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【七芒星広場】クリスタル・アームズ

これまでの話

<オープニング>

●在りし日の栄光
 クロスは富み栄えた街だ。
 歴史ある街並みは美しく、清潔で、方々からやってくる富裕な商人達を惹き付ける。一度そこを訪れれば、もはや旅立つことなく定住するものも多かった。
 富めるクロスの象徴とも呼べるのが、街の中央、七つの大通りの起点となる『七芒星広場』だ。
 七角形をしたその広場は騎兵隊が行進できるほど広く、足元全てが色合いの異なる大理石のモザイクで出来ていて、まるで宮殿の大広間を思わせた。
 ……だが、何より人目を奪うのは、七つの角に建つ水晶の武人像と、それらが手に掲げる水晶の武具『クリスタル・アームズ』だ。万能の人と謳われ、歴史に名高い巨匠・ミレナリオの作で、七種類の武器を象ったその水晶像は、わずかでも光を受けると内部に光の七芒星を浮かび上がらせるのだ。
 クロスの住人は、朝な夕なに輝くその7つの星をいつも仰ぎ見て暮らしてきた。
 ……あの、アクスヘイム全体を襲った大乱の日までは。

●1年という月日
 湖上の水草の合間を白鳥がゆっくりと横切っていく。
 一見していかにも優雅な湖上の城の一室では、実に散文的な執務が行われていた。
 机の前に陣取って書類に目を通していた城の主たるピエールは、ある紙片を目にして、しばらく視線を宙に彷徨わせた。
 そして傍らの政務官に指示を出し、紙片を手に軽く顎を撫でた。
 ……しばらくの後。
 天窓からの明かりが燦々と降り注ぐ城の広間に、数人の男が招き入れられていた。
 皆立派な身なりで、折り目正しい。
 彼らはピエールがやってきたのを目にして、居住まいを正して一礼した。
「陳情をお聞き届け下さって有難うございます、ピエール様。我々は、クロスの街を代表して参りました。どうか、クロスの復興の為に、お力をお貸しください」
「ほう」
 言いつつ、ピエールは男達に座ってくつろぐ様に勧める。恐縮しつつ、男達は金刺繍の施されたソファに腰掛けた。
「クロスについては聞いたことがあるよ。確か、とても富み栄えて、何より有名な広場と……巨匠ミレナリオの作、水晶武具『クリスタル・アームズ』を掲げる武人像があるとか」
「はい。『七芒星広場』、と呼ばれております。
 夜も灯りを絶やさず、また広場の七つの角に建つ武人像の下が衛兵の詰め所になっていることもあって、平和な時分には盗難の恐れも無かったのです。ですが……」
 アクスヘイムの乱。
 人々が混乱し、衛兵全てが出払うような事態。
 そのどさくさに紛れて、不届き者が現れたのだ。
「武人像の腕は砕かれていました。持ち運びしやすい水晶武具のみを狙ったのでしょう」
「ふむ。――それで、私が力を貸せる事、とは何だろうか」
「あれから1年経ちました、ピエール様」
 男達の言葉はゆっくりと、己に確かめるようだった。
「我々の必死の努力の成果か、何とか持ち直して、これからの新しいクロスを作り上げていこうという最中です。ついては、かつての街の象徴を是非とも再建したい、そう街の皆が思い、資金と資材を集め、職人を手配しました。武人像も広場のモザイクも順調に修復が進んでおります。ですが、あの水晶武具だけは――」
「再現が出来ない……さすがは巨匠の作、と言うことか……」
 はい、と男達は頷いた。そして口調を改める。
「そんな折に、ある知らせが届いたのです」
 それは、美術品の売買を生業とする素封家・クリスビーズ氏からもたらされた。闇の市場で、水晶武具らしきものが取り扱われているというのだ。
「それは盗品ばかりを扱う闇市であるとの事でした。
 その名の通り暗く、人気の無い路地裏で、急ごしらえの粗末なテントが列を成し、地面に敷いたゴザの上に煌めく宝物が、禁制の薬物がところせましと並べられるのだそうです。
 売り手も買い手も、犯罪に手を染めたような者ばかり。そのため、相手の顔もよくわからない薄暗い中で、囁き声で取り引きするのだとか。
 手入れを警戒してか、物騒な気配を漂わせたいかつい男達が闇市の中を見回ってもいるとの話です。
 ……氏は、その闇市のおよその日時と、場所までも知らせてくれたのですが」
「それが、私の領内なんだね?」
 苦笑するピエールに、やや申し訳なさそうに男達は頷いた。
「わかった。復興の象徴を再建するため、また私の領内の不届き者を捕らえるため、君達に協力しよう。闇市に出入りできるような金と、それに兵士の心配はしなくていい。こちらで手配するよ。
 だがまずは、闇市でそれが本当に水晶武具なのかどうか確かめなければね。偽物を出品しているかもしれない。
 もし既に売れてしまっているならば、売った先の『顧客リスト』を押さえる必要もある。
 となると、ただの兵士では荷が重いな……」
 言いつつも、ピエールの口元には微笑があった。
 脳裏には、信頼できて、こういった込み入った厄介ごとにも慣れたあの人々の姿が浮かんでいる。
 ――そう、『エンドブレイカー』達の姿が。


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参加者
暗殺シューズの妖精騎士・ゲイル(c00815)
エアシューズのスカイランナー・ケイ(c01176)
青水玉女・フィレシア(c01350)
空の宅急便・カナタ(c01429)
ポケットブック・ヒクサス(c01834)
新緑の翡翠・リディア(c02016)
咲謳うアイスバーグ・ノシュアト(c02822)
剣の魔法剣士・セルジュ(c03829)
白光の旋律・アルネア(c04358)
お転婆ローズ・シュナーベル(c12443)

<リプレイ>

●おぼろの市
 ……そこで売り買いされる品物と同じく、その場所は薄暗く、出所の知れぬ者たちは影のようにひっそりと行き交っていた。
 粗末なテントが立ち並び、広げられた布の上で、煌びやかな宝飾品は常より控えめに光を放っているかのよう。
 薄明と、囁きの闇市。
 そんな、おぼろな輪郭しか持たない闇市の客達の中で、青水玉女・フィレシア(c01350)と白光の旋律・アルネア(c04358)の姿は、薄闇の中でさえくっきりと鮮やかだった。
 エンドブレイカー達は、2人1組に分かれ、水晶武具を求めて闇市を行く。
 だが、アルネアとフィレシアの『お忍びの貴族』を装ったやや華美な服装に、豪華な燭台。そしてフィレシアの顔にある作り物の仮面。――その装いは、少々鮮やかに過ぎた。
 人目は自然と彼女らに向かった。訝しげに、または警戒するように。端々にいる見回りの男達……皆わざとらしいくらいに物々しい武器を下げている……も、ちらちらと彼女ら2人に視線を向けていた。
 その見回りの男達に、アルネアはとことこと近付いていった。いかにも世間知らずのお嬢様、といった風で、自らの指にはめた金の指輪をそれとなく見せながら話しかける。
「ここって沢山きれいなものがありますのね〜? 迷っちゃいますの。何かオススメはありませんか?」
 『ハニー』をも用いたアルネアの眼差しに、幼女趣味でもあるのか1人の男が気を引かれたようだったが、小さな娘のいるような年代の他の男に「おい!」と制止されていた。
 そこで今度はフィレシアがあえて鈍そうに、同じく『ハニー』を用いつつ切り出した。
「綺麗な武具を〜扱っているお店を教えて欲しいのですわ〜。あなた達、案内してくれませんこと〜?」
 見回りの男達は少し相好を崩し……だが、無情にも首を振った。
「そいつぁ俺たちの仕事じゃねえな」
 ならば今度は袖の下を、とアルネアが金を出そうとすると、男達は眉根を寄せ、諭すように言った。
「な、いいところの子なんだろ? ここはお嬢ちゃんたちがいていい場所じゃあねえ」
「金も持ってるんだ、欲しいもんがあるなら、パパかママに頼みな」
 ……おそらくは、2人の身を案じての言葉だ。悪人なのだか善人なのだかはっきりしない見回りの男達だった。
 ……同時刻。別の一角の店内で。
 ゴザの上に並べられたのは、透き通った輝石で出来た星霊たちのちいさなミニチュア像。ちゃんとスピカはアクアマリンで、バルカンは黒みがかった煙水晶だ。
 空の宅急便・カナタ(c01429)は目をきらきらさせて、ぐっと顔を近づけてそれらに見入っていた。
「はふ……これ欲しい……!」
 自腹でもいいから、とも思ったが、盗品の闇市であることを思い出し、カナタはぐっと我慢する。
 そして目立たないようにさせた星霊たちとともに、その店の光物をささっと調べていく。この店は水晶造りの人物や星霊、妖精の彫像が多く取り扱われていた。
 剣の魔法剣士・セルジュ(c03829)は、わずかに眉をひそめた。
(「よくこれだけ盗品が集ったものだな……」)
 売られているのは全て盗まれたもの。……あまり良い気分になれる光景ではなかった。
(「けど、騒ぎを起こす訳にはいかない。見つかるまでは穏便に、だね」)
 首を振って、セルジュはこの店で既に何点か品物を購入し、出ていこうとする客に声をかけようとした。……が、ぎくりとした風に客は身を震わせ、足早に店の外へ去っていく。
「営業妨害だよ、お客さん」
 低い、小さな抗議の声が店主からあがった。
「それはすまない。……知っている人じゃないかと思ってね」
「余計いけないよ、お客さん。ここじゃ、お互いの素性を知っているのは品をやり取りした相手だけ。それがここのルールだよ」
「へえ、闇市なのに、丁寧に顧客リストでも作っているのかい?」
 セルジュの問いに、店主は話し過ぎたと思ったのか目を細め、口を閉じた。
 カナタは、あえて明るく言った。
「何かオススメの品はある? 人や星霊や妖精以外にも、物の……例えば武器なんかの像は?」
「……うちじゃ取り扱ってないね」
 店主の表情は固い。実際に星霊たちと探した結果と同じ返答に、カナタとセルジュはそれ以上の追求を諦め、店を後にした。

●闇の商人
「内密で探してる」
 コートを羽織り、顔を隠すようにして。
 ポケットブック・ヒクサス(c01834)は顔を合わせないように何気なく――見回りの男に自分の図書館長の地位を示す証しをちらりと見せ、金を握らせた。見回りの男も心得たもので、ヒクサスを見ようともせず、悠然と金を懐に入れた。
 ヒクサスの背後から、暗殺シューズの妖精騎士・ゲイル(c00815)は何気なく……というには鋭い視線で……立ち並ぶテントに目をやりつつ、あらかじめ聞いた水晶武具の大体の外見を描いた紙を男に示した。
「はーん……水晶の武器、ね……」
 男はぼそぼそと呟くように言った。
「その手のモノは、似たようなのがごまんとある。前に古い光物専門の仲買人が言ってたが、なんでも有名なヤツがあって、後からそれに似せた品が流行ったんだそうだ……」
「有名なヤツ、を探してる」
 さらに金を握らせて、ヒクサスは囁く。
「心当たりだけでもいい。立場上、面白い情報も集る……今後も損はさせないよ?」
「へへ、あんたみたいなのは古いものが好きだね」
 男は笑って、そして闇市のある一角を指し示した。
「古ーいのをありがたがるヤツらが、あのあたりによく通ってるって話だ。光物ならまだわかるが、壷のカケラだのなんだの、よくわかんねえな」
 2人はその方向を確かめた。ヒクサスのバッグやポケットから三種の星霊が、そしてゲイルのローブの影から妖精も顔を出す。そして2人と4匹は無言で頷きあった。
 ……頃合を見て、一同は集合拠点にいったん引き返すことにしていた。
 そこで、得た情報は共有される。
 絞り込まれた範囲に、皆は再び散った。
 ヒクサスはアンティークを扱う店で、水晶武具の作者たる巨匠・ミレナリオについてそれとなく聞いてみた。結果わかったのは、その世界では知らぬもののない名前だということだった。
「絵画、彫刻に音楽、詩歌。舞台の脚本に演出。芸術方面だけじゃなく、発明だの、化学、それに政治・戦争論まで手を出してた。……まさに巨匠、だね」
 囁き声ながら、好きなものの話題なためか店主は饒舌だった。
「ただ、手を広げすぎたせいか、何分手が遅くてね。締め切りを守らないことでも有名だった。あんたら、『クリスタル・アームズ』って知ってるかい?」
「あ、ああ」
 逸る内心を抑えて、ヒクサスとゲイルは頷いた。
「あのシリーズも、記録じゃあ10体以上製作途中だったらしいが、完成品が確認されてるのは7体だけだ。そういうの多いんだよあの人ぁ」
 まるで知り合いのように店主はぼやいた。
 ……そうやって、一同がしばらくの間、探索を続けていくうちに。
 いくつかの店先を『ヒアノイズ』で探っていた咲謳うアイスバーグ・ノシュアト(c02822)の耳に、聞き捨てなら無い会話が飛び込んできた。
 ……「どうも、おかしなヤツらが出入りしてるみたいだ。水晶武具を探しているらしい」……「まさか手入れか?」……「それにしては、やたら派手なヤツや世間知らずの貴族みたいなヤツで」……「そろそろ、ずらかった方がいいかも知れないな」……。
 ノシュアトは隣を歩くエアシューズのスカイランナー・ケイ(c01176)の袖を引いた。身振り手振りで確認し合いい、2人はそのテントの垂れ幕をくぐった。
 薄暗い店内で。
 ヴェールの隙間から『ハニー』を用いた誘うような視線を投げ、ノシュアトはさっそく売り手に話しかけた。
「闇市って初めてなの。綺麗な水晶の品ってないかしら……♪」
「水晶なら、こんなのがありますよ」
 背後の布包みから出てくる水晶で花籠を模した髪飾りに、(「あらん、フローレンスちゃんに似合いそう……」)と気を引かれつつ、ノシュアトは売り手の背後に人がいて、品物を出し入れしているのを確認していた。
 『ハニー』を使用し、前かがみになって胸を強調しつつ、ケイはさらに踏み込んで尋ねてみた。
「武具の飾り物なんてないかな。勿論ありきたりなのじゃなくて、その髪飾りと同じように、綺麗な水晶で出来たのなんかだと最高だね。……お金ならあるんだけど、知らない?」
 ちら、と売り手は上目遣いにケイを見た。
「……タイミングがいいねお客さん」
 そろそろと、売り手は背後からひとつの包みを取り出した。
「最後の1個だよ。買うなら今しかないね」
 布が取り払われ。――そこに、水晶でできた、きりりとした存在感を持つ、武具の像が。
「水晶の……暗殺靴……」
 息を呑み、ようよう呟いて、ケイとノシュアトは蝋燭の灯りを近づけた。内部にぽっ、と、浮かび上がるのは確かな七芒の星の光。
「気に入った、これを買うよ」
 言って、ケイは顔を売り手に近づけて囁いた。
「さっき、最後の1個、って言ったよね。他にもあったんだ? 売れちゃった?」
「……」
「他にもある、売れた、って聞くと余計欲しくなるな。……ね、売った人の名前を知りたい。顧客リスト、見せてくれない?」
「お客さん」
 その抑えた声の調子で、2人は潮時を悟った。
「お買い上げありがとうございやす、お客さん。身元を教えてくださるのも、感謝しますぜ。ですが、他のお客さんについては、詮索はなしにしましょうや」
「……そうね、ありがとう♪」
 金を支払い……それは預かった金のほぼ全てに近かった……『水晶の暗殺靴』の包みを受け取って、ノシュアトとケイは素早くその店を後にした。
「急がないと……!」
 ノシュアトに頷き、ケイは一度だけ背後を振り返った。点々と続く自分の足跡。それはほのかに光を放っている……。
 『フットプリント』の効果を確認し、2人は集合場所へと急いだ。

●春の夜の夢の如く
 「さっ」、と、羽織った外套を取り除け、貴族らしさ全開の装いをあらわにして。
 お転婆ローズ・シュナーベル(c12443)は人気歌手らしいオーラを放って、ゆっくりと振り向いた。視線の先には、今まで『人気歌手のパトロン』を演じていた幼馴染の新緑の翡翠・リディア(c02016)がいて、彼女を見守ってくれている。
 シュナーベルのいきなりの行動に、周囲に無音の動揺が走った。闇市に出入りする者たちの注意を逸らすためにも、この動揺を、もっと大きなものにする必要があった。
 足元には、光で描かれた目印たる仲間の足跡がある。
 その出所のテントを目の端にとらえて、ふとシュナーベルは、幼い頃の『お姫様と王子様』ごっこを懐かしく思い出していた。
「こういうのって懐かしいわ。……でも、久しぶりのごっこ遊びは、真剣勝負ね?」
 囁きに不敵に笑い返して、リディアもさっと外套を脱いだ。
「そう、やり直しの効かない一発勝負。
 ――舞台は闇市、この登場人物全てを煙にまく、一夜芝居」
(昔のごっこ遊びと最も違うのは、演ずる役が私達自身だという事……」)
 リディアの目の前で、今、シュナーベルが朗々とした歌声を闇市全体に届くほどに響かせていた。
「ああ、ベルの歌は相変わらず美しいね」
 血相を変えて走ってくる見回りの男達の前に立ちはだかり、リディアはすらりと武器を抜いた。
「まるで天使の歌声。……今夜の冒険のエピローグにふさわしい……ハッピーエンドだから、尚更」
 リディアのアイスレイピアが召喚した冷気が、男達の足を縫いとめていった。
「なんだ……!?」
「ケンカか?」
「……歌ってるぞ??」
 光る足跡の出所たる店の入り口で、垂れ幕の隙間から外を覗き込み、水晶武具の売り手の男らは混乱した様子だった。手入れの気配を感じれば即逃げられる態勢に入っていたが、どうも様子がおかしい。
「頭のおかしなヤツか?」
「春だからな……ああ、見回りともめてるみたいだ」
「なら大丈夫か。ま、ゴタゴタする前に、早めに撤収して……!?」
 垂れ幕を閉じ、振り返った男の背後から、強烈な一撃と可愛らしいが凛とした声が降ってきた。
「盗んだものを売ってお金を稼ぐなんて不埒な真似、許しませんわよ!」
 垂れ幕をひるがえし、アルネアは音高く鞭を鳴らした。
「神妙になさい!」
 オーラの刃を生やした鞭先は男の急所をえぐり、男は呻きつつ膝をついていた。
「盗品を捌く場があるから盗人が絶えぬのです!」
 ピエール配下の兵士達を率いるフィレシアは、まるで一団の長であるかのように気丈で凛々しい。
「今宵限りで、この闇市を終焉と致しましょうッ!」
「……くそっ!」
 フィレシアの宣言と、ずらりと並んだ兵士の姿に、ゴザを品物ごと丸めて駆け出そうとしたもう1人の売り手は、思わぬゴザの抵抗につんのめった。――振り返った先には、カナタの笑顔とゴザを踏んづける彼の足。
 変装用のローブを脱ぎ捨て、カナタは男に向けて、射程に収めるように魔鍵を構えていた。
「年貢の納め時、じゃないかな!」
 練成された無数の鍵群に撃たれ、男は仰向けになって地面に転がった。ゴザは放り出され、いくつもの宝物のきらめきが周囲に散らばっていった。
「顧客リスト、回収!」
 男の胸元に仕舞ってあった綴りを手に、カナタは会心の笑みを閃かせた。
 ――闇市は制圧されつつあった。
「っ!!」
 どさくさ紛れに人の懐を狙うスリを、セルジュは炎と氷と雷をもって斬り伏せた。闇市の出入り口を封鎖しようとする兵士に加勢し、歯向かってくる客や売り手たちと剣を交える。その場には、冗談のように折り重なる男達の山が出来ていった。
 ゲイルは手近にいる商人らを確実に捕縛していった。妖精の一群が、逃げようとする商人も客も、まとめて包囲し、針で突き刺していく。
 シュナーベルの歌は、いつの間にか魔曲と化し、見回りの男達や逃げようとする商人達の闘志を根こそぎ奪っていった。そこを片端から、リディアが冬の嵐を喚んで凍らせていく。
 もはや、決着はついた。
 カナタの用意した袋に買い戻した水晶武具を入れ、後の始末を続々とやってくる兵士達に任せて、一同は足早にかつて闇市のあった路地裏を抜けた。

●1/7
「わぁ、綺麗……」
 アルネアがうっとりと溜息をつく。
「これは欲しくなる気持ちもわからないでもないよ」
 ヒクサスも感嘆しきりだ。
 安全な場所まで退避して、一同はとりあえず明るい光の下に取り戻した『水晶の暗殺靴』を晒してみた。
 光を受け、内部の七芒星はより一層輝きを増した。その周囲にはさらに細かな七芒星が分身のようにいくつも生まれ、舞い散っている。
「これが、あと6つ」
 槌弦。
 刀杖、盾槍。
 斧槍、剣弦、斧剣。
 そして顧客リストに、名は3つ。残る6つを買い取ったのは3名だ。誰がどれをいくつ買ったかはわからないが、やがて知ることになるだろう。
 エンドブレイカー達は、光増す七芒星を、それぞれの思いを胸に静かに見つめていた……。



マスター:コブシ 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2011/04/08
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冒険結果:成功!
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