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黄金の生姜とトナカイの森

<オープニング>

 ティアナの日課は『ジンジャーホール』に生姜を取りに行く事。
 『ジンジャーホール』は生姜の貯蔵庫だ。土を盛り上げた小山の中に、秋に収穫した根生姜が収められている。
 収穫した生姜は土の中で眠らせる事によって、独特の辛味が増す。だから、食べ頃は寧ろ厳寒の折。ジンジャーホールから取って来たばかりの生姜を使った料理が冬の食卓を彩るから、アダの村人は風邪知らずだ。
「寝坊しちゃった……」
 目を擦りながら森の路を小走りに急ぐティアナ。昨日から両親は街に出掛けており、ついつい夜更かししてしまった。目が覚めたのは陽が昇ってから。仕度もそこそこに、慌てて家を飛び出した。早く皆に生姜を届けないと!
 だから、視界の端にトナカイが見えても、ティアナは気にしなかった――まさか、突進して来ようとは。
「……か……は……」
 ゴポリと口から血が溢れる。腹を貫いた大角がバチバチとスパークした時、ティアナは激しいショックと共に意識を手放した。
 放り投げられた少女の身体は地に叩き付けられ、大きな蹄にひき潰されていく――トナカイの背中で、白黒の仮面が無惨を嗤っていた。

「ここのジンジャーブレッドって、本当に美味しいよね♪」
 ニコニコと無邪気な笑顔でパンを齧る大鎌の群竜士・ルピニ(cn0029)。テーブルのミルクティーからも、仄かにジンジャーの香りが漂っていた。
 アダ村の特産は生姜。掘り上げたばかりの根生姜は美しい黄金色で、『ゴールデンジンジャー』と呼ばれている。
「でも、食べ頃なのは少し土の中で寝かせた冬なんだって。貯蔵庫は『ジンジャーホール』と呼ばれていて、村からちょっと離れた森の中にあるの。ジンジャーホールから生姜を取って来て、皆に届ける役目の子がいるみたい」
 ルピニの視線の先に、大籠を抱える少女が1人。丁度、宿の女将に大ぶりの生姜を渡している。歳は10歳くらいだろうか。鳶色のポニーテールが目を引いた。
「名前はティアナちゃん……ボク、視ちゃったんだ。あの子が、マスカレイドに殺されるエンディングを」
 そうして、ルピニはグルリとエンドブレイカー達を見回す。
「笑えないエンディングは、刈り取っちゃわないと。ね?」
 ティアナの命を奪うのは、トナカイのマスカレイド。大きな角を生やし、鋼と化した蹄は凶悪に大きい。
「大角で突き刺すとか、突進して蹄で踏み潰すとか、攻撃はそんな感じかなぁ。角がスパークして痺れちゃう事もあるから気を付けてね」
 戦いが始まると、配下のマスカレイドも3体現れる。1体はボスと並んで噛み付いてくる。噛み付きにはドレインと呪詛の効果もあるようだ。
「後の2体は後ろの方であまり動かないよ。1体は蹄を地面に叩き付けた衝撃波の攻撃、もう1体は哀しそうな鳴き声を上げるみたい」
 哀しげな鳴き声に気を取られると、闘志を殺がれてしまう。又、雄々しく嘶く時は仲間を奮起させる力があるようだ。
「ティアナちゃんが襲われるのは寝坊した日の朝。マスカレイドはジンジャーホールに行く途中で現れるから、ボク達が先回りして倒しちゃうのが1番なんだけど……ジンジャーホールの場所は村の秘密だからって、教えて貰えなかったんだ」
 なので、ティアナをこっそり尾行して、襲われた時に助ける事になるだろうか。
「『エンディング』を話しても、信じてもらえないだろうしねぇ。まあ、『エンディング』は陽が昇ってからだし、ティアナちゃんは森の小路を走っていたから、戦いに困る事は無いと思うけど……マスカレイドが現れる前に尾行に気付かれると、ややこしい事になりそうだし、色々注意しないといけないかも」
 首尾よくマスカレイドを倒せば、『危険な動物を退治した』お礼として、ゴールデンジンジャーを分けて貰えるだろう。
「生姜って、お菓子とかにも使うんだよね。もし分けて貰えたら、何か作って貰おうかなぁ……」
 そんな事をポソリと呟いたルピニだけど。
「……あ、その、今回はボクも一緒に戦うのね! 年初めのお仕事だし、一生懸命ガンバるんだよ!」
 エンドブレイカー達の視線に、慌てて取り繕うような笑みを浮かべたのだった。


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参加者
紫電の剣風・フレデリカ(c01383)
みんなのお母さん・アルバート(c01917)
森の妖精・ホリー(c02029)
弾丸小町・リバティ(c02269)
サンライトライド・キアラ(c02531)
災厄の卵・パール(c05089)
街医者・アロエ(c06854)
碧空の騎士・シュクル(c15303)
黄昏の翼・リディア(c17248)

NPC:大鎌の群竜士・ルピニ(cn0029)

<リプレイ>

●寝坊の少女
 バタンッ、と音を立ててドアが開いた。
 大籠を抱え、鳶色の髪の少女はアダ村の外へ駆け出す。彼女がティアナだろう。
「目標、補足……」
 災厄の卵・パール(c05089)と森の妖精・ホリー(c02029)は、すぐ尾行を開始した。更に少し離れて待機の他のエンドブレイカー達も、静かに追う。
「寝坊1つで迎える悲劇、か……」
 念の為、追跡組にチェイスを掛けるサンライトライド・キアラ(c02531)は、肩を竦めた。
「寝坊って怖いね」
「大丈夫。守ってみせましょう、皆で」
 柔和に、断固として言い切る碧空の騎士・シュクル(c15303)。子供が迎える不幸な終焉は何よりも断ちたいから。
「勿論、不幸なエンディングは壊すよっ!」
「しーっ」
 声が大きくなった。街医者・アロエ(c06854)の人差し指を立てる仕草に、慌てて口を抑えるキアラ。大丈夫、ティアナは振り返りもしない。
 程なく、村から森へ。ホリーは迷彩仕様のマントを羽織り、パールは木陰に身を隠して追う。ティアナは慌てている。ステルスを纏う2人なら気付かれないか。
 木立に遮られ、早々に後続組からティアナの姿は見えなくなっていた。追跡組の背から目を離さない紫電の剣風・フレデリカ(c01383)は、自信溢れるようでいて油断ない。いつでもフォロー出来るよう両手を武器に掛けたまま。
 他のメンバーも同じく。足音を立てないみんなのお母さん・アルバート(c01917)は、いつでも太刀の鯉口を切れる体勢。アイスレイピアを抱える黄昏の翼・リディア(c17248)、猫のような爪をはめる弾丸小町・リバティ(c02269)、そして、大鎌の群竜士・ルピニ(cn0029)も幼い面を引き締めていた。

 陽が昇って尚、秘密の場所への道程は薄暗く入り組んでいる。鬱蒼と変わり映えせぬ光景は何処か不安を掻き立てる。
(「毎日通う路、かぁ……」)
 尤も、ティアナの足取りは淀みない。先を急ぐ彼女には、迷わぬ標が見えるのだろう。
 ――と。
 不意にティアナの視線が逸れる。その先で揺れる――立派な大角!
「!」
 反応が早かったのはホリーだ。幸い、彼女と息を合わせられたパールも続く。複数の武器を扱えば、どうしても先攻は難くなる。
「え?」
 突然現れた少女達に、ティアナは唖然となった。だが、パールに事情を話す余裕はない。
 ガツゥッ!
 武器のガードは間に合わない。強烈な衝撃がパールの肺腑を揺さぶる。次いで、衝撃波が叩き付けられる。
「う……く……」
 初撃の突進で吹き飛ばされなかっただけ幸いだった。ティアナの前ががら空きとなれば、終焉の成就は確定しただろう。
「ひっ!」
 トナカイの突撃を目の当たりにして、悲鳴を上げたティアナがへたり込む。
「危なかった、ね……」
 遠距離のアビリティは、移動しながら使用出来ない。ティアナに付き添うホリーは、次に備えて息を整えた。

●トナカイの森
「始まったっ!」
 追跡組に反応して、キアラは大剣『グロリアスサン』を手に駆けた。アルバートとシュクルが続く。
「パールさん!?」
 アロエは思わず息を呑んだ。
 駆け付けるまでの時間はさして掛からなかったように思えた。だが、エンドブレイカー達が見たものは……唯1人、マスカレイド4体と戦うパールの姿。へたり込むティアナの傍らで、ホリーが紡いだ魔鍵の呪力は癒す前に弾かれる。
「……呪詛ね」
 歯噛みするフレデリカ。事態は予想以上に切迫していた。マスカレイドの矢面に立つパールは、集中砲火を浴びて満身創痍。唯一の盾が潰えれば『エンディング』は成就しよう。故に、回復せざるを得なかったホリーは、ティアナを戦場から引き離せなかった。そのリペアキーさえも、呪詛に阻まれている。
 まずティアナに『気付かれない』事を優先し、ステルス班を作ったのは良かっただろう。だが、本来、10人で対する筈のマスカレイド4体の猛攻を、唯1人で凌ぐ危険の程は予測できなかったか。
「そんな……」
 やはりデモニスタのリディアもステルスは使える。だが、ティアナの近くにいて出来る事は無いと考え、追跡組に加わらなかった――本当にそうだったのか? ティアナの誘導、或いは後続組の合流まででも前線に立てば、パールのダメージを減じられたかも知れない。氷結剣という近接戦の術も用意していたのだから。
「次の相手はあたし達。これ以上、やらせないんだから!」
 猶予は無い。鬨の声を上げて、キアラが大剣を振り被る。
「後ろへは行かせませんよ」
 アルバートが抜刀すれば、ワイルドスイングと電刃衝が前線のトナカイ2体を強襲する。 
 短くて長い単身前衛の間、待ち望んだ援軍にホッと笑みを浮かべるパール。
「ゼロ、細かい制御、よろし――」
 だが、内なるデモンへの囁きは唐突に途切れた。喰らい付かれ、深く抉られた傷口から溢れる血潮。
 駆け付けた回復役は後手に回り易い複数の武装、サポートの回復はまだ遠い。
「……ごめん。やばい、かも」
 辛うじて『過冷却ブレード・零』の冷気がボスの四肢を凍らせる。その次の瞬間、ボスの突進に吹き飛ばされ、幹に激しく叩き付けられた細身が崩れ落ちる。
 唇を噛み、リディアは奥から動かぬマスカレイドへ邪眼の光線を放つ。パールが心配でも、今は戦わねば。
 ――――!!
 雄々しい嘶きが響き渡った。味方を鼓舞する鳴き声にボスの四肢の凍結が解ける。
(「やっぱり、回復役からね」)
「奥の連中、任せたわ!」
 後衛へぶっきらぼうに言い放ち、フレデリカは長い紫髪を翻して前線に飛び込んでいく。残像を伴う超高速の一撃が、歯を剥く手下へ突き立てられた。
「ルピニさんも、前に!」
「判った!」
 アロエに頷き、ルピニも大鎌を旋回させながらパールの抜けた穴を埋めた。その位置から、気咬弾で奥を狙う事になるだろう。
「もう大丈夫ですよ、お嬢さん。さあ、此方へ」
 漸く駆け寄り、シュクルは怯える少女をマントに包んだ。だが、ここはまだ危険。絶え間ない衝撃波の地響きに、ティアナが巻き込まれなかった事が幸運以外の何ものでもないと実感する。急ぎ、リバティが手を振る大木の影まで退避する。
「少しの間、どうか我慢を」
 身を竦め、少女はコクコクと頷いた。間近で目の当たりにした戦闘の光景はどんなに恐ろしかっただろう。シュクルは痛ましげに目を細める。
 ともあれ、ティアナの避難は成った。彼女にはリバティとソーヤが付き添うし、もう大丈夫だろう。
 だが、戦いはまだこれから――ホッと安堵の息を吐いたホリーの魔鍵が、狙い過たず嘶くトナカイの影に突き刺さる。アロエの星霊ジェナスは、マスカレイドを噛み砕かんと身を仰け反らせて突進した。

●森の激闘
 ガキィッ!
 疾風の如き大角の突きを、キアラの大剣ががっちり受けた。へし折らんと捻じる前に、横合いから噛み付いて来た手下の歯がキアラの脇を抉る。
「あなたの相手は、私ですよ!」
 稲妻の闘気が走る。アルバートの兜割りに体勢を崩した手下へ、フレデリカの太刀が閃く。残像を伴う攻撃はボスをも巻き込んで、トナカイの毛皮を切り裂いた、
 前衛が猛攻を遮る間に、奥に立つトナカイへ遠距離攻撃が浴びせられる。
 ホリーの召喚に応えた邪剣の刃が一斉に閃き、ルピニの拳から放たれた気咬弾が幾つも光の軌跡を描く。
「もう少し……」
 リディアの邪眼は、回復を妨げる呪詛が狙いだ。命を砕く凝視を浴びせる隙を窺い、呪われし力を解放する。
 ――――。
 集中攻撃に抗うように、哀しげな鳴き声が響き渡る。続いて、荒々しく地面を叩く蹄から激しい衝撃波が迸った。
「……っ」
 爆心は何れもボスに対するキアラ。余波は周囲を巻き込み、前衛の闘志と体力を削ぐ。
 心配げに眉を顰めたシュクルだが、キアラは無言で頭を振る。仲間の体力を信じ、振るった爪が生んだ虚空の刃は斬の気配すら見せず嘶くトナカイを刻む。宙を泳ぐ白き鮫は主たるアロエの命に従い、再度の突撃を敢行した。
「まだまだだよ!」
 ダンッと幹を蹴ったキアラの跳躍。華麗なサマーソルトキックがパワフルに炸裂する。
「この程度で、動きを封じる事は出来ませんよ」
 不敵に笑むアルバートの太刀が、緩やかな弧を描く。精神統一で蘇った闘志の赴くまま、半月の斬撃が鋭く閃いた。
 幸い、前衛全員に厄を祓う術がある。キュアの隙を窺いながらも攻撃が止む事は無く、後衛も嘶くトナカイへ射撃を集中する。
 ――――!
 ルピニの『竜』の弾丸が何度もトナカイを叩く。リディアのレギオスブレイドの乱舞は『プラスワン』の特性故に巻き込んだのは後方のもう1体だったが、容赦ない斬撃に苦鳴が上がった。
 空かさず、ホリーの魔鍵がトナカイの頭の影を貫き――呪力の捕縛に、マスカレイドの身体が硬直する。
「やれば出来るわね!」
 1体目の撃破に意を強くしたフレデリカの残像剣が鞘走る。だが、仲間を倒されて激昂したのか、鼻息も荒く大きく仰け反った後方のもう1体が激しく蹄を地に叩き付けた。
 ゴオォォッ!
 地鳴りに一拍遅れ、瓦礫が逆巻いた。迸った衝撃が振動波となってエンドブレイカー達の足許を揺らす。
「うわぁっ!?」
 咄嗟に大剣を突き立て転倒は免れたキアラの目前で、ボスの大角がスパークする。
 バチィッ!
 袈裟掛けの一撃が爆ぜた。肉の焦げる臭いが漂う。必殺の直撃を喰らっても、キアラがまだ立っているのは魂の力だ。それでも、紅の双眸は大きく見開き、激痛に声も出ない。
「キアラさん!」
 シュクルが叫ぶ。だが、癒しの拳を放つ前に、もう1体のトナカイが歯を剥き嗤ったように見えた。このまま、パールの二の舞となるのか――。
「……あ」
 シュクルとアロエを掠めるように、輝ける拳が飛ぶ。続いて、キアラの傷口を塞ぎ縫合したのは魔鍵の呪力だ。グラディスの癒しの拳とエリカのリペアキー、サポートの回復は今度こそ間に合う。そして、回復の援護はそのまま、後方火力の維持に繋がる。
 アロエの星霊ジェナスの突貫。巻き起こった津波に後押しされたシュクルのヴォイドスクラッチは、何連もの衝撃波を以て2体目を血の海に沈める。
 これで残りは前衛の2体――笑みを浮かべたキアラに頷き返し、アルバートは銘無き太刀を構え直す。
 ルピニの目くらましの弾丸に怯んだその間合いを、一気に詰める。
「弐の太刀――電刃飛翔斬り!」
 煌めく刀身を大きく振り被る。高々と跳躍しての一閃は角ごとその脳天を叩き斬り、最後の手下は歯を剥いたまま絶命する。
 オォォォッ!
 手下が全滅して尚、ボスの殺意は衰えない。前脚で地面を掻き体勢を低くするボスへ、エンドブレイカーの攻撃が殺到する。
「もうすぐ……終わり」
 ホリーのシャドウロックが大角の影を射抜く。ルピニの剛鬼投げに、シュクルのヴォイドスクラッチが追撃した。更にボスを拘束するべく、リディアの邪眼が迸る。
 オォォォンッ!
 トナカイらしからぬ絶叫も構わず、フレデリカの掌がスパークする。収束した電光は連続して胴を貫き、アロエより飛来した星霊ジェナスの大口がトナカイの身体を食い破った。
「トドメを!」
「了解っ!」
 再び、マスカレイドに突き刺さる鮫牙。アルバートの星霊ジェナスと共に喚ばれた津波に乗り、キアラの全身がバネのようにたわむ。
「えーーい!」
 津波の勢いのまま、蹴りを喰らわせ薙ぎ払う。スピードの乗ったダブルスイングが決まった時、ボスマスカレイドは音を立てて崩れ落ちた。

●黄金の生姜の一時を
「無事で何より。良かったら、お名前を教えて戴けますか?」
 おずおずと頭を下げるティアナに、微笑むシュクル。偶然を装う事も忘れない。
「こんな所でどうしたの?」
 フレデリカも素知らぬ顔で尋ねれば、ティアナは素直に村での役目を口にした。
「是非お礼がしたいので、アダ村に来てくれませんか?」
 その言葉に否やは無い。揃って村に戻れば、暫く遅れて生姜一杯の大籠を抱えるティアナが帰って来た。
「貴重な食材ですね」
 独特の香気に、目を細めるアルバート。
「お菓子を作ってみましょうか♪」
「折角だし、皆で一緒にやらない?」
 キアラが提案した時、アロエとルピニが宿から戻って来た。
「パールさんは?」
「呼吸は安定していますが、意識はまだ」
「介抱は宿の女将さんにお願いして来たよ」
 心配そうなリディアに、2人は口々に答える。パールは暫く療養が必要だろう。
「後で、パールおねえちゃんにも、持って行って、あげよ?」
 ホリーの言葉に、エンドブレイカー達は頷いた。

 宿の厨房は大賑わい。女将から生姜料理を教わる者も少なくない。
 フィルが作るのは茸の生姜鍋。鶏のスープに生姜と茸、青菜をたっぷりと。グラディスの料理はシンプルなサラダ。千切りの野菜をすりおろした生姜と酸味の強いドレッシングで和える。 家で披露するつもりで熱心なミカは、生姜ハンバーグに挑戦中。生姜焼きを作ったアルジェンは、豚肉さえ引き立て役に回りそうな芳香に慄然とした様子。
 寧ろ食べる専門のソーヤも今回ばかりはジャム作りに挑戦しており、その光景に肩を竦めるフレデリカ。
「料理なんてしないしね。口に入って美味ければいいよ」
 とは言え、色々と期待の眼差しだ。
「甘いお菓子はあるでしょうか?」
 やはり家事はさっぱりのリディアは、お土産を求めてキョロキョロ。生姜の砂糖菓子をエレナから勧められたようだ。
「薬の材料としても、食材としても色々使えそうですね」
 星霊バルカンの『よーぜふ』を頭に乗せたまま、アロエは生姜汁を加えたケーキを焼き上げる。ジンジャーシロップをたっぷり塗って出来上がり。
「さてさて、上手く出来るかなー?」
 キアラはマフィン作り。甘味に生姜の蜂蜜漬けを使った。大雑把な調理で見た目はゴツゴツしているが、味はそれなり。
「味を誤魔化せれば、お子様な……おっと、お子様味覚な主も食べられるでしょう」
 手慣れたアルバートは、クッキーとマフィンの他に砂糖漬けも仕込んでいる。
「皆様のお口に合うと良いのですが……」
「美味しいです。甘過ぎないのが良い」
 お待ちかねのお茶の時間。遠慮がちなアルバートを、シュクルは素直に称賛した。その懐に大振りの生姜。自身で料理は出来ないが、旅団で何か作って貰うつもり。
 リバティの隣で、ホリーも幸せそうに黙々と頬張る。
「ティアナおねえちゃん、どんなお菓子が好き?」
「ジンジャープリンも美味しいけど、1番は生姜湯。身体が温まるし」
「ボクも大好き♪」
 サノーザお手製のジンジャーアップルケーキを堪能中のルピニも、賛成する。
「えー、飴湯はいらんかねー?」
 空かさず、湯気立つカップを勧めるシオン。スイーツを楽しむミルラも、素朴な甘さにしみじみと。
「……で、何この人?」
 フレデリカの胡散臭げな眼差しに、ちゃっかりお相伴のジョイは誤魔化し笑いを浮かべたけれど。
「みんなで笑って、おいしく食べられたら、それが1番なの、ね」
 こうして、生姜尽くしの冬の午後はのんびりほっこり過ぎていった。



マスター:柊透胡 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:9人
作成日:2011/01/24
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