ステータス画面

炭焼き村の受難

<オープニング>

 パチパチと、火にくべた薪が乾いた音を立てていく。
「ふぁ……ぁぁ」
 炭作りの為に用意された小屋は、焚口が側にあるおかげで暖かく快適だが、話し相手もいない真夜中では、その暖かさが余計に眠気を誘う。
 今焼いているのは村の唯一の産業と言える木炭で、これは市場に行ってもそこそこの値で取引ができる。
 その為に居眠りなどしていられないが、今夜は村を覆う森も静かで、当番の男を襲う眠気もいつも以上に強力だった。
「んーいかんな、眠気覚ましに空気でも入れ替えるか」
 そう言って、締め切った木製の扉を開けると、目が合った。
 いや、『目が在った』と言うべきだろうか?
「は?」
 驚きにに声を失った男の喉を、正面から伸びた長い鞭が一気に締め上げた。
 彼が最後に見たものは暗闇に並ぶ、無機質な昆虫の眼だった。

「インセクテアと呼ばれるバルバが、村を襲っているという話を聞いた事がないか?」
 集まったエンドブレイカー達の前で、太刀の群竜士・キルシュ(cn0098)はそう切り出した。
 エルフヘイムの遥か樹上で、インセクテアを総べていたマスカレイドが、エルフヘイムから逃走した結果、統制を失った一部のインセクテア達が、村を襲撃するエンディングが見つかっている。
「今回見つかったエンディングも、内容からインセクテアの仕業と思われる」
 市場に炭を売りに来ていた若い男から、今回のエンディングは発見された。
「詳しく話を聞いてみた所、彼の村はとても小さいらしい」
 そこで暮らす人々は、森の恵みと、炭焼きで生活をしているらしい。
「私も彼の話を聞かなければ、村の存在を知る事も無かっただろう」
 訪れる旅人も無い村は、塀や生け垣などもなく、寄り添うように家々が並び、街道へと続く道も、半ば獣道のような有様だ。
「丁度、彼は村へ戻ると翌日には炭焼きの夜番となるらしい、都市警備隊の巡回とでも言って、共に行けば迷う事も無いだろう」
 彼をそのまま行かせれば、間違いなくその夜に襲われ、村も一溜りも無いだろう。
 何より問題なのは、彼を含めて村がひどくのんびりとしている事だ。
「話をしただけで、土産まで持たされるような村だ……」
 キルシェが炭の入った袋を掲げながら、ため息を吐く。
「村人の命を救う事も大切だが、もう一つ守ってもらいたい物がある」
 それは? と、誰かが問うと。
「炭焼き小屋だ」
 インセクテアが現れる、まさにその場所に建てられた小屋は、村の生命線だ。
「村を救えるのはエンドブレイカーしか居ない、頼むぞ」
 そう言って、キルシェはエンドブレイカー達を送り出した。


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参加者
黄昏の鎮魂歌・ナユタ(c00026)
まだまだ修行不足な・アクロ(c00707)
青空の宅急便・ユースティリア(c01222)
氷雪華・サクラ(c01646)
那由他刀・ルーン(c01799)
金鎖の星霊術士・キサ(c01950)
月夜の刃・ライズ(c02228)
虚影・ヒュレイド(c06136)
黄色の国から来た・キィ(c14890)
十五夜草の追憶・シヲン(c18720)

<リプレイ>


 街道から一歩踏み込めば、そこは既に獣道と大差ない悪路が続いていた。
 道に慣れた者がいなければ、いつ道を見失ってもおかしくない。
 そんな道を列になって歩いていた、エンドブレイカー達の視界が急に開けると、そこには小さな集落の姿があった。
「お、みんな。都市警備隊の人が見回りだってよー」
 先頭を歩いていた男が声を掛けると、村の入り口で野良仕事をしていた男が顔を上げた。
「都市警備隊って、なんでまた?」
 作業を止めたついでとばかりに、煙草に火をつけた村人がエンドブレイカー達を見回す。
「えっと、見回りですよ。見回り」
 まだまだ修行不足な・アクロ(c00707)が気楽に応えると、村人はそれで満足したのか、手を振って作業に戻っていく。
 その手元を十五夜草の追憶・シヲン(c18720)が、覗き込んだ。
「穏やかで素敵な村ですね。どういったことをされているのですか?」
 ぷかり、と煙を吐き出すと、村人は照れくさそうにシヲンの言葉に答える。
「炭焼きくらいしかねぇな。ま、せっかく来たんだ。のんびりして行くといいさ」
 彼の言葉通り、小さな村は平穏そのものだった。
「最近は物騒で、よく夜にバルバが現われるんですよ」
「へぇ、物騒な話だねぇ」
「あぁ、だから夜はなるべく出歩く無い方がいいな」
 村の中を歩きながら、見かけた人に向かって話しかける那由他刀・ルーン(c01799)の言葉に、他人事のような反応を示す村人へ、月夜の刃・ライズ(c02228)が外出を控えるようにと、釘をさす。
「あのね、夜になると怖いバルバが出てくるんだ。僕達はみんなが襲われない様に見回りをするから、暗くなったら、外に出ないでくれるかな?」
 子供達を前にして、金鎖の星霊術士・キサ(c01950)が丁寧に語りかけると、子供達は素直に頷いた。
「外にでちゃだめっだね! 外にでちゃだめっだね!」
 黄色の国から来た・キィ(c14890)も、身振り手振りで村人へ事の重大さを伝え、フードを目深に被った虚影・ヒュレイド(c06136)も、キィの後ろで頷く。
「あぁ、外にでてはダメだ」
 ヒュレイドの迫力に押し切られるように、戸惑いながらも村人が頷く。
「えっと、最近夜は危ないですから」
 そんな様子を横目にしながら、黄昏の鎮魂歌・ナユタ(c00026)も、村人への注意を呼びかける。
「あはっ、いい眺めー♪ えーと、炭焼き小屋は……っと」
 高い木の上へと登った、青空の宅急便・ユースティリア(c01222)が村を見回すと、村の入り口と反対側に高く薪が積まれた小屋が見えた。
 ユースティリアの登った木の下では、彼女の見た景色を元に氷雪華・サクラ(c01646)とシヲンが地図を描いていく。
 そうしている間に、村での一日はあっという間に過ぎていくのだった。


 翌日、村を訪れたエンドブレイカー達は、日暮れ前の炭焼き小屋へと集まっていた。
「へぇ、良くできてるねっ」
 サクラとシヲンの描いた地図を見て、ユースティリアが歓声を上げる。
「地図は十分ですね。薪の準備も?」
「問題ない」
 巡回の用意を整えたキサの問いかけに、ライズが短く答える。
「それでは、始めるか」
 ヒュレイドがそう言うと、集まったエンドブレイカーは、小屋の前にアクロ達3人を残し、それぞれの分担へと散っていく。
「おや、もうすぐ暗くなりますよ?」
 そこにやって来た夜番の青年が、シヲンに向かって声をかける。
「警備の巡回です。お仕事がんばってくださいね」
 彼女が愛想良く答えると、青年はニコニコしながら小屋へと入っていった。
 やがて、周囲が暗くなるとルーンが用意したランタンに火を灯す。
 赤い光が暗闇を照らし、ルーンが樹上を見上げる。
「……来たっ!」
 ルーンの強化された目が、降下してくるインセクテアの姿を捉え、彼の発した気配で、周囲の仲間もその襲来を一斉に察知すると、降り立ったインセクテアに向かって、アクロが素早くナイトランスを向ける。
「こいつを、食らえっ!」
 上空へと放り投げたナイトランスが呼び出した雷槍が、集まり出したインセクテアを貫く。
「んー……予想通り、いえ、予想以上に虫さんですねー」
 稲光に照らされ姿を露にしたインセクテアへ、シヲンがそう言いながら氷柱を連続して打ち出す。
 雷槍と氷柱に貫かれたインセクテアがよろめき、足元に仕掛けられたトラバサミに捕われると、そこで力尽き地面へ倒れていった。
「すでにこの場は我が領域、攻めること、逃げることかなわず」
 仕掛けた罠の成果を見て、ルーンがニヤリと笑う。
 だが、インセクテア達はその言葉に躊躇すること無く、3人めがけて一斉に襲い掛かってきた。
「ジャマダ!」
 小屋を守るように立ったアクロへ、インセクテアの鞭が絡みつき、その腕を締め上げると、別の一匹がびっしりと刃を生やした鞭でアクロの体を引き裂く。
 そのすぐ隣では、細身の剣を構えたインセクテアがシヲンへと、その刃を振り下ろす。
「シャァァッ」
 かろうじて、その一撃受け止めたシヲンの胴へ、電撃を帯びた二本の鞭が横から打ちつけられる。
 そしてルーンへも、残りのインセクテアが殺到し、十字を描く剣撃と刃の生えた鞭がその体を襲う。
「くっ、数が多いな」
 ルーンの呼んだ風が、仲間達の傷を癒す。
 だが、依然として倍以上の敵に囲まれ、劣勢には変わらない。
「いけぇっ!」
 目の前に立ちふさがるインセクテアへ、爪を構えたアクロの回転突撃がインセクテアの体を抉るが、着地した彼めがけて打ち込まれる鞭が、お返しとばかりに、アクロの傷口をえぐる。
 手数の違いから、じりじりとエンドブレイカー達は、背にした小屋の方へと押し込まれ、思わず武器を握る手に力がこもる。
「敵襲ー!」
 その時、剣を構えたインセクテアを、急降下してきたユースティリアの回転突撃が打ち抜いた。
「今日は大盤振る舞いしちゃうよ、遠慮せずに貰っていって」
 ナユタとヒュレイドの呼び出す邪剣の群れが、インセクテア達の体を次々と切り裂いていく。
  村の方から駆けつけたエンドブレイカー達が、傷ついた仲間を守るように、武器を構えた。
「反撃だね!」
 キィの言葉に頷き、集合したエンドブレイカー達は、一斉に反撃に転じたのだった。


 仕込み杖から刃を引き抜き、周囲を囲むインセクテアへと走り出したライズの姿が、残像を生み出す。
「どこを見ている」
 残像に翻弄されるインセクテア達を、フェイントを織り交ぜたライズの刃が深々と斬り裂く。
「よーし、いっくよー!」
 生まれた隙を逃さず、飛び上がったユースティリアが次々と跳ね回ると、その度にインセクテアの体に傷が刻まれていく。
 二人のエンドブレイカーの連撃に、インセクテア達の攻め手が緩むと。
「今、治します」
 暗闇に浮かび上がったキサの癒しの魔法円が、先にインセクテアと戦っていた三人の傷を癒していく。
「冬の嵐に耐えられますか?」
 そう言ったサクラが生み出した冬の嵐が、インセクテアを襲うと、強力な冷気にインセクテアの足が凍りつく。
「お返しだぜ!」
 氷に足を取られた一体に、負傷から回復したアクロがきりもみ回転しながら、跳びかかると、突き出した爪に傷口から大きく体を抉り取られたインセクテアが仰向けに倒れていった。
「それっ!」
 それに続いて、ルーンの放つ捕縛網がインセクテアを捉えると、それを狙ってキィが斧を構える。
「あったれー」
 投げつけられた斧は、鋭く回転しながらインセクテアの胴を叩き割り、二つに折れるような格好で、また一体インセクテアが倒れる。
「キサマラッ!」
 叫びながら、剣を持ったインセクテアが、再びシヲンへと襲い掛かる。
「リーダーさんが居なくなったからって、あまりオイタしちゃだめですよ?」
 だが、横斬りの一撃はシヲンのアイスレイピアに受け止められた。
「そこだっ!」
「いきます」
 再度放たれた、ナユタとヒュレイドの邪剣がそのインセクテアへと突き刺さる。
 体中に穴を開けられ崩れ落ちるインセクテア、そのすぐ側をライズが駆け抜けていく。
「倒れろ!」
 残像を使ったフェイントで生まれた隙に、ライズの刃がインセクテアを切り捨てた。
「お願いします」
 さらに、弱っているインセクテアへ、キサの元から飛び出した星霊バルカンが、火炎弾を前脚から打ち出すと、真っ赤な炎に包まれてインセクテアが倒れていく。
「ラストっ!」
 ユースティリアの投げたナイフを、最後のインセクテアが鞭で弾く。
「これで、終わりです」
 足を止めたそこを狙って、呼び出されたサクラが吹雪がインセクテアの体を凍りつかせる。
 氷の中に囚われて、インセクテアはその動きを止めたのだった。


「ここの炭でお肉とか焼いたら美味しいのかな?」
 炭がたくさん入った袋を覗き込み、ナユタが首をかしげる。
「さて、どうだろうな?」
 ライズも答えながら炭の袋を背負い直す。
「きっと美味しいよ、だって特産だものっ」
 村の方を振り返りながら、ユースティリアも応えた。
 村を救ったエンドブレイカー達は、そのお礼にと大量の炭を贈られていた。
「キィちゃん食べ物がいいな」
 袋を見下ろすキィの視線の先に、胡桃の実が転がっているのが見えた。
「わ、クルミだね! クルミだね!」
 嬉々としてその実を拾うキィの姿に、周囲から微笑がこぼれる。
「今回も無事でよかったです」
 お守りを手に、キサもホッとしたように息を吐く。
 彼の言葉通り、インセクテアは撃退できたし、炭焼き小屋や村も無事だった。
 その証拠の炭の重さを確かめながら、エンドブレイカー達は帰路へとつくのであった。



マスター:大亀万世 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2011/03/16
  • 得票数:
  • カッコいい7 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし
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