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サロン・ド・ダァサイ

<オープニング>

 エルフヘイムの森の奥の奥のある一角、そこには人目を避けるように小さな家がある。
 それはある貴族が作り出した小さな娯楽のための施設。
 その中には社交場として作られた小さなホールがある。
 美しいシャンデリアが照らし出す赤き絨毯が敷き詰められたそのホール。そこには、怪しげに言葉を交わす白き仮面をつけた3人の人影があった。
「ダァサイがやられたようだな……」
 ニヤリと唇を吊り上げるのはアフロの大男。頭の上には鳥の巣をセットし、衣装は無駄にラメ塗れな上に無駄にシルバーアクセをぶら下げている。
 その姿は呆れるほどにダサい。
「ククク……奴らは我々の中でも氷山の一角……」
 そう言って笑みを浮かべるのは髪の毛を2メートルほども逆立てた少女。
 唸りをあげて天を貫くような凄まじい髪型だけならまだしも、それをクリスマスツリーのごとく飾り立てているため、その姿は正視に耐えない。
「エンドブレイカーごときに負けるとはマスカレイドの仮面汚しです」
 言葉を締めくくるのは、ハサミを手にしたメイド。
 機能美と清潔感に満ち溢れたその衣装の中でひときわ目立つのは、ホワイトプリムをつけている頭。それは何故かモヒカンであった。
「まぁ、それはさておき、今日もダサく飾り立てましょう、ヤァバイお兄様」
「そうだな、キュテイ」
 そう言って3人はくるりとホールの中央に目を向ける。
 そこには大鏡の前に置かれた椅子に縄で縛り付けられた数人のダークエルフの姿があった。
 必死でその束縛から逃れようとするダークエルフ達。その髪型は一様に美しい。
 しかし、そこにマスカレイド達の間の手が迫る。
「いやぁぁぁぁぁっ!」
「うぉぉぉぉー! これがアフロと縦ロールを組み合わせた、まったく新しいヘアスタイル!」
「いやぁ、髪の毛が爆発してるぅぅ! しかも渦巻いてるぅぅ!」
 ヤァバイがダークエルフの女の髪を軽くセットすれば大爆発が巻き起こる。
 あっという間にアフロがもう一人誕生。ダークエルフの女は変わり果てた自分の髪を見て絶望の表情を浮かべる。
「これがこの冬の新作、『ライジングレオ百烈盛り』よっ!」
「いやぁぁ! 髪の毛を無意味に逆立てないで! ライオンみたいに広げないでぇっ!」
 キュテイと呼ばれた女が素早く髪を盛る。
 百烈の名にふさわしく四方八方大量に伸ばし盛られた髪の毛はどうみても超ダサい。苦悶にもだえるダークエルフ。
「さぁ、綺麗にカットしますね」
「いやだぁっ! カッパハゲは……カッパハゲだけはっ!」
「逆モヒカンはらめぇっ!」
 メイドがハサミをふるえば、十字にその髪が切り裂かれる。横に切れば頭の中心だけがハゲ、縦に切れば頭の真ん中に大きなハゲが出来上がる。
 その光景はまさに阿鼻叫喚!
 苦しむダークエルフ達を見て愉悦の笑みを浮かべる3人。そして、彼らの手は続いて唯一ダークエルフで無いスキンヘッドの男に伸びる。
「くそっ、お前らただで済むと思うな! すぐに俺の仲間達が……」
 彼はレジスタンスの協力者。ダークエルフを助けるために潜入し彼らに捕えられてしまったのだ。
「ふむ、スキンヘッドならこちらをどうぞ」
「なっ、なんだこの髪の色は!? 気持ち悪いぞ!?」
 そのスキンヘッドの上に載せられたのは七色に染め分けられた異様な色彩のカツラ。ご丁寧に内部にはノリが塗られており、それは男の頭にぴったりと張り付く。
「さぁ、お前も素敵な髪型にしてやろう!」
「や、やめてくれぇぇぇっ!?」
 新たな犠牲者の悲鳴は森の奥深くに響き渡るのであった。

 レジスタンスの新しい活動、それはパートナーを失った事で死亡したとされていたダークエルフを捕らえて非人道的に扱う貴族の元からダークエルフを救い出すことである。
 しかし、彼らの作戦は失敗に終わる。なぜなら、その貴族らはマスカレイドだからである!
「というわけで皆、レジスタンスより先に、どうか奴らを助けてやってくれ!」
 トンファーの郡竜士・リー(cn0006)はあまりに非人道的かつ、非トレンディなマスカレイドに我慢がならないのであろうか、少し興奮した口調で今回の作戦について述べていく。
「今回の敵は森の奥の家に潜んでいる。周りにはなんにもないから潜入自体は容易なはずだ!」
 そこにいるのはマスカレイドと捕らえられたダークエルフのみ。正面から乗り込んでもなんら問題はない。
 しかし、マスカレイドの能力はかなり厄介だ。肉体を傷つける攻撃こそないものの、髪型と精神がズッタズタにされてしまうであろう。
 妹のキュテイは髪を凄まじい速さで盛ることを得意としている。彼女に触れられれば、何かを超越したようなネーミングセンスの髪型に一瞬で変えられてしまうであろう。
 特に長髪の人ほど狙われやすく、受ける精神的ダメージは計り知れない!
 次に兄のヤァバイは髪のセットを得意としている。そのダサいセットは因果律をも乱して大爆発を起こし、アフロと組み合わせた奇怪な髪型にしてしまう。
 複数の人を同時にセットできるのでかなりの注意が必要だ!
 最後に二人に仕えているモヒカンメイドだ。短い髪の人を主に狙うそのハサミの一撃は恐ろしいほどにダサい髪型を生み出してしまう。
 さらに、彼女は髪の毛が無い人に対しては恐ろしい髪色のカツラをかぶせてくる。そのカツラを兄妹にセットされた日には……きっと想像を絶するほどの精神ダメージを受けるに違いない。
「戦闘中、奴らはダークエルフの事を狙わない。特に気にしなくてOKだ。
 ただし、いろんな意味でやばいから絶対にカツラを持っていくのを忘れるなよ!」
 もし、地毛のままで行ってどうなっても知らないぞ? とリーは念を押す。
「盛りもアフロも好きな人がやればきっと素敵でトレンディな髪型だと俺は思う。
 しかし、奴らは似合わないや嫌いな人にもそれを押し付けてダサくしている!
 そんな悪行許すわけにはいかないだろ?
 真のトレンディを奪還するためにも頑張ってくれ!」
 熱弁をふるうリーの迫力に、誰も『奪還するのはトレンディではなくダークエルフだ』とツッコむ事は出来ないのであった……。


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参加者
深淵のウロボロス・アザゼル(c00671)
千刀狩の守人・ルーン(c01799)
もふ毛求めて・プレノア(c03487)
蒼騎士・ハロルド(c06370)
東西南北アフロ不敗・アフロ(c07959)
ダァサイ根絶を誓った年増・ジェーニャ(c08623)
野獣の子・シュブ(c10423)
鋼の微笑・リースリング(c13127)
地刑星・アール(c14261)
迷妄の仮王・ピルル(c16043)

<リプレイ>

●全員ダァサイ?
 マスカレイド達は愉悦の笑みを浮かべながら、椅子に縛られたダークエルフ達へと歩みよる。
 ダークエルフ達の目に浮かぶのは涙。口から洩れるのは絶望の声。
 毎日のように繰り返される惨劇に、彼らの心は砕け散る寸前であった。
「ちょーっと待ったぁ!」
 その時、女の声がホールに響き渡る。
 突然の声にアフロの大男、ヤァバイは周囲を見渡し叫ぶ。
「何者だっ!」
 それに応えて開かれるホールの扉。
 ダークエルフ達は突然の乱入者に顔を輝かせ……その姿を見て沈黙した。
「ダァサイキラー、プリューシェンカっ!」
 決めポーズと共に現れたのはマスクを被ったダァサイ根絶を誓った年増・ジェーニャ(c08623)である。
 効果音などがあれば決まっていたかもしれないが、その場違いな雰囲気はダサい。
「ふふ……キミ達より僕の方がトレンディじゃないかい?」
 その後ろに立つのはフリフリのドレスを身につけた深淵のウロボロス・アザゼル(c00671)だ。ドリルと見まごうような縦ロールの髪を揺らしながら彼女は妖艶に笑みを浮かべる。
 その横には、兜の隙間から藍色のアフロと縦ロールがはみ出ている鋼の微笑・リースリング(c13127)の姿もある。
「中々にセンスがあるようね。でも、私にはおよばなくってよ!」
 アザゼル同じくフリフリな服を身につけた迷妄の仮王・ピルル(c16043)は、3メートル近く逆立てた髪をまだらに染め上げ、その上に気品に溢れるティアラをつけている。アンバランスなその姿は凄絶なダサさだ。
 女マスカレイド、キュテイはその姿をマジマジと見つめ……声をかけた。
「あなた達……新手のダァサイね! 歓迎するわ!」
「ちっがーうっ!!」
 別にダサい格好にされるなら初めからダサくしておこうとか打ち合わせていたわけじゃない。
 何故か集まってしまったのだ。
 続けて現れた巨大なアフロの東西南北アフロ不敗・アフロ(c07959)の姿がコミカルさに拍車をかけるが……彼はシリアスな面持ちでヤァバイを指さし、断言する。
「アフロを愛する者として……嫌がる者に強要するなど不届き千万!」
「非道なマスカレイドめ、覚悟しな」
 ようやく出てきたまともな姿の人、地刑星・アール(c14261)の放ったマスカレイドという言葉に反応し、メイドは目をすっと細める。
「なるほど、エンドブレイカーですか」
「その通り。女の命とも言える髪の毛を弄ぶその所業、万死に値します!」
 もふ毛求めて・プレノア(c03487)の切った啖呵に、千刀狩の守人・ルーン(c01799)も頷きながらその太刀を構える。
「まともな人いたんだっ!」
 ダークエルフ達の間にようやく安堵が広がる。
「ならば貴様らの髪も存分にダサくしてやろう」
「はっ。盛れるもんなら盛ってみな!」
 身構えるマスカレイド達を見て、蒼騎士・ハロルド(c06370)は不敵な笑みを浮かべた。

 向かいあう十三人のうち、戦いが始まる前にも関わらずまともな姿なのは半数にも満たない。
「……これは、ひどい」
 野獣の子・シュブ(c10423)の言葉は、戦いを見つめるダークエルフ達の気持ちを完璧に代弁していた。
「さぁ、キュテイヘアサロン、開店よ!」
 キュテイの叫びとともに、戦いが始まる。

●奇人vs奇人
「なんという威圧感っ!」
 ヤァバイに相対するのは同じく巨大なアフロのアフロである。
 にらみ合う二つのアフロ。
(「あらあら、暑苦しいですわねぇ」)
 リースリングは思わず仮面の中で苦笑する。
「何故、アフロを愛するのにこのような事をっ!」
 アフロが大剣を振えば、巻き起こった竜巻の如き剣圧がヤァバイの体を吹き飛ばす。
 それに合わせてジェーニャの呼び出したヒュプノスがもこもこの羊毛で彼のアフロを包み込む。
「うわっ! ヒュプノスとアフロが同化して見えるっ」
 思わず引いてしまうジェーニャを見て、ヤァバイがニヤリと笑む。
「決まってるだろ。俺は愛してるんだ……アフロを嫌う人がアフロになって絶望してる姿をな!」
「貴様っ!」
 声を荒げるアフロ。それを無視してヤァバイは手を伸ばす。
「既にアフロとはいいセンスだが、これはどうかなっ!」
 リースリングとアフロが巻き込まれ、アフロ姿の二人の髪が爆発する。
「アフロとアフロを組み合わせる事でその恐ろしさは二倍……いや、二乗になるっ!」
「――っ!?」
 元々あったアフロの上にアフロが、そのまた上にアフロが乗っていた。
 例えるなら、アイスクリームのシングルからトリプルに変えたような髪型。
 トッピングも完ぺきで、ラメはアフロを余すことなく覆い、さらにはジャラジャラとしたシルバーアクセやストラップが飾られている。
「俺の髪は飾りのツリーじゃないんだぞ!」
 おまけに、髪の量は変わる事は無い。新しい2つのアフロを作る事で、アフロの巨大なアフロは大分貧相な物へと姿を変えていた。涙を流すアフロ。
 リースリングも鏡に映った自分を見て硬直する。ピシリと仮面にヒビが入った気がした。
(「人様の髪をなんと思っているのでしょうねぇ」)
 静かに怒りながら突き出された槍がヤァバイのアフロに突き刺さる。
 断ち切られてハラハラと散るヤァバイの髪を見ながら、彼女の思いは固まっていた。
(「バーコードヘアにしてあげましょう……」)

 ハロルドのランスとアールの角の突撃がキュテイの体を吹き飛ばす。
 マスカレイド達を引き離して各個撃破を狙う。それがエンドブレイカーたちの作戦であった。
「さぁ、あなたの髪をさらに貧相にしてさしあげますわ」
 ピルルの呼び出すレギオスブレイドが次々とキュテイの髪を刈り取っていく。
「あなたよくも……私のキューティークルが痛んだら許さなくってよっ!」
 激昂するキュテイだが、二人の前衛が邪魔をしてピルルに攻撃は届かない。彼女は目の前のハロルドに向けて、腕を伸ばす!
「あなたの武器にインスピレーションを得たわ、素敵な髪型にしてあげるっ!」
 八連盛、四連盛、十六連盛。
 髪業、もとい神業ともいうべきスピードで動かされる手。ハロルドの髪型はあっというまに変わっていく。
「今冬の新作、ランスインパクト昇天盛りよっ!」
 生み出されたのは雲を切り割き天をも穿ちそうな逆立った髪。
 ナイトランスの穂先をイメージして造られたその髪は中途半端にまだらな銀色に染められていた。
「安直過ぎだ!」
 愛用の武器を貶めるかのようなダサい格好に堪え切れず、ハロルドは髪を盛られたカツラを地面に叩きつける。その様子を見るアールの体はポーカーフェイスのままフルフルと震えている。笑いを堪え切れなくなったのだ。
「カツラですって!?」
「はっ、こんな事もあろうかとヅラを着用してきたのさ! この髪もまだヅラで、その下にもまだあるぜ!」
 得意満面なハロルド。しかし、キュテイはその宣言に臆することなく……むしろ喜びに満ちた笑みを浮かべるのであった。
「そう……そんなに色んなダサい髪形を体験したいのね!」

「やめろ!」
 メイド達と相対する四人もまた、ある意味で激戦を繰り広げていた。メイドの振るう剣は的確に前衛であるルーンとシュブの髪の毛を刈り取っていく。
 既にルーンの頭は綺麗なカッパハゲと化していた。ルーンは強い精神力でそれに耐えようとするのだが……。
「あはは、ルーンさ……げほっ」
「やめてくださいプレノア。それ結構傷つくんです」
 プレノアは堪え切れずに大笑いを繰り返す。恋人に笑われ続けたルーンの心は既にボロ雑巾。
「ご、ごめんなさ……普段カッコいいから、ギャップが」
「お似合いですよ?」
「黙りなさい。元はといえば貴方のせい……脳漿をまき散らせ!」
 プレノアと一緒になって心を踏みにじるモヒカンメイドを、ルーンは棍で吊り上げて脳天から叩き落とす。
「何っ!?」
 だが、メイドはそれをクラッシュ。逆立ったモヒカンが地面に突き刺さり、偶然その衝撃を殺したのだ!
「髪型を恥じらってはいけません。ありのままを受け入れましょう」
 逆立ち状態でドヤ顔で講釈をたれるメイド。シュールなその姿をアザゼルは嘲笑する。
「ダセェ、真面目にダセェって。本気でカッコいいと思ってるのが面白いよ」
「貴方の髪も似たような物かと」
「これは笑いを取るためだったんだよ!」
 ドリルヘアーを指摘されて顔を真っ赤にしながら、アザゼルは片手を突き出す。
「君も素敵な髪形にしてあげる」
 呼び出された二本の黒霊剣がメイドのモヒカンへと突き刺さる。髪を切られてバランスを崩すメイド。
「なっ」
「切るのが得意なキミには坊主がお似合いさ」
 そこへプレノアのヒュプノスがもふっと襲いかかって眠気を誘い、シュブも髪の毛で鞭を操り畳みかける。
 散々切られてカツラに残った髪は既にもみあげのみのシュブだが、サードアームで伸ばした髪だけは別。
 腕と同じ力を持つそれは攻撃では断ち切る事はできない。他の髪を切られても頭で鞭を操るのには支障はなく、放たれた電撃鞭の連打はメイドの残りわずかな髪を真っ黒に焦がしつくす。
「そ、そんな……」
 髪を失い、ついにメイドは絶命するのであった。

●悲劇惨劇愛憎劇
「プレノア、違います!」
 メイドを倒した四人は分散してマスカレイド兄妹の撃破へと加勢する……はずだったのだが、ここで手違いが生まれた。
 兄の相手に向かうはずだったプレノアが誤って、妹の傍へと近寄ってしまったのだ。
「えっ?」
「素敵に飾り付けてやるわ!」
 ルーンの声に注意がそれた一瞬をついて、キュテイがプレノアに手を伸ばす。
「新年に向けた新作、日光風車盛りよ!」
 一瞬にしてプレノアの髪は変貌を遂げる。
 初日の出をイメージした巨大な飾りを頂点に、孔雀のように広がる髪形。左右には門松を模した角のような髪が二本立っている。
「くっ」
 ダサい髪形にショックを受けるプレノア。カツラだから大丈夫と己に言い聞かせてなんとか耐えようとする。
 それよりもショックが大きいのはルーン。千年の恋も冷めるような髪型に思わず目をそらす。
 だが、恋人としてフォローせぬわけにはいかない。彼は懸命に慰めの言葉を絞り出した。
「その……似合っていますよ、プレノア」
「!?」
 フォローの言葉がトドメを刺した瞬間であった。
「プレノア、深呼吸して。大丈夫ですか?」
「はい……」
 崩れ落ちたプレノアを咄嗟に支えながら、アスペンウインドを使ってルーンは彼女を癒す。
「あの、ルーンさん?」
 草原を吹きわたる風を胸一杯に吸い込んだプレノアは不安げにルーンの瞳を覗きこむ。
「さっきのは嘘ですよね? 似合ってるなんて……」
「えぇ、アレは」
「そんな趣味じゃないですよね? 変な髪型が好きとか、ヒールで踏みつけられると嬉しいとか、ジェナスに齧られると気持ちいいとか」
「違います、断じて違います……って、後半のそれはなんですか!?」
 一部身に覚えがなくもないが無実です。
「よくも……」
 痴話喧嘩寸前の二人を守るように飛び出したのはアールだ。彼はワイルドランページでキュテイの体を弾き飛ばす。
 角よりも長く高く盛られてダサくなったアールの髪が激突でひしゃげ、さらに無残な姿へと変わった。
 それを見たシュブは思わず吹き出し……ピルルは目を輝かせる。
「それです、アール! キュテイ、汝の盛った髪よりもこちらの方がずっと素敵ですわ!」
「っ! ……確かにっ!」
 何故か息を飲むキュテイ。二人はこの瞬間、何か通じ合ったようだ。
 そこへ襲い掛かるのはアザゼルが影に投げる魔鍵、シュブの獣と化した腕、そしてハロルドの衝撃波。猛烈な三連撃を受けてついにキュテイは絶命する。
「最後に真のトレンディを見れてよかった……」
「あなたは強敵でしたわ……私の帝国の末席に加えたいくらいにね」
 駆け寄ったピルルの腕の中で息絶えるキュテイの顔は驚くほど安らかで……。
「何処から突っ込めばいいのかな?」
「わからん。ある意味今までで一番の強敵だったぜ」
 疲れた表情でアザゼルとハロルドは顔を見合わせる。その後ろで、アールはひしゃげた髪の毛に手で触れて。
「これ……素敵なのか」
 何故か照れていた。

「キュテイっ!」
 最後に残されたヤァバイも既に満身創痍。槍と大剣の攻撃によって自慢のアフロはバーコードヘアへと変貌を遂げていた。
「さぁ、もう終わりだ!」
 幾度となく爆発に晒された前衛二人の髪は既にボロボロ。だが、ジェーニャのスピカがペロペロと絶え間なく毛繕いしていたおかげで、戦線は保たれていた。もはや、エンドブレイカーの勝利は確実。
「確かに終わりのようだな……だがっ!」
 ヤァバイが迫るのはジェーニャ。彼は気力を消耗した後衛を狙い、一矢報いようとしたのだ。
「うぉぉぉ!」
「きゃっ!」
 因果律を乱して巻き起こる爆発。
 だが、ジェーニャの髪はアフロにするには少し髪量が足りなかった。
(「……パンチパーマ?」)
 そう、またの名を……。
「アフロと年増を組み合わせたありがちなおばさんパー……ゲフッ!?」
「年増じゃねぇ……『お姉さん』だ、ボケェェェ!」
 逆鱗に触れられたジェーニャに呼び出されたジェナスが大空からボディプレスを決め、最後に残ったヤァバイの髪をムシャムシャと髪ちぎ……もとい、噛み千切ってトドメを刺す。
(「尊い犠牲でした……」)
 色んな意味で酷い決着にリースリングとアフロは揃ってため息をつくのであった。

●惨劇の後に
「ひー、ふふっ、あーはっは!」
 ようやく終わった惨劇。ホールの中に響き渡るのはシュブの爆笑だ。
 エンドブレイカー達はそれぞれ色んな意味で満身創痍となっていた。
 とはいえ、本来の目的を忘れるわけにもいかない。
 ジェーニャはカツラを脱ぎ捨てると、ダークエルフ達を解放していく。
「大変だったわね。もう大丈夫よ」
 拘束を解かれ、ダークエルフ達から安堵の息が漏れる。
『そのままではお困りでしょう? こちらのカツラをどうぞ』
「いや、いりませんからっ!」
 既に酷い髪形にされてしまっていたダークエルフへとリースリングが筆談の紙と一緒に差し出すのは先ほどの戦闘でボロボロとなったアフロのカツラ。彼らはそれを全力で拒否する。
「アフロはさすがに可哀そうだ。こっちを使うといい」
 そう言ってハロルドが差し出すのは、彼の頭に十重以上に被せられていたカツラ群。
「アフロの何がいけないのかね。こんなに素晴らし……」
 ハロルドに抗議するようにアフロは手鏡で自分の髪を覗きこみ、悲鳴を上げた。
「敵わんね、敵わんよ……」
 地毛のまま戦った彼の被害は痛烈だったようである。爆発にさらされてキューティクルがぼろぼろとなったアフロの無残な髪を見ながら、プレノアは敬礼を一つ。
「無茶しやがって……」

 かくして髪を弄ぶマスカレイドは倒され、ダークエルフ達は救われた。
 疲れ果てた表情でエンドブレイカー達は帰路につく。
「毛根、痛んだかな……」
 三十路の哀愁溢れるアールの呟きは冬の寒風の中に消えていった。



マスター:商館獣 紹介ページ
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いまいち
参加者:10人
作成日:2010/12/22
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