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決戦、妖精騎士:CHARGE

<オープニング>

 スフィクス家の最奥、妖精騎士の寝所。伝令の妖精騎士に対し、異形の仮面を付けたマスカレイドの少女は、しかしその表情に苦悩の色を露わにして訴えた。
「いけません! あれなるは予言の戦士、私達妖精騎士が待ち望んだ『終焉を終焉させる者』です。どうか思い出して、妖精騎士の『誓い』を……」
 しかし、伝令は居住まいを正すと、彼女の訴えに驚くべき返答を返した。
「かしこまりました! 仰る通り、奴等が遺跡の守りを突破した所で、我ら精鋭に掛かればものの数ではありません。たちまちの内に蹴散らしてくれましょう!」
(「ああ、やはり言葉は紡げても、意味を伝えることができない……」)
 その少女の表情は、さらに深い苦悩の縁に沈んだ。
 長老の裏切りによりマスカレイドと化した後も、少女のみならず全ての妖精騎士は、ひたすらに抵抗を続けてきた。
 しかし仮面は肉体の自由を奪うのみならず、記憶を奪い、経験を奪い、意志や言葉さえも奪っていった。少女は、マスカレイドの支配によって身動きが取れぬまま、寝所での永遠とも思える時の中で、何度も仲間達の汚されてゆく様を見続けてきた。そしてその汚染は、遂には少女自身をも支配してしまったのだ。
 しかし、何よりも許せないのは、マスカレイドが妖精騎士の『誓い』を奪ったこと。
「結局私達は、あれほど待ち焦がれていた救世主に、悪意を持って弓を向けることしかできないのか。私達は一体何の為に、悠久の時を眠り続けてきたのか……」
 そのような少女の苦悩に気付くこともなく、伝令の妖精騎士は、少女から受け取ったと信じ込んでいる偽りの命令を、全ての妖精騎士に伝えるのだった。
「妖精騎士伯ウェンディ様の命である! 妖精騎士よ、寝所を荒らす不逞の輩を殲滅せよ!」
 
 遺跡の守りを抜けようかという敵の姿に、妖精騎士は苛立ったように手にする鞘の底で地を叩く。我らが寝所を荒らすとは、絶対に許せぬ。そんな気概で、収めていた氷細剣をすらりと抜き放った。
 その背に、騎士が付き従える妖精と同じような翅が生じる。一見すれば威光に満ちたそれはしかし、紛れもなくマスカレイド化による異形の証。
 同様に、妖精騎士の周囲を固める……舞姫のような配下五名。線の細い肢体を包む薄布はそれ自体が体の一部であり、自在に開閉する布地の先端は巨大な扇が幾枚も重なっているかのようだった。
「判っておるな」
 刃からだけでなく、背に具えた翅からも刺々しい冷気を放ちながら、妖精騎士が問う。
 配下の五名は一様に頷くと、歌うように返した。
「我らが倒れるか」
「彼奴らを倒すか」
「或いは、どちらかが退くまで」
「我らが妖精騎士のため」
「この力、存分に振るいましょう」
 よろしい、と。
 妖精騎士は短く告げると、遺跡の前へと迫るエンドブレイカーの一団へ。
 配下ら五名を引き連れて、自身もまた妖精と共に舞うように、向かっていった。
 


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参加者
リターニングマン・バルダス(c00250)
提督・ヴァルゼ(c00942)
阿麻美許曽の八咫烏・アマミ(c02063)
伊達男・ウィル(c04091)
虎を倒し龍を落とす・フィーダ(c04137)
はんなり魔法剣士・キサラ(c05188)
疾風怒濤・エルティス(c10202)
風を射る・タージ(c10569)
彩風輪舞・フェルネス(c16239)
カヤツリグサの氷術士・ファウシィク(c16459)

<リプレイ>

●邂逅
 六つの敵影を捉え身構える、リターニングマン・バルダス(c00250)。
 カヤツリグサの氷術士・ファウシィク(c16459)は異形と化した騎士を前に。
「穢されてしまった妖精騎士……遺憾ながら、討たねばなりません」
「ん……伝説とも言われる妖精騎士と手合わせできるとは……」
 腕が鳴るな、と、風を射る・タージ(c10569)。はんなり魔法剣士・キサラ(c05188)の胸には、予言の戦士の矜持が宿る。
 だが、言葉が届かぬ以上やり方は一つ。そも、伊達男・ウィル(c04091)は元より届ける気もない。此処は、戦場だ。それは、疾風怒濤・エルティス(c10202)も同じく。眼前に立ち塞がる以上は、敵。掛ける情けなど無い。どんな事情があろうとも。
 ひらりと揺れる配下の着衣。彩風輪舞・フェルネス(c16239)は帽子の陰で眼を細め。
「この度は仮面舞踏会への誘い、有難うございます……とはいえ、宴は既にお終いの時間ですよ?」
「我が名はアマミ、阿麻美許曽の八咫烏を称する者也」
 意志をも歪ませる棘の理不尽さ。湧き上がる憤りを事を成す活力へ換え、阿麻美許曽の八咫烏・アマミ(c02063)が述べる口上。
「我が敵はスフィクス家に有り……邪魔立てするなら容赦はせぬぞ」
 虎を倒し龍を落とす・フィーダ(c04137)もよし! と力強く拳を握る。棘に汚された魂、この拳で綺麗にしてみせよう。
「覚悟はいいアルか!」
「いざ、参る!」
 狙いを定め、太刀を抜き放つアマミ。
「それでは、終わりの終わりを始めよう」
 そんなウィルの声を合図に、氷細剣に冷気纏わせる騎士へ飛び出すエルティス。続き、バルダスが両腕に二つの重量物を構え、壁のような有様で騎士へと向かう。だが、そんな騎士の前面へ、扇のような着衣を揺らし、次々躍り出てくる五名の配下。
 距離を詰めつつも、それらの動きを少し引いた視界に映す、提督・ヴァルゼ(c00942)。犠牲は最小限に――高まる戦意とは裏腹に、今はあえて醒めた意識で戦場を見遣る。
「まずは仲間を信じること。それがなければ成功はありますまい」
 ごちる視界、騎士の眼前、壁のように居並び戦線を構築する配下。
 初撃は騎士へ。そんな思惑を崩されて、フィーダが眉根を寄せる。騎士に一撃を見舞うには、脇を抜ける隙間を作らねば。
「どの道、殴る事になるアル!」
 足踏みよりは一手でも多く。正面に対峙した配下の一体に向け、フィーダが思い切り叩き付ける無骨な錘。強い衝撃に敵の身が痺れたと見るや、フェルネスは別の配下の眼前へ帽子を飾る羽根を揺らし歩を運ぶ。白銀に宿る電刃の輝き。間合いを計ったかと思った刹那、弐の太刀から転じて差し込まれた切っ先が、蓄えた稲妻を伝染させた。
 続け様、迸る眩い光。アマミの突き出した掌より収束して打ち出される電光の衝撃に揺さぶられ、それでも配下は衣に風を孕ませる。
 なら僕は……居並ぶ敵を前に、キサラは三日月の切っ先を構えると、健勝な別の一体へと高速の斬撃を繰り出す。生まれた残像が、更に隣り合う別の一体へと、フェイントで突き刺さり……しかし、なんのこれしきとばかり、攻撃を受けた配下が衣を翻す。
 緩やかな動きからは想像の出来ぬ突風。舞う衣は鋭い刃となってキサラを襲い、追い風の残骸が背面に控える騎士に流れ込む。
 瞬間、凍て付く嵐が戦場に吹き荒れた。
 佇む騎士の氷細剣から迸る冷気が、風を受けて勢いを増す。
 対するように、ファウシィクの掲げた細剣の切っ先も、冬の嵐を喚び起す。
「私はカヤツリグサのファウシィク! 妖精騎士よ、あなたたちは今エルフヘイムを穢している!」
 上げた名乗りと共にぶつかり合う雪と氷。
 互いに拡大する領域が、戦場の気温を一気に引き下げていく。
 急激に奪われる体温。かじかみ感覚の失せていく脚に、だが、ウィルは俄に沸いてくる感情に不敵な笑みを刻む。
「なるほど、らしい居姿だ。仮面さえ無ければさぞや絵になるだろうに」
 ごちる頭上へ、最早、鉄の塊と以外に表現仕様も無い物体が、大袈裟な挙動で持ち上がり、配下の上へ影を落とす大鉄塊。
 結局、振り回される大鉄塊が落ちることは無かったが……ウィルの動きによって、迎撃宜しく衣を翻す配下が僅かに位置を変えることが判っていたかのように、エルティスが生まれた隙間へと我が身を滑り込ませる。
 抉じ開けられた壁、その脇をすかさずに駆け抜けたタージが遂に騎士への接敵を果たす。
「運良く掴んだチャンスなのだろうが……」
 この伝説との対峙を無駄にはしない。握る斧に込めた力を衝撃派に変え、眼前の騎士へと横薙ぎの一閃を繰り出した。

●衣
 吹き飛びそうな強い衝撃に、だが、騎士はその場に踏み止まる。
 それでも、タージの突破によって俄に崩れる敵の陣形。これが機と、バルダスもまた巨躯を敵陣へ捻じ込んで、槌矛を突き上げるように振るう。
 顎先を狙う重量物の襲来に、咄嗟に身を引き回避を試みる騎士――それこそが、バルダスの狙い。
 回避に一歩、打撃の衝撃に二歩分、生まれた間合い。
 そこへ、無骨な巨大剣を携えて肉薄するエルティス。刃は黒塗りの鞘にめたまま……身の丈を越える巨剣を収めた頑丈な鞘は、重量ゆえにハンマーと見紛う鈍器と化す。
 岩をも砕く斬り下ろしの衝撃が、騎士の体をよろめかせる。
 すぐ様に、加勢に入らんとする配下……その眼前に、対峙していたキサラが通せんぼするように回り込む。ようやっと別たれた騎士と配下を合流させはしない。伴う残像も相まって、囲い込むように配下らへ突き刺さる穂先。
 引き換えに解き放たれる風。踊る衣は眼前のキサラを切り裂くだけでなく、配下自身を包み着衣の裾をより大きく膨らませた。
 ならばと、行く手を阻まれたとは別の配下が――その脇に差す、赤い影。
 凍ったままの脚など意に介さず、見栄でも切るように配下の目の前で地を強く踏みしめ行く手を阻むと、ウィルは振上げた塊を必殺の一撃に変えて叩き付ける!
 恐るべき衝撃に、配下の細い身体がぐにゃりと曲がる。流石に精鋭、その一撃きりで倒れることはなかったが……他の配下と比べての明らかな疲弊に、標的をこれと定めたフェルネスが社交界に誘う紳士のように間合いを計り、踏み込む。
「踊って頂けますか? ……エスコート先は黄泉の国ですが」
 刃に宿した稲妻が、壱の太刀となって配下の額を打つ。
 だが、よろめきながらも翻る着衣。その視線の行く先が目の前に対峙するフェルネスではないことを、ヴァルゼは見て取った。
「蝕まれても妖精騎士……獣とは違いますな」
 巻き起こる風が道を阻むキサラを襲い、別の配下への追い風となり、風を受けた配下が更に追撃を加えんと一際に軽やかに舞う。
「一歩引いての視線で仲間が助かるならそれでいい」
 ――将来、指導者となるためにも。敵を滅する力だけでなく、全体を見渡す眼を。
 不敵な笑みで呟きながら、ヴァルゼは高速の詠唱と共に、敵背面に火炎纏う斬撃を浴びせ掛ける。
「集中打に注意を」
 続けて発したその檄に、察したアマミが残留していた電光と共に光を掌に集める。
「これぞ、そなたらの無法を止める光也!」
 連続して輝く光をショックボルトへ換え、狙い定めた配下へと解き放てば、巻き上がった風の一部が、残留する電光に掻き消える。フィーダはすかさず動きを止めた配下の脇を抜け、ようやっと届いた騎士に目掛け両の手で握り締めた玉錘を叩き付ける。
 翳した騎士の氷細剣が甲高い悲鳴を上げ、伝う振動に騎士の腕が痺れる。だが、刃より漏れ出す冷気が、再び戦場を零下の領域に包み込んだ。
 拡大する嵐に伴い、標的となったフィーダならず、騎士を押し留めんと対峙しているバルダスやエルティスの腕が青白い氷に閉ざされていく。ろくさま動かぬ腕に、振るい掛けていた巨大剣を引き戻し練り上げた竜の弾丸を騎士へと撃ち放つエルティス。
 そんな皆よりも一歩前へ。
「まだ本気ではないが……な」
 タージは騎士の正面へと至りながら、手にした斧をフルスイングで横薙ぎに叩き付ける。今度は耐え切れず、後方へと吹き飛ぶ騎士。
 大きく開いた距離。体勢を立て直さんとする騎士に目掛け、バルダスは練気法に溶け消えた氷から脱した腕で、竜を解き放つ。
 飛翔する気咬弾、その周囲を追って騎士へと向かう氷柱群。
「来たれ大いなる冬の息吹、凍てつく力は我が敵を縛る!」
 ファウシィクの高らかな口上と共に、携えた氷の刃から迸る冷気が、騎士の腕を脚を凍結させていく。
 一方で、大きく開いた距離を逆に好機と見て取って、陣形を立て直さんとする配下。その行く手を阻むように立ち、キサラは負傷の激しい配下に目掛け、三日月の切っ先を高速で突き入れる。
 翻る衣。他へと向かう追い風は帯電と痺れに掻き消えるが……衣は容赦なく道を阻む者へと襲い掛かる。
 刃の如き衣の舞に、立ち塞がるウィルの肩に腕にと生まれる傷痕。
 ……真の脅威は、凍結や追い風ではない。
 妖精騎士とその精鋭。備える力の強さが、仲間の体力を確実に奪い去っている。
「お二人だけでは持ちませんぞ」
 気遣うようなヴァルゼの言葉に潜む戦況を汲み取ったか、フェルネスが続け様に布を翻す配下の前に青白い光と共に馳せ参じる。
 残像を伴い、追撃せんとする配下の背に斬撃を見舞いながら、ヴァルゼはごちる。
「さて、重傷者なぞ、私は認めません」
「……彼奴が、参謀か」
 俄に告げた仮面の下の騎士の眼差しを追うように。
 配下が衣と共に、身を翻す――。

●風
「癒しの風にて友の窮地に救いの手を!」
 草原を渡りファウシィクのもたらした風が、流血に濡れた口元を――傷を負うごとに楽しげに釣り上げているウィルに届く。風は騎士の翅が四方に散らす凍て付く空気に色褪せそうになるタージの体にも届き、柔らぐ痛みと共に、痺れたように感覚のない腕で練る竜の気。
「こんな傷……すぐに!」
 喰らい付く弾丸の発射と共に、戻ってくる感触。
 同時に、眼眩ましとなった気咬弾の援護を得て、バルダスが斧と見紛う分厚い刃を具えた幅広の大剣を騎士へと叩きつける。
 その背面、詠唱に高まる力を氷雪と雷鳴に乗せて、アマミが繰り出す三属性の残撃。
「これぞ、そなたらの希望と絶望を終わらせる輝き也!」
 纏う布ごと切り裂かれ、遂に崩れ落ちる四人目。
「棘に囚われなければ……南無三!」
 だが、唱える表情には色濃い疲弊が翳る。
 いや、アマミだけではない。
 既に意識のないヴァルゼと、彼の残した示唆に分散させた集中打。しかし、それは全体が満遍なく疲弊しているということでもあり、負傷者が一気に薙ぎ倒される危険性も孕んでいた。
 騎士の周囲を舞う妖精の力が、ファウシィクが凍らせた騎士の手足を自由にする。再び放たれようとする冷気に、闘気を噴出させ対峙するバルダス。
「持つか?」
「あたしはなんとか」
 溜め込む力とオーラの炎。自ら回復を図るエルティスの表情は厳しい。
「こっちはあと1回が限界アルよ……!」
 滴る血と汗を拭い、フィーダが体内に巡る竜の力をその息吹を隣り合うアマミへと分け与える。フェルネスも――流石に隠しきれぬ疲労に少しばかり緩慢な仕草で紋章を描き出す。
「私ももう後がありません、が……」
 零す息使いは乱れ、けれども不安など微塵もないような表情で。残り僅かな力をコルリの教えと意志に換え、広がる両腕の紋章に乗せる。
 ……直後。
 騎士の氷細剣から、零下の嵐が吹き荒れた。
 ここまでか。だが、ここには信頼出来る仲間がいる――フェルネスは被る帽子の鍔を軽く押し上げて微笑むと、その姿のまま氷壁の中に消えた。
 駆け上ってくる焦燥。変わらぬ猛威に取り戻した体力をまた奪われ、フィーダとキサラが膝を突く。
「ん……無理はするな」
「ありがと、でも負けられないから」
 タージの気遣いに、キサラは我が身を支えるように握り締めた槍の柄、備えられた盾から発する光の結界で皆を包み込む。浄化の気流に拭い去られていく零下の気配。ファウシィクは自由を取り戻した腕で、冬の嵐を呼び起こす。
 再び凍り付いていく騎士の脚。
 しかし、その正面で衣が踊り……風に舞い上がる血飛沫。
 急激に傾ぎ始める戦況。だが、ウィルは大袈裟な程に腕を大きく振り被ると、魔獣の形を成した爪の先を食らい付くように配下の喉笛に食い込ませる。流す血潮と奪い去った血肉に腕を濡らし、殴打に引き千切った配下の脇へ捨て置きながら、疲弊よりも血気に満ちた眼差しを騎士へと向けるウィル。
 残るは妖精騎士ただ一人。
 その背の欠けた翅から纏わりつく冷気を帯びた風が散る。手足でなく、命そのものを内側から凍て付かせる感覚に……いや、まだだ。
「自分に託してくれた仲間がいるなら……倒れはしない!」
 半ばまで氷壁に覆われた身を振るい立たせ、タージが踏み止まる。
 傾ぎ掛けた巨躯を悠然と持ち上げて、バルダスが輝ける竜気を纏い立ち上がる。拡散した竜はエルティスをも射抜き、瞬く間にその傷を消し去った。更には度重なる臥竜の覚醒に、今一度高まったるバルダスの力。
「終わったと思ったか? 生憎と生き汚いもんでな」
「お楽しみはこれから、というヤツだ。気張れよ騎士卿、不逞の輩に後れを取るのか?」
 青ざめた顔で、しかし、ウィルは今までで一番に不敵な笑みを浮かべて、大鉄塊を頭上に振り翳す。振り落とした必殺の一撃が、騎士の身を大きく歪ませる。
 続け様、月光の軌跡を描き、アマミが円月の構えで仕掛ける三日月の斬撃。
「私は簡単には倒れぬぞ?」
「ぎりぎりアルな……」
 もう一発貰えば終いだ。使い慣れているはずの玉錘が酷く重い。だが、フィーダは残る力で地を蹴った。エルフヘイムを守りたいという、この気持ちと共に――。
「――受け取るアルよ!」
 繰り出した一打が、騎士の顎先を打ち据える。
 二連打の昏倒撃に揺らぐ視界で、騎士は渾身で氷細剣を差し伸べる。
 今一度に、迸る極寒の気配。
 荒れ狂う吹雪と氷。遠のいていく幾つかの意識は。
 白い嵐の中に閃く黒塗りの鞘と、敵を屠り食らい付く二十八匹の竜を見た。

●騎士
 唐突に戦場を覆う静けさ。
 打ち倒された騎士とその配下らに、アマミは合掌し冥福を祈る。
「そなたらの来世に……幸あれ」
「ごめんね……あなたの大切な人のためにも、こうせざるを得なかったんだよ〜」
 感極まったキサラの瞳から零れる涙が、倒れた騎士の頬を濡らす。
 ……その姿が、妙に綺麗であることに気づいて、ファウシィクが咄嗟に屈み込む。
 そっと差し伸べた指先で騎士の喉元に触れると……指先に伝う確かな鼓動。
「生きてます」
「拒絶体だったのか!」
「あんなになってもまだ、ちゃんと抗ってたのね」
 仲間を幾人も倒されて、厳しい戦いの末に差し込んだ一筋の光。
「やるじゃねえか、妖精騎士さんよ」
 そんなバルダスの言葉に。
 キサラは今度こそ、涙が止まらなくなった。



マスター:BOSS 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2011/02/24
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  • カッコいい16 
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