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大根脚よ舞い踊れ

<オープニング>

●収穫の日
 村はずれの小屋からひとりの男性が出てくる。
 朝の空気を感じながら大きく伸びをし、小屋の裏の方へ目をやった。
「さーって、そろそろ収穫するかなぁ」
 彼のささやかな楽しみ、家庭菜園である。
 本業の合間に趣味で土いじり。これが結構面白く、今では少ないながらも野菜を作っている。
 ちょうどそろそろ大根が収穫時期なのだが、菜園の大根を見た瞬間に彼は目を丸くした。
 1本だけだが、異様に成長した大根があったのだ。
「しかしなんだってこんなに大きく……」
 そう呟きながら青年は菜園に足を踏み入れた。
 ……だが、それがいけなかった。
 ボコボコボコッ!
「えええええぇぇぇ!?」
 突如土が迫り上がり、巨大大根が飛び出してきたのだ。
 つられるように、他の大根も次々に土から飛び出してくる。
 見れば大根たちは綺麗な根分かれをしている。つい見とれてしまいそうになるがそれどころではない。
「ああああ! 俺の菜園があぁ!」
 大根たちがその美脚でもって駆け回り跳ね回り菜園で暴れ始めた。
 土がめくれ、作物が踏み荒らされていく。
 青年は、愛情込めて育てた作物たちが蹂躙される様を見ていることしかできなかった。
 
●おらが畑の大根脚様
 都市警備隊のフルートから、エルフヘイムに新しい予言者が産まれたという連絡があった。
 しかし新たに産まれた予言者の力はとても弱く、元々の力の多くがエルフヘイムの凶暴な植物たちに奪われてしまっているらしい。
「しかも、予言者の力を奪った植物たちは森や畑、村を襲い始めています。その凶暴な植物を倒して、予言者の力を取り戻して欲しいのだそうです」
 テーブルに集まった者たちを改めて見回すとナイフの自由農夫・クドリャフカ(cn0097)は話を続けた。
「この植物を倒すと、予言者の力の種を手に入れることが出来ます。たくさんの種を手に入れて食べてもらえば、予言者さんは成長することが出来るみたいです」
 ちなみに、今の予言者は可愛らしい子犬くらいのサイズらしい。
「倒してもらいたい植物なんですが、収穫間近だった大根さんになります」
 人の丈くらいまで巨大化した大根で、とある青年の菜園で暴れまわっていたようだ。
 種の力を得た大根は根分かれをして見事な美脚となっている。その健脚でもって跳ね回るため攻撃が当たりづらくなっており、華麗なる空中殺法を繰り出してくる。そして、その最中にチャンスを見出すと、相手に飛び乗って投げ技を仕掛けてくる。
 危なくなるとランナーズハイも使用することがあるようだ。翼を得ることもあるかもしれない。
「今はまた土に潜ってしまったようですが、菜園に足を踏み入れると飛び出して襲ってくるようです」
 現在は、菜園の入り口からちょっと死角になるところにいるようなので外からの攻撃は出来ない。
 攻撃するには菜園に入るしかなさそうだ。
「他にも配下になる大根さんが5体ほど。サイズは人間の子供くらいですね」
 やはり根分かれしていて、ちょこちょこと跳ね回りながら空中殺法を繰り出してくる。
「凶暴化した植物はマスカレイド並の力を持っているそうですので気をつけてくださいね」
 マスカレイドとは無関係とはいえ、油断は出来ないということだ。
「畑が荒らされてしまうなんてこれほど悲しいことはありません。作物は全滅してしまいましたけど、また素敵な菜園を作り直すためにも退治をして欲しいのです」
 やや沈痛な表情を浮かべるクドリャフカだったが、ぴんと指を立てた。
「もちろん、予言者さんを助けることはエルフヘイムの平和にも繋がります。そのためにも大根さんを倒して種を持ち帰るよう、どうかよろしくお願いします」
 そう付け加えて、クドリャフカは深く頭を下げたのだった。


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参加者
しわす・ココロ(c00155)
笑顔ときどき無表情・クゥ(c01536)
ディアボロスの黒わんこ・ビオフィール(c02428)
鉄鍋の料理人・ルディエル(c04624)
千夜一夜・モルティ(c10075)
竜を纏う黒豹・グラム(c14628)
地遂星・ルピー(c15057)
魔想紋章士・テオドール(c17135)
暗殺シューズの群竜士・シギュン(c18130)
太刀の妖精騎士・メルディアス(c20533)

<リプレイ>

●飛び出す大根
 話の通り、菜園は荒れ果てていた。
 収穫を待ちかまえていたと思われる野菜たちの残骸が転がるのみである。
「丹精込めて育てた作物を荒らすなんて許せないぜ!」
 惨状を見て怒りを露わにする鉄鍋の料理人・ルディエル(c04624)。当然だ、料理人なのだから。
「……って、荒らした張本人も作物なんだよな」
 そこはちょっと複雑な気分。しかしこれも種の影響ということか。
「預言者が復活したのは喜ばしいですがこんな事件が発生しちゃうのは困ったものですね。エルフヘイムの平和の為に頑張るのです!」
 笑顔ときどき無表情・クゥ(c01536)の言葉に皆が頷く。
「預言者のためにがんばるわよ!」
 地遂星・ルピー(c15057)を先頭に、数人が菜園へと足を踏み入れる。
「畑に入れば出るから探す手間は省けるわね。さぁ、かかってきなさい!」
 ルピーがびしぃっと指を指すと同時に、ボコボコと土がせり上がり、大量の土を雨の如くぶちまけながら人間大の大根が飛び出してきた。指差した方向とは全く別の場所から。
「……あ、そっちか」
「ああ、出てきたぞ」
 大根脚のまわりに子大根脚も集まってきて、ディアボロスの黒わんこ・ビオフィール(c02428)も、壁となるべく前に出た。
 前衛になる者たちが壁となる間に大根脚たちも臨戦態勢を整えたようだ。スタンディングスタートのような態勢で脚を見せつけるように構えている。
 それを見た魔想紋章士・テオドール(c17135)が思いきり咳き込んだ。
(「見事な美脚……大根脚だけど笑っちゃダメだ、笑っちゃダメだ」)
 吹き出しそうなのを咳でごまかしたらしい。
「種を回収して預言者さんを強くしなくてはならないのね。別に大根脚という言葉に反応したわけではないの」
 何か自分で納得したように千夜一夜・モルティ(c10075)が頷く。美脚に嫉妬したりしない。多分、きっと。
「預言者が産まれたことは喜ばしいことですが、まだまだ力が弱いみたいですね」
 その横で竜を纏う黒豹・グラム(c14628)がじっと大根脚を睨み付ける。預言者のためにも、菜園の持ち主のためにも、目標を達成してみせるという気持ちをその黒い瞳に込めて。
 すると、見つめられた大根脚が脚をもじもじくねくねさせた。まるで恥ずかしがっているようだ。
「……」
 とても気色悪い。
「なんと素敵な大根さん!?」
 しわす・ココロ(c00155)が感嘆の声を上げる。
「きっと踊り好きですね! 踊り好きな人に悪い人はいません、良い大根さんに戻してあげます!」
 人か大根かはさておいて。人の感じ方はそれぞれのようである。
「菜園を荒らす化物、必ず倒してやる」
 今までは世の中を憎んでいた暗殺シューズの群竜士・シギュン(c18130)だが、大根脚を見つめ、そう呟いた。エルフヘイムの戦いを通して、自分にも出来ることを見つけた気がするからだ。
「……頑張る、うん」
 その後ろで太刀の妖精騎士・メルディアス(c20533)が頷いた。
「山菜好き……美味しい。倒すのも、その後も……頑張る、うん」
 しかしちょっと気が早かった。

●空飛ぶ大根
 縦横無尽に大根たちが駆けだした。
 その動きを牽制するようにモルティの放った邪剣が飛ぶ。何体かの子大根脚が斬り裂かれるが、その合間から他の大根脚たちが跳び上がった。
 空中で舞うように跳ね回り、次々と襲いかかる子大根脚たち。その後ろから、さらに高く舞い上がる大根脚。ダンサーのように高く脚を掲げ、軽やかに回転して飛び掛かってくる。
 すなわち、華麗なる空中殺法!
「駆け回ることスカイランナーの如し……根野菜のくせに」
 たとえ高く跳び上がろうとも影は出来る。テオドールは地にできた子大根脚の影に魔鍵を投げつけ、見事に子大根脚の頭の影を射抜いた。どこが頭なのかはよく分からないが。
「風よ、ここへ!」
 ダメージを受けた子大根脚へルピーが飛び込んでいく。風に乗って戦う様はさながら空中戦だ。
 一方で、わらわらとグラムの周りに子大根脚が群がってきている。
 ちょろちょろと駆け回りながら攻撃をしてきて非常に鬱陶しいらしい。
「大根が跳ね回る姿、不気味ですね……」
 否。不気味らしい。
 嫌悪感は示しつつも大きく棍を振り、子大根脚たちをまとめて薙ぎ払う。脚を狙った掃撃は子大根脚たちの攻撃を僅かに鈍らせるが、それも束の間。縦横無尽に空中を飛び回る彼らには効果が薄いようだ。
「よっしゃ、まとめて千切りにしてやるぜ!」
 ならば積極的にダメージを重ねていった方が効率が良いのかもしれない。ルディエルが子大根脚が舞う中に飛び込み次々と大根を切り刻んでいく。
「おでんに風呂吹き大根、切り干し大根にけんちん汁! みんな、リクエストは今の内にまとめておけよ!」
 あわあわとピンチのポーズを取る子大根脚。
「そんなダンスはいけません!!」
 ココロのダメだし。びしーっと指をさせばそこからゴッドなエクスプロージョン!
 大爆発を起こす子大根脚。なんともはや。
 そんな子大根脚たちの頭に、メルディアスの妖精が順に抱きついていく。どこが頭なのかはよくわからないが。
 そして出来た隙を狙って、大量の破壊光線が降り注ぐ。ビオフィールのデモンウイングから光が放たれるたびに白い欠片が飛び散る。
「それにしても活きの良い大根さんですよね。これなら、食べると美味しいかもしれませんね」
 などと曰いながら、続けざまにクゥがハルバードを振り回し子大根脚たちを薙ぎ払う。飛び散る白い欠片の量はさらに増すのだった。
 エンドブレイカーたちの猛攻をかいくぐるのは大根脚。美脚の俊足で後衛への接近を試みるが、そう上手くはいかない。前衛が上手く壁を張っているのだ。それでも好きを見て飛び込もうとするが……。
「後衛には近づけさせねぇ」
 シギュンの剛鬼投げで華麗に吹っ飛んでいく大根脚だった。

●魅せる大根
 配下である子大根脚に攻撃を集中させていたこともあり、子大根脚を全滅させた時点では大根脚は未だノリノリで跳ね回っていた。
「だってこれだけ活きの良い大根なのですよ。絶対に生でも甘くて美味しいのですよ〜♪」
 ビーストクラッシュでくらいつきながら、クゥはお腹が好いたといわんばかりに大根脚を見つめる。
「美脚部分いただくのです〜♪」
 そしておもむろに齧り付こうとするが、大根脚は素早く跳び上がりそれを逃れた。
「に、逃げられたのですー!」
 ひときわ高く跳ね上がった大根脚はくるりと宙返りをしてサンダーボルトをかわすと、肩車をしてもらうような格好でルディエルの肩に飛び乗った。
「お?」
 そして、その頭を美脚でがっちりキャッチ。
「おおおおおおっ!?」
 美脚を捻ると弾丸のような勢いで、ルディエルの頭が菜園の土へと吸い込まれるように落ちていき、彼の身体が逆さまに菜園に突き刺さった。
「す、すごいな……」
 思わず見とれるビオフィール。美白のラインから繰り出される大技についうっかり感嘆である。
 この時巻き起こった土をモルティはいくらか浴びてしまったようで、顔や服が少し汚れている。
「……」
 無言で大根脚を鞭でびしばしし始めるモルティ。とても怒っているようだ。
 なよなよしたポーズでしこたま打ち付けられる大根脚。シュールな光景だが、とりあえず気にしないでもらいたい。
 それも束の間、気を取り直した大根脚の華麗なる空中殺法!
 見事なダブルサマーソルトを見せながら、勢いづいていく。またフランケンシュタイナーが来るかもしれない。
「勢いには乗らせないわ!」
 しかし、すかさずルピーの描いたアンチマジックの紋章が大根脚の勢いを止める。
「地に足をつけると良いよ、根野菜らしく」
 続けてテオドールの撃ち放った魔鍵が、今度は大根脚の脚の影を射抜く。ぐらりと大根脚の動きが鈍り、大きな隙が出来る。
「さあ皆さん! 負けないでレッツだーーーんす! です!」
 かけ声と共に、決めポーズ! さぁ、ご一緒に!
 と、ココロのハピネスダンスが仲間たちを鼓舞する。
「大根の、お料理のためにも、頑張らなきゃ……」
 その勢いに乗り、メルディアスが電刃衝壱の太刀、弐の太刀と続けざまに浴びせていく。さすがにまずいと感じたのか、大根脚は後ろに下がるべく跳び上がろうとする。
「動きを見切ったぜ!」
 しかし、狙いをすませたシギュンの竜撃拳が、正確に大根脚のボディを捉える。跳び上がり損ねて地に落ちる大根脚。
「これで……っ!」
 渾身の力で、グラムが棍を縦に振り下ろす。さんざん華麗に飛び跳ねていた大根脚は、その一撃でついに打ち砕かれたのだった。

●崩れゆく大根
 そう、大根だ。大根なのだ。ここからが本番に違いないのだ!
「調理しちゃいましょう、漬け物にしてあげるわ」
「まてまて、まずはここの主に許可を取ってからだぜ。こいつらだって、元はこの畑の作物なんだし、せっかくこんなに大きく……」
 ルピーが覗き込む中、ルディエルが大根の葉を持ち上げる。
 ぼろぼろぼろっ。
「あーーーー!?」
 大根は虚しく砕け落ちていった。さんざん殴ったり叩いたりレーザーで撃ち抜いたりしたせいかもしれない。
 これではもう、食べるのは無理だろう。実に残念なことだった。
「まぁ、種は回収できたから良いけど」
 そう言うモルティの手には淡く光を放つ小さな種がある。これを持ち帰ればいいのだろう。
「この種が、エルフヘイムの新しい時代の芽になると良いね」
 テオドールも安心したように種を見る。これを預言者に食べさせればいいのだろう。あとはこれを大切に持ち帰ればいい。
「あとは、菜園を直す手伝いくらいはしたいものね」
「そうだね。育てたものがこんなになっちゃったのは残念だけど」
 2人が言う中、クゥも残念そうにしている。
「食べられそうなものがあるならもらいたかったのですけど」
 へちょりと垂れる耳。しかしすぐにぴんっと立つ。
「でも、頑張って素敵な菜園に戻すのです♪」
「菜園の片付け、頑張ら、なきゃ……」
「私も、少しでも修復のお手伝いを出来たらと思います」
 メルディアスとグラムも頷く。菜園の修理を手伝っていくということで意見は一致したようだ。
 青年を呼んできて、その指示の下で修理が始まった。
 とりあえずは壊れた部分の補修、散らばったゴミの片付け、土の戻しといった程度である。
 それでも青年はしきりに感謝を述べていた。
「作物作るの、結構大変なんだな」
 土を弄りながらシギュンは昔を思い出す。お腹が空いて食べ物に困ったときに、作物を盗んだこともあった。今思えば悪いことをしたものである。せめてこの菜園の修繕に力を貸したいところだ。
「力はありませんが、私も頑張りますよ! 豊作祝いの舞いーーー!!」
 何故か全力でえっちらおっちら躍り始めるココロ。皆を励ますこともお手伝いである。
「あと、良ければ種をいくつか分けてもらえませんかねぇ」
 などとついでに青年に申し出ていたりする。大事に育てることが出来たら、今度こそいい大根さんが生まれてくるかもしれない。そんな期待がある。
「また、白くて綺麗で美味しい大根がちゃんと育ってくれりゃいいな」
 ビオフィールも作業を手伝いながら、期待に胸を膨らませている。
「あー、ここまで凶暴じゃなくて歩くのならちょっと俺も欲しい……」
 欲しいのか、歩く大根が欲しいのか。
 こうして春先の1日は過ぎていった。
 皆で大根料理を楽しむことは出来なかったが、いずれきっとまた美味しそうな野菜たちが実るに違いない。
 回収した預言者の力の種を手に、エンドブレイカーたちの心にもほのかな期待の芽が息づくのであった。



マスター:宮内ゆう 紹介ページ
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参加者:10人
作成日:2011/03/19
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