ステータス画面

カシアスの乱:割る腕

<オープニング>

 騎士団総帥ドンチャッカが、騎士団を総動員して森に向かってから数日後。
 閑散とした、エルフヘイム騎士団の本部に彼らは現れた。
「あ、あなたは……」
 受付の若いエルフは、目を剥いて驚きを表す。
 それもそのはず、彼の目の前に居たのは、過去の罪状を暴かれ投獄されたはずの有力貴族カシアス老と、失脚した筈の騎士団副団長。
 そして、ひらひらと飛ぶ小さな妖精を連れた、若い女性のエルフの3人だったのだから。
「よ……ようせい??」

 若いエルフは、カシアス老にも驚いたし副団長にも驚いた。
 しかし、妖精を連れた若い女性のエルフに対する驚きは、それを上回った。
 それは、エルフヘイムの伝説上の存在である証。
 エルフヘイムを救った真実の救世主、妖精騎士の証であった。
「その通り。このお方こそが現代に蘇った妖精騎士ドロシー様だ。さて、そなた。妖精騎士の御前で、何の許しがあって頭をあげるのか」
 カシアス老の勝ち誇った声を聞いた若いエルフは、ただただ平伏するしかなかったのだった。
 現れた3人に、マスカレイドの仮面がある事は、平伏した彼には知るよしもなかった。

「ハーフエルフどもを引きずり出せェ!」
 狂暴なりしマスカレイド騎士。全身鎧で完全武装した六人からなる部隊が森を抜け、レジスタンスの拠点を蹂躙する。
「こんなときにクライブさんがいないなんて……」
「あきらめるな、残った全員で打ちかかるんだ」
 せめて一太刀あびせんと、レジスタンスが騎士の一人を取り囲む。だが、騎士が両手に握った大剣を頭上に持ち上げた時、異形は起こった。
 武器が腕ごと四つに割れる。四本の腕に一本づつ、四本の剣。
 それぞれの腕が別々のエルフを同時に相手にし、かつ圧倒する。
「戒律を守らないヤツは皆殺しィ!」
 斬撃がエルフたちの首を刎ねるのも同時だった。

 語り手・ルーク(c05200)が危惧していた事が現実になってしまった。トンファーの群竜士・リー(cn0006)は、エンドブレイカーの集まる酒場に駆け込み、レジスタンスの拠点が壊滅するエンディングと事件の背後を語り始めた。
「戒律至上派と騎士団副団長が反乱を起こしたんだ。騎士団総帥ドンチャッカがいないのをいいことにな」
 この反乱には、投獄されていた筈のカシアス老がマスカレイド化して加わっており、騎士団副団長以下全ての騎士達がマスカレイドとなってしまったようだと言う。
 おそらく、カシアス老は、軍獣単位・オズワルド(c09213)の予測通り何者かに拉致され、そこでマスカレイドにされてしまったのだろう。
 カシアス老は、新しい騎士団総帥として、同じくマスカレイドとなった妖精騎士を任命して、レジスタンス拠点に向けて進軍を開始した。

 マスカレイド騎士の本隊は、レジスタンス拠点を守るマスカレイドに迎撃され足止めされているようだが、いち早く森を突破した奇襲部隊は、そのままレジスタンス拠点へと攻め入ろうとしているらしい。
「その様子がさっき話したエンディングだ。皆には、この奇襲部隊のマスカレイド騎士を迎撃して、レジスタンスの村を守って欲しいんだ」
 奇襲部隊の六人は、おのおのが得意の武器を使っているが、特に大剣の騎士の異形化が著しい。上段に構えた後、武器と腕を分裂させ、複数人を同時に斬りつけてくる。
 他の騎士も見た目は常人だが、防御の技に優れている。楽な相手ではないようだ。

 話を聞いていたエンドブレイカーのひとりから質問がとんだ。ドンチャッカはどうなっているのか、と。
「謎のマスカレイド追討に協力してくれたドンチャッカと騎士達は、カシアスの乱で制圧された騎士団本部を取り戻す為に騎士団に戻ってもらわなくてはならない」
 レジスタンスはどうしているのか、と別の質問。
「リーダーのクライブが不在のレジスタンス達は、組織的な行動を取ることができないようだ。もちろん、拠点を守るために彼らは全力で戦うだろう」
 その結末は知っている。それを変えることができるのが誰かも。
 マスカレイド化したエルフの騎士達から、レジスタンス拠点とハーフエルフ達を救う事ができるのは、自分達だけなのだ。
 エンドブレイカーたちはリーに承諾の意思を示すと、拠点へ急いだ。


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参加者
一途なはわわ・ヴィース(c01301)
桜月祈・サキ(c01313)
鬼獅子ブラックファング・ガロ(c01737)
光を纏う魔法騎士・サイラス(c02023)
恐らく星霊術士・エレンシア(c03152)
無銘の騎士・フェミルダ(c04105)
ついぞ想わぬ・アズハル(c06150)
東西南北アフロ不敗・アフロ(c07959)
災厄の黒猫・エレナ(c11583)
魔想紋章士・テオドール(c17135)

<リプレイ>

●布陣する中で
 レジスタンスの拠点はすでに騒然となっていた。駆けつけたエンドブレイカーたちは、防衛の任につく許しを得て配置につく。
 森を切り開いて造られた拠点を背負い、マスカレイド騎士の奇襲部隊が襲ってくるだろう先を睨む。もう、あまり時間はない。
 にもかかわらず、一途なはわわ・ヴィース(c01301)は緊張感なくボヤッと突っ立っている。だらりと下げた手に杖。その隣で、魔鍵を構えた災厄の黒猫・エレナ(c11583)が前を向いたまま言う。
「気乗りしないよね。元騎士団員が相手だもの」
 見えずともヴィースの頷きが分かる。戦いを仕方なく思っていることも。魔想紋章士・テオドール(c17135)が口に出した。
「僕らの使命ですから」
 銀の魔鍵を準備している。三人は後衛。援護役だった。
「それに、シャルムーンデイ前の戦い、思い抱いて戦う人も多いかも、だねー」
 魔鍵の先で前衛を指しながらの言葉に、二人の少女はクスっと笑ってから集中を取り戻した。
 その前衛で、ついぞ想わぬ・アズハル(c06150)は棍の感触を確かめながら、生きて帰る事を大切な人に誓う。その人は別の戦場で反乱と戦っている。
 太刀をスラリと抜いた桜月祈・サキ(c01313)が、ふとこぼす。
「マスカレイド化した命を救ってやれはしないが、せめて他のエルフの命を奪うことのないようにしてやりたい」
「俺たちが騎士道を貫くための戦いをしようじゃないか」
 光を纏う魔法騎士・サイラス(c02023)が答える。拠点のほうをチラリと振り返った。エルフが小さな子供の手を引いて建物に入るのが遠くに見えた。
「きっちり守りきってからのことよね」
 恐らく星霊術士・エレンシア(c03152)が靴を確認しながら言う。
 マスカレイド同士の争いに加担しているみたいで妙な気分と言っていたのを、無銘の騎士・フェミルダ(c04105)は思いだした。それに、騎士団がレジスタンスを守るのも不思議な話だ。けれども、と思う。
(「そもそも私は、この国を含め、より大きなものに仕える騎士」)
 小柄な体なれど、剣にかけたものは重い。
「来たな」
 東西南北アフロ不敗・アフロ(c07959)が、巨大な体躯の上で巨大なアフロヘアを揺らし、巨大な武器を振りかぶった。
 鬼獅子ブラックファング・ガロ(c01737)も、覆面越しに敵の姿を捉えた。
 横一列に並んだ六人の鎧騎士が森の木々を押しのけながら、強引に駆けてくる。
 ガロの合図で、十人は迅速に迎撃を開始した。

●騎士の戦い
 大剣使いのボス格をあえて避ける。アズハルは結んだ紐をなびかせ棍を縦横にふる。
「愛情という名の棍で、慈愛の心を教えてやるよ!」
 にやりと微笑む。斧を持った騎士に初撃が決まった。後方に合図を送る。
 受けたテオドールはボス格に魔鍵を投げつけた。
「その仮面とこれから起こること、全部叩き潰させてもらうよ」
 ボスの影の胴部に刺さった。狙いとは違うがまずまずだ。テオドールがボスを抑え、皆が配下を集中攻撃していく作戦。
 そのボスがガロとエレンシアに近づき、一本の大剣を二本に割る。二人に同時の薙ぎ払い。この異形の攻撃を封じねばならない。
「……あんまり、得意じゃないですけど……。この先には、行かせませんよ?」
「せめて安らかに、ね」
 ヴィースの星霊ヒュプノスが催眠ガスをまきながら、エレナの魔鍵が高く投げ上げられたあと、斧の騎士に向かう。やっかいな相手から倒す。斧の破壊力に陣形を崩される前に。
 ガロとエレンシアは自在に振られるボスの刃をかいくぐって集中攻撃に加わる。
「今の俺は鬼獅子ブラックファング。お前らに終焉を与えてやる」
 覆面姿で鬼獅子を名乗るガロに容赦はなく、六連突きを二度にわたって斧の騎士に浴びせた。その斧は一度も満足に振られることもなく地面に放り出され、騎士は穴だらけの鎧と共に地に伏した。仮面が散って消えた。
 ガロはさらに油断なく構えをとる。エレンシアは走りこんできた勢いのままにハンマーの騎士に跳びかかり、足先が相手の首に伸びた。
「私の足技、見切れるかしらね」
 そのまま刈るように蹴る。サキ、サイラスと共にハンマーの騎士を囲む。少し離れたところから、アフロが獅子のオーラを放ってきた。
「これが城塞騎士の本分だ!」
 爪に引き裂かれて、さらにサイラスの槍が刺さる。残像と化したもうひとりのサイラスが、槍の騎士も突く。三人同時に吠える。
「ここからは通さない!!」
 続く、サキの電刃衝を受けたハンマー騎士は、剣騎士と二人がかりでサキに武器を振り下ろしてきた。それも、やみくもにではなく、互いの防備に注意を払っての攻撃だ。
 一方で、サイラスは槍騎士と刺突の応報になっている。敵は挑発にのってこない。
 押されていると感じたアフロが加勢に入ろうとした、その時。
 大鎌の騎士の攻撃が水平に凪いだ。ズバリと手ごたえがあった。
 それでもアフロは標的の優先順位を守る。マスカレイド騎士は連携も良くとれ、隙も小さい。侮れない敵だ。こちらはそれ以上の連携で応じねばなるまい。サイラスだけが、アフロの異常に気付いていた。
 盾と剣を携えたフェミルダがハンマーの騎士に向かう。略式なれど正式な礼を行なった。相手はそれに応じてきた。
 魔導装甲の重さをのせた剣、思いがオーラとなって包み、肩口から袈裟斬りにした。敵の腕がハンマーを支えきれなくなって下がる。必殺の構えから打ち込み、それが最後になった。
「次の敵は大鎌です!」
 エレンシアが当該の敵に蹴りかかる。
「腕が空いてるわよ!!」
 敵は受けた負傷で大鎌の軌道が鈍るようになる。そこへサイラスの突き。
「その程度の防御など、貫かせてもらうぞ!」
 アフロの変わり果てた姿に奮起していた。アフロヘアが大鎌で横に真っ二つ。物が置けそうなくらい。
 サイラスからの視線を、アフロはチャンスの合図と受け取り、ライジングレオを放つ。大鎌の騎士は頭から喰われて打ち倒された。
 次の敵を探して戦場に視線を向けたサイラスは、テオドールの魔鍵がボスに飛ぶのを見る。見事、大剣の影に刺さった。武器を封じられれば、防御にも攻撃にも障害だろう。
「動けないの? それは残念だね」
 テオドールは爽やかな笑顔でボスを挑発する。
「グガァ! 他所モノがぁ! 戒律執行の邪魔をするでないィ」
 槍騎士はエレンシアと対峙していた。繰り出される突き。よろよろと下がるエレンシア。後方からヴィースは見ていた。あまり普段と変わらないふうに。
 フェミルダがオーラセイバーでわってはいる。その機会を逃さない。
「……大人しく、眠って下さいね……?」
 ヴィースの星霊ヒュプノスが槍騎士の周りで単調に飛び跳ねる。鈍る敵に踵落としが入った。
「ナイスアシスト!」
 エレンシアからフェミルダとヴィースに礼。槍の騎士は、これがとどめとなった。
 残る配下は剣の騎士。アズハルの掃撃棍で足払いをくらい、すでにふらついている。ガロの百烈槍も見舞われる。
 エレナが剣騎士は瀕死と見て取って星霊ジェナスをつかわす。中空を泳いで進み、体当たりを食らわせた。
 太刀で剣と打ち合うサキ。そこへ、ジェナスの津波が押しよせてきた。飲まれかかった敵騎士に、サキが電刃衝を抜き放つ。
「終わらせる!」
 遠間から飛ぶように斬りかかる。一撃目で兜が割れた。マスカレイドの仮面は顔に残っていたが、ニ撃目でそれも両断された。

●最後の時
 水がひいた時、敵はボス一体となっていた。右からアフロ、左からフェミルダ、アズハルが仕掛ける。
 アフロは大剣で挑む。相手は同じ城塞騎士、同じ大剣使いだった。
 しかし、敵の異形が起こった。割れて四本になる腕。アフロの大剣は左手のひとつに受け止められ、もうひとつの左手が別の生き物のように独立した動きでアフロに斬りかかる。髪が四散した。
 フェミルダの剣が下段から鎧の一部を叩き割る。アズハルは見紛わず、振り回した棍を打ち付けた。
 ふいに敵の腕がいっせいに頭上に掲げられた。元に戻るのかと思わせたが、その後、急激な斬撃が堕ちてきた。三人同時に攻撃をくらう。
 敵にも隙があった。
「足元がお留守よ!」
 エレンシアが、足払いをかけて、防御をくずす。サキ、サイラス、ガロの三人がボスを抑えにまわる。
「一度下がるわ!」
 エレンシアがアフロをささえ、負傷した者たちは後退した。
 後衛の三人は、回復の技を起こす。
 ヴィースがアズハルとフェミルダにヒーリングサークルをかける。
 テオドールもフェミルダにリペアキーを与え、エレナの星霊スピカがアフロに飛んだ。
 スピカに頭皮を直接なめられ、なでられするうちに、アフロは気が付いた。
「無い! 根こそぎ無い!」
「アフロさん? もう少しよ。頑張ってね!」
 エレナは坊主頭になったアフロを励ますと、ボスに魔鍵を向けた。
「汚い手に染まる前に……仲間の元へ送ってあげるわ!」
 その声に憐れみが含まれていると、皆が思い共感した。アフロも、失った髪への悲しみを忘れ、太刀筋の見事さに元は立派な騎士だったのだと思い至った。
 陣形を組みなおす。
「ウガァ!!」
 ボスの大剣が振り下ろされたのを、ガロの槍が捉えて反撃する。わき腹を貫いた。
 ヴィースの星霊ヒュプノスとエレナの星霊ジェナスが向かう。夢を喰い、牙で喰う。そこへエレンシアが混じって、ローキックを繰り出す。
 サキの電刃衝が防御を砕くあいだ、アフロとサイラスの武器が突き刺さる。
 魔鍵で描かれた紋章。テオドールの黒鉄兵団がフェミルダに加勢する。一斉に突撃。
 フェミルダのオーラセイバーは5つの軌跡を描いてボスを刻んだあと、兜をはね飛ばした。
 マスカレイドの仮面に遮られているものの、壮齢で威厳のある顔つきがのぞいた。
 アズハルの棍が手元で回り、先端が仮面にめり込んだ。
「おやすみなさい。さようなら」
 ボスの体はきりもみのようにまわってから、地面に叩きつけられた。
 誰かのため息が聞こえた。

●次へ
 レジスタンスの拠点が見える位置で、ヴィースとエレナが埋葬の準備をしている。そこへサキが森から花を見つけてきて添えた。
 アフロは頭をなでながら惜しむ。
「本来なら同じ城塞騎士として味方だったのかも知れん、やるせねぇな。敵わんね、敵わんよ……」
 フェミルダとエレンシアも同情の声をあげた。
「……あの子は、無事だろうか……」
 浮かない顔のアズハルの肩を、テオドールが叩く。アフロは、埋葬を任せ、他の戦場に行ってみようと言いだした。ガロも同調する。
「拠点の防衛はまかせろ。気をつけてな」
 サイラスは出発する仲間に約束する。レジスタンスのエルフたちと相談に向かった。
 サキは見送りながら騎士団奪還の成功も祈る。
「カシアスがマスカレイド化された経緯、気になるな」
「……襲撃が、これで終わりだと良いのですが……」
 ヴィースはそう言い、六人の騎士の墓を作り終わると、祈りの言葉を手向ける。
「……せめて安らかに眠って下さいね……」
 エレナはひとり、虚空を睨む。
(「ねえ、裏で高みの見物をしてる貴方。……今度ばかりは覚悟する事ね」)
 それは黒幕を射抜くような厳しい目だった。



マスター:大丁 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2011/02/07
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