ステータス画面

Robbers on the Bridge

<オープニング>

「困ったなあ」
「ああ、参ったぜ」
 ある街の取引所で、商人達は頭を抱えていた。
「おう、どうした。祭りの前だってぇのに不景気なツラしやがって」
 そこに通りかかったのは、恰幅のいい40がらみの男。
「ホルトンか。いや、隣街に行く途中に橋があるだろ」
 商人の1人が説明する。
 橋の上を通る馬車がクワガタ人に襲撃されるという事件が近頃多発しているのだという。
 だが治安を守るはずの都市警備隊は解散してしまったため、彼らには対処のしようがない。
「なんでえ、そんなコトか。よっしゃ! ここは冒険商人ホルトン様に任せろよ」
「冒険商人ってお前……10年も前のことだろ」
「あぁ? 俺はまだまだ現役だぜ! 待ってろ、クワガタどもをひねり潰してやっからよ」
 がっはっはっは。
 そう言って、ホルトンは旅支度を始めたのだった。

「リヴァイアサン大祭の前にちょいと一仕事頼みたいんだが、いいか?」
 トンファーの群竜士・リー(cn0006)が切り出したのは、橋で起きている事件とある元冒険商人の話だった。
「クワガタ人達の狙いは橋の上を通る馬車の荷だ。橋桁の真ん中あたりの板が腐ってへこんでてな、ここで立ち往生する馬車が多い」
 ある時、たまたまその場面に出くわしたクワガタ人達は馬車を襲撃し、多くの貨物を手に入れた。
 そういうことが何度かあったため、すっかり味をしめてしまったらしい。
「奴らに一度痛い目を見せてやらないとな。だがなあ、引退して10年のロートルじゃ荷がかちすぎる」
 しかし正面から助太刀を買って出ても、ホルトンの性格では素直に受けるとは限らない。
「でだ、橋の手前のどこか街道沿いでホルトンの馬車をヒッチハイクしてくれ」
 リーはさらりとそんなことを言い出した。
「今から別の馬車を調達するのも大がかりになり過ぎるし、手間が省けるだろ? 何、根は気のいいオヤジだから嫌とは言わないだろうさ」
 現場は土台のしっかりした木造の橋で、幅は馬車が余裕で二台すれ違える程度ある。
 クワガタ人達は弓4体、槍3体を一組として、橋の両側から挟み撃ちにしてくる。
「槍使いは多少できるが、弓はヘタクソらしい。当たってもたいしたことはないだろう。だがこっちには足手まといがいるから、ちっと気を使ってやってくれ」
 ホルトンは現役時代弓使いだったらしいが、今では目はかすみ筋力は衰え腰痛持ちでおまけに独身だ。戦力にはカウントできない。
 祭りが近くなれば商人達の他にも人の行き来が多くなる。今のうちに何とかしておきたい問題である。
「今回マスカレイドは関係ないが、たまにはこういう人助けも悪くないだろ? よろしく頼むぜ」
 そう言って、リーはエンドブレイカー達を送り出すのだった。


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参加者
星霊医の卵・ミライ(c01244)
天然お気楽極楽アーパー娘・ナギ(c02610)
ついぞ想わぬ・アズハル(c06150)
砂漠から来た男・サハラド(c07609)
徹甲砕牙・パトリック(c12044)
夢幻泡影・ラピス(c14865)
東風の群竜士・ワドウ(c15220)
トリックスター・ルミナティル(c17706)

<リプレイ>

●旅の道行き
 街道で待てども、馬車は一台も通らなかった。
 本来は大きな街と街を結ぶ幹線道であるはずだが、近頃はこの道を避けて遠回りをして行く馬車が多いという。原因はもちろん、件の橋だ。
 祭りの前だというのに人気のない街道に、砂漠から来た男・サハラド(c07609)はかつて越えてきた荒野を思い起こす。
「……来たな。あれのようだ」
 遙かな先の黒い点が徐々に大きくなり、恰幅のいい御者を乗せた一台の馬車が見えてくる。
「ナギさん、ラピスさん、お願いしますね」
 トリックスター・ルミナティル(c17706)に送り出され、天然お気楽極楽アーパー娘・ナギ(c02610)がぴょんと街道の真ん中に躍り出た。
 布地の少ない衣装が、彼女のすらりとした健康的な肢体と豊かな胸をアピールする。
「お〜、良い所に〜。お願いします。町まで一緒に乗せて下さいなのだ〜」
 ナギの前で馬車が止まり、ホルトンが下りてきた。
「嬢ちゃん、そんな格好で寒くないのか? 追い剥ぎでも出たのかと思ったぜ」
 がっはっはっは。豪快に笑うホルトンに、ナギがこくこく頷く。
「うう、最近は物騒らしいから是非お願いしますなのだ。もちろん後でお礼はさせて頂くんだよぅ」
「どうせ荷台はほとんど空なんだ。礼なんかいいから乗りな! あんた達も連れかい?」
「うむ、途中で道連れになった者同士だ」
 ついぞ想わぬ・アズハル(c06150)が振ると、東風の群竜士・ワドウ(c15220)も頷く。
「すまぬが、よろしくの……」
 夢幻泡影・ラピス(c14865)が情味のある濡れた瞳で流し目を送った。たおやかな物腰は大人の女性の魅力に溢れている。
「おう、こりゃまた別嬪がお揃いだな。何、旅は道連れってな。遠慮すんな」
 エンドブレイカー達が乗り込むと、馬車は軽快に走り出した。
「この先の橋でちょいと厄介ごとがあるんだが、すぐ済むからな。あんた達は見物しててくれ」
 ホルトンは何気ないように言うと、また豪快に笑った。

「冒険商人、なんだかカッコイイのだ」
 ナギは幌をめくり、御者台に身を乗り出していた。
 話し相手ができて上機嫌のホルトンはよくしゃべる。
 徹甲砕牙・パトリック(c12044)はどこにでもいる街の若者らしく、ホルトンのジョークに屈託なく笑う。
 星霊医の卵・ミライ(c01244)が尋ねるままに、冒険譚が続く。ホルトンは一度だけ他の都市国家に行ったことがあると自慢らしく話した。
「その話だと、腕利きだったんじゃないか」
 傍らのワドウも調子を合わせる。
「まあな。兄ちゃん達もいい体してんな。何かやってるのかい?」
 パトリックは陽気にはぐらかすと、ホルトンに話の続きを促した。
 荷台の後方では、話を漏れ聞いたラピスが細い肩をすくめていた。
「14体のバルバに単身で挑む? やれやれ、男はいくつになっても、子供と変わらぬわ」
 そこが可愛くもあるのじゃが。そう言って唇の端に微かな笑みを浮かべる。
「昔取った杵柄……ということなんでしょうけど、無理は禁物ね」
 御者台から戻ったミライが、困ったいたずらっ子に対するように微笑む。
 アズハルが切実に頷く。
「……自分の力をある程度理解したうえで、物を買って出てほしい……うむ……」

「こうしてると、昔を思い出すぜ」
 ホルトンは一通り話を終えると、仲間と冒険に明け暮れた日々を思い出したのか、少し遠い目をするのだった。

●橋の強盗団
 やがて馬車は、広い川にかかった橋にさしかかる。
 馬車はそのまま進み、橋の中央でがくんと沈み込んで停車した。
 その時だった。
 橋の下に隠れていたクワガタ人が飛び出し、両岸から馬車を挟みこんだ。
「酒ト食イ物ヲ出セ!」
「布ト光ル物モ置イテケ!」
 槍と弓を構え、全身をごてごて飾り付けたクワガタ人達が口々に叫ぶ。
 彼らが身につけているのは、どれも馬車から強奪したと思われる贅沢な品ばかり。
 ハサミを閉じることができないほどじゃらじゃらつけた宝石入りのブレスレットやネックレス。金刺繍の施された美しい織物を体に巻き付け、毛皮の襟巻きまでしている。
 いい物を食べているせいか、体色のツヤもいい。
「現れたな。俺達に任せて、あんたは中に引っ込んでいろ」
 今まで物静かに控えていたサハラドが立ち上がり、ホルトンを制した。
「冗談じゃねえ。特等席を見逃せってのか?」
 ホルトンは不敵に笑う。
「そうか。では、お手並み拝見といこう」
 サハラドが仲間に目配せすると、ミライとナギも助太刀を申し出る。
「1対14なんて見過ごせないもの」
「数が多いし、乗せてもらってるお礼なのだ」
 ホルトンは断るどころか嬉しそうに、エンドブレイカー達の申し出を受けた。

 不用意に馬車に近づいたクワガタ人が幌から伸びてきた腕に掴まれ、欄干まで投げ飛ばされた。
「獲物が噛み付いてくるとは思わなかったか?」
 幌をめくり、腕の先からぬっと姿を現したワドウにクワガタ人達が後ずさる。
 次々と馬車から降り立つエンドブレイカー達を遠巻きに囲み、彼らは明らかに動揺していた。
 だが馬車の荷に対する欲望には勝てないのか、逃げようとはしない。
「きゃ……! 今、何か動かなかったか?」
 ラピスは馬車を降りる際ホルトンの腕をとり、さりげなく安全な位置に誘導する。
「援護を頼む」
 パトリックはナイトランスを構え、それとなくホルトンを庇う位置に立つ。
「おう、まかせとけ!」
 気づいているのかいないのか、応じてホルトンは弓を構えた。

 ナギが豊かな胸を張り、閉じた扇をびしっと前方に突き付けポーズをとった。
「皆、いっくよー」
 気合の一声で戦闘が始まった。
 ミライの手から星霊ヒュプノスが飛び出し、ふわふわしたガスがクワガタ人達を包み込む。
 民族衣装をなびかせて飛び出したアズハルが棍で足下をさらうと、クワガタ人は宙を一回転してひっくり返る。
「人を困らせる悪い奴は、愛情という名の棍で薙ぎ払ってやるよ! うむ」
 サハラドが隙のない身のこなしで切り込んだ。寡黙な戦士の半月刀が閃き、クワガタ人の堅い甲皮を叩き割る。
 ナギが勢いよく地面を蹴り、飛んだ。翻る袖布がクワガタ人の視界を眩ませ、振り上げられた眩しい脚がダブルキックをお見舞いする。
 クワガタ人の槍がサハラドの頬をかすめ、血が流れる。たが鋭い眼光は槍使いを睥睨し、微動だにしない。
 鋭い穂先が2本同時にアズハルに迫った。一つは髪先を数本かすめ、一つは棍で受け止める。

 反対側では、パトリックのジェットランページがクワガタ人を突き崩していた。
 生じた隙からルミナティルが踏み込む。右手にアイスレイピア、左手の仕込み杖を後ろ手に抜刀。氷の刃でクワガタ人の手足を凍り付かせる。
 氷の次は炎。ラピスの召還した星霊バルカンの尻尾から炎の礫が打ち出される。
 ワドウは木製の六尺棒の両端を縦横無尽に駆使し、敵をなぎ倒していく。
 クワガタ人達は縦列に並び、一斉に突きを浴びせてきた。鋭い槍の穂先が、前衛を突き崩そうと降り注ぐ。
「回復いたすぞ!」
 ラピスの星霊スピカが飛び出し、ダメージの大きかったルミナティルをぎゅっと抱きしめ、癒す。

●偽りの射手
 ひゅんひゅん
 クワガタ人の矢が飛んできた。
 だが矢に勢いはなく、ほとんどが緩やかな弧を描いて落ちいく。
「ホルトンさん、弓使いをお願い!」
 ミライが声をかける。
「おう、弓の使い方ってもんを教えてやろうじゃねぇか!」
 ホルトンは現役時代愛用した自慢の強弓に矢を番え――固まった。
 顔を真っ赤にしてぷるぷる震えながら、何とか弦を引き絞り、放つ。
 びょんっ
 矢は1メートルほど飛んだ。というより、落ちた。
 何か見てはいけないものを見てしまったような。エンドブレイカー達の間に気まずい空気が流れる。
「……予想以上だな」
「ああ、こいつは酷い」
 パトリックが呆れて呟くと、ワドウは率直な評価を下した。ルミナティルは言葉も出ない。
 戦力にならないと聞いていたが、これほどとは想定外だった。
「……良い弓じゃ。なかなかの業物じゃの」
 ラピスはしげしげとホルトンの弓を眺めた。さすがの彼女も、射手は褒めるところが見つからない。
 ホルトンは汗だくになりながら矢を打ち続けるが、せいぜいクワガタ人の弓使いといい勝負だ。
 パトリックが死角から気咬弾を撃ち、フォローしてやる。
「やるじゃないか」
「は、はは! まぐれだまぐれ!」
 振り返っていい笑顔を返すホルトンの後頭部に飛んできた矢を、ワドウがたたき落とす。
 隙だらけのホルトンを見かね、ミライが馬車の陰に押し込んだ。
 きんっ
 ついでに、ひょろひょろ飛んできた矢を魔鍵で振り払う。

 エンドブレイカー達は気を取り直し、クワガタ人と向き合う。
 ミライが胸の前に魔鍵を捧げ持ち、アズハルの傷を癒す。
 サハラドは大胆な足捌きで間合いを詰め、クワガタ人の腕を砕く。小手先の技術に頼らぬ自信に満ちた動作は、豊かな経験に裏打ちされた巧者のもの。
「後ろの戦友達には指一本触れさせない。ここから先は通さない。うむ」
 アズハルの棍に次々足を取られ、ひっくり返ったクワガタ人は足をばたばたさせている。
 二人に手足を挫かれたクワガタ人の動きはぎくしゃくし、繰り出す突きに最初の勢いはない。
 舞扇が閃き、風に包まれたナギが軽やかに飛翔した。飛天のごとき彼女の動きについて行けず、クワガタ人は一方的にキックの連打を浴びて倒れた。
 ホルトンの矢は最初より少しは飛ぶようになったが、ほとんどの矢はクワガタ人の足下に落ちる。
 クワガタ人の方も似たようなものだが、まぐれでよく飛んだ矢はアズハルが棍で捌く。

 ワドウの六尺棒が一度に2体のクワガタ人をなぎ倒した。
 ルミナティルのアイスレイピアが地面を引っかけ切り上げると、掻き傷に沿って地面が氷結し、虹色のオーラが立ち上る。
 オーロラを背に、やや上向きにナイトランスを構えたパトリックが突進した。
 さながらランスと一体となった一条の矢のように――冷気と闘志のオーラを帯びた穂先に突き上げられ、クワガタ人がほぼ一撃で撃破される。

●降伏勧告
 槍使いは残り一体。頼りない弓使い達は、既に腰が引けている。
 パトリックは相手の士気が鈍り始めたのを感じ、ちらとワドウに視線を投げた。
 同様の感触を持ったワドウは頷き、一喝する。
「待て!」
 クワガタ人はびくりと動作を止める。
「降伏する? 二度としないと誓うなら赦してあげるのだ」
 ナギが魅力的な笑顔で片目をつぶると、クワガタ人達は半信半疑といった様子で顔を見合わせた。
「このまま立ち去るなら追いかけないわ」
 ミライも言葉を継ぐ。
「これ以上暴れるつもりなら……もっと痛い目に遭うよ、うむ」
 アズハルの脅しがだめ押しになり、クワガタ人達は慌てて武器を放り出し、降伏した。
「これに懲りてもう姑息な真似はしないことだ。二度とこの界隈に現れるな」
 ワドウが一歩踏み出そうとするとクワガタ人達は震え上がり、もうしないと誓う。
 そのままコソコソ立ち去ろうとしたとき、
「待ってください」
 丁寧な口調でルミナティルが呼び止めた。
「その宝石や装飾品は置いていってください。元々、あなた方の物ではありませんから」
 クワガタ人達は身につけていた品物をそそくさと外すと、大急ぎで逃げていった。
「勝利のVなのだー♪」
 ナギがいい笑顔でVサインを見舞い、元気な声が川面に響き渡った。

●旅の終わりに
「こいつは元の持ち主を探して返しておくぜ」
 クワガタ人達の置いていった品物を袋に詰め、ホルトンが言った。
「奪われた物はこれだけではないでしょうけど……」
 かつて冒険商人の護衛を務めていたルミナティルは残念そうに言う。
「なぁに、諦めてたもんが返ってくるだけで儲けものさ」
 得をする時もあれば、損をする時もある。そんな割り切りが商人のたくましさかもしれない。
 橋を過ぎ、馬車は街道を行く。
 御者台ではミライが手綱を握っている。
 ホルトンは腰を痛めたため、ミライからもらった薬草の湿布を当てて荷台で横になっていた。
 ワドウは先ほどの立ち回りを見かね、ホルトンの無謀を諫めていた。
「ああ、ちょいとなまってたな。あと少しで勘を取り戻せたんだがなあ」
 懲りていない様子のホルトンに、サハラドはため息をつく。
(「あまり調子に乗せるのも考え物だな」)
 パトリックが腕を組み、いたずらっぽく訊ねる。
「俺たちの戦い方はどうだった?」
 ……全く、人が悪いぜ。ホルトンはそんな苦笑を浮かべ、
「そうさなあ……うん。俺の昔の仲間と比べても、悪くなかったぜ」
 そう言って、満足げに目を閉じたのだった。

「……虫は嫌いじゃ。あぁ、気持ち悪かった」
 思い出して柳眉を寄せるラピスに、ホルトンは豪快に笑う。
「苦手なもん見せちまって悪いことしたな。よし、街に着いたらいい店がある。祝杯といこうぜ!」
 もちろん俺のおごりだ。ホルトンはそう付け加える。
「それは重畳。今宵は何の酒を呑もうかの……」
「何でもある店だ。酒も料理も、きっとあんた達の気に入るもんがあるさ」
 短い旅は、まもなく終わろうとしていた。
 リヴァイアサン大祭を控えた賑やかな街が、エンドブレイカー達を待っている。



マスター:タカミネ 紹介ページ
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いまいち
参加者:8人
作成日:2010/12/26
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