ステータス画面

黒翼はささやく

<オープニング>

「ねぇ、今ここで死ぬのとー。ミミナたちと一緒に行くの、どっちがいい?」
 しゃがみこんで、16歳前後の少女があどけない口調で言った。絵本から抜け出してきたお姫様のような、ふわふわした少女から出た言葉とはとても思い難い。
 だが、これは現実だ。
 少女は地面に転がりながら周囲を見回す。見慣れた自分の村が血で染まっていた。傍らでは自分のパートナーだったハイエルフが、ナイフで切り刻まれて死んでいた。手の中でくるくるとナイフを弄んで、ミミナという少女はあっ。と声を上げた。少女から目を離し、立ち上がり背を向けて手を振る。
「クコちゃん! デリーラさま! こっちはだいたい終わったよー」
「それは宜しゅうございました。こちらも片はつきましたよ」
 クコと呼ばれた黒衣の女がうっすらと微笑む。黒髪のちょっと中性的な雰囲気を持つ女だ。手の中で金の鍵をちゃらりと弄って回した。彼女の影のように、巨大な黒犬が3匹控えている。
「でもこの子が言うこと聞かなくてー」
「おや。でもハイエルフが死んでしまっては、あなた方はどのみち死ぬしかないでしょう? 私たちの手下になるしかないのですよ。いらっしゃい。みんな一緒ですから」
 ほら、とクコは背後を少女に示す。パートナーを失った村のダークエルフ達が両手を縛られクコに連れられている。その顔はどれもこれも、憔悴しきっていた。
「あら? まだ終わらないの?」
 甘ったるい声がした。
 長い長い銀の髪がふわりと揺れる。美しい紫のドレスを一瞬、薔薇のようだと思って少女は唇を噛んだ。美しく、怪しく、色香のある女。初めて見たときはまず目を奪われた。そんな自分を、彼女は許せなかった。

 3人の女と黒い犬が村を訪れたのはほんの少し前のことだ。
 村はささやかながらも壁を築き入り口は一カ所。職務に忠実な人々が門を護り、中の住人は安心して暮らしていた。
 そんな村を、彼女たちは正々堂々正面から訪れた。そして門番を殺し村の中に入った。
 彼女たちはまるで散歩をするかのように堂々と歩き、駆けつけてきた者を殺し、殺し。いつの間にか3つに分かれて村のハイエルフのみを皆殺しにしたのである。

 微笑むデリーラと呼ばれた女。彼女がこの3人の中で主導権を握っていることは会話の端からも推測された。
「お前の……せい、で!」
 少女は死んだパートナーに突き刺さったナイフを抜き取る。震える脚で立ち上がり、女に向かって駆けようとした。だが、
「……いやん、粗雑な子」
 デリーラの背から漆黒の翼が広がる。そこから光線が放たれて、彼女の胸を貫いた。

 三人の笑い声が響く。その場に残されたダークエルフには見ることが出来なかっただろう。三人の身体に、マスカレイドの仮面が宿っていたことを……。

「私たちは強盗団『闇の兄弟』。さあ、次に死にたいのはだあれ? 死にたくなければどうぞ、私たちと一緒にいらっしゃい。逆らったら……解ってるわね?」
 少女の死体を見下ろして、デリーラは微笑む。逆らう者は、いなかった。

「エルフヘイム騎士団が特別に警戒している強盗団、『闇の兄弟』に襲われる村が解ったんだ。お兄さん達向きじゃないかと思って」
 扇の群竜士・ベル(cn0022)は三枚の絵をテーブルに置いた。今し方話に出ていたミミナ、クコ、デリーラの三人の似顔絵だった。
「彼女達は全員ダークエルフだよ。そして三人共マスカレイドだから気をつけて。金目の物には見向きもせずに、町中のハイエルフを殺し尽くして残ったダークエルフ達を連れ去ってくんだって」
 ベルは冷めたコーヒーを啜ってもう一枚地図を出す。
「今から準備すれば、村が襲撃される前に村に到着することが出来るけど、敗北したら村のハイエルフは皆殺しにされて、ダークエルフはつれてかれちゃうから気を付けて。頼りにしてるからね、エルフヘイム騎士団のお兄さん、お姉さん達」
 それからベルは地図を示す。
「村の入り口は一カ所。きっちり守ってる人がいるから自分たちがエルフヘイム騎士団であると告げてくれれば信頼はされると思う。そこで迎え撃つと良いと思うよ。彼女たちも下手な小細工をせずに正面から攻めてくるからね」
 そして、とベルはまずミミナとクコの絵を指さした。
「ミミナはナイフのスカイランナー相当の能力を使う。そしてクコは魔鍵の魔想紋章士のお姉さんみたいな力を使うね。それから、戦闘状態に入ると3体黒犬のマスカレイドを呼び出して戦わせるよ。それは魔獣戦士のお兄さん相当」
 ざっと余白に絵を描いていく。
「恐らく、黒犬3体が前衛。ミミナとクコはその後ろだね。そして、更に後ろにボスマスカレイドのデリーラがいる。彼女はトンファーを持っていて、デモニスタのみんなのような力を使ってた」
 そこまで説明して、ベルは言葉を切ると、冷めた珈琲を難しい顔で啜り話を続けた。
「『闇の兄弟』は、かつて、エルフヘイム騎士団が壊滅させた強盗団の名前らしいね。今回の事件は、その名前をかたって『マスカレイドが事件を起こしている』だけで、過去の強盗団との関係は無いみたいだけど……。でも、例えそんな名前があろうと無かろうと、放置するわけにもいかない話だと思う」
 淡々と、なるだけ感情を込めぬように彼は続けた。
「……だから、みんな頑張ってきて欲しい。……でも、気を付けて。僕は、彼女たちはかなり強いと思う。だからどうかみんな、無事に帰ってきてね」


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参加者
無精者・ラグランジュ(c02051)
ジェダイトシュッツァー・ラズヴィス(c04720)
黒鳳・ヴァレリー(c04916)
氷焔の魔女・ウルカ(c05243)
大剣の城塞騎士・カイン(c05523)
デモニック・ルーシルベルト(c06023)
静かなる花筐・サクラ(c06102)
ながれ星・ベガ(c08028)
鬼獅・レオニス(c10184)
砂海を渡る風・ルーイッヒ(c10234)

<リプレイ>


「うち……いや、自分たちは、エルフヘイム騎士団の者です」
 黒鳳・ヴァレリー(c04916)がそう言うと、隣でながれ星・ベガ(c08028)が丁寧にお辞儀をした。
「最近『闇の兄弟』というハイエルフを殺してダークエルフを攫っていく強盗団が出ているので、その警戒のために村人を避難させて門を閉じておいて欲しいのだよ」
 ベガの言葉に門番達は顔を見合わせた。
「我々は彼女らがこの村を襲うという情報を掴んでおり、事は緊急を要します。奴らの目的はパートナーを失ったダークエルフであり、ハイエルフが特に危険なのです。どうかよろしくお願いします」
 慣れぬ口調で、だが真摯にヴァレリーが言って頭を下げた。
「他の街も襲撃があるから、これ以上騎士団から来れないんだ。だが安心しな。俺たちは負けない」
 鬼獅・レオニス(c10184)が自信たっぷりに言う。負けることなど全く考えてもいないような口ぶりだった。
「あの……。でも、俺たちも何か手伝えることは……」
 門番の二人のうち一人がおずおずと声を上げる。
「ならば、討伐の為に門前で迎撃したいのでこの場を借りたい。後、村人達へこの件の連絡と避難・防衛強化の協力をお願いします」
 ジェダイトシュッツァー・ラズヴィス(c04720)が頭を下げた。それと、出来れば門番から外套など借りたいと申し出るラズヴィスに、門番達は頷いた。
「解りました。騎士団の方の言うことでしたら、喜んで。どうかお気を付けてください」
 若い方の門番がびしっと敬礼して言う。その緊張した様子に無精者・ラグランジュ(c02051)が安心させるように笑顔を浮かべた。
「ご安心を。我々騎士団にお任せ下さい」
 普段と違うきりりとしたラグランジュの言葉。大剣の城塞騎士・カイン(c05523)も笑顔で門番の服を借り受けたり場所の説明を聞きながらも、小さく呟いた。
「気合をいれて……行きましょうか」
 腹を括ったようなカインの言葉にベガはちらりと視線をやり……小さく、頷いた。

「この辺がいいかね」
 氷焔の魔女・ウルカ(c05243)が周囲の地形を確認して言う。門から少々離れていて数本木々が植わっているところがあった。隠れるには適切だろう。
「背面取るなら動かなきゃいけないが……逃がさないことの方が大事かねえ」
「……わたしは、ここから撃つから。ウルカが回り込んでくれれば」
 静かなる花筐・サクラ(c06102)の言葉に、じゃあそうしよう、とウルカは頷く。
「パートナーを失った者が、同じ境遇の者を増やそうとするとは……やるせない話だね」
 砂海を渡る風・ルーイッヒ(c10234)も相棒の鷹を肩に留まらせサクラの傍らで身を潜める。サクラは小さく頷いた。
「……来た」
 デモニック・ルーシルベルト(c06023)が、声を上げた。
 不意に甘い香りの風が吹いた気がした。三人は顔を上げる。遠くから三人の人影が歩いてくるのが見えた。恐らくは女性だろう。
 門の方に視線をやると、門の前に立つヴァレリー達も気付いたのであろう空気が伝わってきていた。

 三人は友人同士でお喋りをしているかのように声を上げて歩いてくる。ベガが万が一にでも間違いがないようにじっと三人を見た。不意に真ん中の女性が顔を上げる。視線が合いそうになるその一瞬前に、
「皆さん、今なのだよ!」
「先手で御免よぉ!」
 ベガが声と共に走り、その背を追うようにラグランジュのバルカンが駆けた。バルカンの炎を受けてクコがさっと手を払う。ベガがクコに間合いを詰めて防御を固めながらもハンマーを振り下ろす。
「初めまして、こんにちは。でもこの中には入れてあげられない。だから、僕たちの相手してくれるかな?」
 こんな場所でありながらも紳士的にベガは声をかける。
「さぁさ、僕と踊ろう?」
「……っ。悪いけど、乱暴な坊やは嫌いです」
 クコがハンマーを受けながらも黒鉄兵団の紋章を空中に描き出した。破城槌の紋章に吹き飛ばされる。その隙を縫うようにカインが走る。
「私がお相手させていただきます。どうぞ、よろしく」
 デリーラに向かって獅子のオーラで攻撃しようとして、
「デリーラさまに何するの!」
 ミミナがデリーラとカインの間に割って入り庇った。ルーシルベルトが牽制するようにミミナに見えざる爪で攻撃すると、ミミナはきっとルーシルベルトを睨んでナイフを振り上げた。ニィ、とルーシルベルトは笑う。
「さ、麗しくも儚いお嬢さん方。私達と最期の一曲、如何です?」
「ミミナちゃん。駄目よ。クコちゃん、ちょっとだけ我慢してね」
 ベガに入れ替わるようにラズヴィスが詰めようとするも、その前にさっとデリーラが手を振って壁のように黒犬に体を出現させる。ミミナを制するような声を上げて、デリーラは微笑んだ。
「君達が闇の兄弟か!」
「あら。野蛮な人たちも、私たちの呼び名は知っているのね」
 ラズヴィスの言葉に、デリーラはさらりと髪を掻き上げる。
「良いわ。ならば名乗る必要もないわね。遊んであげる。……今夜はみんな、かえさない」
「漸く仮面のお出ましか。出来るものならやってみな!」
 レオニスが獅子の咆吼のような言葉と共に斧を振りかぶって投げた。同時にルーイッヒが竪琴を奏で衝撃波を作り出す。攻撃を受けたクコは僅かによろめいて耐えた。
「休ませない」
 ルーイッヒの傍らでサクラがクコへと黒煙を放つ。ウルカが逃走を警戒してデリーラの背後に回り込んだ。
「ほんま、随分強硬な誘拐やな」
「おや。いきなり攻撃してきたあなた方に言われたくないですね」
 ヴァレリーの言葉に黒煙に身を焼きながらもクコが口の端をあげて答える。
「はは。それもそうかもしれへんな。おっさん紳士やからお嬢ちゃん殴んのは好かんけども……ここは通さんし、帰さへんぞ」
 ヴァレリーは言うなり魔獣化した腕でクコの前にいる黒犬を切り裂く。黒犬は咆吼を上げてラズヴィスに食らいついた。一匹をハルバートで払い、他二匹の攻撃を受けながらラズヴィスはぐっ。と噛みつかれた腕を振って血を払う。
「この程度、かすり傷にもならないよ!」
 ラグランジュが軽く労るようにバルカンを撫でた。
「麗しいお嬢さん達だが……俺のバルカンちゃんが一番可愛いんだ!」
 何故かそこを力一杯に叫んでラグランジュはバルカンを走らせる。クコはその炎に身を焼きながらも魔鍵を構える。
「こんなもの……かすり傷にもなりません」
 ラズヴィスの言葉を真似るように、魔鍵が炎を生み出した。自分に攻撃を加える彼等ではなく、その炎はカインと、近くにいるベガとヴァレリーを巻き込む。
「そのお方から、離れなさい!」
 クコに攻撃をあわせるように、ミミナもナイフでカインに斬りつける。二人の攻撃を受けて、カインは踏みとどまる。
「もとより、覚悟は出来ています!」
 傷を受けながらちらりと後ろをやると、背後には黒犬がいた。後退は出来ない。
「もう、二人ともほんとに私のことが好きなんだからー」
 デリーラはにこにこ笑いながら漆黒の翼を広げる。だがその翼が二人ではなく別の方向を狙っていることにカインは気付いた。
「あっちよ」
 光線は明らかに木陰に隠れていたサクラの方を向いていた。自己回復を行い立て直すべきか、そんな判断をする前に身体が動いていた。サクラへの攻撃の、斜線を塞ぐようにカインは走って大剣をデリーラへと叩きつける。同時に翼から放たれた光線がカインを貫いた。
「役不足かもしれませんが……よそ見とはつれませんね」
「やぁね。情熱的な子は嫌いじゃないけど」
「私がいる限り、皆さんを攻撃させませんよ」
 くすりとデリーラはトンファーでカインの剣を受け止めて笑う。ベガがサクラ達から思考を反らせようと声をかける。
「ね、ダークエルフ集めて何するのか教えてくれる?」
「なぜ、同じ境遇の者を増やそうとする? 本当に望んだ事は、こんな事なのか?」
 ベガの言葉に続けるように、ルーイッヒが尋ねた。ベガのハンマーが黒犬を傷つけるも倒すまでには至らない。ミミナが軽く舌を出した。
「デリーラ様を傷つける奴に教えてなんてやらないよ! みんなここで死んじゃえ」
「させるかよ!」
 レオニスが走った。ハルバートを思い切りクコに投げつける。カインの方に視線をやって声を上げた。
「やばいなら遠慮無く寝てやがれ! 後は俺が引き受けてやるさ」
 にやりと笑う。実際に交代は難しいが声をかけないよりましだろう。まだまだ倒れませんよと声が返ってきた。
「なあに、直ぐにカタを付けるよ!」
 ラズヴィスもそう声をかけてハルバートを目にも留まらぬ早さで二匹の犬に放つ。弱った一匹がそれで倒れた。
「やれやれ、お嬢さんはつれないネ」
 ルーシルベルトが見えざる爪をミミナに放ちじりじりと傷を付けていく。
「……大丈夫、今、治す」
 庇って貰った礼を言うよりも先に傷を癒したい。サクラがカインへ向けて扇を振った。桜花が散ってその傷を癒して行くも、癒しきるには足りない。
「大丈夫だ、落とさせたりしないさ」
 ルーイッヒも歌で勇気付けていく。
「さあ、早々に舞台から降りておくれ」
 ウルカもクコに黒炎を放つ。それに身を焼かれてよろけながらも、クコは大きな魔鍵を杖代わりにして立った。ヴァレリーが残り2体になった犬の、傷ついた方に魔獣化した腕を食らいつかせる。
 犬が苦しげに声を上げながらも、ラズヴィスに二匹とも食らいついた。一体を捌き、一体に噛みつかれる。
「クコがあとちょっとだよぉ。それと、犬の方も!」
 ラグランジュが声を上げてスピカを召喚する。カインへ向かって放ったが足りない。クコが魔鍵を構える。その先はやはり、デリーラに指示されたサクラを向いていた。
「どうしますか?」
 唯、その先が火を吹く前にクコはカインに尋ねた。カインは振り返りレオニスを見た。後は頼みますと言ったかどうか。後退が不可能なら前に進むしかないだろう。クコの魔鍵が火を吹いた。その前にカインはまっすぐ立ち、
「どうするもこうするも、覚悟は決まっています」
 炎を真っ直ぐに浴びて倒れた。ひゅっと音がした。レオニスのハルバートが投げられて、クコの胸に当たった。
 二人同時に、どさりと音を立てて倒れる。
「さあ、僕もぐずぐずしてられないな!」
 ラズヴィスが素早く2匹の犬に攻撃する。傷付いていた方が倒れた。
「……行くのだよっ!」
 ベガも強く声を上げてハンマーを最後の黒犬に叩きつけた。この道を空けなければ、先に進めない。
「さて、次はこっちの相手でもして貰おうか!」
 レオニスがミミナとデリーラに肉薄する。ハルバートをナイフで受けて、ミミナは反撃にナイフを走らせた。
「……まだ、いける。これ以上犠牲は出さないわ」
 サクラが倒れるカインの方にちらりと視線を向けながらも、桜花で傷を癒す。今度は傷付いたラズヴィスに。
「後二体!」
 ラグランジュが声を上げる。
 ヴァレリーが駆けた。魔獣化された腕を今度はミミナに振るう。
「パートナーを喪う傷みは己らが1番わかっとるんやないんか」
 肩口から胸まで、真っ直ぐに裂かれたミミナの背に、ウルカが黒炎を叩きつけた。
「良いの。ミミナにはデリーラ様とクコちゃんがいたから」
「そのクコちゃんらがおらんようになったらどうするんや?」
「……ぇ?」
 不思議そうなミミナの声。ルーシルベルトが走った。優雅な動きでヴァレリーの付けた傷口を抉る。返り血が口元に飛んで軽くそれを舐めた。
「――オヤスミ、ミミナ……」
 爪を引き抜く。本当に不思議そうな顔のままミミナは倒れた。
「さあ、もう逃がさないよ」
 ルーイッヒが嵐の様な旋律を奏でて真空波をデリーラに放つ。包囲するように動き始めたルーイッヒ達に、デリーラがトンファーを構え口の端を上げて軽く微笑んだ。
「とんでもない。さあ、もっと私と踊りましょう?」
 紫の薔薇が散るようにドレスがふわりと舞う。勝ちの見えないこの状況を楽しんでいる風でもあった。トンファーがレオニスの腕に叩きつけられる。それを受けてレオニスはハルバートを走らせる。
「癪に障るんだよ。あいつと同じ、その武器が」
「反撃に気を付けるんだよぉ!」
 ラグランジュが警告するような声を上げてバルカンを飛ばす。ベガがハンマーを振るいながら、
「踊るの、好き? 僕の相手もしてくれるのかな」
「んー。ワルツならご一緒してもいいけれどぉ」
 素早い動きでハンマーを振るうベガ。デリーラも傷を受けながらも反撃するようにトンファーで叩く。くるりくるりとどこか踊っているようにも見えた。
「伴奏に、こんな曲はどうかな」
 ルーイッヒが嵐の旋律を奏でる。
「貴女達との出会いがこんな形でなければ、お茶でもご一緒したかったよ」
 ラズヴィスのハルバートを操りながらの言葉に、デリーラは微笑んだ。
「世の中ってそんなものよん。巡り合わせが悪かったのね」
 ヴァレリーの腕が深々と紫のドレスを切り裂いて先決を飛ばす。
「何かが途中で歪んでもたんかな」
「歪みの元は……」
 戒律かとデモンフレイムを放ちながらのサクラの言葉。ルーシルベルトの爪が再び傷口を抉り、デリーラは声を上げて笑った。
「戒律! 戒律! どの子もこの子もそればかり。よっぽど私たちを可哀想な子にするのが好きなようね!」
 声を上げて笑う。そうして一度、血塗れの姿でお辞儀をした。
「私たちは好きなように生きた。楽しかったわ。悔いはないの」
「……なら」
 ウルカが黒炎をデリーラに放つ。紫の薔薇は真っ赤な血を落として、その地に落ちた。
「もう、眠るがいいさ」

「嫌な事や憎しみは忘れて眠っちまいな。一寸は付き合うからよ」
 ラグランジュがそう呟いた。最後の言葉で何となく気がついた。彼女はきっと可哀想だと言われたら腹を立てそうな気がした。
「……何とかしたい、な」
 ラズヴィスも呟く。
「とにかく、どこかゆっくり出来るところをさがさんとな」
 倒れるカインの傷を見ながらヴァレリーが言う。暫く動かせそうにない。
「ん。おつかれ、さま」
 ベガがへたりと彼女たちの遺体を見て頭を下げた。
「埋葬を、しましょう」
「悲しい女性たちだったね……」
 サクラが小さくデリーラ達を見て呟いた。何故、と。何故こんな事になったのかと呟く。ルーイッヒがサクラの頭をそっと撫でた。それでもやはりルーイッヒは、彼女たちを悲しい人だと思ったから。
 ルーシルベルトが雨傘を開いてりんと鈴を鳴らす。まるで弔いのように。
「……さて。まだまだやることはたくさんあるさね」
 ウルカがそう声をかけて、手を叩いた。
「……癪に障るな」
 レオニスがぐっと拳を握りしめて呟いた。何が癪に障ったのかは、端から見ては解らなかった。大切な者と武器を同じくするマスカレイドになのか。それとも……、
「直ぐ、帰るぞ。シズ……」
「棘に侵される前に、話をしたかったねぇ。何の理由があったにしろ、やっぱり殺し合いよりはよっぽど良かったのにさぁ」
 ラグランジュがぼやくように呟いた。



マスター:ふじもりみきや 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2010/12/01
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