ステータス画面

ヤツが動いた

<オープニング>

「えーっとこの辺に……あっ、居た居た」
 1人の少女が生い茂った木々の樹上を見上げ、目的のものを見つける。それはひょろ長い体格で鎮座しており、全く動く気配を見せない。
「なんていうか、いつ見ても可愛げがないわよね――あのアラブル」
 少女の見上げている動物は、この周辺の人々には動かずのアラブルと呼ばれているアラブルであり、のんびり屋のアラブルが生息する近隣地区の中において、誰一人として動いている姿を殆ど見たことがないといわれるアラブルであった。
「餌とかも食べてるはずなんだけど……私も一度も見たことないのよね、動いてる所」
 あまりにも動かなくいつも同じ場所に居るため、今では周辺住民のマスコット兼何かあった時の待ち合わせ場所の目印として扱われているほどであった。
「あーあ、早く来ないかな……って、あれ? 今アラブルが動いたような」
 見間違いかもしれない、と目を擦り見上げなおした其処にはアラブルは居らず――視線を正面に戻したそこに、バク転した勢いで爪を振り下ろそうとしている姿があった。
「ア、アラブルが動い」
 驚きの声を最後まであげることも出来ず、少女は自らの血溜まりの中に沈むこととなるのだった。

「マスカレイドの事件……それもこれから起こる事件だ」
 トンファーの群竜士・リー(cn0006)の呼びかけに、何人ものエンドブレイカー達が集まってくる。リーは一同の顔を見渡し、一度リーゼントを撫でると説明を始める。
「明後日、とある村に住んでいる少女が、デートの待ち合わせ場所に居たアラブルのマスカレイドに殺されてしまうらしい。今から向かえば明日の夜中には村に到着し、マスカレイドと対峙することが出来るだろう。幸いマスカレイドは逃げも隠れもしないようだから、夜中の間に退治してしまってくれ」
 夜中であることと、近隣には畑が広がっており家は殆どないため多少戦闘が激しくなっても大丈夫だろう、とはリーの談である。
「問題のマスカレイドの能力だが、かなり身軽で機敏さを武器にしているらしく、バク転の勢いを活かして鋭い爪を武器に襲い掛かってくるらしい。油断して先手を取られるのには気をつけたほうがいいかもしれないな」
 見た目は完全に普通のアラブルと変わらないので、余計にその姿に惑わされないようにな、とリーは念を押す。
「見た目に反して、中々の強敵かもしれないが……お前達なら必ず勝てるはずだ。頑張ってきてくれよ」
 鼓舞するように笑いかけたリーは、自慢のリーゼントを撫で付けながらエンドブレイカー達を送り出すのだった。


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参加者
ハンマーの魔獣戦士・サン(c01541)
アイスレイピアの星霊術士・サクラ(c01646)
大剣のスカイランナー・キアラ(c02531)
トンファーの群竜士・サンフォクス(c03891)
ソードハープのデモニスタ・クロケッタ(c06930)
弓の狩猟者・チェル(c07365)
ハンマーのスカイランナー・ラシェル(c07706)
トンファーの群竜士・ロジン(c07771)

<リプレイ>

●夜道を行く
「初めての依頼って、緊張するわね」
 思わず苦笑を浮かべ、持参したハーブの詰まった袋の香りを嗅ぐ弓の狩猟者・チェル(c07365)。
 砂利混じりの夜道をもう暫く歩けば、今回の相手であるヤツ――アラブルが居る。緊張か、はたまた興奮のためか、エンドブレイカー達の中には動きのぎこちない者や、そわそわと落ち着きのない者が何人も居た。
「かわいらしいマスコット。でも、マスカレイドになっては、かわいらしさ余って、怖さ百倍。……たぶん」
 ポツリポツリと言葉を紡ぐのはハンマーの魔獣戦士・サン(c01541)である。本来寡黙な彼女なりに、依頼に対する意気込みというものがあるのだろう。戦いが始まるまでに、仲間たちと出来るだけ打ち解けることが出来るよう頑張っていた。
「元々はマスコットだったようですが……」
「自分とこのマスコットに襲われちゃ、たまったもんじゃないじゃろうなぁ〜」
 やれやれ、と肩を竦めアイスレイピアの星霊術士・サクラ(c01646)の言葉の先を継ぐハンマーのスカイランナー・ラシェル(c07706)。事件に巻き込まれる予定であった少女も、動かないことで親しまれたマスコットが俊敏な動きで牙を剥くとは思いもしなかったことだろう。
「アラブルが荒ぶ――こほんこほん、な、なんでもない!」
 思わず口から出た言葉を、咳払いをしてごまかす大剣のスカイランナー・キアラ(c02531)。しかし一度口に出した言葉はなくなりはせず、仲間達の白いようなそれでいて生暖かい視線がキアラの心には痛かった。
「は、早く行きましょう!」
「ソーソー、さっさとブッ放して華麗にビクトリーといきたいナー!」
 けらけらと笑いながら、アビリティを打つ真似をしてみるのはソードハープのデモニスタ・クロケッタ(c06930)。戦闘が待ちきれないといった様子で、先ほどから落ち着きなく走り回ったりしている。
「ほっほっ……いざ戦いとなると、腕が鳴るわい」
「あんまり年寄りが張り切りすぎると、腰をやるぞ?」
「なんのなんの。まだまだ若いモンにゃ負けんぞ!」
 トンファーの群竜士・サンフォクス(c03891)がからかい混じりに話しかけると、トンファーの群竜士・ロジン(c07771)はニヤリと笑いながら力こぶを作ってみせる。まだまだ現役である、というアピールのつもりなのだろう。
 そうして当初あった緊張が解れてきた頃、ようやくヤツの待つ木々へとエンドブレイカー達は到着したのだった。

●動いた!
(「アレ……よね?」)
(「他に、居ないから。たぶん、そう」)
 エンドブレイカー達の見上げる先には、木に掴まり微動だにしない1匹のアラブルの姿があった。
 松明などを手に持っていた者は静かに地面に置き、3組に分かれ包囲をし始めるエンドブレイカー達。それに気付いているのか居ないのか、アラブルは全く動くこともなくこれが自分の生き方だとでもいう様にピクリとも動こうとはしない。
(「動かないで居てくれるなら好都合……ってね」)
 手を上げ仲間達に合図を送るキアラ。静かに静かにエンドブレイカー達の包囲が狭まっていく……少しの音でも立ててはならないような緊張感が、一歩を詰めるたびにエンドブレイカー達を苛んでいく。
「今ダー!」
 包囲の完成を確認したクロケッタが、合図代わりに黒炎をぶち込む! 全身を炎に焼かれても動かないアラブルに、エンドブレイカー達が殺到していく。
「さて、お相手お願いしま「うおっ!? サクラ、上だ!」――っ!?」
 レイピアを抜き放ち正面に構えようとしたサクラであったが、そこで目にしたのは身軽に回転しながら落下してくるアラブルの姿! 咄嗟にサクラが掲げたレイピアに吸い込まれるようにして、アラブルの勢いよく振り下ろされた爪が接触する。
 耳障りな金属の磨耗音を撒き散らし地面に降り立つアラブル。サクラから距離をとろうというように背後に跳ねる。
「おっと……さっきのジャンプには驚いたが、2度はやらせんからな」
 着地点を狙いトンファーを振り回すサンフォクス。ひょろひょろとしたアラブルの体に、流れるような動きでトンファーを打ち据えていく。
「ちょっと、行ってくる!」
「うむ、頼んだぞ!」
 包囲網から離れるキアラに返事だけし飛び上がるラシェル。そのまま自分を軸にハンマーを回転させ、アラブルの胴を力の限り打ち抜く! 悲鳴を上げるように鳴きながら転がるアラブル。
「ぬぅぅ、世界がグルグル回っとるよぉ」
「ほれ、しっかりせんか!」
 目を回してふらふらになっているラシェルをを叱咤しながら、ロジンはアラブルへと追撃をかける!
「わしの拳を受けてみるがよい!」
「……さ、最後蹴りですよね」
 拳と言いつつ攻撃の決めに思いっきり蹴り飛ばしているロジンを前に、思わず頬を引きつらせながらも弓をひくチェル。放たれた矢は蹴りを入れられ無防備になってしまっているアラブルへと突き刺さり、一方的に攻撃を喰らっているアラブルは這這の体で逃げ回る。
 一度逃げに周ったアラブルは中々厄介なもので、エンドブレイカー達の合間を潜り抜けながら爪を振るい、1対7という不利な状況下にあってなお翻弄し続ける。
 そろそろ相手の数を減らしたいとでも考えたのだろうか。最初のジャンプ攻撃を再度しかけんと、アラブルは傍らにあった木へと飛び乗る。
 ――ッ!
 今までよくもやってくれたな、とでも言うかのように一吼えしたアラブル。しかしその時であった、突如真横からの衝撃がアラブルを襲う!
「木の上から攻撃、とでも思ったんだろうけど、そう簡単にはやらせないよ」
 大剣を肩に担ぎなおし、不敵に笑うのはキアラである。こんなこともあろうかと、先ほどアラブルに気付かれないように先に木に登っていたのであった。
 忌々しそうにキアラを睨みつけ、アラブルは予備動作もなく突如後方へと飛ぶ!
「あっ、こら待てっ!」
 前足で体を抱え込むようにして丸まり落下するアラブルの着地点には――驚き目を見開いているサンの姿が!
「……痛い」
 何とか受け止めたサンであるが、爪が掠めたのか肩が裂け血が勢いよく流れ始めている。顔を顰めるサンであるが、サンもただやられるだけではなかった。そのまま距離をとろうとするアラブルに向けて魔獣へと変化させた腕を振るい、アラブルの左後ろ足をもぎり取ったのである!
「これで、おあいこ」
「スゴイスゴイ! 妾も一発イっちゃうカナー!」
 手負いになったアラブルに、2つの火球が飛来し炸裂する。1つは右前足を、もう1つは腹部を焼き払い、それらを一瞬で炭化させる。
「命中っ! 妾、ビクトリーの予感っ!」
「派手にやったなー……」
「でも、まだ油断してはいけませんよ」
 耳が痛いサクラの言葉に苦笑しながら、傷つきながらも体をバネのように弾ませ飛び掛ってくるアラブルを受け止め、その愛嬌に乏しい顔を殴りつけるサンフォクス。更に衝撃でサンフォクスから離れる瞬間を狙いサクラが斬りつけ、その切り傷を凍結させていく。
「すまんが、そろそろ終わりにさせてもらうぞぃ」
 腰を落とし神経を集中させ拳を振りぬくロジン。一直線に放たれたその正拳突きは、アラブルの体を打ち据え……余程効いたのだろう、体を痙攣させ立つことも儘ならなくなるアラブル。それでもなお牙を剥き戦闘の意思を見せるアラブルであったが、まともに動くことも出来ない体ではそれも叶わず。
「すまんが、もう終わりじゃよ」
 呟きと共に加わった上からの衝撃によって、2度と動くことなく大地へと伏したのだった。

●アラブルよ安らかに
「こいつはどうしてマスカレイド化したんだろうな……」
 仲間達の手によって埋葬されていくアラブルを眺めながら、そっと呟くサンフォクス。大きく掘られた穴に埋葬されたアラブルは、その問いに答えることもなく夜闇と冷たい土に埋もれ姿を消していく。
「おやすみなさい」
 手を土塗れにしてアラブルを埋め終えたサンは、小さな小さな一言を送る。それは普段ぼんやりとしている少女の、精一杯の弔いの言葉であった。
「ごめんな。せめて、安らかに眠ってナ……」
 簡易なアラブルの墓を作り、小さく祈りを奉げるラシェル。供え物もなく、墓としての目印に数個石が積まれているだけの代物ではあったが、これが手向けとしてしてやれる全てのことであった。
(「安らかに眠ってください」)
 そっと祈りをあげ踵を返すサクラ。必要であったからとはいえ、アラブルも生きていたのである。傲慢であるかもしれないとは思いつつも、せめて安らかに眠って欲しいとサクラは思った。
「さて……これ以上ここに居る意味もないしの。長居は無用じゃ」
「もう少ししたら夜明けだしね。撤収、撤収〜!」
 アラブルの冥福を祈ったロジンとキアラが、未だに祈り続けているラシェルとサンに声をかけ、帰り支度を促す。まだ夜は明けてはいないものの、直に日が昇ることだろう……畑仕事に出てきた村人に出会うのも厄介であるし、エンドブレイカー達は明かりを消し帰路を急ぐ。
「っぷぅ〜♪ 妾、大満足カナー!」
 存分に暴れることが出来たからか、ご満悦な表情で楽しげに歩くクロケッタ。アラブルとの戦いでも、攻撃をあてることよりも攻撃をするという行為自体を楽しんでいる節のある少女であった。そんな少女の様子を見、思わず苦笑を浮かべる仲間達。
「それにしてももっとゆっくりと観察してみたかったわ。アラブルを見るの、初めてだったのよ」
 ため息をつき少々残念そうなのはチェルである。戦闘をしていたから、というのもあるのだが、それ以前にアラブルの動きが素早かったため、ゆっくりと観察している暇もなかったのである。なので結局元気なアラブルをじっくりと見ることが出来たのは、戦闘前の僅かな間だけだったのだ。
 あまりにも残念そうにしているチェルの姿が面白かったのか、仲間達から笑い声が漏れ始める。恥ずかしそうに笑わないでください、と止めようとするチェルの姿に、仲間達の笑いは一層大きくなるのであった。
 そして――夜が明ける。



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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2010/03/24
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冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし
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