ステータス画面

花粉注意報!

<オープニング>

 その村の人々は、今日も何事もなく1日を過ごしていました。
 ぽかぽかとした早春の陽気に当てられて、軒先でウトウトしている黒猫さん。
「あら? 洗濯物が汚れてるわねぇ?」
 奥さんは干してあった洗濯物に、黄色い粉末が付着しているのに気付きました。
「これは、花粉――」
 その粉末は洗濯物から舞いあがり、奥さんの鼻の中へ。
「ふぇっ、ふぇ……ふぇっくしゅん!」
 大きなくしゃみが寝ていた黒猫さんを起こします。
「にゃ? くしゅ、くしゅん!」
 黒猫さんも同様で、花粉を吸うとくしゃみが止まりません。
 顔をしかめて、くしゅん、くしゅん。
「なんなのかしら、この、花粉……ふぇ……ふぇっくしょん!」
 くしゃみと鼻水をすする音は、瞬く間に村中へと広がっていきます。
 くしゃみ騒動と時をほぼ同じくして、村の側の森では、歩く不思議な木々が目撃されるのでした。

「歩行樹の花粉のせいで、村の人達が苦しんでいます」
 ミラは集まったエンドブレイカー達へ、事件のあらましを説明する。
 きっかけは、根を足のように動かして移動するモンスター、歩行樹が村の側の森へとやって来た事だった。
 それだけでも危ないので歩行樹を倒さなければならないのだが、その歩行樹のまき散らす花粉がまた問題なのだ。
「その花粉を吸うと、くしゃみや涙、鼻水が止まらなくなっちゃうんだそうです。他にも頭がボーッとしたりとか、目のかゆみとか、色々な症状が出るとか……個体差があるのか、まったく症状がでない人もいるみたいですけど」
 この敵はマスカレイドではないが、人々の生活を脅かす危険な敵である事は間違いない。
「目撃された歩行樹は高さ3メートルほどの針葉樹、ですね。スギが小さくなったものと考えてください」
 この針葉樹が10体ほど、一団となって村の側の森、開けた河原付近を徘徊している。
「歩行樹がいる場所は、村の水源となっている川を上流へとたどっていけば問題なくわかると思います」
 ミラは悲しそうに目を伏せる。
「くしゃみが止まらなかったり、鼻が詰まってたら思った通りに歌えませんよね……」
 音楽好きなミラらしい感想だ。
「それに何よりも……」
 ミラは更に言葉を続け、説明を締めくくるのだった。
「遅かれ早かれ、歩行樹に襲われて命を落とす人が出てきてしまいます。その前に、迷惑な歩行樹をやっつけちゃいましょう!」


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参加者
大剣の魔獣戦士・トロン(c00863)
太刀の城塞騎士・ユーリル(c01023)
ソードハープのスカイランナー・フェリチェ(c01453)
剣の魔法剣士・カナト(c02601)
扇のデモニスタ・セレスティア(c02742)
弓の星霊術士・テトラフリンジ(c03753)
ハンマーの群竜士・フィーダ(c04137)
杖のデモニスタ・アルカナ(c05159)

<リプレイ>

●花粉まみれの森
 川を上流に向かって歩き続けるエンドブレイカー達。
 もし彼らの姿を何も知らない人が目撃していたら、即座に通報されるに違いなかった。
「へっくしゅ! へっくしゅ! あー、ちくしょ〜!!」
 派手なクシャミを連発し、反射的に悪態をつくソードハープのスカイランナー・フェリチェ(c01453)。
 彼女はバンダナを逆三角形にして顔を覆っていた。花粉から鼻と首を守る為の措置なのだが……。
「なんだか泥棒みたいだっぺね」
「いえ、どっちかというと、むしろ強盗みたいなんですが……大丈夫ですか?」
 厚手のマスクをつけた剣の魔法剣士・カナト(c02601)はツッコミなのか心配なのか、よくわからない言葉をかける。
 フェリチェは一行の中で一番花粉症の症状がひどいようだった。
「大丈夫じゃないべ。花も恥じらう17歳の乙女が、逆に花に恥をかかされてるべよ……」
「17歳かどうかは知らないけど、確かにキツいアルね……」
 ネッカチーフで口と鼻を覆っているハンマーの群竜士・フィーダ(c04137)も河原に近づくにつれ、花粉症の症状が重くなっていく。ずびずびと鼻をすする音が生々しかった。
「本当に17歳なんだべ、こんな恥ずかしい所見ないで欲しいっぺよ〜!」
「私は見てないから大丈夫、ごふっ!」
 花粉から目を守るため、目隠しをして歩いていた大剣の魔獣戦士・トロン(c00863)は脇を流れる川に落っこちていた。幸い川は浅いので溺れることはない。
「えっと、大丈夫ですか?」
 太刀の城塞騎士・ユーリル(c01023)はどうフォローしていいものやらわからず、ようやくそれだけ言葉を絞りだした。
「あいたた……わ、私も17歳よ。永遠の17歳なの」
 目隠しを外しながら答えるトロン。この世に生を受けてから17歳と約400日を経過しているが、なんとなくここは17歳と言い切った方が面白くなると思ったようだ。
「きっと花粉症で頭がボーッとしてるんですね」
「私の症状は目がかゆくなるだけだけど」
「えっ」
「えっ」
 固まるユーリルとトロン。一瞬静寂の空気が流れる。
「……被害者を増やさないために頑張りましょう」
 何事もなかったかのように話を戻す杖のデモニスタ・アルカナ(c05159)に、助かったとばかりに同調する扇のデモニスタ・セレスティア(c02742)。
「全くですね……洗濯物の為にも倒さなければ」
 後半、ハンカチで口を覆って呟く。
 彼女は綺麗好きなので、洗濯物を汚す花粉に少なからず怒りを覚えているようだ。
「そうですね」
 背後から聴こえてくる、小さな声。最後尾をてくてくと歩く弓の星霊術士・テトラフリンジ(c03753)だ。
「……もしかして聴こえてました?」
「うん」
 誰も聞いていないと思っていた後半部分をテトラフリンジは聞いていた。こくこくと頭を上下に動かす。
「あは、ははは……」
 セレスティアは恥ずかしそうに苦笑いを浮かべるのだった。

●VS歩行樹
「フェックション! フェックション!!」
「フィーダさんのくしゃみが激しくなってきたわ、どうやら敵が近くにいるみたいね!」
 手で自らのアホ毛を動かして、歩行樹の存在が近いという事を警告するトロン。
 テトラフリンジも背負っていた弓を両手につがえ、戦闘の準備をする。
「乙女を勝手に便利アイテムにしないで欲しいアル……」
 彼らの視界に入ってくる、河原という場所におおよそ不釣り合いな緑の木々。
「なんで本当にいるんですか……」
 真面目なユーリルには到底理解できない、むしろしてはいけない領域だったが、偶然だろうと結論づけて太刀を抜く。
「世の中そういうものですよね」
 一方、カナトは重ねてきた年月が違う。柔らかい物腰で対応する。
「川を背にして戦いましょう。前衛は囲まれないように気をつけて!」
 アルカナに至ってはマイペースに無視していた。
「わしゃきしゃしゃー」
 わしゃわしゃと鳴き声に似た歩行音と共に根を動かして迫ってくる歩行樹達。
 目にも黄色く見えるほど、大量の花粉を舞い散らしている。
「なんてひどい……恨みは……多分? ありませんが、倒させていただきます!」
 いまいち自分の言葉に確信を持てないまま、セレスティアは流水演舞により荒波を招来し手近の1体を攻撃する。
「わっしゃー!」
 歩行樹の枝が折れ、ベキベキになる歩行樹。
「ずずっ……よっしゃ、アイツにみんなで一斉に攻撃だべ〜!」
 フェリチェは鼻水を一気にすすると、かさにかかったように十字剣による横切りで枝折れ歩行樹を傷つけていく。
 ちなみに頭上に飛散する花粉をモロに受けたら嫌だという理由により、スカイキャリパーは使わないという縛りプレイを敢行中だ。
「お願いね、エース」
 アルカナは自らが生み出す悪魔の炎へそう呼びかけると、手のひらを傷ついた歩行樹へと突きつける。
「……燃えなさい、デモンフレイム」
 放たれる黒炎。巨人を想起させるその黒炎は傷ついた歩行樹へとまとわりつき、燃やしていく。
「やっぱり、一体としてはそれほど強くはないみたいですね」
 自分もアビリティの効きを確かめるべくデモンフレイムの準備をしながら呟くセレスティア。
 それでも、エンドブレイカー達は気を抜かない。
 まだ9体残っている歩行樹は近くにいる前衛へと牙を向けるものの、
「皆を傷つけはさせません!!」
 ディフェンスブレイドで防御を固めたユーリルが、振り下ろされた木の腕を弾く。
 傷つきながらもユーリルは後衛を歩行樹からことごとく守った。
「へいへいほー!」
 その横ではトロンがワイルドスイングで歩行樹をなぎ倒す。
「なんかこう、きこりに目覚めそうだわ……!」
 斬り倒した歩行樹を見下ろし、大剣を地に突きさすと不意打ち気味に歩行樹を踏みつける。
「もっきゃー、うっきゃー!」
 結構痛かったらしい、妙な音を立てながら木の腕を振りまわす歩行樹。
「見ろ、木がゴミのよう―――」
 威張って胸を張るトロン。カナトが思わずツッコミを入れる。
「ダメですよ、気を抜いたら。上も下も気をつけないと」
 その時、もがいた木の腕がトロンのゴーグルを弾き飛ばした。
「あ」
 今まで花粉から守られていた目が、大量の花粉に触れる。
 あふれ出る涙。
「ギャー! 目がー目がー!」
 情けない声を上げ、顔を抑えたトロンはごろごろと河原を転がり、また川へと落ちて行った。
「大丈夫かな」
 もがいている歩行樹へ弓でトドメを刺し、後ろの川を見るテトラフリンジ。
 川の水で花粉を流しとったトロンはプカプカと水面に浮かんでいた。
「魚みたいで楽しそう」
 謎の判断基準だった。
「あんまりこっちを見ないで欲しいべ〜!」
「そっちだって見ないで欲しいアル!」
 一方、前衛ではただでさえ赤い目を更に真っ赤にしたフェリチェと鼻水をネッカチーフで拭いたフィーダが向かい合っている。
 二人の間には1体の傷ついた歩行樹の姿。
「17歳に恥ずかしい思いをさせた……クシュン!」
 腰を落とし、剣を横薙ぎに払うフェリチェ。
「乙女の怒りを、ずずっ……思い知るアルッ!」
 ほぼ同時にフィーダもハンマーを叩きつける。
 上と横、一気に攻撃を食らった歩行樹はなすすべもなく絶命した。
 最初は数の多さで押し切ろうとした歩行樹達だが、エンドブレイカー達の徹底した各個撃破作戦に対応できずにやられていく。
「これで5体、と……すみません、回復お願いします」
 フェイントを巧みに織り交ぜた斬撃で歩行樹を倒すと、カナトは後衛のテトラフリンジへと回復を要請する。
「はい……」
 テトラフリンジは矢をつがえる手を止めると意識を集中し、星霊スピカを召喚する。
「スピカさん、おねがい」
 出現したスピカは呼応するかのように甲高い声を上げ、カナトの胸へ飛び込んでいく。
 そしてそのまま胸元の切り傷をペロペロと舐め始めた。
「猫みたいですね、ふふっ」
 カナトは戦闘中を忘れて顔をほころばせかける。彼は無類の猫好きだった。
「マジックミサイル、展開。行きなさい」
 カナトの横を、アルカナの杖から発射された7本の魔法の矢が通り過ぎ、歩行樹をハチの巣にしていく。
「ふう、ここまでくれば一安心ね」
 アルカナの言葉通り、当初の数から半数を割った歩行樹は力でも数でもエンドブレイカー達に及ばない。
 数分後には、全ての歩行樹が退治されているのだった。

●エピローグ
「ふぅ……早く帰って体を洗いたいわ」
 川の側でローブに振りかかった花粉を払い落とすアルカナ。
 目の前に水自体はあるが、服を脱いで水浴びをする訳にもいかない。
「落っこちるとサッパリするよ!」
 川から上がったトロンは取った魚を焚火で焼いて、ムシャムシャ食べている。
「……歩行樹も焚火にされたら浮かばれませんねぇ」
 呆れ気味なユーリルの言うとおり、焚火はかつて歩行樹だったモノのなれの果てだ。
 歩行樹の死がいは焼くか埋めるかしようというカナトの提案に乗り、河原で焚火の薪として使っていた。
 もっとも、死がいは量があるのでどちらかというと焚火というよりキャンプファイヤーに近いかもしれない。
「ま、なんにせよ、これで命を失う人がいなくなったのなら良いですよね……っくし!」
 顔を洗ったばかりなのにもかかわらず、くしゃみをするユーリル。
「クサいセリフを言ったからだべ〜」
 バンダナを水に浸し、花粉もカナトから借りたブラシで落としたフェリチェがからかうように笑う。
 ようやく花粉症が軽減されたようで、外見も喋らなければ可憐な少女レベルに戻っている。まるで野に咲く苺のようだ。
「セレスティア君もどうぞ」
「ありがとうございます」
 セレスティアはカナトからブラシを受け取り、服にこびりついた花粉を払い落としていく。
 銀糸のような髪も梳いて花粉を落とす徹底ぶりだ。
「これで洗濯物が汚れる事もないはずです」
 そうしていると死がいは全て燃え尽き、消し炭となった。
「それじゃ、村の人に報告へいくべ!」
 消し炭に川の水をかけ、フェリチェが駆け出していく。
 綺麗になった新緑の空気を、一刻も早く村の人達に吸ってもらいたかったから。



マスター:蘇我県 紹介ページ
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いまいち
参加者:8人
作成日:2010/03/19
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