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決戦、妖精騎士:壮絶な突撃

<オープニング>

●妖精騎士伯ウェンディ
 スフィクス家の最奥、妖精騎士の寝所。伝令の妖精騎士に対し、異形の仮面を付けたマスカレイドの少女は、しかしその表情に苦悩の色を露わにして訴えた。
「いけません! あれなるは予言の戦士、私達妖精騎士が待ち望んだ『終焉を終焉させる者』です。どうか思い出して、妖精騎士の『誓い』を……」
 しかし、伝令は居住まいを正すと、彼女の訴えに驚くべき返答を返した。
「かしこまりました! 仰る通り、奴等が遺跡の守りを突破した所で、我ら精鋭に掛かればものの数ではありません。たちまちの内に蹴散らしてくれましょう!」
(「ああ、やはり言葉は紡げても、意味を伝えることができない……」)
 その少女の表情は、さらに深い苦悩の縁に沈んだ。
 長老の裏切りによりマスカレイドと化した後も、少女のみならず全ての妖精騎士は、ひたすらに抵抗を続けてきた。
 しかし仮面は肉体の自由を奪うのみならず、記憶を奪い、経験を奪い、意志や言葉さえも奪っていった。少女は、マスカレイドの支配によって身動きが取れぬまま、寝所での永遠とも思える時の中で、何度も仲間達の汚されてゆく様を見続けてきた。そしてその汚染は、遂には少女自身をも支配してしまったのだ。
 しかし、何よりも許せないのは、マスカレイドが妖精騎士の『誓い』を奪ったこと。
「結局私達は、あれほど待ち焦がれていた救世主に、悪意を持って弓を向けることしかできないのか。私達は一体何の為に、悠久の時を眠り続けてきたのか……」
 そのような少女の苦悩に気付くこともなく、伝令の妖精騎士は、少女から受け取ったと信じ込んでいる偽りの命令を、全ての妖精騎士に伝えるのだった。
「妖精騎士伯ウェンディ様の命である! 妖精騎士よ、寝所を荒らす不逞の輩を殲滅せよ!」
 
●妖精騎士セシリア
 この一戦に勝たなければ、我らが運命は、如何になるというのか?
『撃滅せよ!』
 その命を受けて妖精騎士の一人が、前線を突破したエンドブレイカーを、迎え討つべく出撃する。
 その身体には禍々しい艶を見せるマスカレイドの仮面が、張り付いている。
「戦いに戦慄するなど、いつぶりのことでしょうか?」
 ――いつ? その問いに応えるはずの記憶は、一切頭のなかに無かった。
「セシリアどの?」
 私たちは、明日を迎えることができるのか? いやそれ以前に……何もない。
 やがて空白の頭の中には、現れた敵を討ち滅ぼすべしと、強い意志のみに溢れる。
「ウィルマ……明日のことなんて、どうでもいいですよ」
 不思議な気持ちになった。
 一人でも多くの敵を倒せば良い。そうすれば全てが上手くゆくと確信した。
 セシリアの目が青から怪しい赤色に変わった。
「最期までお供いたします」
 通路を抜け、遺跡の外に顔を覗かせると、そこは正に危機的な状況であった。
 視線を左右に流せば、遺跡に迫りくる敵の姿。
「行きましょう!」
 エンドブレイカーたちの先鋒は、まだ自分たちの姿には気づいて居ないようだ。
「まだだ、少し待て」
 最良のタイミングを狙うため、セシリアが全員を制止する。
 エンドブレイカーたちが、セシリアが潜む入口に近づいてくる。
 正にその時である。
「よし! 皆、私に続け!」
 セシリアは武器に青く光る妖精を武器に憑依させると、5人の配下と共に、侵入してくるエンドブレイカーの先鋒を目がけて突撃を開始した。


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参加者
シスター・ベル(c00107)
紅蓮鳳蝶・シャホン(c00357)
お前の様な後衛がいるか・アクロ(c00707)
空駆けるペンキ屋・ポーシャ(c01607)
那由他刀・ルーン(c01799)
空舞う綿毛・シノン(c02120)
鎧の奥の本音・サークル(c03518)
海緑を纏いし御魂狩之護刀・ショウキ(c10227)
アレイキャット・コレット(c11137)
レイジングハーツ・クレア(c11524)

<リプレイ>

●血に染まる階段
 段上に現れた妖精騎士、セシリアが剣を振り下ろすと、針で武装した妖精の群れが飛翔を開始した。
 直後、妖精たちは鎧の奥の本音・サークル(c03518)に標を定める。
 燐光を散らしながらうるさく舞い乱れるそれはサークルが声を上げる前に、あらゆる方向からめった刺しに蹂躙し、次いで紅蓮鳳蝶・シャホン(c00357)に襲いかかった。ふわふわと妖精が舞う幻想的な光景のなか、セシリアを先頭にした単縦陣は遺跡を目指すエンドブレイカーたちの前衛を正面から突き破った。
「殲滅せよ!」
 セシリアの檄に呼応して、続く5人の配下の咆吼が轟く。
「ぉ〜ぉ〜、派手な御登場だわね」
 間一髪でセシリアの刃を逃れたレイジングハーツ・クレア(c11524)は軽く呟くと、踏面に足を踏み込んで宙高く飛び上がると、後に続く配下を頭上から踏みつけて、その背に銀月の如き刃を突き立てた。
 歩みを崩しかけた配下が振るった腕先から射出された空気の刃が、不可視の斬撃となってクレアを裂く。
「一応、拒絶体の可能性も、ありますよってな……」
 不意をついて突入してきたセシリアとの間合いを目測しながら、アレイキャット・コレット(c11137)は横に飛ぶ。
 瞬間、踵に力を込めて踏みとどまると、桜の描かれた扇を翼のように振るう。四方から勢いを増す旋風が吹き上がり、その勢いに身体を乗せた衝撃を勢いづく配下に叩き込む。
「妖精騎士の『誓い』っていったい何です?!」
 頭上から凛とした声が響きわたる。
 音源は空中に飛び上がった空駆けるペンキ屋・ポーシャ(c01607)だ。
 だが、棘に冒されたセシリアからは何の答えも返って来なかった。
 あるのは燐光を散らす妖精と戦いに歓喜する声。
 直後、上昇するカーブの頂点に到達したポーシャは、錐揉みに転じ敵陣の一角に頭上からの一撃を見舞った。
「ならば受けてみてください。俺の心を宿した獅子の咆哮を……!」
 サークルが一歩を踏み込んで吼えると、彼の背後に浮かぶ巨大な獅子のオーラが同時に吼えた。
 その咆吼はセシリアに衝撃を与えて、サークルが失っていた冷静さを取り戻す契機となった。

「なんにせよ、マスカレイドになってしまってる以上、ここで安らかに眠ってもらうなのよ」
「寝所を荒らす不逞の輩が、何をぬかすか!」
 シャホンの言葉に、際だった存在感を見せる配下――ウィルマは怒号で答えると手にした得物を振り抜く。
 直後、灯火に群がる蛾のようにシャホンを取り囲んだ妖精の群れが、かわいらしく舞い乱れ、彼女の脳髄を刺激して意識を惑わす。
 流れ落ちる滝の如き勢いと、濃密な連携で攻め込んでくるセシリアたち。
 その頭上に投げ込まれた巨大なキノコが反撃の契機となる。
 瞬間、乾いた音を立てて爆ぜたキノコは猛烈な白煙を発生させる。
「できたら敵なんかじゃなくて、一緒に戦う仲間として出会いたかったよ」
 空舞う綿毛・シノン(c02120)の小さな胸に秘められていた切ない感情が、口から零れ出る。
 そこに、空気音を立てて飛来した六連の衝撃が身を揺らし、命を抉り取った。
「神の名の下、悲しい運命に縛れし誇り高き妖精騎士に最大の敬意を!」
 広がる白煙に咳き込み、惑わされるセシリアたち。
 反転攻勢とばかりに、シスター・ベル(c00107)が腕を突きだして放った電光が白煙のなかに樹状の軌跡を伸ばす。それは胞子に咽せるウィルマを直撃し、発生した眩い光が風景を明暗に点滅させた。
 白煙を破って那由他刀・ルーン(c01799)が、深手を負ったシャホンの前に躍り出る。繊細な身体に秘めた力を、半月の軌跡に込めて振るう。だが、咄嗟に身を回転させたセシリアの刃が、その軌跡を阻む。火花が散り、刃のぶつかり合う清らかな音が響いた。
「残念だ。確かな魂を持った貴様と殺り合いたかった。呪われた運命、我が太刀にて、断ち切ろう」
 ルーンは斬り結ぶ刃越しに言い放つと、刃を滑らせて脇に抜けた。
 次いで華麗な動きから繰り出した一閃がセシリアの脇腹に一条の傷を刻む。

「……ッ!!」
 ベルの電撃にうめき声を漏らすウィルマに、不意に飛来した火矢が突き刺さり爆ぜた。
「さあ、もっと闘争に身を焦がすが良い、その炎が御主達を包み冷静さを失った時、其の時が終わりの時じゃ」
 目論見どおりに燃え広がる炎。海緑を纏いし御魂狩之護刀・ショウキ(c10227)の口元に冷酷な笑みが浮かぶ。
 刃を交えながら、敵は単縦形からセシリアを頂点とした逆三角形に陣形を変えて行く。
「コレでも食らって、ハイになってしまぇいっ!!」
 声を上げると、お前の様な後衛がいるか・アクロ(c00707)は前に足を踏み込む。鋭い身体の回転から投擲された巨大なキノコが弓なりの軌跡を描いて飛翔する。
 刹那、胞子を撒き散らすよりも早く、配下の振り上げた剣が飛翔するキノコを両断した。
 次いで配下は上に向いた切っ先でくるりと円を描く。すると、バラバラに周囲を舞っていた妖精が巨大な環を形作り、内側の味方たちを一挙に浄化し、傷を癒してゆく。
(「……乗っ取られたとはいえ、敵は敵、次には、幸せな時に出会えたらいいなのね」)
 シャホンが少しずつ後退しながら、セシリアとの間合いを稼ぐ。
「エルフヘイムの平和のための、礎となって、果てるなのよ!」
 太刀で指し示すと、舞い乱れる蝶が彫られた刀刃に、集束した電光が集まる。
 直後、射出された電光の軌跡が配下の1人を捉えた。連続して煌めく電光は命中する度に破裂音を轟かせ、火花を散らし、肉を焦がす煙を漂わせた。やがて耐えきれずに膝を着き身体が傾く。
 その光景に視線を走らせたセシリアが、妖精を憑依させた刃を振り上げて駆け出した。
 直後、黒こげの襤褸と化した配下が、階段を転げ落ち始めた。
 セシリアの意図を見抜いたルーンが最初に声を上げた。直後サークルの脇を流れるような動きで抜けると、シャホンの正面に躍り出た。
 瞬間、無造作に振るわれた一刀が、シャホンを袈裟懸けに斬り、その意識を闇の中に沈めた。

●力の応酬
 頭上に飛び上がったポーシャの錐揉みからの突きが、配下、次いでセシリアを捉える。
「あなた方は『誓い』を忘れてしまったのですか?」
 だが身体は何の躊躇を見せることなく戦いを続けている。
「怯むな!」
 ウィルマが剣を掲げると、再び妖精が環をつくって舞い踊り、傷ついた味方を浄化し、癒してゆく。
 次いで、別の配下が剣を指し示すと、妖精がコレットの周囲で、燐光を散らせながらかわいいダンスを始めた。
「厳しいなぁ……助けたいだけやのに、世の中上手く行きまへんな」
 絶望するにはまだ早い。脳髄を圧迫する苦痛に歯ぎしりしながら、コレットが扇で指し示すと、直後、赤く歪んだ邪剣が、傷が癒えたばかりの配下を目がけて舞い乱れ、その命を啜り取った。
 セシリアたちが狙っているのは一瞬の隙。
 一瞬の機会に決着を付けられるほどにセシリアの攻撃は苛烈だった。
 それは中途半端な回復がまったく役に立たないことも意味している。
(「必ず、成功させましょう」)
 ベルは信じる仲間たちに祈りを込めると、鋭く踏み込んで穂先を突きだした。次の瞬間強い電光が閃いた。
 飛来した電光を腕で受けた配下に、ショウキの放った火矢が突き刺さった。直後に爆ぜた炎は、セシリアにも飛び火し、その身を焼いた。
 だが、セシリアたちの陣の上に、妖精たちが環を作ると瞬く間に火は消え、さらに傷が癒されて行く。
 直後、アクロが何度目かのマジックマッシュを投擲した。
 セシリアはその単調な行動の繰り返しを見逃さなかった。
 瞬間、間合いを一気に詰めると、妖精の力を纏った刃を高速で降り下ろした。
 妖精の力を帯びた細い剣は見送るモノ――アクロがそう名付けた装備を紙切れのように切断。刃は深く体内に食い込んだ。
 セシリアは無言でニッっと笑みを見せるとその刃を更に切り下げて抜き取った。
 刃が離れた瞬間、血が噴出した。大抵の者ならば、この一撃で沈んでいる。
「なん……だと」
 限界を超したダメージに霞む視界。自らの血で赤く染まった指が、他人事のように見えた。
 直後、辛うじて意識を繋いでいたアクロの前に光る壁が展開した。ベルの発動したシールドバリアだ。
 だが、瀕死の縁を脱出するにはまだ遠い。
 次いで、クレアも癒し力を備える巨大拳を呼ぶ。一挙に癒し切ることを画策したそれは飛翔し、アクロの身体を打った。
「サンキュー♪」
 表向き軽く言葉を返しつつ、自らのライフベリーを発動。だが、身に残るダメージは相当に深い。
 直後、幾重にも連なった不可視の衝撃が、アクロの癒えかけた生命を吸い取り、その身を激しく揺さぶった。
 二度目の幸運は起こらなかった。

●それぞれの覚悟
「皆さんを守れないで、何が前衛ですか?!」
 サークルは鬼神の如くに行く手を阻むセシリアを睨み、背後に浮かぶ巨大な獅子とともに吼えた。
 自身のダメージの抑制。前に立つ者には、それが最善と思っていた。だが、倒した敵よりも多くの仲間が倒されていた。
「強い――それでこそ伝説の妖精騎士」
 肉食獣の如き笑みを浮かべたルーンの口元から不意に言葉が零れた。
 腰ほどまでの金髪に青い眼。
 男性と見まがうような平らな胸。
 死闘を演じるセシリアの容姿は、なぜか自分と重なって見えた。
「はぁっ!」
 一拍の気合いを込めて、ルーンは華麗な身のこなしで地に足を滑らせる。その後方からほぼ同時に放たれたベルの電光が、宙を裂く稲妻となって伸びた。
 電撃に身を焼かれる苦痛にセシリアが呻きを漏らすと、続いてルーンの太刀から生み出される華麗な剣技が、風に揺れる水面のように煌めいた。
 痛打を受けたセシリアの金髪が惑うように乱れ、合間に見え隠れする瞳が輝きを失う。束の間に見せた表情だった。
(「お互いを信頼して支え合って戦って、この国を守ってきたんだろうな……けれど、ううん、だから、全力で戦ってあなたたちをねじ伏せる!」)
 畳みかけるようにシノンの投げつけたマジックマッシュ頭上で弾けて、白い胞子が砂埃のように舞い広がった。
 セシリアの右後方から飛来した妖精が燐光を散らしながら楽しげに舞い踊り、次いで左後方から飛来した妖精が、ルーンの顔に抱きつき不意に視界を遮った。
「!」
 直後、舞う胞子を突き破って現れたのは針で武装した無数の妖精。
 その群れが獲物に群がる軍隊蟻のように、あらゆる方向からルーンを取り囲み、滅多突きに突き刺しながら舞い乱れた。
 群れが離れると、赤い襤褸のように変わり果てたルーンが鈍い音を立てて滑落する。
「しかし、悲しい事じゃな……これほどの力を持ちながら破滅に利用されるとは……」
 妖精の群れは勢いを増しながら、ショウキを目がけて迫る。
「その無念、必ず晴らすからの」
 回避不能。迫る妖精群に自らの命運が尽きたことを予感したショウキは、せめて一矢を報いようと火矢を番えた。
 発射――それは、迫る妖精の群れを突き破って飛翔し、セシリアの胸に突き刺さって炎を広げた。

●絶望を覆す力
「手近な所から、何とかするしかないわよ」
 炎と白煙、燐光を散らす妖精が入り交じるなか、クレアの言葉が響く。
 そして、敵に癒しをもたらす筈の妖精の環が現れていなかった。
 コレットが眼前に、深手の敵を捉えた。四方から巻き上がる風に乗った疾風の如き迫撃が配下の顔を覆っていた仮面を粉々に粉砕した。
「んで、それで本気なワケ? ゴタクはいいからさっさとその仮面押し退けて表に出てきなさい」
 コレットから託された追い風に乗って、前に躍り出たクレアが振るった軌跡が、V字の衝撃となって配下の身体を打ちこまれる。臓腑を潰し、骨をも砕く衝撃に貫かれた配下の膝が折れ、口から肉片の混じった血がこぼれ落ちた。
 直後、最期の力を振り絞って配下が剣を振り上げると、当てもなく漂っていた妖精が環を描き始める。
「そうはさせません!」
 ポーシャによる錐揉みの一撃が配下に打ち込まれ、消えかけていた命の残滓を散らした。
 残るはセシリアとウィルマの2人となった。
「ここの寝所を取り戻せば、エルフへイムを救えるはず……誰もが笑えるエルフへイムになれるはずです」
 エルフへイムが好きだ。だから騎士団に志願した。獅子の輝きとともにサークルの哮りが響いた。
「予言の戦士様が、助けてあげるわよ」
 エンドブレイカー、終焉を終焉させる者。レジスタンスとなって戦い続けたクレアが言葉を続ける。
 いまなら分かる。真に棘を滅ぼせば、エルフヘイムを縛っていた哀しい戒律も必要無くなる。
(「――戦ってはいけない」)
 セシリアの心の奥底に別の意識が萌芽しかけていた。
 だが身体は歴戦の妖精騎士としての機能を完璧に果たし続ける。
「退け! 妖精騎士伯ウェンディ様の命である!」
 セシリアは膨れあがる殺意に突き動かされる。瞬間、振り下ろされた妖精の力を宿した清い刃は、サークルの暗緑色の装甲を切り裂いて、肋骨を縦に断ち切る。
 瞬間、サークルの背骨の奥にガラス細工が砕けるような感覚が走った。
 もはや癒しきれない深手だと、直感できた。
 繁吹く鮮血に声を詰まらせながら後を託すと、サークルもまた身体を失って転げ落ちていった。
「未来に進むためにもここはなんとしても勝たないと!」
「ここは通さん!」
 ウィルマが肩で息をしながら剣を振り上げた。瞬間、ポーシャの投擲した稲妻の闘気が込められた槍が飛来して、胸を貫く。複雑に砕けた肋骨の先端が白い顔をのぞかせ、ダクダクと血を流しながらもウィルマはそこに立っていた。
「セシリア様……お先に」
 そう穏やかな表情で呟くと同時に、揺らいだ武人の身体は、鈍い音を残して倒れた。
 死闘の結末が見えてきた。
 赤く血に潤された階段は禍々しい艶を放ち、燐光を散らして舞っていた妖精の姿もう無い。
 シノンのナイトランスから放たれた二連の突きがセシリアを直撃した。
「滅びるがいい、私ととともに!!」
 身体を揺らめかせたセシリアが最期の力を振り絞って剣に妖精を憑依させると、ベルを睨みつける。
「闇に墜とされた魂に安寧を!」
 速攻でベルがカードを投げれば、命中したカードは爆発し、爆炎のなかでセシリアの側頭を覆う仮面に亀裂が走る。
「もう一度だけ言うわ。その仮面押し退けて表に出てきなさい。予言の戦士様が助けてあげるわよ」
 一歩を踏み込むとクレアは言い放つ。絶望しなければ、希望は無くならない。それだけの理由だった。
 直後、セシリアの身体をV字の衝撃が突き抜けると、仮面が乾いた音を立てて砕け散った。
 戦いは終わった。
 そして、クレアの足元に倒れたセシリアは清らかな表情を浮かべていた。



マスター:もやし 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2011/02/24
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