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白き幻影

<オープニング>

●王子達の襲撃
「『姫』へ献上する薔薇はこれほど赤ければ良いだろうか」
 片手に槍を、片手に薔薇を持ち、両手を大きく広げるのは、長い黒髪を赤いリボンで括った美青年。金の縫い取りが派手な、膝丈の深い紺色の長い上着。タイトなその上に深い青色の長いマントを羽織り、胸元にも一輪の赤薔薇を添え――すらりと伸びた脚には白いタイツ。
 王子様であられます。
 血に染まった薔薇の前に立つ黒髪の王子に答えたのは、
「こっちの家からは綺麗な首飾りをみつけたぞ! これほどの宝石であれば姫の目に止まるであろうよ」
 大剣を担ぎ嬉々と笑うのは、赤い短髪の、やや粗暴そうに見える美丈夫。毛皮の襟が付いた深い緑色の短い上着、同じ装飾の長いベストはやはり膝丈。淡いベージュ色のマントは短めで――形良い脚には白いタイツ。
 彼もまた王子様であられます。
 血塗れの姿で首飾りを掲げる赤髪の王子に答えたのは、
「この繊細な刺繍の施されたドレスは姫に良く似合うでしょうね」
 錫杖を手に目をきらきらと輝かせ、金髪を頬の辺りで真っ直ぐ切りそろえた美少年。白い上着は色取り取りの宝石で飾られ、赤いマントを靡かせる。彼は馬に乗っており、腰を覆うは王道のカボチャパンツ――そして細い足にはやっぱり白タイツ。
 彼も(略)。
 血で不思議な模様を描くドレスを手に『姫』を思い描き、和やかに語り合う彼らだが、村は真っ赤に燃え上がり、足下には死体が連なる。虐殺の末の略奪。
 彼らは世界樹からやってきた、凶賊である。

●討伐依頼
「王子が現れた」
 斧の城塞騎士・ヘーゼル(cn0021)は腕を組み不機嫌そうに言った。あくまでいつも通りのポーズである。
 聴いた方は誰もが黙った。黙ったまま先を語れと促した。
「……妄想から生まれたイマージュのマスカレイド。誰の妄想かは考えたくもないが、揃いも揃って『王子』らしい。奴らは『姫への贈り物』と称して手頃な村を襲い、略奪する。お前達にはそれを阻止して貰いたいのだ」
 そしてヘーゼルは襲撃者の特徴を説明する。

 黒髪の王子は槍を持ち、芝居がかった演出を好み、薔薇を手放さない。薔薇を持っている限り、その攻撃は強化されるというのだから妄想とは怖ろしい。
 赤髪の王子は大剣を手に熱い戦闘を好む。守る戦いを好んでおり、他二体の王子を後方に据えている時、敵の攻撃をいなす能力が強化されるというから思い込みとは厄介である。
 金髪の王子は杖を手に、馬に乗り戦う。ゆえに高い機動力があり、馬に乗っている間はなかなか攻撃が当たらないというから、幻想とはなかなかに都合の良い物である。
 敵はこの三体のイマージュマスカレイドのみ。数は少ないが、彼らの性質を巧く崩さねば、思わぬ苦戦をするやもしれない。
 今から出発すれば村に到達する前の開けた場所で迎撃できるであろう。

 此処まで説明して、ヘーゼルは皆を見つめた。表情から感情の程はよくわからない。
「一見、緊張感のない敵のようではあるが、脅威であることに変わりはない。エルフヘイムの秩序を乱す輩を放っておくわけにはゆかぬ……お前達の武運を祈っている」
 彼がそのイマージュをどう思ったのかは微塵も悟らせず締めくくると、エンドブレイカー達を送り出した。


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参加者
遊悠月・ルゥ(c00315)
天華の欠片・キリィ(c01934)
覇王・イェフーダー(c03663)
運命の赤い人・ラブ(c04701)
赤腕・ロッグルド(c04875)
白耀華・ナナリア(c05280)
月虹・ジェフリー(c10465)
斧の狩猟者・イツキ(c13562)
野草の生命力・ノンノ(c16577)
導きの細剣・クリス(c18644)

<リプレイ>

●王子様、襲撃
 エンドブレイカー達は王子様を待っていた。
 物語によくある導入に似ているが、現実彼らは「王子様」としか形容の出来ないものを待っていた。だが決して一緒に城に帰ったりすることはないし、王子がお姫様を救い出すような事も無い。
「王子様が迎えに来るって、女の子の憧れよねーぇ」
「王子様、は乙女の憧れではありますが……」
 運命の赤い人・ラブ(c04701)がにこやかに切り出すと、微笑み白耀華・ナナリア(c05280)は頷く。
 この場合は何か違う気がする、とは口に出さず、ただ微笑み。
「女の子の夢よね……でも、妄想は何時か思い出したくもない思い出になるけど」
 覇王・イェフーダー(c03663)は斯く宣う。
 じっと先を睨むように見据え、導きの細剣・クリス(c18644)はアイスレイピアを握り締める。
 それぞれ思うところはあるけれど、心はひとつ――決意を込めて紡がれたクリスの言葉に集約される。
「王子らしからぬ存在、絶対に許しません」
 まあ、そういうことだ。彼女にとっては悪夢にも近い幻影だろう。
「オ?」
 手を当てて遠くを見やり、野草の生命力・ノンノ(c16577)が声を上げる。すぐに遊悠月・ルゥ(c00315)と月虹・ジェフリー(c10465)がホークアイを使えば、視界に飛び込んでくる白タイツ。
 灰色の目を瞬かせ、斧の狩猟者・イツキ(c13562)が大仰に驚く。
「いやいや……王子様って大変なんだね。だって、壮年になっても白タイツ履かないといけないなんて!」
 え、そこ? ツッコまれる前に彼は自分で「そうじゃなくて」とツッコミを入れていた。
 大体の位置とか速度を仲間達に伝え、ルゥは穏やかな微笑みというのを消し去って真顔になる。
「なんとしても早く片付けてしまいたい……真剣に」
 無意識か否か仕込み杖を握る手に力が籠もり、微かに震えていた。
「白タイツと南瓜ぱんつの変態仕様なのに」
 あれで美形気取り、ジェフリーが苦笑する。混乱、怒り、失笑……三人の反応はまさに典型的なものである。多分他のエンドブレイカー達も視界に入れば、同じ反応を示すだろう。
 そんな王子様達が構えたエンドブレイカー達の前に悠然と現れた!

 ヒュウ、と軽い口笛。
「おいおいおい、出迎えたぁ熱いじゃねえか」
 粗野に言い放ったのは赤髪の王子。大剣を担ぎ前に進む。武器を構えている彼らを見て、目的がわからないはずがない。
 壮年ながら整った貌が好戦的な笑みで歪む。そんなワイルドな魅力も白タイツの前じゃ台無しである。
「ちょっと……嫌だな……」
 目を細め天華の欠片・キリィ(c01934)は遠のきかけた正気を呼び寄せる。これからこいつ等を叩きのめせるのだから、俄然やる気は湧く――彼女はそうは考えていないだろうが――きりっと睨み据える銀の瞳はいつもの凛々しさを取り戻していた。
「王子かぶれの三文役者は村ではお断りそうだ」
 赤腕・ロッグルド(c04875)が首を回す。バキ、と重い音が続き、葉巻を咥える口元は笑みで上がっている。
「ほう……つまりお前達は姫の敵、ということか」
 やや後方にてモデル立ちをしている――ようにしか見えない――黒髪の王子が薔薇を顔の前で揺らしながら確認する。彼はちょっと独自解釈が強い気がするが、気障ったらしい立ち振る舞いが絵になる王子である。下半身の白タイツさえ見なければ。
「なれば、全力で潰さねばならぬな……この薔薇に誓って!」
(「やーん、王子イケメン!」)
 ラブの言葉は取り敢えず内に秘められた。バサっと大仰にマントを翻した王子に胡乱な視線を向けるイェフーダー。
「根っこはただの賊だけど物語の王子様みたいね。まぁ、どんな綺麗な顔も頭蓋骨握りつぶしたら綺麗でも何でもないわ」
 さらりと怖ろしい事を言いました!
「お二人とも、彼らはかなりの手練れのようです……! 彼らの死体を捧げれば、姫も喜ばれるでしょう」
 唯一騎乗している――真っ白なサラブレッドである――金髪王子が甲高い声で言う。
 白い肌に紅色の頬、如何にもな美少年はきらきらとした瞳でエンドブレイカー達を見ている。
「オー、随分と若いおじ様達だなぁ」
 目を細めて睨み付けるようにノンノがまじまじ三人を見つめていった。いやいや、と空気に間違いを指摘されて彼女は暢気に笑った。
「違う? 王子様だって? どっちにしたって人に迷惑かける輩はとっちめてやんぞ!」
 そうですね、ナナリアがふと微笑んだ。憂いを帯びた穏やかな表情、その瞳が剣呑な光を宿した。
「悪逆非道の王子様達を通りすがりの旅人が倒しました、と結べばよいのかしら」
 口元から笑みを消して、大鎌を振りかぶり攻撃態勢に入る。エンドブレイカー達がそれぞれに駆け出す。
「野蛮な王子様方にはさっさと帰って貰おうか!」
 イツキが叫びながら、赤髪王子に斧を叩きつけた。

●王子様、その戦い
 ギリギリと鋼が音を立てる。にやりと笑う王子の大剣と斧が噛み合う。
「そォいうなよ。まあお前ら金目のモン持ってそうもないから、こっちとしても迷惑だが」
「お、王子らしからぬ発言するなよ!」
 イツキが思わず突っ込んだ。はっきり言って強盗の物言いだ。
(「妄想の主はなかなか守備範囲が広いみたいだね……」)
 この年の男が典型的王子様ルックでいいのだろうか――否。
「だが僕はおっさんに片足を踏み入れたような王子は断じて許さない」
 とてつもなく真剣な声音でルゥは言い捨て、月光斬で斬り掛かる。力任せにイツキを振り払って、応じる剣戟は力強くルゥの一撃を弾く。
 やはり王子二人を背に立つ状態を崩さねば――背後に回り込んだロッグルドが無防備な襟首を片手で掴むと、徐に投げた。
 滑るように後ろに吹き飛んだ赤髪王子を見て、黒髪王子は顔をしかめる。片手に持つ薔薇をマントで庇い、土埃を罵った。
「粗暴で美しくない戦いだな……薔薇が穢れてしまう」
「てめえも仕事しろ」
 起きあがった赤髪王子は血塗れで笑った。ぐいと拭えば血は広がって更に真っ赤になる。イマージュも出血するものなのか、彼がそういうイメージで構成されているのか。いずれにせよ王子とは思えない笑顔だ。
「はい、お待たせです」
 慌てて金髪王子が錫杖をぐるりと回してヒーリングサークルを展開、赤髪王子の傷を癒――、
「オリャアアア!!」
 もの凄く気合いの入った声と共に金髪王子の顔面にマジックマッシュがぶつかった。
「風槍よ!」
 次に凛としたクリスの声が響き、空に描かれた紋章から風の槍が放たれる。ごうと斬り裂く風は金髪王子を容赦なく苛み、更にナナリアが呪詛魂を叩きつけ、黒く染める。
 極めつけはジェフリーのブレイズアローが、馬を捉えて爆ぜる。
「ガキを苛める趣味は無いんだけどねー」
 言葉とは裏腹に、フルボッコである。
「ひ、卑怯ですよ!」
 うるうると目を潤ませて王子が訴えようとも、エンドブレイカー達には響かない。
「オー、さすが王子なんだな。キラキラピカピカしてんぞ!」
 感嘆するノンノ。それはアナタの投げたマジックマッシュを含め、黒死弾や爆風が風槍に攫われた土埃と一緒になってキラキラ輝いているからです。
「王子はみんなアレ履くのか?」
 ふと気になったのか唐突に問いかける彼女に、ジェフリーは履かない王子の方が多いと思うと答えた。まあ、確信はないけどそうであって欲しいところである。
 アイスブラストが唸り迫り――雷撃とぶつかり砕け散る。自慢げに微笑む表情が鬱陶しい。くるりとステップを踏むように下がったキリィへ追撃を仕掛けようとする王子に向かい、
「王子様、お相手して下さるーう?」
 ラブが声をかけて気を引いた。片手で槍を構える姿から実力は窺い知れぬ――斜め45度くらいの角度で見返してくる王子に、表情をあらため声音を低くする。
「……勝った方が、お姫様を手に入れる。なんてどう?」
 地を蹴り空へと舞う。だが先に黒髪王子を襲ったのは、
「弱者から奪うのは強者の権利よ。だから、もらうわ、命。命かどうか知らないけど」
 イェフーダーのハンマーによる強烈な殴打。瞬間に狙い澄ました一撃が飛来する。
「貴方が落としたのは、この赤い薔薇? 青い薔薇?」
「甘い」
 一瞬柳眉を顰めた王子だったが、雷撃槍をイェフーダーに投げつける。強化された一撃は、膨らんだ雷のように広がって回避を許さない。一方、ラブの一撃は王子のマントを斬り裂く。手応えはあったが、薔薇はしっかりと王子の手の中に。
「ふふ、だめか。じゃあ、これはどうっ?」
「この手の内に姫の愛たる薔薇ある限り……私は負けぬ」
 決めポーズを取りながら片手で鮮やかに槍を捌く王子へ、再びキリィがアイスブラストを投じる。
「すまんな、好みではない」
 薄い笑みは嘲りも含み――スリットを翻し、アイスレイピアと共に踊る。

●王子様、その結末
「手こずらせてくれるねー」
 矢を射る手を止めず、ジェフリーが零す。苦々しい微笑みの下、僅かな焦りがあった。
 落馬したものの、金髪王子はなかなかしぶとかった。錫杖を振り回し、次々にファイアーボールを打ち込んでくる。回避はできないものの、暴走させて回復行動を取らなくなった為、攻撃に集中してくる体力が忌々しい。
「全く、思い込みで強くなれるなら苦労はしませんよ」
 炎に包まれたままナナリアは黒死弾を放つ。鋭い視線でイマージュを見据える彼女にコルリ施療院の紋章が炎を消し去る。
「大丈夫ですか?」
 案ずるクリスに頷き答えようとした横で相変わらず威勢の良いノンノの声が響いた。もうもうと立ち上る煙が金髪王子を包み込み、完全に惑わせる。
 これ以上のない好機。
 ジェフリーが矢の雨を降らせ、クリスがクイーンランサーの紋章で続き、ずたずたに斬り裂かれた王子を優しく包み込んだのはヒュプノスの眠り。
 主の元に星霊が戻った時、金髪王子は影も形もなく消え失せていた。冷たい視線を其処へ注ぎ、ナナリアは囁く。
「妄想はさっさと脳内に帰りなさいな、誰とも知らぬ『姫』の中にね」

 哄笑と共に溜めに溜めたブレイドタイフーンを赤髪王子は放った。正面から喰らったルゥ、イツキ、ロッグルドは竜巻に容赦なく苛まれ、それぞれに苦痛を堪えた。すぐに回復を試みて、詰め寄る。
 言葉にならない咆哮を上げて大剣を振り回しているこれは、本当に王子の幻影なんだろうか。
「派手な一撃、それでこそ王子サマだ」
 ロッグルドが満足そうに笑いながら茶化す。冷静に位置取る事を忘れず、攻撃の機を窺いながら。
 三王子に分散した部隊は入り組んで、流動的な戦場は状況をころころと変えた。赤髪王子は何度吹き飛ばしても前に戻り、その度に吹き飛ばしを繰り返す消耗戦――強固な守りが不意に崩れたのは、金髪王子が敗れ、消えたからに相違ない。
 だが三人はその瞬間に気付かなかった。気付かなくても関係はなかった。
 膨らんだ怒りを抱いて言わせて貰おう。ルゥが真剣な眼差しで睨み付けた。
「白タイツを履いて良いのは幼児と少女と看護士さん(女性)のみだ……っ! それ以外は僕が認めん、絶対認めん。それが伝統の王子スタイルだとしても……だっ!」
 びっくりするような一喝と共に、仕込み杖を振り下ろす。
 弧を描いた斬撃はざっくりと赤髪王子の腕に食い込む。鮮やかに振り抜けば、王子の腕はごとりと落ちて消え去る。
「当たると痛ぇぞ」
 強烈な一撃になると予想したタイミングで、ロッグルドはヴォイドスクラッチを仕掛ける。
 美しい外見が縦に割れ、血が噴き出す。
「沼のお姫様にはカエルの黒焼きでもプレゼントするんだな」
「姫を侮辱するんじゃねぇッ」
 挑発に彼は哮る。そんな姿になっても王子は片腕で大剣を振り回し、斬り掛かって来る。
 姫の為に、仲間の為に。悲しい視線を向けたイツキが掌を向けて叫ぶ。
「あんたのその考え方、嫌いじゃないけどさ……王子様なんだから、みんなに優しくないとダメじゃん!」
 月白、思い切り噛みついてやれ――応じたシルバーコヨーテが幻影に食らいつき、消し去った。

「ふう、結局残ったのは私だけか……情けない」
 妙に冷静な王子が槍をくるりと回して構え直す。何度か斬り合ったにも関わらず傷ひとつ無く、衣類も汚れていない――のはイマージュゆえに。
 エンドブレイカー達を前に、王子は薔薇の香りを楽しむ余裕さえ見せる。
「ここで耐えなきゃ、男じゃないでしょ!」
 消耗を感じさせぬよう不敵に笑って、ラブが前に進む。
「何をしようが『姫』は渡さぬ。この薔薇にかけ……」
「ちょっと待ちなよ、そこの黒髪南瓜パンツ!」
 台詞の途中で白手袋を叩きつけたのはジェフリーだった。
「小道具が無いと王子を気取れないなんて……恥ずかしいと思わない? 夢にまで見る姫がそれで君をナイトと認めてくれるかなぁ。真の勝負に勝ってこそナイト。俺は君の薔薇を、君は俺の帽子を、一撃で射抜けるか勝負だよ!」
 堂々と宣言するものの、彼も先の戦闘で少し疲労している様子だった。だが王子はノリ気なようで「よかろう!」と即答だった。こういうシチュエーションが好きなのだろう。
 対峙する二人、緊張の一瞬。
 ひっそりと応援というか妨害を画策し、イェフーダーは歌を考える。
「金と権力渡せ〜♪」
 いや、それは自分の本音だと、吟じ直す。
「センスないわね〜♪ ……あいつらの服装のセンスも疑うけど、私の作詞のセンスがないわ」
 口ずさみながら振りをつけて踊る。何ともさり気ないゴットパフォーマンス。爆発と共に槍と矢が交錯する!
 駆けつけたクリスがラブに視線を向けると、ウインクひとつ返される。
「お待たせしました! ――援護はお任せ下さい!」
「待ってたわ! ――行くわよっ!」
 紋章から放たれる風槍が横薙ぎに黒髪王子を貫き、それを追ってラブが上から跳び掛かり、脚で首を締め上げた。
 ぐげ、とか、らしからぬ声が聞こえた気がする。
 手応えを感じてひらりと宙を蹴ってラブが離れると、キリィが距離を詰め、流れるように美しい動きでトリニティスラッシュを放ち――頭から両断した。

「うーん、手強い敵だったね」
 身体を伸ばしながらイツキが皆に声を掛ける。色々な意味で、確かに強敵だった気がする。
 決闘の際、相打ち状態で少なからず傷を負い、雷撃で焦げてボロボロになった帽子を拾うジェフリーにノンノが問う。
「オー、そいや、何で帽子なんだ?」
「男は顔で勝負ってね」
 理由なのか否か、彼は笑ってそう答えた。割と苦戦したような気もするが、心は妙に晴れている。
 珍妙な妄想を消し去ったという満足感からだろうか。皆が無傷だからだろうか。キリィは細く息を吐いた。
 足下に落ちている深紅の薔薇を拾い上げる手。
「綺麗なバラに飾りはいらないわ」
 王子の仕草を思い返し、イェフーダーは口元を綻ばせた。

 斯くして、悪逆非道の王子様達を通りすがりの旅人が倒しましたとさ。めでたしめでたし。



マスター:神崎無月 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2011/03/12
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