ステータス画面

たくさんの羊を解体して大鍋にブチ込んでみんなに振舞う会

<オープニング>

「あの、よかったらこれ、食べてみてくれる……?」
 そう言ってプリシラが差し出したのは、小皿に盛られた肉料理だった。
 とろみのある赤いスープに、一口大にカットされた肉と、刻んだネギや根菜やキノコなどがひたっている。見た目どおり、スープにはたっぷりとニンニクや香辛料がきかせてあるらしく、立ち昇る湯気はなんとも食欲をそそる香りがした。
「子羊肉を煮込んだものなの。あっちで暮らしていたころ、お祭やお祝いの日には、決まってこの料理がごちそうに並んだのよ」
 ぷりぷりとした子羊肉の食感と、豪快に刻んだ根菜の歯ごたえが絶妙だ。味つけは多少独特だが、それがクセになる。なにより、肉の脂をたっぷりと含んだ甘辛いスープは、冬の寒さで冷え切った身体を、芯から暖めてくれた。
 お口に合うかしら? と尋ねたプリシラに、卓についていたエンドブレイカーたちは、頷いてみせる。
「よかった。あのね、今度大きな鍋でこの料理をたくさん作って、みんなで食べよう、って思っているんだ。いつもみんなには良くしてもらっているから、お礼がしたいの。それに、たまには羽目を外すのも、いいでしょう?」
 川原で火を焚いたら、きっと楽しいね。そうプリシラは笑う。
 日ごろのあれこれを忘れて、お祭騒ぎ。おなかいっぱい食べれば、それだけで元気がでる。火を囲み、歌い踊って時を過ごせば、冬の寒さすら忘れることができるだろう。もちろん、子どもは子どもらしく、大人は大人らしく、節度を保って。
 熱っぽく語る少女の顔は、いつになく生き生きとしているように思えた。
「実を言うと、誰かに料理を作るのって初めてなの。上手にできなかったら、ごめんなさい。よかったら、みんなにも来てほしいな……」
 エプロンの裾を握りしめながら、プリシラは照れくさそうにうつむく。一人ではしゃいでしまったことを恥じているのか、彼女の顔は赤らんでいた。


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参加者
NPC:弓の狩猟者・プリシラ(cn0002)

<リプレイ>


 春のきざしを感じさせる陽気とはいえ、いまだ肌寒さの残る季節。透いた陽光のなか、川原は鍋祭りの準備に勤しむ人々で賑わっていた。
「賑やかな食卓というのは、なににも勝る調味料だね」
 巨大な鍋を運んできたアステリアが、ひたいに浮いた汗を拭き拭き呟けば、スティニアが下拵えを終えた肉塊を運びつつ同意する。二人とも、プリシラに代わり力仕事を担当している、力自慢たちだ。当のプリシラは、予想以上に手伝いの申し出が多かったことに、喜びつつも申し訳なさそうにしている。
「替わろうか〜?」
 羊の骨を切断することに苦戦していたプリシラに、ヘルマンが声をかける。力仕事は男の仕事と言わんばかりにこなす彼に、ヤマダが「それならば私も」と続く。もっとも、彼女は家畜の解体は初めてのようで、プリシラに教わりながらの作業となった。
 方や、馴れた手つきで腑分けしているのはシズルだ。捌いた肉を手際よく、部位ごとに分けていく。
「故郷の森では、よくやったものです」
「ほえ〜、そんなカンジでやるんすねぇ……」
 熟練者の手元を見つつ、気合の入った割烹着姿で手伝うミルシェリス。なにぶん不慣れなので、恐る恐るといった様子だ。同じように料理の経験が浅いレピスも、肉を捌くのに四苦八苦だ。完成した鍋を楽しみの糧に、つまみ食いの誘惑を耐えつつ働いている。
 それまでこわばっていたプリシラの表情も、笑い声に包まれながらの支度に、次第に緩んでくる。
 ヴィオラは「はしゃぎましょう、この笑顔を繋いだのは貴女なのですから」と、そんなプリシラに囁いた。やや無粋な絵面かしらと小首をかしげた彼女に、少女ははにかみながら、小さく首を振った。
 手伝いの多さもあり、料理の支度は順調に進んでいた。アイニが香草を使って肉の下拵えをしている間に、ルディエルが味つけの手伝いをしていく。料理の腕はあるのに、あくまで手伝いに徹してくれているその心遣いに、プリシラは深く感謝していた。
「ありがとう……。本当は、一人だけじゃ不安だったの」
「気にしないでね。それに、完成する時間が早くなったら、皆と過ごす時間も増えるでしょう?」
 申し訳なさそうに頭を下げたプリシラに、ルーウェンは片目をつむって微笑みかける。彼女が鍋の蓋を外すと、途端によい香りが辺りに広がった。


「プリシラ、コレ、すごく美味しいです。今までに食べたことがないエキゾチックな味です」
 顔をほころばせてロリータがお代わりを所望すると、プリシラは「もちろん!」と嬉しそうにおかわりを盛った。
 いいお嫁さんになりますね、という言葉を聞いたアロルオンが、さっそく反応をして、プリシラの手をとる。「プリシラ嬢の旦那様になる人が羨ましいな」という彼のアイビームに赤面した少女は、ただただ首を振るばかりだった。
 身体の温まる料理を前にして、集まった仲間たちも自然と盛り上がる。
「いっただきまーす!」
 配膳を手伝い終えたナハトが、元気良く挨拶をする。プリシラを交えた夜唄廃墟の面々は、歓談に花を咲かせていた。ナハトが「うっかりヒヨコを鍋に落としそうになった」とおどけると、ユーグが笑みをこぼす。仲間とともに笑い、食卓を囲む時間の、なんと温かなことだろう。決して口には出せない思いを噛みしめながら、彼は料理を口に運んでいく。
「料理が上手な人って、ほんとにすごいわ……!」
「そ、そんなことないの。このお鍋だけ、だから……!」
 ゼルディアの褒め言葉に、ひたすら照れているプリシラ。そんな彼女らに、ルーイッヒが楽器を取り出しながら声をかける。
「ゼルディア、彼女にお礼をするんだろう? プリシラ、よかったらオレたちの歌と演奏をお礼代わりに聞いてくれないか」
 華やかな二人の演奏に、プリシラだけではなく周りの仲間たちも聞き入っている。目を閉じてその楽に聞き入っていたルィンは、プリシラにこう告げた。
「なぁ、俺たち、とっくにプリシラの仲間だぜ」
 だからこんなにも、ごはんが美味しいんだ。
 彼の言葉に、プリシラは泣笑いのような表情を浮かべると、ただ一言「ありがとう」と返事をした。
 そして、そんな夜唄廃墟の面々を見つめる一つの影があった。抱えたお皿に大量の骨付き肉を盛って、周りの人を威嚇しつつカジカジしているムカデである。彼女が仲間の輪に戻ったのは、お昼寝に突入したあとのことだったという。
 盛り上がっている鍋祭りではあったが、そのなかでもいっとう白熱した卓があった。
「羊さんが私の胃袋に入れてほしいと訴えてるよ!」
「もっとゆっくり食べてもいいと思う……つ、う、か、俺の肉だ、よこせ!」
 熾烈な肉争奪バトルを展開している、イワンとリッターである。フェイントを駆使して肉を奪取するリッターに、紳士的な食事をやめて対抗するイワン。そして、そんな二人の隙をついて黙々と食べているビョルンは、こっそりと二人の皿に苦手な薬味を置いていく。
 寒さも人目も忘れられるのも、祭りのおかげだろうか。三人は愉快かつ仁義なき食事を楽しむのであった。
 大食い競争は別の卓でも起きていた。こちらは、純粋に食べた量を競っているようだ。
 シャラーレフが汚れも熱さも汗も気にせずがっつけば、口冷ましに談笑しつつフォルテ・ロードが皿を重ねていく。クルイークは、どちらかといえば味を楽しんでいる様子だが、そんな彼もすでに8杯も平らげていた。
「……16杯、だと……? どうした私の胃袋」
「あたいは11杯!」
 予期せぬ勝利にフォルテが戸惑いつつガッツポーズをとると、クルイークが拍手を送る。いま食べたばかりだというのに、「次は巨獣狩りして食べるか!」と盛り上がるのは、生粋の肉食系である彼女らならではか。


 指でつまんで骨つき肉を食べる。それだけのことも楽しくて、ジュデッカはつい顔をほころばせてしまう。同席したプリシラに、彼女は感謝を述べた。料理そのものよりも、振舞ってくれた気持ちが、とても温かかったから。
 料理の手伝いを終えたモカは、きゃっきゃとはしゃぎながら食事をしていた。初めての料理体験を語る口調はなんとも楽しそうだ。シャロンはそんなモカの言葉に頷き返しながら、そういえば料理の最中に再会した『あの人』はどこだろう、と視線を巡らせる。初めて名前を呼び合って、新しい縁を築いた、あの人は。
 どうやら思い当たるフシがあるらしく、共に食事をしていたフィグが、皿を取って立ち上がる。
 彼女は喧騒から離れたところで酒を嗜んでいたロットバルトを見つけると、「温かい内に」と皿を差し出した。
「……もう少し冷めてから食べる」
 ぶっきらぼうな声。睨むような視線は厳しかったが、決してフィグを拒んでいるわけではない。短く目を伏せて皿を受け取ったロットバルトに、フィグは穏やかな微笑を向けた。
「流石に捌きたての羊さん! 美味しいですね!!」
 かぐわしい料理に舌鼓を打ち、ラツはぺろりと最初の一杯を平らげる。彼の質問に、「大丈夫よ。辛いものも甘いものも、大好きですわ♪」と答えたフェイランは、彼の食べっぷりに感化されたのか、やはりすぐに器を空にしてみせた。
「ああ、お腹空いた……って、もう食べてる!?」
 手伝いを終えて戻ってきたルシエルは、そんな二人を見て驚きを隠せない。ちょっとだけ口を尖らせつつも、彼女はすぐにみんなと囲む食卓に夢中になった。寒い日には温かな食事を。食事のあとにはダンスを。楽しい時間は過ぎていく。
「肉・肉・肉で御座よゼル殿!」
 テンション高めで鍋に駆けていくアスカの背中に、ヒカは「そんなに早くなくならないよ……!」と声を掛けるが、アスカは全く聞いていない様子だった。
「ま、ゼル兄さん目印にしてるし……大丈夫でしょ♪」
 楽観しつつ皿に料理を盛っているハクカは、可愛い子と一緒に卓を囲めることを心底楽しんでいた。ゼルアークに「あーん」した匙は物の見事に避けられて、ヒカの口元へ。もっとも、ゼルアークとヒカは互いに「あーん」を返しあっているので、知らない人たちから見ると、なんだか珍妙な光景だ。
「それならば拙者にもどんどん食べさせて下され!」
 大皿を抱えて戻ってきたアスカが合流して、さらに混沌としたのは言うまでもない。
 シンルーの口元をぬぐってやりながら、アレクサンドラは辺りを見回す。食事をするみんなの顔は幸せそうで、本当に良かったと彼女は思う。
「夢の中でもお腹一杯に食べられたら幸せだよね〜」
 明日食べられないくらい食べるつもりなんだよ。そう言って笑うシンルーも幸せそうだ。あとでプリシラにお礼を言おう。そう思いながら、アレクサンドラは料理を口に運ぶのだった。
 鍋は食べどもなくならない。単純に、それ以上に追加で作られる量が多いからだ。
 アイシャは重圧に怯えているヒュプノスをぎゅっと抱きしめたまま、鍋をつついている。みんなの思いがこうして形になったことは、彼女にとっても感慨深かった。
 その隣のプリシラも、なんだか楽しそうだ。ラフィニアにレシピを答えながら、一緒にお鍋を食べている。
 故郷の話になるとプリシラは口ごもり、ラフィニアはあえて深く聞かずに自分の故郷の話をした。異国の話に興味津々なのか、少女は目を輝かせて彼女の話に聞き入っている。
「プリシラは誰かと食べるの好き?」
「うん、好き。やっぱり、一人で食べるのは寂しいもの……」
 俺はこうして皆と食べられるから、鍋が好きなのだけど、というヨゼフの問いに、プリシラは大きく頷いた。そして、「だから、無くならないうちにもっと作らなくちゃね」と再び大鍋へと戻っていく。
 再び料理を再開したプリシラを、ヨゼフとツルギが手伝う。
 ツルギにとっては珍しい料理のようで、彼女はよく香辛料の使い道などを尋ねた。批評もできないほど舌にあった料理だったから、どうしても気になってしまうのだ。
 一通り材料を捌いて火を使う仕事になると、セキが名乗りを上げた。羊を食べたら共食いかな、などと複雑な心境で、彼女は火の番をする。
 お酒を飲みつつ、リィズは出来上がった鍋をさっそく頂戴した。寒いなかで食べる鍋とお酒の組み合わせは本当に最高で、彼はプリシラに感謝の言葉を告げる。


 美味を口に含めばそれだけで幸せだ。思わず緩む頬、おいひぃ、と紡いだ言葉は舌足らずで。そんなシユの様子を前に、クラーラは相貌を崩すことを禁じ得なかった。
 誰かの愛情が誰かへの愛情を生み出し、それは連綿と続いていく。その連なりに共にいられることが、シユにとってなにより嬉しい。クラーラもまた、彼女と分かち合う喜びに幸福を見出していた。
 血と脂で濡れたナイフを拭い、ニエは潰した仔羊を捌いていく。先ほど口にした料理は馴れぬ味、けれど懐かしい味がした。
 「たぶん、近いんだ」そのプリシラの言葉を胸におさめて、ニエは微笑み返す。懐にしまったナイフは、命と感謝の重みがした。
 楽しく感じるのは、大勢とだからか、それとも……大好きな人とだから? そんなエフェメリスの呟きが、レラの耳をかすかにくすぐった。曖昧な笑みで言葉は濁されて、けれどその笑顔がなにより雄弁に二人の心根を語っていた。
 差し出した手、受け入れた手。二人、この時を心に刻むための踊りに興じる。
 場は喧騒と演奏と舞踊に彩られていた。腹ごなしに星霊と共にボンベエが踊ると、ネヴァンも負けじと参加する。律動に身を任せる踊りはこの祭りにどこか相応しく、彼女に誘われたプリシラも楽しんでいた。
 音楽の心得がある者は楽器を取り出し、得意の歌や演奏を奏でる。ラグナに促されたプリシラが恐る恐る古い歌唱を披露すると、ファーがそれに合わせてハーモニカを奏でて、見事な合奏を紡いでみせた。
 六弦を取り出したサンディの奏でるアップテンポの歌は、踊りを楽しむ者を大いに盛り上げてくれたし、ドールワークを駆使したディアルザの人形劇は、子どもも大人も楽しめた。
 もちろん、その間にも食欲旺盛な面々は料理に夢中であった。アインがうっかり料理をこぼしてしまう、というアクシデントもあったが、他にさしたる問題もなく鍋祭りは進行している。
 和やかな雰囲気のなかで食事が出来ることは、普段戦場に身を置いているアークエネミーにとって貴重なことだった。シェミアもまた、顔にはださなかったが、楽しそうに食事をしているみんなを見つめながらの食事に幸せを感じていた。二人とも単独での食事ではあるものの、仲間と共にいるということに変わりはない。
 温かい料理にほっこりしているアルジェンは、香辛料の効能などを分析しつつ味わっている。実に丁寧な食べ方だ。そして、ウマウマ言いながらひたすら食べまくっているアラストールは、今日一番見事な食べっぷりを披露してくれた。その豪快な食べ方に、作ったプリシラも思わず笑顔をこぼすほどだ。
 さすがに疲れが出てきたのか、賑々しい時間も次第に終わりを告げて、また再び穏やかな食事が始まる。
 次はいつか、私がご馳走したいわ。そう言ったイリューシアに、プリシラは「ぜひ」と微笑んだ。手を合わせて祈りを捧げて、彼女は料理を口に運ぶ。祈るのは、少しだけ自分が臆病だからか。心地よい沈黙で二人、祈りと共に命を嚥下する。
 フォルテ・ミスリアは食事の合間に、周りの人たちから話を聞くのに夢中だった。食事より話に没頭していたのは、もう二度と会えないかもしれない、という気持ちがあるためだろうか。
 少し疲れた様子のプリシラに、エルヴィラはお礼と労いの言葉をかける。初めての経験で緊張したわ、という彼女の言葉に少女は驚いた様子だったが、すぐにはにかんだ笑顔に戻る。彼女の意外な告白にほだされたのか、少女の口調はいつもより砕けていた気がした。
 いまだ続く喧騒からやや離れたところで、ファルスは独り酒を飲む。他に飲めそうなヤツでもいれば、と思っていたのだが、独りでいることも彼なりの楽しみ方だ。
 あらかた鍋を食べつくしたあと、エストの提案でシメのリゾットが作られた。甘辛い味は少々クセがあるものの、煮詰まって旨みが凝縮された汁がごはんに染みて、なかなかの美味だ。リゾットを食べつつ、リリナがみんなにハーブを配っている。においが残らないためのエチケット、だそうだ。もっとも、彼女自身は相変わらず歩き食べをしていたが……。
 そうして鍋は完食した。食材と作り手にヤハが感謝を捧ぐ。どこか懐かしい味は、彼の心に懐かしい情景を思い出させてくれた。その礼に……、と彼が後片付けを始めると、皆がそれに連なる。
「みんな、ありがとう。わたし……今日のこと忘れないよ」
 集まってくれたみんなを見渡して、プリシラが頭を下げる。感謝の気持ちを伝えたかったのに、なんだか、逆にたくさん感謝されてしまったわね、という笑顔と共に。
 楽しかった鍋祭りは、こうして幕を下ろしたのだった。



マスター:扇谷きいち 紹介ページ
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いまいち
参加者:69人
作成日:2011/02/24
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