ステータス画面

一流の彫刻よりも見事な造形

<オープニング>

 屋敷には隠し部屋があって、ウルリッヒは毎夜そこを訪れていた。
 使用人の中には、主の秘密の習慣に対して不穏な気配を感じていた者もいた。けれど、職を、あるいは命を賭してそれを追求した者は、今までのところいなかった。
 レジスタンスの青年たちは、隠し部屋で見た光景に、思わず顔をしかめた。
 シャンデリアの明かりに照らされているのは、装飾を施された分厚いガラス製の箱が6つ。箱の中には、まだ若いダークエルフの男女が一糸まとわぬ姿で押し込められている。
 パートナーを失ったダークエルフたちが、秘密裏にウルリッヒの屋敷に捕らわれて非道な扱いを受けているということは知っていた。だが、この光景はあまりにも予想外だ。
「なんなんだ、これは……」
 箱の1つ1つは、エルフたちの身体がちょうど収まるギリギリのサイズ。
 どれも不自然な体勢を強要する形となっている。いや、もっと自然な体勢であっても、狭い箱にいつまでも押し込められていてはたまらない。
 青年の1人がは箱に駆け寄る。ぐったりしたダークエルフの1人に呼びかけるが、返事はない。
「美しいだろう?」
 低い男の声が、背後から聞こえてきた。
「私は若い頃、芸術を志していた。彫刻家になりたかったのだよ。けれど、父に止められ、家を継ぐことを強要された」
 屋敷の主であるウルリッヒは、穏やかな声でレジスタンスの青年に語りかける。
 振り向く。主の周りには道化師が1人と、そして2人のメイドがいた。
「今は父に感謝しているよ。造り物など、生身の造形美に比べれば塵に等しいことを悟ったからな」
 レジスタンスの青年たちは、剣を抜いた。
「君たちも私の作品に加わるなら生かしてやってもいいが……聞くまでもない質問だったかな」
 ウルリッヒが召喚した星霊ジェナスが、鋭い牙でレジスタンスを噛み砕く。
 殺戮の光景を見つめるダークエルフたちには、もはや諦念の表情さえ浮かんでいなかった。

「レジスタンスの次の作戦が始まりました」
 竪琴の魔曲使い・ミラ(cn0007)は旅人の酒場にいたエンドブレイカーたちにそう語った。
 ハイエルフのパートナーを失ったダークエルフは処刑される。けれど、そんなダークエルフの一部は表向き『死んだ』ことにして、生かされているらしい。
 エルフヘイムの貴族の中に『死んだ』ダークエルフを引き取って、私欲を満たすために利用している者がいるというのだ。
「今回の作戦は貴族の屋敷に潜入して、ダークエルフを救出するのが目的です」
 ミラが暗い表情になった。
「でも、この作戦は失敗します。レジスタンスの方が死ぬエンディングが見えてしまったんです」
 屋敷の主であるウルリッヒはマスカレイドと化しているらしい。
 レジスタンスよりも先に屋敷に潜入し、ウルリッヒを倒してダークエルフを救出して欲しい。ミラはそう頼んできた。
「ウルリッヒの屋敷には、裏庭にある隠し通路を使えば見とがめられずに入ることができます」
 それは、ダークエルフたちを秘密裏に運び込むために作られた通路らしい。
「マスカレイドであるウルリッヒは、星霊術士です。武器として魔鍵を持っています」
 また、配下はマスカレイドである道化師が1人。この男は魔曲使いであり、さらにソードハープを装備しているらしい。
 2人のメイドたちもマスカレイドだ。半獣のような姿へと変ずるという。彼女たちの爪に引き裂かれると回復の効果を受けにくくなる上に、食らいついて自らを回復することもあるようだ。
 捕らわれのダークエルフたちは、一般人である上に衰弱しており、戦闘に巻き込まれれば簡単に命を落としてしまうと思われる。
 ただ、ウルリッヒは大切な美術品を自ら破壊しようとはしないだろう。余計なことをしなければ、戦いに際してダークエルフのことを気にかける必要はない。
「パートナーを失ったダークエルフの処遇については様々な意見があると思います。ですが、少なくともこんな扱いが許されていいとは思えません」
 戒律のことは別にして、エンドブレイカーとして見過ごすことはできない。
「どうか、ダークエルフを救ってあげてください。お願いします」
 ミラはそう言って、頭を下げた。


マスターからのコメントを見る
参加者
片翼の鵠・クリード(c00892)
風薙ぎの探求者・ミユキ(c01656)
千刀狩の守人・ルーン(c01799)
剣仙・イズミ(c04792)
スパイダーリリィ・ミリア(c07854)
極彩熾師・ヤノッシュ(c13622)
桜色の幸せ四葉・ヨツハ(c15542)
フィッサンメーラブィ・ツムギ(c17254)

<リプレイ>

●悪趣味な展示室
 裏庭にある隠し通路は、夕闇の中でもすぐに見つかった。
 エルフヘイムの貴族であるウルリッヒの屋敷へとエンドブレイカーたちは侵入していく。
「引越しの次は救出か……戒律で、こんなんなってるのはやっぱおかしいよね?」
 風薙ぎの探求者・ミユキ(c01656)が疑問を口にする。
 彼らがこれから救いに行くのは、戒律を悪用する者によって犠牲になっている者たちだ。
「少なくとも、くだんの貴族のやり口はレジスタンスであろうとなかろうと見逃すわけにはいかん。罪無き者達を救い出し、外道に天誅を下す」
 凛とした声で剣仙・イズミ(c04792)が言う。
 やがて、8人はウルリッヒの展示室へとたどり着いた。
「普通の方が苦心して見つける隠し通路も〜、エンディングで見ればすぐですね〜……」
 フィッサンメーラブィ・ツムギ(c17254)が言う。確かにあっけないほど簡単だ。
「その分〜、色々やる義務もあると思ってますが〜」
 難しいのはここからだ。マスカレイドと対決しなければならない。
「すっぽんぽんのダークエルフを眺め放題な生活とか、まさに羨まけしからん、だね!」
 片翼の鵠・クリード(c00892)が不機嫌な声を出す。
 展示室の扉の向こうには、聞いていた通りの光景が広がっていた。
 ガラスケースに入れられているのは、オブジェと呼ぶには異様な、裸体のダークエルフたち。
「悪趣味、ね……」
 スパイダーリリィ・ミリア(c07854)の言葉は、その場にいた全員の気持ちを代弁していた。
「現状はわからないことも多いですが、生きながらこのような辱めを受けるいわれはありません」
 千刀狩の守人・ルーン(c01799)の言葉に怒りがにじみ出ている。
「侵入者か。私のコレクションは気に入ってくれたかな?」
 入り口から声が聞こえた。屋敷の主であるウルリッヒは、エンディングで見たとおりに3人の配下を連れて姿を現す。
「生きたエルフの箱詰めね……とってもいいご趣味で」
 極彩熾師・ヤノッシュ(c13622)の皮肉に、悪徳貴族は頭を左右に振る。
「君は若いな。どうやら、美しさというのがまだわかっていないようだ」
「生あるものを捕らえるんじゃ『生』以上の何かは見つけられないよ」
 あざけるウルリッヒに、ヤノッシュは自信に満ちた表情で断言した。
「美しいとか美しくないとか以前に……」
 桜色の幸せ四葉・ヨツハ(c15542)が、アックスソードを抜いて進み出る。
「パートナーを失ったからって……生きているのに……もの扱いなんて許せない!」
「彼らは死体になるはずだったのだ。それよりは『物』のほうがマシだろう?」
 懐から取り出した魔鍵を、ウルリッヒはエンドブレイカーたちに向けた。道化師と2人のメイドが彼を守るように立ちふさがる。
 敵がいずれもマスカレイドの仮面がつけていた。
「罪は白く……血は紅黒く……始めましょうか…」
 ミリアの瞳が赤く澱む。それが、戦いの開始の合図となった。

●道化の末路
 ルーンは棍を手に、敵の真正面に進み出る。元刀『鉄』はいまだ鞘に収まったままだが、必要ならばいつでも抜けるようにしてあった。
 展示室の中は、戦闘するに十分なスペースがある。
「その腐った性根を、死をもってあがなってもらう」
 メイドたちがルーンの眼前で変異する。マスカレイド化によるものか、頭部が狼のようになり、爪が刃物のように巨大化する。
 ルーンの身体にいくつもの爪あとが刻まれる。
 もう1人のメイドは、ヨツハへと飛びかかっていた。
「まず道化師を倒すよ!」
 ヤノッシュが仲間たちに呼びかけると、幾本も束ねた火矢を放つ。
 計画していた通りに、エンドブレイカーたちは道化師に集中攻撃をしかけた。
 道化師は踊るような動きでヨツハの剣をかわしたが、その先には高速で魔法を詠唱したイズミの太刀が待っていた。
 火炎と雷鳴の連斬が道化の衣装を焼く。
 一瞬遅れて道化師のソードハープもイズミの脚を切り裂いた。
 さらに傷口へウルリッヒが召喚したジェナスの牙が突き刺さり、女剣士は一瞬表情をゆがめた。
「イズミ、大丈夫かい?」
「問題ない。外道の攻撃で膝をつくわけにはいかない」
 クリードが道化師の首に飛び乗り、投げ飛ばしてイズミとの距離を離させた。
 飛び起きた敵の腕が石と化す。ミリアの邪眼だ。
 ルーンは棍を横に構えた。
「我が棍は全てをなぎ払う!」
 床に近い位置を走った棍棒が、道化師とメイドの1人の足を払う。
 ほんのわずかの間に手足に痛打を受けた道化師が、目を白黒させた。
 道化師とウルリッヒの攻撃を受けたイズミを見やる。傷は深いが、まだ十分に戦えるようだった。
 イズミは、足の痛みをこらえて、歌仙拵えの愛刀『和泉守兼定』を構えなおす。
 ツムギが道化師のソードハープを狙って剣をくりだす。
 前腕を打たれて武器を落としかけた道化師が、大柄な少女に怒りの表情を向けた。
 ミユキが吹いた針が、道化師の胸元に突き刺さる。
「そっちばっか気にしとったらあかんな。一瞬の痛みで、長き苦痛をあたえたるでぇ〜」
 毒の針にもがきながら、道化師がハープをかきならした。
 さらなる追い討ちを受けながらも、せつないメロディが響き渡る。だが、やけになっての行動だということは、容易にわかった。
 太刀を鞘に収め、目を閉じる。足はまだ痛んでいたが、イズミを止めるにはいたらない。
「さぁ、裁きの時間だ!」
 精神を統一し、イズミは走った。高速の抜刀が風を切る。引き抜いた太刀には雷鳴が宿っていた。
「雷光……、一閃!」
 振り切った刃が、道化師の頭を断ち割る。
 ソードハープが床に落ち、次いで道化師の身体も倒れた。
「この……!」
 ウルリッヒがジェナスを召喚し、イズミに放ってくる。
「……貴様も、すぐに外道の報いを受けることになる」
 上空から体当たりしてきた鮫の牙に噛み砕かれながらも、イズミは宣言した。
「世迷言を……私の芸術の理解者を、よくもやってくれたものだ」
 苛立った様子を隠しもせずに、ウルリッヒはジェナスを召喚する。
 ミユキは思わず彼を怒鳴りつけていた。
「芸術とか……途中で諦めて、道楽半分で悪戯に他人を貶して、何が楽しいんや!」
「諦めた? いいや悟ったのだよ。第一、『戒律』に従って死なねばならない者たちを生きながらえさせてやっているのだから、非難されるいわれはない」
「戒律がなんや! そんなんは、壊す為にあるんやろ!」
「それは、部外者だからこそ言える言葉だな」
 マスカレイドにはミユキの想いを理解しようとする意思がまったくない。
 ウルリッヒは、部下を倒したイズミへジェナスを放とうとする。
「させへん! 清らかな風よ、穢れを連れて吹き逝け!」
 その直前ミユキは涼しの風でイズミへと命を運ぶ。ジェナスはイズミの身体を食い破るが、彼女が倒れることはなかった。

●ウルリッヒとの戦い
 道化師を倒したエンドブレイカーたちは、次いで半獣と化したメイドたちと戦っていた。
 ミリアはウルリッヒを見つめる。彼女の左の目は呪われた邪眼の力を秘めていた。
 邪眼で見ていると、まるであの男の腐った魂が目に見える気がしてくる。
「生命は美術品ではないわ……そんなもので置き換えられるほど……単純ではないのよ……」
 ただ、人格はどうあれウルリッヒは強敵だ。攻撃もひときわ威力がある。
 仲間たちも、牽制を織り交ぜつつ、メイドと戦いを続けている。
「紫電……一閃!」
 まっすぐ伸ばした掌からイズミが電光を放つ。ヤノッシュの火矢が上等な服に火をつけた。
 ミリアは邪眼を放った。魔鍵を手にした手を、ウルリッヒがおさえる。
「視線……死線……同じ発音は偶然かしら、ね……フフ……」
 マヒさせたからといって勝ちが決まったわけではない。だが確実に、ウルリッヒは死線に近づいた。
 メイドたちに目を向ける。片方が爪を振りかざし、ツムギと切り結んでいた。
 ツムギはメイドが繰り出す爪を剣で受け止める。
『大きい娘』という称号のツムギは、メイドより頭1つ分背が高い。だが、彼女たちの力はツムギと互角。前衛の者たちは全員浅からぬ傷を負っている。
 もう片方のメイドがルーンを切り裂いた。直後、ヨツハが光の拳で青年を鷲づかみにする。
 回復したルーンは棍でメイドたちをまとめてなぎ払った。
「うちの矢から逃げ切れると思うな」
 ミユキが天へと矢を放つ。無数の矢がメイドたちを貫いた。
「さて〜、芸術とは名ばかりの自己満足は終わりですよ〜」
 メイドの爪をツムギの剣が絡め取り、打ち砕く。
「このダークエルフの皆さんを〜、どなたから手に入れたのですか〜?」
 膝を突くメイドを尻目にツムギはウルリッヒに問う。
「答える理由があるかね?」
 ウルリッヒの答えを聞いたツムギは残るメイドに向き直る。クリードが攻撃をしかけていた。
 クリードの暗殺シューズ、ウロボロスのつま先からナイフが飛び出る。
「本当なら女性に攻撃なんてしたくないんだけど……」
 切り裂かれた傷口を押さえ、呼吸を整える。女性陣の盾になるよう心がけていた彼は、幾分攻撃を受ける機会が多かった。
「マスカレイドになっちゃったなら、おしおきしなきゃいけないね」
 連続で蹴りを叩き込み、メイドの身体に足先のナイフを突き刺す。
 仲間が敵を囲んだ。
 メイドが爪を振るう。クリードはあえて攻撃を受けた。真後ろにヨツハがいたからだ。
 そのヨツハがクリードに光の拳を叩きつけ、癒してくれる。傷を負いながら彼女は迷わず仲間を回復していた。
 棍を床に立て、ルーンが腰の太刀へ手をかけた。
「我が太刀は森羅万象を断ち払う神速の一撃也」
 一瞬で抜き放たれた刃が敵を袈裟切りにする。
 雷鳴をまとったイズミの斬撃が、攻撃を防ごうとするメイドの腕を弾き飛ばした。
 クリードが床を蹴った。メイドの胸の辺りに乗り、脳天に爪を振り下ろす。
 小柄な少年の身体さえ支えられなくなったメイドは、倒れて動かなくなった。
 残る敵は、ウルリッヒのみ。
 ヨツハはだいぶ息が上がっているのを感じる。元気が取り柄の彼女だが、さすがに消耗していた。
 敵から距離を取る。
 その瞬間、ウルリッヒの魔鍵が飛んだ。
 目の前でヤノッシュの頭の影に魔鍵が突き刺さる。
「うっ……!」
 限界が近い自覚はあったがヨツハは迷わなかった。
 無理はするな、という声が飛んでくる。
「大丈夫……みんなが守れれば、私はそれで幸せだから」
 仲間の声に心が高揚した。光の拳でヤノッシュを鷲づかみにして、彼を癒す。
 痛打を受けたヤノッシュは星霊ヒュプノスを召喚する。
「同じ芸術をたしなむ者としても、君のこと嫌いだなぁ」
 ルーンが太刀を収め、ウルリッヒへと駆ける。抜き放った刃が横一線を描いた。
 イズミやツムギ、クリードも、ただ1人残った敵へと接近していった。
「人間の美は〜、その生活にあると〜、私は思いますよ〜」
 ツムギが剣を構え、十字の軌道で脚を砕く。そこへ、イズミが刃を振り下ろした。
 高速詠唱で強化した太刀は電光をまとっていた。頭部に受け、ウルリッヒが体勢を崩す。
 気づくとミリアが静かにウルリッヒへと歩み寄っていた。
「お前の魂……私の『罪』にしてあげる……」
 刃のない大鎌を左手だけで薙いだ。鎌の背の部分がウルリッヒの首を強く打つ。
 ウルリッヒはまだ倒れなかったが、だいぶ追い込まれていた。
 影を狙って魔鍵を投げてもヨツハが癒す。手数の差は大きい。
「今まで与えて来た苦痛に比べれば、うちの毒なんて甘いもんや」
 ミユキの毒針がウルリッヒの目に刺さった。
「悟ったとか言ってるけど、彫刻を続けることを諦めただけじゃないか」
 敵に飛び乗ったクリードが首を絞めながら投げ飛ばす。
 ヤノッシュは矢を束ねて火をつけた。
「無から、自分という存在を用いて何を作りだすか。それが芸術じゃない?」
 矢を放つ。
「……なぁんて、諦めた人にはわかんないかもね」
「諦めて……など……」
 ウルリッヒの言葉は続かない。
 大きくため息をつき、彼はそのまま火の中にくずおれた。
「お家の事情もあったのだろうけど……可哀想でも同情しないよ」
 見つめる先で、ウルリッヒの仮面が炎とともに霧散していった。

●ダークエルフ救出
 ミリアは燃え尽きたウルリッヒの死体に歩み寄る。
「お前には……分からなかったの、ね……真に美しいものが……何なのか……」
 無表情のままで、ミリアは彼岸花を一輪、死者の上に放つ。
「さて、急いで救出せんとあかんな」
 障害がなくなったことを確認し、ミユキがダークエルフたちの入った箱に駆け寄る。
 ヤノッシュも同じように駆け寄り、そのうち1つを僅かの間見つめた。
「……やっぱり、生あるものを捕らえての芸術は理解できないな」
「理解する必要もあらせんわ」
 中のエルフたちを傷つけないように、慎重に壊していく。
「もはや今更感がありますが〜、一応覗き厳禁ですよ〜」
 捕らわれていた中には、女性のダークエルフもいる。用意してきた衣服をガラスケースにかけ、見えないように作業しながらツムギが男性陣に告げた。
 助け出したダークエルフたちは、ろくに起き上がることもできないようだった。
 彼らの前で膝をつき、イズミは優しく語りかける。
「怖かっただろう、もう大丈夫。助けに来た」
 気力を失った、光のない目がイズミを見上げた。
「動けなさそうですね。肩を貸して行くことにしましょう」
「そうだな。私も背負っていくことにしよう」
 ルーンの言葉に、イズミはうなづいた。
「戒律の真実を知った以上、ダークエルフの紋章についてもっと調べたいところですが……棘の感知まではできないのが残念ですね」
 ダークエルフを肩にかつぎ、ルーンが呟いた。
「今の境遇がどうであろうと〜、これからのあなた達は、いくらでも服を選んで着る事ができると思いますよ〜」
 ツムギも彼らの1人を支え、告げている。
「この人たちが、この先幸せになってくれるといいんだけど」
「そうだね。大切な人たちを亡くしてしまった以上、難しいかもしれないけど……そうなってくれたらいいと思うよ」
 ヨツハとクリードが言葉を交わす。
 クリードはかつて肉親を亡くした。パートナーを亡くすのはそれと同じような気持ちなのだろうか。
「戒律に逆らうけど、生き続けることはできるんだよね。この人たちは、どう感じるんだろう」
 その答えは、すぐにはわからないものだ。
「この方たちは〜、外に出たらレジスタンスに身柄をお任せしましょう〜」
「逃走経路は……当たりをつけてあるわ……急ぎましょう、ね……」
 ミリアの先導で、エンドブレイカーたちはウルリッヒの屋敷を脱する。衰弱したダークエルフたちが言葉を発することはなかった。
 かすかな声がイズミの耳に届いたのは、レジスタンスに彼らを引き渡すとき。
「……ありがとう」
 空耳かと思えるほど小さな声で、ダークエルフの1人は確かに感謝の言葉を告げた。



マスター:青葉桂都 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2010/12/08
  • 得票数:
  • カッコいい12 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。