだ!」
 氷結剣で人形を凍結させた。
 手合わせ前にしっかりと礼をするのは、滄海の大剣士・イェルシュナ(c00486)と風の鳥に戯れる猫・イルーシェン(c01912)。
「ルーシ……折角の機会だから、加減はしない」
「俺も加減しないでいくよ、ヘキ」
 二人は視線を交わすと、イェルシュナは拳で、イルーシェンは足で組み手を始める。互いに攻撃を受け流すようにしているが、その技はかなりのもの。実技を終えた二人は、最後もきちんと礼をしていった。
 静かに終わるのもあれば、賑やか……いや、激しいものもある。
「材料の切り方が中途半端なんですよ。あれじゃ小さい子が食べにくいでしょ!」
「アリアちゃんこそ、調味料入れ忘れるの、勘弁してくれないっすかねぇ!」
 周りに配慮しつつ戦っていたはずの幻燈光・アリア(c00724)は、八色を導きし竜・ステラ(c04387)との組手がいつしか口喧嘩に。最後にドンチャッカが呼ばれるような騒ぎになったが、試験官や周りの受験者の手によって抑えられた。
 アクスヘイムの小隊長であることを伏せて、この試験に参加したのは、薔薇の貴公子・アロルオン(c00851)。十字剣を使った攻撃で、相棒の暁の騎士・アゼル(c08246)との演舞を行っている。
「やっぱり、アリーは派手だね」
 相手に聞こえないようにアゼルはそう呟くと、演舞に集中するのであった。

 実技を終えた流浪の番犬・ギア(c06073)は、忘れぬうちにと試験官の方へ。
「俺と知人、両方受かったらの話なんだが……」
 と、言い終える前に。
「ギアさん……でしたね。そのことなら、既に聞いていますよ」
「へっ!?」
 気配を感じ、ギアが振り向いた先にいたのは。
「気づくのが遅いのじゃよ」
 一足先に実技を終えた、緋色の魔女・イツワ(c01054)の姿があった。

 実技試験はまだ続いていた。
 至天狼・ユスト(c02236)が、打撃・斬撃・掴み・髪の毛を駆使した活殺自在の連撃を見せると、銀陽狐・シキヤ(c01155)は、時折見せる隙を見逃さずに攻め込んでいく。荒々しくも流れるような動きに、試験管の目が奪われる程。
 一方、こちらは4人での組手。白い羽根・ニーナ(c01336)と砂塵に翳む静焔・ジゼル(c08357)。黄昏の叢雲・エスティール(c02815)と黎明の氷花・レオノーレ(c04664)とで二人ずつのパーティで実技を見せる。
「ジゼルさん、お先に行きます!」
「了解、援護します」
 ニーナがスカイキャリバーでレオノーレを狙って攻撃、続くジゼルもナイフ投げで援護。
「狙ってきたか……」
 思わず苦笑するも、レオノーレも黙っていない。
「ノア!!」
 エスティールが気咬弾でニーナを目くらますと、レオノーレが挟み撃ちの電刃衝を放つ。見事な連携プレイに見ていた者達を驚かせるほど。
「ナツミ団長、絶対合格できるようがんばっていこうね!」
 緑風の守護騎士・ステラ(c01833)の元気いっぱいな言葉に。
「もちろん! ステラちゃんと一緒に頑張るわね」
 頷く、虹の橋の護り手・ナツミ(c04761)。二人が見せた攻守を互いに切り替えながらの演武は素晴らしいものであった。
(「……しかし、何故、私の主が隣で一緒に入団試験を受けてるんだ……? やれやれ……まぁそれもアリ、か」)
 絢獄・カルディノ(c02329)は、隣にいる自分の主、黒鬼・ダリス(c02328)の姿に思わず苦笑を見せる。
「共に受かると良いな、ダリス?」
「うむ……」
 カルディノの言葉に笑みを見せて、ダリスは自分の相棒も併せ、しっかりとアピールしたのであった。
「未熟ながら騎士として、剣士としての技を披露させていただきます」
 そう告げて、きのこ法師・カーク(c00056)と組手を行うのは、銀月・アルジェン(c02363)。カークのシャドウロックを素直に受けつつ、豪快なワイルドスイングを見せた。
 事前に打ち合わせした通り、もう少しで当たるギリギリの演舞を見せるのは、オブスタクル・ダスティン(c01212)と狂骨の・ヴェダ(c02723)。
 ヴェダが挑発するかのように小突いてくるのを見て。
(「……このままで終わらせてしまうのも、面白くないですし、挑発に乗ってみましょうか」)
 ダスティンの攻撃にヴェダも調子に乗って、激しい演舞へと切り替えていく。
「アンタの役に立てるかどうか、よく見てな。……いくぞ! シャラ!!」
「ええ、二人のコンビネーションが如何にいいか、見せてあげるわ!」
 緋霧・レイル(c03187)が、木人形相手に十字剣から剛鬼投げで攻撃すると、フェアリア・シアラグナ(c03011)が、更にソニックウェーブを叩き込んだ。

 次に少し趣の変わった実技を見せるのは、この三人。
「さぁ〜派手にいきますよ〜!」
 蝋燭の正しい消し方・ニャルラ(c08107)が、派手にデモンフレイムを放てば。
「あは、近くで見ると綺麗なお目々してやすね」
 大鎌の群竜士・グラウコス(c08487)は、その攻撃を受けつつ、ニャルラの体を大鎌で引っ掛ける。ぼろぼろになった二人を最後に癒すのは、この人。
「我が得意とする事は他者の治癒! 各々方、とくと御覧あれ!」
 襲撃者・ヘルマン(c03206)が、自分の気力が続く限り、癒しの拳で癒した。いろんな意味で試験官の視線は釘付けだ。
 晨明・クオリア(c03232)と太刀影・マキシム(c08141)は、攻守に分かれて組手を見せる。マキシムはロデオグラップルを中心とした激しい攻撃、対するクオリアは小回りの利くシールドバッシュで守りをアピールした。
 突貫鉄杖の紋章士・フィード(c04728)は、反転・クラウス(c12274)を指名し、演舞を見せる。
「しっかし……普段、隣で戦ってる奴とやりあうってのも、新鮮で楽しいなぁ、おい」
「そうかもなっ!」
 クラウスの繰り出す攻撃を受け止めながら、フィードはニッと余裕の笑みを見せた。
 次に行われたのは、木人形相手の演舞。
 アラバルデロ・フェルナンド(c05315)が一気に踏み込んで、ディフェンスブレイドを披露。
「今だ、シルヴィオ!」
 人形の死角から走りこんできたチェルヴィエーロ・シルヴィオ(c05317)は、フェルナンドの肩を借りて、大ジャンプ! そこからスカイキャリバーで、人形を一気に粉砕!
「さあ、どんなもんだ?」
「これがオレ達の力だ!」
 連携技の出来に、二人は満足げな笑みを浮かべたのであった。
 降妖宝杖の群竜士・ラグレス(c06530)と木漏れ日のタピール・ポウ(c07468)が見せるのは、大鎌と剣のみで見せる演舞。最後に用意された木人形へと、ポウは氷結剣を放ち、その力を示すのであった。
 続いて見せるのは、愛らしい双子の少年二人、明星の射手・レンマーツォ(c07929)と宵星の剣士・ユエ(c13620)の演舞だ。
「せいっや!」
 と、レンマーツォがここぞとばかりに一本釣りを見せると。
「駆けよ、雷!」
 ユエが雷刃衝を見せる。その演舞は、幼くも頼もしさを感じさせるのに充分な威力を持っていた。
 紫水晶の欠片・ティノクス(c08490)とフルフラッター・コットン(c16776)も同じく兄妹での参加だ。周囲に被害を出さないよう気をつけながらも、兄のティノクスは竜撃拳を、妹のコットンはランスインパクトを披露していた。
 雲耀一閃・バルフォーン(c16633)相手に、見事な連続技を見せ付けたのは、極光刹那・アウロラ(c16631)。演舞が終わった後、二人は次の試験会場へと向かう。
「……正直、戒律が変に厳しい気がするんだよな。パートナーとハイエルフ・ダークエルフの婚姻が禁止、と両方揃っているのが、ややこしくしている気がする」
「それもそうだが、ハーフエルフがエルフヘイムを滅ぼす。このエルフへイムというのはエルフヘイムの政治体制の事を示すのかもしれない……という可能性はないか? あくまで可能性だがな」
 そのアウロラの言葉に頷くかのようにバルフォーンは呟いた。
「……まるで、隠れてハーフエルフを生み出せ、と言わんばかり……というのは穿ち過ぎかな」
 この試験を通じて、バルフォーンは、何を知るのか?

「これは、なかなか見応えのある試験だな。実践慣れしているし動きに無駄がない。これならば、即戦力が期待できるだろう。全く、どこにこれだけの逸材が隠れていたのか」
 実技試験会場を見学に来たドンチャッカは、バルフォーンとアウロラの演舞をみて、満足げに頷いていた。
 だが、見ているだけで満足するドンチャッカでは無かった。
「さすがに、これだけの演舞を見せられれば、戦士としての血が騒がざるを得ないな。どれ、軽く、相手をしてもらえないかな?」
 ぽきぽきと腕を鳴らしながら、ドンチャッカがそう言うと、まっていましたとばかりに、エンドブレイカー達が名乗りでたのだった。

●ドンチャッカへの挑戦
 実技の見回りをしていた騎士団総帥ドンチャッカが口にした言葉。
「どれ、軽く、相手をしてもらえないかな?」
 それに反応したのは40名近くのエンドブレイカー達だった。

「って事で、俺と手合わせしてよ!」
 最初に名乗り出たのは、ひよこ・ナハト(c00101)。
 星霊ヒュプノスで牽制した後、一気に間合いを詰めて、大岩斬の一撃……をたたき込もうとしたら、
「隙ありだ」
 牽制をものともせずに踏み込んできたドンチャッカにあっさり一本取られてしまった。
「これから槍を預ける事となる貴殿の実力、この身を持って知りたく思った次第。宜しければ一手、お手合わせ願いたい」
 次に名乗り出たのは、白亜の城壁・サーヴァイン(c00188)。
 折りたたんでいた愛用のハルバード、ディア・アストリアを展開して構えたサーヴァインは、ディフェンスブレイドで防御を固めつつ踏み込み、そのまま、流れるように鎧を穿つ四連突きを浴びせかける。
「うむ、合格だ」
 ドンチャッカは、その攻撃を受けきった後、クリーンヒットでサーヴァインを吹き飛ばしてそう言った。
「こちらこそだ。貴殿は槍を預ける相手として申し分ない」
「私は孤児だった頃から騎士になる事が夢だったんだ。だから……ドンチャッカさんに挑戦してみたい!」
 次に名乗り出たのは、淡雪・エニス(c00262)。
 ディフェンスブレイドで防御を固めた事が奏効してドンチャッカの一撃をはねのけたが、次の一撃を受け止める事はできなかった。
 だが、エニスの意志はドンチャッカに通じていたようだ。
「騎士の本分は守りの戦い……そういう事だな。その心意気は受け取ったぞ」
「御指南、ありがとうございました!」
 エニスのお礼の言葉に続いて名乗りでたのは、獅子星・ウセル(c00535)。
「貴方が自分の腕を預けるに足る人物か知りたい」
 これに対して、ドンチャッカは多少思案の顔を見せた。そして、
「本当は、このくらいで切り上げる予定だったのだが……。まぁあれだ。文官希望の受験者達が、良く働いていてくれているので大丈夫だろう。よし、来い!」
 普通に挑戦を受けたのだった。
 ウセルはドンチャッカの実力を試そうと、初撃に全てを込めて打ち掛かったが、ドンチャッカはその攻撃を受けきり、返す刀でウセルを打ち倒した。
(「これは、格が違うな」)
 そう感じ入ったウセルは、改めて、ドンチャッカへの協力を決めたのだった。
「それじゃ、俺の実力も見てまらおうかな?」
 人形相手じゃ物足りないと感じていた世界を駆け巡る萬屋・ジョバンニ(c00896)も、ドンチャッカに挑んだ。
 結果は、
「現騎士団の標準を充分に超えている」
 という評価だったようだ。
 続く、蒼のカプリス・アイザック(c01072)も、ドンチャッカに挑み……、
(「総帥やってるからには強ぇんだろうな〜。と思っていたが、本当に強かったぜ」)
 その実力に舌を巻く事になった。
 なんだただのアフロか・キヨカズール(c01091)は、バトルトークを使用して戦いを挑んだが、特に何ら得るところは無かったようだ。
 バトルトークは剣を交わした相手と分かり合う事ができる……という、夕陽が良く似合う能力なので、細かな情報収集にはあまり有効では無いようだ。
 順番は絶対に3番目が良かったという、影姫・アレクサンドラ(c01258)は、8番目にドンチャッカに挑む事になった。
(「でも、3番目よりも8番目の方が消耗しているから、チャンスですよね」)
 と考えたアレクサンドラは、大剣の二刀流で挑み華麗なワイルドスイングを披露したが、試験である事から、ドンチャッカを倒す……という事にはならなかった。
 実力を見る試験であるのだから、双方にダメージなども殆ど残らないので、消耗もあまり無いらしい。
「華麗な攻撃だったが、もう少し余裕があったほうがより良いだろう」
 ドンチャッカの評に、アレクサンドラは渋々頷いた。
 続いて試験場に登ったのは血に染まったリボンの筋肉女・ロリー(c01332)。
 可愛い女の子の挑戦が続いたので、ドンチャッカも少し嬉しそうだ。
 だが、ロリーのアクスブーメランは、必中の効果によりドンチャッカの胴体に見事命中した。
「油断していたわけでは決して無い。これは、実力の一撃だ」
 ドンチャッカの評価に、ロリーは、ふふんと得意げに笑って見せたのだった。
 続けて、気を引き締めた表情のドンチャッカに挑んだのは蒼き蠍火・ティファリス(c01468)。
「騎士道とは、忠誠、公正、勇気、武勇、慈愛、寛容、礼節、奉仕が美徳とされ、何一つ欠けてはならない。まずは武勇について拝見させて頂く」
 ティファリス・ジャルジャの挑戦を、ドンチャッカは受けきると、
「少し考えが堅苦しいのでは無いかな? 騎士だからといって、そうそう美徳ばかり持っているわけにはいきはしないだろう」
 と、ディファリスの考えに疑問を投げかける。
 騎士団には様々な出自のものがいるし、都市警備隊から編入されたものも多い。
 そのため、厳密な騎士道を追求する組織とは違うものなのかもしれない。
 不均等な二律背反・ユミナ(c01686)は、愛用の大剣『Durindana』を軽々と振り回した後、ドンチャッカに手渡した。
「まずは、この剣を振ってみて貰えるかしら?」
 その長大な大剣は重量もかなりのもので、それを振るった自分の力を見て欲しいというのがユミナの申し出だった。
 ドンチャッカは、その意図を汲んで、軽々と大剣を振りまわして演舞を見せると、
「なるほど、先程の演舞を見れば実力を見るに十分という事だな」
 と、言ってユミナに武器を返す。
 それ以上の試験は、特に必要無いだろう。
 黒鋼・エドガー(c01811)は、正面から堂々と力のぶつけあいをしてみせたが、地力の違いで押し負けた。
 それでも、自分の実力をドンチャッカに見せる事ができたので、それなりに満足したようだ。
 続く、活人拳・ウァッド(c02372)は、ドンチャッカと戦う為に早めに会場入りしただけあって、やる気は十分だった。
 やる気がありすぎて、副団長補佐などに立候補するつもりだったが、そういう雰囲気では無いので今回は諦めたようだった。
 鈍骨喰・サンディ(c02629)は、対人恐怖症の気があるということで、バトルトークで言葉を伝えようとしてみたが、バトルトークで細かい内容を伝えることはできないので、あまりうまくはいかなかったようだ。
 それでも、サードアームも含めた手数の多さと、技を使いこなす器用さは評価され、ドンチャッカからの評価はまずまずだったらしい。
 彷徨う刃・リヴァル(c02653)も、「気合一閃、電磁抜刀斬!」として放たれた居合い斬りの切れ味は鋭く、その力を認められたようだ。
 居合い斬りといえば、
「神速の抜刀をお見せ致しましょう……」
 という言葉と共に放たれた追走の風牙・リン(c02865)の一撃も素晴らしく、その武技は、ドンチャッカだけでなく、周囲のエンドブレイカー達も唸らせたようだ。
 玄人・シンヤ(c03028)は、名乗りをあげた後、
「我が魂の籠りし拳、しかと感じるが良い!!」
 と、全ての力を込めたドリルクローを披露する。
 対するドンチャッカも、
「礼には礼、全力には全力」
 とばかりに、獅子のオーラを立ち上らせると、それを衝撃波としてシンヤに打ち付けた。
(「くっ、この威力……魂に響く……」)
 シンヤは、その打ち合いに感謝を込めて一礼するのだった。
 遥碧・セレスト(c03512)は、ドンチャッカとの戦いで黒鉄兵団の紋章とコルリ施療院の紋章を披露しつつ、紋章学を活かした働きがしたい旨を伝えている。
「ドンチャッカ、一手ご指導願いたい」
 そう言って殴りかかったのは星月夜の・ベルカント(c03591)。
 ドンチャッカは女性だからといって差別するような事は全く無いので挑発はできなかったが、それはそれで信頼ができるとベルカントは納得したようだ。
 少し残念だったのは大剣の城塞騎士・アダルバート(c03696)。
 渾身のワイルドスイングが、大振りになってしまい、全く命中しなかったのだ。
 相手の動きを見ながら合わせようとしたのが災いしたのかもしれない。
「間合いとタイミングが甘かったようだが、悪く無い一撃だ」
 それでも、ドンチャッカの評価は低くなかったようだが。
(「朝、並んだ時はダメかと諦めかけたのですけどね」)
 忠犬・ハーシィ(c04033)は、自分の番まで回ってきた幸運に感謝しつつ、試験場に立った。
 愛用の武器はアックスソード。
「アキテーヌのハーシィ! 護国の志しに感じ入り入団を希望する!」
 そう名乗りをあげたハーシィは、ディフェンスブレイドとディザームアタックを織り交ぜた騎士らしい戦技を披露したようだ。
 ドンチャッカに挑戦した受験者の中でも、見た目のインパクトが大きかったのは鬼綱・ライデン(c04776)である。
 ドンチャッカに力比べを申し出て互いに組み合った状態から、全身の力でドンチャッカを持ち上げようと力を振り絞る。
 と思いきや、囁き戦術で動揺を誘う作戦にでた為、あっというまに投げ飛ばされてしまった。
「力比べだけならば良い戦いになったろうに残念だ」
 ……どうやら、ドンチャッカにも残念がられてしまったようだ。
「騎士団って柄じゃねえけど、健康とやる気なら自信があるぜ!」
 とばかりに、ドンチャッカに挑戦したのは、やあこしか愛せま・センロ(c05314)。
 ドンチャッカの覚えを目出度くして役職をもらいたい……などとは毛ほども思っていない好青年だ。
 その心根と同じくまっすぐな攻撃は、とてもすがすがしい印象をドンチャッカにも与えたらしい。
 逆に、
「ドンチャッカに勝ったら役職もらえるのか?」
 と早合点して試験場に飛び込んだのがナイトランスの魔獣戦士・センリ(c16477)。
 過去の記憶が無いらしいが、それにしては元気いっぱいで影がない。
「まずは、ランスーインパクト!」
 ナイトランスの一撃はドンチャッカが運良くかわしたようだが、そのまっすぐな力は、騎士団に必要な技量を充分に満たしていたようだ。
「試験だからな、勝つとか勝たないとかは無いぞ」
 ドンチャッカの答えに、センリはそれは残念と明るく笑ったものだった。
 断章の騎士・イクスヴァール(c05338)は、首の紋章が無い事から、ドンチャッカがハイエルフである事を確認しつつ手合わせに挑んだ。
 ハイエルフといっても紋章のある無しだけで、種族としては同じエルフではあるのだが、気になってしまうのはしょうがない。
 イクスヴァールと反対に、ただ真っ直ぐにドンチャッカに向かったのは吟遊剣士・ソオラ(c06146)。
 ひたすら真っ直ぐに、馬鹿みたいに真っ直ぐに、その迷いのない剣は、確かに、ドンチャッカの心にも届いたようだ。
「まさに清々しい剣。だが、その真っ直ぐさが届かない場合にどう行動するか、それが本当の強さになるだろう」
 このソオラへの忠告は、ドンチャッカの実感が込められているようだった。
 次の挑戦者はある意味最も怪しい者だった。
「わが臭み、暗殺シューズの刃の先までただようぜっ!」
 と現れたのは、暗殺シューズのデモニスタ・ナナシ(c06246)。
 明らかに、会場の雰囲気にそぐわないその存在に、ドンチャッカも意表を突かれたようだ。
「俺の強烈な臭気はどうだ?」
 みたいな事を言われても、体と心を洗って出直せとしかいえないだろう。
 結局、ナナシは会場からつまみ出され試験結果も不合格と成ったようだ。
 このナナシの行動で場の空気が嫌な臭いになりかけたのを感じ取った竜滅魔獣の忘れ形見・チマキ(c06359)が、とりあえず場を繋ぎながら挑戦を名乗り出た。
「えっと、チマキ・ササノハだべぇ。こう見えて魔獣戦士で料理が得意だべぇっ! ……形はあれだからスープ系になるけど」
 見た目は、怪人のようだが、なかなかどうして空気が読めているかもしれない。
 チマキの爪から繰り出されるドリルクローは、なかなかの迫力であったが、ドンチャッカもそれをガシンと受け止めて組んずほぐれつの格闘を行った。
「なかなか、良い戦いだった」
 ドンチャッカとチマキは、そしてがっちりと握手したのだった。
 その後は、金に困って就職しに来たと言う紫電一閃・リアクト(c07610)は、
「騎士団総帥の実力というものを見てみたいのだが、ドンチャンコ?」
 と、名前を言い間違えてしまったようだ。
 が、まぁ間違いは誰にでもあるので、特に問題は全く無かったらしい。
 未完の蒼剣騎士・セルベス(c07846)は、得意のソードラッシュを繰り出した手合わせで、自分の実領をドンチャッカに計って貰おうと試みた。
 ドンチャッカの評価は、騎士団の中でも上の方だという事で、その評価にセルベスは安堵したものだった。
 セルベスの次には、小さな騎士団で働いていた事もあるながれ星・ベガ(c08028)は、ポーチの中にしまっていたハンマーを展開して、ドンチャッカに挑戦した。
 堅実なディフェンスブレイドから大技のハンマースイングへ繋げる流れはなかなか良かったという評価だったが、ハンマースイングがミスったので、ベガとしては不完全燃焼だったようだ。
 鬼獅・レオニス(c10184)の挑戦は、これまでの挑戦とは大きく違い、腕相撲勝負であった。
 腕相撲は、腕力だけで勝負が決まるものでは無い。
 心技体が揃ってこそ勝利を掴める勝負なのだ……という事で腕相撲開始。
 残念ながら、パワー負けの結果には終わったが、ドンチャッカの掌の温かさから、何かを伝えられた気がしたレオニスであった。
 一方、大剣使いとしての技を披露してドンチャッカと戦ったのは、紅蓮姫・サラ(c10601)。
 バトルトークで情報を引き出す……みたいな事はできなかったが、その大剣同士の戦いは、なかなか見応えがあったようだ。
 蝶恋花・マリベル(c11345)は、礼儀正しく堂々と名乗りを挙げてドンチャッカに挑戦した。
 そろそろ汗だくのドンチャッカであったが、日頃のストレスを発散してなのか、その汗は輝いて見える。
 その証拠に、マリベルのハルバード『デッド・ブルー』の攻撃を受け止めた、ドンチャッカの表情はとても明るかったのだ。
 少なくとも、酒場で書類仕事をしている10倍くらい。
 負けるな皆の・エィージ(c13324)も、エルフの村を守る依頼を通して、人助けのやり甲斐を感じたのだといって、ドンチャッカに挑戦。
 全身鎧のエィージの機敏な動きに、ドンチャッカも感心してくれたようで、エィージは少し嬉しい気持ちになったようだ。
 大剣の星霊術士・ラメント(c17229)も、小柄な体格に似合わぬ巨大な剣を使ってドンチャッカに挑戦。
 ワイルドスイングで軽々と大剣を振り回して見せた。
 が、大剣というよりも、戦いがはじまるまでは、やんわりとした雰囲気だったのに、戦闘に入ったら人が変わったように鋭い目つきになった事の方が印象に残ったらしい。
 そして、挑戦者の残りの人数も少なくなった頃、大鎌のデモニスタ・ピルル(c16043)が登場した。
 いきなり、
「わたくしは、古代文明クゥ王国における王族の末裔なるぞ」
 と言い出したピルルは、呆れた様子を見せたドンチャッカを殺すつもりで攻撃を繰り出した。
 それは試験の範囲を超える本気の攻撃であったので、それを見て取った弦奏卿・ハインリヒ(c02642)が、慌てて取り押さえることになった。
 どうやら、自分の出自を否定されると理性で抑えられないという事らしいが、それでは、騎士団の仕事は無理だろうということで、試験の結果は不合格になったようだ。
 ドンチャッカに助太刀の礼を言われたハインリッヒは、いずれ全都市国家の垣根を取り去って世界を繋げるという自らの夢を語り、ドンチャッカの賛同を得る事ができた。
「レジスタンスの問題を片付け、エルフヘイムの危機を遠ざける事が出来たならば、それを新たな目標にしても良いのかもしれないな」
 そのドンチャッカの言葉に、ハインリッヒも大きく頷いたのだった。

 こうしてドンチャッカによる実技試験が終わったのだが……、ドンチャッカは連戦で汗まみれになった体を見下ろして渋い顔をしたのだった。
「どうやら、このまま面接官をするわけにはいかないようだな。汗を流さなければ、臭うだろうし、面接をうける方にも失礼になるだろう」
 そして、うーむと唸った後に破顔して、一緒に戦ったエンドブレイカー達にこう告げた。
「という事で風呂にいかないか? 剣を交えた後は裸のつきあいで、親睦を深めるのは良い事だと思うからな。勿論、男女は別だがな!」
 勿論、エンドブレイカー達に、この申し出に異論のあろうはずが無かった……ようである。

●試験会場の裏側で
 ドンチャッカ総帥の派手な立ち回りが終わり、風呂へと消えていった頃、エンドブレイカー達の中には、試験会場内の様子を見たり調査をしようとするものが現れていた。
 入団試験を通じて、何か得られる情報が無いか……。
 試してみる価値は充分にあったのだから。

 まずは、水底の・フリフレリア(c00079)は、ぼさっとした表情をごまかしながら、ドンチャッカの実技試験を見る周りの騎士の表情を確認する。
 その表情からは、エンドブレイカー達の意外な強さへの驚きと、そのエンドブレイカー達をばったばったと倒すドンチャッカの強さへの尊敬が見て取れた。
 やはり、一般団員からのドンチャッカへの尊敬は、なかなかのものであるらしい。
 一方、山猫・リョウアン(c00918)、白壁の城塞・サクラコ(c02942)らは、騎士団内にマスカレイドが入り込んでいないかどうかの調査を行ったようだ。
 面接官や誘導の係のエルフを確認し、仮面を被ったものが無いかを確認すると共に、世間話を通じて、いきなり不自然に実力が上がった騎士がいないかといった質問をしてみた。
 結果的に、特に怪しい情報は得られなかったが、この調査によりマスカレイドが騎士団を席巻している事は無いだろうということが判明したようだ。
 もし、マスカレイドが騎士団を操ってるとしても、それは、ごく少数のマスカレイドによる陰謀的な物でしかないのだろう。
 菫とモモンガが世界のすべて・トゥー(c01081)は、エルフヘイムの奴隷現場がどうなっているかを調査していた。
 彼は、騎士になってエルフヘイムの奴隷達の面倒を見る監督の仕事をしようと思っていたのだ。
 だが、残念ながら、エルフヘイム騎士団に奴隷監督という仕事は存在しなかった為、それ以上の試験を受ける事無くトゥーは試験場を後にしたのだった。
「奴隷がいない……のなら、それにこしたことはないよな」
 終焉を踏む嗜虐の赤薔薇姫・エヴァンジェリン(c01501)と大剣の魔獣戦士・セリーナ(c16945)は、副団長一派の噂話を仕入れようと試験会場を歩き回っていた。
 その結果、副団長一派達こそが、元からのエルフヘイム騎士団の騎士である事が判明したようだ。
 そもそも、レジスタンスの活動が活発になる前は、戒律を守る事を仕事にするエルフヘイム騎士団も、今に比べてかなり小さな勢力だったらしい。
 そして、小さな勢力故に、この時の騎士達は、ガチガチの原理主義者で構成されていたのだ。
 しかし近年、レジスタンスの活動に対応する形で、規模が拡大し騎士団の主流派が原理主義でなくなった為、原理主義の旧来の騎士団がトップでは組織をまとめられず、戦士として多くのエルフから尊敬されていたドンチャッカを総帥に迎えたという顛末らしい。
(「少し意外ですが、良い情報が得られました」)
 エヴァンジェリンとセリーナは得られた情報におおむね満足したようだった。
 孤高の牙狩人・アレス(c01633)は、騎士団内部で何が起きているのかという内情把握を行いたいと考えて、いろいろ当たってみた。
 その結果、一般市民からの公募という事で一部の団員からは、レジスタンスのスパイが紛れ込むのではという懸念をもたれているらしいという事を聞き出したようだ。
(「入団後の行動で、ある程度疑いを晴らす必要があるようだな」)
 アレスは、心中でそう考えたようだった。
 無口そうで無口でない・ベルベット(c02665)は、騎士団の団員にハーフエルフ狩りに疑問を持つ人がいないかと、怪しまれない範囲で聞いて回ったが、さすがにそういう団員はいなかったようだ。
 騎士団のメインの仕事であるだけに、ここに疑問があるのならば、騎士団に入らない……と言うことかもしれない。
 末端に行けばどうかは判らないが、少なくとも、新入団員の試験にあたる者達に、ハーフエルフ狩りに疑問を持つものはいない、それが彼女の調査結果のようだった。
 森を飛び回る駆け出し探偵・ティルナ(c03037)は、ドンチャッカのパートナーが誰なのか……というのを試験管のエルフから聞き出そうと試みた。
 ごく自然にさりげなく聞き出した所によると、ドンチャッカのパートナーは幼なじみの男性で、今は、ドンチャッカ家を取り仕切る執事長のような仕事をしているらしい。
(「まぁ、この線は問題無さそうね」)
 この調査結果に、ティルナは、安心半分残念半分という感想を得たらしい。
 ジェダイトシュッツァー・ラズヴィス(c04720)は、雑用をしているエルフ達の中から、そこそこ見目の良い女性エルフを探し出すと、世間話をしつつ騎士団内の裏話を仕入れようと試みていた。
 残念ながら大した情報は得られなかったが、入団試験に受かったら、ランチをごちそうしてあげるというような約束をして、仲良くなる事には成功したようだ。
 この人脈が、今後、何かの役に立つ可能性も0では無いかもしれない。
 一方、億千万の棘茨荊・エターナル(c05517)は、得意の奸計に役立ちそうな情報を集める事に専念していた。
 残念ながら、ドンチャッカ総帥以下の騎士団主流派に奸計を駆使して競争相手を追い落とそうという考えはないようだったが、状況によっては最小の犠牲で最大の効果を得る必要がある時もある。
 ここは、副団長派にとりいるのも一つの手でしょうかね。
 エターナルはそう考えつつ、試験会場に戻るのだった。
 ナイトランスの魔法剣士・ヤイトニング(c07169)は、エルフヘイム騎士団の人事担当であるサックスへの接触をはかっていた。
 残念ながら美形とは言えなかったが、話を聞いてみれば、なかなか切れる男のようだ。
 ドンチャッカに対しては、文句ばかり口にするが、キライキライも好きのうちみたいな愛情を感じるので、2人の仲はなかなかうまくいっているように感じられた。
(「といっても、恋愛関係じゃ無いよ」)
 と、ヤイトニングは自分で自分に突っ込みをいれつつ、得た情報を整理するのだった。
 蒼星の鳥・アルフレート(c08186)などは、騎士団へ大きな影響力を持つというカシアス老についての情報を得られないかと考えて、いろいろ画策してみたのだが、雑用をしているエルフ達くらいでは、カシアス老という名前さえ知らないようで、情報は得られなかった。
 逆に言えば、カシアス老の影響力というのは、騎士団上層部にはあっても、下位の騎士達に直接働きかけるというものでは無いという事が判ったとも言える。
(「という……ことは……カシアス老と……ドンチャッカ総帥が……喧嘩……すれば、騎士達はドンチャッカの味方……ですね」)
 アルフレートの予測は、おそらく正しいと思われた。
 ロストメモリー・イリス(c12181)も、カシアス老についての調査を行ったが、やはり、カシアス老という名前は出てこなかった。
 だが、イリスの調査によって『副団長が威張っているのは、後ろ盾の大貴族がいるから』という噂話を得る事ができた。
 この大貴族がカシアス老だとすれば、いろいろ話がつながってくる……。
 入団後に改めてこの件を調べるべきかもしれない。イリスは、そう考えたのだった。
 斧の城塞騎士・ユスティーネ(c08886)は、副団長のひととなりを知る為に、その姿を試験会場に探したのだが、残念ながら姿を見ることは無かった。
 どうやら、ドンチャッカ総帥の思いつきによる団員募集に副団長達は反対しており、近寄りもしなかったという事らしい。
「とりあえず、人としての器はドンチャッカには遠く及ばない……と。ただの過激派であれば、大過ないのだけどね」
 ユスティーネはそうつぶやいて調査を中断したようだ。
 本格的な調査は、副団長と出会う機会をもってからになるだろう。
 花一片・ココノエ(c11414)は、別に暗躍するつもりなどは特に無かったが、試験の合間に、試験の雑用をしていたエルフ達と仲良くなる事で、情報を得る事になったようだ。
 ランチを一緒にとった時に聞いた噂話によれば、最近、都市警備隊が再建されたと言うことで、都市警備隊出身の騎士団員達が、都市警備隊に戻りたいと言い出しているのが、今回の騎士団員募集に関係しているらしい。
 騎士団が増強されれば、都市警備隊出身者が都市警備隊に戻れる……そんな事も考えているようだ。
 ただ、ココノエと仲良くなったエルフ達は、できれば、都市警備隊出身の騎士達には残ってもらって、副団長とかそういう人が出て行けばいいと思っているらしい。
 彼女達曰く、副団長達は威張りんぼで怒りんぼなのだそうだ。
 あまり上司にはしたくないタイプかもしれない。
 アイスレイピアの魔法剣士・セレネー(c11812)は、戒律の具体的な根拠について、世間話として聞き出そうと考えていた。
 が、根拠などなくても判るから……みたいな、判らない方が逆に不思議みたいな対応をされてしまった。
 もしかしたら、エルフだけが判る何か……があるのかもしれない。
 竪琴の魔曲使い・ジェスター(c14716)も、セレネーと同様、戒律がいつ始まったのか……という情報を集めようと考えていたが……その成果ははかばかしくなかった。
 成立年代や制定者を知っているものはいなかったし、そもそも調べても判らないだろうという答えだったのだ。
 一方、斧とシールドスピアの自由農夫・ソシエゴ(c14053)は、他の者達とは全く違う切り口での情報収集を行っていた。
 それは、沼地の魔女についての噂を騎士団の団員達が知っているかどうかである。
 結果、その噂を知る者は皆無であった。
(「騎士団と魔女、同じ目的をもっていそうな組織が相手の存在を知らないなんて事あるっすかね?」)
 ソシエゴの抱いた疑問は、しごく尤もなものだったかもしれない。
 自適の心・ヤマダ(c15080)もまた、他の者達とは違うアプローチで行動を行っていた。
 彼の行動は、副団長派への接触を試みる事だった。
 ヤマダは、自分が戒律至上主義者であることを喧伝してまわる。
 これは、もし副団長派が新たに入団した騎士の情報を知りたいと思ったのならば、自分に接触してくるように仕向ける情報操作なのだ。
 一方、幻魔狼・ロゼ(c02745)も、ヤマダに近い考えから、副団長派をけん制するように行動していた。
 彼は、
「……今は街の中での騒動が見受けられるが……いつ騎士団の詰め所が襲撃されるとも限らんだろう? 騎士団が落とされるなど失態どころでは済まんはずだ……」
 と主張し、暗にレジスタンスへの直接攻撃を提言することで、同様の主張を持っているだろう副団長派にアピールするのが狙いであった。
 効果があるかどうかは判らないが、これもまた重要な情報戦なのだろう。

●面接開始 〜騎士団の意義
 面接会場である一室の前では、長蛇の列が出来ていた。時間はかかるが相手のプライバシーを考え、一人ひとり個別に面接に当たっているらしい。
 アルストロメリアの虹うさぎ・エシラ(c00097)は、緊張した面持ちで、ドアをノックし、部屋に入る。部屋の中央にいるのは、人事部のサックス。どうぞと席へと促すサックスにエシラは、大きな声で応えた。
「名はエシラ・クラーレット。騎士団への志望動機は、経験を積んで名実共に、立派な騎士になりたいから! ってのと見聞を広める為!」
 そのエシラの大きな声に目を丸くしていたが、サックスは口元を緩めて。
「元気があって良いですね。入団時もその元気さで皆を明るくしてもらえると嬉しいです」
 どうやら、好印象を与えることができたようだ。

 エルフヘイム出身者ではないが、戒律を全面否定はしないという血の神の巫女・ヴァキア(c03740)は、問題なく入団できるだろう。しかし、サックスの書類には、歪みを見つけ矯正したいという意見を要注意事項として記されていた。
 国の規律を司る部品に過ぎない騎士に、個性など不要という無銘の騎士・フェミルダ(c04105)の意思もまた、サックスの心を喜ばせるに充分だった様子。
「騎士団なら困ってる人を助ける事が出来るのですよね? ならそれが、ぼくの理由かと……」
 小さいながらもそう主張する星呼び・シャルル(c00340)に。
「ええ、多くの人々を助けていただけると嬉しいです」
 サックスは優しげに微笑んだ。

「働き場所を探している、平和を望んでいる。就職斡旋にも心惹かれた。平和を守って、平和な世界で退団後も働けるならこの上ない」
「平和を望む心は、騎士にとっても大切な心です。その心を大切に勤めてください」
 満足げな笑みを浮かべてサックスは、つらつらと・イル(c00426)を見つめた。
 そういえば騎士でありながら騎士団に入るのは初めてだと思うのは、天雄星・アセリア(c15703)。そんなアセリアの志望動機はというと。
「そうですね……単純に求職中であると言うのが……一番の理由ですが……」
 定職に就きたかったと語るのは、月仰ぐ翠鴉・シャラ(c03272)。それに併せて警備隊では対応しきれないこともあること、政府の警備隊の復活を願っていることも告げる。その意欲を見て、サックスは笑みを見せる。
「待遇と職務、双方が魅力的だったからです」
 そのハルバードの城塞騎士・ドゥールム(c00559)も同じような動機で希望しているようだ。
「その待遇に見合う働きを期待しています」
 サックスは頷き、手元の書類にマルを記入した。
「手に職がほしいものでね……そろそろ懐も心もとないですし」
 どうやら、まるでダメなおっさん・セイジ(c14235)も、同じ動機のようだ。
「形は違えど、未来を守る事をしたかったから。それと、シングルマザーなのでお金がいる為ね」
 真面目にそう志望動機を語るのは、リーベンオルカ・シャルナディア(c01033)。
「シングルマザーとは、いろいろとご苦労があったのでしょうね。大切なお子さんのためにもよろしくお願いしますね」
 それに加え、子育てのフォローも行っていますよと、サックスは付け加えた。ここだけの話、シャルナディアの本音はエルフの女騎士狙いだということは、サックスに気づかれていないようであった。

 面接で所属の希望を言う者が多い中、黒髪の魔術師・クラウス(c02858)は。
「エルフヘイムの治安の安定に貢献したい」
 と前置きして、都市警備隊の早急な再建を進言した。
「我々としても懸念事項の一つとして、その問題に取り組んでいます。すぐに対応できるものではありませんが、もしあなたがその事案に協力したいというのならば、僕も喜んで協力しましょう」
 サックスはそう告げる。クラウスの進言に頼もしく思いながら。
「街の安全を守るのは騎士の務めだ」
 コルエクイティス・アウグスト(c03079)の至極もっともな動機に、サックスは静かに頷く。
 全身全霊の障壁・サークル(c03518)のフルフェイスの兜を外さないという意思に眉をひそめながらも、サックスは。
「今まで流浪の日々を繰り返してきましたが、誰かの笑顔を守るために真剣に戦うこと。ここでなら出来ると思ったからです」
 そのサークルの入団理由を判定材料にしたようだ。
「今、エルフヘイムでお世話になってる以上、何かこの都市のために出来ることをしたいアル! それに、以前エルフヘイムのある村で、治安維持のお手伝いをさせてもらった経験を活かせればと思ったからアルよ」
 虎を倒し龍を落とす・フィーダ(c04137)の言葉に。
「ぜひ、その経験をこの騎士団で生かしてください」
 サックスは微笑んだ。
 自分の番の最後に「明日から街を護るのです!」と大きな声で意気込みを示すのは、仮面の独白・ヘイゼル(c04877)。サックスの目には好印象に映ったらしく。
 本当はドンチャッカを労いたかったのだが、いなかったために目の前のサックスを労いつつ、
「待遇に惹かれたっていうのもあるけど、最近何かと物騒な事件多いでしょ? 私もこっちに引っ越してきたばかりだし、色々有ると怖いから。自分の身許くらいはハッキリさせておきたいっていうのが一番かしら」
 スペイド・ナイン(c06523)は、そう動機を告げた。
「個人よりも集団として働く方が、もっと出来る事は広がると思っています。此方の皆さんに越して来たところよくして頂いたのを、『明日の街を護る』、そうしてお返ししたいから」
 力の入る正直な思いを蒼鴉の魔女・マリアネラ(c07640)は、サックスに伝える。
「守りたいものを守るため、だね。人、平和、意志……誰にだって守りたいものはあるだろう? 誰かが守りたい、それを守る手助けがしたい」
 そう訴えるのは桜宵・キャトル(c09878)。真面目な目にサックスは、僅かに笑みを見せた。
 動機を訊かれて、鉄鎧う風・ステュクス(c14743)は。
「決まってるだろ、護るためだ。オレはエルフヘイムに暮らす、少しでも多くの人々の安全を守るために、この騎士団に入りたいと思ったんだ。そう、エルフヘイムに住む人々……をな」
 そう告げたのだった。
 私でよければと、ハルバードの群竜士・ツキヒ(c16565)は口を開く。
「困っている人を助けてあげたいし、街の平和を守る仕事に携わりたい、から」
 少しでも力になれればと願いながら。
「城塞騎士として街の人々を守りたいと思ったからなのです!」
 元気よくそう告げるのは、ナイトランスの城塞騎士・エスリル(c16719)。街の人々の為に身を粉にして働きたいという意思を込めて、強く訴えていた。
「微力ながら自分が参加する事で、市民の皆さんの安全に貢献出来るなら幸いです」
 真面目な面持ちで城塞騎士・ソウヤ(c00546)はサックスにそう述べた。
「嬉しいですね。その気持ちを胸に、これからの業務をよろしくお願いします」
 サックスも嬉しそうに微笑んだ。
「エルフヘイムを住みよい街にしたいから。そして、困っている方々の力になりやすい役職だから、ですね」
 棍の魔想紋章士・カイン(c17183)もまた、人々のためにと志望を決めた一人。
「私は、より良い、そして住みやすい平和な街を作るために入団しました」
 大鎌の魔曲使い・レイ(c00801)は、そう丁寧な口調で告げる。
「騎士は人を守るだけが仕事ではありません。ぜひ僕達と共に良きエルフヘイムを作っていきましょう」

 次に面接に入ってきたのは、今までとは少し毛色の変わった人物であった。
 しなを作りながらくねくねと……。
「だって、レジスタンスの子達可愛くないんだモノ……」
 四代目破壊神王・ネメシス(c00683)の言葉に、サックスの眼鏡ががくっと落ちそうになった。
「言いたいことはわからないことはないけど……だからってテロは許されるものじゃねえだろ。力を持ったテロに泣かされるのは、最後にはいつもただの一般人だ。それだけは防がないといけないだろ?」
 始めのしなは置いておいて。
「え、ええそうですね。それが僕達の役目でもありますから」
 後半の真面目な受け答えに、サックスはネメシスを認めたようだった。
「入団動機? そんな立派なもんねーよ」
 そういうシールドスピアの魔獣戦士・クライト(c17033)の言葉にサックスは顔をしかめたが。
「誰かの役にたって喜んでもらえるかもしれなくて、そんでもって飯食って酒飲めるくらいには報酬はあるんだろ? だったら、やってみたいって思ったって不思議じゃねーよ。もちろん危険の一つや二つはあるんだろうさ。どっさりあったって、別に構わねぇ。そういう仕事なんだしな。なんかあったって恨み言は言わねーぜ」
 覚悟を決めているその言葉に、サックスは短く、良いでしょうと告げるのであった。
「わたしの、小さな力でも一つの錘になる事が出来れば……と」
 そう言った後、おどおどした様子で、乙女椿・レニィ(c11258)は。
「あ……あの、その……。生意気な事言って、ごめんなさい」
 すぐさまぺこぺこと頭を下げていたが、サックスの印象は良かったようだ。
「……エルフのともだちがいるの。そのひとは、まじめでがんばりや。エルフヘイムのヘイワ、だれよりも願ってた。だから、わたしも……ヘイワのためにできること、したい。力になりたい。そういうリユウじゃ、たりない?」
 無垢な瞳でサックスを見上げるのは、ブランシュネージュ・シュネー(c01190)。
「いいえ、充分ですよ。シュネー、あなたの友達のためにも一緒にがんばっていきましょう」
 サックスはそういって、シュネーの手を握った。

「身の軽さが私の自慢なんだ。戦いともなればこの軽さを生かしながら、弓で遠くからでも攻撃する事が出来る。騎士団には身軽な者も必要だろう?」
 そう、自分の身軽さをアピールするのは自由の空・ディーナ(c00728)。
「あの空中殺法、見事でした。ぜひ、我が騎士団の中でもその力を見せてください」
 高評価のサックスの言葉に、ディーナも満足げな笑みを浮かべた。
 これといった取り得のない明日はがんばる・アリシア(c04481)は、
「これを機会に、ちょっとずつでも自分を変えていくのです!」
 めいっぱい頑張る姿勢を見せた。
「お初にお目にかかります。こちらに宣教師として赴任しております、司祭のフィリル・リヨンヌと申します」
 丁寧に自己紹介をした後、宣教司祭・フィリル(c04593)は、何か手伝える事があればと思い、応募してきたことを告げた。
 エルフヘイムの内情を深く知るという心境を胸に秘めながら、無難に面接を行うのは、変化狐・ミヤビ(c06299)。サックスの様子を見ると可もなく不可もなくといったところ。
 エンドブレイカーの特殊能力を理解することはなかったが、残燭を映す水影・スカビオサ(c08039)の、健康体であることやる気があることが、サックスの好感に結びついたようだ。
 水月・アーシェス(c11972)は、お互いの考えや誤解を正し、何が今のエルフヘイムで間違っているのかを見つけ出し、この地の皆の為に尽くしたいと主張。
「レジスタンスが余りにも目に余ったから、という事じゃダメかしら?」
 紫水晶の涙・アキナ(c12140)もそういって、騎士団の規律に従うことを示した。
「戒律については不勉強なところもありますが、同胞間での争いに腐心し、獣やアンデッド等の危険から、人々を守れないのでは本末転倒。レジスタンスとの紛争を一刻も早く平和裏に解決し、その他の脅威から人々を守る一助となれればと思い、志願しました」
 そう堂々と主張するのは白昼の極星・エステラ(c14024)。
 いつもは間延びした話し方の扇の魔想紋章士・アデリー(c16030)だが。
「わたしはエルフでもありませんし、この都市出身者ではありませんけれど、こちらに来てから、ここの皆さんにはとてもお世話になっていますし、最近は色々と物騒な事も多いですから、少しでもお役に立ちたいと思っています」
 試験を意識し、しっかりと気持ちを伝えた。
「エルフヘイムの各地で跳梁しているレジスタンスのせいで、騎士団はかつてないほどの人手不足なんだろう? 何、人間にとってエルフという隣人を助けるのは当然の事じゃァないか?」
 当然と言いたげにそう答えるのは、凶刃・ヴァープラーグ(c14772)。
「自分は、かつての自分の様な弱く助けを求める人々を、守れる騎士になりたいのであります。何分、経験の無いひよっこでありますが、粉骨砕身の覚悟で精進致しますっ!」
 最後に敬礼も忘れずに。戦災孤児の身の上を語りながら、ナイトランスの城塞騎士・ウーイル(c17261)は、はきはきした口調で、そう面接に臨んでいた。

 昼の月光・ラヴェンダー(c00803)は、部屋に入ってくるなり、サックスの手を取って。
「今は、体で生活費を稼いでいるんだけど、それもやっぱり厳しくなって……。だから、騎士団で働いてまともな稼ぎを得たいの」
 しかもいささか緩い服の所為か、きわどい所がちらりと見え隠れしている。サックスはそこに視線を合わさないように気を使いつつも。
「い、今まで大変だったようですが、入団すればその心配もなくなるはずですよ」
「ほんと? 太っ腹なおじさん達と一緒に飲んだり、歌や踊りで稼ぐのも限界ぽかったしこれで助かるわ〜♪ ん? なんで頬染めてるの? なにかあった?」
「い、いえ、何も……」
 ラヴェンダーの言葉にサックスは、どきまぎと自分の眼鏡のズレを直すのであった。
 次に入ってきたのは、襟を正した閃剣のエクエス・ユーリル(c01023)だった。
「正義の、と言うわけでもないですけれども。エルフヘイムの人々の笑顔を護るお手伝いが出来るなら。僕も騎士団へ身を寄せ、力になりたいと思います」
 その真摯な態度にサックスは、ほっとしたような表情を見せながら。
「ぜひお願いします。人々の笑顔を護るのも私達の務めですから」
 そう笑顔で頷いた。

 盾になりたい・ロイ(c14920)は、募集時の張り紙にあった『平和で豊かなエルフヘイムを守る為、君達も、エルフヘイム騎士団で働こう!』という一文に惹かれて入ってきた様子。
「俺、街の皆の盾になりたいと思ってます!」
 そうアピールしていた。
 会場で会う人会う人、不幸なエンディングが見えないか注意していたエアシューズのスカイランナー・ケイ(c01176)の志望動機は、ただひとつ。
「家族と一緒に移り住んできた、この街を護りたいから!」
「移民の方でしたか。ぜひ、ここを第二の故郷と思って、護っていただけると嬉しいです」
 サックスの言葉にケイは、嬉しそうに頷いた。ちなみにケイが心配していたエンディングを見ることはなかったようだ。
「騎士団の新しい成長要素として私を拾ってみませんか? 私は埋もれた良い未来を掘り出す1人かもしれませんよ」
 そうアピールするのは、銀灰・クニカラ(c01967)。
「面白いことをいう方ですね。あなたが、この騎士団に良き未来を運んでくれるのを期待しています」
 次に面接会場に入ってきたのは、紅の剣閃・ヴァーニシュト(c02243)。
「これでも前の処で護衛の生業してたんでな。その延長線上で、ここで治安維持を手伝えればなと。なんで宜しく頼むぜ!」
 元気あるその言葉にサックスは。
「経験があるのは、心強いです。ぜひ、その経験をここでも生かしてください」
 嬉しそうにそう告げた。

「ドンチャッカの様な苦労性がいなくなると、加減も知らぬバカがのさばって困る。どうせ内部でも威勢のいい意見が数を増やしているのだろうさ。ならとりあえず頭数が増えるだけでもドンチャッカには助かるだろう。幾らかでも役に立ってみせるさ、わたしの望む結末のためにもな」
 包み隠さず、そう本心を告げる自由神の神官・シュテラ(c03339)。
「どこまで知っているのか分かりかねますが」
 サックスはそう前置きして。
「あなたのその考えは、嫌いではありませんね」
 ウインクしたのであった。
 高潔の士と名高いドンチャッカ殿の手助けをしたいという、黒鉄の獅子・オリヴィエ(c04751)の言葉に、サックスも同意している様子。

「豊かな森……この地を守る任を担えれば光栄です。若輩者ではございますが、どうぞ宜しくお願い致します」
「こちらこそ、このエルフヘイムを共に守っていきましょう」
 僅かながら緊張している星筏・クロアハルト(c02432)に、サックスは緊張を解すかのように優しげにそう語りかけた。
「騎士団や、そしてここに暮らす人々の為に、少しでもお役に立てるよう、微力ながら勤めさせて頂きますわね」
 そう言いながら、天然シスター・ヒナギク(c12145)の目的は、ドンチャッカの更迭を恐れたこと。その損害を少しでも食い止めるために、ここにいた。
 楽観的な風貌の荒野の渡り鳥・ファー(c13649)は、人々の幸せを護って行きたいと思ったからという、シンプルな動機にサックスは好感を覚えたようだ。
 礼儀正しく、緋閃・ヴィルヘルム(c15915)は。
「動機は、エルフヘイムの明るい未来の為に、少しでも貢献したいと思い、志願した」
 志願理由を述べる。
「人々の平穏のため、妾は力を振るうが、異郷の地において勝手が分からぬ故にな。他の場所での常識がここでは非常識、ということもあるやもしれん。結果、住人を悲しませては意味がない。不要な諍いをおこさぬためにも、卿らのような組織に属するのが筋かと思うてな」
 そういって、七封鍵の主・クレア(c16107)は、人々の平穏のために力を振るいたいという事を真摯に伝える。
「私が騎士として成すべき事は何の罪もない民衆をあらゆる惨劇から護り通す事だけだ」 そのことを理解してくれるというなら、喜んで手を貸そうと告げるのは、大剣の城塞騎士・ベルナデット(c16310)。
「平和を愛する心は人間もエルフも一緒! エルフヘイムに『真の平和』をもたらすお手伝い、させてほしいな」
 きりりと元気よく、そう告げるのは、歌って踊れる普通の少女・シロ(c02654)。
「ここは厳しい場所かもしれませんが、共に平和を守る者同志、力を合わせていきましょう」
 その心意気、評価に値しますと、サックスはシロに笑みを浮かべた。

「今まで個人の騎士として、短い人生の内にそれなりの努力はしてきた。……けれど今回騎士団、という大きな集団に属することで学べることもあると思ったのじゃ。騎士としての心積り、学ばせて頂きたいのじゃ」
 藍色の盾・レンリ(c02684)の志望動機は、サックスを感心させるほど。
「我々の騎士団ならレンリさんの望むものを学べることでしょう。怠け者の新人にあなたの爪の垢を飲ませたいくらいです」
 苦笑を浮かべつつも、嬉しそうにサックスはそう告げた。
 他にも騎士団のことを学びたいという者は多い。
「やはり、此方の騎士団のあり方などを知りたいと思い、此処に参りました所存です。それに場所は違えど、民を守ることが城塞騎士の役目と心得ております故」
 護衛者・バルタザール(c16210)もまた、騎士団で学びたいことを告げた。
 海色の護り人・シルク(c12306)の入団後の都市を守るための学びを重んじる考えもまた、サックスの好感を得られた様子。
「騎士団に入りたい動機は、エルフの方々を守りたいからですぅ。あと、騎士団の戦い方を学びたいからですぅ」
 という天然傭兵・ツキナ(c11818)も、騎士団のことを学びたいとやってきた一人。
「動機ですか?」
 サックスの質問に、空駆けるペンキ屋・ポーシャ(c01607)は口を開く。
「腕が鈍らないようにするためと……エルフヘイムの騎士団っていうのが具体的にどういうことをしてる所なのか、その辺に興味を持ったって所でしょうか」
「そうですか。何にせよ興味を持っていただけたのなら、嬉しいことです」
 あなたの腕に期待しますとサックスは、書類にマルを書き加えた。
 経験を積むためと答えるのは、常葉のウィッカ・タキーヤ(c13660)。
「もちろん私自身、エルフヘイムの人々はとても好きだし、彼らを守りたいとも思う」
 自分の経験の為に職務には一切手は抜かないと付け加え、サックスから絶賛されたのは言うまでもなく。
「ま、エルフヘイムは親切な人も多いし、飯も美味いからな」
 そう本音を漏らすのは徹甲鉄火・コバヤシマル(c07389)。その言葉にサックスは思わず笑みを見せた。

 騎士団にいるエルフ達を不快にさせないよう、気を配っていた春の陽だまり・ハルコ(c09254)の行動は、サックスの目にも止まった様子。
「確実にディフェンスブレイドを当てていた方ですね。周りに気を配るという意識もとても良いものでした。ぜひ、我が騎士団に入ってもらいたいですね」
 満足げな笑みを見せていた。
「私たちが騎士団に入ることにより、レジスタンスへの抑止になることでしょう。その間に、騎士団の復旧やここの今後を考えられると思いまして」
 サックスに動機を尋ねられて、弓狩人・グラッド(c10516)は、そう答えた。
 シュトルムトルッペン・クレーエ(c03948)の、給与は盗賊等の被害に遭った村や人々への義援金に使いたいと言う言葉に、サックスはいたく感嘆したようだった。
「こんなガラじゃ信用できんかもだが、街の空気とか荒れんの好かねえってのもある。なんも悪くねえ地道に生きてる奴が、安心できねえ街ってのはよ。やっぱどうかと思うんだわ」
 白衣を着ているが、それ以外は町のチンピラそのものな街の雑音・ギャレット(c02948)。セールスポイントとして、隊の体調管理もできるとしている。
「多少気になる口調ではありますが、あなたの言いたい事はわかりました。実技も申し分ないようですし、我々の隊で今後ともよろしくお願いします」
 どうやら懐は広いらしく。

 銀狼の暴君・ジョン(c02337)は、騎士団の入団目的を『騎士団の内情を知る為』と正直に告白して、不合格となったようだ。
 その理由では、騎士団に入団することは不可能だ。
 ガレキアの黒獅子・イスラティル(c03535)は、自分は騎士団や政府の為では無く、エルフヘイムの民を護る為、バルバやアンデッドらと戦うのだと主張したので、それならば、都市警備隊が相応しいだろうと都市警備隊の所在地を紹介される事になった。
 エルフヘイム騎士団は、戒律を守るための騎士団であるので、戒律で区別されてはならない……というイスラティルの主張は、受け入れられなかったようだ。
 アックスソードのスカイランナー・レテイシャ(c04739)も、入団してもハーフエルフ狩りは拒否できるかと聞いて、出来ないという返答をもらい、冷やかしになった事を丁寧に謝罪して試験を棄権した。
 驟雨・キシス(c05687)は、ハーフエルフを捕らえる為に他にどうしようもなければ、ハーフエルフ以外のエルフを殺すのかという問いに、やむを得ない状況であれば仕方が無いとの返答をもらった為、試験を放棄して帰っていった。
 だが、まぁ、どうしようもない状態でもハーフエルフ以外のエルフは殺さない……みたいな活動方針は騎士団としてはありえないものだったろう。
 徹甲砕牙・パトリック(c12044)は、面接において『守りたいものが、あんた達と同じとは限らないぜ』と念を押した事で不合格になっている。
 この念の押し方は『違う』と断言してるも同じ事だったろう。
 蒼穹を駆ける風・ランディ(c04722)も、外敵や犯罪者の捕縛、討伐等の治安維持活動には参加するが、ハーフエルフ狩りには協力できないと申し出て同じく都市警備隊を紹介されている。
 ハーフエルフ狩りこそが騎士団の存在理由であるのだから、これもやむを得ないことだろう。
 アクスヘイムの城塞騎士・クゥーリオ(c04438)も、戒律を守るつもりは無いと宣言した上、町でハーフエルフの子供に会ったと言い出したもので、その場所はどこだと追求されそうになり、慌てて会場を後にする事になった。
 少し迂闊な言動だったかもしれない。
 迂闊さで言えば、風渡る雲の武芸者・アロンダイト(c15670)は、かなりなもので、
「経験や職歴は不問……っちゅうのは何処までなんやろか。例えば……騎士団への襲撃に加担したとかでもいけるん? ああ、ここで襲撃かけようとかそう言うつもりはまったく無いねん。いい機会やし話したいなって」
 などと言い出した為、留置場に直行させられてしまった。
 正直なのは悪い事では無いとしても、これでは、騎士団に入り込むのは不可能な事だろう。
 一方、玄冬歌・アルファード(c16827)は、
「なんの為に戒律があるのか、判らないような人間にはなりたくない。少しでも人の幸せを守る為に力になりたい。その為の努力や苦労なら惜しみなく費やしたい……」
 という思いを抱いていたが、特に試験を受けることなく会場を後にしたようだった。

 悪魔の威を借る者・キォノータ(c13733)は、エルフヘイムの外に出たハーフエルフに対する対応について尋ねてみた。
 サックスは、意表を突かれた様子だったが、現状、他都市にいるハーフエルフを調査する事はしていないとの答えだった。
 これは、エルフヘイムの外に出ればハーフエルフが無害であるというわけでは無く、物理的に探索するのが不可能だという事のようだ。
 だが『ハーフエルフがエルフヘイムからいなくなっても、国外にハーフエルフがいれば、エルフヘイムは滅びるのか?』という問いには、明確な答えは返ってこなかった。
「厳密に言えば滅びる……のでしょうけれど、もし、そうならば、エルフヘイムを滅びから救う手段が無くなってしまう。難しい問題ですね」
 その答えは、キォノータの期待とは少し違っていたようだった。
 次に口を開いた暗殺シューズのスカイランナー・キオ(c17281)の、サックスへの問いかけは、他のエンドブレイカー達とひと味違っていた。
 彼は、捕まえたハーフエルフを処刑する仕事を希望したのだ。
「僕が見た感じだと、騎士団の人も汚れ仕事は好きじゃないんじゃないかな?」
 それは、サックスの痛いところをついたようで、サックスは少しだけ顔をしかめた。
「(……子供を殺すのが好き……なものなんているはずないじゃないか)」
 サックスの小声の言葉を聞き取れるものはいなかったが、次の返答は聞き取る事ができた。
「残念ですが、騎士団は戒律に反する者達を捕らえるまでが仕事です。処刑はスフィクス家が受け持っていますから、その仕事はしなくても大丈夫ですよ。スフィクス家は、処刑を司る古き貴族の家なのです」

 と、その時、面接会場の入り口でちょっとした騒ぎが起きた。
 見てみると、そこには、風呂上がりでさっぱりしたドンチャッカと仲間達の姿があったのだ。
 そのドンチャッカの姿に、サックスはこめかみを押さえつつカミナリを落とした。
「僕の勘違いでなければ、なにやら、いい運動をした後に風呂場でスッキリしたような出で立ちですね、ドンチャッカ総帥」
 サックスの言葉に、ドンチャッカは少し手遅れだったが申し訳なさそうに手を合わせた。
 同時に、風呂場で意気投合したエンドブレイカー達にも(「ここは俺に任せて先に行け」)という目配せをしたようだった。
「まぁ、ここに来たという事は仕事は忘れていなかったという事ですね。では、たまっている仕事を行って貰いましょうか」
 サックスはそう言うと、ドンチャッカを面接官の席へと導いたのだった。

●ドンチャッカの志
 サックスがドンチャッカを面接官の席に導くと、4名のエンドブレイカーが、その脇を守るように現れた。
「この者達は?」
 と聞くドンチャッカに、サックスは、あなたの護衛ですと告げる。
「エルフヘイム最強の呼び声も高いあなたに護衛の必要は無いかもしれませんが、実技試験で暗殺騒ぎがあったと聞きましたので。受験者の中から、何名か選抜させて貰いました」
 ドンチャッカは(「あれは別に暗殺というわけでは……」)と小声で反論したが、サックスが自分の身を案じて手配したのがわかったので受け入れる事にしたらしい。

「スィーン・グラディウスです。よろしくお願いします」
 護衛の一人、闇明の魂葬者・スィーン(c11355)はドンチャッカに手をさしのべて握手をする。
「私はクレイル。今後とも騎士団の風紀を守っていきたいと思うので、よろしくお願いする」
 雷迅・クレイル(c02030)の言葉に、ドンチャッカは曖昧に頷ずいた。
 どうやら、自分が怒られているのかどうなのか判然としなかったらしい。
「こういうオープンな場は、レジスタンスの手の者が入り込む絶交の機会なのよね。用心は必要よ」
 努力の天才・テオバルト(c02419)は、そう考えて警備を買ってでたようだ。
(「この子……雰囲気がサックスに似ているなぁ」)
 ドンチャッカはそう口に出しそうになったが、サックスが睨んでるように感じたので声には出さなかった。
 最期の一人、水の袱紗・エリナ(c00076)は、スカートの裾をつかんで、かわいらしくお辞儀をした。
「今はいろいろ大切な時期ですから、用心にこしたことはありません。特に、お一人で行動するのは避けた方が良いですよ」
 そのエリナの忠告に礼を言ったドンチャッカは、彼ら4人に守られるようにして、面接官の仕事を開始したのだった。

「では、動機を聞かせてくれないか?」
 ドンチャッカに尋ねられ、蒼氷の流れ星・ルリハ(c00710)は一つ頷く。
「折角、このエルフヘイムにお世話になってる身……少しでも皆さんのお手伝いしたいと思い、騎士の仲間に入れていただきたいと来ました」
「そんな気持ちで入団してもらえると、我々も嬉しい。よろしく頼むぞ」
 ドンチャッカはそう、優しげに微笑んだ。
「ここに来てそれ程経ってねえが、ちらほら起きてる事件が気になってな。困ってる人も多いだろう? 今回、エルフヘイムを護る為の騎士団団員募集があるって聞いてな。協力出来ねえかと思って志願させて貰ったぜ」
 そういって竜の掌握・フリオ(c01043)は、ドンチャッカの瞳を見たが、気になるエンディングは見えなかったようだ。
「こう見えても本業は移動花屋をしててさ。これから冬が来るだろ? 当分花を売ることもできないからな」
 みんなの恋人・アデルバート(c01702)の言葉に、ドンチャッカは苦笑を浮かべた。
「動機は城塞騎士だからです。この地においても、騎士の仕事が出来るというのであればありがたいことだと思います」
 そう前置きして、ホーリーオーダー・アルトゥール(c01890)は、此処の騎士のマナーを尋ねた。
「ここのマナーか。戒律を守り、民を守る。それを念頭に動いてもらえば、それでいいと思うがね。詳しいことはサックスから聞いてくれ」
 サックスの視線を感じたのか、ドンチャッカはそう答えた。
 一方、無難に試験を終わらせたい武具の魂・アクス(c02064)は。
「まだまだ若輩の身だが、この力が役立てられるなら本望だ。エルフヘイムの平和の為に、如何なる任務もやり遂げる所存だ」
 レジスタンスの介入をも危惧していたが、彼の前でそれはなかったようだ。
「手が足りぬとあれば、是非、お手伝いさせて頂きたい」
 そう動機を語るのは剣の魔法剣士・カナト(c02601)。カナトは目の前にいるドンチャッカを何故か他人とは思えないところがあるらしく。
 セイギノミカタ・ウェイン(c02603)は。
「平和を護る、手助けをしたいと思った」
 相手が目上の者であることを認識し、礼儀正しく対応していた。
「都市警備隊が担っていたような仕事を騎士団が指揮を執るのも必要だと思う。護った住民に支持されりゃ騎士団の士気も上がるだろ? この募集で人数が増えたらそういう業務も考えてみちゃどうかね」
 その提案が受け入れられなくてもいい。そう思い、風を抱く・カラ(c02671)は提案する。
「そうかもしれないな。検討してみよう」
 いいかな、サックスとドンチャッカはサックスに同意を求めた。
「見極めたいわけじゃないんだ、悩まない為に来た。騎士団は街を……住まう人を、護る為にあるんだろ」
「ああそうだ。入団することで、君の悩みが消えることを期待している」
 ドンチャッカは銅色斧鉞・ジーク(c03342)の言葉を真面目な瞳で受け止めた。
「不穏な空気の漂う情勢、民間人の不安を少しでも解消する手助けがしたくて志願したわ」
 そう動機を語るのは探究者・クリスタ(c03925)。
「政権を握る方々について、不満はないの?」
 クリスタの問いに、ドンチャッカは苦い顔をするも。
「ないといえば嘘になるが……我々は戒律に従い、政府に従い動くものだよ。たまに困るときもあるけれど」
 サックスに足を踏まれて、ドンチャッカは思わず唸っていた。
「古くからの『戒律』を守ろうとするのは立派だが、アンタが本当に守りたいものは別にあるんじゃねえのか?」
 という魔獣の刀撃・ダグラス(c04039)の問いには答えなかったが。
「ま、何れにせよ、振るべき時に、この刀を振るえるなら、力を貸すぜ?」
 そのダグラスの言葉に、短く助かるよとドンチャッカは告げた。
「何よりドンチャッカ。あんたの温厚そうな人柄を気に入ったし、手助けしたいと思ったからよ」
 禁色を纏う獣・インディア(c04103)にそう言われ、ドンチャッカは照れたように笑みを零した。
 瞳を伏せがちに面接を受けるのは月白鳳蝶・ユエ(c04453)。
「流れの請負屋を生業としている者だ。生活のため、ここでも一つ、仕事を頂きたい。……楽師風情と思われるやもしれぬが、これでも刀使いだ」
 杖に仕込まれた刀を見せながら、ユエはそう静かに口を開いた。
「この街を護りたいからです。今の状況は他所から来た自分から見ても酷い」
 そういって、一つ一つ表にあがってる状況を語るのは、ダイウルゴス・ラス(c05348)。ドンチャッカは、真面目な表情でそれを最後までしっかりと聞いていた。
「先日知り合った騎士団の方が襲われたとも聞きおよんでいますので、お手伝いができればと」
 そしてお見舞いを希望するくろねこの守護騎士・マージュ(c05678)に、ドンチャッカは嬉しそうに見舞いの許可を出した。
 白衣と眼鏡とシケモクと・エステル(c06010)は、募集の張り紙を見てやってきたこと、手伝いたいという気持ちを伝えた。
「御初お目にかかります、ドンチャッカ殿。騎士団と、貴殿の日頃の活躍、確りと耳にしておりました。今日は何卒……」
 デモニック・ルーシルベルト(c06023)は、丁寧に深々と礼をし、面接に臨む。
「騎士なんて正直あたしのガラじゃない。でも、このままだと貴方は解任。そして武闘派によるレジスタンスとの全面闘争が始まる。先日の騎士団襲撃のやり口といい、レジスタンスは好きになれないけれど……犠牲になっても良いワケじゃ無い。……騎士団総帥ドンチャッカ殿、貴方はそんな未来を阻止したいと言う意志はありますか?」
 疾風怒濤・エルティス(c10202)の言葉に驚きながらも。
「どこでそれを知ったのかわからないが……阻止できるものなら、阻止したいと思う」
 その言葉にエルティスは、満足げな笑みを浮かべ、全力でそれを手助けする事を約束した。
 ドンチャッカの目をしっかり見て。
「手を伸ばしたら、届く範囲にあるものは、出来れば全て守りたいと思ってるからだ」
 砂海を渡る風・ルーイッヒ(c10234)の言葉に、ドンチャッカは瞳を細めて頷いた。
 妖眼の斑猫・パーフ(c10803)の動機はドンチャッカを驚かせた。
「私は、ゆっくりと怠けて暮らしたい」
 その為にはエルフヘイムが平和じゃないといけない。トラブルがあると困る。だから、トラブルを解決する為、騎士団に所属するのも良いと思ったようだ。
「まあその……騎士団総帥ともあろう方が、詰所で仕事できない等という状況の酷さに捨て置けなくなりまして……。せめて総帥らしく、お仕事できる位まではお役に立ちましょうぞ」
 紫の煙をもっはーと吐きながら、赤錆腐朽の城塞騎士・ランカー(c11040)はそう告げた。その怪しそうな風貌はともかく、その志望動機と実技とで認められそうだ。
 動機をエルフヘイムの秩序を守る一助たるを望む為と告げるのは、鴉羽根の紋章士・ツクヨ(c12314)。
「昨今の様々な事件から、何かと世情の落ち着かぬ状況、と感じました。特に、レジスタンスを名乗る者達……主張の是非は兎も角、彼らの活動はエルフヘイムの秩序を乱す元凶以外の何者でも無いと考えます」
「そう思いながら、実務に当たってくれると助かる」
 ドンチャッカもツクヨの言葉に頷いて。
「お前さんの成すことをしっかり見せて貰おう」
 ドンチャッカを手助けすることで、悲劇を少しでも回避出来るのであれば、自らの力を惜しまないと訴えるのは、ファーザー・ネイム(c12332)。いろいろな方に好かれますねというサックスの言葉にドンチャッカは、思わず笑みを零した。
 ドンチャッカの演説を聴いて、感銘を受けた月鏡の騎士・ユウキ(c12862)も、真剣な眼差しで面接を受けている。
「無礼は承知の上で伺いたき事がございます。私共を迎え入れる事は、良くも悪くも波紋を広げるでしょう。いずれこの都市の民を脅かすものが現れたとき、それが何者であれ……戦う覚悟はございますか?」
 そう尋ねる黒竜・イングリート(c14479)の言葉に、少し戸惑いを見せていたが。
「エルフヘイムに仇なすものであれば、それを守るだけのこと」
 さも当然といわんばかりにドンチャッカはそう答えた。

「ドンチャッカ殿、だいぶお疲れのようですね」
 そう労を労うのは、月影の預言者・クロノ(c03800)。
「それほどでもないつもりなんだがね」
 疲れが見え隠れしていたかと、バツが悪そうにドンチャッカは告げる。
 いいえと告げた上でクロノは、エンドブレイカーのことは気にするな、守るべき民のことを考えるようにと付け加えた。
 面接はまだ続く。
 普通のデモニスタ・ベルタ(c15465)は。
「都市警備隊の本拠地を壊滅させた事、騎士団襲撃は行き過ぎている。真偽を問う為にも彼らを捕えたいです」
 という熱意を伝え。
「エルフヘイムの民の平和を護りたく思い、馳せ参じた次第」
 ストレートな思いを栄光の戦乙女・ベルセリア(c16265)は、ドンチャッカにぶつける。
 ナイトランスの魔想紋章士・ロレンツ(c16437)は、現場での要望を汲み取ること、武闘派の監視や牽制、行動と成果によるカシアス老の信頼回復を提案し。
「まずは考え行動することが私は大切だと思います」
 入団後の熱意を見せる。
 健康とやる気をアピールしたナイフの魔想紋章士・マリストフィン(c17180)は、ふと疑問に思ったことを口にした。
「無職の自分には、とても魅力的な待遇だ。だが、財源は大丈夫なのか?」
 何か言いたげなサックスを押さえて、ドンチャッカは答える。
「安心して欲しい、その点については保証しよう。もちろん、それなりの働きも必要だがね」
「さすが、豊かなエルフヘイムは違うな」
 そんなマリストフィンを見送って、ドンチャッカは思わず、サックスに耳打ち。
「どうやら今回は、本当に面白い者ばかり集まっているようだよ」
 そう喜ぶドンチャッカにサックスは思わず苦笑した。
(「悩みの種が増えそうです……」)
 心の中でそう呟きながら。

●エルフヘイムの『戒律』とは
「ところでひとつ、きいてみたい事があるのだけど」
 面接が進む中、斧の自由農夫・フォムルス(c16410)が唐突に、しかし、のんびりと口を開いた。
「僕は、政府の誰が都市警備隊解散させたのか聞きたいんだねぇ」
 フォムルスは、都市警備隊を解散させた事で都市の治安が悪化した。そうまでして、レジスタンス対策を強化する意義はどこにあったのかを知りたかったようだ。
「それは、レジスタンスが都市警備隊を襲撃した事を受けてのエルフヘイム政府の決定だ。他に決定できるものなどいないだろう。政府も、バルバやアンデッドの被害が増える事は憂慮すべきと考えているが、優先度という判断はありえる……のだと思う」
 騎士団を大増員してレジスタンス問題を一気に解決してから、都市警備隊を再建する……というのが最も効率的である……というのがエルフヘイム政府の判断らしい。
「市民達には迷惑をかけていてすまないと思っているが、しかし、戒律を守る為にはやむを得ない事なのだ」
 ドンチャッカの説明に、今度は、他のエンドブレイカー達が質問をぶつけた。
 まずは、禍津蛇・ヴィルヘルム(c00968)が、
「私はこの土地の事を全くと言って良いほど知らなさすぎます。由緒ある騎士団の一員となるならば、市民達に迷惑をかけてまで守らなければならない戒律について知りたいと思います」
 と口火を切ると、月狼・ヒスイ(c04400)が、
「俺も、誇りを持って騎士団の一員になる為には、戒律の歴史を知り、理解することが必要だ……そう考えている」
 と続けた。
 それは、彼らの偽らざる気持ちであり、騎士として働くために必要不可欠なものであったろう。
 この2人の言葉に、氷焔の魔女・ウルカ(c05243)、盾の城塞騎士・エヴァンジェリン(c09091)、ナイトランスの星霊術士・パトリシア(c17147)も異口同音に賛意を表した。
「そこであたしからの提案だよ。戒律書の勉強会を開くってのはどうだい?」
「戒律を知る為の勉強会の様なものを開いてもらえると助かるのだが……」
「エルフヘイムの事をより知る為の学習の場……の一つとして必要だと思いますわ」
 この3人の熱意に、ドンチャッカは腕を組んでうーんと唸る。
 どうやら、ここで説明すべきなのかどうかと悩んでいるようだ。
 その悩みを察したように、突撃剣士・ラズラル(c09309)、藍沫シュヴィーエ・ハル(c13123)、ナイフのデモニスタ・アイン(c11176)が畳みかける、
「オレも、戒律についてちぃと詳しく教えて欲しいぜ」
「戒律について、まだちゃんとしらないんだよね。滅亡ってなんでなのかなーとか、伝わっている限りのお話が聞けたらうれしいな」
「私も別の都市の出身だからな。エルフヘイム独自の戒律という法については、具体的な内容や由来を是非学ばせて頂きたいと思う」
 ドンチャッカは、新たな3人の希望を聞き、そして、他の受験者達の顔を見回すと、暫しの沈黙の後、ゆっくりと口を開いた。
「本来、騎士団の入団試験で行うものでは無いが……皆が騎士団の一員として働く上では知らなければならない事なのかもしれない。この俺の知る限り、答えさせて貰おう」
 ドンチャッカの言葉には誠意の響きがあり、集まっていたエンドブレイカー達は、彼の説明が信頼に足るものになるだろう事を感じ取ったのだった。

 まず、初めに質問したのは、騎士見習い・パラヴァニ(c00901)、静かなる花筐・サクラ(c06102)、猛毒の射手・ショーティ(c01093)、アチアチ魔王・イクスプロウド(c01366)、なんでもやれそうな・アセリナ(c01898)、無精者・ラグランジュ(c02051)らが知りたいと感じていた、戒律の起源についてであった。
 アセリナは『こんな戒律を誰が決めたのか』を疑問に思っていたし、ラグランジュは『戒律が定まったのは空のドローリヴァイアサンが作られた頃ほど古いのか』と成立の時期が気になっていた。
 誰がいつどうやって……。
 戒律の成り立ちを知る事は、理解への第1歩であろう。
 この質問に対するドンチャッカの答えは、
「戒律は、かつてエルフヘイムを滅びより救った『妖精騎士』によって定められたものだ。詳しい年代までは不明だが、千年単位の遠い昔の事なのは間違い無いだろう」
 であった。
 パラヴァニアのもう一つの疑問であった、ハイエルフとダークエルフの起こりについても、この戒律と同時にできあったものだとドンチャッカは答えている。
 サクラは、ハイエルフに有利な戒律を何故ダークエルフが受け入れたかという疑問を持っていたが、戒律が出来た時にはダークエルフという区分は存在していなかったという事が彼女の解答になったようだ。
 ショーティは、この答えを聞き、その戒律が普及した時期について質問する。戒律がエルフヘイムに広まる契機となった事件などがあれば、それは重要な手がかりになると考えたのだ。
 だが、ドンチャッカの答えはショーティの期待とは違う者だった。
「戒律は、エルフヘイムの住人であった妖精騎士全員が、力を合わせて生み出したものだと伝えられている。戒律が出来たときには全ての妖精騎士がその戒律を知っており、その子孫であるエルフ達も生まれたときから知っている……そういうものなのだ」
 ドンチャッカのこの説明には、イクスプロウドも少し落胆していた。
(「これが本当なら、妖精騎士の子孫であるエルフ全員が縁者……という事になるのか」)
 彼は、戒律を創った者の縁者について知りたいと思っていたのだが、どうやら、特別な縁者という存在はいなさそうである。

「妖精騎士が定めた……ですか」
 説明を聞いた雪下山水・ソフィア(c02845)は、エルフの祖先であるという妖精騎士という言葉に興味を持って簡単な質問をしてみた。
 それは、妖精騎士がどういう存在であったかというものだったが、ドンチャッカは、よくぞ聞いてくれましたというように熱く返答をしてくれた。
「妖精騎士は、エルフヘイムを破滅から救った存在であり、全てのエルフが尊敬すべき祖先達だ」
 と。
 どうやら、ドンチャッカは古代の妖精騎士を深く敬愛しているらしかった。

「だが、その説明では説明しきれない事もあると思う」
 次に質問に立ったのは、靡く千の藁・ヨゼフ(c04167)。
 彼の疑問は、そんな重要な戒律であるのに、その謂われを知らないエルフが多いのはおかしいというものであった。
 もし、数千年も前から伝わっている伝承だというのならば、その伝承は広く広まっていなければならないだろう。
 このヨゼフの質問には、白狼紅盾・ライナス(c03263)と氷上のバラ・ミキ(c03502)の2人も同調する。
 彼ら2人は、戒律を伝える文献を見せて貰えないかと提案したのだ。
 数千年前から伝えられる伝承が文献に残されていないというのは、ありえない事だし、もし、口伝で伝わっているとすれば、その情報は伝わる過程で変化してしまっているかもしれないではないか。

「その質問はもっともだ。確かに、エルフでは無い皆には、戒律を実感するのは難しい事なのだな。結論から言えば、戒律の謂われを知っているエルフは少数であるし、戒律を伝える古い文献というものも存在していない……となる」
 このドンチャッカの返答に、幾人かのエンドブレイカーが反駁した。
「ならば、戒律の根拠とはなんなのですか?」
 杖の星霊術士・スイセツ(c01342)は、古代の文献のような根拠無く処刑が恣意的に行われているのではと疑ってまず口を開く。
「戒律にはきっとなにか他の意味があると思うの。それを読み解かなきゃならないんだと思う、きっと……」
 と言いつのったのは、緑ノ蝶・ユーリィカ(c02118)。
 口伝で伝えられているというのならば、その間に何か取り違えがあると考えるのはごく自然な事だろう。
「そんな話だけでは、私の知識欲が満足しないのよね」
 と、アトラスの言鍵・アレクシア(c02594)は、怒りすら露わにする。
 彼女は、愚かなレジスタンスに【戒律】の素晴らしさを突きつけたいと思っていたらしいが、こんな話ではそれも不可能になるのだろう。
 それを仲裁したのは、黄金瞳の獅子・レオン(c06178)。
 彼は、ドンチャッカの頭髪と騎士団長の地位を守るためにやってきた男であったようだ。
「団長は、まだ話の途中だぜ! 文献が無いからって根拠が足りないとはかぎらねー。まずは、団長の話を聞こうではないか」
 レオンの説得に、反駁していたエンドブレイカー達も、ドンチャッカの話を聞く態勢に戻った。
 反論するのは、全ての話を聞いてからでも遅くは無いだろう。

 レオンに軽く礼を言ってから、ドンチャッカは戒律の謂われが伝わっておらず古い文献も存在しない理由について語り始めた。
 彼が言うには、エルフにとっての『戒律』は、言葉で教えるようなものでは無いというのだ。
 エルフであるならば誰であっても、戒律を知る事ができ、それが『偽りでは無い』事を感じ取る事が出来る……そう彼は説明したのだ。
「もし、生まれたばかりのエルフを隔離し一切戒律についての情報を与えなかったとしても、そのエルフは戒律を自分で知る事ができるだろう」
 ドンチャッカの説明を聞く、エンドブレイカー達の表情は半信半疑であったが、その説明は彼らの疑問を解くものではあった。
 エルフ達は、誰に教わらなくても、戒律を知り戒律が偽りでは無いと知る事が出来る。
 つまり、戒律を子供に教える必要も無いし、戒律を伝える為に文献を残す必要も無い……ということになるなのだ。

「確かに、エルフで無い者には外から来た人達には奇異に思えるかもしれないが、これは、エルフだけが判る感覚なのだと思う。
 私も、自分がエルフで無ければ『真実か否かを立証で気もしない戒律に従う』など考えられないと思うだろう。
 だが、逆に考えてみてくれ。
 殆ど全てのエルフは『戒律により処刑されるハーフエルフやダークエルフを可哀想だと感じて』いるのだ。
 そして『救えるものならば救いたい』とも考えている。
 誰も好きこのんで同胞の子供を殺したいとは思わないだろう。
 だが、それでもなお、戒律が守られ続けてきたという歴史そのものが戒律が正しいものである証だと言えるのではないだろうか?」
 ドンチャッカの言葉には、確かに説得力があった。
 今まであったエルフ達の多くも、ハーフエルフを可哀想だと言いつつも、戒律なので仕方ないという反応を示していたでは無いか?

「了解。話はわかったっすよ!」
 真昼の月・ディアナ(c01140)は、快活にそう答えたが、同時にこう続けた。
「話はわかったっすけど、総帥が戒律に対してどう思ってるか知りたいっす!」
 これから総帥の手足として働くためには、是非、それを知っておきたい。
 ディアナはそう主張したのだ。
 誰が呼んだか亡六情・ジングシュピール(c02580)も、
「戒律に関して総帥はどう考え、守るべきと考えているか」
 と聞く。
 可哀想だが処刑するのはしょうがない……というのが、ドンチャッカ個人の結論であるのか……、それとも、もっと上を目指しているのか。
 結果は変わらなくても、それは大切な事かもしれない。
 主と在りし護り刀・ショウキ(c10227)も同じで、
「騎士団長ドンチャッカとしてではなく、エルフヘイムの行く末を思う一人、ドンチャッカに問いたい。御主はエルフヘイムに伝わって居る戒律を如何様に思って居るかの?」
 と問いただした。
 この問いにドンチャッカは強い熱意でもって返答した。
「戒律は人を殺す為のものでは決して無い。全てのエルフが戒律を守ったならば、ハーフエルフが生まれる事は無いのだから」
 ドンチャッカは、現在のレジスタンスの問題が解決した後は、新たなハーフエルフが生まれないように、親となるエルフ達に呼びかけていきたいと語った。
 時として、恋愛感情というのは抑えがたいものだが、子供を作る以外の方法で恋愛感情を昇華させる方法もあるはずである。

(「ハーフエルフを殺すってのは、俺の価値観としてはちいっと受け入れがたい話だが……。親に呼びかけるって活動っていうのなら」)
 この答えを聞いた聖者の右手・キリク(c04206)は、ドンチャッカもいろいろ考えているのだなと納得したようだ。
 火影・キルビス(c12587)も、
「今は辛くても、平和で豊かなエルフヘイムになる未来はありえる……んですよよね?」
 と、ある程度納得したようだ。
 いまいるハーフエルフに関しては何か解決策を見つけなければならないけれど、それでも、未来が明るいと感じられるのは嬉しいことに違いは無い。
 弓の魔法剣士・フレディ(c02150)も、ドンチャッカの答えにはある程度理解を示したが、エルフヘイム政府に対しての疑惑はより深まったと感じたようだ。
(「レジスタンスもあやしいですけど、政府側もあやしいですよね。もし、エルフヘイム政府がドンチャッカと同じ考えを持っているのならば、レジスタンスに対して話し合いを持ちかけたりしている筈。それなのに、実際は、ドンチャッカを更迭して武闘派の副団長を昇格させようという動きをしている。どこかに戦いたい人がいるのかな?」)
 この推測は、疑惑としてフレディの心に残ったようだった。

 勿論、誰もが、ドンチャッカの話に納得できたわけでは無い。
 いや、もしかしたら納得できない者の方が多かったかもしれない。
 夕闇に咲く菫・ヴァイオレット(c04389)は、ある問いをドンチャッカに投げかけた。
「質問である。仮に、凶悪殺人鬼か無実の者のどちらかが入れられた、中が見えず声も聞こえない箱があるとすれば、どうするであろう。私からして、今の騎士団の方針は『箱ごと潰して殺す』という答えに見えるのであるよ。実際に滅亡が訪れていない以上、戒律違反者は箱の中にいる人物のようなものなのではなかろうか」
 ヴァイオレットは、エルフヘイムが滅亡していない以上、ハーフエルフがエルフヘイムを滅亡させるかさせないかは『未だ定まっていない』事であり、裁くべきものでは無いと主張したのだ。
 戒律がエルフだけが感じる事ができる不思議な声のようなものだとしても、その声が正しいなんて、誰も証明できていないのだから。
 光を纏う魔法騎士・サイラス(c02023)と野獣死すべし・フランシスカ(c01490)は、
「過去にハーフエルフが原因で災いが起きたことがあるのか?」
「歴史上、過去にハーフエルフが脅威を齎した前例はあるか?」
 と、異口同音に事実関係を確認するためドンチャッカに質問した。
 戒律を破った事が原因でなんらかの災いが発生したという事実があるのか無いのか、それが重要だとサイラスは思ったのだ。
 そのサイラスの質問に、虚ろの従者・ゼフィリス(c01487)も、
「確かに、ハーフエルフを処刑する為には、その根拠となる何かしらの事件が発生したと考えるのが妥当ですね」
 と同意する。
 だが、ドンチャッカの返答は「証明された事実は無い」というものだった。
「戒律を絶対と思う者達の中には、あらゆる災害をハーフエルフのせいだと言い出すものもいるが、私はそうは思っていない。
 ハーフエルフのせいで起きた災いである事を証明するには、ハーフエルフがいなければその事件が発生しなかった事を示さなければならないのだから当然だろう。
 だが、同様に、ハーフエルフが災害の原因では無い事を証明する為には、ハーフエルフがいない世界でも同じ災害が起こる事を証明しなくてはならず、やはり証明は出来ない」
 それは確かにその通りだが、やはり、釈然としない
 ならばと、朱色の風・ヴァーミリオン(c16326)は、
「破滅の危機は、どんな風に起こるんですか? また必ず起こるんでしょうか?」
 と問いかけた。
 エルフヘイムの滅亡という未来が、どのように来るかが判っているのならば、防ぎようもあるのではと思っての問いだったが、ドンチャッカは、少し呆れたように返答しただけだった。
「必ず起こるのならば、騎士団の活動に意味が無い。戒律を守る事が、それを防ぐ唯一の方法なのだ。破滅がどのように発生するかは判らないが、それを知っても意味は無い。知ったときは、手遅れなのだから」
 ドンチャッカの説明は理屈は通っているように聞こえるが、結局の所、
(「滅亡するかどうかは証明されてないだろうけど、じゃあどうして滅亡するってわかったんだろ」)
 という、ヴァン・フォン(c15174)らの疑問に答えるものにはなっていなかった。
 だが、世の中には絶対の証明などは存在しないものだ。
 高名な予言者の言葉だったとしても、古い文献の記述だったとしても、それをもって絶対の証明とは言い切れるものでは無い。
 結局は、それを信じるか否かという、受取手側の問題になるのだろう。
 だが、それならば……と、夢壌の壁・エルヴィン(c04498)は疑問を口にする。
「もし、ドンチャッカ総帥の言葉が全てのエルフに共通の認識ならば、どうしてレジスタンスが存在するのだろうか?」
 ここまでのドンチャッカの説明が真ならば、レジスタンスが存在できる余地は無い筈とエルヴィンは考えたのだ。

「確かに、その疑問はもっともだ。だが、レジスタンスであったとしても、エルフであるならば、戒律が正しい事を疑いを持ってはいないのだよ。
 レジスタンスに協力する者達の言い分を聞いてみれば、彼らが『戒律が正しく無いので破戒する』のでは無く『戒律によって訪れる災いは、皆で少しづつ分かち合うべきであり、ハーフエルフやパートナーのいないダークエルフだけに押し付けるべきでは無い』と考えている事がわかるだろう」

 このドンチャッカの返答に、今度は、白雪の騎士・メイフェリア(c01621)が手を上げて質問をする。
「皆で災いを分かち合う……それが出るなら、ハーフエルフを処刑したりしなくて良いんだよね?」
 そのメイフェリアの言葉に、ドンチャッカは首を横にふって続けた。

「皆で少しづつ分かち合うべきと言うレジスタンスの考え方は高潔であり、尊敬できるものだ。
 だが、災いとは、我々エルフヘイムのエルフ全員が等しく分かち合ったとしても、それを支えきる事ができない程の規模なのだ。
 もし、災いが解き放たれれば、エルフヘイムの全エルフが命を失う事になるだろう。
 そうなれば、レジスタンスが助けたハーフエルフ達も、やはり死んでしまう事になる。
 もし、災いの大きさが『エルフヘイムの実りが半減し、全てのエルフが今よりも不幸せになる』くらいのものであれば、私もレジスタンスの行動に賛意を示した事だろう。
 だが、認めるには、災いの大きさが大きすぎるのだ」

 確かに、戒律には『エルフヘイムに滅亡をもたらす』と明言されており、これが実現すれば、エルフヘイムは滅亡することだろう。
 だが、果たして滅亡とは『エルフヘイムの全住民が死亡する』事なのだろうか?
 剣の城塞騎士・アラストール(c02801)は、その点を問いただすことにした。
 例えば、エルフヘイムが滅亡が、都市の終わりを示しているだけならば、エルフ達は他の都市に移動したり、新しい都市を造ることだって出来る筈だ。
 少なくとも、アクスヘイムの人々は海に沈んだアクスヘイムから出て、新たな都市国家を作っていたのだから。

「エルフヘイムの滅亡とは何か……か。確かに解釈の仕方は幾つもあるかもしれない。レジスタンスのリーダーなどは、エルフヘイム政府が滅びるだけで庶民の暮らしには影響が無いかもしれない……といっているくらいだからな。
 だが、少し考えれば、それが正しく無い事が判るだろう。
 戒律を定めたのはエルフヘイムを滅亡から救った妖精騎士なのだよ。
 もし、エルフヘイムの滅亡が、新たな都市に移住すれば良いという程度のものであったならば、罪も無いハーフエルフを処刑するような戒律を定める筈が無いではないか?
 滅亡は、妖精騎士達が、ハーフエルフを処刑するという戒律を作らなければならない絶対のものなのだ」
 そのドンチャッカの返答から、アラストールを初めとしたエンドブレイカー達は真実を感じ取っていた。
 少なくとも、これは、ドンチャッカにとっても真実なのだろう。

 ドンチャッカのここまでの説明を聞いていた、護法の戦姫・マナ(c08375)は、その言葉に嘘がない事を納得して、力強く宣言した。
「騎士団はエルフヘイムの法に基づいて活動しているのだ。それに疑いは無い。ならば、その騎士団の一員となるのに意義は無い」
 城隍の鉾槍・エルンスト(c07227)も、戒律の理不尽に関して異義を感じるところではあったが、それでも、エルフヘイム騎士団の活動が『悪では無い』事を認め、マナに同意する。
「私は、敵であるレジスタンスの考えにも敬意を示した貴殿の考えに同意したい。この国の見出す善がどの様であれ、それは秩序と平穏の内に見出されるべきと思います。それができるのは、きっと、貴殿だけなのだろう。その一助になれば幸いだ」
 エルンストの言葉に、ドンチャッカは感謝を込めて礼をする。
 熊殺しの・リゼルグ(c03551)も、ドンチャッカの目を見て力強く言い放つ。
「少なくともレジスタンスのやり方は間違っているからな。奴らの活動は、結果的に、都市警備隊の活動を阻害して無辜のエルフヘイム市民の命を危険にさらしたんだ。ハーフエルフを助けるという目的の為に、他のエルフ達を危険にさらして良いわけはない」
 戒律には疑問があるが、レジスタンスのやり方は正しく無い。
 ならば、騎士団に身を置く事は、きっと正しいはずだ。
 白百合の剣舞士・ユリアス(c01604)も、
「最近のレジスタンスの動きは聞いている。戒律内容に思う所もなくはないが……、それ以上にレジスタンスの動きに疑問がある。故に、私は騎士団としてエルフヘイムを守っていきたいと思う」
 と、エルフヘイム騎士団への助力を約束した。
 砲撃娘のレヴァリエ・シャーロット(c16581)も、
「秩序と治安を守るのが騎士団の役目。それは何処に行っても変わらないものですわね」
 と、騎士団への入団を希望する。
 戒律が何故制定されたのかを知りたいと思っていた彼女にとって、ドンチャッカの返答は、納得できる物だったのだろう。
 シンシアリー・シャルロット(c15334)も、きりりと一礼して、騎士団への入団希望を心を込めて述べた。
「私、このエルフヘイムが好きです。長い旅路を終えて美しい森を目にした時、どれだけ心震えたか。初めて会うエルフの皆さまが、どんなに優しくして下さったか。その全部が大切な思い出なのです。種族の違いも、この場所にいる時間の短さも、頼りなく思えるやもしれません。けれど、私もこの街の役に立ちたいからここに来ました。旅人じゃなくてお客様じゃなくて、この街の一員になりたいのです。よろしくお願いしますっ」
 その素直な心根は、ドンチャッカを初めとしたエルフ達と、そして、その場にいたエンドブレイカー達の心を振るわせるに充分なものだったろう。

 こうして、多くのエンドブレイカーがエルフヘイム騎士団に加わることになった。
 それを見やって、裸足の舞姫・ミランダ(c15405)は心中で密かに思うのだった。
(「これでエンドブレイカーは、レジスタンスとエルフヘイム騎士団の双方に加わることになった……。ということは、エルフヘイムの治安と『戒律』の均衡が、取れるという事なのかしらね?」
 その答えを知る者はいなかったが。
 少なくとも、エンドブレイカー達にとっては、新たな行動の場と選択肢とが得られる事になったのは間違い無かっただろう。

●去る者たち
 ドンチャッカの戒律についての説明に、エンドブレイカー達の多くは納得したようだが、全ての者が納得したわけでは無かった。

「私は納得できません。過去の妖精騎士を賛美するのは美しいかもしれませんが、ハーフエルフ達の生命を奪わず滅亡回避手段を見つける事をしようとしないのは、騎士の道では無い筈です」
 黒騎士・メリーヌ(c00153)は、そう強い口調で言うと「私は場違いのようですね。失礼します」と言葉を残して会場を去った。
 煤被りの・ティーエヘカトル(c11159)も同様だった。
 ティーエヘカトルの護りたいという想いは『戒律』ではなく『人』を向いていたし、助けられない命を助けられる命に変える事が自分のやるべき事だと思っていたので、戒律に反するハーフエルフは万難を排しても処刑しなければならないというドンチャッカの言に納得することは出来なかった。
 鉄仮面・ジョージ(c16907)も、
「弱者を守る、それが騎士だ。それはエルフヘイムでも同じだろう? 戒律がどうとか、そんな法律論は学者さん同士でやってくれ。そんなことの為に、いつまでも弱者が苦しんでいる。それが問題だ。目の前の弱者を助けたい。その為に俺はここに来たんだ! そうだろう? みんな!」
 と、周りに呼びかけたが、エルフ達からの賛同は全く無かった。
 エルフヘイム騎士団は、戒律を守る為の組織であり、弱者を守るための組織では無かったのだから……。
 これは、文化の違いから来るギャップだったのかもしれない。
 ダメージギャンブラー・アクロ(c00707)も、
「最近は奇妙な殺人事件なども起きて人口が減っているというのに、混血と言うだけで処刑するなんて政府の連中は国を破滅に導く気か? まったく納得できない!」
 アクロは、ハーフエルフを生み出したくないならパートナー制など作るべきでは無いだろうと、言い捨てると憤然と会場を去って行った。
 突撃大回転・ニルバーナ(c02259)も、
「けっきょく〜、ハーフエルフさんは殺すってことなんですよね〜。わたしは、ハーフエルフさんもレジスタンスさんも殺すのなんてダメだって思いますぅ。定職はとっても魅力的だけど、お給料でかっこいいスーツアーマーも買ってみたいけど、やっぱり、入団はできません〜」
 と、おっとりとだが確実に入団を拒絶した。
 まぁ、レジスタンスの幸せも守りたいという志望動機では、入りたいと言っても入れて貰えなかったと思われるけれど。
 夢の狭間に見た奇跡・エミリオ(c02422)も同様で、ハーフエルフ達を傷つける戒律を辞めさせる事を願い、ドンチャッカ総帥ならば話が通じるかもと思ってやってきたのだが、ハーフエルフを殺さなければならないというドンチャッカの固い意志を知った為、騎士団への入団の意義を見失ったようだ。
「騎士団に入っても、戒律の正しい成り立ちを知るチャンスはなさそうですしね」
 常夜の歌姫・ヤト(c04397)も、ドンチャッカの言葉に失望した一人だ。
「力無い者の為に戦うというのなら協力させてもらおう」
 と考えてここまで来たヤトだったが、ドンチャッカからは、戒律という理不尽に立ち向かうの気概を全く感じなかったのだ。
 彼にとっての正義は、戒律と共にあるのだから、それも詮無いことだろう。
 忍び寄る業火・ラサティ(c02695)は、ドンチャッカに『戒律を越えて、目覚める前の災いを退治する』事を提案したが、ドンチャッカに『そんな事は不可能だ』と断じられた為、騎士団への入団を見合わせることにした。
 騎士団では、彼女が思うとおりの活動を行う事ができないとわかったから。
 咎獅子・ディフォード(c03198)も、さばさばした風情で会場を去る。ディフォードは、ドンチャッカに対して『俺の故郷には、ハイエルフが世界を滅ぼすという神託があったんだが、進んで犠牲になるのか』といった問いかけをしたが、まともに取り扱って貰えなかったらしい。
 梟爪闇翼・フェイ(c03258)も、ダークエルフの人口推移を調べれば、もっと残酷な事実が判明するはずだと主張したが、そんな事実は無いとサックスに断言されて、しぶしぶ自説を取り下げざるを得なかった。
 食物連鎖のブラックホール少女・テスラ(c05891)も、処刑は人的資源の無駄で人心が荒廃し、未来に禍根を残すと主張したが受け入れられずに会場を去った。
 どうやら彼女は、ドンチャッカに質問しに来ただけで、面接も実技も受けていなかったようであるけれど。
 ハルバードの城塞騎士・イシュタリア(c07222)も、テスラと同様、試験を受けずに、論戦だけを仕掛けに来たようだった。
「法とは人々の生活を守るためにあるものやとおもうておるのじゃが、戒律は、ダークエルフにとっては害悪にしかみえぬ。根底にあるのはダークエルフへの差別意識なのではないかえ?」
 が、彼の推論であったが、ハイエルフとダークエルフに上下の格差は無いと断言されただけであった。
 実際、騎士団員にはダークエルフもいるし、レジスタンスにもハイエルフはいる。
 ハイエルフとダークエルフが差別されているというのは、少なくとも、パートナーを持つ者同士の間には存在しないらしい。
 赤髪の・アレス(c07737)は、ドンチャッカに対して、全てのエルフが共存できる道があるはずだと主張した後、
「騎士団には入団出来ぬが、また、寄らせていただく」
 と立ち去っていく。
 ドンチャッカはアレスをとがめる事もしなかったが、引き留めることもしなかった。
 夕空の雁・レナリア(c08109)も入団するつもりは無かったので試験が終わる前に会場を後にしたが、
「はっきりした根拠もなく子供の命を奪うってことが、どんなにひどいことか、貴方達は考えもしないの?」
 と、ドンチャッカに言い放った。
 戒律をはっきりした根拠と考える者と、はっきりした根拠では無いと考える者の溝を埋める事は、不可能なのだろうか。
 貂威無法・タマラ(c16484)も、
「ハーフエルフがエルフヘイムを滅亡させるというけれど、実際にそれを見た者はいないじゃないか!」
 と反駁。
 そして、ドンチャッカに『エルフヘイムの民であるハーフエルフ』と『エルフヘイムという国そのもの』のどちらを守りたいかという問いを投げかける。ドンチャッカの返答は当然『エルフヘイム』であった為、タマラは、もう話す事はないと会場から去っていった。
 戒律を信じるものと信じないものの格差は、やはり埋める事は難しいようだ。

 彼ら15人が会場を去ると、ドンチャッカは少しだけ寂しい表情を浮かべる。
 彼らの言い分は、彼にとって全く理解できないものでは無かった。
 そう……そのような葛藤は、既に何年も前に終わらせて今の自分がここに居るのだから……。

 だが、その暗い雰囲気は長くは続かなかった。
 それは、斧剣使い・ゼク(c00842)が、明るい口調でこう提案したからだ。
「話は変わるが入団者を決めたなら、次は歓迎会だろう? 一気に人数が増えることになるし、顔合わせと先日の一件で下がった士気の高揚も兼ねて団結式という名の宴会をやってはどうだろうか? 大人は酒、未成年は美味い料理を食べて騒げば元気も取り戻せるだろうさ」
 それは、確かに、名案に違いなかった。



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参加者:370人
作成日:2010/11/08
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