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【スフィクス家の闇】翳追い

これまでの話

<オープニング>

 崩れかけた壁や瓦礫の陰に、エンドブレイカーたちは潜んでいた。
 目的はもちろん例の村、探索班が遺跡の中で見つけた小さな集落の様子を監視することである。
「にしても、平和だね」
 カインの絵空事・ティノル(c01408)は、こめかみを押さえてふうと息をついた。
 昼間の光の下、村は適度に活気がある。
「家の周囲を掃除……物を届ける……買い物、と。ティノルさん、お疲れさま」
 ティノルが観察した住人たちの行動を書きとめつつ、奇策縦横・ミュセル(c10130)は頬に指を当てた。
 見える限り、彼らの営みは、普通の村と変わらないように思えた。
「虐げられていたりとか、不当な扱いを受けていそうだとか……と言ってもここからでは、ねぇ」
 無精者・ラグランジュ(c02051)もその手の兆候がないかと目を凝らすが、今までの話や現在の村の様子からは見て取れず。
 すれ違ったり、行き合ったりするエルフたちの行動に、挙動不審な点は特に見受けられない。エンドブレイカーたちが隠れている遺跡の建物の脇を、時折住人が通って行くがその表情も穏やかで素朴なものだ。
 ラグランジュは、子どもたちとその親から聞いた呪いの話を思い出して溜息をついた。
(「ここの人たちも、遺跡自体も面白そうなんですけどねぃ……」)
 建物の角を石で軽く突いて蝙蝠・ジェイ(c00120)はにまりと笑う。と、はたと気がついて伸び上がった。
「そういえば、ここでは畑仕事があんまり出来なさそうですねぃ……遺跡周辺は森ですし、中は石だらけ煉瓦だらけで耕せそうもない」
 その言葉に、周囲を見渡すエンドブレイカーたち。
「……ああ」
 あなたと円舞曲を・フェザー(c17304)は、市場でのやり取りを思い返して一人頷く。
「行商人が扱う品物の中には、食料品も入っているのだろうな」
 日よけのかかった店は、行商人が様々な品物――生活必需品や食料品など――を広げられるよう確保されている場所なのだろう。
 やがて、昼餉の用意が始まったのか、白煙がのんびりと立ち昇り始めた。


 いずれにしても、このままでは埒が明かず、時だけが流れて行くのである。
「外に出ているエルフさんたちは特に怖がっているようには見えないけれど、家の中では何が起こっているか、判らないですよね」
 杖の星霊術士・ナーティス(c13411)が覗き込むのは、皎漣・コヒーレント(c12616)が作った地図だ。
「聞き込み情報によれば、遺跡の住人はスフィクス家が連れて来たことになっておるが、ここの衆もそうなのかのぅ」
 相変わらず髯を撫でつつ、唸るように闘玄卿・エルムリヒ(c01495)も言う。
 しばしの沈黙。
「やはり、村に潜入する必要はあるだろうな」
 コヒーレントの、低い声が流れた。
 昼か夜か、堂々と正面から接触するか闇に紛れて忍び込むか……手段はいろいろ考えられるだろうし、ことを為すために考えるべき点もあるだろう。
「……調べたいこと、知りたいことはまだ多いわ」
 静かなる花筐・サクラ(c06102)は、弄んでいた扇を閉じて顔を上げた。
「まだ具体的な証拠もないし帰って騎士団に報告する、って訳にもいかないよな」
 天昇瞬地・サイクス(c14074)も身を乗り出した。首から下げたドッグタグが軽く音を立てる。
 エンドブレイカーたちは互いに顔を見合わせると、ゆっくりと頷いた。


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参加者
蝙蝠・ジェイ(c00120)
カインの絵空事・ティノル(c01408)
闘玄卿・エルムリヒ(c01495)
無精者・ラグランジュ(c02051)
静かなる花筐・サクラ(c06102)
奇策縦横・ミュセル(c10130)
皎漣・コヒーレント(c12616)
杖の星霊術士・ナーティス(c13411)
天昇瞬地・サイクス(c14074)
あなたと円舞曲を・フェザー(c17304)

<リプレイ>

●潜入の手
「では、打ち合わせ通りに」
 闘玄卿・エルムリヒ(c01495)が最終的な流れを確認し、仲間たちは大きく頷いた。
 謎は未だ多い。
 けれど、エンドブレイカーたちの士気もまた高い。
 命分け合う絆持つエルフ。
 理不尽に思えようとも、受け継がれ守られて来た戒律。
(「……羨んでいるの?」)
 ぴしりと扇を閉じて、静かなる花筐・サクラ(c06102)は虚空を睨む。

 昼下がり、無精者・ラグランジュ(c02051)はゆっくりと遺跡の門をくぐった。
 杖の星霊術士・ナーティス(c13411)を背負い、具合が悪くなった弟子を気遣って声をかけつつ運ぶ師匠という役回りである。
 ナーティスの方は、くたりとラグランジュに身を預けながら、周囲に視線を巡らせて状況を窺っている。
 村の中ほどまで入ったところで、その『人間』に気づいたエルフの女性が近寄って来た。
「あら、行商の人ですね……どうしたのですか?」
「いやあ、その」
 ラグランジュは大仰に困った顔をして、背中の少年に目をやった。
「私たちは行商人ではなくて、旅の者です。ちょっと連れが体調を崩しまして。すみませんが一晩休ませてもらえないでしょうか」
「行商人じゃない?」
 途端に向けられる、訝しげな視線。
 女性は一度家に引っ込み、しばらくして2人のエルフを連れて戻って来た。
「ここは街道から大きく外れた森の中だが、行商人でもない人間の旅人が一体どうしてこんな所に来たんだ?」
 見上げるような体躯のエルフが、重々しい声で問う。ラグランジュは身を縮めるように頭を下げ、丁寧な口調で答えた。
「素晴らしい森だと歩き回るうちに、この子が具合を悪くしてしまって。近くに煙が見えたんで、こりゃ誰ぞお住まいだ、そのお情けにすがろう、と考えまして……」
 ううむ、とエルフが唸る。
「先生……ごめんなさい……」
 ナーティスが苦しげに言うのを聞いてか、3人は旅人に背を向けて何か話し始めた。
「……何にせよ、病人を放置するわけには行くまい。こちらの部屋を使いなさい」
 やがて、大柄なエルフがドアを開け、2人を奥の小さな部屋に案内した。
(「入り込めたね」)
 その一部始終を見守っていたカインの絵空事・ティノル(c01408)は、部屋の場所を確認して窓脇に積まれた木箱の陰に潜んだ。壁に似た色のマントとステルスのおかげか、彼に気づく者はない。
 ティノルは耳を澄ませ、さらに内部の様子を窺う。
「本当にありがとうございます」
 そそくさとナーティスを寝かせ、ラグランジュが礼を言う。
 新しい毛布を受け取り、彼はさらにエルフたちへ話しかけた。
「いやあね、以前村で聞いたんですが、皆さん呪いの効かぬ家系なんですって?」
「……!」
 エルフの女性が動きを止めた。
「私たちは人間だけど呪いにかかったですかねぇ? 隔離施設へ行くべきなんでしょうか? 何処に――」
「おい人間!!」
 大柄なエルフの怒声で、部屋がびりびりと震えた。
「何のつもりだ?! お前の連れの具合が悪くなったのは、我らのせいだとでも言いたいのか!」
「おおかた食あたりかなんかじゃないのか。それを呪いだとか……根も葉もない噂でこんな侮辱を受けるなんて!」
 一緒にいた若いエルフも顔を真っ赤にして怒り出し、ラグランジュに詰め寄る。
「おやめなさいな。病人がいるんですよ」
 エルフの女性が涙声で制し、旅人を振り返った。
「何かお腹に優しいものを持って来ましょうね……でも連れの方が回復したら、とっとと出て行ってください」
「ふん、親切を侮辱で返されるとはな」
 エルフたちは憤慨して部屋を出て行った。
「……」
 ティノルはため息をついて身を起こし、遺跡の門を見やった。
 ピアスをなでる指に、力がこもる。

●すれ違う思惑
 村人班が潜入して後、そろそろ夕方になろうかという頃、残り2班のどちらからということもなくエンドブレイカーたちは門の前に立った。
「少し小腹が空きましたね……」
 奇策縦横・ミュセル(c10130)はそう言ってジャグリングしていたリンゴを口にしていたが、今はそれもしまってこれからの大芝居に向け集中している。
 遺跡の調査を名目にした班と、薬草売りの行商人として行商の許可を得ることを口実にした2つの班で、領主が住まう城の場所を聞き出そうという作戦であった。
「あのう、すみませんですがねぃ」
 道端のエルフに、蝙蝠・ジェイ(c00120)が声をかける。
「はい……?」
 行商人か、と尋ねかけて、その人数の多さに声をかけられたエルフは怪訝な顔をした。
「旅の行商人として、こちらの領内での商売の許可をいただきたいと思って、領主様に面会したいのです」
 確かに、あなたと円舞曲を・フェザー(c17304)は「薬草の行商を」と申し出たが。
「こちらの先生方が遺跡を調査したいということで、領主様に許可をいただきたく。お城の場所をお聞きしたいのですが」
 さらに、助手役に扮した皎漣・コヒーレント(c12616)がジェイとサクラ、ミュセルを紹介しながら言うと、
「ちょ、ちょっと待ってください」
 エルフは彼らを遮り、分かる人を呼んで来ます、と言って村の奥へ走って行った。天昇瞬地・サイクス(c14074)が目で追ったところ、彼は広場で他のエルフに声をかけているらしい。次々と集まって来る様子が遠目に見える。
 待つうちに5、6人のエルフがこちらへ走って来た。
「人間が大挙して、こんな所に何の用だ」
 髭を蓄えた壮年と思しきエルフが、探るような目つきでエンドブレイカーたちに対峙する。他のエルフたちも、胡散臭そうに目を細めて闖入者を見た。
「ですから遺跡を調べるに当たって、領主様にご挨拶したいのです。なのでお城の場所を教えてもらいたくて」
 ミュセルが遺跡側を説明すれば、エルムリヒが行商人側の口上を述べる。
「儂らは薬草の行商に来たのだが、この村で売るのにご領主の許可が必要と思いましてな。ついては城に伺いたく、領主城の場所をお教え願えないですかの」
 だが、それを聞いた髭のエルフは、彼らをじろじろと睨めつける。
「領主様の城を?」
 その背後では、腑に落ちないといった表情のエルフたちが小声で相談し始めた。
(「領主様の城なんて誰でも知っているし、街道沿いにある村で聞けばすぐに判るだろうに。そんなに判りにくい所にあるわけでなし」)
(「何かおかしくないか……人間がこんなに大勢で」)
(「わざわざこんな森の中に領主様の城の場所を聞きに来るなんて、あり得るか?」)
 と、エルフの一人が髭のエルフにそっと耳打ちをした。
 頷いた髭のエルフは、門の向こうを示す。
「それ、その道を辿って行くと大きな村がある。村には酒場もあるし、人間すらいるかもしれん。そこで城への案内を請うのがよろしかろう」
 意外な言葉に、エンドブレイカーたちは面食らった。
「いや、それが私たちはそちらの方から来た者でしてね。こちらに遺跡があると聞いて」
 胡散臭さを出さぬよう、務めてにこやかにジェイが言う。フェザーも笑顔を崩さず、市場で行商の話を聞いたのだと言った。
「もし行商に許可が必要なくても、今後のこともありますし、ぜひ領主様にお会いしたい」
 だが、エルフたちはますます胡散臭げな視線を向け、ひそひそと言葉を交わすばかり。
(「既にどこぞの村に立ち寄っているではないか」)
(「なぜその村で領主城の場所を聞かないのだ?」)
(「怪しい……」)
「案内なら大丈夫ですよ。場所さえお教えくだされば、途中で彼らと行き合ったことですし、協力して向かえるかと」
 コヒーレントも笑顔で『行商人』を指差す。
 エンドブレイカーたちはさらに説明を試みた。
(「なぜ領主城の場所も知らぬよそ者が、調査だ行商だなどと」)
 が、相手の表情は一層硬く、厳しくなって行く。
(「怪しい」)
「とにかく、ここではお相手は出来ない」
 髭のエルフが言い切った。
 サクラとジェイは思わず顔を見合わせる。
 さらにエルフは、フェザーにも不審げな視線を向けた。
「行商の許可を領主様に求めるのであれば、先に城へ向かった方が二度手間にならずに済むと思われるが」
(「どうしようかしら」)
 ミュセルは隠し持った路銀袋に触れつつ考えた。元々領主城で衛兵を懐柔するための金銭である。天文地理一として通ぜずところなく、智謀深くして弁舌涼やか……を自認する身として、使いどころを見極めたい。
 その傍らで、サクラは懸命に書庫で見た似顔絵を思い出そうとしていた。
 処刑済とされたダークエルフの似顔絵が、他にもあったはず。
 目を見るのは苦手だが、そうも言っていられない。
 ここにいるエルフたちに、おぼろな記憶を重ね――1人のエルフが、そんな目で見れば似ているような気もする。細部までは上手く思い出せないが……。
 と、エルフたちはまた二言三言交わし、それから彼らを振り返った。
「村長に伺いを立ててみよう。それまで門の外にいてもらう。リィズ、『ちょっと行って来てくれ』」
 その言葉に大きく頷いたエルフの青年が、一目散に村の奥へと走って行く。

●翳りかすむ
 部屋は質素で、特に目を引く物もない。
 出会ったエルフの年齢構成も前回感じた通りと、村人班の師弟は頷きあう。
(「そろそろかな」)
 ティノルは小さく伸びをした。
 と、すぐ近くに人の集まる気配がした。彼は慌てて木箱の陰に身を潜める。
 その気配は、部屋の師弟にも伝わっていた。
「何でしょう」
 ナーティスは差し入れられたパン粥の器を置き、ラグランジュの反対側から窓の外を窺う。
 村人が、集合し始めていた。
 しかも、彼らは皆『武装』していた。
 ほとんどは大きなシャベルや火かき棒といった身近な品だが、中には剣や斧を持つエルフもいる。
(「これは……」)
 聞き耳を立てていると、
「他領主のスパイだって?」
 1人が言った。
「それが分からん。スパイだとしても言ってることがおかしすぎるらしい」
 誰かが答える。それを機に村人たちは口々に話し始めた。
「領主城の場所を聞きにこの村に来たと言っている」
「領主城? そんなすぐ分かる場所を聞きに、この隠れ里に来たってか?」
「あと、行商人になりたいから領主の許可が欲しいとかなんとか」
「はあ? なぜここで?」
 首を振る村人。
「わけが分からんな」
「ああ、わけが分からん」
(「これは、皆さんが来ましたね……」)
「だが、他領主のスパイならば生かしては帰せん」
「相手は8人か。取り囲めばいける、か」
 そこへ、昼間の大柄なエルフが加わった。
「戦えない者は村長の家に避難させた。腕の立つのを裏の森から回らせたから――」
 ガタッ。
 窓枠が鳴った。村人が一斉に振り返る。
「誰だ!」
 すると、大柄なエルフがあっ、と叫んだ。
「そういえば、人間の病人を介抱している」
「まさか、あいつらの仲間か?」
「むう……だが人間ばかりこんな都合良く村に来るなど……そうだ、偶然のはずがない!」
 それを聞いた村人が、武器を振り上げて家の正面に押しかける。
 彼らの姿が消えるや否や、ティノルは窓を思い切り叩いた。
 すぐに窓が開き、師弟が顔を出す。
「早く! 逃げるんだ!」
 2人が窓から飛び出すと同時にドアが蹴破られ、エルフたちが部屋に雪崩れ込んだ。
「逃げたぞ!」
「む、さては仮病……やはりスパイか! 追え!」
 蜂の巣をつついたような騒ぎが起こる中、3人は門を目指して必死で駆ける。

「おい! あれを見ろ!」
 なおも説得を続ける仲間の傍ら、周囲を警戒していたサイクスが突然声を上げた。
 示す先には喧騒を引き連れ、こちらへ走って来る人影があった。
「急いで逃げて! 囲まれる! 裏に回った追っ手がいるから!」
 ティノルが叫んだ。後方から、様々な武器を振りかざした村人たちが迫る。
「やっぱりな!」
 髭のエルフが怒鳴った。
 つかみかかろうとしたエルフの若者を躱し、その腕を打ってフェザーが「逃げよう!」と叫ぶ。
 エンドブレイカーたちは森に向かって走り出した。
「こっちだぞい」
 エルムリヒが、涙目で追いついたナーティスの腕を引く。
「フットプリントを目印にしよう。サイクス、前を行ってくれ」
 コヒーレントの言葉に頷き、サイクスが殿から上がって暗い森の中へ飛び込んだ。
 エンドブレイカーたちはその後を追う。
 遠くへ。
 なるべく早く、追っ手が回らぬうちに。
「スフィクス家の領地にスパイを入れるとは、お前たちはどこの手の者だ?! 都市警備隊か、それともエルフヘイム騎士団か!」
 後方から、低い怒鳴り声が聞こえた。

●脱出
「悪いが皆帰る場所があるんでな!」
 サイクスは急速に暗くなる木々の間を突っ切った。
 視界の利かない森を逃げるうちに、いつのまにか追っ手の気配は消えていた。
 それに気づいたのは、しばらく経ってからだったが。
 真っ暗な森を彷徨う中、前回のフットプリントの僅かな痕跡を見つけたエンドブレイカーたちは、安堵の息をついた。
 コヒーレントが作成した地図と照らし合わせ、最低限の明かりを頼りに彼らは進む。
 それで、宿のある元の村に戻って来た時は、既に夜もかなり更けていた。
 だが、宿の前には物々しい出で立ちの男が立っていた。
「えーと、宿は……」
 旅人を装って近づいたジェイとティノルに、男は武器を構えたまま応じる。
「ああ、今夜はだめだ。この付近に他領のスパイが入り込んでいるという知らせがあった。そのため旅人は全員連行させてもらっている。明日になれば騎士の人たちが来てくれるので、それまでは自警団の詰め所で我慢してもらおう。あー、なに、疑いが晴れればすぐに旅を続けられるからな……ん?」
 だが、彼がしゃべり終えた時、そこに旅人たちの姿はなかった。
「スフィクス領を出なければならんようですねぃ」
 エンドブレイカーたちは再び逃げた。
 夜のうちに、闇が深いうちに出来るだけ遠くへ――スフィクス領外へ。
「村人の中に処刑されるはずだったダークエルフがいる確率は高いと思う」
 逃避行の合間にコヒーレントが言った。サクラが面影を感じた似顔絵の件を語ると、その確率はいよいよ高まるように思われた。
「けれど、仮面は見えなかった……髭のエルフたちにも、追っ手にも」
 フェザーは説得の光景を思い返す。ナーティスも接触したエルフには見られなかったと言った。
「もしや、村人は儂らを戒律主義者だと誤解したのだろうか」
 肩で息をしつつ、エルムリヒが言う。
「戒律主義者が彼らやスフィクス家を調べ、殺しに来たと、か……それなら、こちらを殺そうとしたのも分かる気がするな」
 サイクスはそう後を継ぎ、胸元にドッグタグを探した。だが今回は外していたことに気づき、一人苦笑する。
 その誤解を解く方法は――思いつかない。
「もう少し彼らの立場や想いに寄り添って動くべきだったか……」
 誰からともなく漏れる呟き。
 苦い後悔を抱きつつ、今は夜闇に紛れる。
 外へ。
 謎が、翳りの向こうに遠ざかる――。



マスター:葦原いつき 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2011/01/01
  • 得票数:
  • 笑える74 
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  • 知的7 
  • せつない66 
冒険結果:失敗…
  • 生死不明:
  • なし
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