ステータス画面

重装サイを撃破せよ

<オープニング>

 ズン……ズン……。
 森の中を、重量級の何かが移動する音がする。
 見た目はサイ……だろうか?
 鬱蒼とした森の中を歩く、サイのようなもの。
 いや、その姿はサイと言っていいのかどうか。
 体を覆う鎧のような光沢の外皮。
 そして、人間程度なら突き殺してしまいそうな凶悪な角。
 生い茂る木々の間を、その鈍重そうな体に似合わぬ身軽さで潜り抜けていくサイ。
 その動きには一切の無駄がなく、手慣れている。
 このサイもまた、この森と共生をする生き物という事なのだろう。
 ……その体に、マスカレイドの仮面がなければ……の話ではあるが。
「皆の協力もあり、レジスタンスの拠点の場所を特定することが出来た」
 騎士団総帥・ドンチャッカはそう言うと、しかし暗い表情で一呼吸置く。
「しかし、その森には、魔物と言って良いぐらいに強力な獣達がいたのだ。このままではレジスタンスの拠点を制圧する事など夢のまた夢だ」
 そこで、騎士団では作戦を検討して、レジスタンスの森の中央に向かう『道』を建設する事を決定した……とドンチャッカは集まった面々の顔を見回しながら説明する。
「実際の道を作る業務は、近隣の木こり達に依頼しているので、お前達には、この木こり達を護衛して、作業が無事に進むようにする仕事をお願いする。魔物のような獣達と戦う事になるが、エルフヘイム騎士の名誉にかけて、必ず木こり達を守って欲しい」
 その地域に出没する獣の情報については、森の調査を行った騎士から情報が入っているから、良く確認するようにな。
 そう説明すると、ドンチャッカは報告書を机に置くのだった。
 魔物のように強力な獣。
 それがマスカレイドである事は、エンドブレイカーである彼等にはすぐに理解できた。
 騎士団員の報告によれば、獣は金属鎧を着込み、シールドスピアを装備したサイ……といった風体の獣であるらしい。
 ただのサイとはとても侮れぬ相手であるらしく、仮にサイの名前を重装サイと呼称しているようだが。
 その素早さは巨体に似合わぬ程で、頭部の槍のように進化した角は、疾風突きや百烈槍を思わせる攻撃を繰り出し、報告によれば頭部の動きで竜巻を作り出し槍風車のような技まで使うという。
 そこに付き従うのは、6体の黒い猿。これは恐らく配下マスカレイドであるのだろうが……鋭い爪をもっていた、と情報にはある。
 これを倒せば、安全な道を作る為の作業が一歩前進するのは間違いない。
 それは、レジスタンス達に迫る危険への一歩、という事でもある。
 だが……森のマスカレイドを倒す事はエンドブレイカーのやるべき事であり、騎士団の仕事でなかったとしてもやるべき事かもしれない。
 複雑な思いを胸中に秘めながら、エンドブレイカー達は作戦を立て始めるのだった。


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参加者
ひよこ・ナハト(c00101)
竜の掌握・フリオ(c01043)
翠緑なる探究・スイセツ(c01342)
紅の剣閃・ヴァーニシュト(c02243)
雪下山水・ソフィア(c02845)
キャンディママ・ギロチーヌ(c02927)
黄金瞳の獅子・レオン(c06178)
刃を砕く者・ヴァルブルガ(c11855)
負けるな皆の・エィージ(c13324)
半熟重騎兵・ロイ(c14920)

<リプレイ>

●森を切り開け
「よーっし、初仕事がんばろーっと」
 そんなひよこ・ナハト(c00101)の声が、鬱蒼とした森の中に響く。
 眼前では、木こり達が木を切る音。
「予想以上の場所ですね……」
 翠緑なる探究・スイセツ(c01342)の声が森の中に響いていく。
 複雑に絡まり合うツタと、乱立するように生えている木々。
 生い茂る草も含め、そのままでは歩き進む事も困難な森。
 そこを今、木こり達が次々と切り倒して道を開いていた。
 まだ例のサイは出てこないようだが……油断は禁物だ。
「何としても皆さんを守ります。作業の方、どうかお願いしますね」
 雪下山水・ソフィア(c02845)の言葉に、木こり達が手を振って答える。
「エルフヘイム騎士団に入団してから最初の任務だ。きっちり仕事をはたそうじゃないか!」
「騎士団からの信頼を得るためにも、必ずや成功を!」
 刃を砕く者・ヴァルブルガ(c11855)と負けるな皆の・エィージ(c13324)が気合を入れる横では、半熟重騎兵・ロイ(c14920)が、やはり気合を入れ直している。
「いいかロイ……城塞騎士たるもの、こう言う時こそ皆を守る盾になるんだ」
 自分に言い聞かせるように呟くロイ。
 形見の盾を握る手にも、自然と力がこもる。
「思うところは色々あるが、今はマスカレイドを倒す事に集中しねえと。これは俺達にしか出来ねえ事だしな」
「まあ、体制側で動くも悪くねえ感じだし情勢眺めでのんびりしてた甲斐が有るつうもんだぜ」
 竜の掌握・フリオ(c01043)と紅の剣閃・ヴァーニシュト(c02243)の言葉は、彼等の複雑な胸中をよく表している。
「あっ!痛ぁ……また引っかけちまったよ」
 そんな中、キャンディママ・ギロチーヌ(c02927)は辺りの枝に引っかけつつも木こり達の作業を見守るように見つめている。
「流石は永遠の森エルフヘイム、高露出度のあたいにゃ辛いものがあるね。この森林用迷彩ビキニアーマーじゃなかったらと思うとゾッとするよ」
 どんなビキニアーマーだろう、と突っ込むのは野暮というもの。
 そんな状況でも木こり達から目を離さないのは流石というところだが。
「やっぱ、斧は片刃さね!」
 見ていたのは木こりというよりも、彼等の使い込まれた片刃の斧であったらしい。
 どうやら、多少趣味もあったようだ。
「まずは武勲を立てて団長の信頼を得んとな……」
 一方の黄金瞳の獅子・レオン(c06178)は彼なりの大望があるようだが……どうであるにせよ、この任務にかける想いは皆同じだ。
 いつサイが出てきてもいいように警戒し、木こり達を守る。
 まずは、それを注意しながら。

●重装サイ、現る
「入った事の無い森を探索するのは楽しいものですね」
 今回のような任務で無ければもっと楽しくなったのであろうが……スイセツは、そんな事を口にする。
 切りひらかれていく森の先……その先から。
 突如、地響きのような音が鳴り響く。
「この音は……!」
 フリオのホークアイが、未だ切り開かれてはいない森の先を見据える。
 鬱蒼とした森の木々の間を、すり抜けるように歩くサイ。
 そして、その近くを付き従うように移動する黒いサル達の姿。
 ズン……ズン……という地響きに、木こり達も手を止めて動揺し始める。
 それ程の威圧感を持つ音だが……これが近づいてくるとなれば、その重圧は如何程のものか。
「ほら、こっちだよ!」
 足音が聞える方向とは逆方向へと木こり達を誘導するギロチーヌ。
 木こり達は、慌てて我を競うようにギロチーヌの後へとついていく。
 ソフィアは、近づいてくる音に耳を澄まし……ガサガサと慌ただしく揺れる木の葉に気付く。
「……来ます!」
 そう叫ぶと同時、木々の間から黒いサル達が降り注ぐようにして飛び出してくる。
 その数は6匹。
「さあ張り切って頑張るぜ!」
 ヴァーニシュトがCrimson Rustを構え、サルと相対する。
「愛くるしかったりモフモフ……じゃねえな」
 レオンが少し残念そうな、しかし安心したような顔をする。
 お猿さん……というよりはザ・モンキーといった凶悪な風貌だが、一体どんなサルを想像していたのだろうか。
「もっと引き離すのに苦労すると思っていたけどね」
 トンファーを構えたエィージは、サルと相対しながらそう呟く。
 サイとサルを引き離す手順を考えていただけに、サルが先行して襲ってきたのは運が良かった。
 露払いのつもりで襲ってきたのだろうが……そう簡単に払えるような相手ではないということを、教えてやらなければならない。
「さぁ、わっち達が相手だ!」
 ヴァルブルガは軽く豪快なフットワークでトンファーを構え、スイセツの呼びだした星霊ヒュプノスがサルへと襲いかかる。
 始まる戦闘音。より一層大きな音で響く足音。
 ……そして。森の中に目が光る。
 ズン、と。地面を揺らすかのような重低音の足音。
 戦う心意気の無い者であればそれだけで心折られてしまいそうな、そんな威圧感。
 そんな音と共に金属の光沢を持つサイが、姿を現す。
 鈍い鋼色に光る表皮、磨き上げられた槍のような角。
 報告書と寸分違わぬその体には、マスカレイドの仮面がついているのが分かる。
「かっこよすぎる……!」
「成る程、重装サイと呼ぶのも納得の姿だな」
 ナハトとフリオが、思わずそう呟く程の重厚な姿。
 連れて帰りたい……などと目をキラキラさせているナハトだが……マスカレイドとなってしまっている現状では、無理な話であるのが残念なところだろう。
「自然の防衛線……と言うには、危険すぎる存在ですね。事情抜きでも倒しておかなければ」
 ソフィアは白水を構え、サイを見据える。
 報告で聞いていた以上の威圧感のある外見に加え、その体のマスカレイドの仮面……。
 これが重装サイ。
「よし……やってやる!」
 ロイは騎士盾を構え、サイを睨みつける。
 戦いは、こうして本格なものへと移行していく。

●重装サイを撃破せよ
「この獅子の力で、あなたを止めます!」
 ソフィアのライジングレオが、重装サイを引き裂き喰らうかの如き勢いで襲いかかる。
 だが、見た目同様サイの耐久力は凄まじい。
 一気に踏み込むと四連、六連と無数の突きをフリオへと繰り出していく。
「ぐっ……」
 ズシンとくる痛みに、しかしフリオは怯まない。
 こんなところで倒れるわけにはいかない。
 自分が倒れれば仲間に、木こり達に危険が及ぶのだから。
「しっかりしな! 騎士なんだろう!? この程度で倒れるんじゃないよッ!」
 そこに、木こりを退避させ戻ってきたギロチーヌの癒しの拳がフリオへと叩きこまれ。
「フカさん、お願いしまーす!」
 ナハトの召喚した星霊ジェナスがサイをかみ砕かんと襲いかかっていく。
 重装サイとの戦いがこうして激化している間に、サル達との戦いもヒートアップしていた。
 サルの生み出す虚空の刃を受けつつも、レオンはフォーススティンガーを放つ。
「ついてこれるかい? このスピードに!」
 トンファーブロウ、トンファーキック、目にも止まらぬ連打をエィージは打ち込んでいく。
「なるべく急いで、そして確実に……1匹倒さないと」
 ロイもまた、自分の相対するサルにディフェンスブレイドを仕掛ける。
「これで……っ!」
 ヴァルブルガはサルを掴むと、バックドロップに続けて豪快なパワーボムを仕掛ける。
 サルはギィッという耳触りな声を出してフラつくが、なんとか耐えてヴァルブルガを引き裂こうと襲いかかる。
「邪魔する相手が仮面持ちなら手加減しなくて良いのが判り易いぜ……一気に殲滅敢行してやる!」
 ヴァーニシュトのワイルドスイングがサルへと叩きこまれ……耐えきれなくなったサルが、ドサリと力なく倒れる。
 一体一の構図は崩れ、対サルの局面は一気に有利に傾いた。
 だが、まだ他のサル達とサイは健在。
 一瞬も油断のならない戦いが続いていく。

●そして、森は切り開かれていく
「バッドエンディングは許さねぇぜ!」
 レオンの極大撃滅波が、サルを打ち倒し、エィージもまた自分の相対していたサルを打ち倒す。
 倒れていくサルの数は、この戦いへのカウントダウンか。
 着実に勝利への道が見えていくのが分かる。
 だが、サイは未だ健在。あれを倒さねば、勝利はあり得ないのだ。
「……っ! この程度ではまだ、倒れませんよ!」
 重装サイの突き刺すような一撃を受けたソフィアはよろめきつつも、何とか耐える。
 硬く、一撃が重い。
 たったそれだけのシンプルな強さ。
 そして、マスカレイドとしての強化された能力。
 魔物のような……という表現は、実に的を射ている。
「うーん、無理しないでな?」
 ナハトの呼びだしたスピカが、ソフィアをぺロぺロとなめる。
 すでにフリオ達サイ担当班は、足止め以上の役割は果たしている。
 そして、ヴァーニシュト達がついにサル達を仕留め終わりサイ戦線へと参加する。
「待たせたな!」
 言うが早いか、サイへ向けて駆けだしていく。
「やろう、皆! あとはアイツだけだ!」
 ロイが、エィージが……サル班の仲間達も揃い、形勢は一気に逆転した。
「さあ……覚悟してもらうよ!」
 ギロチンアクスを構え、ギロチーヌが叫ぶ。
 元の数から言えば、10対7。
 重装サイの実力から考えれば、ほぼ同等の戦力であったと考えていい。
 ならば、両者を分けたモノはなんだったのか。
 答えは明白。
 サイとサル達の主従関係とナハト達の連帯感。
 そして、互いに背負っているモノ。
 綿密に練った作戦も功を奏し、負ける要素は1つもない。
 そして、幾度かの交差の後倒れた重装サイを見下ろしフリオは呟く。
「レジスタンスの拠点制圧……か」
 そう、この一歩はレジスタンスの拠点制圧への一歩だ。
 それでも、思う。
 騎士団へ入団した事も俺が選び、決めた道……何があろうと全て受け止め、前へ進むつもりだと。
 今はこの立場で、最良を目指して全力を尽くそう、と。
「……エルフ達を戒律から解放する術も早く探さねえとな」
 結局は、そこに行きついてしまうのだ。
 例え現時点で、打てる手がなかったとしても思わずにはいられない。
「このツノだけでも持って帰れないかなーいいなー」
 ナハトがそんな事を呟きながらフリオと一緒にサイを埋めている最中。
「もう大丈夫ですよ」
「お前らは俺達騎士団が守る! 安心しな!」
 ソフィアとレオンが、安心させるような笑顔で木こりを連れてやってくる。
 そして再開される、木を切る音。
「よし……頑張れた。やったぞ!」
 喜ぶロイ。そう、これで完全に任務を成功させることができたのだ。
「……うーん、まさしく天然の要塞だけど……レジスタンスの人たちは襲われたりしないのかな? まあ考えたってわかんないしいいや」
 穴を掘る手を止めて、ナハトがそんな答えの無い呟きをする。
「……切り開いた先、何が起きるでしょうね?」
 そんなソフィアの呟きも風と木を切る音の中に消えていく。
 この一歩が、何処へ繋がっていくのか……それは今は分からないけれども。
 任務を成功させた確かな充足感は、確かにここにある。



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作成日:2010/11/21
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