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リヴァイアサン大祭:雪ピヨコとマーブルリング

   

<オープニング>

 12月24日は、リヴァイアサン大祭だ。
 1年に1度、この日だけ、エルフヘイムの外周を支える星霊建築の元となっている、水の星霊『リヴァイアサン』が半実体化して空中を飛び回る。
 すると、空からは雪が降り続き、泉は温泉に変わり、小川には甘い蜜が流れるという……。
 そんなリヴァイアサン大祭の日は、エルフ達にとって『パートナー』との絆を尊重し、静かに世界の平和を祈り合うという大切な日なのだという。

 君も、大切な人や仲間達と一緒に、リヴァイアサン大祭を楽しんでみてはどうだろうか?

●雪ピヨ山と雪ピヨコ
 お祭りの日、その場所には巨大な雪ピヨコが出現する。
 別に動き出したりはしない。
 雪で作ったヒヨコをそのまま大きくした様な、ちょっとした雪山の事である。
 近くの村に住むマーブル婦人はその山の事を親しみを込めて『雪ピヨ山(さん)』と呼び、毎年リヴァイアサン大祭の日に雪ピヨさんを訪ねる事を、それはそれは楽しみにしている。
 むかーし昔、マーブル婦人がまだ『娘さん』とか『お嬢さん』とか呼ばれていた頃に、その山でちょっと素敵な体験をして、以来、思い出を繋ぐ様に、若い世代に伝えるちょっとしたゲームのお話。

 大祭の日の夜。
 雪ピヨ山には沢山の雪のヒヨコが現れる。昼の間にマーブル婦人やその子供、孫達がせっせと拵えた真っ白で可愛い『雪ピヨコ』達だ。その中には、何かが一つ、入っている。
 多くはキャンディ。次に多いのは綺麗な色の小石。マーブル婦人が作った小さなアクセサリーが入っている事もあり、時には何も入っていない『ハズレ』もある。
 知らず準備を手伝う小さな子供達にとっては単なる雪遊び。ヒヨコを沢山作るのに夢中で、中に何かを入れる事なんて、時々うっかり忘れてしまうのだ。
 ――さて。
 そんな『宝物入り』の雪ピヨコを探すゲームは、マーブル婦人から若者達への祭の夜の贈り物であるという。雪ピヨコもその中身も、見つけた人の物。大事な人への贈り物をこっそり混ぜて、相手にさりげなく探させるのも素敵だと、いつの頃からかそんな便乗サプライズも定着した。

 祭の夜の間だけ、ちょっとした宝探しは如何?
 雪が降り続ける夜だから、身体を冷やさない様に気を付けて。
 マーブル婦人は雪ピヨさんの頭の上にテントを張って、パートナーと一緒に若者達の宝探しを見守っている。休憩に訪れる者が在れば、焚火と、温かいスープぐらいなら饗する事が出来るだろう。
 ――という話だ。

●ちょっとしたお話
「リヴァイアサン大祭の日、雪山の宝探しがあるそうですよ。とあるエルフのご婦人の、手作りの催しなんですけど、何だか雪ピヨさんがとても気になってしまって。一緒に行きませんか?」
 すっかり馴染んだ酒場の一卓。いつもの様に一人もそもそと食事をしていた扇の魔獣戦士・ラサルリート(cn0066)が、不意にそんな事を言い出した。
 きっと楽しいと思います。と、目を細めて笑う彼女。
 冬生まれだからちょっと余計にわくわくしています、なんて訊かれてもいない事まで口にしてしまう辺り、雪降る祭を前にして、かなり浮き足立っているのは何となく伝わって来る。
 その気配がふと揺らぎ、視線を遠くに投げて考え込む様な数秒。訝しげに見遣ると、彼女は何かを思いついた様に両掌をぱんと合わせて、笑顔で頷いた。
「そっか、リヴァイアさん!」
 ――?
 よくわからないが、妙に親しげに星霊の名を呼ぶ彼女の中で、リヴァイアサンは雪ピヨさんと同じカテゴリに分類されたのかもしれない。ラサルリートはほくほく顔でエンドブレイカー達を見た。
「素敵な宝物と、輝く様な思い出と――そういうものを共有できる人が傍に居たらますます素敵じゃないですか? リヴァイアサン大祭の夜に、何かを見つけに行きましょう。皆で!」

 祭の夜――どう過ごすかは貴方次第。


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参加者
NPC:扇の魔獣戦士・ラサルリート(cn0066)

<リプレイ>


「よーし、宝物見つけるぞー! な、『ぱ』さん!」
 頭のひよこに声掛けながらお宝求めて走り出し、雪に突っ込むナハト(c00101)の姿にルィン(c01263)は笑みを溢す。「転ばない様に気を付けるんだよ」というルーイッヒ(c10234)の言葉は風の様に何処かへ行ってしまったらしい。
「ナハトが一番嬉しそうだよな、なぁ、アエラ」
「ナハトと雪ピヨさんの区別が付かないわ」
 アエラ(c07470)もくすくす冗談交じり。胸躍るのは滅多に触れる事のない雪に包まれているから? それとも、今この時が子供の頃に帰ったみたいで微笑ましく思えるからだろうか。
「宝探しは浪漫だよね」
 と、ルーイッヒも目を細めた。
「ヒュプノスさん、ジェナスさんカモン!」
 星霊達と一緒に宝を探し始めるナハト。吐息は白く、両手に分厚い手袋、マフラー代わりにスピカを巻いて、仲間を振り返る活き活きとした瞳と声。
「これ終わったらさ、皆で見せ合いっこしよーぜ」
 じゃあオレも頑張って探さないといけないね、とのんびり視線を巡らせるルーイッヒ。
「これはまた、愛らしくて…このまま持って帰って飾りたいね」

 真っ白な雪が連れて来た幸せの形。
 そこかしこにお菓子の様な手作りの雪ピヨコ達がひょっこり顔を出している。

「いっぱい見つけるから僕に任せて!」
 一日だけ現れる雪ピヨ山と雪ピヨコ達の不思議な絆を感じながら、ソラ(c12561)は胸を張って飛び出した。はぐれない様ついて行くキキョウ(c16256)。気遣う様に時折振り返るソラ。可愛いピヨコ達に囲まれて、宝探しに来た人達の様子を眺めるキキョウは楽しそうだ。
「わあ、エクゼ手真っ赤! そんなにはりきって、何を探してるのかなー?」
 からかう様なカムパネルラ(c00864)の言葉にエクゼクティブ(c00015)は顔まで赤くなりそうな勢いで諸手を振った。友達と一緒に来た事も忘れて夢中になっていた気恥ずかしさも相俟って。
「これは、なんでもなくて!」
 互いに手を真っ赤にしながら2人は、鞄にお土産と思い出を目一杯詰め込んで行く。

「あれ、老公、どこよな?」
 真白の景色に不意に仲間を見失いかける。バンカ(c00729)に『老公』と呼ばれたマンジ(c01090)は振り返り、
「ほ? どないしたん、バンカ坊。此処に居るよ」
 と、袖を振る。片手に壊し難い雪ピヨコを載せたままで。それを見てバンカも己の手に乗せたピヨコを笑顔で披露する。
「どうよな、とびきりの美人だろ?」
「このまま連れて帰ろうかのぅ」
 呟くマンジ。シャルティナ(c05667)がそれを聞きつけ、相変わらずのはしゃいだ足取りで雪ピヨコの間を駆け戻って来た。非常に危うい。
「おー、シャル、足元気をつけて――」
 バンカが思わずかけた言葉も虚しく。
「雪ピヨさん持って帰るですか? じゃあ、私も割らずに帰っ」
 べしゃ。
「おわ。シャル嬢、大丈夫かぇ?」
 哀れ雪ピヨコ。シャルティナの下敷きとなって――おや?
「此れも縁かのぅ」
 相好を崩すマンジ。どれどれと覗き込んだバンカが「よかったなぁ」とシャルティナに優しく声をかける。潰してしまった子の代わりに大事にするですよー、と少女は輝く瞳で『宝物』を握り締めた。

 雪ピヨコと見つめ合うマノ(c14148)。グラム(c14628)の様子を窺うと、彼は形を崩さない様、棒を使って穴を開け、そこから中身を取り出そうとしている。何と云うテクニシャン。出て来た石をピヨコの眼に宛がう彼に、彼女は声をかけた。
「ねぇ、何か宝物は見付かったかしら」
 良ければ気に入った雪ピヨコさんを交換しない?
 彼女の元にやって来たのは綺麗な石を瞳に貰ったピヨコ。思わず頬が緩む。
 待っていれば溶けて宝物をくれるだろうか。それも良い。何も出なくとも思い出になりそうだ。

「どっちが早くお宝見つけるか競争だぜ〜!」
 不敵な笑みを浮かべてミズハ(c02681)は、迷わず雪ピヨコを粉砕して行く。一方、ラヴィスローズ(c02647)は「すまぬの…」と呟きながら漸く一つ。
「わぁい、ミズハ見て、飴ちゃん発見じゃ!」
 まるで宝物を見つけた様なはしゃぎ様、だが既にミズハも飴飴飴石飴石石飴。宝、ではないのか。
「むぅ…妾負けないっ」
 しかしミズハも彼女に負ける訳には行かない。やがて彼の手が飴でも石でもない物を掴んだ。
 何処かほっとした様な表情でミズハは、その小さな指輪をラヴィスローズの掌に転がす。
「オレじゃ使えねーから、やる!」
「良いの? わぁ、ありがと…!」
「友情の証だぜ? 大事にしろよー?」

 ぱかっと壊して、またすぐぴたっとくっつけて。
 その方法に気付いてからはアンジェリカ(c00224)の躊躇も消え、楽しげな彼女を暫し傍観していたリウェス(c11531)もいつしか仲良く共同作業。彼が作り直した雪ピヨコは何とも言えないカタマリと化し、そこで彼ははたと冷静さを取り戻した。
「うん。俺には向かん」
 アンジェリカが夢中になっている隙に、こっそりそれを混ぜて置く。中身を取り出した所で彼女はそれまでとは違う包みに気が付いた。恐る恐る開いてみれば綺麗なペンダント。六角柱の白い石。
「!」
 振り返った瞬間に彼女には贈り主が解った様だ。吃驚顔に喜び満開でリウェスを見る。
「さてな。リヴァイアサンの落し物じゃね?」
 俺じゃねえと言い張るもアンジェリカの目は疑いもせず真っ直ぐ彼を見つめている。
 ありがと、リウたん。
 眩しすぎるその輝きから、リウェスは思わず目を逸らした。

「ああ、ナンパにさえ成功してりゃなあ」
 ギャレット(c02948)がぼやく。いい歳した独身男三人、祭夜に黄昏る光景とはこれ如何に。
「マーブル婦人なら微笑ましく見守ってくれんじゃね? 未だ若造の内だろ俺らなんざ」
 アレシュ(c03261)は反論し難いフォローを口にし、
「雪ピヨに惚れられたならナンパ以上の成果じゃないか」
 セインゴート(c14143)は全く気にしていない様子。
 適当にサクサク歩いてギャレットは、目が合った気がする一羽を手に乗せてみる。
「ンだよ俺に惚れたか。だが残念、俺ぁセインと違ってヒヨコよかおねーちゃん派なんだわ」
 少し力を加えただけで雪像は敢無く崩れ、綺麗な丸石が顔を出した。
「この可愛いのを泣かさず宝物を貰うにはどうしたもんか」
 マフラーを巻き直し、中身の取り出し方にアレシュが頭を悩ませる一方で、殆ど葛藤もなくセインゴートもパカリ。ハズレだ。笑って肩を竦めつつ、ピヨコを元に戻そうと試みる。
「同じにはならずとも、折角だからもう一度生まれておくれ」
 三者三様の宝探し。
「なあ、どっちか連れて帰ってやってくんね?」
 自室ではすぐに失くしてしまいそうだとギャレットがそんな事を言い出した。今にも彼の指先がうっかり弾いてしまいそうな小石は、溶けずに残る思い出。
「あァ、ならギャレット、交換するか?」
 応えるアレシュはピヨコから丁寧に取り出した飴玉を。言わばピヨコの甘い思い出だ。
 交換成立。見つけたものはそれぞれに。眠る宝はまだまだ山の様に在る。

 雪ピヨコから幸せを分けて貰ったら、次に見つける誰かの為に。
 ロゼリア(c05854)がポケットから取り出す小さな陶器の人形を見て扇の魔獣戦士・ラサルリート(cn0066)が眦を下げた。
「イイですね、それ」
 リボンで結んだ白黒ペアの猫人形は可愛くて、計らいは小粋で。新たな宝物を包んで生まれ変わったピヨコをその場に残して2人はまた歩き出す。
「幸せは、巡り♪ 巡れ♪」
 楽しげに口ずさむロゼリアの後から「くるくるり♪」と続く声。


「綺麗な色の小石、記念に皆で一個ずつは持って帰りたいですね」
 ユン(c00020)の言葉に同意する、旅団【茨森の砦〜lumber jack】の仲間達。クロシェット(c01679)はヒィト(c06785)と発見したアクセサリーを押し付け合い、互いに「これが似合いそう」だの「クロシェットの方が!」だの微笑ましく言い合う声が聞こえ来る。楽しそうな仲間の様子に心和ませながらルーク(c10363)は、皆を誘った甲斐があったと少し思う。そこへエキュー(c10551)が子犬の様に駆けて来た。何か握り締めている。
「えっと、これ、見付けた…!」
「そうか、良いの見つかって良かっ……」
 それが自分への少し遅い誕生日プレゼントだと知ってルークは言葉を止め、そっぽを向いて呻く。
「有難う、な」
 それにしても。
「シドが普通に参加してるのは意外だ」
「何だよ、俺が祭に居ちゃ悪いかよ」
 むすっと言い返すシド(c10366)。雪ピヨコに集中する隙だらけの背を、悪友ルークが何ぞ企む顔で見つめていた。

「ここは私に任せて」
 見えないものを探すのは占い師の本分とばかりエレミータ(c16446)は魔鍵を真っ直ぐ打ち立てた。
 ぱたり。鍵が倒れた先にある雪ピヨコを自信有りげにビシと指す。
「アレね。間違いないわ」
 ……。
「ニアミスね。きっと隣が当――」
 ……。ふ。無表情に自虐の溜息を溢すエレミータ。
「何匹見つけるか、誰か、競争しない?」
 ハク(c16700)の呼びかけに応じるリュリュー(c15061)にチルチェ(c18160)、キシス(c05687)。賑やかに真剣勝負を楽しむ四人を見ながらアシエト(c15863)は意気揚々と雪ピヨコ探し。ディアナ(c01140)もピヨコと戯れつつ楽しく仲間達を見守っていた。――と。
「ディアナー、この先に面白いものがあったぜー!」
 不思議に思いながら呼ばれた方に行ってみると、雪上に残る足跡とフットプリント。それを辿って雪に書かれたメッセージを見つけた。――『Dear my friend』。その傍には雪ピヨコ。中から出て来た三日月形のヘアピンに感嘆の声を漏らすディアナの後頭部に、雪玉を浴びせたのは悪戯っぽく笑うソラ(c01261)。
「オレからのサプライズ気に入ってくれた?」
 怒られるかと思っていた彼だったが、返って来たのはイイ笑顔。
「大事にさせてもらうっす!」

「お父さん、こっち。探してみて。私からだから」
 見つけた飴玉を口に含み、笑顔で雪ピヨコの群れを指すコルガ(c15189)。
「! お、お父さんって言ったか今!」
 アンブローズ(c00259)に訪れた奇跡の瞬間。暫し背を向け肩を震わせていた彼だったが、一呼吸して向き直る。高まる気持ちを何とか抑え、壊れ物を扱う様にピヨコの腹に手を入れた。
 出て来るものは雪ばかり。既にその中身はコルガによって悉く取り尽くされている事実。
「……。うっ……」
「泣くな、いいおっさんが鬱陶しい」
「な、泣いてねえ!」
 スルーしようとしてコルガは髭ピヨコを発見してしまった。ソレに一応(嫌々)付き合ってやる優しさ。出て来た物は即、雪に埋めた。
「あ、何で捨てるんだよ。俺の勝負運を諦めてまで譲ろうってのに…!」
「アンブローズさんの運とか頼まれても要らないし」
 容赦無い娘の一言。哀しい現実。
 親娘のちょっとした悲劇の割と近くにヤマダ(c15080)は居た。雪ピヨコが溶けるまで愛でる、その間に自分でも作ってみる。大家族にするのだ。かくして増えるハズレピヨコの頭数。

 最初に宝を見つけた奴が今日のキングだと、始めに言ったのは誰だったか。
 昔からギャンブルはからきしだと自覚はしている。だがこうも続くと逆に何らかの機運が働いているのではと思わなくもない。
「誰かコレいるー?」
 飴ー。と声を上げたのは何故だか飴三昧のギィ(c08806)。真っ先に手を挙げているのは、ピヨコをぺたくた触りまくっては壊し直しを楽しく繰り返し、小石と飴玉でポケットを膨らませたフィグ(c00731)である。次いで何が起きたのか、ギィを気遣うラツ(c01725)の慌てた声もした。仲間達の気になるやり取りを耳にしながら、何体目かの空ピヨコを雪に還した時、ベンジャミン(c04958)の横からナイ(c10070)が可愛いピヨコを見せに来た。彼女が沢山の中から選んだのはひよこらしいピヨコ。「おや」と目を細める彼にナイは何かを察しつつ、彼の手に次のピヨコが居るのをちらと見て、首尾を伺う。
「俺は全然……」
 答える彼の指先がコツ、と何かに触れた。
「あ。小ピヨ、…可愛い」
 ナイの頬が緩む。小ピヨ……ヒヨコの形をしたその石の雪を払うベンジャミンの指先から自分の手元に彼女は視線を移した。大事に包む程じわりと形を失って行くピヨコ。溶けて宝物を見せてくれる方が良いと思ったからそのまま見守る事にした。
 楽しげに雪を踏む音。ブーツも上着も毛皮を纏ったシャラーレフ(c04126)が、立派な牙のペンダントを嬉々と振り回しながらやって来た。
「あら、『いい物』見つけたのね」
 キウ(c06943)は素直に祝福の拍手。口では悔しがりつつキウに倣うギィ。ベンジャミンも気付いて微笑み、「おめでとう」と祝した。
 誰かの幸せは彼ら皆の幸せと成り得る。そんな旅団【渇きの海】一行の穏やかな時間。
 どうやらキングは決まった様だ。それを以ってフォルテ(c00395)の視察も終了。意を決して挑んだ可愛い嘴持ちから貰った飴を頬張りながら、ハズレのピヨコ達は抱えた宝物を皆食べてしまったのだろうかと思えば微笑ましくもあり――。
「さて、逆に。外れなんてものは何処にあるのだろうか」
 リィ(c04382)曰く、中身の無いそれにも懸命に作る気持ちがこれでもかと詰まっている。
 休憩の姿勢でラツは「詩人ですねぇ!」と感心顔。ところで、と彼は言う。
「そろそろ補給に行きませんか?」

 一段落した所で、冷えた身体にささやかな温もりの宴。
 雪ピヨ山の頭を目指す灯りは他にも幾つか在る様だ。


(「本当の宝物は、こういった平和な瞬間の一つ一つかも知れませんね」)
 賑やかな仲間達の元をそっと離れて休憩所に向かったバルキス(c01045)は、暖を取る他旅団の人達の向こうで、ちゃっかりぬくぬくしているイクサ(c12926)と遭遇。先程まで子供達に混ざって全力ではしゃいでいたイクサ老が妙に大人しいのは寒さの所為か、『お嬢さん』の前である所為か。
「バルキスも休憩かの?」
「いえ、温かい飲み物を頂きに……うわ!」
「あたたかいのみもの!」
 その言葉に超反応して飛び出して来る雪にまみれたセルジ(c08262)。童心に帰って全力で宝を探す内、近くまで来ていた様だ。気を取り直し、人数分と言いかけてバルキスは手が足りない事に気付く。旅団【とかげの馬車】一行、総勢11名。イクサとセルジを思わず見るが、それ以前に――運ぶ間に冷めてしまうよ、とマーブル婦人は穏やかに微笑んだ。遠慮なく此処に休みにおいで。皆で。
 宝探しに夢中の時は雪の冷たさも気にならなかったが、こうして温もりに触れるとやはりほっとする。ランシェ(c00328)が婦人に揚々と見せに来たのは、雪ピヨコのそっくりさんな白い石。黒い模様がまるで眼と嘴。煌々と輝く火より、熱々スープより、破顔する彼女の姿にランシェの心はますます温かくなるのだった。


 鳥籠の様なランタンを翳せば鳥影が雪上に踊る。明かり採りには少し足りないと思った所でエルメル(c16016)は気付いた。宝探しに集う人達がそれぞれに携えた灯りがちらほらと辺りを染める幻想的な光景の中に居る事に。彼らの灯りもその一部になっている。
「エル」
「何ですか、イーさん?」
 見ると前方に3体仲良く並んだ雪ピヨコ。
 1体でも愛らしいのに3体も! ああしかしこんなに可愛い雪ピヨさんを壊すなんて……!
 葛藤の末エルメルは端から順に手を伸ばす。全てが木製のひよこ入り。ハズレ無し?
 それはイーヴァル(c16917)の心遣い。何気ない素振りで先を歩きながらエルメルは笑顔で言った。
「次は、イーさんが見つける番ですよ」

「沢山いるから迷っちゃうよな」
「そうよね。どの子も可愛いし…あら?」
 自らも雪ピヨコを探す素振りで何処か落ち着かないニノルダ(c05390)に導かれた先、雪ピヨコ達を撫でるメロウリーテ(c07600)の視線がふと止まる。少し歪なその子が気になって、崩すと中から貝殻を象る真珠の耳飾りが出て来た。
「素敵…!」
 瞳を輝かせるメロウリーテの姿にニノルダの気が緩む。
「あのさ、メロウ。…いつもありがとう」
「急にどうしたのよ」
 『しまった』と顔に出す彼と耳飾りとを見比べて、彼女は笑う。
「有難う、ニノルダ」
 言葉と共にニノルダの肩を包む青い手編みのマフラー。仄温かいのは、雪ピヨコではなく彼女が、上着の中にずっと抱いていたから。
「これ、お返しね」
 そして彼女は先の彼と同じ言葉を口にした。

「また、会えて良かった」
「俺も君と会えて嬉しいよ」
 リディア(c02016)はそれをすらりと言えた事が嬉しくて顔を綻ばせ、ラウニー(c09464)は変わらない彼女の優しさと自然な笑顔が嬉しくて、素直な気持ちを告げた。
 会えずにいた間、交わした手紙は宝物。想い託した贈り物を彼は見つけてくれるだろうか、そわそわ見守る彼女。枝を咥えた雪ピヨコから彼は無事、羽ペンを受け取った様だ。リディアの前には白薔薇を冠した雪ピヨコ。彼女に似合う白薔薇は石を彫って、中の腕輪にもあしらわれている。
「大理石だよ。これもマーブルリングかな?」
「ありがとう、……大切にする」
 光に透かせば青が見えると彼は言うが、今は巧く見えない。奇跡の象徴と謳われる青い薔薇。その彩を見てみたい気持ちもあるが、この夜が終わらなければ良いとも思う。昼夜が巡り、季節が巡り、環を描く様に終わり無き関係を願う彼の贈り物は――やはり少々ずるいのかもしれない。

 先に来ている筈のティマ(c05381)を探してセレスト(c03512)は、見覚えのある雪ピヨコと出会った。彼女のぬいぐるみと造形が似てると思っていたら、やっぱり。ティマを見つけて確信の笑み。取り出した中身は――、
「蒼い、石だね。綺麗だ」
「はい。セレスさんの瞳の色です。お空の色、綺麗で大好きなのですよ……どこまでもセレスさんが飛べますようにって。私はピヨコさんだから、ここでお空を見てます。ぴよぴよって」
 『セレス』と初めて愛称で呼ばれ、セレストの頬が熱くなる。
「ティマも一緒に行こう、あの空へ」
 雪ピヨコを撫でていた手を取られ、真剣に見つめられて今度はティマが赤くなった。
「僕は、キミを護りたい……キミの、ガーディアンになりたい」
 今よりももっと強くなるから。少年の真剣な眼差しを少女は受け止め、言葉を飲んだ。
「しっかり考えますです……お返事、少し待ってくださいですよ」
 繋ぎ合った手、どちらからともなく握り返す感覚に応える様に強く。

「そんなに走ると転ぶわよー!」
 ユラ(c06069)が張る声の先、「大丈夫!」と手を振り返すエアリー(c14436)の姿が雪片を舞い上げて消えた。ほんとに子犬みたい、と微苦笑してユラは助け起こしに向かう。そして1つの雪ピヨコを2人で覗き込んだ。
「何が出てくると思う?」
「うーん、何だろ?」
 エアリーには見当も付かないが、何も入ってなくたって良い。手袋越しの手の温もり、笑顔、共に過ごす時間――大切なものは二人の中にちゃんとある。
 雪ピヨコ群をのんびり眺め、ほぅと息を吹きかけた手を擦るヴィクトリア(c17185)。コートにマフラー、どうせ濡れてしまうのだからと手袋は外して来た。その指先で雪ピヨコを崩すと丁寧に折り畳まれた巾着袋が出て来た。湿ってしんなりしたそれを広げてみると鳥の刺繍が愛らしい。ここに来た誰かが入れた物だろうか。思わず「ふふ」と笑みが漏れた。
 思いがけないサプライズは、きっとこれから出会う人達にも淡い絆を届けてくれる。

「雪兎?」
 一緒に作りたいと言うカルロ(c04710)にメニメ(c04707)はにっこり頷いた。
「楽しい時間をくれたお礼をしましょうね」
 こく、とカルロも頷く。瞳の輝きは雪ピヨコと戯れていた時と変わらず。
「マーブル婦人、と、雪ピヨに…ありがとう、を、込めて……」

 始まりは一つの雪ピヨコ。
 冷たい雪に、触れる人達の温もりが篭った宝探し。
 リヴァイアサンに見守られ、今年は雪兎も雪ピヨさんに寄り添って――。



マスター:宇世真 紹介ページ
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いまいち
参加者:82人
作成日:2010/12/26
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