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ひよこのくにのおうじさま。

<オープニング>

●ひよこのくにのおうじさま。
 萌黄色の新芽を覗かせた梢の合間から優しい光が射して、ひよこの国に爽やかな朝がやってくる。
 朝を告げる小鳥達のさえずりに混じり、ぴよぴよ、ぴよぴよと聴こえてくる可愛らしい声は、もちろんひよこ達の鳴き声だ。ひよこの国があるところは明るい春の緑が萌え始めた森の中、柔らかに降る朝の木漏れ日浴びつつ進んでいけば、森の中に突然綺麗なお城が現れる。
 硝子か水晶みたいな何かでつくられた、きらきら光を透かす、絵本に出てきそうな素敵なお城。
 森の中にぽっかり開けた空間につくられたそのお城は朝の光をいっぱいに浴び、澄んだきらめきを辺りに優しく振りまいている。その姿はとてもとても壮麗だけれども、実のところこのお城、エルフ達の村にある小振りなツリーハウス程度の、かなり、かなり小さなお城だったりする。
 何故ならこのお城が、ひよこの国のひよこ達のお城だから。
 透きとおるきらきらしたお城の中にいるのはは確かに、黄色いほわほわ産毛に包まれたひよこ達。ひよこ達はほわほわふわふわ身を寄せ合いながらお城の中でうつらうつらと眠っていて、時折寝言みたいに『ビヨッ』と鳴いたり、一部の早起きさん達がお城の周りでぴよぴよ遊んでいたりする。
 ちなみにこのお城を作ったのは、すぐ傍にある村のエルフ達。
 要するにこのお城、その村の鶏小屋ならぬひよこ小屋なのだ。
 何故ひよこ小屋がお城なのかと言うと、それはもう村人達のひよこ愛ゆえ。
 可愛いひよこ達への彼らの愛情は伝統的かつ非常に深いもので、そのひよこらぶっぷりに敬意を表し、近隣の村のひとびとがこの村を『ひよこの国』と呼んでいるくらいなのだ。
 深い愛情をたっぷりそそがれたひよこ達が幸せに暮らすひよこの国。
 ある朝そこに――王子様達がやってきた。

 朝の木漏れ日降る森の中、美しい白馬を駆りつつやってきたのは三人の王子様。
 燃え立つような赤毛、月光めいた白銀の髪、新緑を思わす緑の髪。其々の頭上には小さな王冠を戴いて、銀狐の毛皮で縁取られたマントをなびかせた彼らは、行く手にひよこのお城を見出した。
「ハハハ何だあのひよこ達可愛いな! きっと姫も気に入ってくれるに違いない!」
「むっ、お城の美しさも中々のものですよ。あの清らかな輝きは我らが姫にこそ相応しい……!」
「ククッ、ならば話は早い。ひよこもお城も纏めてかっさらっちまえばいいのさ」
 最後にそう言った緑の髪の王子がニヤリと笑ってみせれば、
「ハハハ頭いいなお前!」
「むっ、流石ですね緑王子」
 赤毛の王子も白銀の髪の王子も大絶賛。頭脳はちょっと残念らしい。多分緑も。
 もし邪魔者が現れるならこのナイトランスの錆にしてやると長い騎士槍を掲げてみせ、彼らはお城とひよこを『姫』とやらへの貢物として持ち帰るべく突き進む。しかしひよこ達はともかく、小さいとはいえツリーハウスサイズのお城をどうやってかっさらっていく気なのか。
 もしかすると何か秘策があるのかもしれないが、そこまで深く考えていないのかもしれない。
 何故なら――。

●さきぶれ
「何故ならその王子様たちがね、誰かの妄想から生まれたイマージュのマスカレイドだから……!」
 酒場のテーブルにぱんと両手をついて、扇の狩猟者・アンジュ(cn0037)がどーんと言い切った。
 最近になって突然世界樹から現れた数多のイマージュマスカレイド王子達。ひよこの国のひよことお城に狙いをつけた彼らもその一部だ。
 姫への贈り物のためとエルフヘイム各地で行われている彼らの略奪を見過ごすことはできないし、何より彼らがマスカレイドであるならば、必ず倒さなければならない敵でもある。
 どうかお願い、力を貸して、と金の瞳の狩猟者はエンドブレイカー達の瞳を見つめた。
「アンジュと一緒に、このマスカレイド王子達を……倒しにいこう?」

「王子達は三人ともナイトランスを携えてるのね。んで、能力も全員ナイトランスの魔法剣士って感じ。それぞれ使う技は違うみたいだけど、特殊な技とかはないみたい」
 恐らく正面衝突することになるだろう。
 現場に到着できるのは当日の朝、王子達が現れる直前のことだとアンジュは語る。
「んとね、ひよこのお城の前で迎撃することになると思うのね。お城は柵で囲まれてるから、その柵の手前かな。森の中って言っても開けた場所だから、戦うのに邪魔なものはないみたい」
 戦いが始まっても、王子達は贈り物にするためのひよこやお城を傷つけないよう気を配るだろう。
 ひよこ達の安全については然程神経質になる必要はない。
 が。
「問題はね、戦ってる間に村人さんとかが来ちゃうってことなんだよ……!」
 ひよこの世話をしに来る村人や、ひよこと遊びに来る村人や、ひよこを愛でに来る村人や、ひよこと遊びに来る近隣の村のひとびとや、ひよこを愛でに来る近隣の村のひとびと……朝っぱらからなんでこんなにいっぱい来るんじゃー! って叫びたくなるくらい来るらしい。
 足止めできる人数ではないし、村人達を邪魔者とみなしたマスカレイド王子達が彼らを無差別攻撃しかねないというのが頭の痛いところ。
「だからね、アンジュ考えたの。だったら王子達に、アンジュ達が一番邪魔者だって思わせればいいかなって。ひよことお城が欲しければ我らを倒して行け! みたいに言ったりして」
 彼らは王子だ。ゆえに、敵が王子であれば一層敵愾心を燃やしてくれるだろう。多分。
 だからねお願い、とアンジュがテーブルに身を乗り出した。
「アンジュと一緒に、ひよこの国のひよこ王子になろう?」
 要するに、マスカレイド王子の注意を惹きつけるため、皆で『ひよことお城が欲しければ、我らひよこ王子を倒して行け!』とやるのが一番効果的と思われる。らしい。
 敵はイマージュであるがゆえか物事を深く考えないたちらしく、年齢性別を問わず王子を名乗っても問題ないはず、とアンジュは続けた。女性だけど王子なんだな、ご老体だけど王子なんだなと向こうで勝手に納得してくれるだろう。
「んでね、もういっそのこと思いっきり派手にやっちゃうといいかなぁって。やってきた村人さん達が『旅芸人のパフォーマンスかな? ならちょっと眺めておくか』みたいに見守ってくれるくらいに」
 手が空いてるひとがいれば盛り上げるの手伝ってくれるようお願いしてみるね。
 そう続け、アンジュはふと顔を綻ばせた。

「あのね、ひよこ王子になってマスカレイド王子を倒して、また逢おうね」
 ひよこの国のひよこの王子様。
 ひよこ王子の戦いなんて記憶を共有できるのは、世界中探してもきっと、ここにいるみんなだけ。
 何時かこの日のことを、思い出として語り合ってみたいと思うから。


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参加者
スタイリッシュひよこ・ナハト(c00101)
ピヨピヨ・チマ(c00834)
ピヨニスタの王子・バーナード(c03566)
うさぴよ王子・ソフィア(c04577)
ひよこさん絶対防衛なのです・ティマ(c05381)
ひよこだいじに・アルフェッカ(c06559)
はなぴよ王子・シュリティエ(c13268)
ひよこプリンス・センリ(c16477)
ひよこさんとひだまり・フィズ(c17305)

NPC:扇の狩猟者・アンジュ(cn0037)

<リプレイ>

●ひよこのくにとおうじさま。
 朝の木漏れ日揺れる森がぽっかり開けた場所にあるのは、光を透かしてきらきら輝く小さなお城。煌きに満ちたお城と、お城の中でふわふわほわほわ身を寄せ合うひよこ達を護るために馳せ参じたエンドブレイカー達、もとい、ひよこ王子達が城の前に到着したのは、敵が現れる直前のことだった。
 敵は白馬に跨りナイトランスを携えて突き進んでくるイマージュマスカレイドの王子達、彼らの前に可憐なバルーンワンピースに身を包んだ二人のひよこ王子が立ちはだかる!
「ひよこさんもひよこさんのお城も、このはなぴよ王子がお渡ししません!」
「ひよこの国の平和を乱す奴は、このうさぴよ王子が許さないんだから!」
「何っ!?」
 斜め付けした王冠をきらり輝かせたはなぴよ王子・シュリティエ(c13268)に、鮮やかな赤のマントを翻したうさぴよ王子・ソフィア(c04577)が名乗りをあげれば、敵王子達も思わず足をとめる。
「そう、私たちはひよこ王子! ひよこの国の平和は私たちが守ります……!」
「ハハハ、俺達王子には王子でないと敵わないってわけだな!」
 風に靡く赤マントにひよこエンブレムを煌かせたピヨピヨ・チマ(c00834)が凛々しく宣言すれば、あっさり赤王子が納得してくれた。そこにすかさず現れたピヨニスタの王子・バーナード(c03566)が悪魔っぽいひよこシルエット入りマントをばさぁと翻して立ち塞がる。
「偉大なるこっこ様の同胞を拐かそうとは浅はかな! その悪事、我らひよこ王子が許しません!」
「ハハハ誰だよこっこ様って」
「ふ。こっこ様とは、私の中にいる……巨大ふわもこひよこの悪魔のことです!」
 バーナード王子のはったり攻撃!
「むっ、それはなかなか強敵ですね!」
「ククッ、相当腕の立つデモニスタと見た。相手にとって不足はない!」
 敵王子達は心の底から信じ込んだ!
 思いきり敵の気を惹いたその時、森の中から村人達が現れる。
 何だなんだと興味津々な彼らを制したのは夜色の髪の騎士、旅芸人の見世物だが危険な演出があるため警備しているという彼の説明に、エルフヘイム騎士団ナイス! と心の中でぐっと拳を握り、ひよこだいじに・アルフェッカ(c06559)は堂々たる声音で宣戦布告した。
「我々をひよこ王子と知って尚、民を略取しようとするならば……成敗する!」
 ひよこの国のお城の前で、こうして戦いの幕は切って落とされた。
「この勝負、勝ったほうが真のひよこ王子だな! いざ尋常に、勝負!」
「勝つのはオレ達だけどな! てなわけで真のひよこ王子、センリ! お前らをぶったおす!!」
 まっさきに仕掛けたのはスタイリッシュひよこ・ナハト(c00101)とひよこプリンス・センリ(c16477)、伝統的王子様スタイルで決めたナハトが提灯袖の腕で揮う赤銅の大剣が狙うは白王子、がっちりと一体化した白馬もろともにどがんと斬り下ろすと同時、腕を獣化させたセンリが襲いかかる。
 敵の脇腹をざっくり裂いて思いきり殴り飛ばせば、白王子が幻の薔薇を散らしつつ騎士槍を一閃し、センリの精気を吸い上げた。――が。
「さあお行きなさい、しろいふわもこさん……!」
「ぶはっ!?」
 華麗に跳ねたシュリティエの星霊ヒュプノスがそこにぼふんと眠りの霧を吹きつける。
「ククッ、加勢してやろうか白王子」
「……さて、そんな暇がお前にあるかな?」
 緑王子の目を惹くようにふぁさりと舞ったのはふわもこファーに縁取られた青マント、胸元のひよこ編みぐるみがチャームポイントなアルフェッカが魔曲を奏でれば、うっかり緑王子も聞き惚れる。
 合わせて奏でられるのは語り部の女が手にするキタラ。
「ひよこ王子は、か弱いひよこを守る矜持を持つ者よ……!」
「おお、かっこいいな!」
「行けー! ひよこ王子!!」
「ひよこさんはティマ王子の大切な臣民なのですぴよ! 欲しければ私を倒していくぴよー!!」
 陽気な曲で盛り上げられた村人の声援を受け、ひよこさん絶対防衛なのです・ティマ(c05381)が一気に緑王子へと駆けた。仕込み杖から抜き放った刃が綺麗な三日月を二度描く。
 油断したぜと緑王子が騎士槍を掲げれば、ずがんと唐突に雷が落ちた。雷光が迎撃の陣を成した瞬間、ティマめがけて赤王子が突っ込んでくる。
「ハハハ、こっちも行くぜ!」
 盛大にオーラを噴出させつつぶちかまされたナイトランスが、ティマの王冠正面にででんと飾られたひよこぬいぐるみをずざっと掠めた!
「ぴよさんは大切なこの国の宝物なのです! いじめるのはフィー王子が許しません……!」
「ぎゃー!?」
 この光景に憤激したのはひよこさんとひだまり・フィズ(c17305)、風にひらりんと躍ったマントの中から飛び出したファルコンが赤王子をごりっと抉り、くるりと身を翻してソフィアを貫く。
 力を得たソフィアから高貴なオーラが溢れだした! 気がする!!
「あんたの相手はこっちよ赤い王子様! まずはこのうさぴよ王子を倒してから行くことね!!」
 うさぎにひまわり、そしてひよこ。
 可愛い落書きをされた大剣がぶんと凶悪な唸りをあげ、赤と緑の王子を薙ぎ払って吹き飛ばした!

●ひよこのくにでおうじさま。
 怒涛の攻勢と熱演の甲斐あって、敵王子達はがっつりひよこ王子との戦いに釘付けとなっていた。ひよこと遊びにきたはずの村人達もすっかりこの『パフォーマンス』見物に夢中になっている。
「おっと! 応援は離れてしてね。ひよこ王子とのお約束だ☆」
「ひよこ饅頭〜、ひよこ王子饅頭はいらないでヤンスか〜?」
 近くで見たいと身を乗り出した子供は悪戯っぽく片目を瞑った青年がやんわり制して、通りすがりの饅頭売りがすかさずひよこ王子饅頭で気を惹いた。とどめは細工師お手製の王冠とマント付のひよこぬいぐるみ。なんと今なら先着で、
「ひよこのつるぎも付いてくる!」
「ひよこのつるぎ!?」
 これに大きく反応したのは扇の狩猟者・アンジュ(cn0037)、後でやるからと言ってやれば、彼女の鷹が気合充填200%で宙を翔けた。敵に突撃した鷹が舞い戻ってチマを貫く。
「今だよ! 新チマ王子!!」
「はいっ! 大切に育てたキノコさん……ひよこさん達のために捧げますっ!!」
 続け様に黒霊剣の雨を降らせたバーナードの声に応えて、先日誕生日を迎えたばかりのぴかぴか8歳児・新チマ王子がマジックマッシュを放つ! 朝の光の中つやつやぷりぷりのキノコが舞い、白と緑王子を幻覚に巻き込みめいいっぱい惑わしの煙を噴き出した!
「むっ、びよぴよがぴよぴよ回ってますよ!?」
「ククッ、愛いやつじゃないか、このぴよぴよぴよぴよ」
 思いきり惑わされまくる白王子と緑王子。だが。
「ハハハ余裕だな二人とも! この調子でひよこもお城も頂きだ!!」
 超前向きに解釈した赤王子が残像を連れて突撃してくる。繰り出された騎士槍の狙いはソフィア、鋭い切っ先が彼女の肩を貫くが、
「頂かせませんっ! わたげさんはひよこさんのガーディアンなのですよー!!」
 わたげさんことファルコンを放ったフィズがくるりんと宙に舞い、残像の一撃を見事に蹴り飛ばした。鷹がばっさり赤王子を裂いた隙にソフィアも体勢を立て直す。
「行くよ! ひよこに祝福されたもっふもふな一撃!」
 瞬時に真白なもふもふに覆われた魔獣の腕が赤王子を殴って喰らいつく。ぴよぴよ惑わされつつも緑王子が赤に加勢しようとしたが、それを見逃すひよこ王子はいない!
「そうはさせませんぴよ!」
 即座に向かってきたティマに標的を変えた緑が、裁きの雷で彼女を打ち据えた。挫けませんぴよと唇を引き結び、円月の構えを取った少女は弦月の斬撃を叩き込む。
「今回復しますね、ティマ王子!」
 抱いた竪琴が微かに震えるのは心に共鳴しているためか。そっとその胴を撫でたアルフェッカは、王子らしく毅然と前を見据え、ひよこを護る仲間のために弦を爪弾いた。
 心震わすアルフェッカの力強い旋律に包まれ、少女の傷が癒えていく。
 再び打ち下ろされた雷をひよこ王子の太刀が跳ね返した!
「白馬パーンチぴよ!!」
 反撃を叩き込むと同時、ティマは緑王子へと真白な羊の星霊を放つ。
 だがその瞬間、幻の薔薇で力を溜めた白王子が一気にその力を解放した。
 裂帛の気合をこめたナイトランスから繰り出される連続の突きが、幾つもの巨大な衝撃波となって襲いかかる。その標的は――ナハト!
「力を貸してチマ王子!」
「はいっ! この朝摘みライフベリーさん、ナハト王子に贈ります……!」
 同志のためなら丹精こめた果実も惜しみません! きりっと表情を引き締めたチマがぽぽぽぽーんと放ったライフベリーはアンジュが招いた癒しの風に乗り、ナハトの深手を一気に癒す。
「助かったぜ! っしゃ、竜巻、来い来い!!」
 負けてらんないと思いきり力を溜めてナハトが大剣を振るえば、ごうと唸りをあげた竜巻が白王子を呑みこんだ。マントを煽る風にリボンを躍らせ、シュリティエが眠りの羊を向かわせる。
「どうぞお覚悟、なさいませ!」
「さあ、こっこ様の怒りの嘴につつかれなさい……!」
 敵の正面に跳ねた羊が強烈な睡魔を呼んだ瞬間、バーナードの力が解き放たれた。どがががっと降りそそぐこっこ様の嘴――と言う名の邪剣に貫かれ、遂に白王子の仮面が砕け散る。
 同時にぼふんと煙を噴き出して王子が消滅する様に村人から驚きの声があがったが、
「倒れた敵役は消滅する……素晴らしい演出効果だ!」
 筋骨隆々とした男がすかさずフォロー。
 けれど戦況はまだまだ予断を許さない。
 乱舞した邪剣は緑王子の騎士槍に弾かれ、迎撃雷電陣がバーナードへ反撃の雷をぶっ放した。
「悪くないランスさばきだが少し甘いな。オレが真のナイトランスさばきを見せてやる!」
 即座に声を張るのは緑髪の王子に対抗するかの如く鮮やかな緑の衣装を纏ったセンリ、それまで獣化させていた腕でばさりとエメラルドグリーンのマントを翻し、ナイトランスで鮮烈な突きを放つ。
 迸った衝撃波が緑王子と雷光の陣を貫通すれば、眩い光とともに迎撃雷電陣が弾け飛んだ。

●ひよこのくにのおうじさま。
 背後からぴよぴよと愛らしいひよこ達の声が聴こえてくる。恐らくこの騒ぎで眠っていたひよこ達も目を覚ましたのだろう。今日も彼らに幸せな一日を過ごしてもらうため、絶対に負けられない!
「見て! ひよこを愛する王子の勇気が頂点に達した時訪れる、あれこそがハイパーモード……!」
 ほかほかコーンスープを振舞っていた女が声をあげれば、皆の視線が一斉にナハトへと注がれた。そう、溜めに溜めた彼のひよこ愛、もといハイパーが遂に臨界へと達したのだ!
「ひよこ達、我らの勇姿とくとご覧あれー!」
 駆ける背に靡く派手な赤マントにはひよこ刺繍、ひよこへの熱い想いを背で示し、ナハトは両手に構えた赤銅の大剣を一刀両断の勢いで赤王子へと叩きつける。そのままの勢いで幾度も斬撃を叩き込めば、赤王子が白馬ごと大地へ倒れ込んだ。彼の勇姿に熱い声援が降りそそぐ!
「きゃーひよこ王子様かっこいいー!」
「素敵、流石食べごろ……!」
「食べごろっ!?」
 思わず振り返ってみれば、物凄く見覚えある銀髪の少女が村人に混じって饅頭をもぐもぐしていたけど気にしない!
「ククッ、やるなひよこ王子!」
 満身創痍ながら何とか立ち上がった赤王子を一瞥し、緑王子が騎士槍を掲げれば、ばりばりと電光を発した雷がその切っ先へと集中する。
「こっちもハイパー溜める前に倒すぴよ!」
「ああ、全力で行くぜ!」
 ぽむっと跳ねたティマの眠りの羊が緑王子の夢を喰らい、大きく息を吸い込んだセンリが激しく燃え盛る火炎を噴き出した。
「ひよこへの愛ゆえに、全力で勝たせて頂きます!」
「そう――我らと、ここにいる皆のひよこ愛ゆえに!」
 迸る火炎の中を翔けたチマのマジックマッシュが盛大に爆ぜ、ひよこ雪崩の幻覚を生む。黒玻璃の瞳を細め、アルフェッカが竪琴に指を滑らせた。愛するものを奪われるなど、皆にそんな想いをさせてなるものか。
 切なげ旋律が深く大きく響き渡れば仮面が砕け散り、煙ともに緑王子が消滅した!
「ハハハ、俺は一人になっても負けはしない!」
 仲間は消え、己は満身創痍。それでもめげることなく赤王子がソフィアへと突進する。爆ぜるような一撃が少女を貫いたが、すぐさま吹き渡った優しい風が彼女の身体を包み込む。
「風さん、風さん! うさぴよ王子を治して下さいー!!」
 両手を天に掲げたフィズが招くのは命の息吹に満ちた海の風、瞬く間に傷を癒された少女は素早くシュリティエへと視線を走らせた。
「行くよ! はなぴよ王子!!」
「ええ! うさぴよ王子様!!」
 少女達は仲良く手を繋ぎ、赤王子へと立ち向かう!
 必殺技の予兆を感じて、金髪の娘が村人達を盛り上げた。
「さあ、いよいよ物語もクライマックス!」
「今こそ皆さんのひよこらぶパワーを注ぐ時……!」
 ひよこ着ぐるみつきの仔豚を小脇に抱えた青年がひよこの星霊よろしく皆を促せば、これで応援をと空色映した銀髪の娘が村人達に素早く王子様なりきりグッズを配る。
 素朴なマントと王冠を身に着けた村人達が天に手を翳せば、ひよこらぶパワーが降りそそいだ!
 ――気がする!!
「「必殺! うさはなぴよぴよあたっくー!!」」
 横薙ぎに揮われたシュリティエの杖からは魔法の蜘蛛糸が溢れだし、赤王子を絡めとってぐるぐる巻きに縛り上げる。同時に繰りだされたのはソフィアの獣腕、蜘蛛糸を斬り裂きつつ乱舞した獣爪が赤王子の仮面をも粉砕した!
 ぼふんと弾け、赤王子が消滅する。
 こうして――戦いはひよこ王子達の大勝利で幕を閉じた。
「みんな! ありがとうー!!」
 村人達の大歓声にバーナードが大きく手を振り応える。
 感謝の気持ちは村人達へ、そして、勿論――支援に駆けつけてくれた、同胞達へ。

 澄んだ煌きを抱いた小さなお城と、ほわほわした陽だまり色のひよこ達には傷ひとつなかった。
「フィーも一緒に遊んでもいいですか……?」
『ピヨッ!』
 おずおずとフィズがクッキーを差し出せば、ぽてぽて駆けてきたひよこが嬉しげにそれを啄ばんだ。見て見てと声を弾ませたソフィアの肩には肩乗りひよこ、可愛いと顔を綻ばせたシュリティエが屈んで両手を差し出せば、ふわふわのひよこがちょこんとその中へおさまった。
「オレ、ひよこまみれになってみたい……!」
 期待に瞳を輝かせたセンリが城へ入ろうとすれば――起きだしてきた数多のひよこが雪崩となって溢れだしてくる。
 ぴよぴよ、ぴよぴよ、ぴよぴよぴよ。
「ちょ、ちょっともふもふぴよぴよしたい……!」
 ほわほわふわふわ、あたたかなひよこの海へとナハトが飛び込んでいった。
 もっと勢いがあればひよこの海で消息を絶てたかもしれないけれど、それはまたいつかの話。
 今はただ、護りとおしたひよこの国で、幸せな、幸せなひとときを。



マスター:藍鳶カナン 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:9人
作成日:2011/03/12
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